「熱闘」のあとでひといき

「闘い」に明け暮れているような毎日ですが、面白いスポーツや楽しい音楽の話題でひといき入れてみませんか?

「アルゲリッチ 私こそ、音楽!」~世界最高峰のピアニストの素顔に迫る~

2014-10-25 23:33:24 | 地球おんがく一期一会


ラグビー観戦のない週末。ということで浦和のユナイテッド・シネマに映画を観に行った。タイトルは『アルゲリッチ 私こそ、音楽!』で、世界最高峰のピアニストのひとりとして名高いマルタ・アルゲリッチの「素顔」を三女のステファニー・アルゲリッチ(監督と撮影)が捉えた作品。

マルタ・アルゲリッチは1941年にアルゼンチンのブエノスアイレスで生まれたピアニスト。10代でデビューを果たしているが、1965年のショパンコンクールで優勝したことで世界的に有名になり、以後世界のトップピアニストであり続けている偉大な音楽家だ。ちなみにステファニーはアメリカ出身のピアニスト、スティーブン・ビショップ・コヴァセヴィッチとの間に生まれている。



しかし、彼女の人生を音楽記号に置き換えると、「恋愛」→「結婚」→「出産」→「離婚」のサイクルをリピート(繰り返し)記号で括ったような感じになってしまう。それも、繰り返しは3回以上あり、旋律はそのたびに変化する。また、「結婚」と「離婚」が「同棲」と「破局」になっている場合もある。

とまあ、こう書いただけでも映画にするには辛すぎる内容。もし、現在のクラシック音楽界で10指に入るピアニストの名前がキーワードになっていなかったら、観に行く方も痛い映画になってしまう。実際にオープニングで登場するご本人のありのままの姿を観るとファンはショックを受けるかも知れない。とうに白髪のお婆さんになっていることは知っていたけれど、まったく偉大な音楽家の生涯を描いた映画らしくない始まり方になっている。

でも、そこが実の娘であるステファニーの狙いでもあるのだ。世界中で絶賛され続けている「雲の上の人」をずっと間近に見てきて、インタビューにも一切応じることのない母親の素顔を知ってもらうことが映画製作の動機でもあるようなのだ。実際、世界的なアーティストが自身の姿をさらけ出すことに躊躇していないのだが、そのことは彼女の音楽そのものでもあることがわかる。



アルゲリッチのピアノ演奏から聴かれる音楽の魅力は、ほとばしる感性をありのままに爆発させたかのような情熱的なところ。プロの演奏家が何十年も積み重ねて得るものを、何事もなかったかのように一瞬にして自分のものにしてしまう。装うことを知らないし、また、できない。映像から伝わってくる姿と音楽が(レベルは度外視して)ぴったりと一致するから不思議。おそらく、その場での閃きを正確に音にできるようにテクニックに磨きをかけた人なのだと思う。

アルゲリッチ生体験は一度だけある。ギドン・クレーメルとの来日公演で聴いたバルトークのヴァイオリンソナタは衝撃的だった。興奮の極みに達した瞬間、身体の中に電気が走ったような感じになったのは、このときが最初で(おそらく)最後。でも、実は曲が始まる前に指ならしにパラパラと弾いたバッハ風のフレーズがものすごく魅力的だったりした。どうかこのまま止めないで続けて!と叶えられるはずのない願いを込めてしまった。

さて、この映画のもっとも感動的なシーンは、フィナーレでそれぞれ父親の違う3人の娘達が母親を囲んで一同に会する場面。複雑すぎる過去を振り返ると言うよりも、母親の愛情を介して、本来は会うことさえ難しいはずの3人が、前向きに生きていこうよというような未来志向の爽やかなエンディングが強く印象に残った。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中央大学 vs 山梨学院大学(関東大学ラグビーリーグ戦G-2014.10.19)の感想

2014-10-24 00:36:38 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


埼玉県民のせいもあるが、町田市の野津田公園にある陸上競技場はとにかく遠いというイメージがあった。京王線の多摩センターからだとバスの便も悪く、初めて訪れた時は乗るバスを間違えてあわやロストになりかけるという散々な体験をしている。しかし、実は小田急線の鶴川駅からだとバスの便もよく、さほど遠くはない。終点の野津田車庫から競技場までは上り坂のカントリーロードで道しるべに従って歩いて行く。百草園駅から帝京グランドに向かう道はアスファルト舗装の急勾配だから、同じ上り坂でも季節柄気分が全然違う。本当にスタジアムはあるのだろうかと思った頃に前方に照明設備の整った立派な競技場が見えてくる。これが球技専門だったら言うことなしだなと思った。



スタジアムでは、対抗戦グループの慶應と立教が試合を行っている。帝京の台頭で対抗戦Gに水をあけられた感のあるリーグ戦Gのはずなのだが、両チームの試合を観ていると(リーグ戦Gの試合を見慣れた目には)スピードもパワーも不足気味に見えてしまう。しかし、春シーズンに日吉のグランドで観た慶應はまぎれもなく中央大を撃破したチームだった。中央大の出来が信じられないくらいに悪く、このブログでもかなり厳しいことを書いた。中央大ファンの方は気分を害されたかも知れないが、まったくといっていいほど覇気が感じられなかったことは事実。リーグ開幕戦の立正大戦でも状況の改善はあまり観られず、去年の中央大はいったいどこに行ってしまったのだろうかと感じたのだった。

翻って、今シーズン1部に復帰を果たしたばかりの山梨学院。流経大、東海大、大東大と優勝候補3チームとの戦いでは力の差を見せつけられたものの、悲願の1部での初勝利に向けて手応えを感じさせる戦いぶりを見せている。相手がここまで1勝2敗で調子の上がらない中央大ということもあり、いよいよチャレンジの日がやってきたと言っていいだろう。おそらく、これまでとは違った戦術で勝利を目指した戦いを挑んでくるに違いない。そんなこともあって、本日の主役は山梨学院になるだろうという予感を胸の内に秘めて町田までやって来た。しかし、1週間でコロリとチーム状態が変わることも珍しくないのが大学生のラグビー。そして、中央大は「魂のラグビー」とも呼ばれた過去のチームを彷彿とさせるような戦いぶりを見せた。



◆キックオフ前の雑感

慶應と立教の試合が終盤にさしかかる頃に両チームがグランドに現れてウォーミングアップを開始した。ここで目を惹いたのはスコアボード側で身体を動かしていた方のチーム。キビキビと無駄なく活発に身体を動かしている。最初は山梨学院かと思ったが、特徴的なトコキオの姿が見当たらないことから実は中央大だと気づく。そのくらいに気合が入っており、春の慶應戦とは大きく違って既に選手達の身体からは湯気が立っているような状態になっていた。方や山梨学院の方は、リラックスムードが漂っている。今後のことを考えれば、どちらも負けられないことは同じなのだが、ウォーミングアップの段階では軍配を中央の方に挙げたくなる状況になっていた。

