「熱闘」のあとでひといき

「闘い」に明け暮れているような毎日ですが、面白いスポーツや楽しい音楽の話題でひといき入れてみませんか?

帝京大学 vs 大東文化大学(第3回関東大学春季大会 2014.4.27)の感想

2014-04-29 23:36:23 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


昨シーズンのリーグ戦で一気に3位に浮上し、今シーズンは優勝争いも期待される大東大。春季大会もBを通り越して一気にAにランクアップした。だが、メンバーの入れ替わりがある中でいきなり対戦するのは大学王者として君臨する帝京大。つい一週間前には同じ帝京グランドでベストメンバーの中央大を相手に主力選手を欠きながらも82-7で撃破している。学生最強チームとの対戦は腕試しの楽しみよりもスタートでの躓きの方が心配になってしまう。

昨シーズンはCグループだったのでじっくりチームを作ることができ、また、大胆とも言える1年生の起用も可能だった。果たして今シーズンはどうなるのだろうか。大量失点負けは覚悟の上で、激しいコンタクトで選手が傷まないだろうかとか心配事は尽きない。しかし、果敢にチャレンジするチームに対しては、最高のお土産を用意してくれるのが帝京のホスピタリティ(おもてなし)。ディフェンシブな試合になることは仕方ないとして、アタックの局面では昨シーズンの持ち味だった果敢なチャレンジを見せて欲しいところ。



◆両チームのメンバー表を見て

試合前に発表されたメンバー表を見てびっくりというか唖然とした。FWはほぼお馴染みの顔ぶれなのだが、BKは2年生が5人に新人が2人の(チャンピオンチーム相手にしては)無謀とも言えそうなメンバー構成になっている。しかも大胆なポジションチェンジもあり不安はさらに掻き立てられる。対する帝京は流主将の復帰でさらに盤石の布陣に近づいていることも気がかり、ただ、昨シーズンは大胆な新人起用が功を奏してチーム改造から飛躍までやってのけたのが青柳監督だった。また、試合ごとの選手起用も選手が期待に応えるという形で成功を収めている。「無謀」という2文字が頭の中にちらつくが、青柳監督は確信を持って送り出したメンバーだと信じたい。

少し冷静になってみてみよう。BKが1、2年生ばかりとは言っても、2年生の5人はすべて実戦を経験している。SH小山はリーグ戦Gのベスト15に選ばれているし、SO菊池は去年の春の段階ではCTBで試合に出ていた。WTBの戸室も秋に実戦経験を積んでいる。意外なのは昨年SOだった171cmの川向と同じく昨年はWTBだった187cmのホセアで組むCTBの凸凹コンビ。これは意表を突く起用だが、監督の意図することころが感じられる起用でもある。また、FBは先だってのセブンズでも活躍したレギュラーの大道ではなくて1年生の盛田。そしてWTBのオカ・シンノスケは小柄ながらトンガで実績を積んだ選手。新たに加わった選手も青柳監督が選手を選ぶ際に重視している基準(タックルができること)をクリアした選手達のはず。

FWはなかなか楽しみなメンバーが揃っている。No.8のテビタとFLの篠原主将に身体能力の高い長谷川が第3列を形成し、ランニング能力の高い鈴木はLOに回った。セットプレーを考えると長谷川と鈴木は逆のような気もするが、長谷川のパワフルな部分を帝京のアタック阻止に活かそうという意図があるのかも知れない。闘将高橋の卒業で気になるPR1には本間が起用された。豪華な3列に比べるとどうしても1、2列の選手達が通用するか気になるが、ここも青柳采配に期待したい。


さて、ピッチ上では帝京がAの選手達を選手全員で花道を作って送り出すセレモニーが始まった。赤いジャージを身に纏って戦うことへのプライドを出場選手に注入することはもちろんのこと、チームの一体感を醸成するような儀式。コーナーフラッグ付近からピッチ中央まで延びた激励ロードは他のチームには真似できないような長さで、このあたりにも帝京の勢いが感じられる。



◆前半の戦い ~心配をよそに奮闘を見せた選手達~

先週の試合では中央から82点取った帝京。この試合は両チームのメンバーからみても3ケタを超える失点は覚悟しなければならないと誰しもが思った中で、風上に立った大東大のキックオフで試合が始まった。確かに帝京の選手達はパワフルかつ動きに無駄が無い。大東大は序盤からエリアを支配される苦しい展開となる。ただ、大東は帝京のアタックの前に防戦一方ではあるのだが、FWの選手が身体を張って大型選手の前進を止め、BKの選手達も低いタックルで相手の前進を拒む。やはり青柳監督の選手選考にブレはなかったことがわかる。得点への道程は険しいものの、反転攻勢にでれば突破力がある選手が揃っているのが大東の持ち味。

しかし8分、帝京はゴール前ラインアウトからFLイラウアが大きく前進してラック。ここからPR深村が抜け出してトライラインを超え、帝京が先制点を奪った。帝京はたたみかける。10分には大東大陣22m大東ボールラインアウトのボールをスティールに成功してオープンに展開した後、ラックから逆にショートサイドに展開してFB重がゴールラインを越えた。ラインアウトでのミスからとはいえ、帝京の判断と展開の速さに大東ファンは声も出ない。

しかし、昨年のリーグ戦での東海大戦もそうだったが、強烈なカウンターパンチを2発喰らってもそのまま簡単に引き下がらないのが大東。リーグ戦では経験できないようなアタックに身体が慣れてきたのか、大東の選手達の身体を張ったタックルが帝京のアタックを止め始め、ノックオンなどのミスを誘うようになる。FWではパワフルな長谷川をFLに置いたのが効いた形。一際小さい篠原主将もしつこいタックルで帝京の大型選手の突破を許さない。

そして17分、大東ファンは誰もが「取れた!」と確信した瞬間が訪れる。自陣での戦いを強いられた劣勢の中で掴んだ自陣22m付近のPK.から小山が速攻で仕掛け、No.8テビタが帝京ゴールに迫る。そのまま躊躇せずに前進すればゴールまで到達しそうな感じだったが、一瞬スピードを緩めてフォロワーを探してしまう。ここで帝京のディフェンダーに捕まり万事休してしまった。残念ではあるのだが、相手を完全に崩しきって余裕を持ってゴールラインを越えることができる帝京の選手達との差を強く感じる部分でもある。

ここで帝京にパワーアップのスイッチが入ってしまい、大東はさらに厳しい戦いを強いられることになるがモスグリーンの壁も簡単には崩壊しない。単純比較するのはよくないと思いつつも、昨日に法政グランドで観たラグビーよりもずっと引き締まった試合になっていることは間違いない。数年前の脆い大東は完全に払拭されたといって良さそう。BKではサウマキをアウトサイドのCTBに配置したのがディフェンス面でのヒットといえる。相変わらず低く刺さる川向と相手をパワーでねじ伏せる凸凹コンビがなかなかいい働きを見せる。

しかし28分、帝京はスクラムからのオープン展開でWTB尾崎がビッグゲイン。尾崎はゴールを目前にして捕まるものの、ラックから出たボールがイラウアに渡りトライとなる。GKは失敗するが帝京のリードは19点に拡がる。だが、大東もアタックで見せ場を作る。カウンターアタックからWTBの戸室が帝京のディフェンダー達をひらりひらりとかわしながら帝京陣22mまで迫る。戸室がタックルに遭ったところでフォローが間に合わずにノットリリースの反則を取られてしまったのが残念だった。大東は32分にも帝京ゴール前でPKのチャンスを掴み、タップキックで攻めこむもののあと数mの赤い壁が越えられない。帝京の執念のディフェンスは見事と言うほかない。結局前半は19-0と帝京リードで終了。予想以上の健闘に大東ベンチからも明るい声が聞こえる。



◆後半の戦い ~本領を発揮した帝京に対し失点を重ねた大東~

帝京は懐が深いというか、失点をしない範囲で相手にラグビーをさせてくれるチームといえる。ただし、攻めさせてもらってもミスなくゴールラインまで確実にボールを運ばなければならない。さもなければ、ミスを犯した瞬間に失点を覚悟と言うことになってしまう。帝京はディフェンスからアタックへの組織的な切り返しがとにかく速いし、慌ててミスを犯すことも殆どない。天国に届きかけたところで一瞬にして地獄に突き落とされてしまう相手チームの受けるダメージは計り知れないものがあるに違いない。

さて後半の帝京。ディフェンスで予想以上の健闘を見せ、アタックでも見どころを作ったことで意気上がる大東だったが、後半開始早々のキックオフでいきなり躓いてしまった。大東が確保し損なったボールを拾った帝京はオープン展開からのグラバーキック。これを走り込んだFB重がインゴールで押さえる形でノーホイッスルトライが成立。続く7分に大東は自陣を背負ったスクラムを押し込まれてしまう。大東の弱点はスクラムとラインアウト(高さ不足)ということで、おそらく後半の帝京首脳陣が授けた指示のひとつが「FWはセットプレーで徹底的にプレッシャーをかけろ!」ではなかっただろうか。

