「カルティエ、時の結晶」 国立新美術館

国立新美術館
「カルティエ、時の結晶」 
2019/10/2~12/16



国立新美術館で開催中の「カルティエ、時の結晶」へ行ってきました。

1847年にルイ=フランソワ・カルティエによって創業された宝飾ブランド「カルティエ」は、20世紀の初頭に3人の孫であるルイ、ピエール、ジャックに引き継がれると、宝飾の枠組みを超えた、いわば1つの「芸術」(解説より)として確固たる地位を築き上げました。

そのカルティエのコレクションが約300点ほど国立新美術館へとやって来ました。日本では1995年の東京都庭園美術館、2004年の醍醐寺、2009年の東京国立博物館表慶館と過去3度カルティエの展覧会が開かれてきましたが、本展では1970年代以降の現代の作品にスポットを当てていて、約半数が個人のコレクションで占められていました。



さて今回のカルティエ展ですが、作品の展示方法、ないし構成にいくつかの特徴がありました。まずはスマホ型の音声ガイドで、入口にて原則、全員に貸し出され、来館者はガイドの解説を頼りに、作品を鑑賞して歩くように作られていました。よって場内の個々の作品にはキャプションがありませんでした。



2つ目は「時間」を大きな軸にしていることで、針がメカニズムに繋がっていなく、さもクリスタルの中に浮かんでいるようなミステリークロックの並ぶ「時の間」(プロローグ)を囲むように、「色と素材」(第1章)や「フォルムとデザイン」(第3章)などのテーマ別に作品が並べられていることでした。そしてこの「時の間」では、西陣織の引箔や、風通織と呼ばれる技術で開発された2種類のファブリックが用いられていて、まるで光の柱の中にジュエリーが浮かび上がる神殿のような空間が築かれていました。いずれも京都の老舗織物メーカーである川島織物セルコンによるもので、それこそ国立新美術館の天井高を活かした効果的な展示手法を見せていました。



この一連の展示構成を手掛けたのが、現代美術家の杉本博司と建築家の榊田倫之が設立した新素材研究所でした。よって同研究所の選定した無垢素材の木、石、さらにガラス、あるいは古美術品がディスプレイケースに採用され、宝飾と並んで展示されていました。中には大谷石を大胆に塊で配置したディスプレイもあり、日本の骨董や自然素材とカルティエのコレクションとの邂逅も大いな見どころと言えそうです。



ラストの第3章「ユニヴァーサルな好奇心」では、カルティエが世界各地の文化や自然などに着想を得た作品が展示されていて、とりわけ昆虫や鳥、爬虫類に虎など、生き物をモチーフとした宝飾に目を引かれました。



こうした自然主義的なデザインは、1980年に導入された、ロストワックスと呼ばれる鋳造の技術により発展したそうです。その一方、写実ではなく、動植物より抽象的なパターンを引き出した宝飾にも異なった魅力が感じられました。



1860年代より1990年代の作品で構成されたカルティエのコレクションは、現在、約3000点を超えるに至っているそうです。そして1989年にパリのプチパレ美術館には大規模な展覧会が開かれてから、ロンドンやモスクワ、北京や東京などの各美術館や博物館でもコレクションが公開されてきました。



今回のように1970年以降の現代作品を中心とした展覧会は初めてでもあります。まさに息を飲むばかりの美しいネックレスなりティアラを通して、今も新たな造形を生み出そうとするカルティエの創作活動を見知ることが出来ました。



第3章の展示スペースのみ撮影も可能です。(本エントリの写真も撮影OKコーナーで撮りました。)多くの方がスマホカメラを向けていたのは言うまでもありません。



入口横の音声ガイドを借りるコーナーのみやや列が出来ていましたが、場内ではスムーズに鑑賞できました。まだ余裕があります。


12月16日まで開催されています。

「カルティエ、時の結晶」@Cartier2019exhn) 国立新美術館@NACT_PR
会期:2019年10月2日(水)~12月16日(月)
休館:火曜日。但し10月22日(火・祝)は開館し、10月23日(水)は休館。
時間:10:00~18:00
 *毎週金・土曜日は20時まで。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1600(1400)円、大学生1200(1000)円、高校生800(600)円。中学生以下無料。 
 *11月2日(土)~4日(月・休)は高校生無料観覧日(要学生証)
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
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「ハプスブルク展」 国立西洋美術館

国立西洋美術館
「ハプスブルク展 600年にわたる帝国コレクションの歴史」
2019/10/19~2020/1/26



国立西洋美術館で開催中の「ハプスブルク展 600年にわたる帝国コレクションの歴史」を見てきました。

スイス北東部のライン川上流域を発祥とし、13世紀末にオーストリアへ進出後、ヨーロッパを支配したハプスブルク家には、豊かな富を背景に、美術や工芸の膨大なコレクションが築かれました。

そのコレクションの一端を紹介するのが「ハプスブルク展」で、大半がオーストリア=ハンガリー二重帝国の実質的な最後の皇帝であるフランツ・ヨーゼフ1世によって作られた、ウィーン美術史美術館のコレクションでした。


ベルンハルト・シュトリーゲルとその工房、あるいは工房作「ローマ王としてのマクシミリアン1世」 1507/1508年頃 ウィーン美術史美術館

眉目秀麗な男性を描いた1枚の肖像画から展覧会が始まりました。それがベルンハルト・シュトリーゲルとその工房、あるいは工房作による「ローマ王としてのマクシミリアン1世」で、モデルはハプスブルク家に富や領土をもたらし、芸術家らを庇護しては、コレクションを築いた皇帝マクシミリアン1世でした。王冠をかぶりつつ、厚い胸板をつけた甲冑を身にしていて、細部の装飾も丁寧に表されていました。ピンク色の唇の周囲に広がった、うっすらとした髭の描写なども写実的と呼べるかもしれません。

このマクシミリアン1世が実際に着用した甲冑も出展されていました。中世最後の騎士とされ、武勇に秀でた皇帝は体格も良かったのか、明らかに甲冑自体も大きく、堂々たる姿を見せていました。そしてそうした甲冑を囲むのが、「アナニアの死、連作〈聖ペテロと聖パウロの生涯〉」などの巨大なタペストリーで、15世紀北ドイツの「角杯( グリフィンの鉤爪)」や、16世紀の中央アメリカ、及びインドとされる「ハート型容器」と合わせて公開されていました。実のところ、絵画と並んで一連の工芸品も、今回のハプスブルク展の大いな見どころと言えそうです。



絵画では肖像画が多い中、特に目立っていたのは、バロックのスペインの画家、ディエゴ・ベラスケスの作品でした。そのうちチラシに表紙を飾った「青いドレスの王女マルガリータ・テレサ」は晩年の傑作の1つとされていて、17世紀の中頃にスペインで流行したドレスを着た王女を正面から描いていました。筆は荒々しくも、ドレスの青みや布の質感を巧みに伝えていて、マルガリータの白くか細い手や、さも霧のように広がる金髪なども見事に示していました。少し離れて眺めるとぴたりとピントが合うような感覚も、ベラスケスならではの表現かもしれません。

華やかな宮廷生活を思わせる絵画にも目を奪われました。一例がヤン・トマスの「神聖ローマ皇帝レオポルト1世と皇妃マルガリータ・テレサの宮中晩餐会」で、先のベラスケス画でもモデルであったマルガリータ・テレサと、ハプスブルク家の復興にも尽力したレオポルト1世の晩餐会の光景を俯瞰した構図で表していました。多くの貴族らは、大きなテーブルを囲んでは、食事を楽しんだり、談笑したりしていて、中には長いグラスを手にしてラッパ飲みするような人物もいました。またテーブルの上に光を当て、周囲を暗くするような陰影も効果的で、宴会の賑わいが臨場感を伴って伝わってきました。この1回の晩餐にてどれほどの人が集まり、どれほどの贅が尽くされたのでしょうか。


マリー・ルイーズ・エリザベト・ヴィジェ=ルブラン「フランス王妃マリー・アントワネットの肖像」 1778年 ウィーン美術史美術館

ベラスケス、ティツィアーノ、ティントレットらの肖像画の優品も並ぶ中、私がとりわけ魅せられたのが、マリー・ルイーズ・エリザベト・ヴィジェ=ルブランの「フランス王妃マリー・アントワネットの肖像」でした。マリー・アントワネットの宮廷画家でもあったルブランの手掛けた肖像の大作で、大きな羽飾りを頭につけ、白と金のゴージャスなドレスに身を纏い、右手で1輪のピンクのバラを手にした王妃の姿を、実に精緻な筆と鮮やかな色彩にて表していました。

また右のテーブルの上の王冠や花瓶の花なども細かに描いていて、大きな柱のある空間しかり、宮廷の威厳までが絵画から滲み出ているようにも感じられました。ハイライトを飾る1枚と捉えても良いかもしれません。


マルティン・ファン・メイテンス(子)「皇妃マリア・テレジアの肖像」 1745-50年頃 ウィーン美術史美術館

さすがに600年にもわたる歴史を有するだけに、全ての時代の美術品を細かく紹介するのは難しいかもしれませんが、それでも冒頭のマクシミリアン1世しかり、ウィーン美術史美術館の創設者でもあるフランツ・ヨーゼフ1世の他、有力なコレクターであったルドルフ2世など、重要な人物に焦点を当て、それぞれの時代のコレクションの特徴について浮かび上がるように工夫されていました。

またルドルフ2世が銅版を所有していたデューラーの版画をはじめ、大公レオポルト・ヴィルヘルムのコレクションでもあったマンフレーディの「キリスト捕縛」など、ハプスブルク家に関係し、現在、国立西洋美術館に収蔵されている作品もあわせて出展されていました。その点も見逃せないポイントかもしれません。



会場内の状況です。10月27日の日曜日の午後に見てきました。まだ会期も早いからか、チケットブースや会場入口で待機列は一切なく、スムーズに入館出来ました。

今回の展覧会は地下の企画展示室に入場後、直ぐに地下2階の展示フロアに続くように動線が築かれています。そこでは主に甲冑や工芸品などが展示されていました。

総じて会場内には余裕がありましたが、その地下2階の展示室だけはやや混み合っていました。特に展示室右手の工芸品のケースの前には若干の列が出来ていました。


まだ始まったばかりゆえに何とも予想がつきませんが、ひょっとすると中盤以降は混雑する可能性があります。早めの観覧をおすすめします。



2020年1月26日まで開催されています。

「日本・オーストリア友好150周年記念 ハプスブルク展 600年にわたる帝国コレクションの歴史」@habs2019) 国立西洋美術館@NMWATokyo
会期:2019年10月19日(土)~2020年1月26日(日)
休館:月曜日。但し11月4日(月・休)、1月13日(月・祝)は開館し、11月5日(火)、12月28日(土)~1月1日(水・祝)、1月14日(火)は休館。
時間:9:30~17:30 
 *毎週金・土曜日は20時まで開館。但し11月30日は17時半まで。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1700(1400)円、大学生1100(1000)円、高校生700(600)円。中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:台東区上野公園7-7
交通:JR線上野駅公園口より徒歩1分。京成線京成上野駅下車徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅より徒歩8分。
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「正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―」 東京国立博物館・平成館

東京国立博物館・平成館
「御即位記念特別展 正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―」
2019/10/14~11/24



東京国立博物館・平成館で開催中の「御即位記念特別展 正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―」のプレスプレビューに参加してきました。

奈良の正倉院宝物、及び法隆寺に伝来し、現在は法隆寺宝物館に収蔵された法隆寺献納宝物が、天皇陛下の御即位を祝して、東京国立博物館にて一同に公開されました。


「東大寺献物帳(国家珍宝帳)」(部分) 奈良時代・天平勝宝8(756)年 正倉院宝物 *前期展示

冒頭は正倉院宝物を献納した光明皇后のゆかりの品々で、皇后が聖武天皇の遺愛品を東大寺の盧舎那仏に捧げた目録である「東大寺献物帳」などが出展されていました。

献納の趣旨も記録され、目録の続く同献物帳は、全面に御璽が押されていて、最初の正倉院宝物の起こりを伝える重要な資料としても知られています。会場には一部の意訳も付されていて、献納によって御霊を助けたいとする、皇后の天皇に対しての深い愛情を見ることも出来ました。


