「有山達也展 音のかたち」 クリエイションギャラリーG8

クリエイションギャラリーG8
「有山達也展 音のかたち」
2019/8/27~10/5



クリエイションギャラリーG8で開催中の「有山達也展 音のかたち」を見てきました。

アートディレクターの有山達也は、高校時代に買い始めたLPレコードをコレクションし続けては、今に至るまで音楽と密接な生活を送ってきました。

その有山の東京初の個展となるのが「音のかたち」で、有山のレコードコレクションやビンテージオーディオとともに、いわば音を「かたち」と捉えた作品などが出展されていました。それにしても一般的に耳で聴く音を視覚化するとは、一体、どのように表していたのでしょうか。



一冊の写真集、齋藤圭吾の「溝と針」(本の雑誌社)が切っ掛けでした。同写真集のエディトリアルデザインを手がけた有山は、レコード針と溝を接写レンズで写した作品を目にすると、「レコードの溝やレコード針を拡大したら音のかたちが見えるかもしれない。」(解説より)と考え、音のかたちを探ることを試みました。



「針と溝」のアプローチによって、レコードの盤面を捉えた写真に目を引かれました。いずれも盤面の溝などを拡大して写していて、うねりを伴って刻む線が広がる様子は、まるで抽象表現を見るかのようでした。

さらに有山は、レコードのカッティングエンジニアや、オーディオ機器を制作する職人に取材しては、いかに音が生み出されるのかをテキストや写真に「かたち」として記録しました。



1枚1枚のレコードの内容や版の状態、また価格や感想などを記録した一覧表も興味深いかもしれません。千葉県銚子市のオーディオショップ、グレイのオーナーである阿部氏が購買者に送付していたリストで、100年後のコレクターにも愛読してもらうため、聴いた印象を率直に記しました。



ともかく膨大なリストゆえに全てを読むのは困難でしたが、ヨッフム指揮の「コジ・ファン・トゥッテ」やベーム指揮のシューベルトの交響曲第7番、それにカイルベルトによるR.シュトラウスの「アラベラ」など、一時代を築いた名指揮者のレコードが目立っていました。来年には全3200ページもの冊子を刊行すべく、現在、レイアウトや構成の作業が続いているそうです。(展示品は有山によるレイアウトの一部)



この他、イラストレーターのワタナベシンイチによる「オーディオを始めたばかりのボクが探した音の道」も面白い作品ではないでしょうか。レコードからどのようなメカニズムで音が生まれては、耳へと入っていくのかをテキストとイラストによって表現していて、まさに目で音の発生プロセスを追うことが出来ました。



ダイヤモンドの極小のレコード針にも驚かされました。写真パネルと実物の双方が展示されていましたが、実物はあまりにも小さいため、肉眼では捉えるのは難しいかもしれません。



会場ではBGMとして終始、有山のセレクトしたレコードなどがかかっていました。私が出向いた時はビートルズの「LET IT BE」と、別室でベートーヴェンの弦楽四重奏曲第1番の音楽が鳴っていました。さすがにビンテージオーディオを通した音楽は臨場感があり、スマホからイヤホンを通して聴くのとは迫力がまるで違いました。



なおレコードはランダムなタイミングで入れ替わります。音楽は空間の表情を変化させる力も持ち得ているため、何度か通っては楽しむのも面白いかもしれません。


撮影も可能です。10月5日まで開催されています。

「有山達也展 音のかたち」 クリエイションギャラリーG8@g8gallery
会期:2019年8月27日(火)~10月5日(土)
休館:日・祝日。
時間:11:00~19:00。
料金:無料。
住所:中央区銀座8-4-17 リクルートGINZA8ビル1F
交通:JR線新橋駅銀座口、東京メトロ銀座線新橋駅5番出口より徒歩3分。
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「歌川豊国―写楽を超えた男」 太田記念美術館

太田記念美術館
「生誕250年記念 歌川豊国―写楽を超えた男」
2019/9/3~9/29



太田記念美術館で開催中の「生誕250年記念 歌川豊国―写楽を超えた男」を見てきました。

歌川派の創始者、豊春の元で習い、主に寛政時代に役者絵で世を席巻した歌川豊国は、今年で生誕250年を迎えました。

それを期して行われているのが「歌川豊国―写楽を超えた男」展で、単に役者絵だけではなく、美人画や版本、挿絵など、初期から晩年までの作品、約140件(展示替えを含む)ほどが出展されていました。

主に錦絵で知られる豊国でしたが、肉筆にも見逃せない作品がありました。「炬燵の美人図」は、ひざ下から炬燵布団に入った女性が、右ひじを床につきつつ、横たわりながら真剣な面持ちで書物に目を通す姿を描いていて、炬燵の上には一匹の猫が丸まった様子も見ることが出来ました。豊国の細かな筆使いが伝わるのではないでしょうか。


歌川豊国「愛宕山夏景色」 太田記念美術館

豊国の描く美人画は、妖艶な女性を表した歌麿とは異なり、「健康的」(解説より)で温和な表情をした女性でした。その一例でもあるのが、「愛宕山夏景色」で、刀を持った若い男を中央に、左右でお茶などを飲もうとする複数の女性を描いていました。いずれも物静かな表情をしていて、一人一人に異なった着衣の細かな文様なども魅力的と言えるかもしれません。

役者絵の出世作となったのは、寛政6年の正月から売り出され、歌舞伎役者の姿を描いた「役者舞台之姿絵」なる連作でした。同じ年の5月には写楽も大首絵でデビューを果たし、当時、既に人気を集めていた勝川春英と三つ巴の争いとなりましたが、写楽は10ヶ月にして姿を消し、春英も数年後は手を引くなど、豊国が役者絵の「トップランナー」(解説より)としての地位を築きました。


大首絵の「三代目市川八百蔵」に見惚れました。睨みをきかす役者を躍動的な姿で捉えていて、目の周りには虹色の色彩が広がり、背景の雲母も美しく残っているなど、保存の状態も良好でした。まるで役者の演じる熱気も伝わるような迫力も感じられるかもしれません。

人気役者の日常の一コマを美人とともに捉えた「夜舟の宗十郎」にも魅せられました。ちょうど船着場に着いた三代目沢村宗十郎と、その姿を見ては驚く女性を対比的に描いていて、提灯から洩れる白いあかりなど、夜の情景も巧みに表していました。船が進む横への動きと、女性が宗十郎を見遣る縦の動きが見事にクロスしていて、どこか映像を目の当たりにするような印象も与えられました。まさに人気スターが目の前に現れた一瞬の出来事を描いた作品と呼べそうです。

この他、子どもが障子の腰板の前で遊ぶ「子供の戯れ」や、上下で芝居の舞台の内外を描いた「中村座場内・場外図」も面白い作品でした。後者では、大勢の人がひしめき合いながら飲食を共にしつつ、芝居を楽しそうに観覧していて、観劇の賑やかな様子がひしひしと伝わってきました。

てっきり館蔵品による豊国展かと思いきや、千葉市美術館や東京国立博物館、さらに日本浮世絵博物館やたばこと塩の博物館、個人のコレクションが加わるなど、他館の作品も目立っていました。いつもながらにスペースこそ制約がありますが、近年の豊国展の決定版としても良いのではないでしょうか。

なお太田記念美術館では、今秋、この歌川豊国展を筆頭に「秋の歌川派フェスタ」と題し、歌川派に関した展覧会を連続して開催されます。



「秋の歌川派フェスタ 豊国から国芳、芳年へ」
1.「生誕250年記念 歌川豊国―写楽を超えた男」展 9/3~9/29
2.「歌川国芳―父の画業と娘たち」展 10/4~10/27
3.「ラスト・ウキヨエ 浮世絵を継ぐ者たち―悳俊彦コレクション」展 11/2~12/22

3つの展覧会の全てに来場すると、先着順にて国芳の猫を引用したオリジナルの「ほめ猫エコバック」がプレゼントされます。引き換えは「ラスト・ウキヨエ展」のスタートする11月2日からで、なくなり次第、終了します。(各展覧会チケット3種類とプレゼント1つ引き換え。)