セットプレーが安定しないと、この日も再三非凡なところを見せたリーグ戦G屈指のSH小山といえども、安定したボールをBKラインに渡すことが困難になる。ただ、大東FWもやられっぱなしだった訳ではない。10分、大東大は帝京ゴール前のラインアウトからモールを形成して10m以上押し込んでゴールラインまであと一歩のところまで迫る。モールを押し切れずにラックからオープンに展開したところで惜しくもスローフォワード。待望の初トライ間違いなしと盛り上がった大東大応援席だったが、非情な判定?に一瞬で沈黙となってしまった。

帝京は14分にも大東陣22mライン手前で大東ボールスクラムを押し込み、ボールが後ろに逸れたところをイラウアが拾って一気にゴール前まで運ぶ。そして、ゴール前のラックから出たボールをPR東恩納が押さえる。さらに19分には帝京が誇るスピードスターの磯田がショートラインアウトでのサインプレーを起点に、持ち前の俊足を飛ばしてトライ。得点板の帝京の数字はアッという間に48点になった。帝京は28分にも大東陣22m内のスクラムを起点にオープン展開からゴール前でのラックを経て途中出場のHO坂手がトライ。大東は止めて止めてもテンポ良くボールを繋がれて数的優位を作られ、失点を重ねてしまう。

帝京はどんなに優位に立ち、得点を重ねても攻撃の手を緩めない。ベンチではコーチだけでなくAに上がることを目指す多くの選手達の目が光っている。パスの受け手は殆どトップスピードになっていて、しかもノックオンはないから手が付けられない。32分にNo.8で途中出場の大西、37分と40分に磯田が連続でトライを挙げて帝京の得点が67点に達したところで試合終了となった。後半は得点どころか、その糸口も殆ど掴むことができなかった大東にとっては、現時点でのチャンピオンチームとの力の差をはっきり見せつけられる形でのショッキングな敗戦となってしまった。しかしながら、防戦一方とはなりながらも最後までタックルを諦めずに戦い抜いたチームに悲壮感はなかった。

得点差は絶望的で一矢も報いることができなかったことは残念だったに違いないが、激しいコンタクトの連続にもかかわらずグランド上に倒れている選手が居なかったことはかつての低迷期にあった大東にはなかったこと。もし、この試合を観たリーグ戦G所属の他のチームの関係者が居たとしたら、その人の顔色は青ざめていたと思われる。「大東は去年以上に警戒すべきチームに成長している」と。前日に法政Gで観た試合(法政vs筑波)とは違った意味で、点差だけから試合内容を判断すること難しい試合になった。だからラグビーの生観戦は止められないとも言える。



◆帝京のホスピタリティ(おもてなし)

帝京の公式ホームページに掲載されているスケジュール表を見ると、4月の2週目から6月の末までの土曜日と日曜日が殆ど練習試合や招待試合で埋まっていることに驚かされる。対戦相手もトップレベルのチームが多く、またグレードが落ちるチームに対してもCからEまでのチームを用意して対戦できるようになっている。普段の練習もさることながら、帝京の強さの源泉となっているのは、様々なレベルでの実戦経験を春シーズンの間に豊富に積むことができること。いろいろなチームをホームに迎えて、他のチームの試合ぶりや選手のプレーをじっくり観ることにこそ計り知れない価値があるように思う。実戦を「観る」経験も帝京の強化サイクルの中にしっかりと組み込まれている。

あとひとつ、百草グランドを訪れて感じたことは帝京のホスピタリティ。部員達が自然な態度でゲストに対して挨拶ができるチームと言う点はさておき、真摯に戦いを挑んでくるチームに対しては、容赦なく叩きのめすと言う形で対戦チームに良い点と改善すべき点をはっきりと示してくれるのが帝京だと思う。対戦相手は何らかの形でお土産をもらってホームに戻ることになるわけだ。大学ラグビー界は帝京を中心に回っているという状況が創り出されているとも言える。多くのチームをホームグランドに招くことで帝京が強くなるだけでなく、対戦チームも強くなっていくとしたら素晴らしいことだと思う。「おもてなし」にはこんなかたちがありだということに改めて気付かされた。

◆大敗の中にも楽しみが増した今シーズンの大東大

大東大の課題はやはりFWのセットプレーと言うことになるだろう。後半にスクラムを押し込まれたことが大量失点に繋がったし、ラインアウトが安定しなかったことで得点機を逸しただけでなく失点も増えたことは間違いない。ブレイクダウンでマイボールを失う場面が多かったことも反省材料になる。しかし、そういった課題はあっても、昨シーズンに立正大戦で初めて観た時以上に楽しみが増したのが今シーズンの大東大。今年はむしろAに昇格して最初に最強のチームと戦えてよかったとすら思えてくる。

もちろん、大東は本日のメンバーがベストという訳ではなく、春シーズンの間にメンバーもポジションも入れ替わっていくものと思われる。本日はベンチにも入っていない選手にはFBの大道が居るし、期待の大型新人クルーガー・ラトゥ(ラトゥ元監督の息子さん)のデビューも楽しみ。しかし、このまま定着させて欲しいと思ったのはサウマキのCTBだ。昨シーズンのデビュー時に、青柳監督をして「ロム-みたいな選手」と言わしめたアスリートタイプの大型かつ高速WTB。しかし、サウマキはWTBでありながら試合ではラックでファイトすることを厭わない選手でもあった。だから、WTBよりもむしろペネトレーターにもフィニッシャーにも、そしてファイターにもなれるニュータイプのCTBとして成長してくれたら面白いと思う。

試合を観るごとにチームにとって新たな歴史が作られていくことを感じさせてくれる新生大東大。絶望的な点差で敗れた試合で言うのも何だが、またしても青柳マジック(それも極上のもの)を見せて頂いたという思いを強くして帝京グランドを後にした。
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法政大学vs筑波大学(第3回関東大学春季大会 2014.4.26)の感想

2014-04-29 17:32:10 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


束の間のセブンズの春が終わり、いよいよ関東大学ラグビーは春季大会に突入。昨年は大幅にシステムが変更になり、AからCの3つのグレードに分けた各グループ内での6チームの総当たり戦となった。果たして今年もシステムが変わるのかと危惧していたが、去年と同じ方式に落ち着いた。やはりこのスタイル(総当たり制)があるべき姿だと思うので、ひとまずは安堵している。

そういったシステムの問題はさしおいても、どうしても気になるのがリーグ戦グループ校のチーム作りの遅れ。元々、春の段階ではチームの仕上がりよりも選手個々のパワーアップとかスキルアップに重点を置き、シーズン直前の夏合宿でチームを仕上げるのが従来のリーグ戦スタイルだったと思う。が、それも春季大会で帝京をはじめとする対抗戦グループ校の基本線ができあがっているチームとのシビアな戦いに直面すると「格差」が拡がっていくのもやむを得ないと感じる。型にはめてガチガチにチームを作る必要はないが、最低限の方向性や約束事を決めて春の段階でもチームをまとめておくべきではないかと思う。そういった意味でも、本日の法政と筑波の闘いは興味深い。

実は、本日が初めての法政グランド訪問になる。春季大会は原則各チームのホームグランドでの開催になり、観戦位置もスタンドがある競技場とは違ってグランドレベルから。でも、これが(全体の動きを立体的に見ることには向いていなくても)意外といい。まずはホームチームが普段どんな環境で練習に取り組んでいるのがわかることが大きい。そして、目の前でプレーしている選手達を観ることで各選手のサイズやプレーそして性格などの特徴が掴めるのがグランドレベル観戦の醍醐味といえる。

京王線のめじろ台駅から「法政大学行き」のバスに乗って約20分で大学構内に到着。しかし、そこからさらに20分近く上りの道を歩かないとグランドに着かないことは知らなかった。余裕をみて早めに家を出たことが幸いして、キックオフの10分前に滑り込みセーフで試合場に着くことができた。



◆メンバー表を見比べて

2日前に発表になる両チームのメンバー表を見てまず感じたのは、このメンバーなら法政が優位に違いないように見えたこと。現状のほぼベストと思われる選手達が名を連ねている法政に対し、筑波は主力選手をかなり欠いている。とくにFWは先発でバリバリのレギュラーはFWではNo.8の山本くらい。ただ、BKは竹中の戦列復帰が明るい材料。その竹中と久内、FB山下一で組むバックススリーは、絶対的なエースの福岡を欠いていても破壊力は高いと言える。強力な選手達が揃った法政FWに対し、FW戦での劣勢を予想される筑波が、そこをどう凌ぐかがこの試合の私的見どころだ

法政はFWもBKもタレント揃いの陣容と言える。FWではHO小池、No.8西内主将(昨シーズンはFL)が筑波にとっては脅威だし、U20の大会から帰国したLO牧野内も楽しみな選手。BKにしてもCTB金はタックルが持ち味で、両WTBの半井と門間にFB今橋を加えたバックスリーはトライゲッター揃い。そうなってくると、やはり興味は昨シーズンに強い関心をよんだHB団の構成がどうなるかということにになる。本日はSH大政とSO井上が先発で起用された。強いFWを活かす形でテンポ良くボールをBKに展開するような形は生まれるだろうか。



