「はぁ?オレのこと待ってたって?」
叔父のカフェから、ピアノが置いてある倉庫へと移動した雪と亮。
亮は自分のことを待っていたという雪を、訝しげな目付きで見つめる。
「はい。課題しながらですけど」
「んじゃ連絡くらい‥」「電話出ないから‥」「う」
言い返せず、思わず口を噤む亮。
一息吐くと、亮は雪が自分を待っていた理由を早速尋ねた。
「‥で?」
「あ、はい!これ‥」
雪はそう言うと、鞄から一冊の本を取り出し、亮に向かって差し出す。
「えっ?」
思わず目を丸くする亮。身に覚えの無い話だ。
すると雪は、すかさずその本の説明を始めた。
「静香さんに渡して下さい。この前私がコーヒー零して台無しにしちゃった本なんですけど‥」
「佐藤先輩が‥」
佐藤からは「自分の名前は出すな」と言われていたが、雪は正直にそれを伝えた。
佐藤のその細やかな気遣いに触れた亮は、素っ頓狂な声を上げる。
「ほ~お?!」
「おい!マジでか!いやー信じらんねぇ!なんだよクソッ‥!」
亮は雪の手から本を奪うと、大きな声で感情を口に出した。
そんな亮を雪は怪訝な顔で見つめ、そんな雪からの視線で亮は正気に返り、気まずそうに黙り込む‥。
「‥‥‥‥」
しんとした静寂が、二人の間に重く漂った。
雪は頭を掻きながら、意味もなく軽く笑う。
気を取り直した雪は恐る恐る、近況について亮に尋ね出した。
「あ‥最近どうですか?ピアノ、頑張ってます?」
「は?お陰さまで熱~心にやっとりますが?」
あ、ハイ‥
他人行儀にそう答える亮との間に、再び沈黙が落ちる。
けれど雪は、諦めはしなかった。
「あのですね‥まだ新しいバイトの人が、入ってないんですよ」
黙っている亮に向かって、雪は店についての話を切り出す。
「河村氏が忙しいのも分かってるんですけど‥もしちょっとでも時間が出来るなら‥」
「店の仕事、続けてもらえないですかね‥?」
話を続ける雪の口元を、亮はじっと見つめている。
「あ、勿論ピアノの練習の邪魔にならない範囲でいいですから‥」
「最近父の腰の調子が良くなくて‥店が上手く回らないんです‥」
腰が痛くて店に立てない雪の父、一人で厨房に立つ雪の母、独楽鼠のように動きまわる蓮や雪‥。
亮の脳裏に、苦労を滲ませながら働く赤山家全員の姿が浮かぶーー‥。
しかし亮は次の瞬間、雪に向かって言い放った。
「どうしてオレが?」
素っ気ないその言葉が、だんだんとこの場の空気を変えて行く‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<彼との対話(1)ー静観ー>でした。
「静香に渡す為の本を託す」という名目で亮を待っていた雪が、
「家が困ってるから店を続けて欲しい」という理由で亮を呼び戻そうとする‥という回でした。
が、亮さんからは冷たい返事‥。
彼との対話は、まだまだ続きます。
次回は<彼との対話(2)ー悪役ー>です。
☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は化けてしまうor文章が途中で切れてしまうので、
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叔父のカフェから、ピアノが置いてある倉庫へと移動した雪と亮。
亮は自分のことを待っていたという雪を、訝しげな目付きで見つめる。
「はい。課題しながらですけど」
「んじゃ連絡くらい‥」「電話出ないから‥」「う」
言い返せず、思わず口を噤む亮。
一息吐くと、亮は雪が自分を待っていた理由を早速尋ねた。
「‥で?」
「あ、はい!これ‥」
雪はそう言うと、鞄から一冊の本を取り出し、亮に向かって差し出す。
「えっ?」
思わず目を丸くする亮。身に覚えの無い話だ。
すると雪は、すかさずその本の説明を始めた。
「静香さんに渡して下さい。この前私がコーヒー零して台無しにしちゃった本なんですけど‥」
「佐藤先輩が‥」
佐藤からは「自分の名前は出すな」と言われていたが、雪は正直にそれを伝えた。
佐藤のその細やかな気遣いに触れた亮は、素っ頓狂な声を上げる。
「ほ~お?!」
「おい!マジでか!いやー信じらんねぇ!なんだよクソッ‥!」
亮は雪の手から本を奪うと、大きな声で感情を口に出した。
そんな亮を雪は怪訝な顔で見つめ、そんな雪からの視線で亮は正気に返り、気まずそうに黙り込む‥。
「‥‥‥‥」
しんとした静寂が、二人の間に重く漂った。
雪は頭を掻きながら、意味もなく軽く笑う。
気を取り直した雪は恐る恐る、近況について亮に尋ね出した。
「あ‥最近どうですか?ピアノ、頑張ってます?」
「は?お陰さまで熱~心にやっとりますが?」
あ、ハイ‥
他人行儀にそう答える亮との間に、再び沈黙が落ちる。
けれど雪は、諦めはしなかった。
「あのですね‥まだ新しいバイトの人が、入ってないんですよ」
黙っている亮に向かって、雪は店についての話を切り出す。
「河村氏が忙しいのも分かってるんですけど‥もしちょっとでも時間が出来るなら‥」
「店の仕事、続けてもらえないですかね‥?」
話を続ける雪の口元を、亮はじっと見つめている。
「あ、勿論ピアノの練習の邪魔にならない範囲でいいですから‥」
「最近父の腰の調子が良くなくて‥店が上手く回らないんです‥」
腰が痛くて店に立てない雪の父、一人で厨房に立つ雪の母、独楽鼠のように動きまわる蓮や雪‥。
亮の脳裏に、苦労を滲ませながら働く赤山家全員の姿が浮かぶーー‥。
しかし亮は次の瞬間、雪に向かって言い放った。
「どうしてオレが?」
素っ気ないその言葉が、だんだんとこの場の空気を変えて行く‥。
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<彼との対話(1)ー静観ー>でした。
「静香に渡す為の本を託す」という名目で亮を待っていた雪が、
「家が困ってるから店を続けて欲しい」という理由で亮を呼び戻そうとする‥という回でした。
が、亮さんからは冷たい返事‥。
彼との対話は、まだまだ続きます。
次回は<彼との対話(2)ー悪役ー>です。
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心のままに行動できない亮さんが辛いです。けれど、これも過去の行いからきている理由ですからきっちり清算して前を向けるようになって欲しいです。
清算するには、淳も静香も過去に向き合うって事なので、大型ハリケーンな感じですが。
ところで、まだ亮と静香は同居してるんですかね。こんなダークな亮さんを見たら、静香も落ち着かないでしょう。家賃払う能力も金ズルもないし。弟に捨てられたって被害妄想は募るし。
全部、淳に向かうんですかね。怖いな~
本当色々上手くいかないなぁ‥。
亮と静香はまだ同居中なんじゃないですかね。静香は今一応資格の勉強中だから、大人しくしてるんでしょうし‥って雪と喧嘩しかけてたか‥(@@;)
この先波乱の予感しかしませんよね~~