「多田正美展」 日本橋高島屋 美術画廊X

高島屋東京店 美術画廊X中央区日本橋2-4-1 6階)
「多田正美展」
1/26-2/14



音と風景が緩やかに響き合います。日本橋高島屋美術画廊Xで開催中の多田正美個展へ行ってきました。

作家、多田正美のプロフィールなどはご本人のWEBサイトに記載されています。

多田正美WEBサイト

1973年に昭和音楽短大専攻科作曲科を卒業後、即興グループ「GAP」を結成した他、音楽やパフォーマンス、また写真などで独自の表現を切り開いてきました。

さて今回の個展は作家の自宅周辺を写した風景写真を展示するなど、いわゆる写真展の体裁をとっていますが、その流れている音に耳を傾けると、空間全体で楽しむ一つのインスタレーションが形成されていることに気づくかも知れません。

写真には野山や住宅、それにマンションが交錯する郊外の有りがちな風景が捉えられていますが、その表面にはある処理が行われています。その効果によって風景は揺らぎ、解体、そして新たなイメージへと再生されていました。また随所には細かなコラージュも施されています。繋ぎ合わされた景色はどこか幻想的でもありました。

そして写真に寄って点在する小さなスピーカーにも耳を傾けて下さい。それらは実際に作家が木をこすり、また瓶の中に入れた球を振った時に発せられた音などを収録したものだそうですが、不思議にも写真の中の場にある自然の音響が再現されているかのようでした。

先日の土曜(1月29日)には竹を用いた音のライブ・パフォーマンスも開催されたそうです。その様子の一部が日本橋タカシマヤBlogにも掲載されていました。

今年最初のイベント 美術画廊X@日本橋タカシマヤBlog

2月14日まで開催されています。

*開廊日時 会期中無休 10:00~20:00
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「運慶 - 中世密教と鎌倉幕府 - 」 神奈川県立金沢文庫

神奈川県立金沢文庫横浜市金沢区金沢町142
「神奈川県立金沢文庫80年 特別展 運慶 - 中世密教と鎌倉幕府 - 」
1/21-3/6



神奈川県立金沢文庫創立80年を記念し、各地の運慶仏を一堂に展観します。「運慶 中世密教と鎌倉幕府」へ行ってきました。

その抜群の知名度にも関わらず、実際には僅か約30体ほどしか真作のない運慶仏ですが、今回は平成19年に称名寺(金沢文庫)で「大威徳明王坐像」が新たに運慶作と確認されたことにも関連し、同作を含む計7体の揃う展覧会が実現しました。


重文「厨子入大日如来坐像」 鎌倉初期 栃木・光得寺所蔵

本展に出品の仏像は以下の通りです。 (主要展示品一覧

国宝「大日如来坐像」 運慶作 (1176年) 奈良・円成寺所蔵
重文「毘沙門天立像」 運慶作 (1189年) 神奈川・浄楽寺所蔵(期間:1/21~2/27)
重文「不動明王立像」 運慶作 (1189年) 神奈川・浄楽寺所蔵(期間:1/21~2/27)
重文「帝釈天立像」 伝運慶・湛慶作 (1201年頃) 愛知・滝山寺所蔵
重文「厨子入大日如来坐像」 鎌倉初期 栃木・光得寺所蔵
重文「大日如来坐像」 鎌倉初期 東京・真如苑所蔵(期間:2/8~3/6)
重文「大威徳明王坐像」 運慶作 (1216年) 神奈川・光明院所蔵(神奈川県立金沢文庫保管)


会期後半には2008年にNYのクリスティーズで約14億円で落札され、東博での展示も大変な話題となった「大日如来坐像」が登場し、計3体の大日如来が集います。そちらも待たれている方も多いかもしれません。

さて仏像展というと点数云々ではなく、その個々の美しさなどに感じ入ってついつい長居してしまいますが、今回も同様に一体一体の美しさや力強さに引込まれて自分でも思わぬほどに充実した時間を過ごすことが出来ました。

ともかくまず目に飛び込んでくるのが運慶の最初期の作、奈良・円成寺の「大日如来坐像」(ちらし表紙)です。比較的多く残った表面の金色は大変に鮮やかでしたが、その比較的端正なフォルムや衣文など、まさに溌剌とした造形美には心打たれるものがありました。またやや両目の近い面持ちはあたかも煩悶としているかのようで、どこか複雑な感情が表れているように思えてなりません。


重文「毘沙門天立像」 運慶作 (1189年) 神奈川・浄楽寺所蔵

前期中でのハイライトはやはり神奈川・浄楽寺の「毘沙門天立像」と「不動明王立像」の揃い踏みです。発願者はかの和田義盛とのことですが、先の大日如来より10数年経過した運慶の作風はほぼ洗練の域に達しています。とりわけまさに武士を思わせるような形相を見せながらも、振り上げた右手から邪鬼に降ろす左足へ向けてS字を描いた毘沙門天のプロポーションには見惚れました。


重文「大威徳明王坐像」 運慶作 (1216年) 神奈川・光明院所蔵

今回の展示開催の切っ掛けともなった神奈川・光明院の「大威徳明王坐像」は僅か全長20センチ強ほどの小さな仏像です。残念ながら損傷も激しく、顔や手の大部分はかなり欠落していますが、隆々とした肉体美やくわっと見開いた力強い目などからは運慶が晩年に到達した独自の境地を見ることが出来ました。

最初期の大日如来からこの「大威徳明王坐像」と、一概に運慶仏と言っても時代による変化を探っていくのも、この展覧会を楽しむ重要なポイントになりそうです。X線調査の結果など関連の資料も紹介されていました。