特に歌川派から国芳系の作品を展観する構成となっているそうです。私も3つの展覧会のコンプリートを目指したいと思います。



間もなく会期末です。9月29日まで開催されています。

「生誕250年記念 歌川豊国―写楽を超えた男」 太田記念美術館@ukiyoeota
会期:2019年9月3日(火)~9月29日(日)
休館:9月9日(月)、17日(火)、24日(火)。
時間:10:30~17:30(入館は17時まで)
料金:一般1000円、大・高生700円、中学生以下無料。
住所:渋谷区神宮前1-10-10
交通:東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前駅5番出口より徒歩3分。JR線原宿駅表参道口より徒歩5分。
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「ロイス・ワインバーガー展」 ワタリウム美術館

ワタリウム美術館
「ロイス・ワインバーガー展」 
2019/7/13~10/20



ワタリウム美術館で開催中の「ロイス・ワインバーガー展」を見てきました。

オーストリア出身のロイス・ワインバーガー(1947年〜)は、1970年代から植物を素材とした作品を手がけ、生態や環境の様々な問題を扱いつつ、アートの立場から自然に向き合ってきました。

ワインバーガーの生まれた地は、アルプス山脈東部に広がるチロル地方の山間部で、子どもの頃から両親の農場で動物や植物に接し、土着の風習や儀式に参加していました。そして植物を集めたり、虫の足を数えたりするなど、自然に近しい生活を送っていました。


右:「無題(かぼちゃ)」 1978年

さらに約16年間、鉄骨工の仕事をしながら、農場を手伝ったり、文筆や演劇制作、ドローイングを描くなどして活動してきました。結果的にアートの分野のみに絞って活動したのは30歳の頃で、ウィーンの自邸で育てた荒地植物を別の地域に植える、ガーデン・プロジェクトを展開していきました。


「ブランデンブルク門」 1994年

この荒地植物とは、アスファルトやゴミ捨て場など、本来的に植物の生育に向かない場所に生える雑草のことで、ワインバーガーは「生活を脅かす厄介者であり、人間の作り上げた枠組みへの反抗者」(解説より)として捉えていました。1994年には、ベルリンのブランデンブルク門の周囲の雑草に水を遣るパフォーマンスを行うなど、中心ではなく周縁、ないし雑草のような些細な存在に目を向けてきました。


右:「植物を越えるものは植物と一体である」 1997年 ドクメンタX ドイツ、カッセル

「植物を越えるものは植物と一体である」は、1997年にドイツのカッセルで開かれた現代美術展「ドクメンタ」への出展作品で、同市の使われていない古い線路の除草剤を取り除いては、外来種の荒地植物を植えて庭へと変えました。ワインバーガーは線路に根付いた外来種を、当時、ドイツに増加していた移民になぞらえていました。


「落葉」 2009年 第53回ベニス・ビエンナーレ、オーストリア館、イタリア、ベニス

落ち葉をうずたかく積み上げたのが、2009年の第53回ベニス・ビエンナーレのオーストリア館に出展した「落葉」でした。小屋の中の枯葉は、時間を経て腐敗して小さくなると、さらに枯れ葉を重ねていったそうです。いわば葉から堆肥、ないし土へと変化するプロセスを視覚化させた作品なのかもしれません。


「小道ー体制転覆的な空間攻略」 2019年

壁一面に広がった「小道ー体制転覆的な空間攻略」にも目を奪われました。何やら赤い曲線が上下左右に伸びていましたが、実際には木を食べて生きるキクイムシが樹皮をかじった跡を壁画にした作品でした。まるで洞窟の断面図、あるいは生き物の触手のように見えるかもしれません。


手前:「モバイル・ランドスケープ」 2003年 *この窓越しに「ポータブル・ガーデン」が見えます。

美術館の外へと展示が続いていました。それがカラフルなショッピングバケツに畑の土を詰め、別の場所に運んで置く「ポータブル・ガーデン(持ち運びできる庭)」なる作品でした。ワインバーガーによれば、土の中に入っていた種によって植物は誕生し、いずれ袋が風化すると、新しい土と成長した植物が一体化するとしています。それにしてもバックは一体、どこへ運ばれたのでしょうか。


「ポータブル・ガーデン(持ち運びできる庭)」のある空き地

答えは美術館の前の外苑西通りを挟んだ反対側にある、雑草が生い茂る小さな空き地でした。建物にも挟まれたスペースゆえに、おおよそ人目につきやすい場所とは言えません。


「ポータブル・ガーデン(持ち運びできる庭)」 2019年
 
敷地の外からバックを覗き込むと、僅かながらも草が生えていることが見て取れました。ワインバーガーは移動する植物を、先のドクメンタへの出品作と同様、移民に重ねているそうですが、今後、長い歳月を得ると、朽ちた袋から植物が土へ移り、東京の大地に根ざしていくのかもしれません。

ワインバーガーとワタリウム美術館の関係は何も今に始まったわけではありません。1999年、ワタリウム美術館で開催されたグループ展「エンプティ・ガーデン」に出展すると、約1年前に来日し、建物の屋上に荒地植物の庭を制作しました。そこではワインバーガーが持ち込んだヨーロッパの種と日本の植物が共存することを意図したとしています。


左:「ワタリウム美術館の屋上庭園」 2019年

その後、屋上の庭園は約20年間放置されましたが、今回の個展において改めて立ち入り、雑草をピンクの紐で結んで作品に仕上げました。まさに20年越しです。この場所だからこそあっての個展と言えるかもしれません。

またワインバーガーは現在、宮城県石巻市で開催中の「リボーン・アートフェスティバル2019」(9月29日まで)にも参加し、網地島エリアにてインスタレーションや壁画など7点の作品を公開しています。


「網地島エリア | ロイス・ワインバーガー」リボーン・アートフェスティバル2019
https://www.reborn-art-fes.jp/artist/loisweinberger


「無題」 1996年

それにしても端的に植物を素材とした作品とはいえども、ワインバーグの制作は極めて独創的と言えるのではないでしょうか。ユーモラスまでのオブジェなどはもとより、自然を扱いつつも、社会的な問題にまで意識したワインバーガーの幅広い視点と創造力に感心させられました。


「ロイス・ワインバーガー展」会場風景

個人での利用に限り、会場内の撮影が可能でした。SNS(個人アカウントに限り)にもアップすることが出来ます。

10月20日まで開催されています。

「ロイス・ワインバーガー展」 ワタリウム美術館@watarium
会期:2019年7月13日(土)~10月20日(日)
休館:月曜日。但し7月15日、8月12日、9月16日、9月23日、10月14日は開館。
時間:11:00~19:00 
 *毎週金曜日は21時まで開館。
料金:一般1000円、25歳以下(学生)800円、小・中学生500円、70歳以上700円。
 *ペア券:大人2人1600 円、学生2人1200 円
 *グリーンPass:1500円(本人に限り、会期中何度でも入場可。)
住所:渋谷区神宮前3-7-6
交通:東京メトロ銀座線外苑前駅より徒歩8分。
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「二つの魂の神話 ヴァサンタ ヨガナンタン 写真展」 シャネル・ネクサス・ホール

シャネル・ネクサス・ホール
「二つの魂の神話 ヴァサンタ ヨガナンタン 写真展」 
2019/9/3~9/29



シャネル・ネクサス・ホールで開催中の「二つの魂の神話 ヴァサンタ ヨガナンタン 写真展」を見てきました。

フランスの写真家、ヴァサンタ・ヨガナンタン(1985年〜)は、2013年から7年間、北インドから南インドへと旅し、現地の人々と生活しながら撮影を続け、写真を「A Myth of Two Souls」、すなわち「二つの魂の神話」にまとめました。



