スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

口内喫煙タバコ 「スヌース」

2007-10-02 07:19:33 | スウェーデン・その他の社会
世界中で女性の喫煙率が男性の喫煙率を上回っている国は、おそらくスウェーデンだけだろう。下は以前ここで紹介した統計だ。

以前の記事:男性よりも女性の喫煙率が高い国(2007-07-22)

その一番の理由は、おそらく「スヌース(snus)」と呼ばれる、口に含むタバコが普及しているためではないかと思う。タバコが、紅茶のテーパックの10分の1くらいの大きさの紙袋に入れられており、そのまま上唇と歯茎の間に挟む。すると袋からニコチンがジワジワと染み出てきて、それが歯茎から体内へ吸収されるのだ。


スウェーデンの大手・Swedish Matchのページ(日本のJTのようなもの)
(ここでは「嗅ぎタバコ」と書いてあるけれど、嗅ぐわけじゃなくて実際に口に入れるのだから訳がよくない。スモークレス・タバコ、無煙タバコ、口内喫煙タバコ・・・? 他によさそうな日本語ありますか?)

スウェーデンでは喫煙男性の多くがこのスヌースを使用している。時と場所を構わず、周りを気にせずにニコチンを摂取できるためだ。スヌース使用者は上の喫煙率に含まれていない。一方、それほどおしゃれだと思われないせいか、喫煙女性への普及は低い。これが、女性の喫煙率のほうが高い一つの原因ではないかと私は思う。

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スウェーデンへ来てからまだ1週間の頃に、スウェーデン人に勧められて試してみたけれど、タバコを吸わない人間にとっては味も臭いも異様で、すぐに口から出した。

私の第一印象は「あ、これ馬糞だ」。だったら、お前、馬糞を食べたことあるのか、って? 私の小学校の頃の通学路の周りには畑が広がっていて、あちこちに肥料用の馬糞が積み上げられていた。中のほうでは発酵が進んでいて、寒い冬の日でも湯気が立ち上がっていた。その異様な香りにそっくりだったし、そういえば、雪合戦のようにお互い投げ合って、たまに口に入ったこともあった覚えがある。そのときの味も、まさにスヌース・・・!? だから、そんな遠い過去の記憶が呼び戻されたのだ。

先日、日本から友達が訪ねてきた。タバコを吸わない彼も、このスヌースを口に入れて試していたが、3分くらいしてみると、ソファーの上でグッタリしていた。頭がクラクラして来たのだという。「吐き気がするほどではないけど、決して気持ちがいいものではなかった」と言っていた。これがニコチンの威力なのだろう・・・!

しかも彼が口にしていたのは、普通のスヌースではなくラクリス(licorice)味つきのスヌース。「ラクリス」とは、漢方の甘草(カンゾウ)でスウェーデンでは黒色のキャンディーに含まれている。それが苦手な彼にとっては、まさにダブルパンチだったのだ。(ラクリス=甘草の情報をくれたストックホルムのSさん、ありがとう)

煙を出さないので、吸う本人も肺を汚す心配がないし、副流煙で他人を困らすことがないスヌース。スウェーデンの新しい輸出産業か・・・? と思ったら、実際、日本でも買えるそうですよ。
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でも、口内癌のリスクはあるとのこと。

それから、小袋に入ったタイプのほかに、葉っぱ自体を指先で丸めて、上唇の下に入れるタイプもある。でも、しっかり指で固めないと、たまにボロボロになって、上唇からはみ出てくることも・・・。

いくらハンサムなスウェーデン人でも、こんな「お歯黒」でニヤッ、と微笑まれたら、やっぱり幻滅ですね!(これじゃ、まさに馬糞だ)