重文「不動明王立像」 運慶作 (1189年) 神奈川・浄楽寺所蔵

如何せん金沢文庫の建物は小さく、会場の展示室も非常に手狭ですが、これほどの運慶仏が揃う機会など当然ながら滅多にありません。会期2日目に出かけましたが、既に同館としては異例の人出とのことで、会場内は異様な熱気にも包まれていました。後半に進むにつれて更に混雑してくるのではないでしょうか。



展覧会を鑑賞した後は同館横の隧道を抜けて開ける称名寺を訪ねました。同寺は金沢北条氏の菩提寺とも知られ、その広々とした浄土式庭園は散策にも最適です。運慶展の際はこちらにも足を運ばれては如何でしょうか。

「芸術新潮/運慶 リアルを超えた天才仏師/2009年1月号/新潮社」

ところで一昨年に出版された雑誌ですが、お馴染み芸術新潮の「運慶 リアルを超えた天才仏師」(2009年1月号)が非常に良く出来ています。テキストは真如苑の大日如来を運慶作と紹介し、本展の監修もつとめる清泉女子大学の山本勉教授です。作品、図版とも、今回の展示にかなり準拠しています。是非ご覧になって下さい。これは絶対におすすめです。

お見逃しなきようご注意下さい。3月6日まで開催されています。なお巡回はありません。

*開館日時:火~日(月休) 9:00~16:30(入館は16時まで。)土・日・祝は17時閉館。(入館は16:30まで。)
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「中平卓馬 Documentary」 シュウゴアーツ

シュウゴアーツ江東区清澄1-3-2 5階)
「中平卓馬 Documentary」
1/8~2/5



シュウゴアーツで開催中の中平卓馬個展、「Documentary」へ行ってきました。

展示概要については同画廊WEBサイトをご参照下さい。またART-ITの「展覧会フォトレポート」には展示風景の写真も掲載されていました。

現在の展覧会:中平卓馬(シュウゴアーツ)/展示風景(ART-IT)

さて今回は2004年より2010年にかけて撮影された約20点ほどの写真作品が展示されていましたが、ごくありふれた日常の光景を捉えながらもどこか熱気を帯びた迫力は並大抵のものではありません。

被写体は例えば道ばたの看板の他、草むら、水辺、観覧車、また茅葺き屋根の家屋など、いずれも決して珍しいとは言える場所ではありませんが、放たれるギラギラするまでの光と色、そしてモチーフがフレームより溢れ出るかのように写された構図にもよるのか、それらにも全て一種の生命が宿って自己主張しているかのような錯覚すら与えられます。

ひたすらに透明でひたすらにたゆたう水は、当然ながら写真の中で静止していながらも、今にもじゃぶじゃぶと音をたてて実際に流れ出すかのような臨場感をたたえていました。また草むらの草は、あたかも全てを燃えつくそうとする炎の如くゴウゴウとなびいています。むせ返るほどにエネルギッシュな草の緑に思わず一歩後ずさりしてしまうほどでした。

なお中平の個展では現在、銀座のBLD GALLERYでも開催中です。(会期が延長になりました。)

中平卓馬写真展 「Documentary」@BLDGALLERY 1月8日~2月27日

彼のファインダーを通すと何故にこれほど万物に強度が与えられるのでしょうか。久々に写真に呑まれてしまうような印象を受けました。

2月5日まで開催されています。

*開廊日時:火~土(日月祝休) 12:00~19:00
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「ワシントン・ナショナル・ギャラリー」展 記者発表会

「アメリカ市民が創った奇跡のコレクション」(ちらしより引用)を一同に展観します。本年6月に国立新美術館(その後、京都市美術館へ巡回。)で開催される「ワシントン・ナショナル・ギャラリー」展の記者発表会に参加してきました。



「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション」

昨年のオルセー展やボストン美術館展など、ここ最近、印象派(及びポスト印象派)関連の非常に充実した展示が続いていますが、今年それに匹敵し得るのがこの「ワシントン・ナショナル・ギャラリー」展であるかもしれません。

東京展:2011年6月08日(水)~09月05日(月) 国立新美術館
京都展:2011年9月13日(火)~11月27日(日) 京都市美術館


ワシントン・ナショナル・ギャラリーは1939年、アメリカ人実業家のアンドリュー・メロンが自身の所蔵する約130点の絵画を連邦政府に寄贈したことに始まりましたが、以来、今日まで70年間、一般市民の寄贈のみによっておおよそ12万点にも及ぶ絵画コレクションが形成されました。


挨拶する氏家斉一郎日本テレビ放送網株式会社代表取締役会長。同局でも10年に一度の規模の展覧会企画だという話がありました。

「珠玉のコレクションを創った人々」

メロン氏は美術館の創設にあたり、自身の寄贈したものと同じくらい価値の高い作品のみを残すようにと述べたそうですが、それは現在のコレクションの質を見ても確かです。


オーギュスト・ルノワール「モネ夫人とその息子」1874年 油彩・カンヴァス

そもそもアメリカ人はフランス人よりも早く印象派絵画を蒐集しましたが、その結果、同ギャラリーで最も質の高いコレクションが今回出品の印象派とポスト印象派の絵画となりました。


ワシントン・ナショナル・ギャラリー。(展覧会VTRより。)

一度日本では1999年、東京都美術館でワシントン・ナショナル・ギャラリー展が開催されましたが、今回はそれを上回る規模になることは同館館長、アール・A・パウエル3世氏の「これほどの質と規模での展覧会は(略)ギャラリーの70年の歴史上なかったことであり、これからもないだろう。」という力強い言葉でも明らかではないでしょうか。


ポール・セザンヌ「赤いチョッキの少年」1888-1890年 油彩・カンヴァス

「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 みどころ」

実は現在、ワシントン・ナショナル・ギャラリーは一部改装中であり、それを切っ掛けにこのような大規模な展覧会を開催するという企画が持ち上がりました。素人目ながらもこの手の改装、休館中の海外貸出展は、例えば昨年のオルセー同様、かなり高い確率で良い作品がやってきます。