「平螺鈿背円鏡」 中国 唐時代・8世紀 正倉院宝物 *前期展示
 
聖武天皇の遺愛品としては「平螺鈿背円鏡」も目を引くかもしれません。鏡の背の部分には夜光貝や琥珀により宝相華文様が表されていて、文様の間に散りばめられたトルコ石の粒とともに、輝かしい光を放っていました。


「鳥毛帖成文書屛風(6扇のうち2扇)」 奈良時代・8世紀 正倉院宝物 *前期展示

同じく天皇の遺愛した「鳥毛帖成文書屛風」も見どころの1つではないでしょうか。8文字2行によって座右の銘が記された屏風で、文字には鳥の毛が貼り重ねられていました。なお毛は日本のキジとヤマドリの羽が使われていることが分かっていて、ちょうど毛の部分の波が筆の跡のようにも見えるかもしれません。


「花氈」 中国 唐時代・8世紀 正倉院宝物 *前期展示

一際大きな「花氈」に目を奪われました。中央に打毬に興じる唐子を配し、2種類の花卉文の列を交互に並べ、周囲を淡い青の帯で縁取ったフェルト製の敷物で、おそらくは中央アジアから唐と新羅を経由して伝えられました。唐子の細かな表情など、いわば絵画な表現が見られる点も興味深いかもしれません。


「螺鈿紫檀五絃琵琶」 中国 唐時代・8世紀 正倉院宝物 *前期展示

ハイライトは、正倉院宝物でも良く知られた琵琶の1つ、「螺鈿紫檀五絃琵琶」でした。古代インドに起源を持ち、世界で唯一現存する五絃の琵琶で、螺鈿や玳瑁などにより精緻な装飾が施されていました。


「螺鈿紫檀五絃琵琶」 中国 唐時代・8世紀 正倉院宝物 *前期展示

そして前面だけでなく、背面には実に見事な宝相華文が表されていて、まさに息をのむばかりの美しさを見せていました。また360度から見られる展示ケースのため、琵琶をぐるりと一周、余すことなく堪能することも出来ました。


模造「螺鈿紫檀五絃琵琶」 平成31(2019)年 正倉院事務所

ここで興味深いのは、「螺鈿紫檀五絃琵琶」の復元模造品が合わせて出展されていることでした。というのも、宮内庁では1972年より、正倉院宝物を忠実に再現した模造品を制作する事業を進めていて、同琵琶も約8年余りかけて作られました。ともすると原品と見間違うほどに高い再現度ではないでしょうか。

また場内には復元琵琶によって演奏された音色もBGMとして流されている上、模造制作のプロセスを捉えた映像も公開されていました。実のところ、今回の展覧会では琵琶に限らず、こうした一連の精巧な模造品もいくつか出展されていて、互いに見比べることも可能でした。


「壬申検査関係写真」横山松三郎撮影 明治5(1872)年 東京国立博物館 *前後期各2枚ずつ

この他、主に江戸時代から現代へと至る宝物の調査、修復作業、そして模造制作に関した資料展示もあり、正倉院宝物をどのように現代へ受け継いでいくのかについての知見を得ることも出来ました。


「塵芥」 飛鳥~奈良時代・7~8世紀 正倉院宝物 *通期展示

中には既に原型を失った残片である塵芥までが出品されていました。こうした塵芥を整理し、素材を調査することが、染織品の復元などにとって大切なことだそうですが、一連の保存、修復の活動を細かに紹介している点も、今回の正倉院展の最大の特徴と言えそうです。


「正倉院南倉(一部再現)」展示風景 *一般撮影可能エリア

ラストには巨大な正倉院の宝庫の模型が姿を現しました。いずれも南倉と中倉の一部を実寸で再現したもので、思いの外に高い床下など、宝庫のスケールを体感的に味わうことが出来ました。


模造「螺鈿紫檀阮咸」 明治32(1899)年 東京国立博物館 *一般撮影可能エリア

同模型と、同エリアにある模造の「模造 螺鈿紫檀阮咸」などは一般会期中においても撮影が可能です。また明治初期の宝庫内を再現したVR映像も臨場感がありました。さらに宝庫を開封する際の映像なども、あわせてお見逃しなきようにご注意下さい。(本エントリの写真は報道内覧会の際に主催者の許可を得て撮影しました。)


「伎楽面 酔胡王」 飛鳥~奈良時代・7~8世紀  東京国立博物館(法隆寺献納宝物) *前期展示

最後に混雑の情報です。ちょうど10月26日より奈良国立博物館にてはじまった展覧会の例を挙げるまでもなく、「正倉院展」は大変な人気があります。よって東京でも会期早々から多くの方が詰め掛け、入場規制も行われています。


手前:「銀薫炉」 中国 唐または奈良時代・8世紀 正倉院宝物 *前期展示

少なくとも10月25日の時点において最も待ち時間が長くなったのは、10月22日の朝10時の段階での60分待ちでした。その後は平日も朝を中心に30分程度の待ち時間が発生し、昼前から縮小し、午後に解消する状況が続いているようです。今のところ朝から午前中に混雑が集中しています。待ち時間は公式rアカウント(@shosoin_tokyo19)がこまめに発信しています。


「正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―」展示風景

「正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―」作品リスト
前期:10月14日(月・祝)~11月4日(月・休)
後期:11月6日(水)~11月24日(日)


会期は展示替えを挟んでも僅か1ヶ月強です。後半は混雑に拍車がかかることも予想されます。当面は金、土曜日の21時までの夜間開館が狙い目となりそうです。


「正倉院中倉(一部再現)」展示風景 *一般撮影可能エリア

11月24日まで開催されています。

「御即位記念特別展 正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―」@shosoin_tokyo19) 東京国立博物館・平成館(@TNM_PR
会期:2019年10月14日(月)~11月24日(日)
時間:9:30~17:00。
 *会期中の金・土曜、及び11月3日(日・祝)、11月4日(月・休)は21時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。ただし10月14日(月・祝)と11月4日(月・休)は開館し、11月5日(火)は休館。
料金:一般1700(1400)円、大学生1100(800)円、高校生700(400)円。中学生以下無料
 *( )は20名以上の団体料金。
 *本展観覧券で、会期中観覧日当日1回に限り、総合文化展(平常展)も観覧可。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。

注)写真は報道内覧会の際に主催者の許可を得て撮影しました。
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トークイベント:青い日記帳×川瀬佑介「幻の美術作品の話をしよう! 」が開催されます

お馴染み「青い日記帳」の監修による『失われたアートの謎を解く』(筑摩書房)。その刊行を記念してのトークイベントです。青い日記帳×川瀬佑介「幻の美術作品の話をしよう! 」が開かれます。

「失われたアートの謎を解く/監修・青い日記帳/ちくま新書」

【青い日記帳×川瀬佑介「幻の美術作品の話をしよう! 」】
会場:本屋B&B(@book_and_beer)
住所:東京都世田谷区北沢2-5-2 ビッグベンB1F
日時:11月1日(金)20時~22時 (19時半開場)
入場料:前売1500yen + 1 drink order(ともに税別)*当日店頭2000yen + 1 drink order(ともに税別)
http://bookandbeer.com/event/20191101/

日程は11月1日(金)の夜8時(開場は夜7時半)から。会場は小田急線、及び京王井の頭線下北沢駅にほど近い「本屋B&B」です。「B&B」とは「Book」&「Beer」を意味し、新刊書店でありながら、本を読んだり、トークイベントを聞きながらビールが飲めるというコンセプトで営業しています。よって本イベントも1ドリンク制になります。(ソフトドリンクもあります。)

出演は青い日記帳のTak(たけ)さんと、国立西洋美術館の主任研究員絵画・彫刻室長で、近年、「カラヴァッジョ展」や「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」などを監修された川瀬佑介さんです。なお進行役を私、はろるどが務めます。

【出演者プロフィール】
青い日記帳(あおいにっきちょう)
Tak(タケ)の愛称でブログ「青い日記帳」を主宰。休みの日には美術館・博物館へ通い、アートにまつわるさまざまな情報を毎日発信する美術ブロガーとして圧倒的な支持を得ている。美術にまつわる寄稿や出版物も多く手がけ、近著に「いちばんやさしい美術鑑賞」(ちくま新書)などがある。

川瀬佑介(かわせ・ゆうすけ)
1977年生まれ。国立西洋美術館主任研究員絵画・彫刻室長。東京藝術大学大学院博士課程修了後、メトロポリタン美術館、長崎県美術館学芸員などで美術史研究を重ねた。専門は17世紀を中心とするスペイン・イタリア美術史。2016年の「カラヴァッジョ展」「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」などを監修。



トークの内容についてですが、まず「失われたアートの謎を解く」を簡単にご紹介した上で、川瀬さんとたけさんに美術館での盗難やナチスの絵画略奪の話などをしていただきます。何でも西洋美術館にも、スケッジャの「スザンナ伝」など、ナチスにより略奪された作品がコレクションされているそうです。

また川瀬さんは来年3月より国立西洋美術館にて開催される「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」の監修者でもあります。よって同展の内容についてスライドで触れていただきながら、出展作の1つで、同ギャラリーから盗まれた経緯のあるゴヤの「ウェリントンの肖像」を中心に、失われた美術作品などについてお話し頂きます。基本的には本に書いていない新たな内容になります。時間は概ね90分〜120分弱程度を予定しています。(途中に休憩を挟む予定です。)

【青い日記帳×川瀬佑介「幻の美術作品の話をしよう! 」概要】

こんなに感動したあの作品が、明日もあるとは限らない…
青い日記帳さん監修の『失われたアートの謎を解く』ではフェルメール《合奏》を含む被害総額5億ドルの盗難事件、ドイツのアパートから2012年に発見されたナチス御用画商の隠し絵画……などなど、アート2000年の歴史に隠された「不都合な真実」を解剖しています。

今回の刊行記念イベントのゲストには国立西洋美術館主任研究員絵画・彫刻室長の川瀬佑介さんをお呼びしました。

来年開催の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」で来日を果たすゴッホの《ひまわり》、もうひとつのゴッホの真作《ひまわり》が、かつて日本にもあったように、今回のイベントではそのような思いがけない「失われた美術品」のこと、美術品を守るために美術館がしていること、知らなかった美術のもう一つの素顔を語ります。


実は先日、私も川瀬さんを交えて打ち合わせに参加してきましたが、とてもお話が楽しく、また深く、思いの外に盛り上がってしまいました。きっとトークイベントでも展覧会での苦労話や裏話なども交え、有意義なお話が聞けるのではないかと思います。

【青い日記帳×川瀬佑介「幻の美術作品の話をしよう! 」】本屋B&B
日時:11月1日(金)20時~22時 (19時半開場)
http://bookandbeer.com/event/20191101/
イベント事前予約サイト→https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/010pnt10jcvu3.html?_ga=2.232829342.1831825959.1571914123-869499712.1520425564

既にイベントは「本屋B&B」の専用サイトで事前受付中です。一人でも多くの方のご参加をお待ちしております。

*本屋B&Bサイトでは鼎談の形でイベントが紹介されていますが、基本は青い日記帳のTak(たけ)さんと川瀬さんのトークになります。サイトは追って修正される予定です。

【青い日記帳×川瀬佑介「幻の美術作品の話をしよう! 」】
会場:本屋B&B(@book_and_beer)
住所:東京都世田谷区北沢2-5-2 ビッグベンB1F
日時:11月1日(金)20時~22時 (19時半開場)
入場料:前売1500yen + 1 drink order(ともに税別)*当日店頭2000yen + 1 drink order(ともに税別)
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小田原文化財団「江之浦測候所」への旅 後編:竹林エリア

「前編:明月門エリア」に続きます。小田原文化財団「江之浦測候所」へ行ってきました。



明月門エリアより藤棚を抜けると、木漏れ日の差し込む鬱蒼とした森の中に入りました。さらに小道を進み、坂道を降りると、小さな石仏などが道端から顔をひょっこり覗かせていました。



