40年余、お付き合いのあった近所の老婦人が2011年の11月に、92歳で旅立って行きました。最後までキラキラ輝いていて魅力的な方でした。
そのご婦人から10年位前に頂いたジャーマン・アイリスが、今年も上品な色合いの花を咲かせました。
その花を見ると彼女のことが思い出されます。
女性が年をとっても美しく輝くのは何故かと考えさせる方でした。
自宅から出棺のとき、その美しいお顔の周りに家内と一緒に沢山の花々を入れた事を思い出します。
どんな女性でも老いれば容色が衰えます。しかし美しい、女らしい精神の灯を燃やし続ければ何時までも魅力的な女性でいられるのです。
彼女とは、庭に咲く花を通しての軽い挨拶からお付き合いが始まりました。
家内の文学の会に30年余も通っていました。家内は知的で上品なその方が大好きのようでした。私は家内の話を通して彼女をとても親しく感じていました。
よく旅行に行ってはおみやげを私の家へ届けてくれました。私が玄関に出ると綺麗な、丁寧な言葉で話します。
帰ったあといつもああ、美しい女(ひと)と話が出来て良かったと思ったものです。電話にたまたま私が出ると、優しく挨拶します。80歳以上になっても声の美しい方でした。少女のような恥じらいの気持ちを持つていました。
いつまでも好奇心が強く美術関係の展覧会や音楽会へ出かけるのです。和服も洋服もお洒落に着こなし、挙措の美しい方です。本をよく読み、国内外の旅行もよくします。
自宅の庭には花々を絶やしません。その花々の中からジャーマン・アイリスの株を分けて下さったのです。
知り合ってすぐに、家内と何度か自宅へ招んでくれたのでご主人とも話し合ったことがあります。物静かで思慮深い感じの方でした。しかし数年後に亡くなってしまいました。
彼女は西日本のある町の大きな酒蔵のお嬢さんとして育ちました。ご主人との間には一人娘がいて、孫娘が2人、ひ孫が6人います。良い家族に囲まれていつもやさしく微笑していました。
その彼女が、2011年の秋に亡くなり、近所が急に淋しくなりました。
今日は頂いたジャーマン・アイリスの今年の花の写真をお供えしてご冥福をお祈り致します。どうぞ安らかにおやすみください。近所の私も、家内とともに時々お祈りいたしております。
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