それは古代インドの叙事詩で、ヒンドゥー教の聖典の1つである「ラーマーヤナ」に着想を得たもので、ヨガナンタンは物語に登場する土地を渡り歩いては、「ラーマーヤナ」の軌跡を辿りました。言うまでもなく「ラーマーヤナ」はフィクションではありますが、地名は地理的に実在しているそうです。



「ラーマーヤナ」とは紀元前3世紀頃、サンスクリット語の詩人、ヴァールミーキにより編纂されたヒンドゥーにおける最初の詩で、ラーマーヤナ王国から追放された王子ラーマと妃シーターの物語を中心に、全7章、計24000近くもの節から成っています。その後も何世紀に渡って再解釈され、現在もインドや東南アジアにて舞台やコミック、それにドラマに書き換えられては、多くの人々に親しまれてきました。



ヨガナンタンの作品においても、第1章「少年期」、第2章「約束」、第3章「追放」と、全7章立てで構成されていて、「ラーマーヤナ」の役柄を演じる現地の人々や風景などで、物語の各場面を追体験するように作られていました。また英語と日本語のテキストによって粗筋も記されていて、必ずしも我々にとって馴染みの深いとは言えない「ラーマーヤナ」の物語をある程度理解し得るように工夫されていました。



現地の人々は王子や妃のような格好をして「ラーマーヤナ」になりきっていましたが、基本的にはそれぞれ心に刻まれたシーンを自由に演じてもらったそうです。今から2300年も前の伝説上の神話が、実在の土地と演じる人々によって、現代へと蘇るような錯覚にとらわれるかもしれません。またフィクションと現実が互いに入り混じっているような印象も与えられました。



写真自体にも大いに魅力がありました。と言うのも、ヨガナンタンは地元のインド人の画家と協働し、モノクロの作品に手彩色を入れていて、独特の絵画的な質感を帯びていたからでした。ただし限りなく穏やかに絵具が加えられているため、遠目では端的な写真かと見間違うかもしれません。



またヨガナンタンは、霧深い風景を表すために日本の和紙にプリントしたり、時にコミックを引用したりするなど、作品や展示に様々な手を加えていました。細かに区切られた展示室を進むごとに変わって見える「景色」も大いに魅力ではないでしょうか。



ヨガナンタンはスリランカ出身の父親とフランス人の母親の間に生まれ、「二つの魂の神話」の撮影に際してはネパールやインド、スリランカを12回も巡ったとしています。それはともすると写真家にとって自らのルーツを確認する旅であったのかもしれません。



現在、フランスの出版社より「二つの魂の神話」の写真集が5章まで出版されていますが、来年の2020年にかけて残りの2章が刊行され、全7章が出揃います。



撮影も可能です。9月29日まで開催されています。*掲載写真は全て「二つの魂の神話 ヴァサンタ ヨガナンタン 写真展」会場風景。

「二つの魂の神話 ヴァサンタ ヨガナンタン 写真展」 シャネル・ネクサス・ホール
会期:2019年9月3日(火)~9月29日(日)
休廊:会期中無休。
料金:無料。
時間:12:00~19:30。
住所:中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A13出口より徒歩1分。東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅5番出口より徒歩1分。
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「第13回 shiseido art egg 遠藤薫展」 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー
「第13回 shiseido art egg 遠藤薫展」
2019/8/30~9/22



資生堂ギャラリーで開催中の「第13回 shiseido art egg 遠藤薫展」を見てきました。

1989年に大阪で生まれた遠藤薫は、沖縄県立芸術大学工芸専攻染めコースで学んだ後、工芸作家として活動しながら、VOCA展(2019年)に出展するなど現代アーティストとしても作品を発表してきました。現在は主にベトナムのハノイを拠点に制作を続けているそうです。



空間を埋め尽くさんとばかりに吊り下がる多くの布に目を奪われました。いずれもが麻や絹などを素材とした古い布で、福島や青森、それにカンボジアやベトナム、インドなどのアジア一帯から集められたものでした。

さすがに古い布だけに、表面は皮膚に刻まれた深い皺のように爛れていて、何とも深い味わいを醸し出していました。それこそ繊維や糸の1つ1つに使われた長い歴史が込められているのような、年季の入った布と言っても良いかもしれません。



布の色は一様ではなく、黄色や紫、それに青みがかったものなど、実にカラフルでした。また単純に布とはいえども、花の模様など、何らかの用途に使われたと思しきものがあることも見て取れました。



実のところ古い布には大きく分けて2種類あり、1つは古いベットシーツやこたつ布団、それに雑巾などの布、もう1つは戦前に織られた米袋や仕事着、ないしは絹などの布でした。そして前者では、古い布を集めては縫い締め、雑巾として活用し、また損なわれると修復した、いわば再利用を繰り返した布でした。



後者においても一口に古い布とは言い切れないかもしれません。とするのも、全てが戦前に織られた布であるものの、生きている蚕を這わせ、吐き出す糸によって穴などを修復するプロセスをとっていて、目を凝らすと確かに黄色くふわふわとした綿のような糸が広がっていることが分かりました。



この他にも沖縄夏の普段着である芭蕉布の破れを、米軍の服の端切れなどで直した布も展示されていました。かつての沖縄では、芭蕉布を米軍基地内のバナナの繊維で縫い繋いだり、米軍のパラシュートを解いた絹糸で布を織った歴史も存在していて、いわば布には戦争の痕跡も残されているわけでした。



遠藤はアジア各地の古い布をリサーチし、様々な方法で蘇らせるだけでなく、かつて布を織る仕事を担った女性の労働の在り方などにも目を向けています。



それぞれの随所に残った穴や傷痕を目にしていると、布の果たした役割とともに、長く辿ってきた歴史がひしひしと伝わるかのようでした。

【第13回 shiseido art egg 展示スケジュール】
今村文展: 2019年7月5日(金)~7月28日(日)
小林清乃展:2019年8月2日(金)~8月25日(日)
遠藤薫展: 2019年8月30日(金)~9月22日(日)

なお7月より行われた第13回「shiseido art egg」は、今回の遠藤薫の個展をもって終了します。会期後、専門家諸氏の選定を得て、上記3名の作家より大賞であるshiseido art egg賞が決定されます。(10月頃にギャラリーの公式サイトで発表予定。)


9月22日まで開催されています。*掲載写真は全て「第13回 shiseido art egg 遠藤薫展」会場風景、及び展示作品。

「第13回 shiseido art egg 遠藤薫展」 資生堂ギャラリー@ShiseidoGallery
会期:2019年8月30日(金)~9月22日(日)
休廊:月曜日。*祝日が月曜にあたる場合も休館
料金:無料。
時間:11:00~19:00(平日)、11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
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「バスキアを見たか。」 Pen(2019年10月1日号)

雑誌「Pen」2019年10月1日号、「ニューヨークを揺さぶった天才画家 バスキアを見たか。」を読んでみました。



「ニューヨークを揺さぶった天才画家 バスキアを見たか。」Pen(ペン)2019年10月1日号
https://www.pen-online.jp/magazine/pen/482-basquiat/

1960年にニューヨークに生まれ、ウォーホルらと友人関係を築きながら、若くしてアート界を席巻したジャン=ミシェル・バスキア(1960~1988)。27歳にして薬物の過剰摂取により没するも、約10年間あまりに1000点以上もの絵画を残し、近年も欧米を中心に回顧展が行われるなど、人気が衰えることはありません。

また日本では2017年、頭蓋骨のような頭部を激しい筆致で描いた「Untitled」が、約123億円で落札されたことも話題となりました。とは言え、国内でバスキアは過去、数回展示が行われたに過ぎず、必ずしも現在、作品を見る機会が多いとは言えません。

さらに何かと知名度の高まる中、意外にもバスキアについて書かれた日本語の文献や資料が殆どありませんでした。実際にも、バスキアに関した日本語の書籍の多くは、古書でしか入手出来ないそうです。

