処遊楽

人生は泣き笑い。山あり谷あり海もある。愛して憎んで会って別れて我が人生。
力一杯生きよう。
衆生所遊楽。

ヒトラー ~最期の12日間~

2008-08-31 14:37:24 | 映画

原題:DER UNTERGANG   英題:DOWNFALL

      

      

 

ブルーノ・ガンツ演じる晩年の狂気のヒトラー。尋常ではない。ヒトラー以上にヒトラー的。

ブルーノ・ガンツの初お目見えは88年のヴィム・ベンダース監督『ベルリン・天使の詩』だったか。男の天使なんて・・と思いつつも、その外見に似合わない優しさに、まあ居てもいいかと納得したことだった。

秘書の目を通して見た第三帝国ナチスの断末魔。権力・冷酷・裏切り・猜疑心・熱狂・懊悩・崩壊・葛藤ありとあらゆる厄災にまみれて自殺に追い込まれてゆくヒトラー。リーダーと側近と組織の崩壊の物語である。

あの『Uボート』と同じに、息苦しさと絶望に胸塞がれた2時間半。一気に観た。そして疲れた。

このような映画が作られるところにゲルマン民族の強さがある。この夏、「靖国 YASUKUNI」上映で揺れたわが国では、未だに誰一人として戦争責任を負っていない。

NHK BShighvision08年8月29日0:00

 

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この自由な世界で

2008-08-25 21:35:53 | 映画

原題:IT'A FREE WORLD

ベネチア映画祭最優秀脚本賞受賞

       

イギリス、というよりヨーロッパの労働事情を背景にした社会派のドラマ。貧困から抜け出そうともがく不法移民の労働者、それを搾取する連中もまた、一瞬に搾取される側に転落する自由市場。生活のために外国人労働者の不法斡旋に手を染めていくシングル・マザーがヒロイン。07年英国インディペンド映画賞主演女優賞及び新人賞受賞。

新自由主義路線による格差の拡大は、日本だけではないことがよくわかる。切なく残念な事実である。

ケン・ローチ監督らしい視点の作品だが、前作『 麦の穂をゆらす風 』(カンヌ国際映画祭パルムドール賞)ほどには感動は沸かない。掘り下げが足りないのか。

キャストには、よく知られた俳優はいない(のではないか)。その辺の街角からスカウトした素人のよう。それがかえって、作品にリアリティを与えている。カメラはシャープ。

 シネアミューズ。80点

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アブラゼミ

2008-08-23 21:46:28 | 美術・絵

ここ3日、あの暑さが嘘のような低温度。

北海道では、一日の最低気温が1.5度という。

あれほどうるさかった蝉の声が、ピタリと止んだ。

生命は不思議だ。

早速、はじめたての自己流水彩画で、この不思議を刻むことにした。

 作品 no.11

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反貧困

2008-08-18 14:39:53 | 

湯浅 誠 著、岩波文庫

 

                       

 

 小泉、安倍政権の新自由主義政策のもと、日本社会の格差は、確実に広がりかつ深刻になった。その事実の、貧困問題の現場からの報告である。

著者は、1969年生まれ。東大大学院博士課程終了中退。95年よりホームレス支援活動に従事。反貧困ネットワーク事務局長、NPO法人自立生活サポートセンターもやい事務局長。 

著者の思いは、一度転んだらどん底まですべり落ちていってしまう”すべり台社会”の中で、「このままいったら日本はどうなってしまうのか」という不安が社会全体に充満しており、(中略)「このままではまずい」と「どうせ無駄」の間をつなぐ活動を見つけなければならない、というところにある。

彼が取り上げる事例の一つ一つは、われわれが、ニュース報道でその悲惨さに胸を塞がれた、この数年の出来事ばかりである。にも拘わらず、多くの日本人は、まだ、それほど酷い貧困の中にあるとは実感できていない。それこそが問題なのだと著者は訴える

的確に提示された研究書や調査統計資料を順に目にした時、今更ながら事の深刻さに愕然とする。身の毛がよだつと言ってもいい。以下若干。

今や全労働者の三分の一(1736万人)が非正規社員であり、若年層では45.9% になる。

国民健康保険料の滞納に背景には、加入者の49.4%が60歳以上、53.83%が無職、61.5%が年収200万円以下とい事情がある。

生活保護費の、必要の無いところへの支給が14669件、本当に必要な人にいきわたっていないのが600万人という事実がある。 

日本社会の自殺者は、9年連続で3万人を超す。残された遺書から、1万人が生活苦が理由である。

 

           

著者は言う。なぜ政府は貧困と向き合いたがらないのか。貧困はあってはならないからだ。 最低生活費以下で暮らす人が膨大に存在することは憲法25条違反にあたる。国にはその違憲状態を解消する義務が生じる。貧困問題の解決は政治の重要な目的の一つである。しかしこれは小さな政府路線の根本的な修正になるからだ。

