日本記念日協会に登録されている今日・2月13日の記念日に「NISAの日」がある。
NISA (=ニーサ)とは、2014(平成26)年1月から始まった株式や投資信託への投資(新規購入分)によって利益が生じた場合。その値上がり益(キャピタルゲイン。(※1参照)や、分配金または配当金(=インカムゲイン※1参照)は、年間100万円(2016年から120万円)を上限に,最長5年間、非課税にする制度,、「少額投資非課税制度 」の通称である。
記念日登録は、年金加入者が自分の責任で資産形成のための賢い選択を行えるように、その効果的な教育を中立の立場で支援する特定非営利活動法人「確定拠出年金教育協会」(※2参照)が制定したものだそうだ。2014年から新しく、NISAが始まることを記念し、その内容を広めるのが目的だそうで、日付は2と13で「ニーサ」と読む語呂合わせから。
「NISA」が始まって1年経った今、もう、殆どの人が「NISA」のことはご存知ですよね。
この制度を利用するには,銀行や証券会社等の金融機関にて、NISAが適用される専用口座(非課税口座)を、通常の取引口座とは別に開設する必要がある。
利用できる上限の年間100万円(2016年から120万円)という金額は、その1年間で行うことのできる新規投資の上限額であり、年の途中で売却しても、空いた枠は再利用できないが、投資可能期間は2014年から2023年までの10年間続き、毎年新規に年間の投資上限(2016年から120万円)の非課税枠を使うことができる。ただし、NISAを利用できるのは、NISA向け口座を開設する年の1月1日において20歳以上の日本の居住者である。・・・等、様々な条件はあるものの、現在キャピタルゲインやインカムゲインに対する20%(2014年度からは、新たに復興増税も加わってくるため、税率は20.315%)もの課税が非課税になるというメリットは大きいので利用しない手はないのだが、皆さんは利用されていますか。
昨・2014年1月から開始されたNISAの口座獲得競争はすごかったですよね~。金融業界にすればかってあった「マル優制度」に匹敵する程、対象者数が多い制度なので、勢い口座獲得に力が入るのはわかるのだ、その口座獲得競争は、既に投資を行っている人を囲い込む、または飴をちらつかせることで他の金融機関から顧客を奪い取る陣取り合戦のようにも見え、非常に違和感を感じたものだった。
事実、現在はどうなっているのかよく知らないが、金融庁が昨年9月に発表したNISAの最新統計「NISA口座の利用状況等について」(※3:金融庁HPの“ここ 参照)によると、2014年6月30日現在で、「NISA総口座数は、727万3667口座となった。」・・・とあるが、その58,4%は60歳代以上の高齢者で占められている。
近年、非課税などのインセンティブが与えられてきた制度は、確定拠出年金制度(「日本版401k」とも言われる)のような勤労者(公務員は除く)を対象としているものばかりであり、専業主婦やリタイア世代を対象としていなかったが、NISAは、満20歳以上で住民票が取れる人は誰もが対象となるのだから、先に述べたようにマル優制度並みのインパクトはある。
同制度導入では、本来は、広く、今まで投資を行ってこなかった人をいかに投資に振り向かせるのかが大事なはずなのだが、実際には、対象者の数は膨大ではあっても、利用者の多くは相変わらずこの制度を利用して投資を行っている人のようであり、違和感はそのような「既投資家」という限られたパイの中での陣取り合戦を行っている風に見えた。
「貯蓄から投資へ」と言う言葉が何年も語られ続けているが、日本の場合、一向に個人のお金が投資に回らず、預貯金や国債などの成長が期待できないセクター(証券業界の用語で「業種」を指す)に滞留し続けているのが特徴である。
日本の財政収支(GDP比)は近年改善してきたとはいうものの、2008(平成20)年秋以降の世界同時不況の影響により、主要先進国と同様に赤字幅が拡大しており、日本の総債務残高(GDP比)は主要先進国の中で最悪の水準にあり、純債務残高(政府の総債務残高から政府が保有する金融資産を差し引いたもの)で見ても、主要先進国で最悪の水準となっている。
また、この20年間(失われた20年と呼ばれる)で、日本の政府総支出(対GDP比)は増加している一方租税負担率の水準は大幅に低下したことに伴い、財政収支は大幅に悪化している(※4:「財務省:わが国の財政状況」の4. 財政事情を諸外国と比較してみると?参照)。そのため、その改善策の一環として、2014年4月から消費税も引き上げられた(※5:厚生労働省HP社会保障・税一体改革参照)。
そのようななか、投資や資産運用で得られる利益を非課税とするNISAについては、〝金持ち優遇政策ではないか〟・・・といった印象が拭えないところがある(※6参照)。
もともと、NISAは、低迷していた株式市場を活性化しようという、一種の景気対策として、キャピタルゲインやインカムゲインに対する税率を20%から10%に引き下げていた株式や投資信託に対する「軽減税率」を2014年1月から撤廃し、元通りの20%に戻すことが正式に決まった際、その影響で株式市場が下落しないよう、株式市場へのダメージを和らげる予防措置的な制度として策定されたという経緯がある(※7参照)。
もう一つ重要な導入の背景には、日本銀行が事務局を務める金融広報中央委員会が、毎年11月に公表している「家計の金融行動に関する世論調査」の2014年版の「単身世帯、2人以上世帯の調査結果」に見られる通り、金融資産の平均保有額は1182万円と2013年と比較して81万円増加し、金融資産を保有していない世帯も2014年は、30.4%とやや減少(2013年は31%)したとはいえ、金融資産保有ゼロ世帯が3割を超えている現状。つまり、預・貯金がまったくない世帯が増加しており、資産格差がなかなか縮まらないことが窺えることである(※8の調査結果の一括ファイル参照)。
こうした状況を踏まえて「金融資産ゼロ世帯を始めとした家計の資産形成をサポートする必要性が生じてきた。」ことは、金融庁の「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」Ⅳ-3-1-2 勧誘・説明態勢」にも明示されている通りである。
そもそも、NISAは、1999(平成11)年からスタートした、イギリスの「ISA」(Individual Savings Account= 個人貯蓄口座。愛称アイサ)という制度を参考にして作られた制度であり、Nは日本(Nippon)を意味している。
