[キックオフ前の雑感]
音楽用語だとばかり思っていたら、最近は(でもないか)スポーツ界でも頻繁に使われるようになった「リスペクト」という語。なかなか日本語でどんぴしゃの単語にぶち当たらないが、何となく意味することは判るし、便利だから使ってしまう。スポーツなら「リスペクト」は強いチームへの憧れ、そして尊敬の念と考えるのがしっくりきそうな気がする。
関東大学ラグビーのリーグ戦グループにあっては、関東学院は「リスペクト」を集める存在の筆頭と言っていいだろう。本日対戦する東海大にとっても「目指せ!大学日本一」のスローガンのもとに1部復帰を果たした時から常に目標であり続けたチーム。何度チャレンジしてもはね返され続けた大きな壁であると同時に、「リスペクト」の対象であったことは間違いない。挑戦を受けた関東学院にしても、力の限りチャレンジャーを叩きのめすことで「リスペクト」に応え続けてきたように思う。今の東海があるのは関東学院があったから。関東学院を倒すことで目標とする日本一の一歩手前まで近づくことができた。
でも、「リスペクト」とは、「力の象徴だけ」に留まるものなのだろうか? 長年ラグビーに親しんできたいちファンはそう考える。単純な話、力を失ったらリスペクトも失われてしまうのだろうか? チームとしてラグビーに対峙する姿勢、求めるクオリティが変わらない限り「リスペクト」は簡単に失われてしまうものではないはずだ。
果たして、両チームのメンバー発表。東海大はLO三上の復帰やルーキー(WTB石井)の初起用といったお試しに近い部分はあるにせよ、基本的にはベストの布陣。ここからの3戦は、過去4戦での反省点も踏まえつつ、チームを完成させるためにとても重要な戦いになる。中でも大事な一戦は本日の関東学院戦であるはずだ。関東学院の今シーズンの不調は十分に認識していても、「リスペクト」していたチームは当然現状でのベストメンバーで戦いに臨んでくるはずという希望も込めて。
しかしながら、関東学院のメンバー表を見て愕然とした。「これは(失礼ながら)まちがいなく3桁行くだろう。」と瞬間的に思った。なぜここまでして?という思いを禁じ得ない。東海大の関係者や選手達が受けた衝撃はそれ以上だったのではないだろうか。その時点で「リスペクト」は精神面で崩壊したものと察せられる。「なぜ、このメンバーなんだ!」と。もちろん、選ばれた選手達に責任はない。彼らを送り出した首脳陣にははっきり結果がどうなるかが判っていたはず。相手チームの力を冷静に分析することも大切な仕事のはずだから。
メンバーを知った段階で正直秩父宮に行く気持ちが萎えてしまったことは否定できない。日大と拓大が楽しいラグビーを見せてくれたとなるとよけいにそうなる。でも、しっかり「歴史」は見届けなければならない。いつもは東海大サイドを選ぶがこの日は関東学院サイドに座った。
ほどなくして両チームのメンバーが登場。いつもながらだが、試合が始まる前から東海大のメンバーは立派だ。相手の校歌が流れている間も直立不動。方や、じっとしていることが出来ない選手が半数。もちろん、大きな試合場でしかも強豪相手に試合をした経験がない選手達に落ち着けと言う方に無理がある。でも、相手に敬意を表することは最低限のマナーではないだろうか。
[前半の闘い]
さて、注目のキックオフは東海大。関東学院がボールを確保し損ねたところから東海大は一気にオープンに展開。案の定というか、関東学院の選手達はタックルにも行けないままにボールはWTBまで回りあっという間のノーホイッスルトライ。この1プレーがこの試合のすべてだった。精神面だけでなく、物理的な部分でも東海大の関東学院に対する「リスペクト」は僅か22秒で失われてしまった。「マイボールを確保したらオープンに展開するだけで簡単に取れてしまう」という現実が明らかになった時点で、東海大の選手達はモチベーションをどうやって保てばいいか悩む事になったはずだ。
関東学院の学生達が陣取った応援席の様子も異様。「ちゃんとタックルしろ!」という檄も空しく響くだけだ。選手達はそんなことは百も判っている。行きたくても行けないのは観ていても十分にわかる。そんなことは、送り出している側も判っているはずなのに何故?という想いを禁じ得ない。
観戦メモは取っているのだが、確実に東海大の得点が増えていく中で、書けることが殆どない。東海大も個人で行けてしまう分、どうしても連携や精度が甘くなる。しかし、選手達に気を引き締めろと言う方が酷だと思う。前半は8トライ6ゴールの52点で完全に3ケタペース。まだ、あと40分も残っているのだ。
[後半の闘い]
後半も前半同様にどんどん東海大側の得点板の数字が増えていく。関東学院も時折FWでボールを前に運ぶことはできているし、そういった練習を積んでいることは伺われる。だが、攻めれば攻めるほどラインに立つ人数が減っていく悪循環は免れない。そして、ターンオーバーされたらどこからでも一発で取られてしまう。ディフェンスでタックルできないのは、組織的に立ち向かわなければならない相手に個人でバラバラに対応しなければならない状況になっているから。やはり、ディフェンスは急造メンバーでは難しい。
試合終了まで残り3分を残した段階で東海大は遂に3ケタ得点を達成。記録用紙のトライを記録する欄も使い切ってしまったのは初めてだ。スコアが112-10となったところで試合は終了した。体調不良や怪我があるとは言え、ここまでチームを崩壊させる必要はなかったはずという想いを禁じ得ない。緒戦から何かおかしかった。せめて、春シーズン(交流戦)後半のメンバーを中心にして、戦術を固めてチームを熟成していけばこんなに失点することはなかったのに...