これらは、大阪の実業家で、仏教美術を蒐集し、茶人でもあった細身古香庵が、泉大津の邸宅に置いていた石仏群でした。なお同氏のコレクションの多くは、仏教美術だけではなく、琳派などの江戸絵画でも定評のある京都の細見美術館へと引き継がれています。



竹林エリアは明月門エリアより遅れること約1年、2018年10月に新たにオープンした、山の斜面のみかん畑を囲むように整備されたエリアでした。明月門エリアよりも低い場所にあり、確かに下からギャラリー棟を眺めると、相当の高低差があることが分かりました。



ここで中核となる施設が、昭和30年代にみかん畑の道具小屋を整備して作られた化石窟でした。



古屋の中ではみかん栽培のための農機具類や、杉本の化石コレクションが展示されていて、とりわけ目立っていたのが約5億年前に遡る三葉虫の化石でした。



さらに化石窟への奥へと進むと、硝子の社に祀られた縄文時代後期の石棒が姿を現しました。いわゆる石剣への移行期に当たる祭祀用の用具で、水色のガラスの質感と独特なコントラストを描いていました。



小屋の裏手の磐座も見逃せません。樹木の根が露出しては、まるで大蛇のように大地へ食らいつく斜面の前には、1本の石棒が祀られていて、何やら太古の遺跡の気配を伝えるかのようでした。なお巨石は小屋を整備する途中、偶然に発見されたそうです。



化石窟を見学して小道を歩くと、竹林を背景に杉本自身の造形作品、「数理模型0010」が光学ガラスの上に立つ姿が目に飛び込んできました。先ほどの太古の磐座からは一転、さも宇宙と交信するアンテナのような近未来的な雰囲気が感じられるかもしれません。



かつて広島の中心部にあり、原爆投下時に被曝した宝塔の塔身も印象深い資料ではないでしょうか。宝塔は南北朝から室町時代に作られたとされていて、屋根の部分は熱線などにより粉砕されたと考えられているそうです。



一通り、竹林とみかん畑を見学し終えた後は、斜面の小道を登り、明月門エリアへと戻ることにしました。



しばらく進み、ちょうど海へと突き出た夏至光遥拝100メートルギャラリーの展望台の下を抜けて、建物の裏手に回ると、石造の鳥居と茶室「雨聴天」が見えてきました。



「雨聴天」は利休の待庵の写しで、春分と秋分の日の出の際は、太陽の光がにじり口より中へ差し込むように作られています。



そして屋根はかつて残されていた小屋のトタンを用いていて、雨が降る音がトタンに響く音を聴くことから、「雨聴天」と名付けられました。茶室の中へ入ることは叶いませんが、外から中の様子は伺うことは出来ました。



茶室横の鎌倉時代の鉄宝塔も興味深いのではないでしょうか。木造の宝塔を鉄で鋳造したもので、これ以外には現在、13世紀の国宝「西大寺鉄宝塔」と15世紀の重要文化財「日光山鉄宝塔」の2例しか確認されていません。極めて貴重な作品資料と言えそうです。



宝塔を観覧し、箱根町の「奈良屋」の別邸への門として使われていた門を潜ると、夏至光遥拝100メートルギャラリーの中からも見えた円形石舞台に辿り着きました。そして石舞台の一方が冬至光遥拝隧道の入口となっていて、中に入っては海の方へと歩くことが出来ました。



隧道の途中には採光のため光井戸があり、光学硝子の破片が敷き詰められていました。雨の日は、雨粒の一滴一滴が井戸に降り注ぐのを目で見られるそうです。



さらに光に誘われて先へ向かうと止め石があり、まさに目の前に海を望めました。写真では分かりにくいかもしれませんが、ちょうど開口部の上下で海と空が二分していて、まさに杉本の海景そのものでした。

最後に観覧に際しての注意点です。まずチケットは原則、ネットでの事前予約制です。専用サイトにて午前の部(10:00~13:00)、もしくは午後の部(13:30~16:30)のどちらかを予約する必要があります。なお入場人数を相当に制限しているのか、敷地内の人は疎らで、見学に際して並ぶことなどは一切ありませんでした。



敷地内はほぼ屋外で、屋内スペースはギャラリー棟や待合所程度に過ぎず、空調のあるスペースも限られています。全て歩いて見て回るため、見学時間は個人差があるものの、最低2時間は必要です。

また敷石や舗装されていない通路も多く、歩きやすい服装や靴でないと観覧するのもままなりません。高低差のある山道もあるので、簡単なトレッキングの感覚で準備されることをおすすめします。雨具等も必須です。外を歩くことを考えると、傘よりもレインコートの方が有用かもしれません。



飲食に関しては自販機は設置されていましたが、カフェや売店はありませんでした。ただ屋外のベンチでは持ち込んでの飲食が可能でした。とは言え、根府川駅には食事を調達出来るような店はないので、予め用意する必要がありそうです。



9月初旬のまだ暑い日に出向いたからか、歩いていると、終始、汗が吹き出ているのを感じました。夏は暑さ、そして冬は寒さ対策が必要です。



測候所の名が表すように、気象条件によっても鑑賞体験が大きく変わるのかもしれません。私が出向いた日は快晴でしたが、曇天や雨、それに季節によっても光の感覚はもちろん、景色が大きく違って見えるのではないでしょうか。

杉本は子どもの頃、江の浦を走る東海道線から見た景色が、海景シリーズの原点だと語っています。



「古代の人々がどのように自然を見ていたのか?」を同時体験出来るという江の浦測候所は、まさに杉本の美意識で全てが構築された、「アーティストとしての集大成」(解説より)を飾るに相応しい場所でした。

「小田原文化財団江之浦測候所」@odawara_af
休館:火、水、年末年始および臨時休館日
時間:午前の部(10:00~13:00)、午後の部(13:30~16:30) *事前予約制。各回定員制での入れ替え。
料金:一般3000円(ネット事前購入。税別。)。当日の場合は3500円(朝9時より電話予約。税別)。
住所:神奈川県小田原市江之浦362-1
交通:JR線根府川駅より無料送迎バス。JR線真鶴駅よりタクシー10分。(料金2000円程度)駐車場あり。
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小田原文化財団「江之浦測候所」への旅 前編:明月門エリア

小田原文化財団「江之浦測候所」へ行ってきました。

現代美術家の杉本博司は、自らのコレクションを公開すべく、2017年10月、神奈川県小田原市に建築施設や庭園からなる江之浦測候所をオープンしました。



最寄駅はJR東海道線の根府川駅でした。10時前の電車で駅に到着すると、淡い水色に彩られた木造の可愛らしい駅舎が出迎えてくれました。相模湾に面した同駅は見晴らしの良いことでも知られ、関東の駅百選に認定されています。



根府川駅からの徒歩アクセス(約50分)は現実的ではありません。よって事前に予約しておいた無料送迎バスで行くことにしました。午前のバスは9:45、10:05、10:30の3便あり、駅前から10:05の便に乗車すると、バスはカーブの多い山間の道をしばらく登って、約10分ほどで江之浦測候所の駐車場にたどり着きました。



江之浦測候所が位置するのは、箱根外輪山を背にした、相模灘を眼下にした急峻な山地で、駐車場からも海を一望することが出来ました。そして駐車場から坂道を上がると、右手に瓦屋根の古い門、明月門が姿を現しました。



これは室町時代、鎌倉の明月院の正門として建てられ、大正の関東大震災で半壊し、後に解体と保存、また移築されて、戦後に根津美術館の正門として使われた建物でした。2006年の根津美術館の建て替えの際、小田原文化財団へと寄贈され、この地に再建されたそうです。江之浦測候所のシンボルと言えるかもしれません。



ただ受付は明月門にはありませんでした。係の方の誘導により門を横目に進むと、四方をガラスで囲んだ待合所に案内されました。中央には樹齢一千年を超える屋久杉のテーブルが置かれ、窓の外からは箱根外輪山を見渡すことが出来ました。



このスペースが事実上の受付でした。敷地内の見学は原則、自由ですが、入場の際には一度、待合所にて係の方から注意事項などの説明を聞く必要があります。そこでマップを頂戴し、立ち入り禁止エリアなどを説明していただいた後、いよいよ見学となりました。



江之浦測候所のエリアは大きく分けて2つ存在します。1つは待合室やギャラリー棟や光学硝子舞台、茶室からなる明月門エリアです。そしてその先に榊の森、みかん道、化石窟、竹林の小道からなる竹林エリアが続いていました。よって順路の通り、明月門エリアより見学することにしました。



まず待合所の目の前に建つのが、夏至光遥拝100メートルギャラリーと名づけられた、測候所唯一のギャラリー棟でした。ちょうど海抜100メートルの位置に、全長100メートルからなる建物で、ギャラリーの先端部は海に突き出すような展望スペースとなっていました。そして夏至の朝、海から昇る太陽の光がこの建物の中を透過するように設計されていました。



大谷石の壁が特徴的な建物の中には、杉本の海景シリーズの作品が展示されていて、一方のガラス壁から外を見やると円形石舞台と、苔庭に据えた三角形の石が設置されていました。



こうした石こそ測候所の要と言えるかもしれません。実際のところ庭園内には、飛鳥時代に遡る法隆寺の若草伽藍の礎石や、天平時代の元興寺の礎石、それに室町時代の渡月橋の礎石などが、さも空間を引き締めるかのように随所に置かれていました。



堆く石の積まれた三角塚も目を引くのではないでしょうか。これは根府川石を組む過程で古墳のような空間が現れたことから、実際に古墳石室に使われた石と石棺の一部を収めたもので、まるで明日香の石舞台古墳を連想させるかのようでした。



石舞台は能舞台の寸法を基本として設計されていて、石材は当地を開発した際に出土した転石を用いていました。なおそもそも同地は強固な岩盤で支えられていて、近隣には根府川石丁場など、石を切り出すための丁場が今も残されているそうです。なおこの石舞台の石橋の軸線は、春分秋分における朝日の光が抜ける線に合わせられていました。



夏至光遥拝100メートルギャラリーと並び、明月門エリアで象徴的な存在であるのが、光学硝子舞台と古代ローマ円形劇場写し観客席でした。舞台は冬至の朝の光を貫く冬至光遥拝隧道と並行に設置され、檜の懸造りの上に光学硝子が敷き詰められていました。まさに海に突き出さんとばかりの斜面に位置していて、さながら空中舞台とも言えるかもしれません。



その舞台を囲むのが、イタリアのラツィオ州にあるフェレント古代ローマ円形劇場遺跡を再現した観客席でした。ちょうど観客席から舞台を眺めると、立ち位置によっては水に浮かんでいるようにも見えなくなく、それこそ杉本の海景シリーズと重なって思えてなりませんでした。



また冬至光遥拝隧道の上は、止め石の場所まで歩いて進むことも可能でした。何せ高い位置にあり、手すりも一切ないため、足元もすくみましたが、先から広がる海はまさに絶景と言えるのではないでしょうか。なおこの止め石は敷地内の随所にありましたが、いずれも立ち入り禁止箇所を示す目印として使われていました。



円形劇場への入口にはイタリアの大理石のレリーフがはめ込まれていました。これは12~13世紀頃に作られた、旧約聖書のエデンの園にあった生命の樹を表現したもので、かつてはヴェネツィアの商館のファサードに掲げられていたそうです。



測候所の名が示すように、夏至、冬至、春分、秋分と、それぞれの光の在り処や位置と、敷地内の建物なり施設が全て関係して築かれているとしても良いのかもしれません。



眩しいまでの光を感じつつ、古い社か遺跡に迷い込んだかのような明月院エリアをしばらく散策した後は、階段を降り、工事現場用の単管で組まれた藤棚をくぐり抜けて、竹林エリアへと足を伸ばしてみました。