しかし、イギリス発祥の「ISA」と日本版「NISA」には、相違点が多い。共通点としては、株式や投資信託が購入対象であることや、配当・分配金・譲渡益が非課税であることなどであるが、一方、ISAでは預貯金や公社債も購入出来るがNISAではできない。また、ISAには運用期限が無いこともNISAとは異なる。そして、ISAはイギリス国内に居住している人であれば国籍に関係なく誰でも口座が開けるため、利用者も多く、イギリスの金融市場では20兆円以上を動かしていると言われているそうだ。
またISAの利用層も広く、利用者の半数以上は年収2万ポンド未満(約300万円未満)と言われており、少ない資産でも運用できるという利点が既に広く支持されているという。
ただ、日本のNISAは、先に書いた目的や背景を基に、イギリスのISAをアレンジして導入したものだが、イギリスのISAに比べ、使い勝手の悪いものである。
NISAは、「金融資産を保有していない世帯の自助努力による家計の安定的な資産形成を支援するとともに、経済成長に必要な成長資金の供給を拡大する」目的で導入したものだが、私など、穿(うが)った見方をすると、「国民が長年コツコツとため込んだ莫大な預貯金やタンス預金を、低迷している株式や投資信託などのリスクアセット(=リスク資産。※1参照)市場に投入させ、市場経済の活性化と、それによる企業活動の活性化を期待する」ことを目的として導入したもの。つまり、国民の資産形成の支援の為と云うよりも、あくまでも、市場経済・企業活動の活性化を目的として導入したもの・・といった印象が拭えないのである。
私自身は、「NISA」が導入される以前より、金融資産は、預・貯金だけでなく、株式や投資信託等へもバランスよく配分していたこともあり、証券会社からも勧められ、「NISA口座」の開設は、家人名義も含めて早々にしてはおいたものの、結局、今でもNISAでの購入はせず今まで道りに普通口座を利用している。
理由は、私自身高齢であり、手持ちのものを何時売却・処分しなければならないかわからないし、損失が発生した場合、NISA口座と、普通口座のものとで利益と損失の相殺ができない不便さがあるからである。証券会社の人に聞くと、私の様に口座を開設しても利用していない人は結構多いという。
日本版NISAの問題点などは以下参考の※9:「イギリスISAとの比較から学ぶNISAの制度の問題点」に詳しく書かれているので参考にされると良い。また、以下では、NISAについての特徴や、銀行か証券会社に作るか?証券会社は店舗かネット証券か?などの比較、投資信託等の口座開設する前にメリット・デメリットをわかりやすく説明しているので、時間のある人は見られるとよい。
世界の中でも類を見ない預・貯金好きの日本人。あまりリスクを大きくしたくないという人にとっては、イギリスで人気の高い「預金型ISA」に関心が深いだろうが、現状では「預金型」を導入してもあまり意味がないと言えるかもしれない。理由は、あまりにも低い日本の預金金利にある。毎年いくらかの年利が振り込まれたとしても、よほど高額な場合はともかく、大抵の場合、ATM手数料で差し引きされてしまうくらいの額であり、家で現金を保管する危険性が回避できると言った程度のメリットしかない。これを非課税にしたところで、これによって、預金を増やそうというほどの気持ちにはなれないだろう。
しかも、先に述べたように、政府のNISA導入の動機は、日本人が貯めこんだ預・貯金等をリスク市場へ投入させ、史上を活性化させたい・・・という気持ちの方が強いので、日本で「預金型NISA」が導入されるのは、まず当面期待できないだろうし、金利が上昇するまでは、導入されてもあまりメリットはない。
ただ、イギリスのISAも1999年に導入されて以降、長い年月をかけて進化してきた制度であるが、日本のNISAは導入されたばかり、今のところ2023年までの限定措置なので、これが、イギリスのように経済の活性化につながり、利用する人が多くなってくれば、日本でも年間の限度額改定や 期限も延長もしくは恒久化されるなどの可能性はあるだろう。
日本では、昨・2014年4月の消費税増税に続き、今年1月には相続税率も引き上げられた。
それに、アベノミクスにより、デフレから脱却のためのインフレ政策が掲げられ、日銀はインフレターゲットを2%と定め通貨流通量(マネーサプライ)を増やし、円安を誘導していることから、輸入物価が上昇、電気ガス等公共料金をはじめ低所得者にはつらい食料品をはじめとする諸物価がどんどんと上昇している。
このようなインフレが続くと、表向き、生活は苦しくなるが、かつては基本的には物価上昇と並行して金利水準も上がっていたため、預貯金をしておけば、利息収入も増えて、ある程度は物価上昇分を相殺できた。
ところが、今私たちが直面しているのは、物価が上昇しているにもかかわらず、政策金利は抑えられ、現在ではほぼゼロ%といった状況である。つまり、インフレ率と預貯金金利等の差がマイナス金利となっている。言い換えれば、私たちが長年コツコツため込んできた預貯金=貨幣価値がどんどん下がっているのである。
しかし、このような状況が継続的に続くインフレ下では、借金をしても実質負担が減る。つまり、土地や建物などの不動産を持っているが、借金などマイナス資産を抱えている人たちにとっては逆にプラス要因となる。
例えば、銀行やゼネコンが抱えている不良債権の名目債権額は変わらなくても、実質債券額は目減りするだろうし、利益を目的に、多額の借金をして、株式や不動産・設備などへ投資している一流企業、金融機関、それに個人でも、余裕資金を多く持っている一部の金持ちなどは、その借金の元本の目減り分が非常に大きく、投資資産はインフレで上昇するので大きく儲けることが出来るだろう。
そして、先にも述べたように、債務危機に直面したイタリア(GDPの1,5倍)よりも財政状況が悪化し、国内総生産(GDP)の2.3倍もの債務残高を抱えている日本政府(※10を参照)にとっても目先的には、都合の良いことなのだろう。
このように、インフレの進行によって、貨幣の価値が下落する一方で、金利を意図的に低く抑える政策、つまり実質的に民間から政府への所得移転が起ることを「インフレ税」と呼んでいるが、こんな言葉知っていますか。実際に税金が課税されるのではなく、インフレーションによって財政赤字を解消させることである。