試合終了後、両チームのメンバーが挨拶を終えたところで、いつもなら東海大の主将が副将2人を引率して相手ベンチに挨拶に赴く。ところが、この試合に限ってはそんな光景は(私自身が観ていた範囲では)見られなかった。この場面がすべてを物語っているように感じた。東海大の「リスペクト」はやはり失われてしまっていたことを。
[試合後の雑感]
今回は、本当の感想文になってしまった。とにかく関東学院は失われつつある「リスペクト」を取り戻すことが急務だと思う。部員たちが陣取る応援席から飛んでくる声からも感じられたことだが、関東学院は力を失うと同時に大切な仲間(味方だけとは限らない)のサポートも失いつつあるようだ。ここ10数年に限ってもきら星が如くのOBがいる関東学院だから、彼らの支援を受けるだけでもチーム力は確実に上がるはず。だいいち母校のために一役買いたいと思っているOBが居ないと考える方が不自然だ。「創業者」が孤軍奮闘での再建に拘っている限り、チーム状態はますます混迷の度を深めていくような気がしてならない。
リーグ戦のひとつの歴史が終わってしまうのを観るのは忍びないし、それはとても哀しいことだ。
音楽用語だとばかり思っていたら、最近は(でもないか)スポーツ界でも頻繁に使われるようになった「リスペクト」という語。なかなか日本語でどんぴしゃの単語にぶち当たらないが、何となく意味することは判るし、便利だから使ってしまう。スポーツなら「リスペクト」は強いチームへの憧れ、そして尊敬の念と考えるのがしっくりきそうな気がする。
関東大学ラグビーのリーグ戦グループにあっては、関東学院は「リスペクト」を集める存在の筆頭と言っていいだろう。本日対戦する東海大にとっても「目指せ!大学日本一」のスローガンのもとに1部復帰を果たした時から常に目標であり続けたチーム。何度チャレンジしてもはね返され続けた大きな壁であると同時に、「リスペクト」の対象であったことは間違いない。挑戦を受けた関東学院にしても、力の限りチャレンジャーを叩きのめすことで「リスペクト」に応え続けてきたように思う。今の東海があるのは関東学院があったから。関東学院を倒すことで目標とする日本一の一歩手前まで近づくことができた。
でも、「リスペクト」とは、「力の象徴だけ」に留まるものなのだろうか? 長年ラグビーに親しんできたいちファンはそう考える。単純な話、力を失ったらリスペクトも失われてしまうのだろうか? チームとしてラグビーに対峙する姿勢、求めるクオリティが変わらない限り「リスペクト」は簡単に失われてしまうものではないはずだ。
果たして、両チームのメンバー発表。東海大はLO三上の復帰やルーキー(WTB石井)の初起用といったお試しに近い部分はあるにせよ、基本的にはベストの布陣。ここからの3戦は、過去4戦での反省点も踏まえつつ、チームを完成させるためにとても重要な戦いになる。中でも大事な一戦は本日の関東学院戦であるはずだ。関東学院の今シーズンの不調は十分に認識していても、「リスペクト」していたチームは当然現状でのベストメンバーで戦いに臨んでくるはずという希望も込めて。
しかしながら、関東学院のメンバー表を見て愕然とした。「これは(失礼ながら)まちがいなく3桁行くだろう。」と瞬間的に思った。なぜここまでして?という思いを禁じ得ない。東海大の関係者や選手達が受けた衝撃はそれ以上だったのではないだろうか。その時点で「リスペクト」は精神面で崩壊したものと察せられる。「なぜ、このメンバーなんだ!」と。もちろん、選ばれた選手達に責任はない。彼らを送り出した首脳陣にははっきり結果がどうなるかが判っていたはず。相手チームの力を冷静に分析することも大切な仕事のはずだから。
メンバーを知った段階で正直秩父宮に行く気持ちが萎えてしまったことは否定できない。日大と拓大が楽しいラグビーを見せてくれたとなるとよけいにそうなる。でも、しっかり「歴史」は見届けなければならない。いつもは東海大サイドを選ぶがこの日は関東学院サイドに座った。