さて、その中央大のメンバーで一際目を惹くのがSHに起用された4年生の加藤。中央大のSHは今シーズンも昨シーズンと同様に長谷川か住吉のどちらかを先発させるという形でスタートしている。そんな持ち味の違う2人が2年生となる中で、そこに上級生が割り込む余地はないように見えただけに、(日大戦で先発予定だったが急遽メンバーから外れた)住吉に替わる選手が長谷川でなかったのは意外と言える。エースの高が欠場し、ルーキー3人がスタメンに名前を連ねる中で、ベテランの加藤はチームを救う存在になれるだろうか。

一方の山梨学院は、SOに小川が起用された以外はほぼ不動のメンバー。得点源はLO(No.8)のトコキオであることに変わりはないものの、この試合からはBK選手による得点シーンも増えてくるはず。また、そうでなければ徹底マークに遭うことは必至のトコキオを封じられると攻め手がなくなってしまう。しかし、山梨学院で注目したいのはFW8人+SHの9人ラグビーに徹していた感がある戦術に変化が見られるか。攻撃のテンポアップあるいは封印されていたBKへの展開など、勝つためには過去3戦でやってきたラグビーから脱却する必要があるし、またその準備はできているはず。



◆前半の戦い/戦術を変えた山梨学院に対し、隠れたキーマン登場で活気づいた中央

山梨学院のキックオフで試合開始。序盤戦は蹴り合いとなる中で、山梨学院がFW8人+SHの9人による「ジグザグ」アタックを見せるものの、それも束の間。本日は封印されていた感があるBK展開もまじえて攻める。既定路線だったとしても、早々とFW中心のガチンコの比率を減らしたのは意外。しかし、それもやむを得ないと思わせるくらいに中央大が別のチームになっていたのが驚きだった。いつになくFWの8人が塊となって攻め、そして守る。昨シーズンは有効に機能したシェイプが復活し、その中心にはSHの加藤が居る。とにかくよく声を出し、かつ身振り手振りで廻りの選手を動かす動かす。中央大の強みはFWのモールだが、機を見ては身体を張ってモールに飛び込み山梨学院の選手をはがしにかかるところなどは圧巻だ。

そんな変貌を遂げた中央大の気迫に押されながらも、山梨学院も過去3戦と同様に身体を張って踏ん張る。3分には中央大陣で反則を誘い、SO小川が左中間25mのPGを決めて山梨学院が3点を先制した。しかし、SH加藤のリードによりいつになく「固まった」中央大のFWの圧力を受けたためか、過去え3戦で健闘を見せてきた山梨学院のFWには余裕が見られない。FWのアタックはことごとく中央大の選手に捕まり、ターンオーバーされてモールを軸にしたアタックによる反撃の糸口を与える。10分のLO西野によるトライは、そんな中央大の反撃から生まれた。山梨学院の選手達に「今日の中央大は違う」と明確に意識させたことは間違いない。

山梨学院は開幕戦からFW中心の遅攻できたが、中央大もFWが中心なのでアタックのテンポは遅くなりがち。ただ、両チームの間には決定的な違いがある。中央大の選手達がスピードに乗ってパスを受け取るシーンが目立つのに対し、山梨学院の場合は足が止まった状態でパスを受ける選手が多い。位置取りが浅めのせいもあるが、ゆっくり攻めていた過去3戦の戦い方を急に変えることはやはり難しいようだ。また、それをさせない中央大が一枚上手だったとも言える。とにかく、中央大の選手達、とくにFWの塊からは明らかにもうもうと湯気が立っている。つい数ヶ月前に日吉のグランドで観た光景は幻だったのだろうか。

両チームによる激しいFW戦が展開される中で、26分、山梨学院にBK展開による待望のトライが生まれる。中央陣22m手前のスクラムからいったん右に展開した後、左サイドにできたスペースにボールが展開され、CTB曾根がゴールラインを越えた。GKは失敗するが8-7と山梨学院が逆転に成功する。FWのトコキオ頼みだった山梨学院だが、目指しているのはおそらくBKのスピードを活かしたトライ。流れるようなラインアタックとは言い難いようなゴツゴツした感じのパス回しではあったが、気迫で中央のディフェンスに打ち勝った価値ある得点シーンだった。

しかしリードも束の間。リスタートのキックオフに対する山梨学院の蹴り返しがノータッチとなったところで、中央大は強力なカウンターアタックにより攻め上がる。FWの塊で前進を図った後、サイドを勢いよく突破した選手から絶妙のタイミングでフォローした加藤にパスが渡る。加藤は一瞬だけパスを意識したものの、行けると観るやそのままゴールポスト直下まで到達する。GKも難なく成功して中央が14-8と再逆転に成功する。フォローのタイミング、そしてボールを受けた後のスピードが素晴らしく、このトライがさらに加藤を乗せることになる。

この試合は、リーグ戦の折り返し点で早くも始まったサバイバル戦の様相を呈している。だから、両チームによる戦いはどうしても白熱したものとなってしまう。36分、山梨学院は中央陣22m手前のラインアウトからいったんオープンに展開した後、トコキオの突破力を活かしてブラインドサイドを攻める。BK展開からパスを受けてゴール右隅に飛び込んだNo.8戸田の身体はタッチを割ったかに見えたがトライが認められる。GKは失敗するものの、13-14と山梨学院のビハインドは1点に縮まった。

山梨学院はこのままの点差で前半を終えることができれば御の字だった。しかしながら、ここに落とし穴(その1)が待ち受けていた。39分、自陣でのスクラムからトコキオが攻め上がったところでノックオン。中央大の逆襲に脅かされるものの、ラックでのハンドでピンチを脱する。PKからHWL付近まで陣地を挽回しラインアウトから中央大陣に攻め込もうとしたところで痛恨のオフサイド。中央大は絶妙のタッチキックにより山梨学院陣のゴール前でのラインアウトのチャンスを掴む。この形になれば得意のモールによるトライは約束されたようなもの。時計が42分となったところでの失点7は山梨学院にとって痛かった。



◆後半の戦い/粘りを見せた山梨学院だが、最後まで塊となって戦った中央大の前に屈す

前半終了間際の失点で13-21と8点のビハインドを背負ったものの、前半の中央大の出来から考えれば山梨学院の傷は浅かったと言える。前半にいい形のBK攻撃でトライを2つ取れたことで後半への望みが繋がった。山梨学院の悲願の初勝利を目指した戦いはここからだ。しかし、キックオフ直後に落とし穴(その2)が出てしまう。キックオフのボールがノックオンとなったところでのスクラムから中央大が8→9で攻め上がった時にで山梨学院がまさかのノーボールタックル。右中間25mのPGを浜岸が難なく決めて24-13と中央大のリードは11点に拡がった。