リリースの「いま読める唯一のバスキア大特集」もあながち誇張ではありません。雑誌「Pen」最新号にてバスキアが大きくクローズアップされました。



【バスキア特集の見どころ】

・27歳で世を去った、彗星のごとき天才の生涯。
 アート界に彗星のごとく現れ、27歳という若さで亡くなったバスキアの生涯をたどる。

・出発点は、ストリートに描いたグラフィティ
 1970年代後半のニューヨーク。10代だったバスキアは、友達とふたりで「SAMO©」という署名を添えた言葉を、廃墟の壁にスプレーペイントしていった。

​・初期に才能を認めていた、ギャラリストの証言。
 バスキアの才能に早くから着目していたひとり、ギャラリスト・美術評論家のジェフリー・ダイチが、バスキアのアートが世界で人々を惹きつけている理由を語る。

・ジャズにインスパイアされて、誕生した傑作の数々。
 チャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピーなど、黒人のジャズ・ミュージシャンをモチーフとした作品について。

・差別への怒りが、黒人アスリートを描く原動力。
 野球選手ハンク・アーロン、ボクサー カシアス・クレイ(モハメド・アリ)やジョー・ルイス、陸上選手ジェシー・オーエンスなどを描いた作品について。

・レオナルド・ダ・ヴィンチの手稿が、心を捉えた。
 多くのアートを積極的に学んだバスキア。特にルネサンスの万能の人、レオナルドの手稿にある絵や言葉を作品に取り込んでいった。

・日本との意外な関係を知る、大展覧会が開催。
 待望の日本初の大型展『バスキア展 メイド・イン・ジャパン』の見どころを、キュレーターのディーター・ブッフハートに聞いた。



まず冒頭ではバスキアの生涯を、作品の図版や年譜などで辿りつつ、ウォーホルやデヴィット・ボウイなどの様々なアーティストとの関係を紐解き、バスキアが如何にして制作活動を行ったのかについて詳細に解説していました。多方面に渡るバスキアの交流の軌跡などが一覧出来るのではないでしょうか。

さらに黒人のアスリートモチーフとした作品を取り上げ、当時のアメリカが抱えた人種問題などの社会状況がバスキアに与えた影響についても浮き彫りにしていました。それこそ「差別への怒り」とありますが、かの時代の社会への強い批判精神を持ち得ていたからこそ、バスキアは次々とエネルギッシュな作品を生み出していったのかもしれません。



一連の特集の中で特に興味深く感じたのは、バスキアがレオナルド・ダ・ヴィンチについて深い関心を寄せていたことでした。しかもいわゆる絵画ではなく、レオナルドが膨大に残した手稿の中の人体の図を自作に取り込んでいて、バスキアが幼少期に見て影響を受けたとされる解剖学書と深く関係しているようでした。


ジャズとの関わりも大変に重要で、バスキアが多くのジャズミュージシャンからインスピレーションを受けて制作した作品も多く紹介されていました。バスキアの作品からはどこか音楽的な即興性も感じられますが、その源泉はリズミカルなジャズにあるのかもしれません。

さて最後にバスキアの展覧会についての情報です。9月21日(土)より、六本木の森アーツセンターギャラリーにて「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」が開催されます。



「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」@fujitvart) 森アーツセンターギャラリー 
期間:2019年9月21日(土)~11月17日(日)
 *9月24日のみ休館
時間:10:00~20:00(9月25日、26日、10月21日は17時まで。)
 *入館は閉館の30分前まで
場所:六本木ヒルズ森タワー52階(港区六本木6-10-1
料金:一般2100(1900)円、大学・高校生1600(1400)円、中学・小学生1100(900)円
 *( )内は15名以上の団体料金。

今回の「バスキア展」では、度々、バスキアも来日しては個展やグループ展を開いた日本との関係にも着目し、約130点にも及ぶプライベートコレクションが公開されます。いわゆる国際巡回展ではなく、日本のオリジナルな展覧会でもあります。



そして誌面のバスキア特集でも、「バスキア展」のキュレーターのインタビューや、一部の出展作品も掲載されていました。まさに来るべき「バスキア展」の前に、一通りアーティストについて知る良い機会とも言えるのではないでしょうか。私もこの特集を踏まえた上で、「バスキア展」を見に行きたいと思います。

なお紙版に合わせ、デジタル版も刊行されましたが、今号に限っては2000ダウンロード限定のみの発売になります。ひょっとすると途中で販売終了となるかもしれません。

「Pen(ペン) /ニューヨークを揺さぶった天才画家 バスキアを見たか。」

雑誌「Pen」No.482、特集「ニューヨークを揺さぶった天才画家 バスキアを見たか。」は、9月17日に発売されました。

「Pen(ペン) 2019年10/1号 [ニューヨークを揺さぶった天才画家 バスキアを見たか。]」(@Pen_magazine
出版社:CCCメディアハウス
発売日:2019/9/17
価格:700円(税込)
内容:ジャン=ミシェル・バスキアについては、インパクトのある頭部や王冠の絵、あるいはドキュメンタリーや映画を通して知っているという人も多いだろう。だが作品をじっくり見たことはあるだろうか?過去、日本での展覧会は数回きりだ。ここ数年、欧米では画期的な回顧展が開かれバスキア再発見の機運が高まっている。なぜならシンプルで直接的に見える作品の背後にはさまざまな意味があり、黒人のアイデンティティをモチーフとした重要な作品であることが示されたからだ。今年、待望の大規模展が日本で開かれる。バスキアを見る―いまこそ、その時だ。
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「加藤泉 – LIKE A ROLLING SNOWBALL」 原美術館

原美術館
「加藤泉 – LIKE A ROLLING SNOWBALL」
2019/8/10~2020/1/13



原美術館で開催中の「加藤泉 – LIKE A ROLLING SNOWBALL」のプレスプレビューに参加してきました。

1969年に生まれた現代美術家の加藤泉は、2000年頃から木彫による人物像を手がけ、石やソフトビニールなどの多様な素材を用いた立体作品を制作してきました。

その加藤の新作で構成されたのが「LIKE A ROLLING SNOWBALL」と題した個展で、立体を中心にリトグラフなど約70点が出展されていました。



いわゆる彫刻で良く知られた加藤ですが、全てが木彫りというわけではありません。冒頭、ギャラリー1にて目の前に広がるのが、布や革、また刺繍などを用いた「無題」なる作品で、宙から顔、胴、そして腰から下の足へと、3つの面に分けられた人物の姿が描かれていました。



また足先にはチェーンで石が繋がれていて、リトグラフによって顔も写されていました。加藤は、一連の石の顔のリトグラフを6点制作していて、その版画も廊下にあわせて展示されていました。



最も広いスペースであるギャラリー2に展開したのが、3体で1組からなる「無題」で、大小に異なった人物が革の手を横に広げつつ、チェーンで互いに手を取り合うように繋がっていました。中央の緑の人物のみがやや小さく、左右の黄色と赤の像は等しく大きいため、ちょうど子どもを挟んだ両親、つまり家族を象っているのかもしれません。



そして奥には、青や黄色などの円を体につけた人物が二枚のキャンバスに描かれていて、口をすぼめては、両手を上げて、何かに驚いているような仕草を見せていました。なお加藤は彫刻の制作に際し、素材や作品ジョイント、つまり連結させることをよく行いますが、キャンバスを分けて描くのも、そうした彫刻のアプローチに触発されてのことだそうです。



屋外にも注目です。窓から目を庭に向けると、樹木の狭間や石の上に彫像が置かれていることが見て取れました。遠目では質感がやや分かりにくいかもしれませんが、いずれも石に着彩を施した作品で、石はラミュージアムアークより持ち込んだものでした。まるで隠れん坊をしている子どものようで、可愛らしくも映るのではないでしょうか。



この石に対しての加藤の関心が現れていたのが、2階のギャラリー3に展開したインスタレーションでした。中央に木とソフトビニールによる人物、ないし顔の像があり、その周囲の床に顔の版画を貼った石の作品が多く並んでいました。顔には綿布によって手足もついていて、まるで手足をばたつかせる赤ん坊のようにも見えました。