◆前半の戦い ~お互いにミスが目立つも法政やや優位の試合展開~

グランドを斜めに横切るようにやや強い風が吹く中、風上?の筑波のキックオフで試合が始まった。まずは法政がカウンターアタックで小池がタテに力強くボールを運ぶ。No.8西内も含め、今やオープンに展開するよりもFWの力強いタテ突破が法政の持ち味となっている。法政は筑波陣22m内にボールを持ち込むもののノックオンでチャンスを潰す。しかし、直後のスクラムでプレッシャーをかけ、SHからのパスをWTB半井がかすめ取るようにインターセプトして難なくインゴールへ。法政が相手のプレゼントのような形で幸先良く7点を先制した。

筑波もすかさず反撃。自陣22m付近でのPKから素早くオープンに展開して左WTB久内がゴール前までボールを運び、ゴール前でのラックからSH吉沢が抜け出してゴールラインを超えた。GK成功で7-7の同点となる。その後、法政はFWのタテ、筑波はBK展開という形で攻防を繰り返すが、双方ともノックオンなどのミスが多くなかなか得点板の数字が変わらない。

8分には法政が筑波のPKがノータッチとなったところをカウンターアタックで攻め上がる。法政のボールキャリアーが筑波のディフェンダーに囲まれて手詰まりとなったところで昨シーズンも散見されて様なノールックの無責任パス(に見えた)が出てしまいチャンスを逃す。せっかくトライまで行けるところだったのだから丁寧なプレーがあればと惜しまれた。14分、今度は筑波がラインアウトオープン展開でラストパスが竹中に通ればというところで痛恨のノックオン。観客にトライのイメージが見えたところでのミスは痛かったが竹中も苦笑いするしかない。

両チームのアタックにミスが出て膠着状態の中、27分にようやく得点板が動く。法政がカウンターアタックから攻め上がり筑波ゴール前でラック。ここからLO川地が抜け出してトライを奪う。GK成功で法政が14-7と再びリードを奪う。しかし直後の30分、筑波はHWL付近のラインアウトからFWでボールを前に運び法政DFと交錯しながらもNo.8山本が法政ゴール前までボールを力強く運ぶ。そして、フォローしたHO長谷部がゴールラインを超えた。GK成功で再び14-14と試合は振り出しに戻る。

法政はせっかくFWでボールを前に運んでもあと一歩のところで反則を犯し得点チャンスを潰すのに対し、筑波が少ないチャンスを活かして得点し追い付く展開。筑波は法政FWのコンタクトの強さに遭ってFL元田、CTB鈴木が相次ぎ負傷交代を強いられる。ただ、押し気味の法政も高速選手が揃っているはずのバックスリーにいい形でボールが渡らない。法政のオープン展開に対して筑波がCTBで徹底的につぶしにかかる。抜けた!と思っても横からタックラーが現れて強烈なタックルを見舞うところはなかなか圧巻だった。

ただ、前半の終盤はFWの圧力に勝る法政がペースを握る。このままタイスコアで前半終了かと思われた39分、筑波は自陣ゴール前でのマイボールスクラムでまたも痛恨のミス。SHからのパスをFL堺が狙いすましたかのようにインターセプト。堺は難なくインゴールまでボールを運び21-14と法政7点リードで前半が終了した。法政にとってはまたしてもプレゼントしてもらったような得点とは言え、後半に向けていい形で前半を戦い終えることができた。逆に筑波にとっては痛いミス。やはりこの試合は戦前の予想通り法政の勝利におわるのだろうか。

しかし、法政のアタックは強力だが組織的に整備されているようには見えない。FWが大きくゲインしたところで、次のアタックに対する形が見えてこない。この試合は筑波サイドの22m付近の位置で法政の筑波陣でのアタックはほぼ真後ろから観る形になったが、筑波の拡がりがあり整備されたディフェンスに対してどうしても法政の選手達の動きがバタバタしているように見える。後半にとくに顕著になるのだが、ブレイクダウンでしばしばボールが停滞していたのは法政がアタックの局面。筑波がなるべく時間をかけずにシンプルにボールを捌いていたのとは対照的だった。



◆後半 ~建て直しに成功した筑波に対し、殆ど何もできなかった法政~

後半、筑波は両PRを体重の重い選手に入れ替えてスクラムの建て直しを図る。SHのミスとは言え、インターセプトによる2失点はFWがスクラムで劣勢に立たされていたことも大きい。ケアすべきは西内や小池と言った突破力のある選手のタテ攻撃で、それを防ぐためにもスクラムの安定は欠かせない。ここがしっかりすれば筑波の持ち味である組織ディフェンスを機能させることで法政のアタックを止める手がかりが掴める。

前半も終盤辺りからは押し込まれてはいてもゲームをコントロールしていたのは筑波の方だったように感じられた。後半はこのことがとくに顕著になり、法政は殆どいい形を作れなくなる。逆に筑波は切り札の竹中を軸としたアタックが機能し始める。7分の竹中をターゲットとしたキックパスは惜しくもタッチを割ってしまうが、17分、遂に竹中に待望のトライが生まれる。センタースクラムからBKに展開して法政BKの裏に絶妙のキック。これを竹中が拾ってゴールラインを超えた。GKは失敗するが19-21と筑波のビハインドは2点に縮まる。

ここで筑波はFL奥山に代えて目崎を投入。ハイボールにも抜群の強さを見せるパワフルな選手を入れたことで筑波のFWの安定感が増したように見えた。BKに較べるとFWがウィークポイントと見られる筑波だけに、山本に続く強力な選手の存在は頼もしい。劣勢に立つ法政も、ときおり目の覚めるようなアタックを見せて観客席を沸かせる。とくに24分に見せたFWを絡めてショートパスの繋ぎによる強力なタテ突破は、(これも)ノールックのラストパスが丁寧に繋がれば確実にゴールラインまで行けたプレー。ミスに助けられたとはいえ、筑波は命拾いした。

26分、筑波はカウンターアタックから竹中が右サイドのタッチライン際を激走して大きくゲインしCTB亀山雄大のトライをアシストする。GK成功で筑波は26-21と遂に逆転に成功。こうなると竹中は止まらない。31分、トライには繋がらなかったがFB山下から絶妙のタイミングでパスを受けてまたもやラインブレイク。そして34分、筑波は法政陣10m付近のラインアウトからオープンに展開してまたもWTB竹中が右サイドの突破に成功。パスを受けた左WTB久内がトライを奪いGKも成功して33-21とほぼ勝利を手中にしたかに見えた。

しかし、ここからホームでこのままでは終われない法政のスクランブル気味の猛攻が始まる。後半のラスト5分間はスイッチが入ったときの法政の凄まじさを感じさせる時間帯でもあった。オープンに大きく展開すると言うよりはテンポ良く短いパスを繋いでタテを突くというアタックだが、組織DFの筑波は逆に翻弄されてしまう。38分に金がゴールラインを超えたところで牧野内のプレースキックも決まり28-33と法政のビハインドは5点となり、俄然法政サイドの観客席が盛り上がる。それにしても、牧野内のキックは惚れ惚れするくらい安定している。ロングキック1発という局面では彼がGKを蹴る場面も見られることだろう。

終盤には筑波の選手の足も止まりかけており、法政の逆転勝利も視界に入った中、筑波も最後の粘りを見える。元来、厳しい局面に追い込まれたときに強さを発揮するのが筑波の選手達。結局、法政が攻めきれないまま試合終了となった。とくに後半は殆どの時間帯でゲームを支配したのは筑波。しかし終わってみれば5点差の僅差の好ゲームということになっている。ラグビーの評価の難しさを感じさせられた試合だった。



◆僅差の中に感じられた、けして小さくない差

出場メンバー、得点経過、試合結果から見たら、「筑波はこのメンバーでよく勝てた」と「法政はまずまずのスタートが切れたのでは?」という判断になるかも知れない。しかし、実際にゲームを観た感想は、得点差には表れない、けして小さくはない差が両チームの間にあることを感じさせられた試合だった。とくにそれを強く感じたのは、両チームの後半の戦いぶり。端的に言うと、メンバー交代などで建て直しに成功した筑波に対し、有効な手が打てたとは言い難い法政ということになる。

両チームとも緒戦ということもあり、ミスが多かったことは事実。だが、BKに展開して大外で勝負しトライを取るという意図が明確に見えた筑波に対し、法政がどんなラグビーをしようとしていたのかが最後まで見えなかったことが(リーグ戦Gファンにとっては)気になった点。法政のアタックがしばしばブレイクダウンの局面で停滞したことでそんなことを感じた。逆に後半の筑波はシンプルにBKに展開するだけでなく、様々なオプションを試みる余裕も見せた。基本線がしっかりできているから試合中に応用も可能なのだろう。

もちろん、去年の今頃に較べたら法政も状態はいいとは思う。今後、春シーズンの間に試行錯誤を重ねて秋のリーグ戦では優勝争いに絡む強力なチームを作れると思う。しかし、例えばだが、この日対戦した筑波は法政が試行錯誤をしている間にチームを進化させていくだけの下地が既にできていると感じる。法政に限らずリーグ戦G校のチームを見ていてフラストレーションを感じるのはチームができあがるのがとにかく遅いこと。「春はウェイト重視」とか、「チーム作りは選手の成長を見ながら」とか言っているうちに、対抗戦Gのトップ校との力の差が縮まるどころか日々開いていくことに気が付いていないとしたら残念だ。せっかく春に腕試しのチャンスができたわけだから、やられっぱなしでは終わらないように頑張って欲しいと切に願う。
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第28回 Seven A Side(関東リーグ戦セブンズ 2014.4.20)の感想

