「熱闘」のあとでひといき

「闘い」に明け暮れているような毎日ですが、面白いスポーツや楽しい音楽の話題でひといき入れてみませんか?

第30回 関東大学ラグビー連盟セブンズ(2016.4.17)の感想(その3)

2016-04-24 19:37:41 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


実力差がはっきり出るのがラグビーの魅力であり理不尽でもあるところ。しかし、試合時間が短くて、かつノックアウト方式となるセブンズのトーナメント戦では何が起こるか分からない。ジャイアントキリングが起こりにくいラグビーにあって、セブンズ観戦の最大の魅力はここにあると言ってもいいだろう。僅か1日限定とはいえ、1部リーグと2部リーグでは力の差がはっきり出てしまう普段の15人のラグビーとはまったく違う世界が実現する。このセブンズ大会の面白さの源泉はここにあると思う。

しかし、1日で行うノックアウト方式の大会の常で、時間が経つにつれて敗退したチームのテントが1つ消え、2つ消えという状態になっていく。本来ならファイナルは関係者全員で観戦し、勝利したチームをリーグ全体で祝福するようなイベントであって欲しい。プレーヤーにしても、普段はなかなか見ることができない各チームのいい面や有力選手を生で観ることができる貴重な機会であるはず。身体を動かしている時間は短くても、1日中頭をフル回転できる絶好の練習機会とも言える。

少なくとも、普段から高い志を持って練習に励んでいる選手なら、どんどんレベルが上がって行く熱戦を前にして(所属チームの試合ではなくても)試合会場を簡単に後にすることはできないはず。例えば自分がピッチに立っていたらどうするかをプレーヤーの気持ちになってイメージしてみる。何気ないプレーの中にも自分達の練習には欠けていることに対するヒントが潜んでいるかも知れない。「俺たちのチームも負けたことだし、そろそろ帰ろうぜ。」というチームメイトの誘いにも乗らず、「悪いけどオレは最後まで見ていくよ。」という選手が居たと信じたい。

さて、1回戦を勝ち抜いてチャンピオンシップに進んだのは、東海大、東洋大、法政大、大東大、専修大、拓殖大、日大、流経大の8チーム。コンソレに進んだ8チームを含めて、全16チームを分類してみると、①セブンズ追求型、②セブンズ活用型、③その他(新人のお披露目など)の3つに大きく分けられる。①は文字通り、セブンズを極め、その検証をするために参加したチーム。具体的にはリーグ戦G2部のチームが殆どとなり、専修、國學院、東洋、国士舘、白鴎大、朝鮮大は明確にそんなプレースタイルだった。②は15人制のチーム作りと強化を主眼におくなかでセブンズの戦い方を研究して実践したチーム。1部リーグ校の中の東海大、流経大、大東大、日大がスタンスの違いはあるが戦いの中に「意図」が感じられた。

東海大のセブンズチームはレギュラーの15人の中からセブンズにフィットする選手をセレクトする形で作られている。出場選手の背番号がほぼそのまま現状のレギュラーメンバーの背番号に一致する。戦い方もディフェンスの組織的な対応とブレイクダウンスキルに絞る。15人の戦いを念頭において、個人で行けるところは行くというスタイル。流経大は東海大よりもセブンズの意識が強く感じられ、留学生の持ち味であるオフロードパスも積極的に使う。大東大は普段の15人制で指向しているラグビーがセブンズに近いという感じで、セブンズだから特別なことを行うというスタイルではない。日大は前HC時代の遺産と言うべきか、1部リーグ校の中でも一番セブンズを意識したプレーで戦いに挑む。そんなスタンスの違いはさておき、1回戦を観た印象でファイナルに進むのは東海大がほぼ確定、もう1方の山からは専修大と流経大のどちらかが勝ち上がると予想した。



■チャンピオンシップトーナメント

[1回戦]

○東海大学 35-12 ●東洋大学

ほぼレギュラーメンバーで固める東海大の優位は動かず、3連続トライを挙げた東海大が19-0とリードして前半が終了。YC&ACセブンズで藤崎とともに好調ぶりをアピールした村松がこの日もトライゲッターとして活躍を見せる。背番号は8だが、テビタ・タタフとの兼ね合いが気になるところ。このまま東海大の一方的な勝利に終わるかと思われたが、後半先に東洋大が1本返したところから試合が白熱する。自信を付けた東洋大が果敢に攻めることで、東海大が押し込まれる時間帯もあった。後半に限って言えば両チームのトライ数は各2本のほぼ互角の戦い。1部リーグ昇格を目指す東洋大にとって、この戦いでの経験は力になるに違いない。

