スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

う~ん、ノーベル平和賞、アル・ゴア へ

2007-10-13 06:21:53 | コラム
今年のノーベル賞受賞者は、今週相次いで発表された。世界の注目はスウェーデンに集まった。

そして今日はノルウェーのノーベル委員会平和賞を発表。数日前から噂はされていたが、受賞者の一人は前アメリカ副大統領(民主党)のアル・ゴア。地球温暖化・気候変動の警鐘を世界的に鳴らしたドキュメンタリー映画『An Inconvenient Truth』が評価されたのだ。彼は『Live Earth』というミュージカルも企画している。受賞者のもう一人は、個人ではなく団体で、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)となった。

写真の出典:SVTニュース

「アル・ゴアが受賞」のニュースを聞いたとき、正直ちょっと残念だった。何もアル・ゴアの活動や業績がノーベル賞に値しないと考えているからではない。IPCCによると「現在進んでいる温暖化は人間の活動による影響だと90%の確率で言える」との結論に達している。温暖化の速度を少しでも遅くし、人間の生活環境への影響を少なくするためには、地球規模での協力が不可欠だ。その重要性を若干の誇張を交えながらもドキュメンタリー映画という形で訴え、それまであまり関心を示さなかったアメリカを含む人々の共感を買うことに成功したアル・ゴアの業績は、それ自身として讃えられるものだと思う。(映画内での誇張や事実誤認もいろいろ批判されてはいますが、私の見解の詳細についてはこの記事のコメント部分をご覧ください

ただ、アル・ゴアは既に世界的な注目を浴びてきた。彼のドキュメンタリー映画はオスカー賞も受賞した。ヨーテボリ市の環境賞も来年1月に彼に授与されることに決まっている。
以前の記事:Al Gore、ヨーテボリ国際環境賞を受賞(2007-08-17)
それに、いまさら多額の賞金をさらにもらったところで、彼の活動にはあまり意味がないだろう。

むしろ、世界の片隅で平和の実現や不当な抑圧からの解放に努力している草の根の“無名戦士”を讃えて欲しかった。今年の平和賞に名前が挙がっていたのは、135個人、および46団体。

例えば、カナダ系イヌイット人のSheila Watt-Cloutier。地球温暖化の影響で少数民族の生活が脅かされ、また彼らの生活の拠り所であるホッキョクグマやアザラシも危機に瀕しているため、少数民族の権利を守るために闘ってきた。

他には、
・ベトナムの僧侶Thich Quang Do。自国の共産政権を批判する民主活動家。
・ポーランド人女性Irene Sendler。第二時世界大戦中に、ワルシャワのゲットーから2500人のユダヤ系の子供を救った。
・名前を忘れたけれど、中国とロシアのチェチェンで活動している人権活動家。(後で補足します)

だから、むしろこのような人に授与すべきだったと私は思う。

それから、候補に挙がっていた、もっとビッグな名前としては、貧困撲滅キャンペーンをやっていたU2のロック歌手Bonoや、フィンランドの元大統領で紛争調停役のMartti Ahtisaari。彼は、長年の懸案であったインドネシア政府とアチェのゲリラの間の調停を2005年に成功に導いた。現在は、旧ユーゴの一つの州で今はセルビア共和国に属すものの事実上、国連統治下であるコソボ自治州の将来を決める重要な役目に就いている。それから「EU」も組織として候補に挙がっていたらしい。

(続く)