美術館の最奥部に位置するギャラリー5では、いずれも「無題」の計8体の彫像が、ガラスケースの中に収められていました。一連の作品には、石、ソフトビニール、革、木、時にステンレスなどがミックスして用いられていて、石とアクリルのみの作品を除けば、単一の素材で出来ているものはありませんでした。



また全てがケースの中で展示されているからか、どこか博物館へ迷い込んだような錯覚にも陥りました。実際にも加藤は博物館を好んでいて、それをイメージしながらギャラリー5の展示を組み立てたそうです。



彫像の様態も一様ではありません。手をだらんと垂らしつつ、ぼんやりと前を見据えたり、膝を曲げては座っていたり、中には気持ちよさそうに横になりながら眠りこけているような者もいました。



子どもの頃、ソフトビニールの人形で遊んだ経験もある加藤は、ソフトビニールメーカーの知人に誘われては、作品の素材としてソフトビニールを取り込むようになったそうです。まず原型を自ら制作し、工場でプロダクトが出来た後、さらに手を加えてオリジナルの作品に仕上げています。そもそも加藤は、石や木しかり、素材の選択に関しては厳密なリサーチをせず、直感的に取り入れてきました。過去にはプラスチックなどのボツにした素材もあったそうです。

元々、絵画を制作していた加藤は、当初から人を描こうと思っていたわけではなく、良い絵を描こうとしていると、結果的に人の絵に行き着いたとしています。そして誰でも描けるような絵ではなく、自分で出来ることは何かを制作に際して常に問い直してきました。また人に特に未練があるわけではなく、もし他で良いと思える形が出来たら、そちらへ行っても良いとさえ考えてもいるそうです。ただ人が一番難しいとも語っています。



いわゆる「原始美術を思わせるミステリアスな人物」とも称される加藤の作品は、確かに土偶、ないしは古代の遺跡に眠る彫像を連想させる面もありますが、特にソフトビニールによる作品などはSFに登場する異星人のようで、近未来的なイメージにも見えなくはありません。全て作品のタイトルを「無題」とするのにも、一切の先入観を拭い去るゆえのものなのでしょうか。



スペースを鑑みれば作品数も不足なく、もはや人物像が原美術館を乗っ取るかのように展開していました。あたかも過去や未来へ自在にタイムスリップしては、人間とも宇宙人とも捉えがたい生き物を象った、加藤の今の飽くなき創造力に強く感心させられました。

本エントリの写真は報道内覧会時に撮影しました。一般会期中においては、1階のギャラリー1と2階のギャラリー5、及び常設展示を除いて撮影が可能です。(フラッシュ不可)



なお本展覧会は、ここ東京・品川の原美術館と、群馬県渋川市にあるハラミュージアムアークの2会場で開催されています。(共に会期は2020年1月13日まで)

新作中心の原美術館とは異なり、ハラミュージアムアークでは初期作から近作まで約140点を並べ、作家の活動を網羅的に紹介しているそうです。全く異なる双方の空間で作品を見ることで、初めて加藤の過去と現在の制作の全貌が明らかになるのかもしれません。


これほどの質量で加藤の作品を見たのは初めてでした。ロングランの展覧会です。2020年1月13日まで開催されています。おすすめします。

「加藤泉 – LIKE A ROLLING SNOWBALL」 原美術館@haramuseum
会期:2019年8月10日(土)~2020年1月13日(月・祝)
休館:月曜日。但し2019年8⽉12⽇、9⽉16⽇、23⽇、10⽉14⽇、11⽉4⽇、2020年1⽉13⽇を除く。2019年8⽉13⽇、9⽉17⽇、24⽇、10⽉15⽇、11⽉5⽇、及び年末年始(2019年12月26日~2020年1月3日)は休館。
時間:11:00~17:00。
 *水曜は20時まで。入館は閉館の30分前まで
料金: 一般1100円、大高生700円、小中生500円
 *原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は小中高生の入館無料。
 *20名以上の団体は1人100円引。
住所:品川区北品川4-7-25
交通:JR線品川駅高輪口より徒歩15分。都営バス反96系統御殿山下車徒歩3分。

注)写真は全て「加藤泉 – LIKE A ROLLING SNOWBALL」作品、及び会場風景。作品タイトルは全て「無題」。報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影しました。
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台風15号(ファクサイ)に伴う千葉県内の美術館の休館情報

9月9日の午前5時前、千葉市付近に上陸した台風15号は、首都圏一円に暴風雨をもたらしました。特に進路の右側に当たった千葉県内の被害が大きく、今も県中南部を中心に複数の地域で停電や断水が続いています。皆さんのお住まいの地域は大丈夫だったでしょうか。被害を受けた方々には心よりお見舞い申し上げます。

*情報を更新しました(9月12日)。詳細はページ下をご覧ください。

台風第15号による被害・対応状況について(9月10日(火)13時時点):経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2019/09/20190910007/20190910007.html

台風15号について(第6報) :千葉県防災危機管理部
http://www.bousai.pref.chiba.lg.jp/portal/servlet/servlet.FileDownload?file=00P0o000022Er29EAC

台風は県内の美術館にも影響を与えています。9月10日(火)現在の休館情報をまとめてみました。

【臨時休館中】

千葉県立中央博物館(千葉市)、同博物館大利根分館(香取市)→大利根分館は9月11日(水)、本館は9月12日(木)から通常開館
市原湖畔美術館(市原市)→9月13日(金)まで臨時休館
DIC川村記念美術館(佐倉市)→9月13日(金)まで臨時休館
ホキ美術館(千葉市)→9月11日(水)開館


まずは千葉県立中央博物館です。台風による停電のため、本館と生態園、及び香取市にある大利根分館が休館しました。再開の時期は未定です。


現在、「夢みる力ー未来への飛翔」展を開催中の市原湖畔美術館は、台風による館内メンテナンスのため、9月10日(火)に臨時休館しました。


DIC川村記念美術館は、台風の影響により9月10日(火)は臨時休館し、翌日11日(水)も休館します。再開館日は未定で、ホームページで改めてお知らせがあるそうです。


ホキ美術館は美術館内、及び周辺道路の冠水などにより、通常開館日の9月9日(月)が臨時休館となりました。10日(火)は休館日で、明日11日(水)の開館を目指して復旧作業が進められているそうです。

【一部展示制限中】

千葉県立房総のむら(栄町):商家街並みのみの開放。→9月11日(水)より通常開館
国立歴史民俗博物館(佐倉市):倒木等の被害により「くらしの植物苑」を臨時休苑。
成田山書道美術館(成田市):倒木により成田山公園の立ち入り禁止。
千葉市立加曽利貝塚博物館(千葉市):加曽利貝塚縄文遺跡公園への立ち入り禁止。→見学ルート以外の立ち入り禁止


続いて一部の展示が制限されている美術館です。主に台風の暴風による倒木で、屋外の施設に影響が及びました。国立歴史民俗博物館の「くらしの植物苑」の復旧の目処は立っていません。


この他、来年3月から芸術祭を開催予定の「いちはらアート×ミックス2020」は、実行委員会事務局の電話や電子メールが不通となっています。また会場施設では危険物の撤去などが行われているそうです。


なお台風により交通網が寸断され「陸の孤島」と化した成田空港ですが、空港にほど近い航空科学博物館は通常通り開館しています。また「ミュシャと日本、日本とオルリク」が始まった千葉市美術館や、千葉県立美術館なども開館しています。


台風の影響は徐々に縮小していくものと思われますが、各美術館などへお出かけの際は、事前に公式サイトなどで開館状況を確認されることをおすすめします。(神奈川県の横須賀美術館も9月10日現在、停電により休館中です。→9月11日開館しました。

*9月11日:情報更新

第15号による被害・対応状況について(9月11日(水)6時30分時点):経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2019/09/20190911002/20190911002.html

台風15号について(第7報):千葉県防災危機管理部
http://www.bousai.pref.chiba.lg.jp/portal/servlet/servlet.FileDownload?file=00P0o000022FHwQEAW