○大東文化大学 31-12 ●法政大学

両チームともに1、2年生主体のメンバーで望む中で、プレースタイルの違いが明暗を分ける形になった。大東大は1回戦から一貫して積極果敢なパス回しで得点を目指すスタイル。小山を彷彿とさせるような軽快な動きを見せる選手も居る。兄貴分のチームのような強力な突破役こそいないが、そのことでかえってパス回しに活路を開こうとしているようだ。一方の法政は組織よりも個人にならざるを得ないスタイルで苦戦もやむなし。ここ数年の法政はBKへの展開よりもモールなどのFWでのトライが増えていることも頷ける。前半は3-1、後半も2-1(いずれもトライ数)で大東大の圧勝となった。

○専修大学 22-0 ●拓殖大学

拓大はリーグ戦屈指のパワーを誇るシオネ・ラベマイに新人のマシヴォウ・アセリが加わる強力な陣容だがチームを纏めるのはこれからという印象。今年は再び司令塔の役割を担いそうな林謙太がときおりパワフルな突破を見せるものの単発で終わる。一方の専修大は攻守とも組織的に整備されたセブンズのお手本のような戦いぶりをみせて前後半で各2トライずつを奪い完勝。とくにディフェンスの局面では後方から前線に向かって的確な指示が飛び、セブンズは7人の間の緻密なコミュニケーションが命の競技であることを実感させられた。

○流通経済大学 24-14 ●日本大学

1部リーグで一番セブンズを意識したボール回しができるのはおそらく日大。先制トライを奪ってペースに乗る。流経大も1本返すが日大も1本追加して前半は14-7の日大リードで終了。しかし、後半は流経大が持ち前のパワーを発揮して3トライを連取し逆転に成功。シオネ他の主力選手達を欠いても個々が強力な流経大がベスト4に進出した。日大のおそらく主力の何人かを欠いている陣容と見られ、FW次第だが1部復帰の初年度はBKのパス回しに活路を開くことになりそう。加藤氏の青山学院大HC就任の発表があった中で新体制の発表が遅れているのが気になるところ。




[準決勝]

○東海大学 35-5 ●大東文化大学

東海大のパワーが止まらない。前半に2本、後半にも3本のトライを追加し、大東大のトライを後半の1本に抑えて圧勝。GKもすべて成功とスコアから見ると、大東大は為す術もなかったように見えるだろう。しかしながら、実際は大東大のパス回しを主体としたアタックに東海大のディフェンスが翻弄される場面も散見され、スコアから連想されるような一方的な展開ではなかった。ゴール前まであと一歩に迫られても失点を防いだ東海大のディフェンスが光った。大東大のプレースタイルは下級生にもしっかり継承されることになりそうだ。

○専修大学 24-22 ●流通経済大学

流経大のパワーを基盤としたセブンズに対し、専修大は組織的に整備された洗練されたスタイルのセブンズで対抗。両者の哲学の違いが緊迫感がある好ゲームを演出した。まずは流経大が2本先行する形でスタートした試合だが、専修大が徐々にペースを掴み2連続トライを奪って12-10のリードで前半を終了。後半も先制したのは流経大で再逆転を許すが2連続トライを奪って24-15と勝利を決定的にしたところでインジュリータイムに入る。流経大が意地を見せて1トライを返すのがやっとだった。

[決勝戦]

○東海大学 39-24 ●専修大学

決勝戦はそれぞれセブンズに対する想い入れは違うものの、優勝を目指して戦いに望んだ2チームが順当に勝ち残ったと言える。まずは東海大がパワーと巧さを活かして2トライを連取。しかし、専修大も池田大芽らのランで対抗し2トライを返して14-12と逆転に成功。がっぷり4つの戦いを見せる専修に対し、応戦席の盛り上がりは最高潮に達する。東海大は前半終了前に1トライを挙げて17-14で再逆転に成功。キャップの行方は後半に託されるというファイナルに相応しい熱戦となった。