「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 作品解説」

本展の出品総数83点中、日本初公開が53作品ほどありますが、そのうち9点がワシントン・ナショナル・ギャラリーのいわゆる常設作品です。同ギャラリーでは一度に貸し出す常設作品の数を12点までに制限していますが、過去最高の9点が一挙に出品されます。上に触れた館長氏の言葉も決してリップサービスでありません。


マネの「鉄道」。(展覧会スライドより。)

私自身、三菱一号館の「マネ展」でマネに虜となって以来、今回のメインヴィジュアルがマネの「鉄道」ということからしてもかなり期待していましたが、改めて発表会に参加してそれを裏切らない展覧会だと確信しました。


ワシントン犬。本展のマスコットのピンバッジが発売されます。

@washingtonken ワシントン犬 展覧会公式ツイッターアカウント

ワシントン犬のツイッターアカウントとともに、今年6月の開幕を心待ちにしたいと思います。

「マネ/ジル・ネレ/タッシェン」

[東京展開催概要]
名称:ワシントン・ナショナル・ギャラリー 印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション
会期:2011年6月8日(水)- 2011年9月5日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室1E
時間:午前10時-午後6時 (金曜は午後8時まで) *入場は閉館の30分前まで
休館:毎週火曜日
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅(美術館直結)
電話:03-5777-8600 (ハローダイヤル)
主催:国立新美術館、日本テレビ放送網、読売新聞社
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「琳派芸術 第1部 煌めく金の世界」 出光美術館

出光美術館千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階)
「酒井抱一生誕250年 琳派芸術 第1部 煌めく金の世界」
1/8-2/6



酒井抱一の生誕250年を記念して、光悦・宗達から江戸琳派までを総覧します。出光美術館で開催中の「酒井抱一生誕250年 琳派芸術 第1部 煌めく金の世界」へ行ってきました。

琳派コレクションで名高い出光美術館による約5年ぶりの琳派展です。「第1部 煌めく金の世界」に出品されたのは、光悦、宗達から、時代を下って光琳、乾山らの、半ば琳派の核心とも言うべき絵師たちの作品でした。

展覧会の構成は以下の通りです。

1章 美麗の世界
2章 金屏風の競演
3章 光琳の絵画
4章 琳派の水墨画


「宗達・光悦展」と化した冒頭部からぐっと引き込まれたのは私だけではないかもしれません。入口すぐの一角にずらりと揃ったのは、書光悦、下絵宗達の和歌巻断簡の他、伝宗達の扇面画4~5点でした。

中でもいかにも宗達ならではの大胆な画面分割の地平に光悦の書が踊る「月梅下絵和歌書扇面」や、いんげん豆のつるを自由に這わせた「いんげん豆図扇面」などは必見の作と言えるのではないでしょうか。

ちなみに「いんげん豆図扇面」では下絵部分に「金泥」などといった指示書きともとれる文字の記載もありました。その制作の過程に思いを馳せて作品を味わうのもまた良いかもしれません。


俵屋宗達「扇面散貼付屏風」(右隻) 江戸時代 出光美術館蔵

また扇面と言えばこれまた強烈な印象を残す大作が出ています。それが2点の扇面の屏風のうち、宗達の真筆とされる「扇面散貼付屏風」でした。

まるで闇夜に降る雪景色のような金の切箔を背景にして、数々の扇がどこか儚げに散り乱れています。藤やすすき、そして山影をも望むその空間は深淵で、単なる装飾性を通り越した叙情が漂っていました。

展示のハイライトは間違いなく伊年印の草花図の3点揃い踏みです。京博の「草花図襖」を筆頭に、根津美の「四季草花図屏風」、そして出光美の同じく「四季草花図屏風」が並ぶ様はまさに圧巻の一言でした。


伊年印「四季草花図屏風」(部分) 江戸時代 出光美術館蔵

もちろん同種のモチーフをとりながらも各作品には様々な違いがあります。私の好みは空間を埋め尽くさんとばかりに草花が濃密に絡む出光美の作品ですが、ここはしばしその華麗な競演に酔いしれました。

水墨の名手宗達の墨画が悪かろうはずもありませんが、それに対抗しうる画力を見せていたのが、第1部ではただの1点のみの出品となった其一の「雑画巻」でした。

如何せん長い巻物のため、展示では一部しか公開されていませんでしたが、墨の滲みを抑える処理を施した紙にタンポポやわらびなどを溌剌と描く様は其一の真骨頂です。途中に何度か巻替があり、会期を通すと全ての部分が展示されるそうですが、願わくは一度にまとめて見られればと思いました。


酒井抱一「白蓮図」 江戸時代 細見美術館

第2部の主役、抱一は1点、かの名作「白蓮図」が展示されています。まるでそれ自身が内から光を放っているかのような蓮の花弁と、下方で淡い緑色をたたえて開花を待つつぼみの凛とした趣きには改めて感銘しました。

ちなみにその作品のキャプションに記載されていましたが、同じく蓮を描いた宗達畢竟の大傑作、「蓮池水禽図」の箱に書かれた「宗達中絶品也」の一節は、抱一の手によるのだそうです。このした琳派の系譜も展示の随所で知ることが出来ました。


伝尾形光琳「紅白梅図屏風」(左隻) 江戸時代 出光美術館蔵

ところで下記のスケジュールの通り、この展覧会は完全2部制です。 第1部は宗達・光琳など、第2部では江戸琳派を中心に展観します。(出品リスト

第1部「煌めく金の世界」1月8日(土)~2月6日(日)
第2部「転生する美の世界」 2月11日(金・祝)~3月21日(月・祝)


工芸品を除き、会期途中で全ての絵画が入れ替わります。ご注意下さい。

なお第2部はほぼ出光の館蔵品展ですが、現会期の第1部は個人蔵を含め、京博、細見など、他館の作品が全体の1割ほどを占めています。その点でも見逃せない展示と言えそうです。