市原湖畔美術館は9月13日(金)までの臨時休館が決まりました。


DIC川村記念美術館も9月13日(金)まで臨時休館し、14日(土)より開館することが決まりました。また当面は庭園を休園するそうです。


ホキ美術館は、美術館、カフェともに9月11日(水)より営業を再開しました。

*9月12日:情報更新

第15号による被害・対応状況について(9月12日(木曜日)7時00分時点):経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2019/09/20190912007/20190912007.html

台風15号について(第9報):千葉県防災危機管理部
http://www.bousai.pref.chiba.lg.jp/portal/servlet/servlet.FileDownload?file=00P0o000022FoHFEA0


千葉県立中央博物館は、大利根分館が9月11日(水)、本館が9月12日(木)に営業を再開しました。また中央博物館・生態園は、被害の対処のため、しばらく休園するそうです。
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「手塚愛子展 Dear Oblivion―親愛なる忘却へ」 スパイラルガーデン

スパイラルガーデン
「手塚愛子展 Dear Oblivion―親愛なる忘却へ」
2019/9/4~9/18



スパイラルガーデンで開催中の「手塚愛子展 Dear Oblivion―親愛なる忘却へ」を見てきました。

ベルリンを拠点に活動する現代美術家の手塚愛子は、「解体と再構築」(解説より)する手法で織物の作品を制作し、国内外で評価を得てきました。


「華の闇(夜警02)」 2019年

一枚の名画をモチーフにした作品に目を奪われました。それが「華の闇(夜警02)」で、現在、アムステルダムの国立美術館に収蔵されているレンブラントの「夜警」を引用したジャカード織の作品でした。

元になる「夜警」は、1639年、市民隊のバニング・コック隊長と自警団18名が、自らの集団肖像画をレンブラントに依頼したもので、画家は注文通りの18名の自警団を描く代わりに、実に31名もの人物を描きこんでは、肖像画というよりも、ドラマテックな歴史画のような画面を作り上げました。今でこそレンブラント畢竟の傑作として知られるものの、当時、注文した自警団にとっては、必ずしも好意的に受け止められなかったそうです。

一見、夜の景色であるようにも思えますが、後世の洗浄作業などによって、今では昼を描いた作品だと明らかになりました。しかしそれでも元の絵画は暗く、闇から人物が浮かび上がってくるようにも見えなくありません。


「華の闇(夜警02)」(部分) 2019年

それを手塚は自作おいて背景を変化させ、アムステルダム国立美術館の所蔵品を中心としたカラフルなインド更紗に置き換えました。美しい花模様で知られるインド更紗は、オランダ東インド会社の交易によってヨーロッパにもたらされ、早くから室内装飾などで人気を得ていました。手塚の作品は、いわば洋の東西の邂逅、あるいは「夜警」とインド更紗のコラボレーションとも捉え得るのかもしれません。


「京都で織りなおし」 2019年

鮮やかな花々で彩られた「京都で織りなおし」は、明治時代に川島織物(現、川島織物セルコン)によって作られた手織りのテーブルクロスを蘇らせた作品で、かねてより川島織物セルコンと作品を制作してきた手塚が、同社に再制作を持ちかけ、現代の機械織の技術によって再現しました。


「必要性と振る舞い(薩摩ボタンへの考察)」 2019年

一際目立つのが、スパイラルガーデンを特徴付ける螺旋状のスペースに展開した「必要性と振る舞い(薩摩ボタンへの考察)」でした。縦4メートル強、幅9メートルにも迫ろうかとする巨大な作品は宙づりになっていて、ちょうど鳥が翼を広げるかのような形を見せていました。


「必要性と振る舞い(薩摩ボタンへの考察)」(部分) 2019年

ここでは飛鳥時代の天寿国繍帳や水月観音菩薩半跏像の襞、ないし薩摩ボタンのモチーフが層状に積み重ねられていて、十八世紀のヨーロッパボタンと対置させつつ、結び合うように構築させていました。


「必要性と振る舞い(薩摩ボタンへの考察)」(部分) 2019年

なお薩摩ボタンとは、江戸末期から明治にかけて輸出用に生産されたもので、まさに当時の西洋のジャポニスムを意識すべく、日本的な風景や着物姿の女性などが絵付けされていました。そして手塚は薩摩とヨーロッパのボタンを合わせ並べることで、近代の日本と西洋の関係を見据えているのかもしれません。


「親愛なる忘却へ(美子皇后について)」(部分) 2019年

この他、昭憲皇太后の大礼服に着想を得た「親愛なる忘却へ(美子皇后について)」も目を引くのではないでしょうか。昭憲皇太后は初めて洋装を取り入れた皇族で、作品には皇后の読んだ歌も織り込まれていました。


「親愛なる忘却へ(美子皇后について)」(部分) 2019年

スパイラルガーデンとしては実に12年ぶりの「大規模」(リーフレットより)な個展だそうです。私も手塚の作品を一定数まとめて見たのは久しぶりでした。



受付で配布されている無料のリーフレットのテキストが充実していました。お取り忘れなきようにおすすめします。


撮影も可能です。9月18日まで開催されています。

「手塚愛子展 Dear Oblivion—親愛なる忘却へ」 スパイラルガーデン@SPIRAL_jp
会期:2019年9月4日(水)~9月18日(水)
休館:会期中無休
時間:11:00~20:00
料金:無料
住所:港区南青山5-6-23
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅B1出口すぐ。
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メールマガジン「『失われたアートの謎を解く』の謎を解く!」が発行されます

9月7日(土)にちくま新書より発売される『失われたアートの謎を解く』(監修:青い日記帳)。

「失われたアートの謎を解く/監修・青い日記帳/ちくま新書」

レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」やフェルメールの「合奏」などの盗難事件をはじめ、ナチスの美術品犯罪や戦争による破壊、ないし高松塚古墳やラスコーといった文化遺産など、いわゆる「失われたアート」についてまとめた本で、失われた経緯や奪還、再生への努力など、歴史の裏側に潜むドラマや人との関わりなどについて紐解いています。



またちくま新書としては異例と言って良いほどヴィジュアルが多く、テキストを追うだけでなく、図解資料を一覧しながら楽しめるようにも工夫されています。



その『失われたアートの謎を解く』の発売に際し、本の概要や魅力を紹介するメールマガジン、「『失われたアートの謎を解く』の謎を解く!」が発行されます。

登録は至って簡単です。下記の専用サイトにお名前とメールアドレスを記入するだけです。ご登録後、翌日朝7時より毎日計5通、メールマガジンが自動で届けられます。お名前はハンドルネームで構いません。無料(通信料金を除く)で利用いただけます。途中で配信を停止することも可能です。

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https://mail.os7.biz/add/ITqX


計5回のメールマガジンでは、本の内容だけでなく、執筆陣や編集者へのインタビューの他、監修を務めた青い日記帳のTak(@taktwi)さんのコメントなども掲載されます。また第1回目と5回目には、無料で紙面を試し読み出来るメールマガジン読者限定の「特典PDF」もプレゼントされます。

▼「『失われたアートの謎を解く』の謎を解く!」メールマガジン注意事項

1. メールアドレスをご登録いただいた方にEメールにて配信いたします。
2. 本サービスは無料(通信料金は除く)でご利用いただけます。
3. 本サービスの利用に当たっては、メールアドレスの登録が必要になります。
4. 本サービスは「『失われたアートの謎を解く』編集チーム」が登録受付及びメール配信におけるサービス利用契約を締結した株式会社オレンジスピリッツのオレンジメールサービスを使用しての提供になります。

メールマガジンは「『失われたアートの謎を解く』編集チーム」が受付、発行しますが、配信に際しては筑摩書房の許可をいただいています。なお今日9月6日には、筑摩書房より『失われたアートの謎を解く』の特設サイトもオープンしました。そちらでは「ムンク《叫び》は二度盗まれる」を試し読みすることも出来ます。



