山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

北岳に生育するシダ植物 ~標高2,800m付近から山頂まで~  令和1年10月5日-6日

2019年10月09日 | シダの仲間
 大樺沢左又上部のハシゴを登りかけたあたりで手と足が攣ってしまったがなんとか午後1時半に八本歯のコルに登り着いた。ここから本日宿泊予定の北岳山荘までは普通に歩けば1時間半くらいであろうが、この先がこの日の本番の高山性シダの生育地である。探すのが難しい小さなシダが多いので目を凝らして歩かないと見逃してしまう。3時間かけて北岳山荘まで行きたいと思うがそれでも時間が足りないだろう。


    八本歯のコル付近で見つけたシダ。コスギラン発見、と思ったが紐状に伸びているこのシダはそうでは無い。


    ヒカゲノカズラの系統であるが葉が細くまばらについていることからエゾヒカゲノカズラではないかと思う。胞子穂を見ないと確定できない。来年以降への課題である。


    3度目の探索なのでだいぶ目が慣れてきた。タカネシダ(オシダ科)は裏を見なくても判別出来るまで進歩した。山梨県絶滅危惧ⅠB類のシダ。


    もう枯れかけているが、羽片中央に円形のソーラスを付ける。


    アオチャセンシダ(チャセンシダ科)も山梨県絶滅危惧ⅠB類。


    このシダは常緑性なのでこの季節でも青々とした株が残っており、石灰岩地を好むという特徴がある。


    羽片の中央付近に線上のソーラスを付ける。時としてソーラスが熟すと山盛りになっていることがある。


    軸の関節は確認していないが、おそらくトガクシデンダ(ナヨシダ科)と思われる個体。山梨県絶滅危惧ⅠB類。


    紛らわしいのがこのナヨシダ。トガクシデンダよりもやや大型で葉が細かい。山梨県絶滅危惧Ⅱ類。


    枯れかけている葉の裏にはソーラスがたくさん付いている。


    トガクシデンダとの決定的な違いはこの軸の根元付近に関節と呼ばれるつなぎ目が無いことである。


    目を凝らして探していたのがこのシダである。ナヨシダともう1種類・・・。


    ヤツガタケシノブ(イノモトソウ科)。見つかったのはこの場所だけだった。山梨県絶滅危惧ⅠA類。ソーラスは確認したが場所が悪く撮影は出来なかった。


    同じ場所のその奥にもうひとつ変な葉のシダが隠れていた。


    ソーラス無し。

 ヤツガタケシノブの奥に隠れていたシダは今回探していたもののひとつ、イチョウシダではないかと思ったのだが、ソーラスが付いておらず確定は出来なかった。そもそも同じ場所にナヨシダとヤツガタケシノブとイチョウシダの3種類が並んで生育しているのは変である。良く画像を見直してみると、イチョウシダらしき葉の右隣りにあるヤツガタケシノブの葉の1枚がこのイチョウシダらしきものの葉とそっくりである。そういう目で見ると、イチョウシダらしき葉の一番先端の葉はヤツガタケシノブに似ている。これはまだソーラスを付けない幼弱なヤツガタケシノブの可能性がある。いずれにせよソーラスを確認しないことには確定できず、来年以降への課題ということになる。


    標高3,000m付近にあったこのシダ。


    ソーラスを見るとどうやらミヤマヘビノネゴザのようである。こんなところでも生育するのか、と感心してしまう。


    こちらは標高2,900m付近で見たもの。


    ミヤマワラビ。林の中を好むのかと思っていたら森林限界を超えたところでも生育していた。たくましい。


    これもきっちりと撮影しておきたかったシダ、キタダケデンダ(イワデンダ科)。8月に訪問した際に青々とした株があったがカメラの電池切れでスマホ写真しか撮れなかった。


    山梨県絶滅危惧ⅠA類の貴重なシダである。


    葉と葉軸には毛が生えているが、8月に見た時より薄くなっている気がする。


    ソーラスは羽片の辺縁寄りに配列する。中軸には薄茶色の鱗片あり。


    ソーラスにも毛が生えている。


    そして今回の一番の課題だったのがこのシダ。一見コケの仲間のように見えるがシダである。


    白い花のように見えるのは無性芽である。


    マクロ撮影しトリーミングした無性芽。変形した小さな花のように見える。胞子嚢は葉の間に付いている白い楕円形のツブツブ。胞子を飛ばす時は2枚貝が口を開けるように割れる。


    ではこれはヒメスギラン(山梨県絶滅危惧ⅠA類)なのか、それともコスギラン(同ⅠB類)なのか?


    図鑑によるとコスギランの葉は根元部分が幅広で先端部が急速に細くなり(いわばタケノコ型)、ヒメスギランは直線的に細くなる(いわば針型)と書かれている。この株はヒメスギランと見て良さそうである。


    おそらくこれもヒメスギラン。


    ではこれはどうなのか?葉の形を見ると幅は広いものの直線的に先端が狭くなっているように見えるが、ネット画像ではこれはコスギランと分類されているようである。どっち?分からない。


    それとも同じ場所に2種類生えているのか?