「俵屋宗達 琳派の祖の真実/古田亮/平凡社新書」

単なる名品展ではなく、例えば上でも触れた伊年印の作品の競演をはじめ、宗達と光琳の水墨の比較など、展示中に色々な仕掛けもあります。2008年に東博で大琳派展があったこともあり、見慣れた作品が多いのも事実でしたが、改めて琳派の魅力に触れるのには申し分のない展覧会でした。

「もっと知りたい尾形光琳/仲町啓子/東京美術」

我らが主人公抱一がメインの第2部も早々に駆けつけるつもりです。2月6日まで開催されています。おすすめします。

*関連エントリ
「琳派芸術 第2部 転生する美の世界」 出光美術館

*開館日時:火~日(月休。但し3月21日は開館。) 10:00~17:00(入館は16:30まで) 毎週金曜日は19:00まで。(入館は18:30まで)
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「彫刻家エル・アナツイのアフリカ」展(神奈川県立近代美術館葉山)にブロガーを招待

2月5日より神奈川県立近代美術館葉山で「現代アフリカ美術を代表する彫刻家」(公式HPより引用)、エル・アナツイの回顧展がはじまりますが、その初日レセプションにブロガー(20名)を招待する企画があるそうです。



「彫刻家エル・アナツイのアフリカ」展レセプションにブロガーの方20名をご招待

詳細は上記リンク先のリリースをご参照いただきたいのですが、初日の午後3時から5時まで、作家本人も登場するレセプションに参加出来ます。また写真の撮影も自身のブログ掲載に限って可能です。写真可と聞いて興味がわく方も多いのではないでしょうか。

日時:2月5日(土) 午後3時~5時
会場:神奈川県立近代美術館葉山
応募方法:名前、住所、電話番号、Eメールアドレス、自身のブログ名とURLを記入の上、メールにて応募。
締切:1月31日(月曜)
応募先メールアドレス:publicアットマークmoma.pref.kanagawa.jp



「壁(グリ)」2009年 アルミニウム、銅線 可変 作家蔵

一般的にレセプションというと平日に開催される機会が多いですが、この展覧会のそれは土曜日の昼下がりです。これは助かります。


「重力と恩寵」2010年 ボトルキャップ(アルミニウム)、銅線、500×1120cm 作家蔵

なお「彫刻家エル・アナツイのアフリカ」展は既に大阪の国立民族学博物館で開催済みです。神奈川県立近代美術館葉山へは巡回展となりますが、以前この展示の鮮やかなチラシを見つけてから非常に気になっていました。

彫刻家エル・アナツイのアフリカ展プレスリリース(pdf)

期限は来週の月曜、1月31日です。(応募多数の場合は抽選。)関心のある方は応募されては如何でしょうか。

彫刻家エル・アナツイのアフリカ@神奈川県立近代美術館葉山神奈川県三浦郡葉山町一色2208-1) 2月5日~3月27日



なおこの情報はツイッター上でいつも有益なアート情報を発しておられる@cezannismeさんに教えていただきました。ありがとうございました。harold_1234をフォローしましょう
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「酒井抱一 琳派の華」(前期) 畠山記念館

畠山記念館港区白金台2-20-12
「生誕250年 酒井抱一 琳派の華」(前期展示)
1/22-3/21



酒井抱一の生誕250年を記念し、館蔵の抱一作品を展観します。畠山記念館で開催中の「生誕250年 酒井抱一 琳派の華」へ行ってきました。

定評のある畠山記念館の琳派コレクションではありますが、今回のように抱一メインで紹介されること自体がかなり珍しいかもしれません。抱一及び、光琳、光悦、其一、乾山などの絵画、工芸の諸作品が、前後期合わせて計35点ほど登場しました。

しかしながら如何せん手狭なスペースです。さらに絵画は会期途中で全て作品が入れ替わります。(主な展示品の出品期間については以下の同館WEBサイトをご参照下さい。)

「生誕250年 酒井抱一 琳派の華」 前期:1/22~2/17、後期:2/19~3/21(一部作品は異なります。)

というわけで現会期の前期では抱一画が約5点(十二ヶ月花鳥図の6幅を1つと数えます。)、また他に光琳、其一、光悦、乾山画がそれぞれ各1~2点、さらにはほぼ展示替えのない乾山や光琳らの工芸品が約15点ほど紹介されていました。決して規模の大きな抱一回顧展ではありません。


酒井抱一「四季花木図屏風」

さて前半の抱一で最も艶やかなのは、ちらし表紙にも掲載された「四季花木図屏風」ではないでしょうか。右手上部には満開の桜の木が堂々たる姿を披露し、左手より下部には抱一一流の鮮やかな色彩と繊細な描写で示された四季の花々が広がっています。リズミカルに靡くすすきをはじめ、緩やかな曲線を描く草の蔓など、随所に動きを感じさせる一枚でもありました。


酒井抱一「十二ヶ月花鳥図」

名高い尚蔵館本に最も似た形式をとるという「十二ヶ月花鳥図」も6幅(1月~6月)展示されています。四季の彩りを時候の花鳥に組みこんでこれぞ抱一と言うべき風流な表現をとる連作ですが、今回改めて見てもこの畠山本が尚蔵館本に劣らない魅力をたたえているような気がしてなりません。

梅を大胆にクローズアップした1月、そして番いの鳥が可愛らしい仕草をとる6月など、情感漂う自然の景色が、あたかも俳諧をよむかの如く軽妙に描かれていました。


酒井抱一「富士見業平図屏風」

さて抱一以外にも其一の「曲水宴図」や乾山の香合や皿など、まさに眼福と言える作品が揃っていましたが、とりわけ至極感心したのは光悦の一点、「扇面月兎画賛」でした。

これは光悦では比較的珍しい絵画の形式をとる扇面でしたが、その中の構図、つまりは金箔を月、そして兎の跳ねる大地を緑に示して空間を区切る様子は、それこそ宗達の「蔦の細道図屏風」のように大胆でかつ斬新です。あくまでも小品ですが、この一点こそハイライトに他なりませんでした。


