『ART IN YOU アートはあなたの中にある』 三井住友銀行東館 1Fアース・ガーデン

三井住友銀行東館 1Fアース・ガーデン
『ART IN YOU アートはあなたの中にある』
2023/5/20~6/17



福祉実験ユニット、ヘラルボニーの契約作家、16名の作品を紹介する展覧会『ART IN YOU』が、三井住友銀行東館 1Fアース・ガーデンにて開かれています。

2018年、松田崇弥、松田文登により設立されたヘラルボニーは、主に知的な障がいのあるアーティストと契約を結ぶと、ライセンスビジネスや作品をプロダクトに落とし込むブランドの運営、また建設現場の仮囲いに作品を転用する「全日本仮囲いアートミュージアム」などさまざまな事業を展開してきました。


森啓輔『Let it be』

また2021年には盛岡市に「HERALBONY GALLERY」を開設すると、作品の販売を通して、各アーティストの制作を世に積極的に広めてきました。


藤田望人『と・と・と』、『apples』

今回の『ART IN YOU』では金沢21世紀美術館のチーフキュレーターである黒澤浩美のキュレーションのもと、ヘラルボニーの16名の契約作家の作品が展示されていて、絵画を中心にコラージュといった多様な表現を見ることができました。


井口直人『無題』

キュビズムを思わせるような画面構成と鮮やかな色彩を特徴とする森啓輔の絵画や、コピー機を用い自らの身体を介在させた井口直人のコラージュ、さらにはグラフィティアートのような味わいが感じられる藤田望人の絵画などは特に魅惑的だったかもしれません。


GAMON『無題』

このほか、G7広島サミット国際メディアセンターのIoTスマートごみ箱「SmaGO」のデザインに作品が採用されたGOMONの力強い絵画にも心を引かれました。


内山.K『マックィーンクワガタの地図』、『トリケラパークの地図』

毎週土日にはヘラルボニースタッフによるギャラリートークも行われます。(時間:14:00〜14:30)予約は不要です。こちらに参加して見るのも面白いかもしれません。


丸の内にて異彩が放たれる。福祉実験ユニット、ヘラルボニーが16作家による『ART IN YOU』を開催!|Pen Online


『ART IN YOU アートはあなたの中にある』展示風景

会期中は無休です。6月17日まで開催されています。

『ART IN YOU アートはあなたの中にある』@heralbony) 三井住友銀行東館 1Fアース・ガーデン
会期:2023年5月20日(土)~6月17日(土)
休館:会期中無休。
料金:無料
時間:10:00~18:00 *土日祝は13:00から 
住所:千代田区丸の内1-3-2
交通:東京メトロ丸の内線・東西線・半蔵門線・千代田線、都営三田線大手町駅C14出口より直結。
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『橋本関雪 生誕140周年 KANSETSU』 福田美術館・嵯峨嵐山文華館

福田美術館・嵯峨嵐山文華館
『橋本関雪 生誕140周年記念 KANSETSU 入神の技・非凡の画』
2023/4/19~7/3


橋本関雪『麗日図』 1934年 個人蔵

日本画家、橋本関雪の生誕140年を期し、福田美術館、嵯峨嵐山文華館、白沙村荘橋本関雪記念館の3館にて『橋本関雪 生誕140周年記念 KANSETSU 入神の技・非凡の画』展が開かれています。

まず嵐山第1会場である福田美術館では、82年ぶりに公開される『俊翼』をはじめ、代表作『木蘭』といった文展出品の作品が公開されていて、関雪の画家としての歩みや到達点を追っていました。

神戸生まれの関雪は儒学者の父の薫陶を受けて育つと、詩文の教養を身につけ、京都で四条派に学び、写実せいと装飾性を持ち得た作品を制作しました。


橋本関雪『仙姐図』 1923年 福田美術館

そして南画や中国絵画の要素を加えて独自の画風を確立すると、モナリザといった西洋絵画の影響を思わせるような『仙姐図』なども描きました。


橋本関雪『木蘭』 1918年 白沙村荘橋本関雪記念館

『木蘭』は中国、北魏の物語「木蘭詩」に登場する少女を主題とした作品で、梅に水を飲ませる戦友のそばにて、故郷に想いを寄せながら休憩する戦いに赴いた男装の少女を描いていました。


橋本関雪『俊翼』 1941年 福田美術館

翼を広げて飛ぶ猛禽のすがたを描いた『俊翼』とは、橋本関雪聖戦記念画展に出品されたもので、鷹に戦闘機のイメージを投影した寓意的な作品でした。


橋本関雪『春山遊猿』 1942年 個人蔵

このほか、狸や狐、それに猿などの動物をモチーフとした作品も魅惑的だったかもしれません。


橋本関雪『芍薬白猫」 1930年 福田美術館

また芍薬の花の咲く中、陽の光を浴びて佇む『芍薬白描』の瀟洒な味わいにも心を惹かれました。


橋本関雪『閑適』 1918年 白沙村荘橋本関雪記念館

これ続く嵐山第2会場の嵯峨嵐山文華館では、『狗子』に『梅渓漁夫』、また『閑適』など白沙村荘橋本関雪記念館の作品が紹介されていて、花鳥に人物、風景などを巧みに描き分ける関雪の高い画技を見ることができました。


橋本関雪『前田又吉追善茶会画巻』 1901年 白沙村荘橋本関雪記念館

18歳の時に描いたという『前田又吉追善茶会画巻』も目を引くのではないでしょうか。前田の遺族が没後7年に遺愛の品を展観して供養した時の様子を表したもので、盆栽などの品々を端正に写しとっていました。


橋本関雪『梅渓漁夫』 1924年 白沙村荘橋本関雪記念館

展示替えの情報です。会期中作品が入れ替わります。

『橋本関雪 生誕140周年記念 KANSETSU 入神の技・非凡の画』作品リスト(PDF)
前期:4月19日(水)~5月29日(月)
後期:5月31日(水)~7月3日(月)


