スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

ビルマ関連

2007-10-05 05:57:07 | コラム
ビルマに関して少しだけ。

ヨーテボリ大学国際研究学部(School of Global Studies)に所属し、ビルマに詳しいスウェーデン人研究者Per Lundberg氏の講演が18:30からあったので聞きに行ったが、ビルマに政治的・経済的・軍事的利害関係を持つ中国との密接な関係のほかに、アメリカのUnocalやフランスのTotalといった石油会社がビルマに対して行ってきた多額の投資も大きな問題だという。投資のほとんどが軍事政権のふところへ収まり、彼らの独裁体制を強固なものにする一方だという。彼らの資源開発の過程で、軍事政権による自国民の強制労働が行われているという。

一方、日本との関係はどうなのか、彼に聞いてみると、日本はビルマにとっての最大の援助国だ、という答えが返ってきた。日本の援助の多くは、美術館建設や遺跡保存など、文化的プロジェクトが多いが、軍事政権側は日本からの援助をうまく利用し、あたかも自分たちの威光でそれらのプロジェクトが実行された形にしているという。そのため、いくら文化的援助とはいえ、軍事政権の正統性を国民に示すための道具にもなっている、との指摘をしていた。また、日本のこれらの援助もビルマの政権に対しては一定の範囲で大きな意味を持っており、日本の外交圧力によって軍事政権に影響力を及ぼすことも可能だ、との指摘があった。現に、かつてスー・チー女史が一時的に自宅軟禁を解かれた際には、日本政府の圧力が背後にあったという。

また、ビルマに対する経済制裁の是非についてだが、一口に経済制裁といっても、国家間の取引から、民間の企業による貿易や投資、さらには、人道的援助など幅広い分野がある。先日、頂いたコメントの中に「経済制裁は貧しい人々の人命に関わる」との指摘があった。しかし、先日のスウェーデン・ラジオのルポタージュが伝えるところでは、「ビルマに対する経済投資を凍結すること」むしろスー・チー女史を始めとする民主活動家やビルマ亡命政府などが諸外国に対して長い間、要求してきたことであったという。理由は、やはり軍事政権の経済的基盤を強固にするだけで、国民のためにもビルマの民主化のためにも、一切貢献しないからだという。だから、やはり投資取引や貿易取引の停止や、政府関係者の海外資産凍結などという形での経済制裁は、ビルマの人々にも支持される可能性が高い気がする。