税金と言っても、所得税や消費税の様に税率をいくら上げるかを国会で審議する必要もなく、政府は貨幣の発行特権(シニョレッジ)を持っているので、財政赤字を埋めるために通貨を大量発行すればインフレとなり、民間が保有する貨幣価値が実質的に下がり、その分、政府や債務者の債務は実質的に目減りするという仕組み。民間から政府への所得移転が起こる。
日本政府の債務残高が経済規模の2倍を超える水準にまで積み上がった経験は、過去にも存在する。第二次大戦末期の1944(昭和19)年末には、政府債務のGNP比率は204%に達していた。これは、巨額の戦費を税収だけでは賄うことが出来ず、国債発行で財政赤字をカバーしていたからである。このときには、戦中戦後に発生した高率のインフレより、数年間で政府債務の大半が帳消しにされてしまった苦い経験がある(※11や、日本の財政問題参照)。
国家が最終的に莫大な財政赤字を解消するには、戦争で債務をチャラにする以外、通常は、以下の3つの方法しかないだろう。
1)デフォルト(債務不履行)に陥る。
2)財政再建を断行し債務を減少させる。
3)激しいインフレによって債務を目減りさせる。
このなかで、欧州が今、真剣に取り組んでいるのが、2)の財政再建という、最もポピュラーな方法である。借金をしてしまったものは、支出を減らしつつ、一生懸命働いて返済するしかないのであるが、歴史的には、莫大な財政赤字を抱えた国家は、結局、1)のデフォルトに陥る(1998年ロシアや、2001年アルゼンチンなど)か、もしくは3)の激しいインフレによって莫大な財政赤字を解消させてしまうパターンがよくとられる。
世界に類を見ない財政赤字を抱える日本の財政改革は待ったなしの状態にあり、そこで選ばれたのが、2%の物価目標を設定し、政府・日銀が連携を強化しての、場合によっては、政府や日銀、民間が出資するファンドによる外債購入も視野に入れた「無制限の金融緩和」策による円安誘導政策である(※12参照)。
ただ、安倍政権では、これらの複合策を行えば、一定の成果を出すことが期待出来ると考えているようだが、日本が量的な金融緩和政策だけでは景気回復ができるかどうかは賛否分かれるところである。
確かに、米国では量的金融緩和政策が終了し、利上げへの移行が具体的に考察される局面を迎えており、米ドル、株価が堅調に推移してきたが、ギリシャ総選挙で緊縮財政反対の最大野党が勝利して後、リスク資産への投資が敬遠され、一進一退を繰り返しており、まだまだ先行きは不透明である。
それに、インフレを目指してきた米国では、一部のアナリストによれば、米国の富が上位1%の富裕層に集中していると指摘しているが、2014年 09月米国FTB調査の報告によれと、実際には上位3%の富裕層に集中していることが分かった・・という。そして、2010━2013年の期間に、米国の家計所得(インフレ調整後)は平均でおよそ4%増加したものの、所得の伸びは富裕層に集中し、上位3%の富裕層が所得全体に占める割合は30,5%だった。また家計純資産の保有状況ではさらに格差が拡大。上位3%の富裕層が全体に占める割合は、1989年の44,8%、2007年の51、8%から2013年には54、4%にも上昇しているという(※13参照)。一方で、飲食業界などの勤労者は低賃金。医療サービスや大学の授業料は値上がりし、貧富の格差を示すジニ係数は日本よりかなり高い。
インフレ政策による財政赤字の軽減が、上手くいけばそれに越したことはないのだが、それには安倍首相が言っているように、いくつか条件がある。まず景気回復が伴わなければならない。株高や円安によって日本を代表する国際優良企業が業績を回復してくれば、サラリーマンの賃金のベースアップが行われ、それによって、個人消費が上向く。そして、日本経済低迷の元凶である「需要不足」を解消できるかもしれない。
しかし、2015(平成27)年1月30日に発表された家計調査(ここ参照)でも、景気のカギを握る個人消費は深刻な減少を続けているし、勤労者世帯の実収入も名目増加しても、実質は0.8%の減少となっているなど、インフレになっても大企業は別として特に中小企業ではなかなか賃金アップは追いつかない(※14参照)。インフレが成功して、国家の財政赤字は解消させたとしても、勤労者の所得が比例して増加するわけではなく、生活自体は苦しくなっていく人が多くなるのだ。それに、もし、景気回復が実現できなくなったときには、円安、インフレ、債券安(金利高)だけが残ることになってしまう。
そんななか、少子・高齢化社会が世界に類例のないスピードで進む日本では仕事が出来、収入のある若いうちは何とかなっても、定年後の生活に必要な老後資金が確保できていないと大変なことになる。
インフレは借金しながら投資のできる恵まれた人には良いが、ただコツコツと預貯金で貯めるだけのふつうの庶民にはちっとも恩恵が及ばず、多くの国民が泣きを見ることになるが、特に蓄えのない低所得者や年金受給者などの生活は破綻しかねない。いずれにしても、インフレが続き、物価水準が上昇する一方で、このような超低金利が続くようだと、日本国内における格差問題は、今まで以上に広がっていく恐れがある。持てる者と持たざる者、そして、このような社会に対応できる者と出来ない者との格差が深刻になってゆくだろう。
しかも、日本人の平均寿命は、これからも伸びてゆくだろうし、そうすれば、医療費や介護・年金など社会保障費はますます増加するが、国も地方も社会保障費を今まで通り負担はしてゆけなくなるのは明らかである。医療や介護費の国民の負担率はますますアップし、年金の受給開始年齢も60歳から65歳へと段階的な引き上げが始まっているが、まだその先、支給開始年齢が引き上げられるかもしれなし、又、支給額も減額されるかもしれない。
そうなれば、これから60代を迎える人は、借家であれば住居費はもっとかかるようになるし、住宅ローンで持ち家のある人でも退職時に、退職金を全額貯蓄に回せる人は少なくなってゆくだろう。
総務省統計局が2013年2月に公表した『家計調査報告(家計収支編)2012年平均速報結果の概況』(※15のここ参照)資料を見ると、2012年の「総世帯」の消費支出(日常生活に必要な商品やサービスを買うために払った金額)は、1世帯あたり24万7,651円(月平均)で、2011年に比べて0.2%増えている。このうち、「2人以上の世帯」は平均28万6,169円で11%増加し、「単身世帯」は平均15万6,450円で28%減少と報告されている。