5月29日に前期展示が終わり、展示替えののち、5月31日より後期展示がスタートします。


橋本関雪『狗子』 1942年頃 白沙村荘橋本関雪記念館

今回はスケジュールの都合上、白沙村荘橋本関雪記念館の展示を見ることはできませんでしたが、福田美術館と嵯峨嵐山文華館の2館の内容だけでも想像以上に充実していました。まさに関雪の回顧展の決定版と捉えて差し支えありません。



7月3日まで開催されています。

『橋本関雪 生誕140周年記念 KANSETSU 入神の技・非凡の画』 福田美術館@ArtFukuda
会期:2023年4月19日(水)~ 7月3日(月)
 *前期:4月19日(水)~5月29日(月)、後期:5月31日(水)~7月3日(月)
休館:5月30日(火)
時間:10:00~17:00。最終入館は16時半まで。
料金:一般・大学生1500(1400)円、高校生900(800)円、小中学生500(400)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *嵯峨嵐山文華館両館共通券あり。
住所:京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3-16
交通:嵐電(京福電鉄)嵐山駅下車、徒歩4分。阪急嵐山線嵐山駅下車、徒歩11分。JR山陰本線(嵯峨野線)嵯峨嵐山駅下車、徒歩12分。
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『西島雄志 瑞祥 zui-shou ― 時の連なり ―』 ポーラ ミュージアム アネックス

ポーラ ミュージアム アネックス
『西島雄志 瑞祥 zui-shou ― 時の連なり ―』
2023/4/28〜6/4



1969年に生まれた作家、西島雄志は、ねじ巻いた銅線をロウ付けして造形した立体作品を手がけ、国内の芸術祭や展覧会に参加するなどして活動してきました。

その西島の個展が『西島雄志 瑞祥 zui-shou ― 時の連なり ―』で、会場を4つの空間に分け、新作のインスタレーションを含む4点の作品を展示していました。



一羽の八咫烏を象った作品に導かれ、暗がりのスペースへと進むとすがたを見せるのが『神使  shin-shi - 空』と題したインスタレーションで、八咫烏の群れが羽を広げて宙を舞う光景を作り出していました。



さらに進むとタイトルの『瑞祥 zui-shou』が展示されていて、鳳凰と龍と思しき生き物が断片的にでかつ円を描くようにして飛ぶ様子を見ることができました。



そして最後のスペースでは、ニホンオオカミを神格化させたという『真神 makami』が光を浴びながら立つすがたを見せていて、堂々としながらも神秘的な佇まいにしばし見惚れました。



いずれの作品とも自らの手で銅線のパーツを巻いてひとつひとつつなげて作っていて、会場内にて公開された制作中の記録映像からも、その精緻な職人技というべき膨大な手仕事を知ることができました。


撮影も可能です。6月4日まで開催されています。

『西島雄志 瑞祥 zui-shou ― 時の連なり ―』 ポーラ ミュージアム アネックス@POLA_ANNEX
会期:2023年4月28日(金)〜6月4日(日)
休館:会期中無休。
料金:無料
時間:11:00~19:00 *入場は18:30まで 
住所:中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
交通:東京メトロ有楽町線銀座1丁目駅7番出口よりすぐ。JR有楽町駅京橋口より徒歩5分。
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『リナ・ボ・バルディ展 with Marcenaria Baraúna』 ブラジル大使館

ブラジル大使館
『リナ・ボ・バルディ展 with Marcenaria Baraúna』
2023/5/9〜5/25



1914年にイタリアで生まれたリナ・ボ・バルディは、椅子やファッション、都市デザインなどを手がけると、戦後はブラジルへと移住し、自邸「ガラスの家」やサンパウロ美術館などを設計しました。

そのリナ・ボ・バルディの設計した椅子に着目して活動を紹介するのが『リナ・ボ・バルディ展 with Marcenaria Baraúna』で、会場にはヴィンテージ作品のほか、リナ・ボ・バルディが立ち上げに関わり、現在もサンパウロにて家具を作り続けるバラウナ工房の現行品が展示されていました。



まず最初に紹介されるのがヴィンテージ作品で、自邸「ガラスの家」やサンパウロ美術館の講堂、また「ベナンの家」のレストランのためにデザインした椅子が並んでいました。



リナ・ボ・バルディは自身の手がけた建物の多くにオリジナルの椅子をデザインしていて、木材によるシンプルな構造をした作品が目立っていました。



サンパウロのポンペイ地区の文化施設「SRSCポンペイア」では、建物だけでなく、家具や職員の制服、グラフィックなどをリナ・ボ・バルディが手がけていて、図書室や食堂のための椅子もデザインしました。



これに続くのが主にバラウナ工房による現行品の展示で、同工房の協力のもとに世界で初めて復刻された「SESC ポンペイア文化センター」のチェアや初公開となる「キッズデスク」などが紹介されていました。



直接座って感触を確かめることのできる現行品の展示も良かったかもしれません。2室に加えて映像とコンパクトな内容でしたが、思いの外に見応えがありました。



間もなく会期末です。5月25日まで開催されています。

『リナ・ボ・バルディ展 with Marcenaria Baraúna』 ブラジル大使館
会期:2023年5月9日(火)〜5月25日(木)
休館:土曜、日曜。
料金:無料
時間:11:00~17:00 
住所:港区北青山2-11-12
交通:東京メトロ銀座線外苑前駅3番出口より徒歩10分
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『恐ろしいほど美しい 幕末土佐の天才絵師 絵金』 あべのハルカス美術館

