そうそう、この来日は、当時彼らの13歳の孫、マテオも一緒だった。
彼らは三度目の日本だが、マテオはもちろん初めてだった。
一年前に不慮の事故で長男、つまり孫の父親を亡くし、今は母親と住んでいるということだが、その孫の寂しさを慰めるための旅行でもあった。
カトリーヌはさまざまな問題を抱える子供の教育をしていて、今は退職、Jフランソワは会社員だが、フランスのフォスターペアレンツ(養子縁組)の協会の会長をしていることもあり、長男については聞いたことがないが、二男のソフィアンは養子縁組で引き取られ、彼らの深い愛情で育てられていることがよく解る。
今回、東京で5種類くらいのアルバイトをして、生計を立てているという話や、「お父さんが本を読みなさい。」というので、最近読み始めたという村上春樹の本を持っていた。見た目はいまどき風の若者であるが、両親を尊敬していて、素直にその言葉に従っているようだ。
もちろん「思春期は難しいこともあった。」と、母親のカトリーヌが言っていたこともある。
彼らと奈良を一緒に歩き、冬季に興味を持っているJフランソワは、とりわけ備前焼がお気に入りだという。
記念に奈良の小さな店で見つけた備前の徳利を持って帰って行った。
彼は日本酒それも熱燗が好みだそうで、家にはたくさんの日本酒の空き瓶もあり、瓶の形がいいので捨てられず、それに水を入れて冷蔵庫に保存されているとつい先日一人でやってきたソフィアンが言っていた。
Jフランソワがおそらく日本が好きで、その影響をソフィアンが受けたのではないかと想像される。
Jフランソワは日本語の勉強もしていたが、最近のメールによると何とカトリーヌも勉強を始めたという。
今はフランクフルトの日本企業で働くソフィアンは、初来日の2008年から先日の再会でも成長の跡が感じられ、両親もまた喜んでいることであろう。
まだパリの郊外に住む彼らの家を訪ねたことはないが、近々実現しそうで、楽しみにしている。