『高齢社会白書』(内閣府※16参照)や『厚生労働白書』(厚生労働省※5参照)では、65歳以上の高齢者のいる世帯を「高齢世帯」と呼んでいるが、総務省の『家計調査』は60歳以上としている。総務省の家計収支速報の「II.世帯属性別の家計収支」(※15のここ参照)では、年代、世帯人数、職業、年収などさまざまな項目ごとに家計の状況を報告しており、これを見ると、60歳以上の「家計」実収入(年金給付など)と実支出(消費支出と非消費支出の合計)を差し引きした「不足分」は以下のように赤字となっている。
高齢世帯の家計(月平均額)。
「高齢無職総世帯」(60歳以上)の場合、
実収入18万1,028円。実支出22万8,819円。不足額 4万7,791円
「単身無職世帯」(60歳以上)の場合
実収入12万1,542円。実支出15万3,830円。不足額 3万2,288円
「高齢夫婦無職世帯」(夫65歳以上妻60歳以上)の場合
実収入21万8,722円。実支出27万0,395円。不足額 5万1,674円
この不足分は金融資産の取崩しなどで賄われているが、今後、年金の支給額は減りこそすれ、増えることはまずありえないが、、実支出の方は増えこそすれ、減ることはないだろうから、毎月の家計の不足はもっと増えていくことを覚悟しなくてはいけないだろう。
昨年の4月1日、多くの国民の反対を押し切って消費税が5%から8%に引き上げられた消費税の増税も「税と社会保障の一体改革」だったはずなのだが税収アップ分は公共事業と法人税減税などに消えてしまい、社会保障の拡充にはほとんど結びついていないのが現実のようだ(※17参照)。
そのようなことをしながら、安倍政権は政策的に、インフレで目減りする「金融資産」を取り崩して、「NISA」を利用して株や投資信託などのリスク資産を購入し、自助努力で収入を増し、老後資金を準備せよと仰っているのである。・・・本当に親切?なことだ。
今、政府・金融機関・そして年金機構までが莫大な年金積立金を使って株式や外国投信などを購入している。そして今、株も上昇はしているが・・・。この株高いつまで、どれだけ上がるのか・・・。上がった後はどうなるのか・・・?…考えるだけで恐ろしい。
しかし、老後資金の貯蓄の重要性は、今まで以上に高まっていることは確かだ。実質的にマイナス金利である預・貯金に頼っていては、老後の生活はやってゆけない。何とかしなくてならないのだが・・・。
せめて、「NISA」も無力な庶民の為にイギリスの「ISA」並みには改めてほしいものだが・・・。
参考:
※1:マネー百科:金融用語辞典
http://money.infobank.co.jp/index.htm
※2:NPO401K教育協会
http://www.npo401k.org/
※3:金融庁HP
http://www.fsa.go.jp/
※4:財務省:わが国の財政状況
http://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/index.html
※5:厚生労働省HP
http://www.mhlw.go.jp/
※6:金持ち優遇 - PRESIDENT Online
http://president.jp/articles/-/14349
※7:軽減税率終了 - 楽天証券
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/info/info20131025-02.html
※8:知るぽると:金融広報中央委員会
.http://www.shiruporuto.jp/
※9:イギリスISAとの比較から学ぶNISAの制度の問題点 | ZUU online
http://zuuonline.com/archives/15169
※10:時事ドットコム:【図解・行政】基礎的財政収支の対GDP比(2014年11月)
http://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_pol_yosanzaisei20141117j-03-w330
※11:日本の財政赤字の維持可能性
http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/12j018.pdf#search='%E6%97%A5%E6%9C%AC+%E8%B2%A1%E6%94%BF%E8%B5%A4%E5%AD%97+%E5%A4%96%E5%9B%BD%E5%82%B5%E5%88%B8'
※12:自民経済再生案:日銀法改正含め連携、外債購入ファンド創設も (2)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MDKAA66KLVRL01.html
※13:米国の所得格差が金融危機で拡大、富は上位3%に集中=FRB
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0GZ2O420140904
※14:日本の平均
http://jpnaverage.com/%E3%82%B5%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3/post-114/
※15:総務省:統計局
http://www.stat.go.jp/index.htm
※16:高齢社会白書について - 内閣府
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/index-w.html
※17:政策解説 消費税増税分〝すべて社会保障に〟のウソ 政策部 - 兵庫保険医協会
http://www.hhk.jp/hyogo-hokeni-shinbun/backnumber/2014/0425/070003.php
危険水域にある日本の財政事情 - モルガン・スタンレー
http://www.morganstanley.co.jp/im/research/fr/121218.html
財政赤字の「ネズミ講」はいつまで続けられるか - ニューズウィーク日本語版
http://www.newsweekjapan.jp/column/ikeda/2014/11/post-891.php
少額投資非課税制度 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%91%E9%A1%8D%E6%8A%95%E8%B3%87%E9%9D%9E%E8%AA%B2%E7%A8%8E%E5%88%B6%E5%BA%A6
