スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

同性の結婚 - 結婚法からの性別規定の撤廃

2007-10-27 07:40:06 | スウェーデン・その他の社会
同性による『結婚』がスウェーデンでも近く法的に認められる見通しだ。オランダやベルギー、そしてアメリカでもニュージャージー州やマサチューセッツ州で、既に認められている。スウェーデンでは、政府の調査委員会が今年の春に改革案を提示しており、「性別規定をなくした結婚法(könsneutral äktenskapslag)」のための法改正が来年にも行われる可能性が高い。ただ、教会関係者を始め、反発も強く、これまでも大きな議論になってきた。

スウェーデンではこれまで、『結婚』できるのは異性の男女のみ、「結婚法」で定められてきた。しかし、「パートナー法」が1995年に制定され、同性であれば『パートナー』という形で、結婚した夫婦に準ずる権利と義務が認められることになった。その後、同性のパートナーにも養子を取って里親になる権利や、体外受精によって子供を持つ権利が認められたため、『結婚』も『パートナー』も法的には同等となった。

ちなみに、スウェーデンでは「結婚式を取り行う権利(vigselrätt)」教会などの宗教団体と、市役所などの行政機関に与えられていた。そのため、結婚の儀式を宗教的に行いたい人は教会などの宗教施設で行い、それを好まない人は市役所で行うことができた。一方、『パートナー』になるための手続きを行う権利は、市役所などの行政機関だけに与えられてきたため、宗教団体はこれまで関与する必要がなく、大きな議論は起きなかった。

しかし『結婚』と『パートナー』が法的に同等となった今、この区別自体をなくし、両者の概念も、それを規定する法律も統一させてはどうか、という主張も当然ながら出てくる。ただ、『パートナー』という概念が「法的な契約」に過ぎないのに対し、『結婚』という概念は「宗教上の取り決め」をも歴史的に含むものであり、ほとんどの宗教において「『結婚』は異性の男女が行うもの」という明確な、もしくは暗黙の了解がある。そのために、『結婚』と『パートナー』の垣根をはずすことに対しては、宗教界や保守勢力からの反発が挙がっている。

区別をなくす一つの方法は、①「結婚法」を撤廃し、同性・異性を問わず、すべての人に「パートナー法」を適用する、というもの。この場合、『結婚』という概念は法律によってはもはや定義されず、その概念の持つ意味合いは、それぞれの個人やその人が属する宗教に任されることになる。宗教的な意味での結婚をしたい人は、パートナーになるという法的手続きをした上で、教会で儀式を行う、という形になる。

区別をなくすもう一つの方法は、②『パートナー』という概念のほうを『結婚』という概念に包括する、というもの。もしくは言い方を変えれば、『パートナー』という概念をも包括しうるように『結婚』という概念を定義しなおす、ということだ。この場合、『結婚』は「法的な契約」に限定され、『宗教上の“結婚”』とは切り離されることになる。そうなると、教会は「結婚式を取り行う権利(vigselrätt)」をもはや持たなくなる、と考えられている。すべての人々は市役所などで「法的な結婚」を行い、そのあと、希望者だけ教会などで「宗教儀式」を行うことになる。

結局、①も②も「法的な契約」「結婚に付随する宗教的意味合い」を分けてしまうことには変わりなく、単なる言葉遊びのような気もする。しかし「『結婚』は異性間で行うもの」という考えに固執したい人(特に宗教関係者)は、“同性間の結婚”をも『結婚』と呼んでしまうことにはやはり抵抗がある。そのため、妥協したとしてもせいぜい①まで、と考えているようだ。

一番最初に挙げた国々では、①もしくは②の方法が採られてきた。

しかし、スウェーデンはさらにその先を行きそうだ。つまり、②のやり方を採用した上で、さらに、教会にも「結婚式を取り行う権利(vigselrätt)」を残す、というやり方が取られそうだ。この場合、同性結婚を教会で取り行うことを、教会関係者が認められるか? が鍵になってくる。

残りは次回!
(余談:左上の“カレンダー”が何と左右対称! 意図したわけでもないのに!)