あべのハルカス美術館
『恐ろしいほど美しい 幕末土佐の天才絵師 絵金』
2023/4/22〜6/18


『恐ろしいほど美しい 幕末土佐の天才絵師 絵金』展示風景

幕末から明治初期にかけて現在の高知県で活動した絵師、金蔵は、数多くの芝居絵屏風などを残し、「絵金さん」の愛称で地元の人々に親しまれてきました。

その絵金の高知県外では半世紀ぶりとなる展覧会が『恐ろしいほど美しい 幕末土佐の天才絵師 絵金』で、会場では屏風絵や絵馬提灯など約100点の作品が公開されていました。

まず冒頭に並ぶのが絵金の代表作といえる芝居絵屏風で、いずれも絵金が30代にして野に下って以降、町絵師として描いたものでした。

いずれの芝居絵屏風もほぼ二曲一隻のかたちをしていて、歌舞伎の一場面などを極めて劇的な構図とビビッドな色彩によって表していました。

またこの他にも『力士図』や『常盤御前図』といった掛け軸の小品をはじめ、四季の風物を軽妙な筆致で描いた『土佐年中風俗絵巻』なども展示されていて、いわゆる血みどろや劇画的だけでない絵金の多様な作風を見ることができました。


第2章『高知の夏祭り』展示風景。手前は左から『船弁慶』、『近江源氏先陣館 盛綱陣屋』。ともに高知市朝倉 倉・前田町内会。

高知の夏祭りをイメージした展示が殊更に魅力的だったかもしれません。ここでは高知市朝倉の朝倉神社の山門型の絵馬台をはじめ、香美市土佐山田町の八王子宮に伝わる「手長足長絵馬台」を設置し、絵金の芝居絵屏風を並べていて、まるで同地の「絵金祭り」に出かけているような気分を味わうことができました。


第2章『高知の夏祭り』展示風景

この芝居絵屏風は江戸末期頃には夏祭りに飾られたとされていて、今でも高知県内の約10箇所の神社にて昔ながらに屏風を絵馬台に飾る風習が残されました。


左から『敵討優曇華亀山 赤堀屋敷』、『蝶花形名歌島台 小坂部館』。ともに芳原下西組。

また夏祭りにて提灯や蝋燭の灯りで浮かび上がらせている芝居絵屏風を、炎のゆらめく蝋燭をイメージした照明によって追体験できるような工夫も面白いのではないでしょうか。

「友竹」の隠し落款を探しながら芝居絵屏風を見るのも楽しいかもしれません。その類まれなる個性に改めて感じ入るものがありました。



会期中に展示替えが行われます。

『恐ろしいほど美しい 幕末土佐の天才絵師 絵金』目録(PDF)
前期:4月22日(土)〜5月21日(日)
後期:5月23日(火)〜6月18日(日)

前期の会期は明日21日までです。その後、芝居絵屏風を中心に入れ替えがあり、23日より後期がスタートします。


絵馬提灯『釡淵双級巴(かまがふちふたつどもえ)』展示風景。創造広場「アクトランド」

第2章「高知の夏祭り」の展示スペースは撮影が可能でした。


幕末の土佐が生んだ天才絵師、絵金。その恐るべき魅力に酔いしれる。『幕末土佐の天才絵師 絵金』が開催中|Pen Online

6月18日まで開催されています。おすすめします。

『恐ろしいほど美しい 幕末土佐の天才絵師 絵金』@ekinten_osaka) あべのハルカス美術館@harukas_museum
会期:2023年4月22日(土)〜6月18日(日)
 *前期:4月22日(土)〜5月21日(日)、後期:5月23日(火)〜6月18日(日)
時間:10:00~20:00(火〜金)、10:00〜18:00(月、土、日、祝)
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:4月24日(月)、5月8日(月)、5月22日(月)
料金:一般1600円、大学・高校生1200円、中学・小学生500円。
住所:大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階
交通:近鉄線大阪阿部野橋駅西改札、およびJR線天王寺駅中央改札より徒歩3分。地下鉄御堂筋線天王寺駅西改札より徒歩2分。*それぞれシャトルエレベーターまでの所要時間。
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『リニューアルオープン記念特別展 Before/After』 広島市現代美術館

広島市現代美術館
『リニューアルオープン記念特別展 Before/After』
2023/3/18~6/18



2020年12月からの改修工事を終え、今年3月にリニューアルオープンを果たした広島市現代美術館にて、『リニューアルオープン記念特別展 Before/After』が開かれています。


多目的スペース「モカモカ」

これはリニューアルに際していくつもの箇所が生まれ変わったように、なにかが切っ掛けになって生じるさまざまな「まえ」と「あと」の現象や状況に着目し、国内外の現代美術を紹介するもので、広島県にゆかりのある和田礼治郎や石内都をはじめ、オノ・ヨーコやシリン・ネシャットといった45組のアーティストによる新作を含めた約100点が公開されていました。


展示室A-1 会場風景

まず冒頭で展開するのは、改修工事の図面や記録写真をはじめ、役目を終えた照明器具といったかつての美術館の備品で、中には古いエレベーターの部品などが並んでいました。


展示室A-1 会場風景

また休館中にSNS投稿された「#ゲンビの工事日記」の写真も細かく紹介されていて、工事中の進行の様子や作業内容、また働く人々のすがたなどを見ることができました。


高橋銑 作品展示風景

続く現代美術では田中功起のインスタレーションや平田尚也の彫刻などが展示されていて、地下の展示室では若林奮や竹村京をはじめ、コウミユキや高橋銑といったアーティストの作品が並んでいました。


コウミユキ『Stand Up!』シリーズより 2023年

このうち動物をモチーフとした彫刻を手がけるコウミユキは、すでに人の手に渡ったものや壊れてしまった犬の置き物などで作った『Stand Up!』シリーズを展示していて、犬と思しきすがたを見せながらも、さまざまな動物が融合したようなユニークなかたちを生み出していました。


竹村京『修復』シリーズより 2022年

竹村京の『修復』シリーズも目を引いたかもしれません。ここでは美術館にて使われて役目を果たした電球や学芸員の私物などを蛍光シルクの布で包んでいて、ブルーライトによって淡い光を放っていました。

