厳島神社は震災直後ということもあって、本当に観光客が少なかった。日本人はおろか、少数のアジア圏の観光客を見たくらいで、こんな宮島は珍しいのではないだろうか。
ジュリアンも真っ先にそのことを感じたようで、ゆっくり何かを心に刻むようにカメラのシャッターを切っていた。
入口にあった木彫の大きな白馬をみて、「これは神社とどういう関係があるのか?」と尋ねられたので、神社の方に聞いてみたが答えらしい答えは返ってこなかった。
フランス人にとって馬は他の動物とは違う特別な動物であるらしいので、興味深かったようだ。
この種の質問はよくあることで、普段何気なく当たり前の風景と思っている事が、外国人から見れば不思議なのだ。そして大概の場合、説明に困ってしまい、改めてネットなんかで調べてみたりする。
さて、お腹もすいてきたので、食事をすることにした。
彼は「温かい牡蠣なんて、フランスにはない。」と言っていたので、牡蠣が無理なら穴子にしようかと思っていたところ「牡蠣を食べてみる。」というので、牡蠣を食べることにした。
彼は牡蠣ごはん、私はカキフライを頼んだので、少しずつ交換し、焼きがきも注文した。
「どれもとてもおいしい」と、初めて食べる「温かい牡蠣」は彼をとても喜ばせ、帰国したら家族や友人に知らせたいと言っていた。またこの店には牡蠣に合うワインということで、フランスのワインリストがあることにも驚いていた。
それからもみじまんじゅうをいくつかお土産に買い、宮島を後にした。
そして、広島駅に戻り、広島の市内観光へと向かった。広島の平和公園を訪れる観光客も震災の直後のせいからか、少なかった。
語り部と呼ばれる方が何人か、ご自身や家族の方から伝え聞いた体験談を話していた。
それとは別に何人かの人が、外国人とみては話しかけている。最初はどこの国から?とか普通の質問をしているのだが、どうやら宗教関係のようだと悟ったジュリアンは言葉少なに離れた。
爆心地のたくさんの千羽鶴を見て、資料館へと向かった。
ヴァンサンは痛ましい惨状を目の当たりにして心が痛んだと感想を述べていたが、私から見て彼は比較的淡々と見ていたように思う。
フランス海軍に属する彼は、戦争というものをまた別の視点でとらえていたのかもしれない。
こうして山口・広島を一緒に旅をして、帰路へと着いた。
この後奈良での数日我が家での滞在で、彼とまた距離が近くなることを感じるのだった。
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