2014-04-24 22:30:19 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


春季限定セブンズシリーズの締めは今年で28回目を迎えた「リーグ戦セブンズ(通称)」と呼ばれている “SEVEN A SIDE”。例年ならYC&ACセブンズと東日本大学セブンズの間に開催され、関東リーグ戦G所属校にとっては、東日本大学セブンズの前哨戦的な役割も果たしている大会となっている。いや、それ以前に(セブンズという形態をとっているとはいえ)関東リーグ戦Gに所属する1部リーグから6部リーグまでの全チームが同じ日に試合を行うという、いわば「リーグ戦Gのお祭り」と言えそうな重要なイベント。とくに昨年度は2つのグランドに分かれたとは言え、同じ場所(町田市)に全チームが一堂に会するという画期的な大会となっていた。

しかしながら、残念なことに、この大会は今に至ってもけして認知度が高いとは言えない。実際に関東リーグ戦Gに所属するチームのファンにもあまり関心を持たれていないふしがある。その原因のひとつは、おそらく主催者である「関東大学ラグビーフットボール連盟」(以下、連盟)の告知がいつも遅いことにある。今シーズンはとくに遅れて、日程が明らかとなったのは4月5日だった。他の大会や試合のスケジュールが出そろい、残りはこの大会だけとなった段階で、この日(4月20日)しかないだろうという形での告知だった。しかも、4月20日からは関東大学ラグビーの春季大会が始まり、中央大学は同じ日に帝京大学とBマッチを含む対戦を行うことがずっと前に発表になっていた。中央大の動向が注目を集めていたわけだが、当初発表(4月5日)は、明記こそないものの「中央大は不戦敗」(棄権)と判断せざるを得ないような内容になっていた。

情報の混乱はさらに続く。4月17日に連盟のHPで「訂正発表」がなされたのだが、スケジュール表を見る限りは中央大が一転して出場するとも受け止められるような内容になっていた。ただ、中央大の公式サイトにはリーグ戦セブンズに関する情報は一切掲載されておらず、とても出場を決めたとは受け取れない状況だった。また、各大学が出場選手を発表していく中で、拓殖大のHPに載った情報にも驚かされた。東日本大学セブンズでコンソレーショントーナメント優勝を果たし、この大会でも活躍が期待されていた山梨学院大学が棄権となっていた。試合会場に着くまで果たして何チームが出場しているのかがわからないという中で、朝の天候のようにモヤモヤした感情を胸に抱きながら会場の町田市立陸上競技場に向かったのだった。



[1回戦]

○流通経済大学 36-5 ●玉川大学
●山梨学院大学(不戦勝)○拓殖大学
○日本大学 38-7 ●国士舘大学
○東海大学 32-5 ●専修大学
○大東文化大学 31-19 ●東洋大学
○法政大学 52-12 ●白鴎大学
○立正大学 36-21 ●國學院大學
●中央大学(不戦勝)○関東学院大学

スタジアムの入り口に着いた段階で、張り出されていた1枚のトーナメント表が目に留まった。そこには既に2本の赤い線が引かれている。「やっぱり」という残念な気持ちになった。事前に得られた情報通り、中央大に加えて山梨学院も棄権し、2部の拓殖大学と関東学院大学が不戦勝となっていた。リーグ戦セブンズの意義のひとつは、2部所属校が1部所属校の選手達のパワーやスキルを実戦で体験できることにある。そういった意味では、1部復帰を目指す両校にとっても貴重な経験を積める試合がひとつずつ失われたことになる。全体では、コンソレーショントーナメントの2試合も含めて、合計4試合が消滅という形で大会が始まった。

ただ、会場で配られたメンバー表を見て気分は回復に向かった。優勝候補の筆頭に挙げられる流経大を筆頭に、東海大、日大、立正大がほぼベストの陣容となっている。これなら2つのチームが棄権でもセブンズのクオリティ自体は落ちない。法政はお試しモードながらまずまずのメンバーで、次週に帝京大との試合(春季大会とBマッチ)を控える大東大は完全にリフレッシュされた陣容。2部に目を移すと、YC&ACでチャンピオンシップ準優勝に輝いた専修大を筆頭に、拓殖大や関東学院だけでなく進境著しい國學院大學や国士舘、東洋大も要注目とチームとなっている。



さて、例年なら2部所属校が1部所属校を破る「下克上」がいくつか起こる1回戦だが、今回は不戦勝の2校以外はすべて1部校が緒戦を突破し、2部校との力の差がくっきりとでる形になった。流経大はベストメンバーをピッチ上に順次登場させながらも、無理をせずにウォーミングアップを兼ねたような戦いぶり。日大は最初からエースのマイケルを投入することで圧勝できたため、東日本セブンズ緒戦での温存(?)には疑問に残る。東海大と専修大の激突は1回戦屈指の注目カードだったが、東海大が過去2大会(YC&ACと東日本)の鬱憤を晴らすような気力充実の状態でエンジン全開となり、準備万端だったはずの専修大はつけいる隙を見いだせないままに完敗を喫してしまった。

大東大は4年生の木藤古を除けばレギュラークラスが不在で半分以上を1、2年生が占めるフレッシュな顔ぶれだったが、粘る東洋大を振り切って緒戦突破を果たした。法政は東日本大学セブンズのメンバーとはほぼ入れ替わった陣容ながらも白鴎大をまったく寄せ付けず大量得点を挙げて勝利。立正大もリーグ戦Gのエース的存在である早川はもちろんのこと、新人留学生のアライアサ・ローランド・ファアウイラが早くも存在感を見せつけた。ただ、この大会にかけている國學院も粘りを見せて3トライを挙げて抵抗し、1回戦ではもっとも見応えのある接戦を演じた。

余談ながら、棄権チームが2つ出たことで直前のスケジュール変更の意味するところが露わとなる。当初は中央大絡みの試合2つ分の時間を配分して試合進行に余裕を持たせる設定だったようだ。しかし、さらに棄権チームがひとつ出てしまったことで時間配分の再調整を余儀なくされたものと思われる。そこで、タイムスケジュールを名目上は全チーム出場の形に戻すことにしたのではないだろうか。ただ、この場合だと棄権チーム絡みの試合の間は観客が20分近く待たされる格好になる。会場ではその間にBGMが流されたが、ゴール裏で「次の試合」に備えてアップするチームがある中で、ピッチ上では何も行われないまま虚しく時間が過ぎていく。ネットを使って事前に情報を素速く流せる時代になっているのだから、事前に告知をした上で、進行に余裕を持たせつつ遊びが出ないようにする方法は取れなかったものだろうか。最初にBGMが流れてきたときには事情説明もなく、狐につままれたような状態だった。



[チャンピオンシップ1回戦]

○流通経済大学 36-0 ●拓殖大学
●日本大学 19-29 ○東海大学
●大東文化大学 5-35 ○法政大学
○立正大学 12-7 ●関東学院大学

山梨学院の棄権により不戦勝でチャンピオンシップに進んだ拓大は、緒戦の相手が流経大になってしまったのが気の毒な面もあった。注目選手の新留学生シオネ・ラベマイ(190cm、105kg)が強烈なハンドオフ連発のパワフルな突破を見せた場面はあったものの、今シーズンも決定力不足の課題を克服することは難しそうな印象。東海大と日大の戦いはYC&ACセブンズの雪辱戦の様相を呈するガチンコ勝負になったが、心気一新でまったく別のチームとなった感がある東海大が持ち味のパワフルなところを見せて日大を圧倒しベスト4にコマを進めた。

法政は東日本大学セブンズで活躍したメンバーが殆ど出場せず、代わりに西、森岡、和田、時崎といった選手達が中心となってで戦いに臨んだ。レギュラークラスが不在の大東大が元気いっぱいのところを見せて先制トライを挙げてスタンドを湧かせたのも束の間、法政が選手層の厚さを見せつける形であっという間に逆転に成功し、その後は一方的な展開となってしまった。立正大と関東学院の戦いはパワーで劣る関東学院が粘り強いディフェンスを見せて接戦に持ち込むことに成功する。最後は立正大がパワーの差を見せつける形となったが、関東学院が復活の兆しを掴んだかのような戦いぶりを示した。関東学院も中央大の棄権により1試合のみの消化で会場を去ることになったのは残念だったに違いない。結局、チャンピオンシップのベスト4は流経大、東海大、法政、立正のほぼ予想通りの顔ぶれとなった。

[コンソレーション1回戦]

○玉川大学(不戦勝)●山梨学院大学
●国士舘大学 0-26 ○専修大学
○東洋大学 40-14 ●白鴎大学
○國學院大学(不戦勝)●中央大学

4試合中2試合が消滅するという寂しい状態の中で、専修大が前評判通りの仕上がりの良さを見せた。国士舘も期待したチームのひとつだったのだが、専修の巧みな仕掛けの前に力を発揮することなく敗退。東洋大はチームの状態がよく、白鴎大を圧倒して2回戦にコマを進めた。それはさておき、「進行係はタイムテーブル通りに試合を進めて下さい。」とアナウンスする前に、ここに至った経緯の説明をすべきではないだろうかとよけいなことも考えてしまった。



