『国際芸術祭 あいち2022』 Vol.4 有松地区(名古屋市)

『国際芸術祭 あいち2022』 Vol.3 愛知芸術文化センターに続きます。『国際芸術祭 あいち2022』を見てきました。



愛知芸術文化センターと並び、名古屋市を会場とするのが、名古屋駅より直線距離にて約14キロほど離れた同市南東部に位置する有松地区でした。

有松は江戸時代、尾張藩によって東海道沿いに開かれた宿場町で、往来する人のための土産物として絞り染めが考案されると、以降、有松絞りとして人気を集め、街とともに発展しました。



明治維新により一時、有松絞りは衰退するものの、その後に新たな製法の開発などによって再び隆盛し、明治後期から昭和初期にかけては最も繁栄しました。現在は有松絞りとともに、主に江戸末期から明治時代の建築物が保存され、重要伝統的建築物保存地区として日本遺産に認定されています。



有松地区の玄関口は名鉄名古屋本線の有松駅で、展示は東海道沿いのエリアにほぼ集中していました。屋外の会場としては『あいち2022』で最もコンパクトにまとまっていて、すべて歩いて回ることが可能でした。



同エリアの展示は10時にスタートするため、時間にあわせて有松駅を下車し、インフォメーションである山田家住宅(旧山田薬局)へと向かうと、伝統的な日本家屋が立ち並ぶ光景が見えてきました。



いずれも江戸末期から明治、あるいは昭和前期にかけての絞商の母家が残されていて、木造2階、切妻屋根などを基本とする統一感のある街並みが形成されていました。



有松で最も歴史ある竹田家住宅で展示を行っているのが、ドイツを拠点にするコラボレーションのプリンツ・ゴーラムとメキシコのガブリエル・オロスコでした。



このうちオロスコは、日本の古布を用いた掛け軸や伝統的な尺に触発された彫刻などを展示していて、和の空間へ幾何学的ともミニマルとも呼べるような造形を介在させていました。



この竹田家住宅は、茶室「栽松庵」へ徳川家茂が立ち寄ったとも伝えられていて、明治から大正にかけて土蔵や洋間、座敷が整備されるなど、有力な絞商の屋敷構えを伝える建物として知られてきました。



一棟の建物としては有松最大規模を誇る岡家住宅では、AKI INOMATAが職人による絞り染めの技術と虫の生態をモチーフとした団扇や映像インスタレーションを公開していて、有松の絞り染めの伝統を踏まえつつ、建物と共鳴するような展示を行っていました。



またサモアを拠点にするユキ・キハラは、同国の伝統的なテキスタイル「シアポ」と日本の振袖を融合した作品を展示していて、ビーズなどの装飾もなされた着物が畳敷の空間を鮮やかに彩っていました。



旧東海道を離れ、唯一、名鉄線の線路を挟んだ反対側にて展示を見せているのが、株式会社張正でのイワニ・スケースの『オーフォード・ネス』と題したインスタレーションでした。



ここでスケースは、雲や雨を思わせるような1000個ものガラスのオブジェを吊るしていて、作品の外からだけではなく、合間を歩いて鑑賞することもできました。



ガラスのかたちは一様ではなく、どこか雨粒とも細長い植物のようなすがたを見せていましたが、これはスケースがルーツを持つというオーストラリアの先住民の主食、ヤム芋をモチーフとしたものでした。



このほか、『あいち2022』の開幕の前に「有松手芸部」を立ち上げ、地域の人々や来場者とのコミュニティを築こうとする宮田明日鹿の作品も、有松の歴史や地域に根ざした取り込みといえるかもしれません。



おおよそ800メートルほどの東海道沿いの歴史的地区には、同地の山車を展示する有松山車会館や、絞り実演や土産物などを扱う有松・鳴海絞会館といった観光施設も点在していて、程良い街歩きとしても楽しめました。



それに岡家住宅や安藤家住宅といった東海道沿いの建物を彩った、ミット・ジャイインののれん状の絵画も芸術祭のムードを盛り上げていたかもしれません。



一通り有松の街を楽しみ、作品を鑑賞し終えたのちは、最後の会場となる常滑市へと向かいました。

『国際芸術祭 あいち2022』 Vol.5 常滑市(やきもの散歩道)へと続きます。

『国際芸術祭 あいち2022』関連エントリ
 Vol.1 一宮市(一宮駅エリア) / Vol.2 一宮市(尾西エリア) / Vol.3 愛知芸術文化センター / Vol.4 有松地区(名古屋市) / Vol.5 常滑市(やきもの散歩道) / Vol.6 常滑市(INAXライブミュージアム)

国際芸術祭「あいち2022」@Aichi2022
開催地域:愛知芸術センター、一宮市、常滑市、有松地区(名古屋市)
開催期間:2022年7月30日(土)~10月10日(月・祝)
開催時間:10:00~18:00(愛知芸術センター、一宮市)、10:00~17:00(常滑市、有松地区)
 ※愛知芸術センターは金曜日は20:00まで。一宮市役所は17:15まで
休館日:月曜日(愛知芸術センター、一宮市)、水曜日(常滑市、有松地区)
料金:一般3000円、学生(高校生以上)2000円、中学生以下無料
 ※フリーパス。この他に1DAYパスあり
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『国際芸術祭 あいち2022』 Vol.3 愛知芸術文化センター

『国際芸術祭 あいち2022』 Vol.2 一宮市(尾西エリア)に続きます。『国際芸術祭 あいち2022』を見てきました。



一宮駅から名古屋駅を経由し、地下鉄にて愛知芸術文化センターの最寄りの栄に着くと、すでに15時半頃になっていました。愛知芸術文化センターの閉館時間は18時でした。(金曜日は20時まで)



オアシス21の連絡地下通路から地下2階のフロアに行くと、アートプラザ前にて小野澤峻が6つの球からなる『演ずる造形』を展示していて、まるで物理の実験のような振り子の動きを目にすることができました。



愛知芸術文化センターでは、10階の愛知県美術館と8階の愛知県美術館ギャラリーが会場として用いられていて、「あいち2022」の中核を担うべく、実に42組のアーティストが作品を公開していました。ガイドに「象徴的な場所」と記載されていましたが、主会場と捉えて差し支えありません。



コンセプチュアル・アーティストの1人として知られ、愛知県出身でもある河原温の作品から展示がはじまりました。芸術祭のテーマである「STILL ALIVE」にも引用された『I Am Still Alive』とは、1970年から実に30年間、約900通もの電報が世界各地の知人やキュレーターなどに送られたシリーズで、河原はいわば生存の証を電報に託しつつ、その根源的な意味の再考を促しました。



