翌朝、奈良観光に出かける二人を最寄り駅まで送って行った。
電車がすぐに来たので、カトリーヌは「じゃあね」と走った。その走りっぷりを見て、意外に?若い?運動神経がいい?と感じたのだが、
それはまた後で分かる時がやってくる。
二人は昨夜のおさらいをするように、忠実にアドバイス通りに観光を楽しんで帰ってきた。
ワインのお礼と言うわけでもないのだろうが、「生チョコ」がおいしそうだったからとお土産にいただいた。
この日は、ワインではなく、日本酒を出すことにした。
ワイン通の人は、日本酒もよく味が分かるようで、2種類のお酒を何も言わずに出して「どちらがおいしい?」と聞いたら、「大吟醸」を指差した。
そして大吟醸について説明をしたら興味深く耳を傾けていた。
食事が終ったあと、いつも習字や、折り紙、お茶の真似ごとをするのが慣例だが、
このカップルの反応は特徴が?あった。
まず、お茶を点てる見本を見せた。とは言ってもポットのお湯で茶せんを使う体験くらいの簡単なものである。
カトリーヌは好奇心旺盛、すぐにやってみて嬉しそうだった。
今度はリシャールの番、しかし彼はこう言った。
「私は料理はしないんだ」と。料理?お茶を点てるのはもちろん料理ではないのだが、「男子厨房に入らず」なのか?
彼はきっとコーヒーを入れることもないのだろうと想像した。
そして習字だ。
何とカトリーヌは字を横にして書いていく。こんな人は初めてだった。
もちろんそれぞれの個性を優先したいので、そのまま続けてもらった。
こういうところが好きだ。何と独創的な人だろう
それに反して、このムッシュ、「ぼくはやらない」と固辞した。
時々いる「恥をかきたくない」思いの強いフランス人だ。英語を話さないと言われるフランス人、多くは下手な英語が恥ずかしく話さないのである。(ムッシュA, ムッシュB、ムッシュC)
最終日は、折り紙だった。
何種類か折り、もちろんカトリーヌはすべてにおいて意欲的に取り組む。
しかしムッシュはしない。
でもみんなが喜ぶ最後の「飛ぶ鳥」のときは、「やらないと後悔するよ」と勧めた。
「やると後悔する」と彼は答えたが、強引に参加させた。
そして最後の羽をはばたかせるときになり、自分の作った鶴がバタバタしたとき、「オーウイ!!」と満面の笑み、子供のような彼だった。
しかし一瞬「喜んでしまった自分」を恥じるように?真顔に戻り、「まあうまくいった」と冷静な顔つきに戻したのは今思い出しても可笑しい。
彼を見て、そういうフランス人が多いのだろうと想像もした。
プライドの高さは、無邪気な子供の一面を隠す裏返しであったのだ。
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