「後編:竹林エリア」へと続きます。

「小田原文化財団江之浦測候所」@odawara_af
休館:火、水、年末年始および臨時休館日
時間:午前の部(10:00~13:00)、午後の部(13:30~16:30) *事前予約制。各回定員制での入れ替え。
料金:一般3000円(ネット事前購入。税別。)。当日の場合は3500円(朝9時より電話予約。税別)。
住所:神奈川県小田原市江之浦362-1
交通:JR線根府川駅より無料送迎バス。JR線真鶴駅よりタクシー10分。(料金2000円程度)駐車場あり。
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「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」 ポーラ美術館

ポーラ美術館
「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」
2019/8/10~12/1



ポーラ美術館で開催中の「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」を見てきました。

印象派絵画を筆頭に、彫刻、東洋陶磁、ガラス工芸など幅広いコレクションを有するポーラ美術館が、2002年の開館以来、初めて現代美術とのコラボレーション展を実現させました。

それが「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」展で、クールベ、モネ、セザンヌの他、東洋陶磁などの同館のコレクションと、国内外の12組の現代美術家の作品が合わせて公開されていました。

カランカランと鳴り響く透明感のある音が耳に聞こえてきました。それがフランスのアーティスト、セレスト・ブルシエ=ムジュノの「クリナメンv.2」で、たくさんの白いボウルが円形のプールの上に漂ってはぶつかる音でした。


クロード・モネ「睡蓮」 1907年 ポーラ美術館

ボウルは水の流れにより常に動いていて、どこかで互いに絶え間なく衝突しては、偶発的に音を奏でていました。そしてこの作品とともに展示されたのがモネの「睡蓮」で、まさに水にたゆたい、複雑な光を放つ睡蓮が、「クリナメンv.2」の音の移ろいに響き合うかのようでした。


石塚元太良×ルネ・マグリット 「偽る風景」

アラスカを撮影した石塚元太良の写真も興味深い作品ではないでしょうか。カヌーで同地を探検して見つけた氷河の風景は、時に実景とは思えないほど絵画的で、確かに「超現実」(解説より)的にも見えました。


右:ルネ・マグリット「前兆」 1935年 ポーラ美術館

そして隣り合うマグリットの「前兆」と見比べても、どちらがリアルな光景で絵画なのか、にわかには判別し難い面があるかもしれません。その絶妙なズレに面白さを感じました。


ヴォルフガング・ティルマンス×エドゥアール・マネ 「世界を見つける」

現代美術と西洋絵画の意外な邂逅とも呼べるのが、写真家のヴォルフガング・ティルマンスと、エドゥアール・マネによる「世界を見つける」と題した展示でした。


ヴォルフガング・ティルマンス×エドゥアール・マネ 「世界を見つける」

そこでは日常の何気ない光景を断片的に捉えたティルマンスの写真と、寓話の場面を組み込んだマネの「サラマンカの学生たち」などの絵画が入り混じっていて、不思議と1つの物語を紡ぐかのような空間を作り上げていました。ひょっとすると「草上の昼食」において裸婦像を人間として表したマネの革新性と、新たな視点で世界を見つめようとするティスマンスのスタンスに何らかの共通点が見出せるのかもしれません。


アリシア・クワデ×サルバドール・ダリ 「鏡の向こう側」 *作品タイトルは「まなざしの間で」

まさに視覚を揺さぶられるとはこのことを指すのかもしれません。ポーランド生まれのアーティスト、アリシア・クワデは、ガラスや金属フレーム、それに電球などを用いた「まなざしの間で」を展示室の中央に設置していて、その向こうにはダリの絵画、「姿の見えない眠る人、馬、獅子」が掲げられていました。一見するところ、無機的なインスタレーションとダリの作品に関係性は見出せないかもしれません。


アリシア・クワデ×サルバドール・ダリ 「鏡の向こう側」

しばらく「まなざしの間で」の周りを歩いていると前に開ける景色に驚きました。とするのも、作品にはガラスと鏡が組み合わされているため、時に自分の姿が写り込んだり、向こうが見通せたりと、様々に変化して見えるからでした。そして幾つかの立ち位置からでは、本来あるはずのダリの絵画がなくなったり、2枚あるように見えることもありました。


サルバドール・ダリ「姿の見えない眠る人、馬、獅子」 1930年 ポーラ美術館

そうしたまるで迷宮の中を彷徨う感覚こそ、ダリの絵画世界にも近い面があるのではないでしょうか。鏡像と実像で変化する景色にしばし見入りました。


アブデルカデル・バンシャンマ×ギュスターヴ・クールベ 「神秘の大地」

フランスの作家、アブデルカデル・バンシャンマは、展示室全体をダイナミックに覆うドローイングの壁画を制作しました。いずれもモノクロームで大波、あるいは大地や地層が隆起するような大胆な表現を用いていて、一部はパネル状の立体としても展開していました。


ギュスターヴ・クールベ「岩のある風景」 ポーラ美術館

そのバンシャンマが敬愛するのがギュスターヴ・クールベで、同じく岩山を力強い筆触で描いた「岩のある風景」が展示されていました。ちょうどドローイングの中に掲げられていたからか、さも画中の世界が壁画に広がっていくような錯覚にもとらわれるかもしれません。


渡辺豊×ポール・セザンヌ、パブロ・ピカソ、レオナール・フジタ 「ポートレート」

古くから多くの画家らの表現してきた肖像、すなわちポートレートをテーマとした展示も充実していました。ここではピカソ、セザンヌ、フジタらの描いた絵画とともに、渡辺豊がモデルたちの名前をネット上に求め、真偽の混じるイメージから表したポートレートを並べていました。どれもがキュビスムを思わせる画風で、元の作品との関係を追うのも面白いかもしれません。


オリヴァー・ビア×東洋陶磁 「声のかたち」

イギリスのオリヴァー・ビアは、ポーラ美術館の陶器コレクションを用いて、オーケストラのような音響空間を築き上げました。ステージ上には、古代アナトリアの壺や古代ギリシャのアンフォラ、そしてコンゴの仮面や日本の陶磁、さらにはイギリスの砲弾などが並べられていて、それぞれの器にマイクを差し込み、内部で反響した音を増幅させては、スピーカーから空間全体に響かせていました。


オリヴァー・ビア×東洋陶磁 「声のかたち」

それこそ楽器が固有の音を持つように、個々の器も独特な音を奏でていて、さも器自身に音が宿っているかのようでした。音と器に着目した他にはないアプローチではないでしょうか。

さて一連の「シンコペーション」展は、美術館内だけで完結しているわけではありません。美術館の外へ連なる森林、「森の遊歩道」も会場の1つでした。なお入口は一度、美術館のエントランスを出て左手に進み、駐車場の横に位置します。展示室から直接の出入りは出来ません。(再入場が可能です。)



美術館の建物を横目に、屋外彫刻などを鑑賞しながら遊歩道を歩くと、いつしか木漏れ日の差し込む鬱蒼とした森の中に入っていました。



するとどこからともかく軽やかなフルートの調べが奏でられていることに気がつきました。しかし周囲を見回しても音のありかはよく分かりませんでした。



遊歩道の最奥部に音の主がありました。それがイギリスのスーザン・フィリップスの「ウインド・ウッド」で、ラヴェルの「シェヘラザード」より魔法の笛の旋律を切り取った音を、森の樹木に11個のスピーカーから流していました。その音色は、鳥のさえずりや小川の流れる音、また風が樹木を揺らす音などを一体化し、あたかも森の精霊が声を発しているかのような幻想的な空間を作り上げていました。

まさに緑に囲まれ、森の中に位置したポーラ美術館でなければ叶わないような展示ではないでしょうか。何度か深呼吸をしながら、しばし時間を忘れては、美しい音色に聞き惚れました。

タイトルの「シンコペーション」とは、「基準となるリズムの拍をずらして、楽曲に変化を与える音楽の手法」(解説より)を意味します。それゆえか音楽的な要素を盛り込んだ作品が目立っていました。視覚と聴覚の両面で楽しめる展覧会といえるかもしれません。



タイミング良く晴天の日に鑑賞することが出来ましたが、荒天時は「森の遊歩道」を閉鎖する場合があるそうです。また高低差のある地形でもあるため、歩きやすい靴や服装で出かけることをおすすめします。



なお台風19号により、一時臨時休館していたポーラ美術館ですが、10月14日より開館しました。「森の遊歩道」のインスタレーションも通常通り観覧出来ます。

しかし箱根地区は、土砂災害により交通アクセスが寸断され、箱根登山鉄道が全線不通になるなど、大きな影響が出ています。全て復旧するには相当の時間がかかると思われます。


10月17日現在、箱根湯本からポーラ美術館を結ぶ直通バスも運休中です。美術館へのアクセス情報については同館の公式サイトでも発表されています。お出かけの際は十分にご注意下さい。

台風19号の影響による交通アクセス状況のお知らせ(ポーラ美術館)

一部を除き撮影も可能です。12月1日まで開催されています。おすすめします。

「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」 ポーラ美術館@polamuseumofart
会期:2019年8月10日(土)~12月1日(日)
休館:会期中無休。
時間:9:00~17:00 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1800(1500)円、65歳以上1600(1500)円、大学・高校生1300(1100)円、中学生以下無料。
 *( )内は15名以上の団体料金。
住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
交通:箱根登山鉄道強羅駅より観光施設めぐりバス「湿生花園」行きに乗車、「ポーラ美術館」下車すぐ。小田急線・箱根登山鉄道箱根湯本駅より箱根登山バス「ポーラ美術館」(桃源台線)行きに乗車、「ポーラ美術館」下車すぐ。(所要時間約40分)有料駐車場(1日500円)あり。
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「桃源郷展―蕪村・呉春が夢みたもの」 大倉集古館

大倉集古館
「桃源郷展―蕪村・呉春が夢みたもの」 
2019/9/12~11/17



大倉集古館で開催中の「桃源郷展―蕪村・呉春が夢みたもの」を見てきました。

2014年より約5年半、増改築工事のため休館していた大倉集古館が、このほど工事を終え、9月12日に全面リニューアルオープンしました。

それを期して開催されているのが「桃源郷展―蕪村・呉春が夢みたもの」で、吉祥主題として知られる桃のモチーフの絵画を中心に、国宝の「普賢菩薩騎象像」や横山大観の「夜桜」など、同館の誇る名品が一同に出展されていました。


呉春「武陵桃源図屏風」(左隻部分) 江戸時代・18世紀 大倉集古館

新たに収蔵された呉春の「武陵桃源図屏風」が初めて一般に公開されました。おそらくは呉春が、師の蕪村が晩年に取り組んだ「武陵桃源」の主題に倣ったとされる作品で、右には満開の桃の木の下、漁夫の乗った小舟が渓流を進み行き、左には仙人らしき老人らの集う光景などが、柔らかでかつ細かな描線で表されていました。

ここで目を引くのが、小舟の上の事物、特に籠の精緻極まりない描写で、目地の一つ一つが浮き上がるかのように描かれていました。また桃の花の咲き誇る点描のような技法は、さも新印象派絵画を目の当たりにするかのようで、淡い色彩が美しく広がる様子を見ることが出来ました。

また随所にいる鶏や犬などの動物も可愛らしいのではないでしょうか。まさに桃源郷の織りなした、長閑でかつ情緒的な光景に見入りました。


趙伯駒(款)「武陵桃源図巻」(部分) 明末~清初・17世紀 林原美術館

この「武陵桃源」に関した一連の作品も充実していました。中でも印象に深いのは南宋・趙伯駒の「武陵桃源図巻」で、まるで地層が大きく隆起して屈曲した山々を背景に、細かな筆のよる小さな人物などが俯瞰するように描かれていました。ともかく山々を象る緑や青の色彩が鮮やかで、どことなくエキゾチックにも感じられるかもしれません。なお本作は明末清初期に蘇州で作られた「蘇州欠」と呼ばれた、良質な贋作、いわば複製品として見做されているそうです。

この他では明・呂紀の「鶴桃図」と沈南頻の「双寿図」にも惹かれました。また絵画だけでなく、桃をあしらった景徳鎮の「藍釉粉彩桃樹木文瓶」など工芸にも優品がありました。出品総数は約30件(展示替えあり)と必ずしも多くありませんが、これほど桃に囲まれる展覧会も滅多にないかもしれません。



