玉村豊男 著 東京書籍 刊
玉村氏をはじめて知ったのは、TBSの『ブロードキャスター』だっただろうか。この番組はレギュラーあるいはゲストの魅力に寄るところが大きかった。
昨今、お笑いではなくジャリではなくタレントでもなく、自分の言葉で世間の変化や事件の背景、善悪を語れる人を探すのは難しい。その意味で氏のコメントは印象深かった。
ある時フラリ入った感じのよい小さな美術館が彼のミュージアム。そこで氏の作品に目を見張る。氏への関心は、本書によって、氏のDNAや絵描きとしての履歴、動機、画家と画商など充分に満たせることになった。特に、日常の生活における創作の模様や技法の試行錯誤などが、氏自身も書いているように、多くの人に役立つ 書き方になっていて有難い。
それにしても、肝臓を患ったために運動量の少ない、高校生以来の絵を手に染め、物書きの余技としての絵描きが、本業以上に実を結び、ガレリア・プロバとの契約に繋がり、売れる作家となる。何と幸運な人生であることか。人さまざま、世さまざまである。