 マクロ撮影してきた画像を拡大して再三見てもどちらだか分からないものがあるが、半分はヒメスギランであることは間違いないと思う。いずれにせよ、まだこの場所でしか見ていないので他の場所に生育しているものを探し出して良く見比べることが必用不可欠である。まだシダを見始めたばかりのレベルでどちらか見分けるのは時期尚早であろう。これもまた来年以降への課題である。それにしてもシダ植物は胞子で増殖したり無性芽で株を増やしたり、さらには木の上に逃げていった着生シダもある。どれも同じに見える目立たない植物ではあるが、ラン科植物と同様に多様に分化して発達を遂げてきた凄い植物だと見れば見るほど感心させられる。


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北岳に生育するシダ植物 ~2700m付近まで~  令和1年10月5日ー6日

2019年10月09日 | シダの仲間
 標高3,194mの日本第2の高峰北岳は様々な高山植物が生育している貴重な山であるが、また同時に様々なシダ植物も生育している。高山性のシダだけでなく山頂付近からトラバース道周辺には石灰岩を含む岩があり、石灰岩地を好む特有な植物とシダが生育している。キタダケデンダが見つかったことから昨年から興味を持ち始めて見回っているシダ植物だが、今年見て回った渓谷のシダとは全く違う種類のものが北岳には生育している。まだ分からないものばかりで図鑑とネットを駆使して調べているがそれでも不明のものが多い。標高1,530mの広河原から北岳山頂まで、目に付いたシダ類は片っ端から撮影してきたが、時間節約のためカメラ手持ちで撮影したものはほとんどがピンボケやブレていて使えないものが多い。画像多量なので標高2,700m付近までと森林限界を超える標高2,800m以上に分けて記載する。今回も間違っている記述が多々あると思うのでそのつもりでご覧いただきたい。


    広葉樹林帯の下にゴソゴソっと群生しているこのシダ、シラネワラビだと思う。


    これと同じものだと思ったのだが少し違うようだ。


    円形の小さなソーラスが小羽片の辺縁寄りにまばらに配列。これはイッポンワラビ(イワデンダ科シケチシダ属)と思われる。


    これも似ているが葉先が丸っこくて軸が黒い。


    根元の鱗片は黒い。


    薄い舟形のソーラス。これはヤマイヌワラビ(イワデンダ科メシダ属)と思われる。


    これもワラビと名の付くシダ。富士山御中道を歩いた時にたくさん見かけたが何だか分からなかったシダ。


    ミヤマワラビ(ヒメシダ科)。


    これもワラビの名が付きそうに見えるのだが・・・


    小さなソーラスが小羽片葉軸寄りに配列。最下羽片が大きく張り出しているのは確認しなかったが、尾白川渓谷や西沢渓谷で見てきたホソバナライシダと思われる。


    ひときわ目立つ大きなシダ。


    三日月状のソーラスがたくさん付いている。オオメシダ。


    大きくて目立ち、緑色が鮮やかである。


    これも大きくて目立つ。オシダのようだが中軸が黄緑色である。


    根元の部分の鱗片


    ソーラスは小羽片の中央寄り、かつ葉軸寄りに配列している。これはミヤマベニシダ(オシダ科オシダ属)らしい。


    似ているがやや光沢があって葉が尖っているように見える。イノデの仲間か?


    やや大き目なソーラスが小羽片中央寄りに配列。かつ、葉の上半分にのみ付着している。これはホソイノデ(オシダ科イノデ属)と思われる。


    形は似ているがこちらは二回りくらい小さめのシダ。


    残念ながらソーラス無し。


    標高が上がって樹林帯を抜け出たあたりで見たこのシダも同じものだろう。


    葉軸中央寄りにソーラスが配列。良く見ると半円形のものがある。おそらくこれはミヤマヘビノネゴザ(イワデンダ科メシダ属)と思われる。

 樹林帯の中のシダは似たようなものが多く、ソーラスを見るとそれぞれに形が違うので何が何だか分からず、とにかく写真を撮りまくってきた。画像を見ながら調べてはみたものの、これが正しいのかどうかは全く自信が無く、書いた直後にもうシダの名前を忘れてしまっている。複雑多岐にわたるシダの仲間を短期間で頭の中に詰め込もうというのは土台無理な話である。

 樹林帯を抜け出し大樺沢上流の草地に抜け出た。ここから先はそれほどシダの種類は多くないと思われるが、それでもわからないもののオンパレードである。


    草原の中で目立っている大型のシダが現れた。残念ながら全て枯れかけている。


    ソーラスを見ると大型のソーラスが小羽片の真ん中に配列している。これが見たかったシダのひとつ、カラフトメンマだろう。


    根元付近の鱗片はたくさん付着していてゴツく見える。


    手持ちで撮ったのでピントが甘いうえにソーラスがきっちり撮れていない。来年はこのシダがもっと青々と茂っている頃に訪問してみたい。


    そしてもう1種類、この草原内で存在感を表しているシダ。


    円形、ないし楕円形のソーラスがびっしり付着。


    鱗片は真っ黒。


    これはミヤマメシダ(イワデンダ科メシダ属)。


    そしてもうひとつ、ダケカンバ以上に紅葉しているこのシダの群生。


    これもソーラスがきっちりと撮れていないがオオバショリマ(ヒメシダ科)と思われる。

 大樺沢の草地を過ぎていよいよ梯子を登って八本歯のコルである。ここで足と手が攣るというアクシデントがあったがなんとか八本歯に到着した。ここから先がこの日の本番のシダ探しだが、足が遅いうえにアクシデントがあり予定よりもだいぶ遅くなってしまった。何度も往復して探し物のシダを探索する時間は無さそうである。(2,800m以上編に続く)


    
    
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