
日本人は古くからマグロを食用としていて、縄文時代の貝塚からもマグロの骨が出土しているそうです。
古事記や万葉集にはマグロは「シビ」の名前で登場していますが、江戸の世相を記した随筆「慶長見聞集」ではこれを「シビと呼ぷ声の死日と聞えて不吉なり」とするなど、マグロの扱いは決して良いものではなかったようです。
その上マグロは鮮度を保つ為に水槽で生かしたまま流通させるには大き過ぎ、保存の効く干魚にした場合マグロは噛めないくらいに身が固くなってしまい、唯一の方法は塩漬けだったようですが、塩漬けのマグロは味がかなり落ちてしまう為、当時のマグロは最下層の庶民の食べ物だったそうです。
ところが、江戸時代中期から調味料として醤油が普及したことによって状況は一変し、マグロの身を醤油漬けにするという新たな保存方法が生まれ、「ヅケ」と呼ばれて握り寿司のネタとして使われ始めたのです。
そして近代以降は冷蔵技術が進歩した事から、赤身の部分の生食が普及し始めましたが、マグロは戦前までは大衆魚でした。
脂身の部分の「トロ」は特に腐敗し易いことから猫もまたいで通る「猫またぎ」とも揶揄されるほどの不人気で、もっぱら缶詰などの加工用だったそうです。
その後冷凍保存技術の進歩と生活の洋風化に伴う味覚の変化などによって、1960年代以降は「トロ」は生食用に珍重される部位となりました。
2011年の1年間に、日本で消費されたマグロを、種別に見てみると、左のグラフのとおりになります。
全体のおよそ30%(約12万トン)を占めているのはメバチで、メバチは同時に刺身や寿司としての消費が多く、その70%以上を占めています。
クロマグロやミナミマグロは、トロが喜ばれる高級なマグロですが、最近は漁業資源の乱獲の影響もあって流通量は全体の1割程度に過ぎません。
比較的安価なキハダやビンナガは刺身のほか、ツナ缶としても消費されています。
スーパーで、お寿司屋さんで、和風、洋風さまざまなお店で、日本ではどこでも手に入り、食べることができるマグロですが、日本のマグロの漁獲量と輸入量は、ともに世界最大となっています。
フィリピンは日本への主要なマグロ輸出国です
日本は世界で取れるマグロの実に5分の1を消費する世界一のマグロ消費大国ですが、自国でも多くの漁獲を行なっている他台湾、韓国、バヌアツ(南太平洋のシェパード諸島の火山島上に位置する共和制国家)、フィリピンなどの国々から大量にマグロを輸入しています。
2011年度の世界のマグロの漁獲量・生産量国別ランキングを見ると以下のようにフィリピンは堂々の4位の座にいます(単位:トン、カジキマグロ類は含まない)
1位 インドネシア 355,432
2位 日本 205,190
3位 台湾 153,930
4位 フィリピン 134,278
5位 スペイン 127,648
そして2013年1月~8月までにフィリピンから日本へ輸出された冷凍マグロ(キハダ・メバチ)は合計486トンで、台湾、韓国に次ぐ主要輸出国となっています。
マグロの街・ジェネラル・サントス
ダバオから南西に約160Km行ったところにジェネラルサントス(General Santos)と言う海辺の街があります。
ダバオの人たちはこの街の呼び名を<Gen San>(ジェン・サン)と略して呼んでいます。
ジェネラルサントス市営漁港は、フィリピン一のマグロ水揚げ量を誇る漁港で、市は別名<TUNA Capital>(マグロの首都)と言われています。
市内の市場では刺身用のマグロ、又カマ焼き、焼き物、煮物用のマグロが売られていて、日系のツナ缶工場3社、柵にして冷凍し日本へ空輸する会社が1社、生のまま東京と大阪に空輸する会社などがあります。
このようにジェネラルサントス市はツナビジネスが盛んで、人口40万人の町にしては銀行の数が非常に多いいことも特長です。
漁港は市の中心部から車で約20分で、ジェネラルサントス市があるサランガニ湾入り口の沖合にはキハダマグロの稚魚が回遊しているため周囲はマグロの好漁場となっているのです。
漁船の大多数はアウトリガーが付いたバンカ型で、漁は1晩で帰って来て、マグロの水揚げは漁船員が肩にかついで検量所に運びます。
市の漁港は長さ750mの埠頭、2000GT級の冷凍船に対応できる300mの長さの埠頭、巨大な製氷所、マグロ多数を保存する冷凍倉庫など充実した施設があり、ジェネラル・サントスの漁港の一日の水揚げ量はフィリピン最大を誇り、新鮮な魚介類やシーフード料理は市民の自慢でもあるのです。
ダバオ市内の老舗マグロ料理店「ルス・キニラウ」(LUZ KINILAW)
ダバオ市内のマグサイサイ公園近くにある創業40年以上にもなる老舗の「マグロ」料理屋さんがあります。
ダバオ湾に面した大衆食堂風のこの店の名前は<LUZ KINIRAW>と言って、KINIRAW(キニラウ)とはフィリピンを代表する料理の一つで、魚の「刺身」を使った料理のことです。