スロバキアを拠点に活動するローマン・オンダックは、1本のオークの木の幹を使った『イベント・ホライズン』を出展していて、幹は100枚に切断され、一部は壁にかかっていました。そして年輪には1917年から2016年までの歴史的出来事が封印されていて、会期中、毎日1枚ずつかけられ、最終日には全ての木のディスクが壁に移るように作られていました。



冒頭からコンセプチュアルな作品が続く中、言語や音などをテーマとした作品も目立っていました。そのうち福島県を拠点とする詩人の和合亮一は、2011年の東日本大震災の直後より一連の詩をツイッターに投稿していて、それらをまとめた『詩の礫』を展示していました。



またコロナ禍において同じく描き続けた詩や、ロシアのウクライナ侵攻以降、ハルキウのシェルターに避難しながら言葉を綴ったアーティスト、オリア・フェドロバとの往復書簡をまとめた作品も同じく公開されていました。いずれも和合の言葉を通し、改めて震災とパンデミック、そしてウクライナでの戦争が、改めて重い現実として提示されているように思えました。



ペルー生まれのリタ・ポンセ・デ・レオンは、インタラクティブな音響作品を展示していて、3名の協力者の人生の節目を表す単語が書かれた『人生よ、ここに来たれ』では、中南米で雨乞いの儀式で用いられる擬音楽器を元にした筒状の作品を動かしながら音を鳴らすこともできました。軽石が流れるようなシャラシャラとした音も心地よく感じられたかもしれません。



沖縄に生まれ、ロサンゼルスに拠点を置くカズ・オオシロの作品も面白いのではないでしょうか。会場には使い古されたようなアンプやキャビネット、それにH鋼などが置かれていて、特に仕掛けがあるわけでもなく、一見するところどこでもある量産品のように思えました。



しかしアンプの裏側を覗き込むと、中は空洞になっていて、キャンバスにて作られた絵画であることがわかりました。だまし絵ならぬ、だましオブジェとも呼べるかもしれません。



それにしてもキャビネットやアンプはまだしも、H鋼に至っては、確かに裏を見れば木の支持体があることがわかるものの、改めて表を見ても本物そのものにしか思えず、絵画であることが信じられないほどでした。



映像を用いたインスタレーションにも見応えのある作品が目立っていました。そのうち百瀬文は『Jokanaan』と題し、オペラ「サロメ」の一節をモチーフとした映像を出展していて、実はCG映像を用いた同一の人物にもかかわらず、あたかもサロメとヨカナーンがやりとりするような不思議な情景を描き出していました。



コロンビア出身のリリアナ・アングロ・コルテスは、映像や写真、それに身体的な素材を用い、アメリカでの奴隷や不平等への抵抗、また先住民との闘争などをテーマとした作品を展示していて、今も続く抑圧や分断などの問題も浮き彫りとなっていました。



会場に靡く黄色や緑の布とともに張り巡らされた紐が、アメリカ大陸へ連れられた人々の髪の編み込み文化を示す頭髪とはなかなか気がつかないかもしれません。それらは抵抗のための知識であり、コミュニケーションの手段としても用いられていました。



このほか、愛知県西尾市の帯芯工場で撮影された潘逸舟の『埃から生まれた糸の盆踊り』や、オーストラリアに難民としてやって来たものの、南太平洋のマヌス島に抑留された人々を題材としたホダー・アフシャール『リメイン』も力作だったのではないでしょうか。

とりわけホダー・アフシャールの『リメイン』において、美しい自然を有するマヌス島がいわば監獄と化し、悲しみに暮れ、将来を悲観しながら、命を落としてしまった人々のすがたを目にすると、何とも辛くいたたまれない気持ちにさせられてなりませんでした。人々が尊厳を持って生きることの大切さを痛感させられるような作品だったかもしれません。



ここで取り上げた作品は一部に過ぎず、8階のラーニングルームを合わせると、愛知芸術文化センターの展示は想像以上にボリュームがありました。



気がつけば閉館時間を迎えていましたが、率直なところじっくりと作品に向き合えたどうかはまったく自信がありません。観覧の際には時間に余裕を持って出かけることをおすすめします。



この日は結局、朝から一宮市会場、そして愛知芸術文化センターの展示をまわりました。かなりタイトなスケジュールでしたが、この後は名古屋駅近くのホテルに宿泊し、翌日に有松地区と常滑市の会場を見ることにしました。

『国際芸術祭 あいち2022』 Vol.4 有松地区(名古屋市)へと続きます。

『国際芸術祭 あいち2022』関連エントリ
 Vol.1 一宮市(一宮駅エリア) / Vol.2 一宮市(尾西エリア) / Vol.3 愛知芸術文化センター / Vol.4 有松地区(名古屋市) / Vol.5 常滑市(やきもの散歩道) / Vol.6 常滑市(INAXライブミュージアム)

国際芸術祭「あいち2022」@Aichi2022
開催地域:愛知芸術センター、一宮市、常滑市、有松地区(名古屋市)
開催期間:2022年7月30日(土)~10月10日(月・祝)
開催時間:10:00~18:00(愛知芸術センター、一宮市)、10:00~17:00(常滑市、有松地区)
 ※愛知芸術センターは金曜日は20:00まで。一宮市役所は17:15まで
休館日:月曜日(愛知芸術センター、一宮市)、水曜日(常滑市、有松地区)
料金:一般3000円、学生(高校生以上)2000円、中学生以下無料
 ※フリーパス。この他に1DAYパスあり
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『国際芸術祭 あいち2022』 Vol.2 一宮市(尾西エリア)

『国際芸術祭 あいち2022』 Vol.1 一宮市(一宮駅エリア)に続きます。『国際芸術祭 あいち2022』を見てきました。



一宮市西部の尾西エリアでは、計3カ所の施設にて4名のアーティストが展示を行っていて、最も遠い会場は駅から5キロほど離れているため、バスを利用する必要がありました。

まず目指したのは木曽川にも近い尾西生涯学習センター墨会館で、レオノール・アントゥネスと迎英里子が作品を公開していました。



尾西生涯学習センター墨会館とは、1957年に建築家丹下健三が設計した建物で、初期のモダニズム様式を残した愛知県内唯一の丹下建築として知られてきました。2008年には国の登録有形文化財に登録されています。



最寄りの尾張中島のバス停にて下車し、北東方向へ約10分ほど歩いていくと、コンクリート造りの一際目を引く建物、すなわち尾西生涯学習センター墨会館がすがたを現しました。半円を描くような外観もユニークで、まるで要塞、あるいは船のような建物にも見えるかもしれません。