後半も先制したのは東海。今年も隙あらばウラに抜ける湯本がゴールラインを駆け抜ける姿を何度も観ることができそうだ。優勝を目指したピッチとベンチが一体になった専修も粘りをみせて1トライを返し19-24と食い下がる。ただ、ここでも光ったのが村松の走力。キックオフされたボールを入れ違いのような確保すると、そのままゴールラインまで到達してしまった。東海大はさらに1トライを追加してリードを拡げる。専修大が11番を付けた野口の活躍で1トライを返す。野口は2年生で1部復帰を目指す専修大に期待をもたらす新エースとして活躍しそうだ。しかし専修大の粘りもここまで、東海大も1トライを追加して突き放し、39-24で東海大がYC&AC、東日本大学セブンズに続き「3連覇」を達成した。最後は地力の差が出たものの、力と技の戦いはなかなか見応えがあった。



■戦いを観た雑感

流経大が主力メンバーを欠いた陣容とは言え、今シーズンも連覇、そして大学日本一を目指す東海大がリードする形でリーグ戦グループの覇権争いが繰り広げられることになるだろう。YC&AC優勝での確信はより強固になったのがこの戦いでの勝利。バランスの良さとFWとBKに得点能力の高い選手が満遍なく揃ったことで、昨年以上のチームになることは間違いない。ほぼメンバーが固まる中で、気になるのが司令塔。3年生ながら既にBKのまとめ役の役割を担うような存在になっている野口竜司の名前も挙がっているようだが、日本ラグビーの将来を考えればFBの専門職として大成して欲しいと願う。

流経大も主力で固めれば強力チームがすぐに出来上がる。大東大は文字通り前線で身体を張ったFW1列の選手達の卒業が痛いが、BKを中心としたメンバーの熟成度はリーグ戦Gで一番高いしチャンスの年。法政は苑田ヘッドコーチの就任が発表されたばかりで、BKの攻撃力復活なるかが注目点。中央大は4年生のSH2人(住吉と長谷川)のどちらを主としてチームを作るのかに答えを出す年になった。拓大はスクラムの強さとBK展開がうまくかみ合うか。1部復帰を果たした日大と関東学院はどのような形でチーム再建に取り組むかに注目したい。2部リーグでは専修大、東洋大、國學院大に勢いがあり、山梨学院や立正大もうかうかとはしていられない。今の時期に言うのは早過ぎると思いつつ、今年も2校同時入替は十分にありえそうな様相だ。

余談ながら、実は東海大で一番印象に残ったのは意外な選手だった。10番を付けて登場した新人のモリキ・リード。高校ラグビーを観ていないことがばれてしまうが、札幌山の手高校出身(すなわちリーチの後輩)で体幹が強いFBとして注目されていた選手だった。ポジションはFBまたはWTBで俊足ランナー。選手層が厚い実力優先主義(おそらく)の東海大にあって春の段階にもかかわらず1年生で登場したことも驚きだが、それだけの力があることを実際のプレーを観て実感した。体格も普通で派手なところもないが、さりげないプレーの中にも1年生離れした冷静な判断力が光る選手と目に映った。FBに野口が座るとしたら(WTBにも高速ランナーが揃うので)モリキは背番号通り(SO)でも面白いと思う。将来は日本代表を目指すという意思表示もしており、今後どのような形で成長していくかがとても楽しみな選手だ。


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第30回 関東大学ラグビー連盟セブンズ(2016.4.17)の感想(その2)

2016-04-22 00:50:17 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


オリンピック種目となったことでセブンズを取り巻く環境は劇的に変化したことは間違いない。かつてはセブンズの謳い文句だった「フィジアンマジック」という言葉が最近は殆ど聞かれなくなったような気がするが、それも各国の競技レベルの向上があってのこと。そして、セブンズのプレースタイル自体も変わってきているように思う。セブンズでイメージされたのは、トップアスリート達によるスピードの饗宴であったり、トリッキーなロングパスであったり、あるいは際どい(マジカルな)オフロードパスといった卓越した個人技の応酬。

しかし、実はセブンズの魅力は先に挙げた派手なプレーではなく、緻密な組織力をベースにした駆け引きの妙にある。ここ数年、春のセブンズ大会をじっくり観戦するようになってそんな想いを抱くようになってきている。但し、前提条件がある。対戦チーム同士があくまでも「セブンズの流儀」に則って戦う場合においてのみ、そのような面白さを味わうことができるということ。個々の力の差が大きければ、多少ディフェンスに目をつむってもアタックに注力すれば勝利できる。しかしそれはセブンズではない。7人対7人のせめぎ合いの中で、ディフェンスに穴が開いて個人勝負となった瞬間、そのセットは終了となるのが真のセブンズの戦いだと思うのだ。