さて改めて新装の大倉集古館です。まず国の登録有形文化財の外観は変わりません。しかし当初の位置をずらしては地下室を増築し、免震化工事も実施され、最新の設備を伴う施設へと生まれ変わりました。バリアフリーの観点からエレベーターも新設されました。



展示室は以前と同様、1階と2階にあり、地下フロアにはショップとお手洗い、会議室、映像資料コーナー、コインロッカーが設けられました。荷物が多い場合は先に地下へ行き、ロッカーに預けておくのが良いかもしれません。



低反射ガラスのケースが導入され、照明等も一新されたのか、作品自体も以前より映えて見えました。見え方は明らかに違います。



最後に展示替えの情報です。会期中、一部の作品が入れ替わります。

「桃源郷展―蕪村・呉春が夢みたもの」出展リスト(PDF)
前期:9月12日〜10月14日
後期:10月16日〜11月17日

10月16日より後期展示に入ります。(本エントリは前期展示の感想です。)以降の入れ替えはありません。


大倉集古館2階テラスより「The Okura Tokyo」

大倉集古館の展示を鑑賞した後は、4年半の建て替えを終え、9月12日にリニューアル開業したホテルオークラ東京本館こと「The Okura Tokyo」のプレステージタワーへと足を運んでみました。



超高層ビルの建物こそかつての趣きこそないものの、谷口吉郎の設計によるロビーは寸分違わぬデザインで復元されていて、さもタイムスリップしてはかつての本館へと迷い込んだかのようでした。



リニューアルを手掛けたのは谷口の子、谷口吉生で、お馴染みの切子玉の型の照明や、テーブルなども、旧来のものを再現して設置していました。



建物の見学を兼ねて出かけるのも良いかもしれません。11月17日まで開催されています。

「桃源郷展―蕪村・呉春が夢みたもの」 大倉集古館
会期:2019年9月12日(木)~11月17日(日)
休館:9/17(火)、9/24(火)、9/30(月)、10/7(月)、10/15(火)、10/21(月)、10/28(月)、11/5(火)、11/11(月)。
時間:10:00~17:00 (入館は16:30まで。)
料金:一般1300円、 大学生・高校生1000円、中学生以下無料。
 *20名以上の団体は100円引。
住所:港区虎ノ門2-10-3 The Okura Tokyo前
交通:東京メトロ南北線六本木一丁目駅改札口より徒歩5分。東京メトロ日比谷線神谷町駅4b出口より徒歩7分。
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台風19号(ハギビス)に伴う東京・神奈川・埼玉・千葉の「美術館・博物館」休館情報

大型で非常に強い勢力の台風19号(ハギビス)が東海と関東地方に接近し、私の地元の千葉県でも11日夜から強い雨が断続的に降り続いています。今後、各地でさらなる暴風雨に見舞われることが予想されます。

10月12日(土)17時現在、台風のために休館している、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の主な美術館・博物館は以下の通りです。*13日(日)17時情報更新

【上野】

・上野の森美術館:12日~13日。14日から開館。
 http://www.ueno-mori.org

・国立科学博物館:12日〜13日13時から開館。
 http://www.kahaku.go.jp

・国立西洋美術館:12日~13日。14日から開館。
 http://www.nmwa.go.jp

・東京藝術大学大学美術館:12日。13日から開館。
 https://www.geidai.ac.jp/museum/

・東京国立博物館:12日~13日13時から開館。
 http://www.tnm.jp

・東京都美術館:12日~13日。14日から開館。
 http://www.tobikan.jp

・弥生美術館・竹久夢二美術館:12日~13日。14日から開館。
 http://www.yayoi-yumeji-museum.jp


【丸の内・日本橋・新橋】

・出光美術館:12日~13日。14日から開館。
 http://idemitsu-museum.or.jp

・東京国立近代美術館:12日~13日。14日から開館。(美術館・工芸館共通)
 http://www.momat.go.jp

・東京ステーションギャラリー:12日~13日14時より開館。
 http://www.ejrcf.or.jp/gallery/

・パナソニック汐留ミュージアム:12日~13日。14日から開館。
 https://panasonic.co.jp/es/museum/

・三井記念美術館:12日。13日11時から開館。
 http://www.mitsui-museum.jp

・三菱一号館美術館:展示替え期間につき休館中。
 http://mimt.jp

・ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション:12日~13日。14日から開館。
 https://www.yamasa.com/musee/

・アーティゾン美術館:美術館建替工事のため休館中
 https://www.artizon.museum


【表参道・青山】

・太田記念美術館:12日~13日。14日から開館。
 http://www.ukiyoe-ota-muse.jp

・岡本太郎記念館:12日。13日から開館。
 http://www.taro-okamoto.or.jp

・根津美術館:12日〜13日。14日から開館。
 http://www.nezu-muse.or.jp

・ワタリウム美術館:12日。13日より開館。
 http://www.watarium.co.jp


【新宿・渋谷】

・NTTインターコミュニケーション・センター :12日〜13日。14日から開館予定。
 http://www.ntticc.or.jp/ja/

・國學院大學博物館:12日~13日。14日から開館。
 http://museum.kokugakuin.ac.jp

・渋谷区立松濤美術館:12日~13日12時から開館。
 http://www.shoto-museum.jp

・東京オペラシティ アートギャラリー:展示替え期間のため休館中。
 (ギャラリーショップ「gallery 5」は、12日~13日を臨時休業。)
 https://www.operacity.jp/ag/

・東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館:移転準備のため休館中
 http://www.sjnk-museum.org

・文化学園服飾博物館:12日。13日、14日は通常休館日のため15日から開館。
 http://museum.bunka.ac.jp

・Bunkamura ザ・ミュージアム:12日~13日13時から開館。
 http://www.bunkamura.co.jp/museum/

・日本民藝館:12日。13日12時〜13時頃に開館。
 http://www.mingeikan.or.jp

・戸栗美術館:12日。13日13時から開館。
 http://www.toguri-museum.or.jp


【六本木・虎ノ門】

・菊池寛実記念 智美術館:12日~13日。14日から開館。
 http://www.musee-tomo.or.jp

・国立新美術館:12日~13日。14日から開館。
 http://www.nact.jp

・サントリー美術館:12日〜13日14時以降開館。
 https://www.suntory.co.jp/sma/

・21_21 DESIGN SIGHT:12日〜13日15時から開館。
 http://www.2121designsight.jp

・森アーツセンターギャラリー:12日〜13日14時から開館。
 https://macg.roppongihills.com/jp/

・森美術館:12日〜13日14時から開館。
 https://www.mori.art.museum/jp/

・泉屋博古館分館:12日〜13日13時から開館。
 https://www.sen-oku.or.jp/tokyo/

・大倉集古館:12日〜13日。14日から開館。
 https://www.shukokan.org


【恵比寿・白金・目黒・品川・台場】

・東京都写真美術館:12日~13日。14日から開館。
 http://topmuseum.jp

・日本科学未来館:12日〜13日13時から開館。
 http://www.miraikan.jst.go.jp

・山種美術館:12日〜13日。14日から開館。
 http://www.yamatane-museum.jp

・東京都庭園美術館:12日〜13日。14日から開館。
 http://www.teien-art-museum.ne.jp

・松岡美術館:修復調査、設備点検のため休館中。
 http://www.matsuoka-museum.jp

・原美術館:12日~13日。14日から開館。
 http://www.haramuseum.or.jp/jp/hara/

・畠山記念館:施設改築工事のため長期休館中。
 http://www.ebara.co.jp/csr/hatakeyama/

・目黒区美術館:12日~13日13時より開館。
 http://mmat.jp


【両国・清澄白河・駒込】

・江戸東京博物館:12日~13日13時から開館。
 https://www.edo-tokyo-museum.or.jp

・すみだ北斎美術館:12日~13日。14日から開館。
 http://hokusai-museum.jp

・たばこと塩の博物館:12日。13日も臨時休館の可能性あり。
 https://www.jti.co.jp/Culture/museum/index.html

・刀剣博物館:12日~13日。14日から開館。
 https://www.touken.or.jp/museum/
 
・東洋文庫ミュージアム:12日~13日。14日から開館。
 http://www.toyo-bunko.or.jp/museum/

・東京都現代美術館:12日~13日13時から開館。
 http://www.mot-art-museum.jp


【池袋・目白・板橋・練馬】

・永青文庫:展示替え期間のため休館
 http://www.eiseibunko.com

・古代オリエント博物館:12日。13日も臨時休館の可能性あり。
 http://aom-tokyo.com

・ちひろ美術館・東京:12日。13日から開館。
 https://chihiro.jp/tokyo/

・練馬区立美術館:12日~13日。14日から開館。
 https://www.neribun.or.jp/museum.html

・講談社 野間記念館:建て替えのため休館中。
 http://www.nomamuseum.kodansha.co.jp

・板橋区立美術館:12日~13日。14日は展示替え休館のため15日から開館。
 http://www.itabashiartmuseum.jp


【世田谷】

・五島美術館:12日~13日。14日から開館予定。(変更の場合あり)
 http://www.gotoh-museum.or.jp

・静嘉堂文庫美術館:12日~13日。14日から開館。
 http://www.seikado.or.jp

・世田谷美術館:12日~13日。14日から開館。
 https://www.setagayaartmuseum.or.jp

・世田谷文学館:12日〜13日13時から開館。
 https://www.setabun.or.jp


【武蔵野・多摩】

・多摩美術大学大学美術館:12日〜13日12時から開館。
 http://www.tamabi.ac.jp/museum/

・東京富士美術館:12日〜13日。14日から開館予定。
 http://www.fujibi.or.jp

・町田市立国際版画美術館:12日〜13日。14日から開館予定。
 http://hanga-museum.jp

・三鷹市市民ギャラリー:12日~13日。14日から開館。
 http://mitaka-sportsandculture.or.jp/gallery/

・武蔵野市立吉祥寺美術館:12日~13日。14時から開館。
 http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/

・府中市美術館:12日。13日から開館。
 https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/

・八王子夢美術館:12日。13日から開館。
 https://www.yumebi.com


【神奈川】

・馬の博物館:12日~13日。14日から開館予定。
 http://www.bajibunka.jrao.ne.jp/uma/

・岡田美術館:12日〜16日。17日以降の開館については改めてお知らせ。
 http://www.okada-museum.com

・神奈川県民ホールギャラリー:12日。
 http://www.kanakengallery.com

・神奈川県立金沢文庫:12日〜13日。14日から開館予定。
 https://www.planet.pref.kanagawa.jp/city/kanazawa.htm

・神奈川県立近代美術館葉山館・鎌倉別館:12日~13日。14日から開館予定。
 http://www.moma.pref.kanagawa.jp

・神奈川県立歴史博物館:12日~13日。14日から開館予定。
 http://ch.kanagawa-museum.jp

・川崎市岡本太郎美術館:12日~13日。14日より開館予定。
 http://www.taromuseum.jp/

・川崎市民ミュージアム:台風による被害のため当面休館。
 https://www.kawasaki-museum.jp

・そごう美術館:12日~13日14時より開館予定。(交通状況により変更あり。)
 https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/

・茅ヶ崎市美術館:12日。13日から開館。
 http://www.chigasaki-museum.jp

・平塚市美術館:12日正午閉館。13日から開館。
 http://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/art-muse/

・藤沢市アートスペース:12日〜13日。14日から開館予定。
 http://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/bunka/FAS