NISA (=ニーサ)とは、2014(平成26)年1月から始まった株式や投資信託への投資(新規購入分)によって利益が生じた場合。その値上がり益(キャピタルゲイン。(※1参照)や、分配金または配当金(=インカムゲイン※1参照)は、年間100万円(2016年から120万円)を上限に,最長5年間、非課税にする制度,、「少額投資非課税制度 」の通称である。
記念日登録は、年金加入者が自分の責任で資産形成のための賢い選択を行えるように、その効果的な教育を中立の立場で支援する特定非営利活動法人「確定拠出年金教育協会」(※2参照)が制定したものだそうだ。2014年から新しく、NISAが始まることを記念し、その内容を広めるのが目的だそうで、日付は2と13で「ニーサ」と読む語呂合わせから。
「NISA」が始まって1年経った今、もう、殆どの人が「NISA」のことはご存知ですよね。
この制度を利用するには,銀行や証券会社等の金融機関にて、NISAが適用される専用口座(非課税口座)を、通常の取引口座とは別に開設する必要がある。
利用できる上限の年間100万円(2016年から120万円)という金額は、その1年間で行うことのできる新規投資の上限額であり、年の途中で売却しても、空いた枠は再利用できないが、投資可能期間は2014年から2023年までの10年間続き、毎年新規に年間の投資上限(2016年から120万円)の非課税枠を使うことができる。ただし、NISAを利用できるのは、NISA向け口座を開設する年の1月1日において20歳以上の日本の居住者である。・・・等、様々な条件はあるものの、現在キャピタルゲインやインカムゲインに対する20%(2014年度からは、新たに復興増税も加わってくるため、税率は20.315%)もの課税が非課税になるというメリットは大きいので利用しない手はないのだが、皆さんは利用されていますか。
昨・2014年1月から開始されたNISAの口座獲得競争はすごかったですよね~。金融業界にすればかってあった「マル優制度」に匹敵する程、対象者数が多い制度なので、勢い口座獲得に力が入るのはわかるのだ、その口座獲得競争は、既に投資を行っている人を囲い込む、または飴をちらつかせることで他の金融機関から顧客を奪い取る陣取り合戦のようにも見え、非常に違和感を感じたものだった。
事実、現在はどうなっているのかよく知らないが、金融庁が昨年9月に発表したNISAの最新統計「NISA口座の利用状況等について」(※3:金融庁HPの“ここ 参照)によると、2014年6月30日現在で、「NISA総口座数は、727万3667口座となった。」・・・とあるが、その58,4%は60歳代以上の高齢者で占められている。
近年、非課税などのインセンティブが与えられてきた制度は、確定拠出年金制度(「日本版401k」とも言われる)のような勤労者(公務員は除く)を対象としているものばかりであり、専業主婦やリタイア世代を対象としていなかったが、NISAは、満20歳以上で住民票が取れる人は誰もが対象となるのだから、先に述べたようにマル優制度並みのインパクトはある。
同制度導入では、本来は、広く、今まで投資を行ってこなかった人をいかに投資に振り向かせるのかが大事なはずなのだが、実際には、対象者の数は膨大ではあっても、利用者の多くは相変わらずこの制度を利用して投資を行っている人のようであり、違和感はそのような「既投資家」という限られたパイの中での陣取り合戦を行っている風に見えた。
「貯蓄から投資へ」と言う言葉が何年も語られ続けているが、日本の場合、一向に個人のお金が投資に回らず、預貯金や国債などの成長が期待できないセクター(証券業界の用語で「業種」を指す)に滞留し続けているのが特徴である。
日本の財政収支(GDP比)は近年改善してきたとはいうものの、2008(平成20)年秋以降の世界同時不況の影響により、主要先進国と同様に赤字幅が拡大しており、日本の総債務残高(GDP比)は主要先進国の中で最悪の水準にあり、純債務残高(政府の総債務残高から政府が保有する金融資産を差し引いたもの)で見ても、主要先進国で最悪の水準となっている。
また、この20年間(失われた20年と呼ばれる)で、日本の政府総支出(対GDP比)は増加している一方租税負担率の水準は大幅に低下したことに伴い、財政収支は大幅に悪化している(※4:「財務省:わが国の財政状況」の4. 財政事情を諸外国と比較してみると?参照)。そのため、その改善策の一環として、2014年4月から消費税も引き上げられた(※5:厚生労働省HP社会保障・税一体改革参照)。
そのようななか、投資や資産運用で得られる利益を非課税とするNISAについては、〝金持ち優遇政策ではないか〟・・・といった印象が拭えないところがある(※6参照)。
もともと、NISAは、低迷していた株式市場を活性化しようという、一種の景気対策として、キャピタルゲインやインカムゲインに対する税率を20%から10%に引き下げていた株式や投資信託に対する「軽減税率」を2014年1月から撤廃し、元通りの20%に戻すことが正式に決まった際、その影響で株式市場が下落しないよう、株式市場へのダメージを和らげる予防措置的な制度として策定されたという経緯がある(※7参照)。
もう一つ重要な導入の背景には、日本銀行が事務局を務める金融広報中央委員会が、毎年11月に公表している「家計の金融行動に関する世論調査」の2014年版の「単身世帯、2人以上世帯の調査結果」に見られる通り、金融資産の平均保有額は1182万円と2013年と比較して81万円増加し、金融資産を保有していない世帯も2014年は、30.4%とやや減少(2013年は31%)したとはいえ、金融資産保有ゼロ世帯が3割を超えている現状。つまり、預・貯金がまったくない世帯が増加しており、資産格差がなかなか縮まらないことが窺えることである(※8の調査結果の一括ファイル参照)。
こうした状況を踏まえて「金融資産ゼロ世帯を始めとした家計の資産形成をサポートする必要性が生じてきた。」ことは、金融庁の「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」Ⅳ-3-1-2 勧誘・説明態勢」にも明示されている通りである。
そもそも、NISAは、1999(平成11)年からスタートした、イギリスの「ISA」(Individual Savings Account= 個人貯蓄口座。愛称アイサ)という制度を参考にして作られた制度であり、Nは日本(Nippon)を意味している。