今回の展示のハイライトを飾るのは、2005年に第6回ヒロシマ賞を受賞し、16年ぶりの新規購入作品となったイラン生まれのアーティスト、シリン・ネシャットの『Land of Dreams』でした。

これはアメリカ、ニューメキシコ州の地元住民を被写体とした26点の肖像写真と、若いイラン人の美術学生を主人公としたふたつの映像にて構成されていて、映像では広島の被爆者の言葉を引用しつつ、アメリカの差別や偏見、貧困の問題や核政策の不条理の危険性などを住民の夢を通して描いていました。


和田礼治郎『FORBIDDEN FRUIT』 2022年

中庭を舞台とした和田礼治郎の『FORBIDDEN FRUIT』も魅惑的だったかもしれません。葡萄の木などが植えられた空間へフルーツが投げ入れられて、あたりにはほのかに甘い匂いが漂っていました。


石内都『The Drowned』シリーズより 2020年〜

このほか、横山奈美や石内都、毒山凡太朗の作品なども見どころではないでしょうか。また細かな章立てを行わず、劣化、変質、修復、原子力、爆発、夢、治癒といったキーワードを「#(ハッシュタグ)」として提示し、展示のテーマを伝えているのもユニークに思えました。


毒山凡太朗『Let There Be Light』 2023年 『Long Way Home』 2022年

全館スペースの展示ゆえか質量ともにかなり見応えがありました。時間に余裕を持って出かけられることをおすすめします。


この春、リニューアルオープン!広島市現代美術館の特別展『Before/After』が見逃せない|Pen Online

一部の展示作品の撮影も可能です。



6月18日まで開催されています。

『リニューアルオープン記念特別展 Before/After』 広島市現代美術館@HiroshimaMOCA
会期:2023年3月18日(土)~6月18日(日)
休館:月曜日
時間:10:00~17:00
 *入場は閉館の30分前まで
料金:無料。
住所:広島市南区比治山公園1-1
交通:広電(市内路面電車)比治山下駅より徒歩10分。広島駅及び紙屋町より広電・広島バスにて段原中央下車。動く歩道「比治山スカイウォーク」経由にて約700m。
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東京都美術館にて『マティス展』が開かれています

20世紀を代表するフランスの芸術家、アンリ・マティスは、フォーヴィスムの画家として活躍すると、絵画のみならず、彫刻、切り紙絵、また建築プロジェクトといった幅広い分野に業績を残しました。


『赤いキュロットのオダリスク』 1921年秋 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館

そのマティスの芸術の仕事を紹介するのが『マティス展 Henri Matisse: The Path to Color』で、展示の見どころや内容についてイロハニアートへ寄稿しました。

色彩に満ちた芸術の世界へようこそ。東京都美術館にて『マティス展』が開催中! | イロハニアート


『グルーゴー男爵夫人の肖像』 1924年 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館

まず今回の展覧会の特徴は、マティスが芸術家としてたどった足跡をほぼ年代順にて追っていることで、第1章の「フォーヴィスムに向かって」(1895年〜1909年)から第8章「ヴァンス・ロザリオ礼拝堂」(1948年〜1951年)へと至る8つの章にて構成されていました。


『夢』 1935年5月 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館

作品の多くは世界最大規模のマティスコレクションを誇るパリ、ポンピドゥー・センターのコレクションで、フォーヴィスムの夜明けを告げたとされる初期の傑作『豪奢、静寂、逸楽』が日本で初めて公開されました。


『黄色と青の室内』 1946年 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館

第6章の「ニースからヴァンスへ」が1つのハイライトをなしていたかもしれません。1943年、マティスは第二次世界大戦によってニースから近郊の街のヴァンスへと移ると、「夢」荘に居を構え、のちに画文集『ジャズ』として出版される切り紙絵の連作を制作しました。


『赤の大きな室内』 1948年春 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館

そして1946年には最後の油彩連作である、「夢」荘と庭を主題とした「ヴァンス室内画」を描きはじめていて、展示でもシリーズ1作の『黄色と青の室内』と最終作である『赤の大きな室内』をあわせて見ることができました。

このほか、最晩年にマティスが手がけたロザリオ礼拝堂のためのプロジェクトの資料やドローイングなども見どころといえるかもしれません。


『マティス展』会場風景

会場内の一部のフロアの撮影が可能でした。


日時指定予約制が導入されました。現在のところ当日券も販売されていますが、国内では20年ぶりの大規模回顧展ということもあり、今後、夏休みに向けて混雑してくるかもしれません。チケットの発売状況などは事前に公式アカウント(@matisse2023)にてご確認ください。

国内での巡回はありません。8月20日まで開催されています。

『マティス展 Henri Matisse: The Path to Color』@matisse2023) 東京都美術館@tobikan_jp
会期:2023年4月27日(木)~8月20日(日)
時間:9:30~17:30
 *金曜日は20時まで開館
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日、7月18日(火)。ただし、5月1日(月)、 7月17日(月・祝)、 8月14日(月)は開室。
料金:一般2200円、大学生・専門学校生1300円、65歳以上1500円、高校生以下無料。
 *オンラインでの日時指定予約制。
住所:台東区上野公園8-36
交通:JR線上野駅公園口より徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅7番出口より徒歩10分。京成線上野駅より徒歩10分。
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『ゴッホのプロヴァンス便り』 マール社

フィンセント・ファン・ゴッホ(以下、フィンセント)が家族や仲間に宛てた多くの手紙の言葉で、画家の絵と生涯を追いかける一冊が、マール社より刊行されました。


『ゴッホのプロヴァンス便り』@MAAR_sha

それが『ゴッホのプロヴァンス便り 手紙とスケッチで出会う、あたらしいゴッホ』で、フィンセントが晩年の3年間、南フランスにて書かれた260通の手紙のうち半数を引用しながら、あわせて当時制作中のスケッチや絵画を紹介していました。