・ポーラ美術館:12日〜13日。14日から開館。
 http://www.polamuseum.or.jp

・横須賀美術館:12日〜13日。14日から開館。
 http://www.yokosuka-moa.jp

・横浜市民ギャラリーあざみ野:12日〜13日。14日から開館予定。
 https://artazamino.jp

・横浜美術館:12日~13日。14日から開館。
 http://yokohama.art.museum

・BankArt1929:12日。13日よりBankART SILKはオープン、その他は休館。
 http://www.bankart1929.com


【埼玉】

・川口市立アートギャラリー・アトリア:12日。13日から開館。
 http://www.atlia.jp

・川越市立美術館:12日。13日から開館。
 https://www.city.kawagoe.saitama.jp/artmuseum/

・河鍋暁斎記念美術館:12日〜13日。14日以降開館予定。
 http://kyosai-museum.jp/hp/top.html

・原爆の図丸木美術館
 http://www.aya.or.jp/~marukimsn/

・埼玉県立近代美術館:12日〜13日。14日から開館。
 http://www.pref.spec.ed.jp/momas/

・埼玉県立歴史と民俗の博物館:12日〜13日。14日から開館予定。
 http://www.saitama-rekimin.spec.ed.jp

・鉄道博物館:12日〜13日。14日から開館予定。
 http://www.railway-museum.jp


【千葉】

・市原市湖畔美術館:12日〜14日。15日は通常休館日のため16日から開館予定。
 http://lsm-ichihara.jp/

・佐倉市立美術館:12日。13日から開館。
 http://www.city.sakura.lg.jp/sakura/museum/

・千葉県立美術館:12日〜13日13時から開館。
 https://www.chiba-muse.or.jp/ART/

・千葉市美術館:12日〜13日13時から開館。
 http://www.ccma-net.jp

・DIC川村記念美術館:12日~15日。16日以降の開館については決定次第、改めてお知らせ。
 http://kawamura-museum.dic.co.jp

・成田山書道博物館:12日〜13日。14日以降の開館については改めてお知らせ。
 http://www.naritashodo.jp

・ホキ美術館:12日。13日から開館。
 https://www.hoki-museum.jp

・国立歴史民俗博物館:12日〜14日。15日は通常休館日のため16日から開館予定。
 https://www.rekihaku.ac.jp


12日はほぼ全ての美術館が休館し、13日も休館する美術館が多く、開館する場合も開館時間の変更が行われます。

また今後、台風の進路、あるいは被害によっては状況が大きく変化する可能性もあります。詳しくは各館の公式サイトをご参照下さい。(13日17時現在。随時更新予定)
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「没後90年記念 岸田劉生展」 東京ステーションギャラリー

東京ステーションギャラリー
「没後90年記念 岸田劉生展」 
2019/8/31~10/20



東京ステーションギャラリーで開催中の「没後90年記念 岸田劉生展」を見て来ました。

今年没後90年を迎えた画家、岸田劉生は、西洋の北方ルネサンス絵画や中国の宋元画などに影響を受けつつも、常に「新たな道」(解説より)を探求しながら、独自の画業を築き上げました。

その劉生の初期より晩年へ至る約150点(展示替えあり)の作品が、東京ステーションギャラリーへまとめてやって来ました。会場では第1章「第二の誕生まで」から第6章の「新しい余の道へ」まで、ほぼ年代順に作品が並んでいて、劉生の変化する画風を辿ることが出来ました。

冒頭は若き劉生が身近な戸外を描いた風景画で、「銀座数寄屋橋」では、雨に濡れた銀座の街角などを落ち着いた筆触で表していました。そもそも東京で実業家の父を持つ劉生は銀座の生まれで、牧師を志そうとキリスト教に入る一方、17歳にして黒田清輝の主宰する白馬会にて学びながら、洋画を習得しました。

しかし20歳を過ぎるとキリスト教を離れ、画家としての道を歩みはじめるようになりました。その頃、影響を与えたのが、雑誌「白樺」が紹介したゴッホやゴーギャンらの後期印象派で、劉生もオレンジ色の色面が鮮やかな「虎ノ門風景」など、印象派を思わせる作品を描きました。



後期印象派へのシンパシーは長く続きませんでした。「虎ノ門風景」を表した翌年の1913年には、デューラーやファン・エイクらの北方ルネサンスの画家へ傾倒し、自らの画風を確立すべく細密でかつ写実的な表現に勤しみました。「画家の妻」は、文字通り妻の蓁(しげる)をモデルとした一枚で、アーチ状のフレームの中に、横を向く妻の肖像を描いていました。タイトルもサインも英文で示され、構図しかり、明らかに西洋の古典絵画の影響が見受けられました。

そして「劉生の首狩り」とも称された劉生は、妻のみならず、白樺派の武者小路実篤や、草土社を結成した画家の椿貞雄など、数多くの肖像画を描きました。確かに会場でも目立っていて、自画像や麗子像しかり、これほど肖像画の多い画家の回顧展も珍しいかもしれません。


岸田劉生「道路と土手と塀(切通之写生)」 重要文化財 1915年11月5日 東京国立近代美術館

1913年、代々木へ転居した劉生は戸外で写生を行うと、風景画を制作し、1915年には劉生画でも特に有名な「道路と土手と塀(切通之写生)」を描きました。まさに代々木を舞台とした作品で、赤土が露出し、左手に真新しい白い壁の連なる坂道を、まるで人間の皮膚のように生々しいまでの色彩と細かな筆致で表しました。

ここで面白いのが「道路と土手と塀(切通之写生)」と、20日前に描いた「代々木附近」が隣り合わせに展示されていたことでした。前者は坂道を下から見上げるように描いているのに対し、後者では同じ地点を横から俯瞰した構図で捉えていて、手前には人物の姿も見ることが出来ました。また「道路と土手と塀(切通之写生)」では2本の影としてしか示されていない電柱も描きこまれていました。この2点を見比べることで、作品の舞台なり、位置関係がよりリアルに感じられるかもしれません。


岸田劉生「壺の上に林檎が載って在る」 1916年11月3日 東京国立近代美術館

1916年に肺病を患った劉生は戸外で写生することが叶わず、屋内で静物画描くようになりました。「壺の上に林檎が載って在る」は、バーナード・リーチの所有していた壺を描いた一枚で、やや光沢感を伴った壺の陶の質感を丹念に表現していました。

同じく静物画では「静物(手を描き入れし静物)」も興味深い作品ではないでしょうか。右に青、左に赤いカーテンの吊るされた空間の中、白い杯の上などには林檎が置かれる光景を表していて、まるで宗教画のような静謐な趣きをたたえていました。なお本作は当初、右から手を添える姿を描いていたものの、「悪趣味」と称されたことから、手の部分を消してしまったそうです。どことなくシュールにも感じられました。


岸田劉生「麗子坐像」 1919年8月23日 ポーラ美術館

やはりハイライトは、最愛の娘、麗子を描いた一連の肖像画にあるのかもしれません。「麗子坐像」は赤と黄色の絞りの着物をまとい、やや不安そうな面持ちで目を落としながら座る麗子の姿を捉えていて、絞りの細かな紋様などを執拗とまで言えるほど精緻に表していました。また「麗子八歳洋装之図」はタータンチェックのワンピース姿の麗子を描いていて、リラックスしているのか、楽しげににっこりと笑っていました。

東洋美術との関係も劉生の画業を語る上で見過ごせません。東洋美術にも開眼した劉生は、美術品を収集しては、中国の宋元画にも倣うような日本画の制作をはじめるようになりました。とはいえ、後に鎌倉へと移住すると洋画も描き、また1929年には満州に赴くと、さも初期に影響されたゴーギャンとも思えるような色彩に鮮やかな風景画などを制作しました。

「満鉄総裁邸の庭」は劉生の新たな境地を指し示すような作品と言えはしないでしょうか。青い空を藍色の海を望み、樹木などが朱や黄色などの秋色に染まった満鉄総裁の庭を表したもので、初期のポスト印象派風を思わせながらも、色や筆触はより大胆で、どこか表現主義を伺うような傾向も見えなくはありません。そして劉生は満州から帰国した同年、滞在先の山口で病に倒れ、38歳で若さで世を去りました。

劉生が移り住んだ鵠沼での風景画、とりわけ「麦二三寸」に魅せられました。広く澄み渡るような青空の下、麦畑の傍らで赤い着物姿の麗子が立つ光景を表していて、全ては穏やかでかつ長閑で、まさに何気ない日常で得られるような喜びが満ちているかのようでした。決して派手な作品ではないかもしれませんが、劉生の麗子に対する愛情も感じられるかもしれません。

タイミング良く平日の夕方に観覧して来ましたが、館内は思いの外に賑わっていました。なお会期中の展示替えが9月24日を挟んで行われました。以降、会期末までの作品の入れ替えはありません。

[没後90年記念 岸田劉生展 巡回スケジュール]
山口県立美術館:2019年11月2日(土)~12月22日(日)
名古屋市美術館:2020年1月8日(水)~3月1日(日)

解説に「天才」とありましたが、常に次を見据え、同じ地点に留まろうとしない劉生の画業を追っていくと、むしろ新たな表現に対して貪欲に向かっていくような努力家という印象を受けました。

それこそ名作の「道路と土手と塀(切通之写生)」や「麗子坐像」など、劉生の作品自体を見る機会は必ずしも少なくはありません。ただ今回ほどのスケールでかつ網羅的に劉生を回顧した展覧会は、少なくとも東京ではあまりなかったのではないでしょうか。

公式サイトに「今後しばらく出会えないような、珠玉の劉生展を目指しました」と記載されていましたが、あながち誇張とは思えません。質量ともに申し分ありませんでした。



10月20日まで開催されています。おすすめします。

「没後90年記念 岸田劉生展」 東京ステーションギャラリー
会期:2019年8月31日(土)~10月20日(日)
休館:月曜日。但し9月16日、9月23日、10月14日は開館。9月17日(火)、9月24日(火)。
料金:一般1100(800)円、高校・大学生900(600)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
時間:10:00~18:00。
 *毎週金曜日は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
住所:千代田区丸の内1-9-1
交通:JR線東京駅丸の内北口改札前。(東京駅丸の内駅舎内)
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「士 サムライ―天下太平を支えた人びと―」 江戸東京博物館

江戸東京博物館
「士 サムライ―天下太平を支えた人びと―」
2019/9/14~11/4



江戸東京博物館で開催中の「士 サムライ―天下太平を支えた人びと―」のプレス内覧会に参加してきました。

昨今、日本の1つの象徴的な存在として扱われることも少なくないサムライ。しかし武士や浪人、そして文字通り侍には、漠然としたイメージこそ思い浮かびながらも、どのように暮らし、また仕事をしていたのかなどは、必ずしも良く知られているとは言えません。

そうした主に江戸時代のサムライに関する絵画、資料、古写真、道具類が、約200点(展示替えあり)もまとめて江戸東京博物館へとやって来ました。


「関ヶ原合戦図屏風」 嘉永7(1854)年 関ヶ原町歴史民俗資料館

はじまりは江戸前史、歴史を決定付ける天下分け目の戦いを舞台とした「関ヶ原合戦図屏風」でした。六曲一双の大画面には両軍入り乱れて戦うサムライの姿が描かれていて、旗や馬印などによって、それぞれの部隊の動きなども細かに表されていました。まさに関ヶ原による武功こそが江戸時代の大名の起点でもあったため、それを記録するためか、数多くの屏風や絵巻が制作されました。


「陣備図 大御先鋒日之丸御備」 江戸時代中期 徳川林政史研究所

江戸時代の軍団を伝える驚くべき巨大な資料に目を奪われました。それが「陣備図 大御先鋒日之丸御備」で、全18種にも及ぶ軍団の陣容を10帖もの折本にて俯瞰的に表した作品でした。あまりにも大きいために一目で全体を捉えることは叶いませんが、おそらくは寛政時代の尾張徳川家の軍制改革の際に成立したと伝えられています。


右:「薩摩藩の役人」 フェリーチェ・ベアト撮影 1863~1870年頃 個人蔵

江戸の街並みや人々の姿をリアルに伝える古写真も見どころかもしれません。文久3年に来日した写真家のフェリーチェ・ベアトは、日本各地の風景を撮影していて、中には薩摩藩の役人や江戸の夜警など、当時の武士の姿を克明に捉えていました。何気ない表情など、人々の息遣いを肌で感じられる作品と言えそうです。

さて江戸時代に入って戦乱が終わり、いわゆる太平の世が訪れると、サムライたちは城下町に定住し、いわゆる行政官僚、つまり役人としての仕事を果たすことになりました。


右下:「大熊善太郎所用軍扇」 幕末 江戸東京博物館

うち旗本御家人とは、将軍に仕える家臣のうち禄高1万石未満の者のことで、そうした御家人らが実際に所用した陣羽織や扇、儀礼服なども出展されていました。


左:「朱房付十手」 江戸時代後期 江戸東京博物館

時代劇でお馴染みの十手も目を引きました。町奉行の与力は、長さ30センチほどの真鍮製と、それより長い鉄製の十手を持っていて、捕物の現場では後者を用いつつ、前者は身分を示すためのものとして使っていました。


