スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

ビルマ動乱-中国の役割

2007-10-01 08:24:52 | コラム
ビルマの軍事政権に対する世界各国の圧力がカギとされている。

事態が深刻化する前から、国連では安保理が非難決議を発することが期待された。しかしロシア中国が拒否権を発動する構えを見せたため実現しなかった。また、武力行使が行われ犠牲者が出始めた今では、国連として経済制裁をすることが期待されたが、ここでもロシアと中国が反対している。

一方、EUアメリカは独自の対応を打ち出している。EUは火曜日の段階で「武力が行使された場合には、ビルマに対する経済制裁を行使する」と通告した。またアメリカは木曜日に、ビルマ政府高官の経済資産を凍結する決定を発表した。東南アジアのASEANも非難決議と同時に、すべての政治犯の釈放と民主体制への移行を要求している。

これらの国々のこうした動きも重要だが、それ以上にキャスティングボードを握っているのはやはり中国だ。ビルマの軍事政権に対して政治的・経済的、そして軍事的支援を行っているのは中国だからだ(大量の武器輸出を行っている)。しかし、ビルマ同様、民主主義や言論の自由を認めていない中国政府は、ビルマ政府に対して積極的な批判を行っていない。中国はビルマの石油資源に目をつけ、多額の経済投資を行ってきた。そのため、アフリカ・スーダンのダルフール地方の騒乱の時と同様、人命や人権よりも自国の経済的利益が損なわれることを最も恐れているのだ。

ただ、一つの期待がある。来年の北京オリンピックがあるため、中国は諸外国の批判に嫌でも耳を貸さなければならなくなってきている

北京が2008年五輪の開催地に選ばれたとき、少なくともヨーロッパでは「基本的人権や民主主義、言論の自由を認めない独裁政権に、またとないプロパガンダの晴れ舞台を用意するようなもの」だとか、1936年のベルリン・オリンピックや1980年のソ連でのオリンピックと並べて批判する声も聞かれていた。一方、「そんな晴れの舞台だからこそ、中国はそれを完璧に成し遂げたいとするだろう。だから、国としてのイメージ向上にも気を使うだろうし、外国の批判にも耳を貸し、人権を守るようになるだろう」というオプティミズムがむしろ多数だった。

実際、中国はイメージ向上に躍起だ。批判されていた死刑もずいぶん数を減らしているし、大気汚染の抑制や懸案である中国製品の安全性向上にも力を注ぐ。(一方で、イメージ悪化に繋がるものは物置に押し込めてしまえといわんばかりに、民主活動家や体制に批判的なジャーナリストの封じ込めを行っており、人権侵害の悪化も懸念されている)

だから、ビルマへの対応においても、欧米からの批判を極力避けたい。今のところ、ビルマに対しては消極的な関与しか打ち出していないが、もし欧米が中国に圧力をかけ続ければ、事態の好転を期待できるかもしれない。(ただ、彼らがビルマの民主化を要求することは考えられないが・・・。)

ロンドンを始め、ヨーロッパの大都市ではビルマの軍事政権を非難するデモが行われている。ストックホルムでも、ビルマからの難民を中心に集会を行っている。そして、中国大使館の前で抗議活動を行った。SVTの映像

また、ちょうど今、ヨーテボリで『本と図書館の見本市』が盛大に行われているが、ここに招かれた南アフリカの聖職者でノベール平和賞受賞者(1984年)の Desmond Tutuは基調講演の中で「中国よ、ビルマを救えるのはお前しかいない。もし行動を起こさないのなら、私は2008年五輪に対するボイコット活動に参加することも辞さない」とまで述べた。

もしかしたら、ビルマの騒乱のために北京オリンピックが危うくなるかもしれない…!?