ポルトガル生まれのレオノール・アントゥネスは、モダニズム建築と呼応するようなインスタレーションを手がけていて、陶や真鍮、牛革にコットン、また木といった多様な素材を集会室の空間へと介在させていました。どことなく舞台装置や演出のような雰囲気も感じられたかもしれません。



迎英里子は、毛織の生産工程をいくつかの要素に分解し、抽象化したという装置を展示していて、あわせて中庭にて行われたパフォーマンスの映像も公開していました。オレンジ色の布やビニールと中庭の緑の対比も目を引くのではないでしょうか。



元々尾西市(現在の一宮市)は、紡績、毛織産業で栄えた地として知られていて、それを迎はリサーチしつつ、作品として表現しました。



再び尾張中島のバス停に戻り、今度は一宮駅行きのバスに乗車して籠屋バス停で降りると、ノコギリ型をした屋根が特徴的な建物が見えてきました。



これが旧毛織物工場ののこぎり二と呼ばれる会場で、塩田千春が工場に残る機械や糸巻きの芯を用いたインスタレーションを展開していました。



これらの作品には一宮市の毛糸も用いるなど、場所の記憶も踏まえていて、工場跡地の古い空間を埋め尽くすかのように赤い糸が広がっていました。またいわゆる映える作品でもあるからか、心なしかほかの会場よりもギャラリーが多いように感じられました。



こののこぎり二から歩いて10分超ほどの場所にあるのが国島株式会社の会場で、中国の北京を拠点に活動する曹斐(ツァオ・フェイ)が映像『新星』を展示していました。



『新星』の上映時間は約100分近くあり、スケジュールの関係により少しだけの鑑賞となりましたが、独特のSF風のテイストと、中国の古い工場へと迷い込んだかのような空間も面白く感じました。



尾西エリアは展示施設が広域に点在しているため、バスでの移動時間にある程度余裕を持っておく必要がありました。特に尾西生涯学習センター墨会館はバス停からも遠く、行き来にやや時間がかかりました。ただバスそのものは毎時4〜5本程度あるため、さほど待つことはありませんでした。また渋滞もなく、ほぼ定時で運行されていました。

一宮市会場では旧看護学校を中心に病や生と死、メンタルヘルスなどを扱う作品が多かった一方で、一宮や尾西における繊維業の歴史を踏まえた作品が目立っていました。



こうして一通り尾西エリアの展示を見終えたのち、再びバスで一宮駅へと戻り、今度は愛知芸術文化センターの展示を見るべく名古屋へと向かいました。

『国際芸術祭 あいち2022』 Vol.3 愛知芸術文化センターへと続きます。

『国際芸術祭 あいち2022』関連エントリ
 Vol.1 一宮市(一宮駅エリア) / Vol.2 一宮市(尾西エリア) / Vol.3 愛知芸術文化センター / Vol.4 有松地区(名古屋市) / Vol.5 常滑市(やきもの散歩道) / Vol.6 常滑市(INAXライブミュージアム)

国際芸術祭「あいち2022」(@Aichi2022)
開催地域:愛知芸術センター、一宮市、常滑市、有松地区(名古屋市)
開催期間:2022年7月30日(土)~10月10日(月・祝)
開催時間:10:00~18:00(愛知芸術センター、一宮市)、10:00~17:00(常滑市、有松地区)
 ※愛知芸術センターは金曜日は20:00まで。一宮市役所は17:15まで
休館日:月曜日(愛知芸術センター、一宮市)、水曜日(常滑市、有松地区)
料金:一般3000円、学生(高校生以上)2000円、中学生以下無料
 ※フリーパス。この他に1DAYパスあり
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『国際芸術祭 あいち2022』 Vol.1 一宮市(一宮駅エリア)

「あいちトリエンナーレ」の後継として企画され、現代美術やパフォーミングアーツなどが展開する「国際芸術祭 あいち2022」が愛知県内の主に4つの会場にて開かれています。



朝8時過ぎに東京駅を出るのぞみに乗車し、10時前に名古屋に着くと、東海道線に乗り換えて一宮を目指しました。「あいち2022」の主会場は名古屋市の愛知芸術文化センターと有松地区、および一宮市と常滑市の4つに分かれていて、一宮市会場はエリアの最も北部に位置していました。



一宮市会場は駅東側の一宮駅エリアと、市西部の尾西エリアに広がっていて、まずは徒歩で回ることのできる駅エリアの展示を見ることにしました。



「あいち2022」のバナーに誘われ、アーケードの商店街を歩いてると、大正時代に旧名古屋銀行の支店として建てられた歴史的建造物のオリナス一宮に辿り着きました。



ここでは奈良美智が絵画や彫刻からなるインスタレーションを展開していて、とりわけ慈愛に満ちた表情で瞼を閉じる『Miss Moonlight』と題した少女の絵画に心を打たれました。



青森県の弘前生まれの奈良は、愛知県立芸術大学に学んでいて、愛知県ともゆかりの深いアーティストの1人でもあります。



オリナス一宮横のつむぎロードのバリー・マッギーの壁画や、隣接する一宮市役所での眞田岳彦の作品を見たのちは、尾張国の一宮である真清田神社に近い旧一宮市立中央看護専門学校へと向かいました。



旧一宮市立中央看護専門学校は、一宮市で最も出展作家の多い会場で、1階から5階までのスペースにておおよそ12名(組)のアーティストが映像やインスタレーションを公開していました。いわば一宮での主会場と呼べる場所かもしれません。



元々ベッドのあった看護実習室を舞台としたのが小杉大介の『赤い森と青い雲』で、男性や少女、また患者や看護師と思われる人々の対話がサウンドインスタレーションとして表現されていました。



台北を拠点に活動するパフォーマンス・デュオのウォーターメロン・シスターズは、講堂兼視聴覚室を用いて映像や彫刻からなるインスタレーションを展開していて、迫力あるダンスミュージックを聞きながら、観客の動きを反映したアバターなどを見ることができました。



オーストラリアの先住民族を出自とするケイリーン・ウイスキーは、友人とランドクルーザーに乗り込んで砂漠に繰り出すパーティーの映像を展示していて、時に例えばウーピー・ゴールドバーグといったスターに扮して踊りながら、生きる喜びや友情、また愛などを陽気なリズムに乗せて発信していました。



古い先住民族の文化と欧米の消費文化をミックスさせて作品を制作するウイスキーは、オーストラリアの先住民族の文化活動を支援するアートセンターを拠点に活動していて、同国のみならずアメリカやドイツでも作品が紹介されるなどして評価されました。