▼『失われたアートの謎を解く』特設サイト
https://www.chikumashobo.co.jp/special/mysteryof_lostart


最後にイベントの情報です。現在、「青い日記帳×池上英洋!失われたアートの謎を解く」のトークイベントの参加者を募集中です。



<丸善雄松堂 知と学びのコミュニティ>
「青い日記帳×池上英洋!失われたアートの謎を解く」
日時:2019年9月14日 (土) 19:00〜20:40 *受付開始:18:30
会場:DNPプラザ2階(新宿区市谷田町1丁目14
参加費:500円
申込サイト→https://peatix.com/event/1311804

これは青い日記帳のTakさんと、『失われたアートの謎を解く』に寄稿された東京造形大学教授の池上英洋先生が、紙面に取り上げられた美術品などについて話すもので、来年に池上先生の企画されたレオナルド・ダ・ヴィンチに関する展覧会についても触れていただきます。



会場は市ヶ谷駅にほど近いDNPプラザです。先着順で定員の100名に達し次第、受付は終了となります。



なお『失われたアートの謎を解く』では、私も執筆担当の一員として、原稿の一部の作成に関わりました。よってメールマガジンにもコメントを寄せています。



私の拙い原稿はともかくも、プロの編集者の方が何度もチェック、及び加筆と修正して下さったため、読み応えのある内容になったと思います。まずはメールマガジンにご登録下さり、『失われたアートの謎を解く』を手にとって頂ければ嬉しいです。


それでは多くの方の「『失われたアートの謎を解く』の謎を解く!」メールマガジンへのご登録をお待ちしております。

▼「『失われたアートの謎を解く』の謎を解く!」メールマガジン登録(無料)
https://mail.os7.biz/add/ITqX


「失われたアートの謎を解く」(ちくま新書) 監修:青い日記帳 
内容:美術史の裏に隠された、数多くの失われたアート。その歴史は、人間の欲望の歴史でもあるーアートが失われた詳細な経緯と、奪還や再生の努力、歴史上の人物とアートの関わりまで、美術の歴史の裏側を徹底ビジュアル解剖!  《モナ・リザ》盗難/修復不可能にされたムンク《叫び》/ナチスの美術品犯罪/フェルメール《合奏》を含む被害総額5億ドルの盗難事件…
新書:全224ページ
出版社:筑摩書房
価格:1037円(税込)
発売日:2019年9月7日
特設サイト:https://www.chikumashobo.co.jp/special/mysteryof_lostart
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「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」 水戸芸術館

水戸芸術館 現代美術ギャラリー
「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」
2019/7/13~10/6



水戸芸術館で開催中の「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」を見てきました。

1955年に生まれた現代美術家の大竹伸朗は、絵画、印刷、さらには音や写真を取り入れた立体作品などを手がけ、実に幅広く旺盛に制作を行ってきました。

その大竹は、1970年代から現在に至る約40年もの間、「ビル景」なる作品を描き続けてきました。それでは一体、どのような作品が展開していたのでしょうか。


「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」会場風景

会場内に足を踏み入れて驚きました。目の前に広がるのが、一部に建物の影らしき存在こそ確認出来るものの、多くは大胆な筆触によって表された、おおよそビルを捉えたとは言い難い絵画で、油彩のみならず、インクやグワッシュ、木炭と、さらに厚紙などを取り入れたコラージュとも呼べうる作品でした。


大竹伸朗「Bldg.(タンジールにて)」 1996〜2002 個人蔵

実際にも大竹は、あくまでも世界の都市のビルや風景をそのままに描いているわけではなく、自身に記憶した都市の「湿度や熱、騒音、匂い」などを「ビルという形を伴って」描き出していました。言い換えれば、都市に住む人間のエネルギー、あるいは経済活動や気候などの現象までを絵画に表現しているのかもしれません。*「」内は解説より 


大竹伸朗「バグレイヤー/東京 I」 2000〜2001 個人蔵

とはいえ、タイトルに目を向けると、東京やジェノヴァ、ニューヨーク、ナイロビなど、特定の都市の名も記されていて、あくまでも想像に過ぎないせよ、大竹が各都市をモチーフにしていることが見て取れました。

さすがに40年間に渡って制作し続けているだけあり、「ビル景」の作風を一様に捉えることは出来ません。そして中にはクレー、またキーファーらのドイツの新表現主義など、抽象を思わせる作品も少なくありませんでした。確かに全ては大竹のビルの記憶から引き出されているものの、もはや1人の画家の作品とは思えないほどに多様とも言えるかもしれません。


大竹伸朗「東京ープエルト・リコ」 1986 公益財団法人 福武財団

大竹がビルをモチーフとして初めて意識したのは、1979年から80年台前半に度々訪れた香港での出来事でした。そこで何気なく見ていたビルが「自分自身と強烈に同期」と感じ、「すべてを絵の中に閉じ込めたい」と考えたそうです。*「」内は解説より


大竹伸朗「街、香港」 1979.10.4 他

一連の小さなスケッチにはもはや書き殴りのような線が広がっていて、大竹が各都市で体感した感興なり記憶が即興的に示されているかのようでした。一方で分厚い画肌を伴う油彩などは、色や絵具などの素材の向こうに都市の心象的なイメージが見え隠れしてました。


左:大竹伸朗「Bldg.青」 2003

ともかく大竹の筆の息遣いがダイレクトに感じられる作品ばかりで、しばらく目にしていると、筆へ憑依した都市の熱気を浴びているような錯覚に囚われるほどでした。また一様ではない作品は、時代によって変化する都市の多面的な有り様を示しているようで、まるで生き物のようにも思えました。


左:大竹伸朗「ビルと飛行機、N.Y.1」 2001.11.12〜11.16
右:大竹伸朗「ビルと飛行機、N.Y.2」 2001.12.25

何物か判然とし難い作品も少なくない中、明らかに特定の都市における事象なりを描いた作品もありました。例えば「ビルと飛行機、N.Y.1」などで、2本のビルらしき影の上を進む飛行機を暗がりの画面に捉えていました。それは紛れもなく9.11、すなわちアメリカ同時多発テロ事件であり、ワールドトレードセンターへ衝突する飛行機を彷彿させてなりませんでした。


左:大竹伸朗「ビル/赤」 2005.3.7〜2008.2.7
右:大竹伸朗「赤いビル」 2003〜2006.10.6

「ビル/赤」にも目を奪われました。血のように赤く塗られた画面には、白い四角にてビルと思しきシルエットが浮かび上がっていて、まるで燃え上がるような姿を見せていました。


中央:大竹伸朗「白壁のビル1」 2017.9.26 他

一連のビルのスケールも当然ながら一定ではなく、遠景から捉えているようであり、また街中に入り込んで、店頭からビルの中を覗き込んでいるようなイメージの作品もありました。大竹はそれこそ変幻自在な視点で都市風景を眺めているのかもしれません。


「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」会場風景

作品は平面と立体を問わず、水戸芸術館のギャラリーの空間を埋め尽くすように並んでいて、約600点に及んでいました。同館としては過去最大の出展点数でもあるそうです。


「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」会場風景

率直なところ、あまりにもの数ゆえに途方に暮れてしまった面もありましたが、時に激しく熱気を帯びた作品に圧倒されるものを感じました。


作品番号298「遠景の赤いビル」以外は全作品の撮影も可能でした。ただし生々しく、絵具の爛れたような独特の画肌の質感は、とても写真では伝わりそうもありません。


「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」会場風景

何か強く惹きつける力があったのかもしれません。気がつけば会場内を2巡、3巡していました。


「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」会場入口

10月6日まで開催されています。おすすめします。

「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」 水戸芸術館 現代美術ギャラリー@MITOGEI_Gallery
会期:2019年7月13日(土)~10月6日(日)
休館:月曜日。但し7月15日、8月12日、9月16日、9月23日(月・祝/振)は開館し、7月16日、8月13日、9月17日、9月24日(火)は休館。
時間:9:30~18:00 
 *入館は17:30まで。
料金:一般900円、団体(20名以上)700円。高校生以下、70歳以上は無料。
住所:水戸市五軒町1-6-8
交通:JR線水戸駅北口バスターミナル4~7番のりばから「泉町1丁目」下車。徒歩2分。
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2019年9月に見たい展覧会【桃源郷/バスキア/竹工芸名品展】