著者はイギリスにおけるゴッホ研究の第一人者で、『ファン・ゴッホと英国(Van Gogh and Britain)』(2019年、テートブリテン)などの展示会などを企画したマーティン・ベイリーで、アート系の翻訳も多い岡本由香子が訳を担い、東京ステーションギャラリーの館長で美術史家の冨田章が学術協力を務めました。



まず冒頭ではフィンセントが南フランスへ至るまでの経緯が紹介されていて、その後、黄色い家やゴーガンとの出会いや耳切り事件の起きたアルル、さらに精神科病院へ入院したサン=レミ=ド=プロヴァンス、また自ら命を絶ったオーヴェル=シュル=オワーズへと続いていました。



フィンセントは弟のテオだけでなく、エミール・ベルナールやポール・ゴーガンといった画家仲間にも手紙を送っていて、南フランスに何を感じて、どのように理知的な意図をもって作品を描いていったのかについて知ることができました。



テオに対する強い親愛の感情と、画家としての矜持、反面の葛藤など、言わば内面を露わにするフィンセントの手紙は、その人間像を如実に浮き彫りにしていて、これほどゴッホの存在が近しく感じられたことはありませんでした。



と同時に、フィンセントが手紙の内容や生涯を補って紹介する解説も充実していて、画家のたどった時間を追体験することができました。またB5ヨコ変型判の見開きに、手紙と絵画の図版が並ぶように掲載されているのも見やすかったかもしれません。

「いつかぼくの絵に、絵の具代と生活費(貧乏生活であるけれど)以上の価値があるということが、世間に理解される日が来るはずだ。」 1888年10月25日ごろ

「ぼくらが絵を描きつづけるのは、画家同士の仲間意識や、自然に対する愛情があるからです。何より努力して筆遣いを習得したのに、描くのをやめることなどできません。」 1889年10月21日ごろ


フィンセントの自殺から半年後、弟のテオも33歳の若さで亡くなりました。そしてテオの妻ヨーは、フィンセントの絵を世の中に認めさせるために尽力し、義兄の手紙を編纂して出版しました。「義兄の文章を胸に刻み、魂に染み込ませました。義兄の言葉は常にわたしと共にあります。」との言葉も残しています。



人と話すのが苦手だったと言われるフィンセントは、手紙では頭の中の思考をさまざまに表現していたことでも知られています。また手紙ゆえに独特の抑揚やニュアンスがあるのも魅力的です。

一気に読み進めるのも面白いかもしれませんが、作品の図版を見やりつつ、一言一句、ゴッホの心を拾っていくかのようにゆっくり音読するのも楽しいかもしれません。



まずは『ゴッホのプロヴァンス便り 手紙とスケッチで出会う、あたらしいゴッホ』をお手に取ってご覧ください。

『ゴッホのプロヴァンス便り 手紙とスケッチで出会う、あたらしいゴッホ』
出版:マール社@MAAR_sha
2023年4月25日新刊
定価:3278円 (本体 2980円+税)
著者・編者:マーティン・ベイリー 著
翻訳 :岡本由香子
ページ数 :160ページ
原書タイトル :The Illustrated Provence Letters of Van Gogh
内容:「配色によって詩を綴ることもできるといったら理解できるだろうか。音楽で誰かの心を慰めるのと同じだ——」。その"絵と言葉"で、わたしたちの心を惹きつけてやまない画家、ゴッホ。本書は、彼の最高傑作が生まれた南フランスでの3年間に書かれた260通のうち、半数の手紙を軸に据えた「手紙とスケッチと完成作品」でゴッホを読む1冊です。
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『空山基 Space Traveler』 NANZUKA UNDERGROUND

NANZUKA UNDERGROUND
『空山基 Space Traveler』
2023/4/27~5/28



1947年に生まれた空山基本は、女性の人体美をロボットに取り込んだ「セクシーロボット」のシリーズで人気を呼ぶと、人体と機械の美を追求しつつ、人間や動物、恐竜などのロボットを描き続けてきました。

その空山も3年ぶりとなる新作個展が『Space Traveler』で、等身大のロボット彫刻による大規模なインスタレーション、および近年取り組んでいる大型のキャンバス絵画や自身初のCGによる映像作品が展示されていました。



まず目を引くのが1階のスペースに並ぶロボット彫刻で、暗がりの鏡の設置された空間には、6体の『Untitled_Sexy Robot_Space traveler』が並んでいました。



いずれのロボットもケースに収められていて、膝を抱えて回転するような仕草を見せていたり、手足を伸ばし、空中へと飛び立とうとするようなすがたをしていました。



それこそ未知の宇宙船の中に迷い込んだかのような気持ちにさせられるかもしれません。メタリックで近未来的でありながらも、やはり肉感的に見えるのも空山の造形ならではのように思えました。



一方の2階では、日本では初めて公開された大型の絵画が並んでいて、ロボット彫刻や恐竜が宇宙や意味の中を行き交うような光景が描かれていました。



平日の昼時に出向きましたが、主に海外からと思われるお客さんで常に賑わっていました。さまざまなブランドとのコラボでも人気の空山の創作のいまを楽しめる、良い機会といえるかもしれません。



なお空山の展示はNANZUKA UNDERGROUND以外にも、NANZUKA 2G(渋谷パルコ2F)と3110NZ by LDH kitchen(中目黒)でも同時に行われています。詳しくはNANZUKAのWEBサイトにてご確認ください。


空山基の描いた、新たなスペースファンタジー。3年ぶりの個展が都内3会場にて開催!|Pen Online

撮影も可能です。5月28日まで開催されています。

『空山基 Space Traveler』 NANZUKA UNDERGROUND@NANZUKAUNG
会期:2023年4月27日(木)~5月28日(日)
休館:月、火曜。
時間:11:00~19:00
料金:無料。
住所:渋谷区神宮前3-30-10
交通:東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前駅5番出口より徒歩8分。JR山手線原宿駅竹下口より徒歩10分。
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クリエイションギャラリーG8にて『JAGDA新人賞展2023』が開かれています