しかし、リスタートのキックオフから山梨学院は気を取り直して攻勢に出る。6分の中央大陣10m/22mのラインアウトからのオープン攻撃はノックオンを犯して実らないものの、中央大が確保したボールをタッチに蹴りだして再び同じような位置でラインアウト。ここで、この日一番のトライが山梨学院に生まれた。ラインアウトからオープンに展開されたボールをループしたSO小川が受け取り逆サイドからライン参加した左WTB大和田にパス。大和田は右にオーバーラップができた状態を活かして快足を飛ばし中央大DFを振り切りゴールラインを越えた。GKも成功して20-24と、山梨学院のビハインドは1トライで逆転できる4点差まで縮まる。山梨学院の応援席が一気にヒートアップしたことは言うまでもない。

9分、山梨学院は自陣22m付近で相手ボールスクラムのピンチの状況でターンオーバーに成功。エリア獲得を目指したキックに対し、浜岸が自陣22m内で処理を誤りノックオン。まだまだ山梨学院にツキが残っていた。しかし、スクラムからトコキオが満を持してゴールを目指すかと思われた瞬間、長いホイッスルが鳴った。PRが膝をついたためコラプシングの反則を取られてしまい、1トライで逆転の反撃ムードも一気に萎んでしまう。ピンチの後にチャンスありで16分、中央大は山梨学院陣22mライン手前でのラインアウトからモールを起点としてFWで攻め込みHO山本がトライ。浜岸のGKは今日も絶好調で31-20と中央大が再び追いすがる山梨学院を引き離しにかかる。

ここまで何とか中央大FWのパワーに対抗していた山梨学院だったが、残り時間が少なくなった26分に決定打とも言える落とし穴(その3)が出てしまう。中央大が山梨学院のゴール前でタップキックからゴールを目指したところで山梨学院がトライを防ぐための故意の反則を犯したため、中央大にペナルティートライが与えられる。と同時にLO河野にシンビンが適用され山梨学院は残り時間をFW7人で戦うことになってしまった。38-20とダブルスコアに近くなったところで状況から見ても勝負ありとなる。

数的優位となった中央大は36分と40分にもFWで1トライずつを追加。後半の中盤までは拮抗していたゲームも終わってみれば52-20と中央大の圧勝。過去3戦と比べてもミスが目立ったのがこの日の山梨学院であり、またそれがことごとく失点に繋がってしまったことは痛かった。しかし、山梨学院を慌てさせた要因が塊となって戦った中央大FWの健闘にあったことは間違いない。緒戦からこの戦いができていたら中央大は優勝戦線に残れた可能性は高いと思う。中央大と戦ったときの法政は本調子とは言えなかったし、日大にしても東海大戦での大敗の影響を引きずっていたはずだから。しかし、もし日大戦から加藤がSHを務めることがなかったとしたらと思うと、ここはプラス思考でいくべき。とはいえ、ちょっとしたきっかけでコロリとチーム状態が変わってしまう大学ラグビーは本当に難しい。



◆会心の勝利を掴んだ中央大/一番印象に残ったこと

予想外の(と言っては中央大ファンに失礼だが)圧勝を収めた中央大のMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)はSHの加藤と言って間違いないだろう。去年、ルーキーながらFWの尻を叩くような形で先輩達に活を入れていた長谷川を彷彿とさせるようなプレーで中央大を再生させることに成功したと言ってよさそう。今シーズンの長谷川に昨シーズンのような輝きが観られないのは、もしかしたら怖いもの知らずで臨んだ昨シーズンとはチーム内での立ち位置が変わってしまったのかも知れない。さて、この日の主役の加藤だが、一番印象に残っているのは背筋をピンと伸ばしてしっかり前を見続けたプレースタイル。有力選手でも猫背だったり、前屈みの歩き方にはガッカリの状況が多いだけに、仁王立ちのような姿がとても大きくそして新鮮に見えた。それはさておいても、加藤を得たことで中央大のアタックは確実に迫力を増すことだろう。FWが固まることでBKのアタックにも勢いが付くはずだから。上位をキープするという意味で状況はとても厳しいが、昨年度2位の意地を見せて欲しいところだ。

◆大敗の中にも収穫があった山梨学院/足りなかったものは何か

4戦目にして勝利を目指した戦いへとシフトしたはずの山梨学院だったが、初勝利への道程は険しいことを感じさせた戦いになってしまった。悲願の初勝利を掴むためにはまだまだ足りないものがある。そのひとつは、本文中でも指摘したとおりスピード感だと思う。過去3戦では意図的にスローテンポで攻めていた感があったが、いざチャレンジという段階で急にテンポアップすることは難しかったのかも知れない。同じくFW中心でスローテンポの攻撃でありながらも、パスを受ける選手がトップスピードに近い形になっていた中央大の選手達を観てそんなことを思った。ただ、ここまでの3試合での得点は殆どがトコキオのパワー頼みだったことを思うと、BKへの展開により3つのトライを取れたことは今後に望みを繋いだと言えそう。気持ちを切り替えて残り3つの戦いに挑んで欲しい。

◆チームのピンチを救うのは4年生の底力

大東大の小山を筆頭として、SHにルーキーの逸材が揃っていたのが昨シーズンのリーグ戦Gの特長だった。中央大も長谷川と住吉といった持ち味の違う2人がレギュラー争いをすることでチームも活性化されていたように思う。しかし、どちらを中心に据えるかという決定打を出せないままに中央大は今シーズンを迎えてしまい、そのことがチーム作りに影響を与えたように思われる。FWをしっかり纏められる加藤の登場でそのことがはっきりしたわけだが、昨シーズンはラグビーマガジンの選手名鑑にも写真が載っていなかった選手がどうして今なのか?という想いを禁じ得ない。

これは中央大のだけの話ではない。法政もSOで同じようなことが起こっている。加藤か猪村かという議論が渦巻いた中で林が先発した試合もあり、今シーズンは春の段階で井上がレギュラーとなり、控えには和田や犬飼の名前が挙がるような状況。そこに、シーズンインとともに法政の高速アタックを復活させてしまった感がある4年生の北島の名前があっただろうか。日大にしても、今シーズンはBチームで試合に出続けたFWの高橋優一を中央大戦からAチームに復帰させたことで、大敗続きだったチームに落ち着きが出たと聞く。これらは何を意味するのだろうか。

ひとつ確実に言えることは、チームメイトを平気で呼び捨てにできるような最上級生が持つ力は侮れないということ。試合に出場する機会はなくても人一倍関心を持ってチームの戦いぶりを冷静に観ている選手が居ることを忘れてはいけないと思う。「同じ力を持っていれば下級生を使う」という考え方は選手個々にはいいのかも知れないが、チームが結果を出すことを優先させるなら、「同じ力を持っていれば、上級生の経験を大切にする」ことが重要なはず。奇しくも(精神的な支柱になれる)高橋優一がそのことを証明しつつあるわけだし、日大は過去のチームでも控えの上級生がピッチに立ったことで試合が落ち着いた場面を何度か観ているのでそんなことを思う。選手の力は実際に試合に出してみないと分からないことが多い。そう考えると、リーグ戦のレギュラーシーズンの試合数が7つだけというのはあまりにも少ないような気がしてならない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ラムじいさんのインドカレー」~上尾(隠れ)グルメガイド[その弐]~