暑かった8月が過ぎたものの、残暑も厳しい日が続きます。いかがお過ごしでしょうか。

いよいよ秋の展覧会シーズンも開幕です。気になる展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「マイセン動物園展」 パナソニック汐留美術館(~9/23)
・「日本のよろい」 東京国立博物館(~9/23)
・「1933年の室内装飾 朝香宮邸をめぐる建築素材と人びと」 東京都庭園美術館(~9/23)
・「嶋田忠 野生の瞬間 華麗なる鳥の世界」 東京都写真美術館(~9/23)
・「みんなのレオ・レオーニ展」 東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館(~9/29)
・「奥の細道330年 芭蕉」 出光美術館(~9/29)
・「生誕250年記念 歌川豊国―写楽を超えた男」 太田記念美術館(9/3~9/29)
・「しなやかな闘い ポーランド女性作家と映像 1970年代から現在へ」 東京都写真美術館(~10/14)
・「引込線/放射線」第19北斗ビル(9/8~10/14)
・「没後90年記念 岸田劉生展」 東京ステーションギャラリー(~10/20)
・「ミュシャと日本、日本とオルリク」 千葉市美術館(9/7~10/20)
・「慰霊のエンジニアリング」 TODA BUILDING(9/14〜10/20)
・「大観・春草・玉堂・龍子―日本画のパイオニア」 山種美術館(~10/27)
・「新創開館10周年記念 美しきいのち 日本・東洋の花鳥表現」 根津美術館(9/7~11/4)
・「北斎没後170年記念 茂木本家美術館の北斎名品展」 すみだ北斎美術館(9/10~11/4)
・「士 サムライ―天下太平を支えた人びと」 江戸東京博物館(9/14~11/4)
・「DECODE/出来事と記録―ポスト工業化社会の美術」 埼玉県立近代美術館(9/14~11/4)
・「黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部―美濃の茶陶」 サントリー美術館(9/4~11/10)
・「チェコ・デザイン 100年の旅」 世田谷美術館(9/14~11/10)
・「話しているのは誰? 現代美術に潜む文学」 国立新美術館(~11/11)
・「桃源郷展」 大倉集古館(9/12~11/17)
・「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」 森アーツセンターギャラリー(9/21~11/17)
・「不思議の国のアリス展」 そごう美術館(9/21~11/17)
・「おかえり 『美しき明治』」 府中市美術館(9/14~12/1)
・「茶の湯の名碗 高麗茶碗」 三井記念美術館(9/14~12/1)
・「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション―メトロポリタン美術館所蔵」 東京国立近代美術館工芸館(9/13~12/8)
・「描く、そして現れる―画家が彫刻を作るとき」 DIC川村記念美術館(9/14~12/8)
・「コートールド美術館展 魅惑の印象派」 東京都美術館(9/10~12/15)
・「オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」 横浜美術館(9/21~2020/1/13)

ギャラリー

・「小早川秋聲展」 加島美術(~9/16)
・「竹中大工道具館企画展 木工藝 清雅を標に―人間国宝 須田賢司の仕事」 ギャラリーA4(~9/20)
・「第13回 shiseido art egg 遠藤薫展」 資生堂ギャラリー(~9/22)
・「青柳龍太|sign」 ギャラリー小柳(~9/27)
・「二つの魂の神話 ヴァサンタ ヨガナンタン写真展」 シャネル・ネクサス・ホール(9/3~9/29)
・「珠洲焼 – 中世日本海・黒のやきものグラフィック」 渋谷ヒカリエ8F(9/18~9/29)
・「栗林隆展」 アートフロントギャラリー(9/6~9月末)
・「有山達也展 音のかたち」 クリエイションギャラリーG8(~10/05)
・「シュテファン・バルケンホール」 小山登美夫ギャラリー(9/7~10/5)
・「利部志穂 マントルプルーム ― イザナミ、ペレの怒り。」 KAYOKOYUKI(9/7~10/6)
・「Sculptural Type コントラプンクト」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(~10/12)
・「法貴信也展」 タカ・イシイギャラリー東京(9/14~10/12)
・「戸谷成雄 視線体」 シュウゴアーツ(9/21~10/19)
・「αMプロジェクト2019 東京計画2019 vol.3 vol.4 ミルク倉庫+ココナッツ」 ギャラリーαM(9/28~11/9)
・「椅子の神様 宮本茂紀の仕事」 LIXILギャラリー(9/5~11/23)
・「アーキテクテン・デ・ヴィルダー・ヴィンク・タユー展」 TOTOギャラリー・間(9/13~11/24)

まずはリニューアルオープンの情報です。2014年4月より増改築工事のため休館していた大倉集古館が、約5年間に及んだ工事を終え、この9月12日に再開館します。



「桃源郷展」@大倉集古館(9/12~11/17)

それを記念して行われるのが「桃源郷展」で、新収蔵品の呉春の「武陵桃源図屏風」がお披露目される他、蕪村や周辺の画家が描いた桃源郷の世界を紹介します。また国宝「普賢菩薩騎象像」や横山大観の「夜桜」など、同館のコレクションもあわせて公開されます。


増改築に際しては建物の外観に手をつけず、新たに地下階を増築して収蔵庫機能などを移転させたそうです。そしてリニューアルを祝うに相応しく、桃は古くからお目出度い存在として尊ばれたモチーフでもあります。以前とは異なった環境で、お馴染みの名品を楽しめるのかもしれません。

続いて現代美術です。1960年、ニューヨークに生まれたアーティスト、ジャン=ミシェル・バスキアの日本初の大規模な回顧展が、森アーツセンターギャラリーで開催されます。



「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」@森アーツセンターギャラリー(9/21~11/17)

1980年代のアメリカのアートシーンで活動し、1988年に27歳で薬物の過剰摂取で死去したバスキアは、約10年間あまりの間に2000点を超すドローイングや1000点以上の絵画を描き、同時代のみならず、今日へ至るアートやファッションなどにも大きな影響を与えました。

そしてバスキアは日本の世相を反映したモチーフなどの作品も制作し、度々来日しては複数回の個展やグループ展を開催しました。今回のバスキア展では、絵画やドローイング、それに立体など約130点が公開される上、日本とも関わりのある作品も出展されます。


近年、何かと日本でも知名度の高いバスキアですが、実際に作品をまとめて見られる機会は殆どありませんでした。現在、森美術館での塩田千春展も人気を博していますが、同様にバスキア展も話題を集めるのではないでしょうか。9月末より10月にかけての六本木ヒルズは、2つの大規模な現代美術展で大いに賑わいそうです。

最後は竹工芸です。東京国立近代美術館工芸館にて「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション」が行われます。



「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション―メトロポリタン美術館所蔵」@東京国立近代美術館工芸館(9/13~12/8)

アメリカの美術コレクター、アビー夫妻は、日本の近現代の竹工芸品を蒐集し、有数のコレクションを築き上げました。そのコレクションが里帰りするのが今回の展覧会で、約75点の竹工芸とともに、工芸館所蔵の近代工芸の作品があわせて展示されます。


なお本展は、2017年から翌年にメトロポリタン美術館でも開催され、47万名以上を動員するなどして注目を浴びました。いわゆる国際巡回展(国内では先行して大分県立美術館でも開催。)でもありますが、このところ関心も高まっている竹工芸を愛でる良い機会となりそうです。



夏休み中は特に遠出も出来ませんでしたが、近場ながらも水戸芸術館の「大竹伸朗 ビル景」、そしてポーラ美術館の「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」、それに小田原にある杉本博司の手がけた「江の浦測候所」などを鑑賞、ないし見学してきました。追ってブログでもまとめたいと思います。

それでは今月もどうぞ宜しくお願いします。
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