本阿弥光悦「赤楽茶碗 銘李白」

後期、2/19からは抱一の十二ヶ月花鳥図の後半部(7月~12月)をはじめ、風神雷神図、また其一の向日葵図などが展示されます。そちらも欠かさずに見に行くつもりです。

ところで抱一関連の書籍としておすすめしたいのが、先日も拙ブログでご紹介した別冊太陽の酒井抱一です。

別冊太陽 「江戸琳派の粋人 酒井抱一」

「別冊太陽 酒井抱一/平凡社」

またもう一つ、東京美術の「もっと知りたい酒井抱一」も抱一ファン必携の書籍です。かの玉蟲敏子氏が同シリーズでは群を抜くほどの充実したテキストで抱一の全貌を明らかにしています。こちらも是非書店でご覧ください

「もっと知りたい酒井抱一/玉蟲敏子/東京美術」

前期は2月17日まで、展覧会は3月21日まで開催されています。



*関連エントリ
「酒井抱一 琳派の華」(後期) 畠山記念館

*開館日時:火~日(毎週月曜日、及び2/18は休館。但し3/21は開館。) 10:00~16:30(入館は16時まで。) 
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「TWS-Emerging 池田衆/江口綾音/坂根輝美」 TWS本郷

トーキョーワンダーサイト本郷文京区本郷2-4-16
TWS-Emerging 153 池田衆 - trivial today, transient tomorrow/154 江口綾音 - フワ・モコ・サラサ・ラ/155 坂根輝美 - Schizophrenia」
1/8-1/30



トーキョーワンダーサイト本郷で開催中の「TWS-Emerging」最終回、池田衆、江口綾音、坂根輝美の各個展へ行ってきました。

作家プロフィールについてはTWS公式WEBサイトをご覧ください。

池田衆(1789~)、江口綾音(1985~)、坂根輝美(1978~)

なお池田衆については2009年のワンダーウォールで審査員長賞を受賞しています。また昨年の「URTRA」にてマキファインアーツからの出品もありました。


池田衆「a faint smell of memory」2009年 写真、コラージュ

さて今回もそれぞれ展示室を1つから2つ用い、三者三様の展示が繰り広げられていましたが、中でも美しいのは審査員長賞を受賞した池田衆の写真を用いたインスタレーションでした。

池田は自らの撮影した風景写真などをコラージュ、またカットアウトし、そこに余白を取り入れた上にて新たなイメージをモザイク状に写し出しています。とりわけ圧巻なのは桜をモチーフにした大作、「Withuot time blinking your eyes」でした。

横3メートル超、そして高さも1.5メートルほどに写された大振りのしだれ桜が、その独自の技法、つまりは切絵のように切り刻まれたイメージとして浮かび上がっています。足元を見やるとその残りの欠片がさながら桜の散った花びらのように広がっていました。

また正面から当てられた強い照明も効果的です。背景には色を失った桜が、モノクロームな一種の影絵として漂っていました。


坂根輝美「Schizophrenia」2009年 紙本彩色

猟奇的な人物イメージなどを写実的に描いた坂根輝美も魅力的です。飛び出した瞳と何やら不気味に爛れた白い仮面は、人間の心の闇の奥底に潜む根源的な魔性を表しているかのようでした。

30日まで開催されています。おすすめします。

*開廊日時:1/24以外無休。11:00~19:00
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「カンディンスキーと青騎士」 三菱一号館美術館

三菱一号館美術館千代田区丸の内2-6-2
「カンディンスキーと青騎士 レンバッハハウス美術館蔵」 
2010/11/23-2011/2/6



世界屈指とも言われるミュンヘン市立レンバッハハウス美術館の「青騎士」コレクションを概観します。三菱一号館美術館で開催中の「カンディンスキーと青騎士」展へ行って来ました。

カンディンスキーと聞くと何かと後期の抽象画に人気が集まるところですが、今回の展覧会ではそれ以前、ドイツ表現主義の中核でもある「青騎士」と呼ばれた時代の作品を紹介しています。構成は以下の通りでした。

序章 レンバッハ、シュトゥックと芸術の都ミュンヘン
第1章 ファーランクスの時代 旅の時代 1901-1907年
第2章 ムルナウの発見 芸術的総合に向かって 1908-1910年
第3章 抽象絵画の誕生 青騎士展開催へ 1911-1913年



ヴァシリー・カンディンスキー、フランツ・マルク編「青騎士」年鑑 1912年ピーパー社、ミュンヘン(1976年複製版) レンバッハハウス美術館蔵

「青騎士」へ至る過程、つまりカンディンスキーとマルクが新しい芸術理念を掲げて1912年に出版した年鑑「青騎士」と、その理念に共鳴する画家たちによって開催された同名の展覧会への歩みを、グループに属したミュンターやマッケらの作品を含めた60点の作品によって明らかにしていました。

展示はカンディンスキーがミュンヘンに来た1896年当時、画壇の中心に君臨していたレンバッハの諸作品より始まります。レンバッハはミュンヘン芸術家協会を束ね、主に政治家などの肖像画などを制作して高い地位を得ていました。

そしてそのレンバッハに対抗したのがミュンヘン分離派と呼ばれるグループの一人、フランツ・フォン・シュトゥックです。分離派の象徴的アイコンでもあったパラス・アテナをモチーフにした「闘うアマゾン」(1867年)など、これまでにない作品で新たな表現の在り方を模索していました。