2014-10-17 01:43:03 | 上尾(隠れ)グルメガイド


「上尾シティマラソン」を1ヶ月後に控え、トレーニングに励むランナーの姿が目立つようになってきた我がホームタウン。箱根駅伝のランナー達が一同に介することでつとに有名になった「シティマラソン」と夏の花火大会を除いたら何が残るか?という地味な街ではあるが、美味しくてフレンドリーなお食事やさんが多いことは自慢していいかもしれない。

おっと、1つ忘れていた。女子バレーボールのV・プレミアリーグに『上尾メディックス』が昇格を果たしたのだった。残念ながら地元といえるような場所での試合はないが、高校野球(上尾高校)以来、といってもずいぶん昔だが、街の名前を少しでも全国に浸透させて欲しいところ。しっかり応援しなければ。

「その壱」からずいぶんと間が開いてしまったが、隠れグルメガイドの第2弾は『ラムじいさんのインドカレー』。「ほんとのインド料理とカレーのお店」と銘打っているだけあって、本格派カレーの味はなかなかのもの。けして便利な場所にあるわけではないが、どう見ても地元っちーとは思えない(しかも年齢層は若め)の人達がひっきりなしに訪れていることからも、そう言ってしまってもよさそうな気がする。

◆お店への行き方/地図を見たら迷うかも

お店へのアクセスだが、案内地図を見たらややこしそうな場所にあり迷うかも知れない。案外、言葉で説明した方が簡単に辿り着けると思う。JR高崎線の上尾駅を降りて改札を出たらすぐに左に曲がって西口に出る。手前の階段は降りずに外に出て東京三菱UFJ銀行の前の階段を降り、そのまま直進。目印はアーケードの先の右側に見えるセブンイレブンで、突き当たりの道路を渡って左に曲がる。そして、公園(谷津観音)の角を右に曲がって真っ直ぐ歩くと正面にお店が見えてくる。

玄関の戸を開けて中に入ると「いらっしゃあませぇ!」と元気な明るい声でインド人の店員さんが迎えてくれる。そう、ここはインド人だけで営業しているお店なのだ。と書くと、なんだか難しそうという印象を持たれそうだが、はっきり言ってしまうとまったく心配ない。とても気さくな店員さんにのせられて何だかハッピーな気分になれるから不思議。



◆オススメはほうれん草とチーズのカレー/サグ・パニール

水が運ばれてきて、写真付きのメニューを見ながらお好みカレーをオーダーする。チキンやマトンの肉系、エビなどのシーフード系、そしてベジタブル系と大きく分けて3種類のカレーがあり、ナンかライスが付いてくる。もちろんここはナンが無難(なん)だろう。写真で見ても分かるとおり、とっても大きくてしかも美味しいから。カバブなどの肉やサラダも美味しいのだが、何せナンが大きいのでオーダーするのはお腹の空き具合と相談してからの方がいいかも。それから、ナンにはガーリックやチーズ風味のものもあるが、ちょっとしつこいかも知れないので、最初はプレーンが無難(なん)かも。

とにかくいろんなカレーの種類があり、最初はどれを頼むか迷う。そんなお客さんのためにメニューにはカテゴリーごとに「人気No.1」から「人気No.3」まで表示してあるので参考にするといい。意外と、と言っては失礼かも知れないが、ベジタブル系のカレーがなかなかいい。とくにオススメはインドのチーズとほうれん草をベースにした「サグ・パニール」。堅い豆腐みたいな食感のチーズと柔らかくて辛さをマイルドにするような効果があるほうれん草のハーモニーがなかなかグーだと思う。もちろん色から連想されるようなグリーンカレーとはぜんぜん違う(念のため)。

お店の方針で作り置きはしないため、ナンが焼けてカレーが調合(と言った方がしっくりくる)されてくるまで少し時間がかかるが、ここはおいしさのポイントだから我慢。店内にはインドのビデオが映し出され音楽も流れているが、以前に比べると音の大きさは控えめになった感じ。なかなか聴けないインドの音楽を楽しみにしている人間としてはちょっと残念な気もするが仕方ないか。インド人の店員さんが活躍しているだけでも十分にインド風味は味わえるから。



◆辛さは五段階からセレクト/スパイシー風味の極意

気になる辛さだが、甘口、中辛、辛口、激辛、インド辛の5種類。最初は中辛を賞味したが、すぐに辛口にチェンジし、最近はもっぱら激辛を楽しんでいる。次はインド辛と行きたいところだが、店員さんでさえ「口が曲がるよ」と平気で言ってるくらいだからチャレンジする勇気は出ない。感覚的に言うと、辛さは等比級数的、いや指数関数的に強くなっていきそうな感じなので、止めた方が無難のようだ。もし辛さが心配なら、トマトベース系でもいいかもしれない。

インド辛は冗談としても、スパイシーな料理はやはりできるだけオリジナルに近い辛さで味わうのが流儀なのかも知れない。辛さを緩めていくと言うことは、少しずつスパイスを抜いていくことを意味するのではないだろうか。激辛に馴染んだところで辛口をオーダーした時にそんなことを感じ、軟弱路線に走ってはいかんと反省するところしきりだった。もちろん、辛さの好みは人それぞれだけど、激辛までクリアした今となってはそんなことを思う。他の似たようなコンセプトのお店で食べても同じことを感じた。やっぱりココが最高だと。

そんなお客さんの反応を気にしてか、店員さんが「からさ、ダイジョウブデスか?」と頻繁に訊いてくる。もし、日本人の店員が居たとしてこれをやったらすごく嫌味に聞こえるだろう。そう感じさせないところがインド人なのかなと思うし、お客さんとコミュニケーションを図りながら、自分達の料理の好まれ具合も確かめているようなのだ。インド人の店員さん、なかなかやるじゃん。

そういえば、半年前くらいに面白いことがあった。会社からの帰りで電車を降りて駅から出たら、前の方を大柄で見たことがあるような人達が歩いている。追い越したときに聞き覚えのある声が聞こえたので振り返ったら、笑顔とともに「コンバンワ!」という声が帰ってきた。月に一度はお店に行くのですっかり顔なじみになっていた店員さんたち。「わたしたちぃ、エキマエでラーメンたべてましたネ。」とか言って、なんでもお店のビルに住み込みで働いているのだとか。ほんとに気さくでいい人達で、しかも異国の地で頑張っている。何だか応援したくなってしまった。



◆締めはインド飲料で/ラッシー、チャイを楽しむ

スパイシーな辛さを堪能した後の締めは甘い飲料でとインドでは決まっている。かどうかは分からないが、ラッシーやマンゴーラッシーで締め。ミルクが入ったシナモン風味の暖かいチャイもオススメ。こんなお店が家の近くにあるだけでも嬉しい。上尾に住んでいてよかった。

【ラムじいさんのインドカレー 上尾支店】

所在地 :埼玉県上尾市谷津2-4-3
電話番号:048-774-1600
営業時間:ランチ AM 11:30~15:00、ディナー PM 17:00~21:30
定休日 :年中無休
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東海大学 vs 立正大学(関東大学ラグビーリーグ戦G-2014.10.5)の感想