そんな面白さに気づかせてくれたのが、このリーグ戦Gセブンズ。そして、そのことをより強く感じさせてくれるのが2部リーグ校同士の戦いが主となるコンソレーショントーナメントだと思う。出場チームが最強メンバーを組めるYC&ACセブンズや華やいだムードの中で行われる東日本大学セブンズ、そして本大会のチャンピオンシップトーナメントのような派手さはない。しかし、「真のセブンズの戦い」という視点で眺めれば、もっともハイレベルなのがこのコンソレーショントーナメントだと言える。

さて、1回戦で敗れてこちらのトーナメントに回ったのは、國學院大學、関東学院大学、国士舘大学、山梨学院大学、中央大学、白鴎大学、朝鮮大学校、立正大学の8校。いよいよもうひとつの頂点を目指す戦いが始まった。ちなみに、今大会ではトーナメント戦で先行を務めるのがチャンピオンシップに勝ち進んだチーム。いきなり東海大の選手達がピッチ上に現れて一瞬アレレ?だった。



■コンソレーショントーナメント

[1回戦]

○國學院大學 26-22 ●関東学院大学

緒戦の東海大戦でいいところなく敗れた國學院。しかし、東海大がほぼベストメンバーだったことは間違いないとしても、殆ど無抵抗のように見えたのは気のせいだったのだろうか。キックオフ直前、ピッチに登場した段階で既に(アイドリング段階だが)エンジン全開のような状態になっているのを観るに付け、あれは夢か幻かと感じてもおかしくはない。実際にキックオフから國學院のペースで試合が進み、前半だけで19-0の圧勝ムードだった。

後半は関東学院が反撃して3トライを返すものの、國學院も1トライを追加して26-24で勝利。ちなみに関東学院の3トライ目は試合終了の合図の後だったので、試合内容は國學院の圧勝といって間違いない。ここでふと思った。國學院は東海大戦では力をセーブしていたのではなかったかということ。しっかり相手の動きはトレースするものの、あえてタックルに踏み込まない。それもズバリ、國學院はコンソレ(コンソレーショントーナメント)に優勝することを目標においていたからこそのパワーセーブ。緒戦とはまったく別のチームを観ているかのようなプレーぶりを目にしてそんなことを感じた。

○山梨学院大学 14-5 ●国士舘大学

緒戦で法政をあわやというところまで追い詰めた国士舘だったが、山梨学院のパワーの方が1枚上手だった。ただ、山梨学院もパウロやアピレイは出場せず、フルパワーではなかったようだが。その山梨学院で目を惹いたのは22番を付けた選手(選手名不明)のスピードに乗ったランニング。当日は会場でプログラムを発見できず、選手名が殆ど分からなかったのが残念だが22番(を付けた選手)に要注目だと思った。

○中央大学 19-17 ●白鴎大学

緒戦は拓大に対してまったくいいところなく敗れた白鴎大。下級生中心メンバーとは言え中央大が優位と思われたが白鴎大が先制トライを奪ったことで白熱した戦いとなる。中央大も1本返すが白鴎大も負けずに1トライを追加して12-7で前半終了。後半は中央大が2トライを連取して逆転に成功するものの粘る白鴎大が1トライを返して17-19と点差は僅かに2点。勢いづいた白鴎大がペースを握り再逆転まであと一歩というところで無情のタイムアップ。中央大が辛くも逃げ切り準決勝に進んだ。1つ前のブログでデュルタロの名前を挙げたが、セブンズ日本代表の中心選手として活躍するトゥキリ選手(北海道バーバリアンズ→クボタ)も白鴎大OBだったことを思い出した。

○朝鮮大学校 31-12 ●立正大学

緒戦で日大をあわやというところまで追い詰めた朝鮮大が好調を維持。サイズには恵まれない選手達だが、小刻みなステップとパスワークで狭いスペースを切り裂くところが実に魅力的。キックオフから3連続トライを奪い優位に試合を進め、17-7で前半を終了。後半も朝鮮大優位の展開は変わらずさらに2トライを追加。立正大は1トライを返すのがやっとだった。2部に降格後、昨シーズンは入替戦にも進めなかった立正大だが、何とか元気を取り戻して欲しいところ。



[準決勝]

○國學院大学 45-10 ●山梨学院大学

トーナメント戦に入って白熱したゲームが続く中、リーグ戦Gのセブンズの雄の1つと言っていい國學院の勢いが止まらない。セブンズを熟知したかのような組織的なアタックで山梨学院を翻弄し、トライの山を築く。山梨学院は組織が寸断される中で個人頼みの戦いを強いられる。前半24-7、後半19-5と終始攻め続けた國學院が圧勝を収め決勝戦に名乗りを挙げた。