店の名前の通りマグロの「キニラウ」が美味しい店で、特にこの店のキニラウは「酢」を使わず、塩味のあっさり風味が特長です。
その他に「マグロの腹肉焼き」、「マグロのかま焼き」など、太い串に刺して炭火でこんがり、じっくり焼いた豪快な料理が特長のレストランです。
2階にある客席はかなり広く、夕方6時半を過ぎた頃にはほぼ満席になってしまいます。
手作りマグロ料理ア・ラ・カルト
市内のAGDAO市場の魚エリアの一角に土日だけ開店する「マグロ屋」さんがあります。
早朝6時のオープンと同時にかなりの常連客が店主が切り出すマグロの切り身を待っていて、捌くそばからマグロの柵は飛ぶように売れて行きます。
いつも「メバチマグロ」を持って来て解体しながら販売していますが、冷凍ものではないマグロなので、味も良く、人気の秘密が納得出来ます。
切り出したマグロの柵は「皮」付きが多いので、家に持ち帰ってから刺身用に下ごしらえをして冷蔵庫のチルドに保存すれば4~5日は大丈夫です。
買い物客はフィリピンの人たちばかりで、殆どの客は「キニラウ」用に大き目のサイコロ状に切って貰っています。
この店のマグロは1kg350ペソ(約800円)で、加熱料理にするにはもったいないくらい新鮮でねっとりtpした触感良さも特長です。
海外暮らしを始めてから早いもので今年で丸15年になりますが、やはり日本を離れて暮らしていると「和食」により懐かしさを憶えます。
ここダバオにも美味しい和食レストランはありますが、自分好みの味付けで作る手作り料理の味は格別です。
また、料理をすることで脳が活性化されることは科学的にも実証されているそうで、メニューを考えたり、食材を切ったり、煮たり、焼いたり、炒めたり、最後には綺麗に盛りつけたりなどなど、全てのプロセスで脳の血流が増え、活性化されるそうです。
特に料理は「段取り」が重要なので我々高齢者にとっては老化防止に繋がる脳のトレーニングには最適なのだそうです。
最近前述のAGDAO市場の「マグロ屋」さんにすっかりハマってしまって、2週連続で土曜日の朝「マグロ」を買って来て、「マグロ」三昧の2週間でした。
「握り寿司」は見よう見真似で始めてからかれこれ40年近くも経っているので、その味には結構自信があり、「鉄火巻き」も「マグロ握り」と共に大好きな一品です。
その他に「漬け丼」、「山かけ」、ダバオで初めて作った「マグロのヌタ」もお気に入りの料理になりました。
投稿いただいたマグロ運搬用ベルトコンベア装置の破壊・撤去事件のことは知りませんでした。
GenSanにはかなり前に一度行っただけで、最近の事情については以下のサイトの「Fishing industry」からの情報を参考に致しました。
http://en.wikipedia.org/wiki/General_Santos
AGDAO市場の私が利用している店では、本マグロのようなトロは無理ですが、「中トロ」は運が良ければゲット出来ます。
「Tuna Belly」の箇所が中トロになりますが、フィリピンの人たちもこのTuna Bellyのグリルが大好きなので、真っ先に売れてしまうようです。
漁船員が肩にかついでマグロを水揚げする写真に、世界での肉と魚の消費量の違いを感じます。
作業にゆとりが残っており、海の匂いがします。
それにしても、世界で捕れるマグロの20%を日本人が食しているとは。。。本当にマグロが好きな人種なんですね~
2年前にミンダナオ島を襲った台風パブロの時に、ジェネラル・サントスのマグロ水揚げ人たちがかなり犠牲になってしまったそうです。
日本人の「マグロ好き」で思い出したのですが、去年の東京・築地の中央卸売市場での1月5日の「初競り」で222キロの青森県大間産のクロマグロが1億5540万円(1キロ当たり70万円)で競り落とされたというびっくりニュースを思い出しました。
興味があったので、その競り落とされた1億5千万マグロの漁師の取り分を調べてみました。
大間漁連経由での出荷となり、 手数料として、卸売金額に対して大間漁連4% 青森県漁連1.5% 築地市場5.5%で、漁師の取り分は89%になるそうです。
8割以上がそのマグロを釣り上げた漁師さんの元へ行くそうで、インタビューで漁師さんが1年分の稼ぎが出ましたと言って喜んでいました。
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次回のダバオ訪問時に生マグロに出会えることを楽しみにしています。
コメントの投稿ありがとうございます。
先日Agdao市場をご案内した時には運悪くいつもの「マグロ屋」さんが出ていなくて残念でした。
昨日、久し振りにAgdaoへ行ったところ美味しそうな「マグロ刺身」がゲット出来ました。
次回のダバオ訪問の際にはきっと新鮮で美味しい「マグロ」に巡り会えると思います。