2014-10-10 23:08:48 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


東海大はここまで2連勝で1週間前の日大戦ではあと一歩100点ゲームになる圧勝。一方、立正大は目下2連敗中で先の流経大戦はノートライに抑え込まれて大敗。そういった明暗は別にしても、両チームの力関係から、戦う前に結果は見えてしまいがち。雨でスリッピーなコンディションも大勢に影響はないと考えてしまう。しかし、1週間でチームがコロリと変わることもままある大学ラグビーは単純にはいかないことも多い。台風が接近し、やや強い雨が降りしきる熊谷でいったい何が起こったのだろうか。



◆キックオフ前の雑感

東海大は日大戦とまったく同じメンバーがスタメンに名を連ねる。ここ2試合でスタメンから外れている小原の名前がリザーブからも消えているのが気になるが、コンディションがよくないとしか考えられない。また、SHも自ら突破できてチームを活性化できそうな湯本ではなく松島がスタメン。スターティングラインナップは組み立て重視で行くということだろうか。といった具合に多少は気になる点があるにしても、東海大のメンバーは盤石だ。

一方の立正大もメンバーはほぼ固まっており、先発の留学生はNo.8のフィララ・レイモンドとFBからCTBに上がったアライアサ・ローランド・ファアウイラのコンビでずっと変わらない。アライアサの起用は走力を買われてのものと思われるが、彼がプレースキッカーの役割を担っていることも絡んでいるのかも知れない。また、ここまで不発に終わっているエースの早川も今日こそは爆発したい。今シーズンもSHを固定できていないチームが目立つが、立正もそのひとつ。本日は球裁きのいい(と個人的には感じている)植竹が先発に起用されたが、降りしきる雨の中で安定した球出しができるだろうか。



◆前半の戦い/幸先よく先制した東海大だが、その後は苦戦を強いられる予想外の展開に

立正大のキックオフで試合が始まった。序盤から雨の試合のセオリーとも言える陣取り合戦の様相を呈する蹴り合いが多い展開となる中で、最初にチャンスを掴んだのは立正大。2分に東海大ゴール前でのラインアウトからゴールを目差すものの、タッチに押し出される。3分に再び22mライン付近でラインアウトのチャンスを掴むが間隔を1m開けていなかったため、ゴールを目前にしながら得点を挙げられずに後退を余儀なくされる。

ここから今度は東海大の攻撃の時間帯となる。FKがノータッチとなり、立正大が蹴り返す。が、東海大はカウンターアタックからオープン展開を交えて大きく前進を図り、立正大陣22m手前まで前進したところで立正大にオフサイド。7分に立正大ゴール前でスクラムのチャンスを掴んだところで立正大に反則。東海大、ここは狙わずにラインアウトからモールを形成してゴールを目差すもののラックアンプレアブルでスクラムからやり直し。しかし、オープン展開からWTB石井が大きくゲインしてラックとなったところからLOダラスが抜け出してゴールラインを越えた。東海大の幸先よい先制点(GKも成功で7点)は14分に記録される。

リスタートのキックオフからも両チームの蹴り合いとなるが、東海大が陣取りに成功。しかし立正陣10m付近でのラインアウトからのアタックはオブストラクションとなり、立正大はPKを経て東海大陣22m付近でのラインアウトから再びゴールをめざす。ここでマイボールをスティールされて万事休したかと思ったのも束の間、東海大のキックを立正大のFL籾山がチャージに成功し、そのままボールを確保してゴールラインまで到達した。GKも成功し立正大が7-7とゲームを振り出しに戻す。ここからしばらくの間は両チームがHWLを挟んでの攻防を繰り返す展開となり得点板は動かない。拮抗した展開と言うよりは、ダイレクトタッチやラインアウトでのノットストレートなどミスが目立つ攻めきれないまま時間が進むと言った感じ。雨が降りしきる天候とは言え、東海大に関しては、ボールを回せば必ずトライになっていたような日大戦とはまったく別のチームを見ているような錯覚にとらわれる。

前半も終盤にさしかかった28分、立正大はSO原嶋がDGを狙うが外れる。しかし、このプレーの前に東海大にハイタックルの反則があり、アライアサが正面24mのPGを決めて立正大が10-7とリードを奪う。ここからゲームが動き始め、31分にはオープン展開から左サイドでパスを受けた東海大の石井が見せ場を作る。ウラを狙ったキックを有効に使い、背走する立正大の選手抜き去ってゴールラインを先に越えてトライを奪う。やはり、石井の並外れたスピードは東海大にとって強力な武器であることを証明するような鮮やかな個人技が決まった。GK成功で今度は東海大が14-10とリードを奪い返す。「東海大はやっぱり強い!」と普通なら感じるところだが、実態は何とか4点リードしているといった感じ。もちろん、立正大の頑張りがそんな思いを抱かせるわけだが、立正大も東海大も普通に戦っており、得点差が開かない5分の戦いになっているというのが真相。立正大は42分にFL小嶋が反則の繰り返しでシンビンを適用される。立正大がひとり少なくなったことで大ピンチのはずなのだが、数的不利を感じさせない中で前半が終了した。



◆後半の戦い/立正大が逆転に成功するなかで、明暗を分けた残り10分間の攻防

前半を終わって東海大のリードは僅かに4点。本来なら「東海大どうした!」とか「しっかりしろ!」になるところだが、そんな感じも抱かせないくらいに普通の戦いになっているのが不思議。東海大が相手を舐めているわけでもなく、やっぱり気力充実の立正大が頑張っているという評価に落ち着く。シンビンのため立正大FWがひとり少ない中で後半が始まった。東海大はハーフタイムでネジを巻かれたのか、テンポアップして攻めるもののノックオンなどのミスも目立つ。そもそもFWが1人多いはずなのに、優位性が活かせないまま時計が進んでいく。8分に立正大の選手が復帰したとき、「そうか、立正大はひとり少なかったのか。」と気づくくらいに立正大のFWが健闘していたことになる。

9分、東海大は自陣ゴール前でのラインアウトでモールアンプレアブルとなり立正大にボールを渡すピンチに陥る。自陣ゴールを背にしたスクラムはいったんは立正大のノックオンに救われるものの、その後のマイボールスクラムでまさかのキャリーバック。立正大はこのチャンスを活かし、スクラムを起点としたFWのサイドアタックでNo.8レイモンドがゴールラインを越える。アライアサのGKはポストに当たったもののポストの内側にボールが落ちる。17-14と立正大が再逆転に成功し、立正大の応援席は一気に盛り上がりを見せる。