左:「紺絲威胴丸」 遠山景元所用 江戸時代中期 靖國神社遊就館

今も有名な個々のサムライに関した資料展示も見過ごせません。このうち江戸の町奉行の大岡忠相は、菩提寺に伝わる煙草盆や自筆の家訓、そして同じく町奉行で遠山の金さんこと遠山景元では、子孫に残された具足などが展示されていました。


下:「火事図巻」 長谷川雪堤模 文政9(1826)年 江戸東京博物館

火災や洪水が発生した江戸において、災害時に出動し、被害拡大に尽力したのがサムライたちでした。火災では幕府の定火消や大名火消、そして水災では町奉行所の与力や同心がともに出動し、町火消しや船運業者と協力して災害に対処しました。いわば現代における災害レスキュー隊の役割を果たしていたのかもしれません。


「白羅紗地桐紋入火事装束」 幕末〜明治時代初期 江戸東京博物館

火事場を指揮するために着用した火事装束が思いの外にゴージャスでした。羽織、胸当、兜頭巾などからなる一式で、 生地には熱に強い毛織りなども用いられていました。戦のない時代においてサムライは、甲冑に代わる存在として、こうした火事装束を尊んでいた面もあったそうです。自らの威容を高める意味もあったのかもしれません。


「江戸幕府所持船図巻」 江戸時代後期 江戸東京博物館

「江戸幕府所持船図巻」は、御座船や天地丸など、幕府が所持する船を描いた絵巻で、水害時には被災者の渡川を援助したり、流出物の撤去作業にあたりました。火事が頻繁に起こったこと知られる江戸は、実は水害にも多く見舞われていて、暴風雨の後は地盤の低い地域を中心に浸水の被害を受けました。約250年の間に、100回以上も洪水が発生した記録も残されています。


「川崎平右衛門 肖像画」(複製) 府中市郷土の森博物館

身分が固定化していた時代ではありましたが、サムライと町人、そして百姓の間は、何も全て断絶していたわけではありませんでした。中でも興味深いのは、武蔵国の多摩の名主出身の川崎平右衛門なる人物で、幕府に才覚を見出されては新田の経営などにあたり、後には代官として美濃や石見の幕領支配にも携わるなどサムライとしても活動しました。もちろん苗字の使用と帯刀も許されました。


左:「萌葱羅紗地 レクション羽織」 幕末 江戸東京博物館

江戸時代のサムライの様相を変化させた切っ掛けの1つが、ペリー来航より開国、開港へと至った、幕末にかけての対外政策でした。幕府は西洋式の軍制を目指し、洋装を影響を受けた羽織や、西洋風の隊列行進に使われた太鼓などを導入し、サムライの戦いのあり方を変えました。


「午砲」 幕末 江戸東京たてもの園 

幕末の江戸湾を警護するための火砲も目立っていたかもしれません。なおこの火砲は維新後の明治4年、皇居の本丸跡に移され、正午を知らせる時報として用いられました。以来、東京の人々は「午砲」として親しんでいたそうです。

この他、幕末の外交使節団が、サンクトペテルブルクで撮影した肖像写真も見どころではないでしょうか。いずれもプラチナ・プリントに焼き付けられたためか、驚くほどに保存状態が良好で、単に歴史資料というよりも、個々の写真作品として魅力的でした。サムライの人となりが臨場感をもって伝わってきました。


「松平忠礼を囲む写場」 慶応年間(1865〜1868) 東京都写真美術館

勇壮な甲冑や美しい刀がたくさん並んでいるわけではありませんが、サムライたちの日常生活を見据え、資料などで丹念に浮き彫りにした展示と言えるかもしれません。実際のところ文献資料が想像以上に多く、かなり読ませる展覧会でした。


「山岡鉄舟佩刀 銘家吉」 金沢市立玉川図書館近世資料館

最後に展示替えの情報です。10月7日を挟んで一部の作品が入れ替わりました。10月8日からは後期展示に入り、会期末までの入れ替えはありません。(本記事は前期展示の内容に沿っています。)


徳川黎明会の「鷹狩図巻」と徳川美術館の「鷹狩図屏風」の2点の鷹狩を描いた作品にも目を見張りました。とりわけ後者では大名一行と思しき鷹狩りの光景を実に生き生きと描いていて、画面を覗き込むと、犬の鳴き声や人々の掛け声などが聞こえるかのようでした。



11月4日まで開催されています。

「士 サムライ―天下太平を支えた人びと―」 江戸東京博物館@edohakugibochan
会期:2019年9月14日(土)~11月4日(月)
時間:9:30~17:30
 *毎週土曜は19:30まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。但し9月16日、23日、10月14日、11月4日は開館。9月24日(火)、10月15日(火)は休館。
料金:一般1100(880)円、大学・専門学生880(700)円、小学・中学・高校生・65歳以上550(440)円。
 *( )は20名以上の団体料金。
 *常設展との共通券あり
 *毎月第3水曜日(シルバーデー)は65歳以上が無料。
住所:墨田区横網1-4-1
交通:JR総武線両国駅西口徒歩3分、都営地下鉄大江戸線両国駅A4出口徒歩1分。

注)写真は報道内覧会の際に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部 -美濃の茶陶」 サントリー美術館

サントリー美術館
「サントリー芸術財団50周年 黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部-美濃の茶陶」 
2019/9/4~11/10



サントリー美術館で開催中の「黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部 -美濃の茶陶」を見てきました。

桃山時代、現在の岐阜県の東濃地域、すなわち美濃では、黄瀬戸、瀬戸黒、志野、織部など、茶の湯のための様々な焼き物が作られました。

そうした美濃の茶陶がサントリー美術館へ一同に揃いました。出展件数は約120件超(展示替えあり)に及び、同館のみならず、愛知県陶磁美術館、徳川美術館、野村美術館、逸翁美術館、根津美術館、それに個人コレクションなど、他の美術館などからも多く作品がやって来ました。

冒頭、志野の傑作「志野茶碗 銘 卯花墻」に魅せられました。美濃の大萱、現在の可児市にて焼成され、江戸時代には深川の豪商の冬木家に伝わり、明治に入ってから室町の三井家と渡った作品で、現在は三井記念美術館のコレクションに収められています。温かみのある白色に緋色が広がる中、垣根に卯の花が咲く姿を見立てていて、いわゆる日本で焼かれた茶碗の2点のうちの1つの国宝としても知られています。



ともかく右にも左にも優品の並ぶ展示でしたが、構成に工夫がありました。とするのも茶陶を「姿を借りる」、「描く」、「歪む」、「型から生まれる」などのキーワードから、各作品の造形の美しさ、ないし見どころを紹介していたからでした。例えば「姿を借りる」における「黄瀬戸立鼓花入」では、同じく鼓を立てたような形をした明の「黄胴立鼓花入」を参照していて、中国からの影響関係についても触れていました。

「志野織部傘鷺文向付」にも目を奪われました。雲、あるいは花びらのような形をした皿の中に、鷺や柳、傘などが表されていて、その簡略化した造形はまるで古代の遺跡の壁画のような味わいが感じられました。またリズミカルな線描は、クレーやカンディンスキー画のような趣きもあるやもしれません。

3点の6角形の猪口、「黄瀬戸六角猪口」、「瀬戸六角猪口」、「織部六角猪口」にも魅せられました。少量の料理を盛り付けるために生み出され、ぐい呑みとしても重宝された猪口を、同一の型から作り上げた作品で、それぞれ黄、茶、緑と異なる色も映えて見えました。

チラシ表紙にも「しびれるぜ桃山」とキャッチーなコピーが記されていますが、何も桃山時代の茶陶のみが出品されている展示ではありません。というのも、昭和に入り、美濃焼を復興させた2人の陶芸家、荒川豊蔵と加藤唐九郎の作品についても併せて見ているからでした。うち荒川豊蔵の「瀬戸黒茶碗」は、光沢感がありながらも、焦げてひび割れた岩石のような表面を特徴として、解説に「洗練」とありましたが、私にはむしろ無骨で荒々しく感じられました。

加藤唐九郎の「茜志野茶碗」は、陶芸家が亡くなった翌日に窯に残されていた絶作の1つで、肉厚の赤みのある造形は、さも炎が燃え上がるかのような力強さを見せていました。

近代の数寄者が代々収集した美濃焼の名品も見どころではないでしょうか。ここでは湯木貞一、五島慶太、根津嘉一郎など、稀代の料理人や実業家らが伝えた茶陶の品々を紹介していました。

うち共に重要文化財の2点の鼠志野茶碗に興味が惹かれました。うち1つは五島慶太のコレクションの「鼠志野茶碗 銘 峯紅葉」で、もう1つは根津嘉一郎の「鼠志野茶碗 銘 山の端」でした。共に亀甲文と桧垣文様の描かれた志野茶碗ながらも、前者は赤みがかった色彩が強く、文様も鮮やかで力強いものの、後者はやや線が淡く、また温和な表情を見せていて、かなり佇まいが違っているように思えました。ともするとそこにはコレクターの審美眼も反映されていたのかもしれません。

最後に展示替えの情報です。会期中、一部の作品が入れ替わります。

「黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部 -美濃の茶陶 出品リスト」(PDF)

共に重要文化財の「鼠志野茶碗 銘 峯紅葉」は10月7日まで、伝狩野山楽の「南蛮屏風」は10月23日からの公開です。観覧の際はご注意下さい。

サントリー美術館の立体展示は他館の追従を許しません。効果的な照明をはじめ、360度から見られるケースなど、茶陶の名品を余すことなく堪能することが出来ました。

なお黄瀬戸や瀬戸黒など、瀬戸は愛知県の地名を指しますが、そもそも一連の焼き物が美濃で生まれたことが分かったのは昭和に入ってからのことで、それ以前は瀬戸で焼かれていたと考えられていたそうです。それを昭和5年、荒川豊蔵が岐阜の可児市にて志野茶碗の陶片を発掘し、志野が美濃で生産されていたことが判明しました。そうした一連の歴史的経緯についても展示で言及がありました。



長期休館前(*)の最後の展覧会です。11月10日まで開催されています。

*サントリー美術館は、改修工事のため、本展終了後の11月11日から2020年5月中旬(予定)まで休館します。

「サントリー芸術財団50周年 黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部 -美濃の茶陶」 サントリー美術館@sun_SMA
会期:2019年9月4日(水)~11月10日(日)
休館:火曜日。11月5日は18時まで開館。
時間:10:00~18:00
 *金・土は20時まで開館。
 *9月15日(日)、22日(日)、10月13日(日)、11月3日(日・祝)は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1300円、大学・高校生1000円、中学生以下無料。
 *アクセスクーポン、及び携帯割(携帯/スマホサイトの割引券提示)あり。
場所:港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンガレリア3階
交通:都営地下鉄大江戸線六本木駅出口8より直結。東京メトロ日比谷線六本木駅より地下通路にて直結。東京メトロ千代田線乃木坂駅出口3より徒歩3分
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「伊庭靖子展 まなざしのあわい」 東京都美術館

東京都美術館
「伊庭靖子展 まなざしのあわい」
2019/7/20~10/9



東京都美術館で開催中の「伊庭靖子展 まなざしのあわい」を見てきました。

1967年に京都で生まれた画家、伊庭靖子は、自ら撮影した写真を元に、主にクッションや陶器、それに寝具などをモチーフとした絵画を描き続けてきました。

冒頭に展示されたのは、伊庭の代表作として知られるクッションや寝具を表した10点の油彩画で、2003年頃から2010年にかけて制作されたものでした。いずれもまばゆい光に包まれたかのように輝き、クッションの装飾模様も鮮やかに浮かび上がっていて、ふわふわとした弾力までが表現されているかのようでした。どこか写実的でありながらも、触知的とも言える手触り感が見られるのも特徴で、思わず手で確かめたくなるほどでした。