しかし、イギリス発祥の「ISA」と日本版「NISA」には、相違点が多い。共通点としては、株式や投資信託が購入対象であることや、配当・分配金・譲渡益が非課税であることなどであるが、一方、ISAでは預貯金や公社債も購入出来るがNISAではできない。また、ISAには運用期限が無いこともNISAとは異なる。そして、ISAはイギリス国内に居住している人であれば国籍に関係なく誰でも口座が開けるため、利用者も多く、イギリスの金融市場では20兆円以上を動かしていると言われているそうだ。
またISAの利用層も広く、利用者の半数以上は年収2万ポンド未満(約300万円未満)と言われており、少ない資産でも運用できるという利点が既に広く支持されているという。
ただ、日本のNISAは、先に書いた目的や背景を基に、イギリスのISAをアレンジして導入したものだが、イギリスのISAに比べ、使い勝手の悪いものである。
NISAは、「金融資産を保有していない世帯の自助努力による家計の安定的な資産形成を支援するとともに、経済成長に必要な成長資金の供給を拡大する」目的で導入したものだが、私など、穿(うが)った見方をすると、「国民が長年コツコツとため込んだ莫大な預貯金やタンス預金を、低迷している株式や投資信託などのリスクアセット(=リスク資産。※1参照)市場に投入させ、市場経済の活性化と、それによる企業活動の活性化を期待する」ことを目的として導入したもの。つまり、国民の資産形成の支援の為と云うよりも、あくまでも、市場経済・企業活動の活性化を目的として導入したもの・・といった印象が拭えないのである。
私自身は、「NISA」が導入される以前より、金融資産は、預・貯金だけでなく、株式や投資信託等へもバランスよく配分していたこともあり、証券会社からも勧められ、「NISA口座」の開設は、家人名義も含めて早々にしてはおいたものの、結局、今でもNISAでの購入はせず今まで道りに普通口座を利用している。
理由は、私自身高齢であり、手持ちのものを何時売却・処分しなければならないかわからないし、損失が発生した場合、NISA口座と、普通口座のものとで利益と損失の相殺ができない不便さがあるからである。証券会社の人に聞くと、私の様に口座を開設しても利用していない人は結構多いという。
日本版NISAの問題点などは以下参考の※9:「イギリスISAとの比較から学ぶNISAの制度の問題点」に詳しく書かれているので参考にされると良い。また、以下では、NISAについての特徴や、銀行か証券会社に作るか?証券会社は店舗かネット証券か?などの比較、投資信託等の口座開設する前にメリット・デメリットをわかりやすく説明しているので、時間のある人は見られるとよい。
世界の中でも類を見ない預・貯金好きの日本人。あまりリスクを大きくしたくないという人にとっては、イギリスで人気の高い「預金型ISA」に関心が深いだろうが、現状では「預金型」を導入してもあまり意味がないと言えるかもしれない。理由は、あまりにも低い日本の預金金利にある。毎年いくらかの年利が振り込まれたとしても、よほど高額な場合はともかく、大抵の場合、ATM手数料で差し引きされてしまうくらいの額であり、家で現金を保管する危険性が回避できると言った程度のメリットしかない。これを非課税にしたところで、これによって、預金を増やそうというほどの気持ちにはなれないだろう。
しかも、先に述べたように、政府のNISA導入の動機は、日本人が貯めこんだ預・貯金等をリスク市場へ投入させ、史上を活性化させたい・・・という気持ちの方が強いので、日本で「預金型NISA」が導入されるのは、まず当面期待できないだろうし、金利が上昇するまでは、導入されてもあまりメリットはない。
ただ、イギリスのISAも1999年に導入されて以降、長い年月をかけて進化してきた制度であるが、日本のNISAは導入されたばかり、今のところ2023年までの限定措置なので、これが、イギリスのように経済の活性化につながり、利用する人が多くなってくれば、日本でも年間の限度額改定や 期限も延長もしくは恒久化されるなどの可能性はあるだろう。
日本では、昨・2014年4月の消費税増税に続き、今年1月には相続税率も引き上げられた。
それに、アベノミクスにより、デフレから脱却のためのインフレ政策が掲げられ、日銀はインフレターゲットを2%と定め通貨流通量(マネーサプライ)を増やし、円安を誘導していることから、輸入物価が上昇、電気ガス等公共料金をはじめ低所得者にはつらい食料品をはじめとする諸物価がどんどんと上昇している。
このようなインフレが続くと、表向き、生活は苦しくなるが、かつては基本的には物価上昇と並行して金利水準も上がっていたため、預貯金をしておけば、利息収入も増えて、ある程度は物価上昇分を相殺できた。
ところが、今私たちが直面しているのは、物価が上昇しているにもかかわらず、政策金利は抑えられ、現在ではほぼゼロ%といった状況である。つまり、インフレ率と預貯金金利等の差がマイナス金利となっている。言い換えれば、私たちが長年コツコツため込んできた預貯金=貨幣価値がどんどん下がっているのである。
しかし、このような状況が継続的に続くインフレ下では、借金をしても実質負担が減る。つまり、土地や建物などの不動産を持っているが、借金などマイナス資産を抱えている人たちにとっては逆にプラス要因となる。
例えば、銀行やゼネコンが抱えている不良債権の名目債権額は変わらなくても、実質債券額は目減りするだろうし、利益を目的に、多額の借金をして、株式や不動産・設備などへ投資している一流企業、金融機関、それに個人でも、余裕資金を多く持っている一部の金持ちなどは、その借金の元本の目減り分が非常に大きく、投資資産はインフレで上昇するので大きく儲けることが出来るだろう。
そして、先にも述べたように、債務危機に直面したイタリア(GDPの1,5倍)よりも財政状況が悪化し、国内総生産(GDP)の2.3倍もの債務残高を抱えている日本政府(※10を参照)にとっても目先的には、都合の良いことなのだろう。
このように、インフレの進行によって、貨幣の価値が下落する一方で、金利を意図的に低く抑える政策、つまり実質的に民間から政府への所得移転が起ることを「インフレ税」と呼んでいるが、こんな言葉知っていますか。実際に税金が課税されるのではなく、インフレーションによって財政赤字を解消させることである。