そんなスタンドの熱き応援に応えるかのように、リスタートのキックオフから立正大のアタックがさらにヒートアップする。陣取りのための深めのキックに対し、東海大のタッチキックがミスキックとなり立正大は東海大ゴール前でのラインアウトと絶好のチャンスを掴む。ここから立正大がFWで攻めてLO千葉がゴールラインを越えた。GKは失敗するものの、残り時間が20分あまりとなったところで22-14と、1T1Gでも東海大は追い付くことができない8点差にリードを拡げる。本当にケチャップのようにドバドバ点が入った日大戦の東海大はどこに行ったのか?と思わせるくらいに得点が取れる感じがまったくしない東海大に焦りの色が見えてくる。25分には立正大ゴール前でラインアウトのチャンスを掴むものの、立正大FWの強力なプレッシャーの前にモールを押し切れずアンプレアブル。

とにかくゴールラインが遠く、後半はここまで無得点で配色濃厚の東海大だったが、残り10分あまりとなったところでこの試合のハイライトがやって来た。27分、立正大が自陣22m付近のスクラムで1列が上体を上げてしまう反則を犯し東海大はPKのチャンスを掴む。8点のビハインドならゴール前のラインアウトから最低でも5点を取って点差を一気に縮めたいところ。だが、東海大は迷うことなくショットを選択する。野口のPGはポストに当たるもののセーフとなり17-22と東海大のビハインドは1トライで追いつける5点に縮まる。リスタートのキックオフでカウンターアタックから石井が前に出たところで立正大がハンドの反則。今度は左中間38mの位置だったが、ここも東海大は迷わずショットを選択し野口が冷静に決めた。ここで遂に東海大のビハインドは僅か2点となり1PGでも逆転できる。沈みがちだった東海大応援席に少しずつ元気が戻ってきた。

終盤で両チームに疲れが目立ってくる中で激しい攻防が展開される。そして残り数分となった39分、立正大が自陣で痛恨の反則を犯す。PGを狙うにも位置はどんどん難しくなっていくが、ここもショット選択でブレがない。よりプレッシャーがかかる中で、野口がここも冷静にPGを決める。23-22と僅か1点差だが東海大が逆転に成功。結果論だが、もしゴールに近い位置でFWの揉み合いを選択していたらここまでこれたかどうか。しかし、まだ時間は残っている。しかもリードはどんな形で得点されても逆転になってしまう1点だ。リードされてしまったとは言え、あと一歩で東海大から歴史的な勝利を挙げることが可能な立正大がヒートアップしないわけがない。

応援席の強力な後押しを受けた立正大がリスタートのキックオフから東海大に強力なプレッシャーをかける。そして遂に時計が40分を過ぎたところで東海大が反則を犯す。位置は左中間で22mラインより少し手前。アライアサのキック力なら十分に決められる。ここは冷静にショットだなと思ったが、立正大は間髪入れずにタップキックで攻めてしまった。東海大は助かった思ったのも束の間、レフリーの手が横に伸びる。アドバンだからプレーが止まってもさら前の位置からPGが狙える。立正大がゴールに迫ったところでホイッスルが鳴った。おそらく東海大関係者はここで負けを覚悟したに違いない。しかし!なのである。レフリーの判定は東海大ではなく立正大の反則。アドバンは何処に消えたのかという疑念の残る中、東海大がボールをタッチに蹴りだす。もう1プレーということでラインアウトのボールを慎重に確保し、東海大がボールを再度蹴り出し激戦にピリオドが打たれた。

終了のホイッスルが吹かれた瞬間、東海大応援席は喜びに包まれることはなく、まるで敗者のように全員が凍り付いて声も出ない状態。こんな(喜びが全くない)勝利の形は生まれて初めて観たような気がする。無理もない。どう転んでも負けていた試合だったから。ラグビーは本当に最後までわからない。



◆東海大の勝因は主将の冷静な判断力/そしてプライドを捨てたこと

本当に最後まで痺れる試合だった。残り20分あまりとなったところでの8点差は、逆転のイメージを掴むのには難しい点差だったに違いない。立正大の反則の場面で、もし、FWの選手が主将だったり、チームの主導権を握るのが(強い)FWならプライドにかけてPGではなくゴール前でのラインアウトから5点ないし7点を狙っただろう。しかし、東海大は躊躇なくショットを3回連続で選択した。FWでなかなか点が取れない状況だったという点は差し置いても、3×3=9>8の計算が主将の頭の中にあり、ブレはなかったことになる。このことがかえって野口への信頼感の表明となり、野口も自信を持ってPGを蹴ることが出来たのでは内だろうか。リーグ戦はたとえ1点差でも勝つことが重要。そのためには可能性があればプライドを捨てることも必要になってくる。この試合をじっくり振り返ってみると、それを貫徹した主将の力を感じずにはいられない。何とも心許ない勝利ではあるが、東海大はこんな形で負け試合を勝ち試合にできたところに価値を見いだして欲しい。世評?とは裏腹に東海大への期待が高まった、強く印象に残る試合となった。

◆一皮むけた立正大/なのに、なぜ負けたのか

99%手中にしていた勝利を逃してしまった立正大。気の毒な面もあった呆気ない幕切れに(東海大とは違った意味で)関係者には後味の悪さが残ったかも知れない。しかし、どんな試合にも敗因は必ずあるものだ。立正大がこの試合で犯した反則は前半が7個で後半は6個の13個。少なくはないが特別多いわけでもない。しかし後半の6個のうちの3個が自陣での致命的な反則になってしまった。最後にPGを狙わずにタップキックで始めてしまったことは、冷戦な判断が欲しかったもののチームに勢いがあったから攻められない。やはり反省すべきは自陣で致命的な反則を連発してしまったことではないだろうか。この試合に限らず、緒戦の中央大戦の敗因も反則だった。この試合での立正大は過去のイメージを払拭するくらいにアグレッシブに攻め、そして守り続けた。ここは評価していいと思う。自信を持って闘って欲しい。

◆ラグビーと数学

8点差を3点×3で逆転に成功したところに「数学の妙」を感じた。考えてみれば、ラグビーの得点は3点、5点、7点(5点+2点)の七五三ですべて奇数だ。ということは、偶数の点差が付いたときに得点の取り方に対する計算が必要になってくる。点差が一桁台だったらより切迫するし、10点以上あってもそれは同じ。方程式を解くような複雑な計算は必要ないが、冷静な計算が要求される。ラグビーには数学的な面白さもあると、この試合でとくに強く感じた。

◆ちょっと、いや、かなりいい話

試合が終わった後、東海大の応援席は固まっていたが、私も別の意味で固まっていた。台風絡みの緊急連絡でメールを打つ必要があったのだ。そんなことをしているうちに、いつしか廻りの人間が居なくなっていた。立正サイドで試合を観ていたのだが、ついさっきまで固まっていたはずの東海大の控え選手達が大挙して立正サイドにやって来た。そして、スタンドの端から端までゴミ拾いをした後、何事もなかったかのように颯爽と去って行った。観客がいなくなるタイミングを見計らっていたのだろう。そして、ゴミを集めている間に気持ちを切り替えることができたかも知れない。