日本グラフィックデザイン協会の年鑑『Graphic Design in Japan』の出品者より、39歳のグラフィックデザイナーに授与される『JAGDA新人賞』の展覧会が、東京・銀座のクリエイションギャラリーG8にて開かれています。



その『JAGDA新人賞展2023』の内容や見どころについて、Penオンラインに寄稿しました。

デザインの未来を切り拓く、新たな扉が開かれる。『JAGDA新人賞展2023』が開催中!|Pen Online

第41回目となる2023年度の『JAGDA新人賞』に選ばれたのは、石塚俊、藤田佳子、矢後直規で、会場では3名のポスターやプロダクトなどを中心に、受賞作品や近作などが紹介されていました。


『サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場』 2022年 AD+D:藤田佳子

そのうちサントリーの『水と生きる』の新聞広告で『ADC賞』(2020〜2021年度)を受賞した藤田佳子は、金沢のホテル『香林居』や『サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場』のブランディングなどを展示していて、すでに各方面にて活動の幅を広げているようすを見ることができました。


『JAGDA新人賞展2023』 矢後直規 作品展示風景

ラフォーレ原宿の広告やJALグループのLCC「ZIPAIR」のコンセプト開発も行った、矢後直規の仕事も魅力的といえるかもしれません。


Echo after Echo:仮の声、新しい影 2019年 他 AD+D:石塚俊

2019年に東京都現代美術館にて開かれた『Echo after Echo:仮の声、新しい影』のポスターのポスターも目を引きました。


香林居 2021年 AD+D:藤田佳子

ゴールデンウィークのお休み(4月29日〜5月7日)が終わり、5月8日より展示が再開しました。


5月27日まで開催されています。

『JAGDA新人賞展2023 石塚俊・藤田佳子・矢後直規』 クリエイションギャラリーG8@g8gallery
会期:2023年4月18日(火)~5月27日(土)
休館:日曜、4月29日(土)~5月7日(日)
時間:11:00~19:00
料金:無料。
住所:中央区銀座8-4-17 リクルートGINZA8ビル1F
交通:JR線新橋駅銀座口、東京メトロ銀座線新橋駅5番出口より徒歩3分。
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『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』 Vol.5 嶋臺(しまだい)ギャラリー・ASPHODEL・両足院

京都市中心部・二条城・両足院・光明院
『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』
2023/4/15~5/14



Vol.4 世界倉庫・藤井大丸ブラックストレージ・Sferaより続きます。



朝、ホテルをチェックアウトし、まず向かったのは『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』の開催エリアではない嵐山でした。というのも、この日は写真祭だけでなく、福田美術館と嵯峨嵐山文華館にて開かれている『橋本関雪 生誕140周年 KANSETSU』の鑑賞を予定していたからでした。

よって先に関雪展を見終えた上にて、昨日、クローズしていたために見ることができなかった嶋臺(しまだい)ギャラリーと両足院へ行くことにしました。



嵐山にて関雪展を見て、嶋臺ギャラリーの位置する烏丸御池に着くと、ちょうど昼の12時前になっていました。嶋臺ギャラリーとは17世紀に生糸商として創業した老舗に所縁のある場所で、幕末に焼失したのちに、明治になって再建された建物をギャラリーとして用いたものでした。



ここではスイス人フォトグラファー、ロジャー・エーベルハルトが、最新作シリーズ『Escapism』(エスカピズム/現実逃避)と題する展示を行っていて、スイスのコーヒーフレッシュの蓋に印刷された風景写真に着想を得た作品を公開していました。



エーベルハルトは、小さな蓋に印刷された風景写真を、さらに高解像度のカメラを用いて撮影していて、クローズアップされたイメージを大きく引き伸ばしてプリントすることで、もともとのクリーム容器の蓋の写真へ新たな世界を作り上げていました。



明るい光の差し込む広間と暗い土蔵の壁を残す2つの空間とのコントラストも面白かったかもしれません。クリーム容器の蓋という身近でありながらも意外な素材より引き出された、驚くほどに色彩鮮やかで多様なイメージに見入りました。



このあとは建仁寺塔頭の両足院を目指すべく祇園へと向かいましたが、その途中にて昨日、両足院にも近いASPHODELでのココ・カピタンの展示を見逃していたことに気づいたため、先にASPHODELへと行くことにしました。



京都の10代の若者のポートレートを制作したカピタンは、大西清右衞門美術館、光明院、ASPHODELの3会場にて展示を行っていましたが、その中ではASPHODELの会場が質量ともに最も充実していたかもしれません。



禅僧を目指す学生から舞妓、または制服姿の高校生など、京都に生きる若者たちの多様なすがたを見ることができました。



枯山水庭園や池泉回遊式庭園などを有する両足院にて展示を行っていたのは、コートジボワールを拠点に活動するビジュアルアーティストで写真家のジョアナ・シュマリでした。



シュマリは日課とする朝の散歩の際、風景を写真に撮ることを習慣としていて、その写真へコラージュや刺繍、ペインティングやフォトモンタージュといった技法を組み合わせつつ、何枚もの薄い布のレイヤーを重ねて作品を制作しました。



淡いパステルカラーに彩られたシュマリの作品は、日常の光景でありながらも、詩的でかつ幻想的な雰囲気もたたえていて、細部のコラージュといった手業の感触も魅力に感じました。



時間やスケジュールの都合で出町桝形商店街の会場には行くことができませんでしたが、結局2日間にて『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』のほぼすべての展示を見ることができました。



京都ならではの歴史的建造物やモダンな近現代建築を会場としつつ、国内外の写真家らが現代的なテーマを扱った作品を公開していて、会場の趣きはもちろん、作品そのものも想像以上に見応えがありました。