税金と言っても、所得税や消費税の様に税率をいくら上げるかを国会で審議する必要もなく、政府は貨幣の発行特権(シニョレッジ)を持っているので、財政赤字を埋めるために通貨を大量発行すればインフレとなり、民間が保有する貨幣価値が実質的に下がり、その分、政府や債務者の債務は実質的に目減りするという仕組み。民間から政府への所得移転が起こる。
日本政府の債務残高が経済規模の2倍を超える水準にまで積み上がった経験は、過去にも存在する。第二次大戦末期の1944(昭和19)年末には、政府債務のGNP比率は204%に達していた。これは、巨額の戦費を税収だけでは賄うことが出来ず、国債発行で財政赤字をカバーしていたからである。このときには、戦中戦後に発生した高率のインフレより、数年間で政府債務の大半が帳消しにされてしまった苦い経験がある(※11や、日本の財政問題参照)。
国家が最終的に莫大な財政赤字を解消するには、戦争で債務をチャラにする以外、通常は、以下の3つの方法しかないだろう。
1)デフォルト(債務不履行)に陥る。
2)財政再建を断行し債務を減少させる。
3)激しいインフレによって債務を目減りさせる。
このなかで、欧州が今、真剣に取り組んでいるのが、2)の財政再建という、最もポピュラーな方法である。借金をしてしまったものは、支出を減らしつつ、一生懸命働いて返済するしかないのであるが、歴史的には、莫大な財政赤字を抱えた国家は、結局、1)のデフォルトに陥る(1998年ロシアや、2001年アルゼンチンなど)か、もしくは3)の激しいインフレによって莫大な財政赤字を解消させてしまうパターンがよくとられる。
世界に類を見ない財政赤字を抱える日本の財政改革は待ったなしの状態にあり、そこで選ばれたのが、2%の物価目標を設定し、政府・日銀が連携を強化しての、場合によっては、政府や日銀、民間が出資するファンドによる外債購入も視野に入れた「無制限の金融緩和」策による円安誘導政策である(※12参照)。
ただ、安倍政権では、これらの複合策を行えば、一定の成果を出すことが期待出来ると考えているようだが、日本が量的な金融緩和政策だけでは景気回復ができるかどうかは賛否分かれるところである。
確かに、米国では量的金融緩和政策が終了し、利上げへの移行が具体的に考察される局面を迎えており、米ドル、株価が堅調に推移してきたが、ギリシャ総選挙で緊縮財政反対の最大野党が勝利して後、リスク資産への投資が敬遠され、一進一退を繰り返しており、まだまだ先行きは不透明である。
それに、インフレを目指してきた米国では、一部のアナリストによれば、米国の富が上位1%の富裕層に集中していると指摘しているが、2014年 09月米国FTB調査の報告によれと、実際には上位3%の富裕層に集中していることが分かった・・という。そして、2010━2013年の期間に、米国の家計所得(インフレ調整後)は平均でおよそ4%増加したものの、所得の伸びは富裕層に集中し、上位3%の富裕層が所得全体に占める割合は30,5%だった。また家計純資産の保有状況ではさらに格差が拡大。上位3%の富裕層が全体に占める割合は、1989年の44,8%、2007年の51、8%から2013年には54、4%にも上昇しているという(※13参照)。一方で、飲食業界などの勤労者は低賃金。医療サービスや大学の授業料は値上がりし、貧富の格差を示すジニ係数は日本よりかなり高い。
インフレ政策による財政赤字の軽減が、上手くいけばそれに越したことはないのだが、それには安倍首相が言っているように、いくつか条件がある。まず景気回復が伴わなければならない。株高や円安によって日本を代表する国際優良企業が業績を回復してくれば、サラリーマンの賃金のベースアップが行われ、それによって、個人消費が上向く。そして、日本経済低迷の元凶である「需要不足」を解消できるかもしれない。
しかし、2015(平成27)年1月30日に発表された家計調査(ここ参照)でも、景気のカギを握る個人消費は深刻な減少を続けているし、勤労者世帯の実収入も名目増加しても、実質は0.8%の減少となっているなど、インフレになっても大企業は別として特に中小企業ではなかなか賃金アップは追いつかない(※14参照)。インフレが成功して、国家の財政赤字は解消させたとしても、勤労者の所得が比例して増加するわけではなく、生活自体は苦しくなっていく人が多くなるのだ。それに、もし、景気回復が実現できなくなったときには、円安、インフレ、債券安(金利高)だけが残ることになってしまう。
そんななか、少子・高齢化社会が世界に類例のないスピードで進む日本では仕事が出来、収入のある若いうちは何とかなっても、定年後の生活に必要な老後資金が確保できていないと大変なことになる。
インフレは借金しながら投資のできる恵まれた人には良いが、ただコツコツと預貯金で貯めるだけのふつうの庶民にはちっとも恩恵が及ばず、多くの国民が泣きを見ることになるが、特に蓄えのない低所得者や年金受給者などの生活は破綻しかねない。いずれにしても、インフレが続き、物価水準が上昇する一方で、このような超低金利が続くようだと、日本国内における格差問題は、今まで以上に広がっていく恐れがある。持てる者と持たざる者、そして、このような社会に対応できる者と出来ない者との格差が深刻になってゆくだろう。
しかも、日本人の平均寿命は、これからも伸びてゆくだろうし、そうすれば、医療費や介護・年金など社会保障費はますます増加するが、国も地方も社会保障費を今まで通り負担はしてゆけなくなるのは明らかである。医療や介護費の国民の負担率はますますアップし、年金の受給開始年齢も60歳から65歳へと段階的な引き上げが始まっているが、まだその先、支給開始年齢が引き上げられるかもしれなし、又、支給額も減額されるかもしれない。
そうなれば、これから60代を迎える人は、借家であれば住居費はもっとかかるようになるし、住宅ローンで持ち家のある人でも退職時に、退職金を全額貯蓄に回せる人は少なくなってゆくだろう。
総務省統計局が2013年2月に公表した『家計調査報告(家計収支編)2012年平均速報結果の概況』(※15のここ参照)資料を見ると、2012年の「総世帯」の消費支出(日常生活に必要な商品やサービスを買うために払った金額)は、1世帯あたり24万7,651円(月平均)で、2011年に比べて0.2%増えている。このうち、「2人以上の世帯」は平均28万6,169円で11%増加し、「単身世帯」は平均15万6,450円で28%減少と報告されている。