ドイツに生まれ、アメリカにて活動していらローター・バウムガルデンは、南米の熱帯雨林をテーマとした『夜の起源』と題した映像を展示していて、暗がりの夜の中、何ら自然とも生き物とも判別し難いようなモチーフが見え隠れしつつ、炎が燃え上がるといった神秘的な光景を映し出していました。



解剖学標本室を舞台にした塩田千春のインスタレーションも見応えがあったかもしれません。ここでは看護専門学校時代に実際に使われていた標本を参照しながら、ガラスや糸、針金を使った作品を展開していて、まさに各臓器を行き来する血管のようにして連なっていました。



標本そのものの造形もあるのか、いわば毒々しさや生々しさが前面に押し出されていて、どことなく死のイメージも浮かび上がってきました。塩田は2017年に癌を患い、死に直面した状態から多くの作品を生み出しましたが、この『Cell(細胞)』と呼ばれるシリーズこそ、塩田の病での経験が反映、ないし造形化されているのかもしれません。



このほか、一宮で伐採された巨木や同市の喫茶文化に取り込んだ石黒健一の作品や、旧看護学校の応接室や校長室を用いたニャカロ・マケレの作品を見たのちは、旧学校のすぐそばにある旧一宮市スケート場へと向かいました。



ここでは2017年のヴェネチア・ビエンナーレで金獅子賞を受賞したドイツ生まれのアンネ・イムホフが、元スケート場のリンクをすべて用いたインスタレーション『道化師』を公開していて、巨大なスクリーンによるパフォーマンス映像とが音楽と組み合わさり、さながらライブ会場のような空間を築き上げていました。



イムホフとしては日本での初めての個展とのことでしたが、一宮会場はもとより、「あいち2022」全体からしても見ておきたい展示といえるかもしれません。



旧スケート場からバリー・マッギーの壁画のある大宮公園を経由し、真清田神社を抜けると、今度はアーケードのある一宮市本町商店街を南へと向かいました。



一宮駅エリアはすべて徒歩で巡ることができますが、豊島記念資料館のみは駅南東部の少し離れた場所に位置していて、大宮公園からのんびり歩いていると20分ほどかかりました。



豊島記念資料館とは、織物の街、一宮にちなみ、同市ゆかりの織物の器具や機械を収蔵する資料館で、遠藤薫が『羊と眠る』とした羊毛や羊皮からなる作品を展示していました。



とりわけ2階のホールには自ら織ったという羊毛の落下傘が吊られていて、まるで大きな星が輝くような光景に目を引かれました。



一宮駅エリアの展示を見終えるとお昼を回っていたので、駅へと戻り、食事をとって、次に同じ一宮市会場である尾西エリアへと行くことにしました。


『国際芸術祭 あいち2022』 Vol.2 一宮市(尾西エリア)へと続きます。

『国際芸術祭 あいち2022』関連エントリ
 Vol.1 一宮市(一宮駅エリア) / Vol.2 一宮市(尾西エリア) / Vol.3 愛知芸術文化センター / Vol.4 有松地区(名古屋市) / Vol.5 常滑市(やきもの散歩道) / Vol.6 常滑市(INAXライブミュージアム)

国際芸術祭「あいち2022」@Aichi2022
開催地域:愛知芸術センター、一宮市、常滑市、有松地区(名古屋市)
開催期間:2022年7月30日(土)~10月10日(月・祝)
開催時間:10:00~18:00(愛知芸術センター、一宮市)、10:00~17:00(常滑市、有松地区)
 ※愛知芸術センターは金曜日は20:00まで。一宮市役所は17:15まで
休館日:月曜日(愛知芸術センター、一宮市)、水曜日(常滑市、有松地区)
料金:一般3000円、学生(高校生以上)2000円、中学生以下無料
 ※フリーパス。この他に1DAYパスあり
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『ゲルハルト・リヒター展』 東京国立近代美術館

東京国立近代美術館
『ゲルハルト・リヒター展』
2022/6/7~10/2



東京国立近代美術館で開催中の『ゲルハルト・リヒター展』を見てきました。

1932年に生まれたドイツの美術家、ゲルハルト・リヒターは、具象と抽象を行き来しながら、絵画や写真、立体作品を手がけ、世界各地の美術館にて個展を開くなどして活動してきました。

そのリヒターの国内の美術館では16年ぶりの個展が『ゲルハルト・リヒター展』で、会場では主にリヒター財団が所蔵する110点あまりの作品が公開されていました。


『ゲルハルト・リヒター展』展示風景

まず目立つのが『8枚のガラス』を取り囲むように並ぶ「アブストラクト・ペインティング」と呼ばれる絵画シリーズで、1970年代の後半以降、リヒターが長く描き続けてきた代表的な絵画でした。


『アブストラクト・ペインティング』 1992年

いずれも自作のヘラを用い、キャンバス上にて絵具をのばしたり、削り取ることで複雑なテクスチャを築いていて、絵具が爛れるように塗られていたかと思うと、あたかもマグマのように噴出しているように見えるなど、それこそ万華鏡ならぬ多様なイメージが広がっていました。


『ゲルハルト・リヒター展』展示風景

この一連の「アブストラクト・ペインティング」から進んで左奥の展示室にて展示されていたのが、「グレイ・ペインティング」、および「カラーチャート」と呼ばれる作品でした。


『4900の色彩』(部分) 2007年

そのうち『4900の色彩』とは、既製品の色見本の色彩を偶然にしたがって配するカラーチャートに由来する作品で、25色にて構成された約50センチ四方の正方形プレート、全196枚から作られていました。色見本という具象的なモチーフに基づきながらも、モザイクのように広がる色面は抽象的なイメージを切り開いていて、眩いばかりの色彩が空間全体を照らしていました。


『モーターボート(第1ヴァージョン)』 1965年

「アブストラクト・ペインティング」と並び、リヒターの作品としてよく知られる「フォト・ペインティング」も魅惑的ではないでしょうか。これらは新聞や雑誌に載っている写真などをキャンバスへ写し取るように描いた作品で、一見リアルな写真として浮かび上がるものの、いわゆるブレやボケなども垣間見えて、いわば写真と絵画の合間の揺らぎも表現されていました。


『ビルケナウ』 2014年

今回のリヒター展で最も重要な作品とされるのが、日本初公開となる『ビルケナウ』と題した4点の絵画でした。会場では同作と同寸の複製写真、および横長の鏡の作品『グレイの鏡』が展示室を取り囲むように並んでいて、さながら「ビルケナウ」ルームと化していました。