ヴァシリー・カンディンスキー「ガブリエーレ・ミュンターの肖像」1905年 油彩、カンヴァス レンバッハハウス美術館蔵

ミュンヘンへやって来たカンディンスキーは当初、そのシュトゥックに師事しますが、路線の違いから後に離れ、芸術家ファーランクスを結成します。ここで重要な存在として登場するのが、カンディンスキーと極めて親密な関係にあったガブリエーレ・ミュンターです。この時期のカンディンスキーは「彩色ドローイング」とも呼ばれる点描的表現を用い、このミュンターと旅しながら風景などを描き続けていました。


ヴァシリー・カンディンスキー「花嫁」1903年 グアッシュ、褐色のカードボード レンバッハハウス美術館蔵

この「花嫁」(1903年)こそ彩色ドローイング時代のカンディンスキーを知る上で欠かせない一枚と言えるかもしれません。粒状の絵具をペインティングナイフを用いて塗りこめています。後のカンディンスキーとは似ても似つかない画風ですが、その光輝く色彩には目を奪われました。

1908年、ミュンヘン郊外のムルナウに滞在したカンディンスキーは、表現主義の影響を受けたこともあってか、作風を徐々に変化させます。筆致は素早くなり、また色面は時に幾何学模様を描いて、後の抽象への道を切り開きました。


ヴァシリー・カンディンスキー「ムルナウ近郊の鉄道」1909年 鉛筆・クレヨンの上に油彩、 カードボード レンバッハハウス美術館蔵

この時期の作品として是非とも挙げておきたいのが「ムルナウ近郊の鉄道」(1909年)です。白い煙をはいて走り行く汽車の姿が、緑深きムルナウを背景に描かれています。ここにもはや彩色ドローイングの面影はありません。タッチはリズムをとるかように軽くなり、色と色とは互いに溶け合って瑞々しい面を構成していました。


ヴァシリー・カンディンスキー「印象3(コンサート)」1911年 オイルテンペラ、カンヴァス レンバッハハウス美術館蔵

マルクとの出会いを迎えた1911年まで来ると青騎士展はもう間近です。同年、シェーンベルクのコンサートで強い感銘を受けたカンディンスキーは「印象3 コンサート」(1911年)を描き、いよいよ新時代の扉を開きます。黒の面に還元されたステージ上のピアノ、そして単純な山型の線で表された聴衆の上を、鳴り響く音楽が黄色い煌めきを伴って広がっていました。


ヴァシリー・カンディンスキー「コンポジション7のための習作2」1913年 オイルテンペラ、カンヴァス レンバッハハウス美術館蔵

ラストには「コンポジション7のための習作」(1913年)も登場し、抽象画家カンディンスキーの行く末が示されます。2メートル×3メートルの完成作に最も近いというこの作品では、色や線はもはや何物にも束縛されることなく自由に踊っていました。

今回の展示ではいわゆるこの手の抽象は少なく、具象時代の小品が殆どですが、順を見ていくとカンディンスキーの半生を追体験しているような気分になります。ミュンターとの関係からハイライトの「青騎士」展へと至る展示構成はストーリー性も抜群でした。


アレクセイ・ヤウレンスキー「スペインの女」1913年 油彩、カードボード レンバッハハウス美術館蔵

マルクやマッケはもとより、私の好きなヤウレンスキーが何点か見られただけでも大きな収穫でした。作品は多くありませんが、比較的名前を耳にするわりには展覧会で紹介されることのなかった「青騎士」を知る絶好の機会であることは間違いありません。

「青騎士/カンディンスキー、フランツ・マルク/白水社」

[巡回スケジュール]
2011年2月15日(火)~4月17日(日)愛知県美術館
2011年4月26日(火)~6月26日(日)兵庫県立美術館
2011年7月5日(火)~9月4日(日)山口県立美術館


2月6日まで開催されています。

*開館日時 火~日(月休、祝日の場合は翌日火曜日休館。) 10:00~20:00(水木金)、10:00~18:00(火土日祝) 入場閉館の30分前まで。
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「増子博子 - 盆栽サピエンス」 Gallery Jin Projects

Gallery Jin Projects台東区谷中2-5-22
「増子博子 - 盆栽サピエンス」
1/8-1/29



Gallery Jin Projectsで開催中の増子博子個展、「盆栽サピエンス」へ行って来ました。

作家、増子博子のプロフィールなどについては同画廊WEBサイトをご覧下さい。

増子博子/MASUKO Hiroko(展覧会情報)

2008年に宮城教育大学大学院を修了後、ワンダーサイト本郷での個展の他、群馬青年ビエンナーレなどに入選しました。

さて増子は2009年、同画廊の個展にて、盆栽と剣を融合させるという独特なモチーフのペン画を展示していましたが、今回は同じく盆栽ながらもその受ける器、つまりは「盆栽鉢」なるものを描いた作品が登場していました。

上記DMにも掲載された「繁茂緑長方鉢」(2010)を見ても明らかなように、水抜きの穴の空いた鉢はそれこそらんどうです。盆栽をメカ擬人化してさながら見栄をきる役者のような姿を見せた前回展の剣とは一変、まさにその脱け殻を表したような空間のみが出現する様子にはいささか意表を突かれる面もありました。

それにしても細やかなペンによって装飾の施された鉢の表面に要注目です。山々の連なる雄大な景色とともに、鮮やかな大輪の花、そして奇岩とともに、うねる枝の先にナイフをつけた松が堂々描かれています。盆栽剣は残された鉢にも確かな痕跡を残していました。

これらのペン画約10点の他、漫画作品なども数点紹介されています。これまではともかく盆栽と剣という摩訶不思議なモチーフそのものの印象が強かっただけに、作家の展開する物語世界にも興味をひかれるものがありました。

増子博子 hiroko MASUKO NOTE(作家ブログ)/@bonsaiKO(ツイッター)

1月29日まで開催されています。

*開廊日時:水~日(月火休) 12:00~19:00(最終日は17:00まで)
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「DOMANI・明日展2010」 国立新美術館

