フランス人観察記録

日本人から見て解ってきたフランス人の考え方、行動についての覚書

あるマダムに感じる博愛の精神

2011年05月21日 | パリ17区

彼女は夫、二人の息子と四人で日本を旅行していた。
私たちは、奈良で出会った。
彼女たちはレンタサイクルで廻っていて、自転車を停めて、昼食の場所に奈良市内のあるカフェを選んだ。
ちょうどその店で、私はお茶を飲もうとしていた。

運よく隣り合わせの席になった。
彼女たちはメニューを見てあれこれ相談していた。
私が「お手伝いしましょうか?」とフランス語で尋ねたら、「あなた、フランス語話せるの?」と上品な笑顔で答えてきた。
そしてそこへ店の女の子が、流暢な英語で「説明しましょうか?」と注文を取りに来た。
彼女はその子に向かって、その子を決して傷つけない言い方で、「ごめんなさいね。この方に説明してもらうわ。」と英語で答えたのだった。

たどたどしいフランス語で説明する私。終始笑顔で気長に聞いてくれた。
そしてそれぞれ四人、別々のメニューを選んだので、女の子に私が注文をし、やがてそれらが運ばれてきた。
「パーフェクトよ。」とまた喜んでくれる。


話していると、その息子たちは、ゲームや漫画によって日本が好きで、日本語も少し勉強していると言うことだった。

息子の名前は「ルイとシャルル」だった。思わず「王様の名前だね。」と言うと、「フランスの歴史をよく知っているんだね。」と、ご主人もにっこりした。

息子さんたちは箸を上手に使っていた。それをほめると、ご主人は不得手だったようで、「私より息子の方がずっとね。」と苦笑いをした。


フランスに行ったことがあると話をしていると、「今度パリに来たら、うちに是非泊まってね。大きなアパルトマンだから大丈夫よ。」
もちろんその時は、社交辞令だと思った。

そして彼女は続けた。「私はね、アメリカ人と結婚して、離婚したけど、アメリカにはもう一人の息子がいるのよ。」と、またにっこりした。
現在のご主人の目の前で、こうあっけらかんと言っうのにはびっくりした。

家族の話が出たので「うちにも息子がいる。」と言うと、彼女は「そうなの?じゃあ子供の交換しない?」ときた。
この数カ月前に、メールで同じ
「子供の交換」のことを言われた経験があったので、すんなり受け止めることが出来た。


優雅で微笑みが美しいそのマダムと家族、この家族はクリスマスになると、肖像画のような写真を送ってくる。まさに華麗なる一族である。

ご主人は医師であるが、彼女がアメリカ人と離婚後、8歳年下の医学生だった当時の今のご主人との恋は、ご主人の家族から大反対にあったようだ。
しかしアメリカにいる前のご主人との間に生まれた息子は、しょっちゅうフランスに来るし、パリの息子たちとは一緒に旅行にも行くと言う。
これはひとえに、おおらかな彼女の人徳によるものではないかと思う。

フランスは博愛の精神の国であることを、彼女からいつも感じる。
彼女に何か相談ごとを投げかけると、親身になっていろいろ世話してくれたり、場合によっては関係先へ交渉にさえ出かけてくれるからである。


また彼女たちは骨董が好きで、奈良で出会った時もこれから骨董を探しにいくのだと言う話で、特に陶磁器に興味があると言っていた。

これは後のメールで判ったことであるが、彼女の父親がセーブル焼きに携わっていた人であったからのようだ。
パリ訪問の際にはセーブル美術館に案内してくれた。
フランス宮廷文化の美を伝える素晴らしいものばかりであった。


パリの高級住宅地に住むセレブなマダムであるが、彼女は来日時、一泊5000円くらいの宿にいつも泊まっていた。
感想を聞いても「静かな場所にあって、とてもよかったわ。」という。
日本ならこのようなマダムはたいてい、少なくとも星が4つ以上のホテルに泊まるのではないだろうか?
いや他のお金持ちのフランス人で、高級ホテルに泊まる人も知っている。
しかし彼女は平気のようだった。このあたりの感覚が興味深い。


彼女は私の知人の中で、ある意味「最高峰」の位置にいる。
お金持ちだからということでは決してない。

要するに私の中で「マダム中のマダム」なのである

パリ滞在編続く

 



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