もし、プロの選手達が同じことを行ったら、「そんなことをしている時間があったら次の試合のことを考えろ!」という声が上がってもおかしくない。しかし、アマチュアの学生スポーツは事情が違うと思う。日本最高レベルの競技場を使わせてもらって試合ができるのだから、運営面で何らかの形で協力することは必要だと思う。自主的に感謝の意味を込めてやれることをやると言う姿勢に感じることが多々あった。やっぱりこのチームはずっと応援していきたい。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大東文化大学 vs 山梨学院大学(関東大学ラグビーリーグ戦G-2014.10.5)の感想

2014-10-08 02:15:56 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


今シーズンの私的注目チームとなった山梨学院の3戦目の相手は大東大。FW、BKともパワフルで突破力のある選手達が揃った超攻撃的チームだ。流経大とは5分に近い戦いができ、東海大も前半は圧倒されながらも後半は五分に近い戦いができた山梨学院だが、今回も難敵が立ちはだかる。はたして、この試合も前2試合同様に手堅いラグビーで行くのか、それとも何らかのチャレンジを試みるのか。台風の接近で生憎の雨の中、山梨学院が(勝負となるリーグ後半戦を見据えて)どんな戦いを挑むのかが私的着目点だった。



◆キックオフ前の雑感

開幕2連勝の大東大は、この試合も法政戦でケガをしたFB大道を除けばほぼ不動のメンバー。と言いたいところだが、キーポジションのSOが川向から碓井に替わっている。一昨年はルーキーながらレギュラーで活躍していた選手だが、昨シーズンは川向の台頭もあり、Aチームでの出場機会が殆どなかった選手だけに、大東大ファンにとっては一抹の不安を抱かせる起用と言える。ひとつ安心できる材料があるとすれば、希望的観測になってしまうが、青柳監督の選手起用はよくあたること。しかし、チーム全体としても不安材料がある。先だっての法政戦は最終的に圧勝になったものの、大東の組織的な積み上げを崩しかねない危うさが感じられた試合だった。一糸乱れぬ戦術で戦いを挑んでくる山梨学院に対して、どのように建て直しを図っていくのかが私的注目点になる。

山梨学院はスタメンのSOが川田から小川に替わるなど、数名の選手の変更はあるものLOトコキオやFL大石主将らを中心に据えたほぼ不動のメンバー。メンバーもさることながら、1戦目、2戦目とFWが2ユニットを組んでジグザグ走行し、SHのハイパントで前進という「9人ラグビー」と言えそうな固定された戦術で戦ってきた。流経大、東海大ともにリーグ戦Gでも強力なFWを看板としたチームを相手にゆっくりしたテンポでFW戦を挑むという勝算の薄いラグビーに徹してきた感がある。FWが強いという点では大東大も同じで常にターンオーバーの危険を伴う戦術と言える。果たしてこの試合はどんな戦いを見せるのだろうか。私感だが、山梨学院の(勝利への)チャレンジは次戦から始まると見ている。おそらくこの試合も基本戦術は変えないものと思われる。ただ、少しは変化技も試したいところ。リザーブを眺めると「秘密兵器」と目される1年生の選手が居る。試合の進み具合によるが、後半にはパウロの投入があるのではないだろうか。



◆前半の戦い/新戦術で臨んだ大東大が序盤から山梨学院を圧倒

殆ど無風状態ながら、やや強めの雨が降る中、山梨学院のキックオフで試合が始まった。ちなみに、両チームとも1stジャージの色がグリーン系で似かよっているため、大東大は白装束、山梨学院は濃いブルーのジャージで登場。大東大にとって白は鬼門だったのも昔話になった。むしろ白の方がモスグリーンよりも選手達が逞しく見えるから不思議。それだけ身体が大きくなり筋力アップしたとみて間違いない。昨シーズンから負傷者が飛躍的に減ったことでもそれはよくわかる。山梨学院のジャージも一際引き締まった印象を与える。

雨でスリッピーなコンディションということもあって、キックにより陣取り合戦が展開されることが予想されたが、大東大の蹴らずにパスで前進を図る戦術は変わらない。その大東大が、いきなりターンオーバーからの逆襲で大きくボールを前に動かす。山梨学院が自陣ゴールを背にしたラインアウトでノックオンを犯したところでスクラムのチャンス。ここから8→9→15の鮮やかなアタックが決まり、FB岡がスピードに乗ってゴールラインを越えた。碓井のGKも成功し大東大が開始2分にして幸先よく7点を先制する。大東大ファンにとて、まずは碓井のキックが健在なことを確認し胸をなで下ろしたことは間違いない。が、それだけではなかった。青柳監督が碓井を起用した意図がその後はっきり分かることになる。

大東大の目の覚めるようなアタックに出鼻を挫かれた山梨学院だが、反撃に転じる。6分、大東大陣10m付近のスクラムで大東大がコラプシングの反則を犯し、SOがゴール正面約43mのPGを鮮やかに決める。山梨学院が3点を返しビハインドは4点となる。大東大のリスタートのキックオフに対し、山梨学院は本日もすっかりお馴染みとなった戦術で前進を試みる。FWが2ユニットに分かれて大東大FWに身体をあてながらボールをジグザグに動かし、SHがハイパント。だが、2本目のハイパントのところで大東大のサウマキの強烈なカウンターアタックを浴び、自陣22m付近でオフサイドの反則を犯す。碓井が正面25mのPGを難なく決めて10-3と大東大が再びリードを7点に拡げる。

しかしながら山梨学院もしぶとく反撃。リスタートのキックオフに対する大東大のカウンターアタックの場面で強力なタックルを浴びせてスローフォワードを誘う。アタックではなかなか見せ場を作れない山梨学院のBK陣だが、組織的なスライドあるいはアンブレラ、そして低いタックルでスタンドを唸らせる。14分に大東大陣10m/22mの位置で得たPKは狙わずに大東大ゴール前でのラインアウトを選択。ここから山梨学院は得意とするモールで攻めたあと、FWのサイド攻撃でトコキオがトライを奪い試合を10-10の振り出しに戻す。山梨学院応援席は大いに盛り上がる。

強力な大東大に対し五分の戦いだできるかと思わせたのも束の間、山梨学院のキックがSH小山やWTBサウマキといった硬軟まじえたランナーが揃う大東大にカウンターアタックのチャンスを与えることになる。21分、山梨学院の自陣22mからのタッチキックがノータッチとなったところで大東大は小山からサウマキにボールが渡る。サウマキがパワフルなランニングを見せて山梨学院陣22m付近まで到達したところで、スペースに走り込んだCTBクルーガー・ラトゥに絶妙のラストパス。GKも成功し17-10と大東大が再びリードを奪う。今や11→13が大東大アタックのホットラインとなった。現在はCTBクルーガー、WTBサウマキだが、背番号を入れ替えてサウマキをペネトレーター役にし、クルーガーがフィニッシャーになるのが一番きれいなトライの形と言えそう。

