著者の担当した、70代のクライアントの、独学したというユング心理学の話を、理解できないながらも
長期に亘り訊きつづけて、ユング心理学に詳しい著者でも、どうにも理解できないこともあり、
こらえようがない眠気が起きたのち、
「あなたの話はわからない」などと、クライアントに言うなどした後、クライアントは
「自閉症のようになった」などと言われて、かなりショックを受けたようだが、その時に、
クライアントは、自分と他人の間のバウンダリーを少し持つことができ、その感覚を
「自閉症のようになった」と、言われたのだろう。
その後も、わからないなりに関わり続け、 何かを共有している感覚を保ちながら面接を続けたとのことだが、
そもそも言語は、他人と関わりたいために在るもので、会話や議論で何かを産み出す、創りだすなどは、
二次的なことだろう。
自他未分化で、自分の話を相手が理解しているかなどを考えずに話し続けるクライアントに、
少しではあれ2者関係が生じたため、配偶者や孫との関係も、改善することに繋がったのだろう。
「生産性を上げる」「余剰な人員」などの言説がはびこり、何かを作る、増やす、無駄を削るなどが
再優先されている現代社会で、人と関わりたいから会話をする、というのは、忘れられがちな事だろう。
高機能な場合、ある程度の会話ができ、様々な物を使うのが上手い発達障害の方のことを、
1.5者関係と表現する人もいるが、1.5者から、2者関係への移行は、これからの検討課題だろう。
SSTなどを覚えて対応できるようにするというのは、1.5者関係のまま、変わらないのではないだろうか?