『ビルケナウ』展示風景 *広角モードにて撮影

この『ビルケナウ』とは、アウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所で囚人が隠し撮りした写真を下層に描き写したもので、画面には赤や緑の絵具が激しいタッチによって広がり、キッチンナイフによって多くの線などが刻み込まれていました。


『ビルケナウ』(部分)

この囚人の写した写真と合わせて展示されていましたが、絵画から収容所でのイメージこそ直接浮かび上がらないものの、激しく打ち付けられ、また引き伸ばされたような色面を目にしていると、どことない不安感や恐怖感が喚起されてなりませんでした。


『不法に占拠された家』 1989年

このほか、頭蓋骨や花といった西洋絵画の伝統的主題を素材とした作品や、ガラス絵とも呼べる「アラジン」のシリーズや、近年描き続けられているドローイングなども展示されていて、初期から現在へと至るリヒターの幅広い制作を目にすることができました。


『抽象絵画(赤)』 1994年 *「MOMATコレクション」より

なお2階の所蔵作品展「MOMATコレクション」でも、11室にて「ゲルハルト・リヒターとドイツ」と題した展示が行われています。


『シルス・マリア』 2003年 *「MOMATコレクション」より

こちらではリヒターをはじめ、同時代のドイツの作家であるアンドレアス・グルスキーやゲオルク・バゼリッツなどの作品が公開されていました。あわせてご覧になられることをおすすめします。


『3月』 1994年

この日はたまたま台風による荒天が予想された日だったため、会場内は人もまばらで、どの作品もゆっくりと鑑賞することができました。


『2021年7月9日』 2021年

とはいえ、すでに今年注目の現代美術展として話題を集めていて、会期が進むにつれて混雑することも考えられます。お出かけの際は同館のTwitterアカウントなどをご覧ください。


『ストリップ』 2013〜2016年

一部を除き撮影も可能でした。


ゲルハルト・リヒター展をより楽しむための見どころ紹介! | イロハニアート

10月2日まで開催されています。なお東京での展示を終えると、豊田市美術館へと巡回(2022年10月15日~2023年1月29日)します。

追加情報:9月20日(火)から10月2日(日)の期間、一部、開館日と開館日時が変更になりました。詳しくは公式サイトをご確認ください。

開館⽇・開館時間変更のお知らせ(9月20日〜10月2日)

開館日・開館時間の変更点は下記の通りです。

【開館時間】
(変更前)9月25日(日)〜10月1日(土)の金・土曜は20:00まで
(変更後)9月25日(日)〜10月1日(土)の休館日を除く全日程20:00まで。

【休館日】
(変更前)月曜日[9月19日は開館]、9月20日(火)
(変更後)月曜日[9月19日、26日は開館]、27日(火)
*20日(火)は敬老の日の振替休館の予定でしたが、開館します。

『ゲルハルト・リヒター展』@grichter2022_23) 東京国立近代美術館@MOMAT60th
会期:2022年6月7日(火)~ 10月2日(日)
時間:10:00~17:00。
 *金・土曜は20時まで開館。
 *9月25日(日)〜10月1日(土)は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。但し7月18日、9月19日、9月26日は開館。7月19日(火)、9月27日(火)は休館。
料金:一般2200(2000)円、大学生1200(1000)円、高校生700(500)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」も観覧可。
住所:千代田区北の丸公園3-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分。
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『ライアン・ガンダー われらの時代のサイン』 東京オペラシティアートギャラリー

東京オペラシティアートギャラリー
『ライアン・ガンダー われらの時代のサイン』
2022/7/16~9/19



東京オペラシティアートギャラリーで開催中の『ライアン・ガンダー われらの時代のサイン』を見てきました。

イギリス生まれのライアン・ガンダーは、コンセプチュアルアートの新しい表現を思考するアーティストとして知られ、オブジェ、インスタレーション、絵画、写真、映像などの幅広い作品を発表してきました。

そのガンダーの東京での初めてとなる大規模個展が『われらの時代のサイン』で、会場には新作を含め、全体が1つの作品として連動するようなインスタレーションが築かれていました。



これまでにも同ギャラリーではさまざまな作家によるインスタレーションが披露されてきましたが、今回ほど一見すれば謎めいた空間が作られていたことはなかったかもしれません。



というのも、入口先から床に黒い小さなシートが散らされ、壁からは数字の記されたシートが発券されると思うと、光のバーが動く黒い立方体が数多く並び、その奥には等身大の人形が立っているものの、解説などは一切なく、何を意図しているのか読み取るのが困難であるからでした。



しかし椅子の上に蚊の彫刻が震えるように動いていたり、壁の穴から機械仕掛けのネズミが顔を覗かせながら語りかけるなど、単的な動きからして面白い作品も多く、いつしか不可思議とも言える作品世界に引き込まれていくことに気づきました。



作品と素材の意外な関係も興味深いかもしれません。壁一面に満月のようなモチーフを描いた平面の作品も、ともすればキャンバスが地であるかと思いきや、なんと日本製のデニム生地にて作られていました。



またアンティークな鏡に白い布地がかけられているようなオブジェでは、布の部分が大理石の彫刻にてできているなど、思わぬ素材に目を見張るものがありました。



はじめは何ら情報や知識を得ずに鑑賞し、改めてガンダーの意図が記された解説冊子を読みながら見やると、時間や価値、教育、そして見えるものと見えないものといった、ガンダーが関心の抱いているテーマなどが取り上げられていることがわかりました。



既存の固定化した観念を打ち破り、さまざまな気付きをもたらすガンダーの作品は、知的でありつつ、ユーモアにも満ちていたのではないでしょうか。また思わず見落としてしまう場所に作品があるなど、「まさかここにも作品が?」というような驚きもある展覧会でした。



なお1つ上のフロアでは寺田コレクションをガンダー自らセレクトした『ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展』も開かれています。あわせて見ておきたいところです。



ネズミが語る!? 驚きと発見に満ちた『ライアン・ガンダー われらの時代のサイン』展|Pen Online


撮影もできました。9月19日まで開催中です。*写真は『ライアン・ガンダー われらの時代のサイン』、および『ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展』展示風景

『ライアン・ガンダー われらの時代のサイン』 東京オペラシティアートギャラリー@TOC_ArtGallery
会期:2022年7月16日(土)~9月19日(月・祝)
休館:月曜日。(祝日の場合は翌火曜日)、8月7日(日)*全館休館日
時間:11:00~19:00 
 *入場は閉館30分前まで。
料金:一般1400(1200)円、大・高生1000(800)円、中学生以下無料。
 *同時開催中の『ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展』、『project N 87 黒坂祐』の入場料を含む。
 *( )内は各種割引料金。
住所:新宿区西新宿3-20-2
交通:京王新線初台駅東口直結徒歩5分。
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『野口哲哉「this is not a samurai」」』 ポーラ ミュージアム アネックス