ほどなくして両チームのメンバーが登場。いつもながらだが、試合が始まる前から東海大のメンバーは立派だ。相手の校歌が流れている間も直立不動。方や、じっとしていることが出来ない選手が半数。もちろん、大きな試合場でしかも強豪相手に試合をした経験がない選手達に落ち着けと言う方に無理がある。でも、相手に敬意を表することは最低限のマナーではないだろうか。
[前半の闘い]
さて、注目のキックオフは東海大。関東学院がボールを確保し損ねたところから東海大は一気にオープンに展開。案の定というか、関東学院の選手達はタックルにも行けないままにボールはWTBまで回りあっという間のノーホイッスルトライ。この1プレーがこの試合のすべてだった。精神面だけでなく、物理的な部分でも東海大の関東学院に対する「リスペクト」は僅か22秒で失われてしまった。「マイボールを確保したらオープンに展開するだけで簡単に取れてしまう」という現実が明らかになった時点で、東海大の選手達はモチベーションをどうやって保てばいいか悩む事になったはずだ。
関東学院の学生達が陣取った応援席の様子も異様。「ちゃんとタックルしろ!」という檄も空しく響くだけだ。選手達はそんなことは百も判っている。行きたくても行けないのは観ていても十分にわかる。そんなことは、送り出している側も判っているはずなのに何故?という想いを禁じ得ない。
観戦メモは取っているのだが、確実に東海大の得点が増えていく中で、書けることが殆どない。東海大も個人で行けてしまう分、どうしても連携や精度が甘くなる。しかし、選手達に気を引き締めろと言う方が酷だと思う。前半は8トライ6ゴールの52点で完全に3ケタペース。まだ、あと40分も残っているのだ。
[後半の闘い]
後半も前半同様にどんどん東海大側の得点板の数字が増えていく。関東学院も時折FWでボールを前に運ぶことはできているし、そういった練習を積んでいることは伺われる。だが、攻めれば攻めるほどラインに立つ人数が減っていく悪循環は免れない。そして、ターンオーバーされたらどこからでも一発で取られてしまう。ディフェンスでタックルできないのは、組織的に立ち向かわなければならない相手に個人でバラバラに対応しなければならない状況になっているから。やはり、ディフェンスは急造メンバーでは難しい。
試合終了まで残り3分を残した段階で東海大は遂に3ケタ得点を達成。記録用紙のトライを記録する欄も使い切ってしまったのは初めてだ。スコアが112-10となったところで試合は終了した。体調不良や怪我があるとは言え、ここまでチームを崩壊させる必要はなかったはずという想いを禁じ得ない。緒戦から何かおかしかった。せめて、春シーズン(交流戦)後半のメンバーを中心にして、戦術を固めてチームを熟成していけばこんなに失点することはなかったのに...
試合終了後、両チームのメンバーが挨拶を終えたところで、いつもなら東海大の主将が副将2人を引率して相手ベンチに挨拶に赴く。ところが、この試合に限ってはそんな光景は(私自身が観ていた範囲では)見られなかった。この場面がすべてを物語っているように感じた。東海大の「リスペクト」はやはり失われてしまっていたことを。
[試合後の雑感]
今回は、本当の感想文になってしまった。とにかく関東学院は失われつつある「リスペクト」を取り戻すことが急務だと思う。部員たちが陣取る応援席から飛んでくる声からも感じられたことだが、関東学院は力を失うと同時に大切な仲間(味方だけとは限らない)のサポートも失いつつあるようだ。ここ10数年に限ってもきら星が如くのOBがいる関東学院だから、彼らの支援を受けるだけでもチーム力は確実に上がるはず。だいいち母校のために一役買いたいと思っているOBが居ないと考える方が不自然だ。「創業者」が孤軍奮闘での再建に拘っている限り、チーム状態はますます混迷の度を深めていくような気がしてならない。
リーグ戦のひとつの歴史が終わってしまうのを観るのは忍びないし、それはとても哀しいことだ。