[チャンピオンシップ2回戦]

○流通経済大学 26-19 ●東海大学
●法政大学 20-22 ○立正大学

ほぼベストメンバーでのガチンコ対決となった流経大と東海大の戦いは事実上の決勝戦。東海大が東日本大学セブンズまでの状態の東海だったら流経大の圧勝だったかも知れないが、今日の東海大はまったく別のチームになっている。特別にセブンズ向き仕様にしなくても、左右へのワイドな展開を繰り返し、小原や近藤にいい形でボールが回った段階でトライは約束されたようなもの。流経大のリリダムやリサレも凄いが、小原だって負けていない。一段と凄みを増したランが本当に頼もしい。しかし、本日の東海大でイチオシの選手は堅実なプレーぶりが光るダラス・タタナ。留学生の看板を背負ってしまうと、どうしてもリーチのような突破役を期待してしまうから、ダラスは損をしているような気がしてならない。自分が目立つことよりも、どうやったらチームが活きるかを常に考えて結果を出している選手だと言うことがセブンズだとはっきりわかる。といって形で東海大の攻撃力も見応えがあったのだが、セブンズのアタックに関しては合谷が居る流経大が1枚上で、最後は流経大が貫禄勝ちを収める形となった。

もう一試合は、メンバー的にみて立正の圧勝もあるのではと見ていたが、やはり法政のBK陣は才能集団。セブンズの戦い方に慣れてくるにしたがってチーム力が上がっていくから脅威。逆に言うと、チーム作りさえ間違えなければ昨シーズンのようなこと(6位で選手権出場を逃した)はないはず。15人制のBKラインの構成がこのメンバーなのか、それとも東日本大学セブンズのメンバーなのかはわからないが、セブンズに出ていないFWのメンバーも強力なので今シーズンは上位復活が期待出来そうだ。立正大は早川以外にも全般的に選手の力が上がっている印象。積極的にアタックを仕掛けるチームに変身できていれば、上位進出も夢ではなさそうだ。



[コンソレーション2回戦]

●玉川大学 5-43 ○専修大学
●東洋大学 12-24 ○國學院大学

1部所属チームとの戦い(1回戦)ではパワーと個人能力の違いに泣いた感がある2部所属チームだが、選手達のレベルが合ってくると拮抗した内容のセブンズらしい戦いができる。この大会に関しては専修、國學院、東洋に関東学院を加えた4チームが2部所属校の実質的なベスト4といったところだろうか。とくに見応えがあったのは、専修の土俵際まで追い詰められたところから絶妙の切り返しで相手ゴールラインまでボールを運ぶところ。今シーズンはひときわ厳しい戦いとなることが予想される秋の2部リーグの公式戦にあっても、これは大きな武器になるに違いない。

[チャンピオンシップ決勝&三位決定戦]

○東海大学 31-0 ●法政大学(チャンピオンシップ3位決定戦)
○専修大学 19-7 ●國學院大学(コンソレーション決勝)
○流通経済大学 45-12 ●立正大学(チャンピオンシップ決勝)

なぜか終盤に試合が盛り上がっていくのとは反比例する形で身体が凍えるような状態になってしまう春のセブンズ。終盤はウィンドブレーカーの下にセーターを着込まなければならないくらいに寒かった。試合内容も棄権が2チームもでてしまったため「寒く」なってしまうのだろうかと危惧されたわけだが、流経、東海、専修などが高いパフォーマンスを示してくれたことで救われた感がある。

チャンピオンシップの3位決定戦は、2回戦からのインターバルが短かった法政の方が気の毒な面もあったが、東海大が自慢のランナー達の活躍により有終の美を飾った。とくに小原や近藤に負けない活躍を示した永阪が今後どのような形で起用されることになるのかに興味がでてきた。コンソレーション決勝の専修と國學院も手に汗握る見応えのある戦いとなった。最後まで圧倒的な力を見せつけて優勝に輝いた流経大は、セブンズで掴んだいい形(合谷を中心とした攻めの姿勢)を15人制のラグビーにつなげて欲しい。



◆セブンズと15人制は車の両輪

束の間だった短いセブンズの春が終わった。東日本大学セブンズでも感じたことだが、大学生のセブンズでも選手個々の能力の差が顕著に試合結果に表れる時代に入ったといえそうだ。セブンズが五輪種目となり、代表チームがコア15昇格を果たすなど「追い風」が徐々に強く吹き始めた中で、大学のトップチームのセブンズに対する考え方自体も変わってきたことが大きいように思われる。セブンズらしさを「余興」で終わらせるのではなく、セブンズに真剣に取り組むことで得られるプラスアルファの部分(勝負する姿勢)を15人のラグビーに活かそうとする姿勢も感じられる。また、セブンズは東日本で3連覇に輝いた筑波のように、メンタル面でのチーム力向上に活かせる部分もある。

ここでひとつ思い浮かんだのは「セブンズと15人制は車の両輪」というキャッチフレーズだ。かつては15人制のオマケのような扱いだったセブンズも今や他の球技のスキルも取り込んだ「別のスポーツ」として進化を遂げている。しかし、一方でセットプレー重視、あるいは選手の大型化やパワーアップに見られる15人制回帰とも受けれるプレースタイルも垣間見ることができる。そして、セブンズで磨かれた技術を戦術のバリエーション拡大に活用することで15人制のラグビーの戦術アップを図ることも行われていくだろう。セブンズの競技レベルが上がることで、あたかも15人制と車の両輪をなすようななってきているのが現在のラグビーなのかもしれない。

世界的な指揮者の小澤征爾は、少年時代にピアニストを志す傍ら楕円球を追いかけていたラガーマンとしても知られる。試合で大けがをしたことがきっかけでピアニストになることを諦めて指揮者を志すことになったわけだが、ラグビーファンにとっても近しい存在の音楽家と言える。その小澤さんが師匠のカラヤンにオペラの経験が乏しいことを見抜かれ、「シンフォニーとオペラは車の両輪。どちらもこなせなければダメだ」と諭されたそうだ。このことが自身にとっても貴重な助言となり、音楽性をより豊かにしたと言われている。ラグビーでもチームとしてバランスを見ながら両方に取り組むことで同じような効果が得られることになるのではないだろうか。

セブンズはラグビー経験がなくても運動能力に秀でていれば五輪を目指せるスポーツとして普及拡大を目指す考え方がある。しかし、「東京セブンズ」を観ても分かるように、むしろ今の進化形のセブンズで必要とされているのはラグビーの試合を経験したプレーヤーだからこそ持ち得るセンスではないだろうか。100mを10秒フラットで走れるトップアスリートが野球で盗塁王になることが困難なことと同じだと思う。世界有数のラグビー人口を誇る国なのだから、ラガーマンがセブンズに取り組みやすい環境作りをすることも大切ではないかと思った。

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第15回 東日本大学セブンズ選手権大会(2014.4.13)の感想

2014-04-16 23:19:53 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


私的セブンズ三連チャンの第2弾は今回で15回目を迎える東日本大学セブンズ。先週のYC&ACセブンズ大会で圧倒的な力を見せつけて優勝した流経大と、その流経大にチャンピオンシップ準決勝で肉薄(12-19で惜敗)した筑波の2強に他の出場校がどこまで迫るか、あるいは下馬評(流経と筑波が2強を形成)を翻すような活躍を見せるチームは表れるのかを楽しみに秩父宮に向かった。

朝の8時50分から第1試合が始まり、熱戦が続いた後、31試合目のチャンピオンシップ・ファイナルは予想通り流経大と筑波の2強の激突となった。ちなみに、昨シーズンは両チームが準決勝で相まみえ、緊迫した戦いの末、筑波大が10-7で流経大を振り切っている。今回は昨シーズンを上回るような死闘となったが、今年も栄冠は筑波に輝いた。見事3連覇を達成した筑波を筆頭として、関東リーグ戦G各校の戦いぶりを中心に感想を記す。

[筑波大学]
○54- 0 立教大学(1回戦)
○42- 5 明治学院大学(チャンピオンシップ2回戦)
○21-17 大東文化大学(チャンピオンシップ準決勝)
○21-17 流通経済大学(チャンピオンシップ決勝)

筑波は1回戦で立教を一蹴し、十分な準備を経て戦いを挑んできたと思われる明治学院も圧倒して順当にチャンピオンシップの準決勝にコマを進めた。昨年と一昨年にこの大会で優勝を果たしているとは言え、筑波はセブンズに特化したチーム作りは行っていないと思われる。しかしながら、毎年個々の強さが活きた組織的なチームで戦いに臨んでくる。とくに精神的なタフネスの面では、大学でも随一の強さを持っているチームではないかという想いがより強くなった。

準決勝の大東大戦、決勝の流経大戦のいずれも接戦となったが、タフな試合に勝ち抜くことができたのは、筑波がファイナルまでの4試合をどう戦えばよいかを過去の経験を通じて学び取っているからだと思う。一例を挙げると、チャンピオンシップ準決勝からの登場となった山下一の起用法。山下は福岡や竹中と言った看板スターにも負けない走力を持った選手だが、序盤の2試合には出ていなかったので怪我かと思った。しかし、後半の重要な2試合に出場してゴールキックをすべて決めたことが3連覇に繋がったといえる。最初から出ている選手達の消耗への備えもさることながら、接戦でのキックの重要性を加味しての温存(満を持しての登場)だったのかも知れない。

筑波の戦いぶりでもうひとつ強く印象に残ったのは、先週のYC&ACセブンズでもそうだったように、人数をかけて強力な選手を捕まえてもディフェンスの組織に綻びが出ないこと。とくに圧倒的な攻撃力を誇る流経大の猛攻を身体を張った防御で凌ぎきった点は特筆に値する。おそらく日本の大学生で一番パワフルな選手と言えそうなリサレ・ジョージを低いタックル一発!で倒した場面が(なかなか観ることができないだけに)強く瞼に焼き付いている。



[流通経済大学]
○73- 0 東北学院大学(1回戦)
○31-12 慶應義塾大学(チャンピオンシップ2回戦)
○26-17 法政大学(チャンピオンシップ準決勝)
●17-21 筑波大学(チャンピオンシップ決勝)

先週のYC&ACセブンズでは、ピッチ上にリサレ・ジョージ、リリダム・ジョセファ、シオネ・テアウパの強力な3人のうちの2人が常に立っているというワールドクラスの陣容で他を寄せ付けずに優勝を果たした流経大。とくに、1対1になったら誰も止められないリサレと、2対2になったら外についたフォロワーは必ずラストパスをプレゼントしてもらえるというリリダムのコンビは超強力。ただ、大学生のセブンズは留学生の出場が1人に制限されることから今回はパワーダウンが予想された。しかしながら、それを補って余りある運動量で勝負に挑み、ファイナルまで到達したのがこの日の流経大だったと思う。

その立役者は、ディフェンダー達をパス、ラン、キックを駆使して縦横無尽に切り裂く合谷和弘といって間違いない。そして、この日は絶妙のパス(時にはキックパス)の受け手がいた。兄の合谷明弘をフィニッシャーにする心憎い演出も光った。流経大は緒戦で東北学院を粉砕し、2戦目も慶應を寄せ付けず圧勝。準決勝では法政の攻撃力に手こずったものの貫禄を見せてファイナルへ。リサレとリリダムの揃い踏みとはならなくても、やはり攻撃力は圧倒的だった。しかしながら、決勝戦では筑波の粘り強いディフェンスの前にあと1本が決められずに涙を呑んだ。しかし、大学レベルを超えたと言ってもいいファイナルの熾烈な戦いは今シーズンのベストゲームのひとつとして観た者の記憶に残ることだろう。

[中央大学]
●21-32 東海大学(1回戦)
○17-12 帝京大学(コンソレーション2回戦)
○24-17 早稲田大学(コンソレーション準決勝)
●21-31 山梨学院大学(コンソレーション決勝)

中央大にとってセブンズの緒戦はなぜか鬼門のようだ。YC&ACは2年連続で相手が筑波だったので不運だったと言ってしまえばそれまでだが、コンソレになると息を吹き返したように元気になるから不思議。ただ、来シーズンこそは「コンソレの中央」を脱して欲しいと思う。そのコンソレで見応えがあったのは、準決勝の早稲田戦。YC&ACと同じく、先制しながら追い付かれ、さらにリズムを崩しかけた悪い流れだった。しかしながら、今度はチームの建て直しに成功し、勝利を掴み取ったことは大きい。

今シーズンの中央だが、羽野や山北といった強力な選手達が抜けても基本的に黄金のBK陣で戦えそうなことに変わりはない。とくに再三鋭い走りを見せてフィニッシャーとなった高はリーグ戦G各校にとって要注意選手であることがはっきりした。また、YC&ACではやや精彩を欠いた感のある住吉もスピードスターとしての本領発揮で攻守に活躍。今シーズンも長谷川との併用で後半からの登場となりそうだが楽しみが増した感がある。中央大が昨シーズン以上の成績(優勝しかない)を挙げられるかはやはりFW次第といったところだろうか。

[大東文化大学]
○17-12 帝京大学(1回戦)
○29-17 立正大学(チャンピオンシップ1回戦)
○27-19 東海大学(チャンピオンシップ2回戦)
●21-17 筑波大学(チャンピオンシップ準決勝)

特別にセブンズの練習はしていないという情報もあったが、やはり大東大にはセブンズ向きの勝負出来る人材が揃っていることを実感した。恐るべきルーキーだったサウマキ、小山に大道の3人は期待通りの活躍で、さらにこの日がデビュー戦となり話題を独り占めしたクルーガー・ラトゥ(ラトゥ氏の息子さん)も楽しみな逸材。新たな新人の登場だけでなく、上級生の巻き返しもありそうな状況で大東大のレギュラー争いは熾烈を極めそうだ。

しかしながら、大東で一番印象に残った選手は一回り大きくなった長谷川だった。運動能力の高さは日本人離れしていて、サウマキも霞むような感じだった。テビタが万全の状態ならエイトに据え、この日も力強いランを見せた鈴木と篠原主将をFLに配置した3人を第3列とし、長谷川をLOに据えることで最強の2、3列ができあがる。ファイナルには進めなかったが、1回戦の帝京を始め、立正、東海に筑波とパワフルな相手に対しての3勝1敗は明るい材料。15人で戦う大東は、セブンズの拡大バージョンとも言えそうなパスと個人突破を主体としたランニングラグビーを展開してくれることを期待したい。

[東海大学]
○32-21 中央大学(1回戦)
●19-27 大東文化大学(チャンピオンシップ2回戦)

緒戦は中央大を圧倒したものの、大東大に苦杯を喫した東海大。石井塊が欠けても誰も止めることができない小原や近藤が居るので厄介だ。選手達の分厚い胸板やパワフルなアタックを見ている限り、東海大の覇権奪還への期待が高まる。しかしながら、ディフェンスが相変わらず泣き所であることが露呈され、チーム作りに対する不安を抱いてしまうことも事実。あっさりと抜かれる場面が目立つのは、1人1人の技術が不足しているからと言うよりも、選手間のコミュニケーションが上手く取れていないことに原因があるのではないだろうか。高速バックスリーにいかにいい形でボールを渡すかという攻撃のことはさておき、やはり覇権奪還の鍵を握るのは組織的なディフェンスをいかに整備するかではないかと思った。



[日本大学]
● 7-29 慶應義塾大学(1回戦)
○63- 0 道都大学(コンソレーション1回戦)
○48- 0 東北学院大学(コンソレーション2回戦)
●17-19 山梨学院大学(コンソレーション準決勝)

日大も中央大同様、セブンズは緒戦が鬼門のようだ。YC&ACでの戦いぶりを観ても、慶應は準備したチームと見なされただけに(怪我でなければ)マイケルを温存したように見えたことが疑問に残る。コンソレに入って、道都大と東北学院大に対しては貫禄を示してトライを量産できたが、山梨学院に競り負けてしまったことが不安材料。YC&ACでの戦いぶりを観ても、BKのコンビネーションはうまくいっていそうなのだが、やはりどうしても気になるのはFW。ずっと課題として残っているセットプレーが安定しないようだと今シーズンも苦しい戦いを強いられそうだ。

[法政大学]
○22-12 山梨学院大学(1回戦)
○29-19 明治大学(チャンピオンシップ2回戦)
●17-26 流通経済大学(チャンピオンシップ準決勝)

法政は、セブンズの練習を殆どしていなかったと思われるものの、BK選手のランニング能力の高さがよくわかる戦いぶりを示した。SOを誰が務めるのかは不明だが、この日ピッチに立ったSH大政、CTBに金、両WTBに今橋と半井と並べてみても強力なBKラインになる。ここにFWとして西内、小池、牧野内らが加われば強力な15人のチームができあがりそう。セブンズだけで判断するのは早計かもしれないが、今シーズンの法政はまずまずのスタートが切れたのではないだろうか。

[立正大学]
○55- 0 新潟大学(1回戦)
●17-29 大東文化大学(チャンピオンシップ1回戦)

立正大は、チャンピオンシップの1回戦で大東大とあたったこともあり早々とトーナメントから姿を消すことになってしまった。ただ、今シーズンの立正大は昨シーズンよりも確実にパワーアップしたラグビーを見せてくれそうだ。注目選手はやはりスピーディーなランが光る早川。今シーズンもWTBとしてトライの山を築くことになりそうだ。一方、期待を集めていた新潟大だったが、立正大との個々の力の差は如何ともしがたく、大敗を喫してしまった。

[山梨学院大学]
●12-22 法政大学(1回戦)
○63- 0 道都大学(コンソレーション1回戦)
○31-12 成蹊大学(コンソレーション2回戦)
○19-17 日本大学(コンソレーション準決勝)
○31-21 中央大学(コンソレーション決勝)

山梨学院は、緒戦で法政の個人能力の高さに翻弄されてしまった感があったが、コンソレーションで建て直しに成功して見事優勝を果たした。ティモシー・ラファエラの卒業でパワーダウンが心配されたが、3年生のソシセニ・トコキオと新人のパウロ・バベリの活躍を見る限り杞憂に終わりそう。拓大を撃破して1部返り咲きを果たした昨年末の入替戦でも、その時点で十分1部で戦えそうな感触だったが、その印象は間違っていなかったようだ。悲願の初勝利はもちろんのこと、台風の目となって上位陣を攪乱することも十分に考えられる。おそらくリーグ戦Gの各チームも山梨学院に要注意マークを付けたものと思われる。

余談ながら、全試合が終わってバックスタンドからメインスタンドに向かって引き上げる途中、山梨学院の選手達が陣取ったゴール裏のスタンドから鼻歌交じりの陽気な選手が2人出てきた。視線が合ったのでスマイル混じりに「コングラチュレーション!」と声をかけたら、彼らもにっこりと拳固で軽くゴッチンコしてくれた。本当に楽しい選手達だなぁと感じるとともに、この明るさが山梨学院を変える(変えている)かも知れないと思った。ここで、山梨学院に付いた要注意マークが少し大きくなった。

[拓殖大学]
●24-33 明治学院大学(1回戦)
●26-31 早稲田大学(コンソレーション1回戦)

昨年末の入替戦で山梨学院に完敗して2部降格となった拓大。チーム建て直しの足がかりが掴めたかどうかが気がかりだったのだが、2連敗と前途多難を思わせる船出となってしまった。緒戦の相手が明治学院だったことで多少油断した部分があったのかも知れないが、相手が十分に準備をしてきていると気がついた時点で「とき既に遅し」だったことが悔やまれる。ウヴェが卒業してパワーダウンが避けられない中で、1部復帰を目指してどのようにチームを作り上げていくのか気がかり。ただ、幸いにも春季大会で立正や山梨学院と戦うチャンスがあるので、その辺りをじっくりと見極めていきたい。



◆気になった格差

東日本大学セブンズは、関東大学ラグビーのリーグ戦Gと対抗戦Gからの9校ずつに、北海道と東北の代表、地区対抗の代表2校の計22校が参加する。過去の大会ではリーグ戦G校と対抗戦G校を除いた4校の頑張りが大会を盛り上げる要素となっていた。しかしながら、73-0、68-0、63-0といった7分ハーフの試合とは思えないような記録的なスコアが続出したことでもわかるように、関東大学のリーグ戦G・対抗戦Gの18校と残り4校の間の力の差は年々拡がっているように感じる。個々の力は劣っていても、セブンズの戦術に磨きをかけることで何とかパワフルなチームに対抗できていた時代は終わったと言ってもよさそう。短時間で大量得点差が付いてしまう試合が多くなり、また闘志を失ったかのような選手達が増えれば大会の盛り上がりを欠くことになる。今年で15回を迎えた大会も対策を考える必要に迫られているように感じた。

◆セブンズに取り組む意義

もうひとつ思ったことは、対抗戦Gの4強がひとつもファイナルまで進めなかったこと。さらに言うと、帝京と早稲田は緒戦で敗れてコンソレーションに回っている。リーグ戦G校はレギュラークラスで固めた陣容ということもあり、早慶明帝のファンからは「その気になれば勝てる」という声も聞こえてきそうだ。早稲田の選手達は総じて小さく、また、明治の選手達はどうしてもスリムに見えてしまうのはベストの選手達ではないからかもしれない。しかし、仮にベストの陣容で戦いに臨んでも筑波や流経に勝てるかどうかは疑問。それは、筑波も流経もベストメンバーで死闘を繰り広げることで肉体面だけでなく、精神面でも確実に強くなってきていると感じるから。

筑波の場合は、チームのメンタル面の強化のためにあえてタフな戦いを挑んでいるとすら感じる。早慶明帝が必ずしもベストの陣容ではなく、また準備不足で大会に臨むことで、せっかくの強化のチャンスを逃しているとしたら残念に思う。セブンズに取り組む意義は、パスやランなどのスキルアップもさることながら、長距離走ではなく、短距離を1日に何度も走るような体験を経て、選手達の精神面の強化を図ることにもあるような気もする。ファイナルの筑波と流経が演じたタフな戦いを観るにつけ、そんな想いが強くなった。

だからという訳ではないが、ファイナルに近づくにつれてスタンドからどんどん観客が減っていく現状に一抹の寂しさを感じる。とくに敗退したチームの選手達は他のチームの選手達の戦いぶりを観るせっかくのチャンスを活かしていないように思えてしまうのだ。(もちろん、最後まで試合を観ていたチームがなかった訳ではないが)。普段見る機会のないチームの選手達の戦いぶりから得られるものはけして少なくはないはずだ。

◆4月20日はセブンズ・ア・サイド(リーグ戦Gセブンズ)だが...

私的セブンズ3連チャンのファイナルは今度の日曜日に町田市立野津田公園内の陸上競技場で開催される「セブンズ・ア・サイド」。今回で28回目を数え、東日本セブンズのほぼ倍の歴史を持ったリーグ戦Gのお祭りとも言える大会。しかしながら、リーグ戦G所属校のファンでさえ、この大会に関心を持っている人は少ないのではないだろうか。そのひとつの要因として、関東大学フットボール連盟の告知が遅いことが挙げられる。関東協会のHPでもこの大会の紹介はなく、代わりにあるのは全早慶明の試合と関東春季大会の開幕戦となる帝京大と中央大の試合。

ここで、リーグ戦G校のファンの方々にはひとつの疑問が湧いてくるのではないだろうか。リーグ戦Gのお祭りがある日になぜ所属校の公式戦が別途組まれているのか。さらに連盟のHPには不可解な情報が載っている。発表になっているセブンズ・ア・サイドのスケジュール表を見ると、明らかに中央大が不戦敗(関東学院が不戦勝)と読み取れるのだが、そのような説明は一切ない。これをどう捉えればいいのだろうか。

今年のセブンズ・ア・サイドはコンソレーション方式が復活し、また、先だってのYC&ACセブンズで専修大が準優勝に輝いたこともあり白熱した戦いとなることが予想される。セブンズでは2部チームと1部チームの力の差が縮まるため、コンソレーションに回る1部のチームがいくつか出てくることが予想される。一方で、帝京に挑む中央大の戦いも観たい。そんな1ファンにとって今回のようなダブルブッキングは残念で仕方がない。来年度は同じようなことが起こらないことを強く望みたい。
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冷戦時代に聴いたソ連のジャズ(4)/BCLで世界中の音楽に親しむ

2014-04-12 20:05:52 | 地球おんがく一期一会


ワールドバンドラジオは私のBCLライフ、いや生活自体も変えた。朝は起きてから学校に行くまで、夕方も帰ってきてから寝るまで、ラジオのチューニングダイヤルを4つの短波帯にまたがって上から下へ、下から上へ、そして上から下へとひたすら回し続けた。お陰で何度かダイヤルが空回りするようになってしまい、ラジオがその度に修理工場に入院した。また、自宅周辺に(文字通りの)ロングワイヤのアンテナを張り巡らしたりして、たまたま社宅だったから大目に見てもらえたのかも知れないが、本当にやりたい放題だった。

◆日本短波クラブに入会

ラジオのダイヤルを回していればいろんな放送が聴ける。とはいっても、やはり自分が聴いている放送の電波はどこから飛んで来ているのかなどなど、知りたいことは山ほど出てくる。そこで、BCLとは何たるかを深く知るために、件の新聞記事で紹介されていた日本短波クラブに入会した。会員番号は3267番。ちょうど同じ頃入会したT君という同い年の少年がいて、文通して情報交換したりしていた。ちなみにT君はアマチュア無線用の通信型受信機(トリオの9R59DS)を所有する本格派で、BCLとしてのレベルも高く羨望の的だった。

日本短波クラブは月に1回、会報を発行していた。その内容は、海外放送に関わる最新情報や受信のテクニックの紹介はもちろんのこと、会員が1ヶ月の間に受信した放送の記録を集めて周波数順にリストアップすることに重きをおいていた。後者は会員の報告をもとに構成されているのだが、誰でも受信できるような放送局のものは採用されない。掲載されるのは、受信が難しい放送局や、日本での初受信と言ったような話題性があるものに限られるという暗黙の了解があった。毎月レポートを眺めるだけでも、日本には世界中の至る所から電波が届いていることに驚かされた。と同時に、自分も会報に載るような報告をしてみたいと思うようになった。

こうなると必然的に聴取の対象は、日本語放送などの国際放送よりも、各国の国内向けの放送ということになってくる。いつしか、中南米やアフリカの放送や近隣のアジア地域でも珍しい国からの電波を追い求めるようになっていた。何回かクラブに報告を送って初めて自分の会員番号が会報に載った時はとても嬉しかった。当時、BCLの話題は電気関係の雑誌にも載っていた。たいていの記事は初心者向けなのだが、「電波技術」という雑誌のレポートはひと味違っていた。いつしか「電波技術」にもレポートを送るようになっていたのだが、ある日突然、雑誌社から現金書留が送られてきた。少しテーマ性を持たせた内容のレポートが雑誌の記事になり、その原稿料を頂いたというわけだ。でも、「自分が好きでやっていることをただ書いただけなのに...」という感覚で、なぜお金がもらえたのかが理解できなかった。その後2回ほど500円から700円くらいの受け取ったと記憶している。