ポーラ ミュージアム アネックス
『野口哲哉「this is not a samurai」」』 
2022/7/29~9/11



ポーラ ミュージアム アネックスで開催中の『野口哲哉「this is not a samurai」」』を見てきました。

1980年に生まれた現代美術家の野口哲哉は、鎧兜を身につけた人間をモチーフとした絵画や彫刻で知られ、国内外にて作品を発表するなどして活動してきました。



その野口の新旧作によって構成されたのが『this is not a samurai』と題した個展で、立体や平面など約40点あまりの作品が公開されていました。



野口の手がけるサムライの特徴として挙げられるのが、極めて精緻な甲冑の造形で、実際に歴史的資料を参照するなど綿密な考証に基づいて制作されました。



またいずれの人物も人間の内面を巧みに表現していて、途方に暮れていたり、手を額に当てて座り込んでいたりと、同じ表情を見せている者は一人としていませんでした。



そして時にジーンズを履いていたり、スマホらしく物体を操作しているなど、あたかも現代の若者のような出立ちや仕草をしていて、古のサムライがあたかも現代に生きているようなすがたを見せていました。



とはいえ、彼らはサムライであるかどうか厳密に規定されているわけではありません。いずれも鎧をまとい、兜をかぶりながらも、必ずしもサムライをそっくりそのまま表現していない点こそ、野口の作品の醍醐味といえるのではないでしょうか。



今回の個展のタイトルに「this is not a samurai」、つまり「サムライではない」と付けられていましたが、たとえば戦国の武将でもなく、かといって現代人でもない、いわばどの時代もさまざまな内面を持った一人の人間として表現されているのかもしれません。



展示は昨年の高松市美術館にはじまり、山口県立美術館、群馬県立館林美術館、刈谷市美術館にて行われてきた巡回展で、東京ではポーラ ミュージアム アネックスでの開催となります。


「もし現代にサムライがいたら・・?! 野口哲哉の個展へ行こう!」 | イロハニアート

会期中は無休です。9月11日まで開催されています。*写真はすべて『野口哲哉「this is not a samurai」」』より。撮影が可能です。

『野口哲哉「this is not a samurai」」』 ポーラ ミュージアム アネックス@POLA_ANNEX)
会期:2022年7月29日(金)~9月11日(日)
休館:会期中無休。
料金:無料
時間:11:00~20:00 *入場は18:30まで 
住所:中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
交通:東京メトロ有楽町線銀座1丁目駅7番出口よりすぐ。JR有楽町駅京橋口より徒歩5分。
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根津美術館にて書の名品を紹介する『よめないけど、いいね!』が開催中です

日本の書の名品の魅力を分かりやすく紹介する展覧会が、東京・南青山の根津美術館にて開かれています。



その『企画展 よめないけど、いいね!根津美術館の書の名品』の見どころについて、WEBメディアのイロハニアートへ寄稿しました。

『よめないけど、いいね!』読めなくても楽しい、日本の書の魅力とは?【根津美術館】 | イロハニアート

今回の展覧会は「よめないけど、いいね!」とあるように、必ずしも文字が読めなくとも書を楽しめるように組み立てられていて、書にまつわる意外なルールや、切り詰められた作品、またそもそも当人しか読めない書など、さまざまな作品が展示されていました。

そのうちの切り詰められた作品とは、鎌倉時代に書かれた『無学祖元墨蹟 附衣偈断簡』と呼ばれる墨蹟で、冒頭の5行などが切り取られて現在まで残されました。これは墨蹟が茶の湯の世界にて茶道具として利用されていたからで、江戸時代に床の間に飾るためにサイズに合わせて切断したわけでした。



また光悦の『書状』も右端から順に読んでも意味が通らない手紙で、最初の余白や各行の間を行き来するといった一定の規則に基づいて読む必要がありました。



このほか、金銀泥による華麗な下絵の描かれた断簡や、文字や線そのものが生み出すリズムの美しい作品なども展示されていて、書の多様な魅力を味わうことができました。


書を味わうとっかかりとなるような展覧会といえるかもしれません。8月21日まで開催されています。

『企画展 よめないけど、いいね! 根津美術館の書の名品』 根津美術館@nezumuseum
会期:2021年7月16日(土)~8月21日(日)
休館:月曜日。ただし7月18日(月・祝)は開館、翌19日(火)休館。
時間:10:00~17:00 ※入館は16:30まで
料金:一般1300円、学生1000円、中学生以下無料
 *オンライン日時指定予約
住所:港区南青山6-5-1
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線「表参道」駅A5出口より徒歩8分
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夏休みに行きたいアートフェス5選 2022

依然としてコロナ禍が続くものの、今年は過去に延期になっていた芸術祭も開催され、久々に夏の本格的な芸術祭シーズンを迎えています。



そうした中、全国各地にて開催(または予定)される5つのおすすめの芸術祭を、WEBメディア「イロハニアート」へ寄稿しました。

【日本各地で開催中】まだ間に合う!夏休みに行きたいアートフェス5選2022 | イロハニアート

今回の記事で取り上げたのは以下の芸術祭です。

『越後妻有 大地の芸術祭 2022』 
開催地域:新潟県十日町、川西、中里、松代、松之山、津南の各エリア
開催期間:2022年4月29日(金祝)~11月13日(日)
https://www.echigo-tsumari.jp

『瀬戸内芸術祭2022』
開催地域:瀬戸内海一帯(直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島、沙弥島[春のみ]、本島[秋のみ]、高見島[秋のみ]、粟島[秋のみ]、伊吹島[秋のみ]、高松港周辺、宇野港周辺
開催期間:夏会期 2022年8月5日(金)~9月4日(日)、秋会期 9月29日(木)~11月6日(日)
https://setouchi-artfest.jp/

国際芸術祭「あいち2022」
開催地域:愛知芸術センター、一宮市、常滑市、有松地区(名古屋市)
開催期間:2022年7月30日(土)~10月10日(月・祝)
https://aichitriennale.jp

『リボーンアートフェスティバル 2021-22』
開催地域:宮城県石巻市街地(石巻中心市街地、復興祈念公園周辺、渡波)、牡鹿半島(桃浦・荻浜、鮎川)
開催期間:2022年8月20日(土)~10月2日(日)
https://www.reborn-art-fes.jp

『道後オンセナート2022』
開催地域:道後温泉地区
開催期間:2022年4月28日(木)〜2023年2月26日(日)
https://dogoonsenart.com/