大東大の攻勢が止まらなくなってきた。25分には今度はサウマキが相手タックラーを寄せ付けないパワフルなランでトライを奪う。GK成功で24-10と点差がどんどん拡がっていく。ディフェンスで健闘する山梨学院だが、2人がかりでも止められないサウマキは本当に厄介な存在と言える。ダブルタックルも少しでも時間差があるとシングル×2になってしまう。11番は付けていても、FWの近くに立っていたり、また時にはFWとしてラックでファイトしたりとWTBの枠に収まりきらない選手のプレーは観ている分には楽しいが、山梨学院の選手達はそんなことも言っていられない。

山梨学院もFWでボールキープしている間はゲームをコントロール出来ているが、大東大はFWにもNo.8テビタ、FL長谷川、LO鈴木といった強力な選手が揃っている。FWの遅効はターンオーバーと紙一重ということで、本日はとくにBDでボールを失う場面が散見された。30分のサウマキの連続トライは、そんなFW戦でのターンオーバーから生まれた。GKは失敗するものの、29-10と大東大のリードはさらに拡がる。ここまで見てきて、大東大がSOに碓井を起用した意図がはっきりわかることになる。春シーズンに圧勝した慶應戦ではアタックの起点はSH小山だった。FWとBKに複数のパスの受け手を作ることで自在なアタックを見せてくれたのだが、この日はFWのユニットがそのときよりも後ろにできている。

小山はいつもとは違って自分から仕掛けるよりもSO碓井にパスを渡すことにほぼ徹している。アタックを組み立てるのはSO。初期フェイズではFWのユニットにいったんボールを預け、相手の陣形を見ながらオープンに展開すると、そこにはクルーガーやサウマキ、そして進境著しい戸室らのランナー達がいる。法政戦で危惧された組織の乱れはどうやら杞憂に終わったようだ。春に比べても大東大のアタックはさらに進化したと言っていいだろう。碓井を起用したからこうなったのか、こうするために碓井を起用したのかだが、偶然性は感じられなかったのでおそらく後者。やっぱり今日も青柳マジックだったわけだ。19点ビハインドの山梨学院はよく食い下がっている(見方に寄ればサウマキにやられているだけ)と言って間違いないが、相手もさらに進化していたらお手上げになってしまう。大東大の新しい形のアタックが後半への余韻を残す形で前半が終了した。



◆後半の戦い/今期最高の出来の大東大の前に為す術のない山梨学院だったが

大東大の攻勢の前にも何とか一矢報いたい山梨学院は3分にSO小川がDGを試みるが外れる。後半も大東大の勢いが止まらない。9分には山梨学院陣22m付近のスクラムを一気に押し込みテビタがスクラムトライ。リスタートのキックオフに対し、カウンターアタックからFL長谷川がうまく内側に切り込んでパスを受け、そのままゴールへとまっしぐらに走る。得点は41-10となりあっと言う間に31点差に開いてしまった。長谷川が止まらない。16分には自陣で相手ボールのスクラムをターンオーバーに成功してFWで短いパスを繋ぎ、再び長谷川がフィニッシャーとなる。GK成功で48-10と、山梨学院の失点がどんどん増えていく。

大東大はさらに畳みかける。19分、山梨学院が自陣22m内のスクラムでノックオン。スクラムは大東大ボールとなり、前半のプレーの再現のような形で8→9→15とボールが渡り、岡がこの日2つめのトライを挙げる。ここで55-10。サウマキや長谷川の活躍が目立つ中で、テビタはむしろ地味な仕事人といった形でプレーしているが、パワーと柔軟性を兼ね備えた堅実なNo.8の存在は貴重だ。長谷川が自由に動けるのもテビタのおかげと言える。昨シーズンは2人の役割が被るような印象も受けたが、今シーズンはしっかり分担できているようだ。

大東大が得点を挙げるシーンが多く、山梨学院の奮闘ぶりについて書くスペースが殆どない。しかし、けして調子が悪かったわけではなく、東海大戦よりも若干だがアタックのバリエーションを増やしつつあるように見えた。FWがテンポアップする場面は殆どなく、SHが慎重にゆっくりとパスを渡す形。しかし、この遅攻に次戦以降のチャレンジに向けた意図が込められていると言ったら穿ち過ぎだろうか。FWのパス回しだけで抜けそうな場面も何度かあったのでそう思った。雨のスリッピーなコンディションだったことと、球出しが遅れてターンオーバーされたシーンが多かったのが惜しまれる。コンディションがよければBK展開の場面が増えたかも知れない。後半26分になってようやくパウロが投入されたが、見せ場を作ることなく終わった。むしろ「秘密兵器」のままで終わったことが次戦のことを考えると幸いだったのかも知れない。

28分、長谷川がPからGOでこの日3つめのトライを奪う。アスリート系の惚れ惚れするようなランニングだ。GK成功で62-10となる。一度はリードを奪った流経大戦や点数の上では五分の戦い戦いとなった東海大戦のように過去2戦では後半に強みを見せた山梨学院だったが、この試合では後半は結局無得点。しかし、繰り返しになるが、山梨学院の出来が悪かった訳ではないと思う。アタックでモデルチェンジした大東大の出来が予想以上によかったことで、山梨学院が殆どやりたいことをやらせてもらわなかったということになるだろうか。山梨学院の第3ステージは点差通りの完敗という形で終わった。



◆さらに進化を遂げた大東大のアタック

この試合のポイントは、やはりSO碓井の起用にあったといって間違いないだろう。得点者の名前だけなら、サウマキや長谷川やクルーガーといった強力なランナーの個人技に頼ったラグビーに見えてしまうだろう。しかし、本日の大東大はややもすれば粗いラグビーになりかけていた法政戦とは違う組織的なラグビーができていたと思う。SO中心の組立で終始した感があるが、当然今まで通りのSH中心の組立も併用できるし、FWには1列から3列までタテに強くハンドリングスキルもある選手が揃っている。山梨学院のアタックがこの日もシンプル(単調)だったため、ディフェンスの評価は難しいが、アタックを観る限りは(組織ありきだが)自由自在にアタックを仕掛けられる魅力たっぷりのラグビーが完成しつつある。タックルのいい川向とSO中心でアタックが組み立てられる碓井と2枚看板をどう使いこなすか悩ましいところだが、それは贅沢な悩みと言える。大東大のアタックからますます眼が離せなくなってきた。

◆いいところなく終わった山梨学院だが

後半のチャレンジシリーズ(仮称)に向けて最終テストを試みたと思われる山梨学院だったが、大東大のできがおそらく想定以上によかったこともあり、失点の多い試合になってしまった。ただ、山梨学院にとっては最初の3戦がFWの強いチームだったことが幸いするかも知れない。相手のディフェンスに穴が開けば、得点シーンはもっと増えるはず。山梨学院の強みは組織で守れる整備されたディフェンスだと思う。得点力はトコキオ頼みの部分があるが、ディフェンスがしっかりしていれば僅差のゲームに持ち込んで勝利を掴み取ることも可能なはず。何よりも、今後対戦する4チームに比べるとセルフコントロールがしっかりできている。悲願の1勝が今期中に達成されることを期待したい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする