新鹿山荘控帳

山荘管理人が季節の移ろいを、書きとめました
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「濱嘉之」5冊読みました

2012-06-14 18:03:09 | 読書
引っ越し準備からそのあと片付けと、しばらく本を読んでおらず週刊誌で紛らわせる毎日でした。
以前から関心のあった、元警視庁警視の小説家の本を読んでみることにしました。現在文庫本になっているのは講談社文庫3冊と、文春文庫2冊です。このほか別に1冊あるのですが、どこかの段ボールに入っていて不明です。

作家濱嘉之は中央大学法学部卒業、警視庁入庁、公安部などを主に勤務、警視庁警視で辞職、現在危機管理コンサルタント会社代表だそうです。

濱嘉之の警察小説の大きな特徴は、舞台が公安警察であることです。従来の警察小説は「相棒」などで分かる通り刑事警察です。事件が起きてからどのようにして捜査をし、犯人を逮捕するかがメインです。
公安警察がどんな警察なのか、ぼんやりとしたことしか知らなかったのですが、今回この一連の小説を読んで公安警察の現実の活動や操作などよく赤りました。公安警察は事件が起きる前に、事件が明るみになる前の犯人や関係者を逮捕することを目的としているのがよくわかりました。
また捜査の対象となる人間や団体が、いわゆる一般人と異なるジャンルの人間が多く当然彼らに対抗してかなりきわどい捜査もやっていると書かれています。つまりその辺の粗暴犯ではなく、結社、団体、政治家、大企業、外国等それなりの組織力を持った相手と対抗していかなければならないのです。

元警視の濱嘉之だからでしょうか、警察組織の中でのエリート、キャリアーたちとノンキャリアの格差やまた本部と所轄警察の内実も細かく描かれています。

警視庁警視の黒田が主人公の3冊は、公安部に新設された情報部門の情報官として政・官・財そして世界的な組織までも絡む一大犯罪に挑戦していきます。特に現実に起きた事件が背景にあるのではないかと思わせる大きな事件はそれぞれ登場します。
多分あの政治家ではないかとか、あの大企業ではないかとか、あの国の話ではないかとか、あの団体ではないかとか、あの組ではないかとか、あの有名な官僚ではないかとか大体想像が付きますが、いずれもフィクションとされています。

靴底をすり減らし扇子であおぎながら捜査する刑事の小説やドラマが多いなか、優秀でエリート捜査官が手際よく操作をしていきます。
あの事件のあの港でこんな操作をしていたのかとか、あの政治家はあの時こんなことをしていたのかとうなずいてしまいます。
具体的な事件の紹介はあまりにも生々しいので、是非一読してください。

舞台の背景に警視庁がありますが、全国都道府県警察本部に対する警視庁の捜査能力の優位性や人材、機材の格段の違いにも驚きます。
このひと月いろいろな事件がありましたが、渋谷の事件で2日で犯人にたどり着いた防犯カメラの画像の解析の能力に関し、警視庁の画像解析システムは世界的レベルと紹介されていますが、その辺もこの小説に詳しく登場しています。
また、スパイ容疑の事件がありましたが、これも詳細に書かれています。
ワイドショーを見ていると、「あ、これもあの事か!」を思うことがたくさんあります。

文春文庫の2冊は、公安警察だけででなく、組織犯罪対策部、刑事部捜査1課、刑事部捜査2課のそれぞれ席を置く、警察学校で動機だった若い警部4人の活躍が書かれています。初めて知ったのですが、警部はキャリアでないことです。つまり駒なのです。この4人を動かして次の時代の捜査を構築していこうとする、エリートキャリアがいる事も書かれています。

大変面白いので、一読をお勧めします。

不明の所轄の刑事の小説も、見つけ次第紹介します。と思ったら、3月に紹介してました。ホ。

コメント
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