コロナ禍において1年延期され、今年4月に開幕した『越後妻有 大地の芸術祭 2022』では、夏シーズンが7月30日からはじまりました。また開催に先立って「越後妻有里山現代美術館MonET(モネ)」や「まつだい『農舞台』」もリニューアルオープンしました。



瀬戸内海の島々を舞台とする『瀬戸内国際芸術祭』は、8月5日から夏会期がスタートし、新作が公開されました。それに『あいちトリエンナーレ』の後継として企画された国際芸術祭『あいち2022』は、名古屋市のほかに、常滑市や一宮市も舞台にして各種プログラムが行われています。

当初4月から開催予定だった『リボーンアートフェスティバル 2021-22』は、会期を大幅に変更し、8月20日より後期がはじまります。



この他、秋には『みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2022』(9月3日〜25日)や『岡山芸術交流2022』(9月30日〜11月27日)、それにBIWAKOビエンナーレ』(10月8日〜11月27日)なども控えています。

お盆休みを迎え、すでに多くの方が芸術祭へと繰り出しているかもしれませんが、私もこの夏は『あいち2022』と『リボーンアートフェスティバル 2021-22』へ行ければと思っています。

*写真は過去に撮影した越後妻有と直島、それに『岡山芸術交流』での風景です。
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『第24回亀倉雄策賞受賞記念 大貫卓也展「ヒロシマ」』 クリエイションギャラリーG8

クリエイションギャラリーG8
『第24回亀倉雄策賞受賞記念 大貫卓也展「ヒロシマ」』
2022/7/12~8/20



クリエイションギャラリーG8で開催中の『第24回亀倉雄策賞受賞記念 大貫卓也展「ヒロシマ」』を見てきました。

グラフィックデザインの発展に寄与することを目的として、1999年に設立された亀倉雄策賞は、今年で第24回を迎えるに至りました。



今回の亀倉雄策賞に選ばれたのは、数々のブランドミュニケーションを手がける大貫卓也で、平和希求キャンペーンポスターおよび関連制作物の「HIROSHIMA APPEALS 2021」が受賞作に決まりました。



ともかく目を引くのは、スノードームに入れられた白い鳩のモチーフで、黒い雪の中から白い鳩があらわれる様子などが表されていました。それらはあたかも黒い雨を連想させるようで、床には同じような黒く細かいゴムチップが敷き詰められていました。



白い鳩はドームの中で美しいすがたを見せていたものの、黒い雪にすべて覆われていて目にすることができないものもあり、それこそ原爆による破壊や死を連想させてなりませんでした。



会場の奥にて公開されていたスノードームと鳩による映像も凄みがあったかもしれません。またパブロ・カザルスの『鳥の歌』などがBGMとして流れていて、まさに瞑想と祈りを誘うような空間が広がっていました。



広島に原爆が投下されて77年が経過しましたが、今改めて「NO WAR」のメッセージが重く響いているように感じられてなりませんでした。


日曜、祝日、及び8月10日から8月14日の間がお休みです。8月20日まで開催されています。

『第24回亀倉雄策賞受賞記念 大貫卓也展「ヒロシマ」』 クリエイションギャラリーG8@g8gallery
会期:2022年7月12日(火)~8月20日(土)
休館:日曜、祝日。および8月10日(水)〜8月14日(日)
時間:11:00~19:00。
料金:無料。
住所:中央区銀座8-4-17 リクルートGINZA8ビル1F
交通:JR線新橋駅銀座口、東京メトロ銀座線新橋駅5番出口より徒歩3分。
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絵本作家、かこさとしの展覧会がBunkamura ザ・ミュージアムにて開催されています

1926年生まれのかこさとしは、「だるまちゃん」シリーズをはじめ、『地下鉄のできるまで』といった科学絵本など、2018年に亡くなるまで実に600冊を超える絵本を制作しました。



そのかこさとしの創作世界を紹介する『かこさとし展 子どもたちに伝えたかったこと』について、Penオンラインに寄稿しました。

絵本作家のかこさとしの初期から晩年までの代表作が集結。Bunkamura ザ・ミュージアムにて展覧会が開催中|Pen Online

今回の展覧会では、かこの絵本の原画だけでなく、初期の油彩画や戦後ボランティア活動の一種であるセツルメント運動時代での紙芝居、さらには晩年に手がけた初公開となる通称「生命図譜」と呼ばれる作品を展示していて、かこの創作とともに人生の歩みを知ることができました。



子どもの頃から絵が好きだったかこは、科学に興味を抱くと、大学では工学部に学び、科学者を目指しました。そして戦後は昭和電工に入社すると会社勤務の傍らに人形劇団に参加したり、セツルメントの子ども会運動に携わりました。そこでかこは子どもたちに向けて多くの紙芝居を自ら制作していて、読み聞かせをしながら子どもたちと触れ合いました。

またセツルメントを通して児童文化活動に向き合ったかこは、その経験をのちの絵本制作へと活かし、建設、自然科学、身体、社会、昔話などをテーマとする多様な絵本を生み出していきました。



一点一点の絵本原画を通して感じるのは、とりわけ科学絵本などにおける繊細でかつリアルな描写で、実際に『地下鉄のできるまで』では工事現場に出向くなど丹念に取材して描いていました。

そうしたかこが絵本制作において見せた探究心の集大成とも呼べるのが、「宇宙進化地球生命変遷放散総合図譜」と言われる未完の作品でした。

ここでは5メートルもの大画面にビックバン以降、地球の誕生や生命の進化のプロセスなどを細密とも言えるほど小さな文字やスケッチに描きこんでいて、まさに過去から現在へと至った森羅万象が示されていました。



このほか、航空士官を目指していたエピソードや戦時下での体験についても紹介されていて、かこの意外とも受け止められる側面をたどることができました。


会期中すべての土日祝、および会期最終週の8月29日から9月4日の間は一部オンラインによる入場日時予約が必要です。

9月4日まで開催されています。*写真は館内のフォトスポットより

『かこさとし展 子どもたちに伝えたかったこと』 Bunkamura ザ・ミュージアム@Bunkamura_info
会期:2022年7月16日(土)~9月4日(日)
休館:7月26日(火)。
時間:10:00~18:00。
 *毎週金曜と土曜は21時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1400円、大学800円、高校・中学生500円、小学生以下無料。
 *会期中の土日祝、および8月29日(月)から9月4日(日)はオンラインによる入場日時予約が必要。
住所:渋谷区道玄坂2-24-1
交通:JR線渋谷駅ハチ公口より徒歩7分。東急東横線・東京メトロ銀座線・京王井の頭線渋谷駅より徒歩7分。東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線・東京メトロ副都心線渋谷駅3a出口より徒歩5分
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2022年8月に見たい展覧会【大勾玉展/日本美術をひも解く/李禹煥】