『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』は5月14日まで開催されています。

『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』@kyotographie_) 京都市中心部・二条城・両足院・光明院
会期:2023年4月15日(土)~5月14日(日)
休館:各会場により異なる。
時間:10:00~19:00 
 *「インフォメーション町家」の開館時間。各会場により異なる。
料金:Eパスポート、紙パスポートチケット6000円(学生3000円)、平日限定パスポート4500円。
 *単館チケット(一般1200円~800円、学生1000円~600円)を販売。
 *無料展示あり。
住所:京都市中京区三条町340
交通:地下鉄烏丸線・東西線烏丸御池駅6番出口から徒歩5分。
 *住所、交通は「インフォメーション町家」(八竹庵 旧川崎家住宅)
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『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』 Vol.4 世界倉庫・藤井大丸ブラックストレージ・Sfera

京都市中心部・二条城・両足院・光明院
『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』
2023/4/15~5/14



Vol.3 二条城・東福寺塔頂光明院より続きます。

ホテルにてチェックインを済ませると16時半をまわっていましたが、『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』の市中心部の会場は19時まで開いているところが多いため、もう少し展示を見て歩くことにしました。



まず向かったのは富小路高辻の少し北に位置する世界倉庫で、ジャマイカ系イギリス人の写真家デニス・モリスが写真とインスタレーションからなる展示を行っていました。



デニス・モリスは少年の頃、1960年代当時のイギリス政府の移住政策のもと、「より良い暮らし」を送るべく母親とともにジャマイカからロンドンへとやってきて、牧師を通じて写真に出会いました。



そして身近な人々や地域社会のようすをカメラで記録しはじめると、ジャマイカ人ミュージシャンのボブ・マーリーの後押しなどもあり、写真家として音楽業界でキャリアを切り開いていきました。



会場ではカリブ系移民の人々の暮らしなどを写した写真が並んでいて、当時の部屋を再現した空間などを通して、1960年代から70年代のイーストロンドンのカリブ系移民たちの生活をたどることができました。



なお世界倉庫とは木屋町のクラブ「WORLD KYOTO」が手がけたコミュニティスペースで、1階にカフェも入居していました。町家の右手より入り、中庭のような空間を抜けて進む構造そのものも楽しいかもしれません。



この世界倉庫の少し北の藤井大丸ブラックストレージでは、ウクライナ生まれのアーティスト、ボリス・ミハイロフが『Yesterday's Sandwich(昨日のサンドイッチ)』と題したスライドショーを公開していました。



『Yesterday's Sandwich』は、ミハイロフがキャリアをスタートさせた1960年代末から1970年代にかけて制作された作品で、当時の体制において発表できなかった写真のスライドが偶然ミスで重なったことをきっかけに生まれました。



そこには都市の風景や軍事パレード、さらに女性のヌードなどが重なり合いながら写されていて、音楽とともに詩的とも幻想的ともいえる光景が作り出されていました。



今回の『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』で最も面白く感じた作品だったかもしれません。約15分から20分弱ほど続く魔術のように展開するイメージの乱舞に見入りました。



四条大橋を渡って祇園に位置するライフスタイルブランド「Sfera」にて展示を手がけているのは、ジャーナリストで写真家として活動し、移民や人権などをテーマに作品で知られるセザール・デズフリでした。



デズフリは2016年の夏、ドイツのNGO団体の所有する難民救助船に3週間にわたって乗船し、リビアからイタリアへ渡航しようとする難民たちを助け出すようすを記録していて、救出された118名の難民のポートレートを撮影しました。



さらにデズフリは難民たちが旅の途中で何が起き、イタリア到着後にどのような人生を送っているのかをリサーチしていて、さまざまな難民たちの証言から移住先にて直面する問題点などを露わにしていました。



地中海を渡る難民たちドキュメントといえる展示だったかもしれません。救助船上とその後に撮影された同じ人物のポートレートにも目が留まりました。



このあとはSfera近くの居酒屋にてお酒をいただき、明日に備えるべく、ほろ酔い気分にてホテルへと戻りました。


ラストのVol.5 嶋臺(しまだい)ギャラリー・ASPHODEL・両足院へと続きます。

『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』@kyotographie_) 京都市中心部・二条城・両足院・光明院
会期:2023年4月15日(土)~5月14日(日)
休館:各会場により異なる。
時間:10:00~19:00 
 *「インフォメーション町家」の開館時間。各会場により異なる。
料金:Eパスポート、紙パスポートチケット6000円(学生3000円)、平日限定パスポート4500円。
 *単館チケット(一般1200円~800円、学生1000円~600円)を販売。
 *無料展示あり。
住所:京都市中京区三条町340
交通:地下鉄烏丸線・東西線烏丸御池駅6番出口から徒歩5分。
 *住所、交通は「インフォメーション町家」(八竹庵 旧川崎家住宅)
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2023年5月に見たい展覧会【大田南畝の世界/饒舌館長ベスト展/発掘・植竹邦良】

GWはいかがお過ごしでしょうか?今年はコロナ禍にもとなう行動制限が一切ない連休だけに、全国各地の行楽地へ多くの人が繰り出しています。新幹線や飛行機の予約状況もコロナ禍前の水準に近づいてきました。



私は近場の美術館を巡るつもりですが、特に連休後半にかけては『マティス展』をはじめとする人気の展覧会はかなり混雑するかもしれません。

それでは今月に見たい展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・『饒舌館長ベスト展』 静嘉堂文庫美術館(5/20~28)
・『茶の湯の床飾り —茶席をかざる書画』 出光美術館(4/22~5/28)
・『さかざきちはる ペンギンアパートメント』 芳澤ガーデンギャラリー(4/21~7/9)
・『建物公開2023 邸宅の記憶』 東京都庭園美術館(4/1~6/4)
・『明治美術狂想曲』 静嘉堂文庫美術館(4/8~6/4)
・『生誕110年 佐藤太清展 水の心象』 板橋区立美術館(4/29~6/4)
・『エドワード・ゴーリーを巡る旅』 渋谷区立松濤美術館(4/8~6/11)
・『大阪の日本画』 東京ステーションギャラリー(4/15~6/11)
・『さばかれえぬ私へ Tokyo Contemporary Art Award 2021-2023 受賞記念展』 東京都現代美術館(3/18~6/18)
・『美しき漆 日本と朝鮮の漆工芸』 日本民藝館(4/13~6/18)
・『今井俊介 スカートと風景』 東京オペラシティ アートギャラリー(4/15~6/18)
・『没後40年 朝井閑右衛門展』 横須賀美術館(4/22~6/18)
・『麻生三郎展 三軒茶屋の頃、そしてベン・シャーン』 世田谷美術館(4/22~6/18)
・『奇想の絵師 歌川国芳』 うらわ美術館(4/22~6/18)
・『ベルギーと日本 光をえがき、命をかたどる』 目黒区美術館(4/29~6/18)
・『開館20周年記念展 ジョルジュ・ルオー —かたち、色、ハーモニー』 パナソニック汐留美術館(4/8~6/25)
・『吹きガラス 妙なるかたち、技の妙』 サントリー美術館(4/22~6/25)
・『没後200年 江戸の知の巨星 大田南畝の世界』 たばこと塩の博物館(4/29~6/25)
・『部屋のみる夢—ボナールからティルマンス、現代の作家まで』 ポーラ美術館(1/28~7/2)
・『谷川俊太郎 絵本★百貨展』 PLAY! MUSEUM(4/12~7/9)
・『発掘・植竹邦良 ニッポンの戦後を映す夢想空間』 府中市美術館(5/20~7/9)
・『小林古径 生誕140周年記念 小林古径と速水御舟—画壇を揺るがした二人の天才—』 山種美術館(5/20~7/17)
・『アイラブアート17 プレイプレイアート展』 ワタリウム美術館(3/19~7/23)
・『日本のタイル100年—美と用のあゆみ』 江戸東京たてもの園(3/11~8/20)
・『マティス展 Henri Matisse: The Path to Color』 東京都美術館(4/27~8/20)
・『高橋龍太郎コレクション 「ART de チャチャチャ—日本現代アートのDNAを探る—』 WHAT(4/28~8/27)
・『石黒亜矢子展 ばけものぞろぞろ ばけねこぞろぞろ』 世田谷文学館(4/29~9/3)

ギャラリー

・『カーキな視界:内海聖史展』 三越コンテンポラリーギャラリー(5/3~5/15)
・『三嶋りつ惠 祈りのかたち』 シュウゴアーツ(4/22~5/27)
・『西島雄志 瑞祥 zui-shou ―時の連なり―』 ポーラ ミュージアム アネックス(4/28~6/4)
・『マッド スプリング』 Kanda & Oliveira(5/9~6/10)
・『横尾忠則 銀座番外地 Tadanori Yokoo My Black Holes』 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(5/15~6/30)
・『ドットアーキテクツ展 POLITICS OF LIVING ⽣きるための⼒学』 TOTOギャラリー・間(5/18~8/6)

はじめはたばこと塩の博物館です。『没後200年 江戸の知の巨星 大田南畝の世界』が開催されています。



『没後200年 江戸の知の巨星 大田南畝の世界』@たばこと塩の博物館(4/29~6/25)

江戸時代の狂歌の名人、大田南畝は、版元の蔦屋重三郎や浮世絵師の喜多川歌麿と交流しながら、出版界の中心人物として活動すると、同時代の事件や歴史的典籍などを書き記した膨大な記録を残しました。


その南畝の業績を、書物や版本、それに肉筆や浮世絵を通して明らかにするのが『没後200年 江戸の知の巨星 大田南畝の世界』で、あわせて当時の文化人と南畝の交流を示す資料や南畝を支えたたばこ屋との接点なども紹介されます。

続いては8日間限定のスペシャルな展覧会です。静嘉堂文庫美術館にて『饒舌館長ベスト展』が開かれます。



『饒舌館長ベスト展』@静嘉堂文庫美術館(5/20~28)


これは今年7月に80歳を迎えた静嘉堂文庫美術館の河野元昭館長の傘寿を祝し、館長が選んだ近世絵画の名品を公開するもので、俵屋宗達の『源氏物語関屋澪標図屛風』や酒井抱一の『波図屛風』、また渡辺崋山の『芸妓図(校書図)』などが出展されます。

会場は千代田区の静嘉堂@丸の内ではなく、世田谷区の静嘉堂文庫美術館です。久しぶりに岡本の地が美術ファンで賑わうかもしれません。

ラストは府中ゆかりの画家の初の大規模回顧展です。『発掘・植竹邦良 ニッポンの戦後を映す夢想空間』が府中市美術館にて開かれます。



『発掘・植竹邦良 ニッポンの戦後を映す夢想空間』@府中市美術館(5/20~7/9)

戦後リアリズム美術運動の中に画家として歩みはじめた植竹邦良は、安保闘争や学園紛争などを題材をしつつ、戦中の記憶や地形、それに建築といったモチーフを混在させると、独自の奇異なモチーフが増殖しては入り乱れるような絵画世界を築き上げました。


その植竹の画業をたどるのが『発掘・植竹邦良 ニッポンの戦後を映す夢想空間』で、初期から後年のスケッチや絵画に加え、植竹と接点を持っていた1960年前後の前衛表現をとった画家の作品が展示されます。

WEBメディアのイロハニアートへも5月のおすすめ展覧会を寄稿しました。

5月のおすすめ展覧会5選【2023年版】吹きガラスからベルギーと日本、それに石黒亜矢子展まで | イロハニアート

それでは今月もどうぞよろしくお願いします。
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