国立新美術館港区六本木7-22-2
「未来を担う美術家たち DOMANI・明日展2010」
2010/12/11-2011/1/23



年を跨ぐ新美の現代アート展として定着してきた感はあります。国立新美術館で開催中の「未来を担う美術家たち DOMANI・明日展2010」へ行って来ました。

本展の概要については公式WEBサイトをご参照下さい。割引引換券(大人・大学生各200円引き) 

「未来を担う美術家たち DOMANI・明日展2010」

なおサイト中にこれまで開催されたギャラリートークのyoutube動画が掲載されています。これは要チェックです。

また今年の出品作家は以下の12名でした。 (作家紹介

近藤高弘/町田久美/山口紀子/流麻二果/鈴木涼子/近藤聡乃/遠山香苗/赤崎みま/神戸智行/古郷秀一/三好耕三/深井聡一郎

ともかくも会場はあの巨大な箱ということで、展示の如何によっては空間にのまれてしまうことも少なくありませんが、高い天井と大きな壁面を逆手にとっての見事な展示を見せていたのは日本画の神戸智行でした。

神戸はちらし表紙にも掲載された水面にたゆたう桜の花びらと金魚を描いた絵画を出品していましたが、その展示方法こそ注目すべきものがあります。80×150センチのパネルを何と32枚も用い、その作品世界を床面から天井付近まで展開させる様子は、まさに一つの魅力的なインスタレーションとして成功していました。

透明感とのある水色とどこか控えめに泳ぐ金魚、そして儚くも散る桜の花の作り出す「美」は、単なる絵画平面を通り越して空間全体へと広がっています。その情緒にしばし酔いしれました。



ホワイトキューブには色鮮やかで伸びやかなペインティングがよく映えるのかもしれません。ユニマテの個展の記憶も新しい流麻二果の十数点の絵画は、その溢れ出た絵具のせめぎあいから様々な心象風景を呼び起こします。また古紙や毛糸を用いたインスタレーションも美感に秀でていました。

色々な意味でインパクトがあるのは鈴木涼子のフィギュア・コスプレの連作群かもしれません。自信満々にポーズを構えるその姿を見ると思わず後退りしてしまいました。

人気の町田久美は不思議と現在開催中の西村画廊の個展の方がよく見えました。とは言え、旧作群を中心に13点も出品されています。ここはやはり見逃せない箇所かもしれません。

町田久美展@西村画廊 (2010/12/14-2011/2/5)



深井聡一郎によるゴシック建築風の陶のミニチュアに後ろ髪をひかれました。その作品のいわゆる『重み』は他とは一線を画しています。

DOMANI展ツイッターアカウント @DOMANI2010pr  harold_1234をフォローしましょう

1月23日までの開催です。  *開館日時:日~月(火休) 10:00~18:00、金曜日は20:00。入場は閉館の30分前まで。
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「李禹煥 展」 SCAI

SCAI THE BATHHOUSE台東区谷中6-1-23
「李禹煥 展」
1/14~3/5



SCAI THE BATHHOUSEで開催中の「李禹煥 展」へ行ってきました。

本展の概要などは画廊WEBサイトをご覧下さい。

李禹煥 展@SCAI

さて今回は新作のペインティング展とのことで、主に2メートル前後の「dialogue」シリーズの平面作品が計5、6点ほど出品されています。入口脇にはストロークの2つ配された作品が掲げられ、奥のメインスペースへ進むと3方向の壁に各1点ずつ、それぞれ中央と左にストロークが上から下へと流れる作品が、また右には同じくストロークが左から右へと進む作品が展示されていました。

あくまでも空を描く白い平面と仄かなグラデーションを描く銀色のストロークは、それを包み込むホワイトキューブとも共鳴し、まさに李ならではの瞑想的な空間を生み出しています。しんと静まりかえった白の上で微かにざわめくストロークはまるで美しい海岸線で広がる白砂のようでした。

新作展ということで李の次の展開にも期待してはいましたが、どちらかと言うとこれまでの彼の変わらぬ魅力を味わう展覧会であるかもしれません。ただ壇上の小品にはいささか不意を突かれました。

作品の前にただ立つのではなく、歩き、また立ち止まりながら多様に変化する景色を楽しみたい展示です。

「余白の芸術/李禹煥/みすず書房」

そういえば直島に李禹煥美術館が出来たと聞きました。そちらも行ってみたいです。

李禹煥美術館@ベネッセアートサイト直島
直島に新たな安藤建築、李禹煥美術館が開館@excite.ism

3月5日まで開催されています。  *開廊日時:火~土 12:00~19:00(日月祝休)
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「狩野一信 五百羅漢展」トークショー(シンポジウム)を開催!

この春、江戸博で開催される話題の「狩野一信 五百羅漢」展ですが、関連するトークショーとシンポジウムの概要が発表されました。



シンポジウム 「知られざる幕末の絵師 狩野一信」

概要:増上寺蔵「五百羅漢図」とともに、最新の狩野一信研究の成果を研究者が発表し、討議します。
日時:2011年4月16日(土) 14:00-16:00
会場:江戸東京博物館1階会議室
定員:130名
出演:安村敏信(板橋区立美術館館長)、山下裕二(本展監修者・明治学院大学教授)、高橋利郎(成田山書道美術館学芸員)、佐々木英理子(板橋区立美術館学芸員)

トークショー 「羅漢応援団、狩野一信を応援する」

概要:日本美術応援団が本展について語ります。
日時:2011年4月30日(土) 17:00-18:30
会場:江戸東京博物館ホール
定員:400名
出演:赤瀬川原平(美術家、作家)、南伸坊(イラストレーター)、山下裕二(本展監修者・明治学院大学教授)