7月末から8月に入って猛烈な熱波が各地を襲っています。最高気温が連日40度近くまで達する日も少なくありません。なかなか出かけるのも億劫になってしまう季節ですが、いかがお過ごしでしょうか。

8月にはじまる展覧会は多くありませんが、その中でも気になる展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・『小松美羽展 岡本太郎に挑む―霊性とマンダラ』 川崎市岡本太郎美術館(6/25~8/28)
・『カラーフィールド 色の海を泳ぐ』 DIC川村記念美術館(3/19~9/4)
・『開館20周年記念展 モネからリヒターへ ―新収蔵作品を中心に』 ポーラ美術館(4/9~9/6)
・『リニューアルオープン記念 自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで』 国立西洋美術館(6/4~9/11)
・『工藤麻紀子展 花が咲いて存在に気が付くみたいな』 平塚市美術館(7/9~9/11)
・『どっちがどっち?いわいとしお×岩井俊雄 ―『100かいだてのいえ』とメディアアートの世界―』 茨城県近代美術館(7/2~9/19)
・『東北へのまなざし1930-1945』 東京ステーションギャラリー(7/23~9/25)
・『ガブリエル・シャネル展 ― Manifeste de mode』 三菱一号館美術館(6/18~9/25)
・『水のかたち―《源平合戦図》から千住博の「滝」まで』 山種美術館(7/9~9/25)
・『ミロコマチコ いきものたちはわたしのかがみ』 市原湖畔美術館(7/16~9/25)
・『浮世絵動物園』 太田記念美術館(7/30~9/25)
・『イラストレーター 安西水丸展』 佐倉市立美術館(8/6~9/25)
・『日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱』 東京藝術大学大学美術館(8/6~9/25)
・『ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション』 国立新美術館(6/29~9/26)
・『クマのプーさん展』 PLAY! MUSEUM(7/16~10/2)
・『シアトル→パリ 田中保とその時代』 埼玉県立近代美術館(7/16~10/2)
・『ボストン美術館展 芸術×力』 東京都美術館(7/23~10/2)
・『ぞろぞろ・わいわい・人だらけ―狩野派も、それ以外も』板橋区立美術館(8/27~10/2)
・『フィン・ユールとデンマークの椅子』 東京都美術館(7/23~10/9)
・『アレック・ソス Gathered Leaves』 神奈川県立近代美術館 葉山館(6/25~10/10)
・『特別展アリス―へんてこりん、へんてこりんな世界』 森アーツセンターギャラリー(7/16~10/10)
・『立花文穂展 印象 IT'S ONLY A PAPER MOON』 水戸芸術館(7/23~10/10)
・『ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで/MOTアニュアル2022 私の正しさは誰かの悲しみあるいは憎しみ』 東京都現代美術館(7/16~10/16)
・『生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎』 アーティゾン美術館(7/30~10/16)
・『大勾玉展-宝萊山古墳、東京都史跡指定70周年-』大田区立郷土博物館(8/2~10/16)
・『松岡コレクション めぐりあうものたち Vol.2』松岡美術館(8/2~10/23)
・『合縁奇縁~大倉集古館の多彩な工芸品~』大倉集古館(8/16~10/23)
・『鈴木大拙展 Life=Zen=Art』 ワタリウム美術館(7/12~10/30)
・『地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング』 森美術館(6/29~11/6)
・『開館15周年記念 李禹煥』 国立新美術館(8/10~11/7)

ギャラリー

・『第24回亀倉雄策賞受賞記念 大貫卓也展「ヒロシマ・アピールズ」』 クリエイションギャラリーG8(7/12~8/20)
・『髙田唯 混沌とした秩序』 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(7/11~8/25)
・『笹本晃 : 浮き沈み浮き』Take Ninagawa(7/16〜9/3)
・『野口哲哉「this is not a samurai』 ポーラ ミュージアム アネックス(7/29~9/11)
・『A Quiet Sun 田口和奈展』 メゾンエルメス8階フォーラム(6/17~9/30)
・『末光弘和+末光陽子 / SUEP.展 Harvest in Architecture 自然を受け入れるかたち』 TOTOギャラリー・間(6/8~9/11)

まずは考古に関する展覧会です。大田区立郷土博物館にて『大勾玉展-宝萊山古墳、東京都史跡指定70周年-』が開催されます。



『大勾玉展-宝萊山古墳、東京都史跡指定70周年-』@大田区立郷土博物館(8/2~10/16)


これは大田区の宝莱山古墳が東京都の史跡に指定されて70周年を期し、出土したヒスイ製の勾玉を紹介するもので、あわせて全国各地よりやって来た1500点もの勾玉が一堂に公開されます。独特な形や色などで現代でも人気のある勾玉をかつてないスケールにて楽しめる機会となりそうです。

続いては日本美術です。東京藝術大学大学美術館にて『日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱』が行われます。



『日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱』@東京藝術大学大学美術館(8/6~9/25)

現在建て替え中の宮内庁三の丸尚蔵館が収蔵する作品、および東京藝術大学のコレクション計82件の日本美術を公開するもので、狩野永徳の『唐獅子図屏風』や伊藤若冲の『動植綵絵』のうちの10幅なども紹介されます。


会期は前後期に分かれていて、それぞれ前期と後期でも一部作品の展示替えや巻替えが行われます。酒井抱一の『花鳥十二ヶ月』は前期1期間の8月6日~8月28日での展示、伊藤若冲の『動植綵絵』は後期1期間の8月30日~9月25日での公開です。詳しくは出品リストをご参照ください。

最後はもの派の美術家、李禹煥の個展です。国立新美術館にて『開館15周年記念 李禹煥』が開かれます。



『開館15周年記念 李禹煥』@国立新美術館(8/10~11/7)


今回の個展では李自らの展示プランのもと、最初期の作品から代表的な「関係項」といった彫刻のシリーズ、または「線より」や「照応」といった絵画などが公開されます。横浜美術館以来、17年ぶりの個展だけに、久しぶりに李の創作のすべてを見ることができそうです。

一部、内容が重なりますが、WEBメディア「イロハニアート」にも8月のおすすめ展覧会を寄稿しました。

【8月のおすすめ展覧会5選】李禹煥や皇室ゆかりの名品、それに江戸絵画まで。 | イロハニアート

それでは今月もよろしくお願いいたします。
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