◆ベリカード(受信確認証)のこと

BCLを話題にするなら、後に空前のBCLブームをもたらす上で起爆剤になったベリカード(Verification Card:受信確認証)についても触れておかなければならない。前にも書いたように、短波は時間帯によるだけでなく、季節、そして経年でも伝わり方が違うという性質がある。通信衛星を使う必要がない代わりに、電波を送るにあたって絶えず電離層の状態を確認する必要がある。といっても電離層の状態を直接知ることはできないため、その確認は電波の受信状態をモニタリングしながらの間接的な方法になってしまう。したがって、国際放送を行っている放送局にとっては、ターゲットの地域で自分達の送った電波が確実かつクリアに受信できているかが大きな関心事となる。そこで役に立つのがリスナーから送られてくる受信状態に関する技術的な情報(受信報告書)。放送内容に対する意見や感想が関心事の国内放送の局との大きな違いはここにある。

ベリカードは、そういった貴重なレポートを送ってくれた人へのお礼といった形で送られるようになった経緯がある(と記憶)。ひとつ前のブログにも少し紹介したが、ベリカードは綺麗でお国ぶりが反映されたものが多い。ただ、国際放送局もより確実な情報を得る目的で各国にモニターを配置するようになったため、欲しいのは受信報告よりも放送内容に対する意見や感想の方になっていく。サービスの余力がある国際放送局はまだしも、国内放送局の場合は外国から送られてくるベリカードを要求するような受信報告はかえって迷惑だったりする。でも、珍しい放送を受信したことの証が欲しいコアなBCLは、どうしてもベリカード(あるいはベリレター)が欲しい。そこであの手この手のいろんな「テクニック」が開発されることになった。

ベリカードの返送には当然郵送料がかかる。そこでIRC(International Reply Coupon)と呼ばれる返信用の切手と交換できるクーポンを2~3枚同封することが常識となった。また、レポートも放送関係者ではなく、技術に関心を持っている「チーフ・エンジニア」に送る方が喜ばれて効果的というような方法を見つけた人も居た。英語が通じない国も多いので、日本短波クラブではフランス語やスペイン語の受信報告用紙を会員向けに販売していた。中には、ベリカード欲しさにクラブの会報などに載ったレポートを利用して受信報告書を捏造する輩まで現れた。このため、ベリカードを受け取るべき人が受け取れないという事態まで発生し問題になった。

かくいう私も、当初は海外から送られてくるベリカードに魅力を感じたひとりだ。でも、ベリカード熱は割と早く冷めてしまった。受信報告書を書くためには、放送局に受信内容を確実に確認してもらえるような内容を記録しなければならない。ダイヤルを回している間にも、克明にログ(記録)を取る必要があり、さらにその後レポートを仕上がるのに手間がかかる。さらに、BCLに熱中するうちに、別のことへと興味関心が移っていったことも大きい。それは、自由気ままに世界中から届く音楽に耳を傾けるということだった。



◆世界の民俗音楽

私が少年時代に熱中した音楽番組のひとつに小泉文夫さんが案内役を務めた「世界の民俗音楽」があった。小泉さんは日本における民俗音楽研究の第一人者で、自ら録音機材を担いで世界中を回り貴重な音源の収集に奔走した人でもある。BCLをやることにより、興味を持った世界の音楽を毎日聴くことができるのだ。人が未知の音に接したときにとる態度は、「ヘンな音」で興味を持たずに終わってしまうか、「なぜこの音なのか?」が気になって探求するかのどちらか。「世界の民俗音楽」に魅了された少年は、BCLラジオを通じて飛び込んでくる「ヘンな音」の背景には何があるのか?により強い興味を抱くことになる。もっとも、異文化を「エスニック」という言葉で片付けてしまうこと自体が「ヘンなこと」で、立場が変われば欧米の音楽も立派なエスノ音楽なのだが。

◆あるBCL少年の1日

民俗音楽に興味を持ったBCL少年の朝は早い。早朝でまだ近隣諸国が放送を始めていない時間帯はアフリカや南米方面からの電波を捉えるチャンスでもある。トロピカルバンドとも呼ばれた5MHz帯(60メーターバンド)では西アフリカ方面からの安定した電波が届いていた。発展途上国の放送局は概ねニュース以外の時間には音楽を流しているだけの場合が多いが、ここが狙い目なのだ。9MHz帯(31MB)や11MHz帯(25MB)ではブラジルやアルゼンチンと言った南米からの電波が届く。雑音や混信との戦いでもあるのだが、現地から届く歯切れのいいスペイン語やポルトガル語に混じって聞こえる音楽がまた魅力的だった。

学校が終わって帰宅してからまたラジオのスイッチがONになる。夕方から夜にかけては、13MBや16MBの高い周波数では安定して聞こえる欧州方面、60MB(5MHz付近)、49MB(6MHz付近)、31MB、25MBで聞こえる南米方面がターゲット。ちなみに地球の裏側の南米大陸は朝のため、東のブラジル、ウルグアイ、パラグアイから西のチリ、ペルー、エクアドル、コロンビアといった具合に時々刻々と放送が始まる国々からの電波が届く。総じて南米方面の局は出力が小さいため、安定した受信は望めない。しかし、日によっては普段は聞こえない放送も入るので、そんな日はダイヤル回しにも熱が入る。東洋の5音音階の旋律にも通じるところがあるアンデス風味の音楽は格別だ。

夜になると、近隣諸国の放送や海外からのアジアに向けた放送が始まることで、25MBや31MB
は大変な賑わいを見せる。そんな混雑を避ける形で、ターゲットは東南アジア(ベトナム、マレーシアなど)から南アジア(インド、パキスタンなど)のローカル放送に移る。夜も更けてくると、アフガニスタンやソ連の中央アジアからの放送が良好に聞こえてくるようになり、部屋の中は日本とは違ったアジアが満喫できる状態になる。さらに深夜の時間帯には近隣諸国の放送が終わった間隙をつくかたちで欧州やアフリカ方面からの電波が浮き上がってくる。

とにかくラジオのダイヤルを回しているだけで世界を自由に飛び回っているような感覚を味わえることがBCLの醍醐味。そんな毎日を送っているうちに、感覚的に季節や時間帯でどの国からどの周波数帯で電波が届くかがわかるようになっていた。また、ラジオから流れてくる音を聴いて、それがどの地域からのものなのかも掴めるようになっていた。隣国同士でいがみ合ってはいても、両者の音楽が特別違ったものではなく、影響し合っている部分だってある。電波という媒体を通じて自由に地球上を飛び回る音楽が思わぬ形で国際交流、ひいては相互理解を促したことだってあるはず。



◆興味関心は中央アジアからコーカサス地方へ

いろいろな音楽を聴く中で、とくに興味関心を抱くことになったのはソ連の中央アジアからコーカサス地域(シルクロード)の音楽だった。ソ連は広大な国土をカバーするために短波を最大限に活用していた国だった。各地にある送信機からは、中央のモスクワ放送の電波だけでなく、地方局が独自に制作した放送の電波も送られていた。それらの放送は、モスクワからの放送とは違い、ローカルカラーを色濃く反映した音楽を流していてより魅力的だった。

カザフ共和国のアルマアタ(アルマトイ)、キルギス共和国のフルンゼ、タジク共和国のドゥシャンベ、ウズベク共和国のタシュケントからの電波は安定して日本に届いていた。また、襲い時間帯にはコーカサス地方のアゼルバイジャン、グルジア、アルメニアからも電波が届く。アフガニスタン、トルコやイランも含めた中近東地域からの音楽がとりわけ心に響いたし、昼間から良好に聴くことができたインド、パキスタンの音楽、そしてクウェートからのアラブ音楽も刺激的だった。

◆空前のBCLブームに想うこと

私がBCLを始めたのは1969年だが、それから数年を経た70年代中盤には状況が大きく変わっていた。史上空前とも言われるBCLブームの到来で、電気店にところ狭しと多くのメーカーがこぞって製作したBCL用受信機が並ぶという、今ではとても信じられないことが起こっていた。火付け役は前にも書いたとおりベリカードだった。単刀直入に言うと、「BCLをやってベリカードを集めよう」に集約される。本来のBCLの目的は、興味を持った国の情報収集であったり、語学学習だったり、音楽などの異文化に触れたりすることだった。マニアックだが、珍局を求めてダイヤルを回すというのもありだと思う。でも、ベリカードをもらったら一丁上がりではブームも長続きするはずがない。

せっかくのBCLブームなのに、それがうまく国際交流の促進とか外国人との相互理解という方向に発展していかなかったのが残念に想えてくる。島国で海外を体験する機会が乏しい日本なのだから、電波の力を借りない手はなかった。それはさておき、中近東やコーカサス地方の音楽の楽しみを知ったBCL少年のその後だが、「ブーム」に反比例する形でBCLからは遠ざかっていくことになる。大学生になった頃には、永年の酷使でBCLラジオも瀕死の状態となり手放してしまった。このままBCLから完全に離れていたらソ連のジャズとも出逢うことはなかったわけだ。皮肉にも「ブーム」が去った頃に秋葉原で入手した通信型受信機が新たな路を切り拓くことになった。
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