’あとがき’から                                          考えれば考えるほど、この「すべり台社会」には出口がない、と感じる。もはやどこかで微修正を施すだけではとうてい追いつかない。正規労働者も非正規労働者も、自営業者も失業者も、働ける人も働けない人も、闘っている人もそうでない人も、それぞれが大きな転換を迫られていると感じる。問われているのは”国の形”である。ひとつひとつ行動し、仲間を集め、場所を作り、声をあげていこう。あっと驚くウルトラの近道はない。それぞれのやっていることをもう一歩進め、広げることだけが、反貧困の次の展望を可能にし、社会を強くする。貧困と戦争に強い社会を作ろう。今、私たちはその瀬戸際にいる。

当代屈指のブロガー田中宏和は湯浅誠を、「現在の日本で湯浅誠以上の社会科学の説得力は他にない。ようやく出てきた待望の若い理論家。それはやはりと言うか、アカデミーの内ではなく外から出てきた。わたしはそれを待っていた。私を恍惚とさせたもう一人の若い知性、正義のカリスマの本村洋も、裁判所でもなく国会でもなく大学でもなく、市井から出現した。無名の市民から現れて神の存在になった。日本を変えるべき二人目のカリスマ。この男にはコミットできる。日本の救世主だ。知性と理論に間違いがない。不足が無い。欠点がない。冷静であり。政治と行政をよく見ている」と、最大級の讃辞で宣揚している。

 

 

 

   

 

 

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HAO伊豆高原

2008-08-14 22:32:49 | 

今年の7月1日にオープンした美術館。

          

杮落としは「兵馬俑」。

ご存知、秦の始皇帝陵から出土した大軍隊の俑だ。

これまで、西安の現地を除けば3会場の日本での展覧会を観たが、ここが一番。

点数が少なく、迫力には欠けるが、観客が少ないので、ゆっくり観賞できるのが何より。6分間の記録フィルム上映の施設もある。

屋外に立つ像には、触れることが出来、記念撮影に持って来いだ。青空をバックの将軍像は、ここにしかないのかも。 ちょっと不思議な感じ。

               

併設展は「世界の昆虫展」。蝶をはじめとする虫々の採集標本の季節展。

一部にクワガタやカブトムシに触れるコーナーもあり、子供たちには大受けだ。

       

それにしても、オープンしたばかりなのに、こんなに少ない客で、果たして成り立つのか。素晴らしい施設だけに潰したくない。今から心配。

HAOは、Heritage and Art museum of Orient の略。

HAO伊豆高原

 

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ゆうき丸

2008-08-13 20:33:24 | 舌鼓

  八丈島料理         

   

南青山の店が、銀座に進出、5月から営業。

威勢のいい従業員の声が飛び交っていた前店の趣とは異なり、気取った格調高さを狙ったような店内。オーナーによれば、「念願の銀座なのでそれなりに」とのこと。

1階がスワロフスキーでは、ちょと馴染まないとは思うが、勝手な客の言い分であって、味とは無関係。

刺身七種盛り合わせ、これはさすがの味、この店ならではの新鮮な魚介類。あしたばの天麩羅、パリパリ感と香りがたまらない。金目のかぶと煮、甘くて美味。島寿司、特に岩海苔の握りが絶品。名産の八丈辛子も辛くて粋。

生ビール2、日本酒1合、ワイン2グラス 2人で〆て13000円。

中央区銀座8-9-15ジュエルボックス銀座7階

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あの日の指輪を待つきみへ

2008-08-05 22:14:37 | 映画

原題:CLOSING THE RING

      

          シャーリー・マクレーンとクリストファー・プラマー

 

リチャード・アッテンボロー監督でシャーリー・マクレーンと来たら、観なくちゃと東劇に足を運ぶ。『 チャーリーとチョコレート工場 』以来か。3年半ぶり。

さすが、松竹の総本山。場内、ロビー、席、いずれも貫禄のゆったり感。どこかのブログが、「観客の平均年齢は山田洋二監督の映画より高い」と書いていたが、ホントその通り、納得。熟年カップルがポツンポツン。

時代は1941年と1991年。舞台はアメリカのブラナガンとアイルランドのベルファスト。男女4人の50年の隔たりが、その一人の女性の生き方を通して描かれる。ヒロインのエセルをシャーリー・マクレーン、50年前の彼女をミーシャ・バートンが二人一役で演じる。アイルランドの実話をもとにした奇跡の人生ドラマ。

社会派のアッテンボローらしく、IRAのテロ活動が絡み、静かだが、後半、緊迫感ある展開になる。

    

      「アパートの鍵貸します」                                               ミーシャ・バートン

シャーリー・マクレーンといえば、ビリー・ワイルダーの『アパートの鍵貸します』が一番。人によっては、『あなただけ今晩は』『愛と追憶の日々』となるか。あの切ないラブ・コメディはアメリカ映画開眼の一つだった。

若きエセル役をミーシャ・バートンが演じ、ヌードまで挑戦したが、『アパートの鍵貸します』のシャーリーには敵わなかった。と思うが、これは人それぞれか。

 90点

オフィシャル・サイト

                    

     東劇遠望                ロビー                劇場内

 

  

 

 

 

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