『高齢社会白書』(内閣府※16参照)や『厚生労働白書』(厚生労働省※5参照)では、65歳以上の高齢者のいる世帯を「高齢世帯」と呼んでいるが、総務省の『家計調査』は60歳以上としている。総務省の家計収支速報の「II.世帯属性別の家計収支」(※15のここ参照)では、年代、世帯人数、職業、年収などさまざまな項目ごとに家計の状況を報告しており、これを見ると、60歳以上の「家計」実収入(年金給付など)と実支出(消費支出と非消費支出の合計)を差し引きした「不足分」は以下のように赤字となっている。
高齢世帯の家計(月平均額)。
「高齢無職総世帯」(60歳以上)の場合、
実収入18万1,028円。実支出22万8,819円。不足額 4万7,791円
「単身無職世帯」(60歳以上)の場合
実収入12万1,542円。実支出15万3,830円。不足額 3万2,288円
「高齢夫婦無職世帯」(夫65歳以上妻60歳以上)の場合
実収入21万8,722円。実支出27万0,395円。不足額 5万1,674円
この不足分は金融資産の取崩しなどで賄われているが、今後、年金の支給額は減りこそすれ、増えることはまずありえないが、、実支出の方は増えこそすれ、減ることはないだろうから、毎月の家計の不足はもっと増えていくことを覚悟しなくてはいけないだろう。
昨年の4月1日、多くの国民の反対を押し切って消費税が5%から8%に引き上げられた消費税の増税も「税と社会保障の一体改革」だったはずなのだが税収アップ分は公共事業と法人税減税などに消えてしまい、社会保障の拡充にはほとんど結びついていないのが現実のようだ(※17参照)。
そのようなことをしながら、安倍政権は政策的に、インフレで目減りする「金融資産」を取り崩して、「NISA」を利用して株や投資信託などのリスク資産を購入し、自助努力で収入を増し、老後資金を準備せよと仰っているのである。・・・本当に親切?なことだ。
今、政府・金融機関・そして年金機構までが莫大な年金積立金を使って株式や外国投信などを購入している。そして今、株も上昇はしているが・・・。この株高いつまで、どれだけ上がるのか・・・。上がった後はどうなるのか・・・?…考えるだけで恐ろしい。
しかし、老後資金の貯蓄の重要性は、今まで以上に高まっていることは確かだ。実質的にマイナス金利である預・貯金に頼っていては、老後の生活はやってゆけない。何とかしなくてならないのだが・・・。
せめて、「NISA」も無力な庶民の為にイギリスの「ISA」並みには改めてほしいものだが・・・。
参考:
※1:マネー百科:金融用語辞典
http://money.infobank.co.jp/index.htm
※2:NPO401K教育協会
http://www.npo401k.org/
※3:金融庁HP
http://www.fsa.go.jp/
※4:財務省:わが国の財政状況
http://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/index.html
※5:厚生労働省HP
http://www.mhlw.go.jp/
※6:金持ち優遇 - PRESIDENT Online
http://president.jp/articles/-/14349
※7:軽減税率終了 - 楽天証券
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/info/info20131025-02.html
※8:知るぽると:金融広報中央委員会
.http://www.shiruporuto.jp/
※9:イギリスISAとの比較から学ぶNISAの制度の問題点 | ZUU online
http://zuuonline.com/archives/15169
※10:時事ドットコム:【図解・行政】基礎的財政収支の対GDP比(2014年11月)
http://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_pol_yosanzaisei20141117j-03-w330
※11:日本の財政赤字の維持可能性
http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/12j018.pdf#search='%E6%97%A5%E6%9C%AC+%E8%B2%A1%E6%94%BF%E8%B5%A4%E5%AD%97+%E5%A4%96%E5%9B%BD%E5%82%B5%E5%88%B8'
※12:自民経済再生案:日銀法改正含め連携、外債購入ファンド創設も (2)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MDKAA66KLVRL01.html
※13:米国の所得格差が金融危機で拡大、富は上位3%に集中=FRB
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0GZ2O420140904
※14:日本の平均
http://jpnaverage.com/%E3%82%B5%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3/post-114/
※15:総務省:統計局
http://www.stat.go.jp/index.htm
※16:高齢社会白書について - 内閣府
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/index-w.html
※17:政策解説 消費税増税分〝すべて社会保障に〟のウソ 政策部 - 兵庫保険医協会
http://www.hhk.jp/hyogo-hokeni-shinbun/backnumber/2014/0425/070003.php
危険水域にある日本の財政事情 - モルガン・スタンレー
http://www.morganstanley.co.jp/im/research/fr/121218.html
財政赤字の「ネズミ講」はいつまで続けられるか - ニューズウィーク日本語版
http://www.newsweekjapan.jp/column/ikeda/2014/11/post-891.php
少額投資非課税制度 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%91%E9%A1%8D%E6%8A%95%E8%B3%87%E9%9D%9E%E8%AA%B2%E7%A8%8E%E5%88%B6%E5%BA%A6