一方で油彩と共に水彩で表した器の作品は、リアルに器そのものを再現するというよりも、器を包む光の移ろいが繊細に示されていて、幻想的な味わいすら感じられました。また一部の作品ではモチーフから視点が少し離れ、全体の光や空気を捉えているようで、器から異なった向きに影がのびているなど、複雑な空間が広がっていました。



ハイライトはアクリルボックスを取り込んだ連作と言えるかもしれません。2016年頃より伊庭は、透明なアクリルボックスの中に陶器などのモチーフを入れ、周囲の映り込んだ風景を描く絵画を制作していて、中には今回の展覧会のために東京都美術館を舞台とした作品もありました。



アクリルボックスに反射する多様な光ゆえか、手前と向こう側の景色が陶器と共に溶け合うように表されていて、幾重にもレイヤーを築いていました。例えば真昼の明るい日差しの中、戸外を眺めてはぼんやりと立ち上がる風景を目の当たりにするかのような感覚に近いかもしれません。



目の前に事物があるはずながらも、不思議と空間に飲まれては、消えゆくような錯覚にもとらわれました。白昼夢とするのは言い過ぎでしょうか。

ラストには驚くべき新作が待ち構えていました。それが「depth #2019」と題した映像のインスタレーションで、暗室の前後に2面のスクリーンがあり、1面は無数の粒子がひたすらに動く映像、もう1つには奥行きをモノクロームで示すデプス・マップと呼ばれる映像が映されていました。

後者では人の影やおそらく屋外と思しき風景が流れるように展開していて、何とか視覚的に状況を把握出来るものの、前者はどれだけ見ても何ら映像が浮び上らず、何が映されているのか想像もつきませんでした。一体、どういうわけなのでしょうか。

答えは立体視でした。つまりは粒子を立体視、すなわち左右の目の視差を利用して物を立体的に見る方法で捉えると、何らかの「透明感のある空間」(解説より)現れる仕掛けになっているわけでした。そしてそれはデプス・マップの映像の内容とも連動しているそうです。ただ私は立体視が苦手なため、粒子から空間を捉えることは叶いませんでした。

さて伊庭靖子の個展として振り返りたいのが、2009年に神奈川県立近代美術館鎌倉で行われた「伊庭靖子 - まばゆさの在処 - 」でした。当時、私も鎌倉へ行き、透明感や清潔感に溢れたクッションや器の絵画に大いに惹かれたことを覚えています。しかしながら以来、不思議とまとまった形で作品を見る機会がありませんでした。実に今回の展示は美術館として10年ぶりの開催となります。

単なる回顧展と捉えるよりも、旧作から新作への展開を通して、伊庭の空間へのスタンスの変遷、言い換えれば視野の広がりを辿るような展覧会と言えるかもしれません。絵画における変わらない魅力を感じつつも、最新の映像作品など、チャレンジングとも受け止められる制作の「今」を知ることも出来ました。



会場は東京都美術館内のギャラリーA・B・Cのフロアです。ちょうど「コートールド美術館展」を開催している企画展示室の出口横に入口があります。そして「コートールド美術館展」の観覧券(半券可)を提示すると、一般当日料金から300円引きの500円になります。ワンコインで入場が可能です。


私も「コートールド美術館展」を観覧した後、あわせて「伊庭靖子展」を見てきました。是非ともお見逃しなきようにおすすめします。

間もなく会期末です。10月9日まで開催されています。*一部の展示室の撮影が出来ます。掲載写真は全て撮影可能作品。

「伊庭靖子展 まなざしのあわい」 東京都美術館@tobikan_jp
会期:2019年7月20日(土)~10月9日(水)
時間:9:30~17:30
 *毎週金曜日は20時まで開館。
 *7月26日(金)、8月2日(金)、9日(金)、16日(金)、23日(金)、30日(金)は21時まで。 
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日、8月13日(火)、9月17日(火)、9月24日(火)。但し8月12日(月・休)、9月9日(月)、9月16日(月・祝)、9月23日(月・祝)は開館。
料金:一般800円、大学生・専門学校生400円、65歳以上500円、高校生以下無料。
 *20名以上の団体は一般600円。
 *9月16日(月・祝)は「敬老の日」により65歳以上が無料。
 *10月1日(火)は「都民の日」により無料。
 *毎月第3水曜日はシルバーデーのため65歳以上は無料。
 *毎月第3土曜、翌日曜日は家族ふれあいの日のため、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住)は一般料金の半額。(要証明書)
住所:台東区上野公園8-36
交通:JR線上野駅公園口より徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅7番出口より徒歩10分。京成線上野駅より徒歩10分。
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2019年10月に見たい展覧会【やなぎみわ/ラウル・デュフィ/ゴッホ展】

9月末になっても残暑が長引き、秋の本格的な気配がなかなか感じられませんが、いかがお過ごしでしょうか。

10月は展覧会シーズンもたけなわです。気になる展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「引込線/放射線(第1期)」 第19北斗ビル(~10/14)
・「没後90年記念 岸田劉生展」 東京ステーションギャラリー(~10/20)
・「大観・春草・玉堂・龍子―日本画のパイオニア」 山種美術館(~10/27)
・「歌川国芳―父の画業と娘たち」 太田記念美術館(10/4~10/27)
・「新創開館10周年記念 美しきいのち 日本・東洋の花鳥表現」 根津美術館(~11/4)
・「DECODE/出来事と記録―ポスト工業化社会の美術」 埼玉県立近代美術館(~11/4)
・「黄金町バザール ニュー・メナジェリー」 黄金町エリアマネジメントセンター(~11/4)
・「引込線/放射線(第2期)」 旧市立所沢幼稚園(10/12~11/4)
・「あざみ野コンテンポラリー vol.10 しかくのなかのリアリティ」 横浜市民ギャラリーあざみ野(10/12~11/4)
・「チェコ・デザイン 100年の旅」 世田谷美術館(~11/10)
・「不思議の国のアリス展」 そごう美術館(~11/17)
・「写真新世紀 2019」 東京都写真美術館(10/19~11/17)
・「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」 練馬区立美術館(~11/24)
・「日本・東洋 美のたからばこ ~和泉市久保惣記念美術館の名品」 渋谷区立松濤美術館(10/5~11/24)
・「正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美」 東京国立博物館(10/14~11/24)
・「おかえり 『美しき明治』」 府中市美術館(~12/1)
・「茶の湯の名碗 高麗茶碗」 三井記念美術館(~12/1)
・「線の迷宮〈ラビリンス〉3 齋藤芽生とフローラの神殿」 目黒区美術館(10/12~12/1)
・「やなぎみわ展 神話機械」 神奈川県民ホールギャラリー(10/20~12/1)
・「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション―メトロポリタン美術館所蔵」 東京国立近代美術館工芸館(~12/8)
・「描く、そして現れる―画家が彫刻を作るとき」 DIC川村記念美術館(~12/8)
・「ラウル・デュフィ展―絵画とテキスタイル・デザイン」 パナソニック汐留美術館(10/5~12/15)
・「カミーユ・アンロ|蛇を踏む」 東京オペラシティ アートギャラリー(10/16~12/15)
・「カルティエ、時の結晶」 国立新美術館(10/2~12/16)
・「建国300年 ヨーロッパの宝石箱リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展」 Bunkamuraザ・ミュージアム(10/12~12/23)
・「オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」 横浜美術館(~2020/1/13)
・「ゴッホ展」 上野の森美術館(10/11~2020/1/13)
・「アジアのイメージ―日本美術の『東洋憧憬』」 東京都庭園美術館(10/12~2020/1/13)
・「ルネ・ユイグのまなざし フランス絵画の精華―大様式の形成と変容」 東京富士美術館(10/5~2020/1/19)
・「印象派からその先へー世界に誇る吉野石膏コレクション展」 三菱一号館美術館(10/30~2020/1/20)
・「ハプスブルク展 600年にわたる帝国コレクションの歴史」 国立西洋美術館(10/19~2020/1/26)

ギャラリー

・「青山悟展 The Lonely Labourer」 ミヅマアートギャラリー(10/2~11/2)
・「アルフレッド・ジャー Lament of the Images」 スカイザバスハウス(10/4~11/2)
・「マルク・シャガール—夢を綴る」 ポーラ ミュージアム アネックス(10/4~11/4)
・「αMプロジェクト2019 東京計画2019 vol.3 vol.4 ミルク倉庫+ココナッツ」 ギャラリーαM(~11/9)
・「ヴァルダ・カイヴァーノ」 小山登美夫ギャラリー(10/11~11/9)
・「藤元明 陸の海ごみ」 ギャラリーA4(10/4~11/14)
・「日本のアートディレクション展 2019」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー/クリエイションギャラリーG8(10/23~11/16)
・「竹村 京 Madeleine. V, Olympic, and my Garden」  タカ・イシイギャラリー東京(10/19~11/22)
・「ジェイ・チュン & キュウ・タケキ・マエダ セレクションによるグループ展」 資生堂ギャラリー(10/18~12/22)

まずは現代美術です。今年2月の高松市美術館を皮切りに、アーツ前橋、福島県立美術館と巡回してきたやなぎみわの個展が、神奈川県民ホールギャラリーで開催されます。



「やなぎみわ展 神話機械」@神奈川県民ホールギャラリー(10/20~12/1)

1967年に神戸で生まれ、「エレベーター・ガール」などの写真で評価を得た美術家のやなぎみわは、2010年から演劇プロジェクトをスタートさせると、日本各地を巡礼した野外劇「日輪の翼」といった舞台作品を発表してきました。


そしてやなぎみわは舞台作品と共に、日本神話をモチーフに桃を撮影した新作シリーズも制作しました。それが今回の展覧会で初めて公開されます。なお国内の美術館で個展が開かれるのは、2009年の「やなぎみわ マイ・グランドマザーズ」(東京都写真美術館)以来、約10年ぶりのことになります。待っていた方も多いかもしれません。

続いては西洋美術です。パナソニック汐留美術館にて「ラウル・デュフィ展―絵画とテキスタイル・デザイン」が行われます。



「ラウル・デュフィ展―絵画とテキスタイル・デザイン」@パナソニック汐留美術館(10/5~12/15)

フランスのフォーヴの画家として活動したラウル・デュフィは、海の風景や音楽的な主題の絵画を描きながら、リヨンの絹織物製造業ビアンキーニ=フェリエ社のために、約15年以上に渡ってテキスタイルのデザインを提供していました。



そのテキスタイルに着目したのが今回の展覧会で、デュフィデザインの衣装作品の他、プリント生地、そして絵画など、資料を含め約150点ほどが出展されます。

デュフィの回顧展といえば、2014年に「デュフィ展 絵筆が奏でる 色彩のメロディー」(Bunkamura ザ・ミュージアム)が行われました。同展においてもテキスタイルが出展されましたが、今回はデザインの仕事についてより突っ込んだ内容になるかもしれません。

この秋、最も注目を集める西洋絵画展になるのではないでしょうか。上野の森美術館で「ゴッホ展」がはじまります。



「ゴッホ展」@上野の森美術館(10/11~2020/1/13)

ともかく日本でも人気の画家だけに、過去、度々回顧展が開かれてきたゴッホですが、最近では2017年に「ゴッホ展 巡りゆく日本」が東京都美術館にて行われました。同展では日本の美術との関係を検証するため、ゴッホに影響を与えた浮世絵などを参照しながら、ゴッホの絵画を併せ見る構成となっていました。


一方で今回は、ハーグ派や印象派との影響から、いかにゴッホが自らの画風を築いたのかについて追いかける展示となります。そのために端的にゴッホの作品のみで構成されず、アントン・マウフェらのハーグ派や、モネやセザンヌらの印象派の画家の作品も出展されます。(ゴッホ40点、他の画家30点。)

何かとスペースに制約のある上野の森美術館のこともあり、早々から混雑することも十分に考えられます。当面は金曜、土曜の夜間開館が狙い目となりそうです。

それでは今月もどうぞ宜しくお願いします。
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