いずれも聴講無料。ただし本展観覧券(半券可)が必要。

申込み方法
往復はがきに①イベント名 ②氏名(ふりがな) ③郵便番号・住所 ④電話番号 ⑤年齢を記入のうえ、下記まで郵送。
1枚のはがきで1イベント・1名での応募可。申込多数の場合は抽選。

応募締切
シンポジウム:3月25日(金)必着
トークショー:4月6日(水)必着

申込先
〒100-8066 東京都千代田区大手町1-3-7 日本経済新聞社文化事業部「五百羅漢イベント」係



拙ブログでも勝手応援中の本展覧会ですが、まさかこれほど強力な内容のシンポジウムやトークショーが企画されているとは思いませんでした。

「日本美術応援団/赤瀬川原平、山下裕二/ちくま文庫」

特に日本美術の特質を斬新な視点で切り込んだ「日本美術応援団」メンバーのトークショーは聞き逃せません。これは間違いなく抽選となりそうです。



何度でも書きますが、以前この狩野一信の五百羅漢図が一部栃木県立博物館で公開されたのを見た時、そのあまりにも鮮烈な表現に腰を抜かしそうになりました。今回はそれが画期的な方法で全100幅一挙紹介されます。考えただけでも頭の中がくらくらするような凄まじい展覧会です。

なお展示前売券が1月15日から発売開始となりました。こちらも要チェックです。

「五百羅漢 狩野一信」 チケット情報

昨年11月に参加させていただいた記者発表会の記事は以下にまとめてあります。宜しければ合わせてご覧ください。

「狩野一信 五百羅漢」展 記者発表会 (前編)
「狩野一信 五百羅漢」展 記者発表会 (後編)


もう春が待ちきれません。「五百羅漢 狩野一信」展は3月15日より開催されます。



「法然上人八百年御忌奉賛 五百羅漢 増上寺秘蔵の仏画 幕末の絵師 狩野一信」
会期:平成23年(2011)3月15日(火)~5月29日(日)
会場:江戸東京博物館 1階展示室 (東京都墨田区横網1丁目4番1号)
主催:東京都江戸東京博物館/大本山増上寺/日本経済新聞社
監修:山下裕二(明治学院大学教授)
企画協力:浅野研究所

「日本の美術 狩野一信/松嶋雅人/至文堂」

注)写真は記者発表会時に撮影。掲載は主催者の許可を得ています。
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「安田悠 - 面影の向こう」 YUKA CONTEMPORARY

YUKA CONTEMPORARY文京区関口1-30-9
「安田悠 - 面影の向こう」
2010/12/11-2011/1/22



YUKA CONTEMPORARYで開催中の「安田悠 - 面影の向こう」へ行ってきました。

作家、安田悠のプロフィールについては同画廊WEBサイトをご参照下さい。

安田悠 『面影の向こう』@YUKA CONTEMPORARY

また作家ご自身もWEBサイトをお持ちです。

安田悠公式サイト/公式ブログ

安田は2008年のVOCA展の際、私にとっては殆ど衝撃的とも言えるほど強い印象を残しましたが、今回の個展に出ている作品はその時と比べると色々な意味でやや趣きを変えているように思えてなりません。

出品は大小様々な新作の絵画、約10点です。朧げな幻影のような物語風景が、鮮やかな色遣いとともに半ばアンフォルメル絵画を思わせる表現で描かれています。色彩の波に覆われた森の中に点在する小さな人間たちが、今にも消えゆくかのようにして彷徨っていました。

以前はともかくうねるような線描に力強さを感じましたが、今回の一部の作品については一転、深淵な闇を連想させるような静的な面が広がっています。また色遣いも透明感が増し、見ているとその色の湖に引込まれるような錯覚さえ受けました。

激しきパトスは鳴りを潜めています。カオスの中に生み出された静寂の空間は意外なほどに調和していました。

展示風景はお馴染み幕内さんのブログに掲載されています。是非ご覧ください。

review:安田悠個展「面影の向こう」@ex-chamber museum

1月22日まで開催されています。 *開廊日:月、水~土 11:00-19:00 (日火祝休)
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「第5回 shiseido art egg 藤本諒」 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階)
「第5回 shiseido art egg 藤本諒 - かすみをたべて幻視する。」
1/7-1/30



新春の資生堂ギャラリーを飾る恒例のプログラムです。第5回アートエッグ、藤本諒個展「かすみをたべて幻視する。」へ行ってきました。

藤本諒WEBサイト

最近のアートエッグというと、天井高のある会場の特性を活かしたインスタレーションなどが目立っていましたが、今回はむしろ素っ気なく思えるほどシンプルな展示でした。一見するところの素材はいわゆる写真です。何やらうっすら靄のかかった風景を写したような作品、大小計20点が、あくまでも寡黙に並んでいました。

光と闇とが混じる大気の中、殆ど唯一その形を確認できるのは、何気なく背を向ける女性や海水浴をする人々、そして動物や飛行機などのモチーフです。それらはあたかも画面に挿入されたように突然、また何ら脈絡がないように出現していましたが、その方法こそが作家の追求してきた独自のものでした。

つまり写し出された景色は単なる写真ではありません。一端カメラで捉えたモチーフを別の素材と組み合わせ、それをさらにホジフィルムで撮影するという手の込んだ方法で、例えば夢の中の光景のような幻を見せているというわけでした。

奥の小展示室には初公開となるカラーの新シリーズ、「planet」6点が並べられています。正面の2点、鶴と飛行機をモチーフとした作品に目を奪われました。実のところ初めは単なる写真展にしか見えませんでしたが、しばらく居るとモチーフの如く、自分も作品の靄に包まれているような気がしてなりません。作品は平面から三次元の空間へと滲み出していました。



「第5回 shiseido art egg」スケジュール
藤本涼  1月7日(金)~30日(日)
今村遼佑 2月4日(金)~27日(日)
川辺ナホ 3月4日(金)~27日(日)

30日までの開催です。
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