○朝鮮大学校 19-17 ●中央大学

立正大に圧勝して勢いに乗る朝鮮大と中央大の戦いは白熱した好ゲームとなった。先制したのは中央大だが、朝鮮大も1トライ(GK成功)を返して7-5と逆転に成功。しかし中央大が1トライを奪って12-7と再逆転に成功したところで前半が終了。後半も中央大が先に1トライを奪って17-7となりこのまま中央大がペースに乗って勝利を収めるかに見えた。しかしセブンズによくある落とし穴というべきか(中央大にとっては)不運なインターセプトによる被弾が命取りとなる。息を吹き返した形の朝鮮大が1トライを追加して19-12と再々逆転に成功して決勝戦へとコマを進めた。

[決勝戦]

○國學院大学 28-17 ●朝鮮大学校

大会のファイナルはチャンピオンシップの決勝戦となるため、時間調整(体力回復)のためのインターバルを経て、國學院と朝鮮大の選手達がピッチに登場する。地力と経験に勝る國學院が2トライを先行して14-0とリードを奪うものの、朝鮮大も1トライを返して14-7での折り返しとなり決勝戦に相応しい好ゲームとなる。後半も先行したのは國學院だったが、朝鮮大が粘りを見せて2トライを連取し21-19と國學院が僅か2点のリードで試合は終盤へ。優勝をかけた死力を尽くした攻防が繰り広げられるが、最後は朝鮮大が力尽く。國學院が1トライを追加して見事優勝を決めた。

今シーズン2部に昇格(復帰)を果たした朝鮮大はこの勝利を糧にしてステップアップを目指して欲しいところ。部員数を見ても入替戦までの道程は険しそうだが頑張って欲しい。1部リーグへのチャレンジまであと一歩というところまで来ている國學院。2シーズン連続で2校同時入替となる異常事態(2部上位と1部下位の間の実力差は殆ど無くなっている)とはいえ、2部で2位以内に入ることも難しくなっている。セブンズで覇を競うような形となっている2部リーグだが15人制の戦いも熾烈を極めるに違いない。



■コンソレーショントーナメントの雑感

散漫な印象が残った1回戦とはうって変わって引き締まった内容のゲームが続いたトーナメント戦。現金なもので、負けたら終わりの戦いになると闘争本能に目覚めるのがスポーツマンシップの現れだと実感させられる。どうしても華やかなチャンピオンシップの方に注目が集まってしまうのは致し方ないが、内容なら(セブンズらしいという意味で)コンソレーショントーナメントもひけを取らない。いや寧ろ上回っていると言っていいと思う。

毎年この大会を観て感じることだが、2部リーグのチームは春の段階でこの大会に照準を合わせてチーム作りを進めているように思われる。言わば、意地と意地のぶつかり合い。だからこそ、恵まれた環境にある1部所属校は2部所属校の心意気に応えて欲しい。(1部所属校にとっては)たかがセブンズかも知れないが、されどセブンズなのである。もはや「セブンズもどき」が通用しないことは火を見るよりも明らかになっていることに気づいて欲しい。(つづく)

日本ラグビー論
岩渕 健輔
ベースボールマガジン社
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第30回 関東大学ラグビー連盟セブンズ(2016.4.17)の感想(その1)

2016-04-20 01:56:36 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


毎年恒例の“SEVEN A SIDE”(関東大学ラグビー連盟セブンズ)は今年が30回目の節目の大会。しかし、記念大会という訳でもなく去年と同じ拓殖大学グランドでの開催となった。天候にも恵まれず、何となくだがこちらも「縮小ムード」なのが気になるところ。今年は幸いなことに関東春季大会とのダブりもなくAブロック(1部と2部で構成)の棄権校はなし。ただ、Bブロックで1校、Cブロックで3校の棄権があり、これがセブンズの大会であることを考えると気になる点ではある。一昨年とその前年は町田の陸上競技場で全チームが一堂に会したことを考えれば一抹の寂しさがあることは否めない。

現実問題として、昨シーズンは6部リーグで殆どの試合が不戦勝(不戦敗)となった事実は見過ごせない。せっかくのリーグ戦Gのお祭りなのにいきなり水を差してしまうが、6部縦並びで続いてきたリーグ全体の枠組みは見直す時期に来ているのかも知れない。理想を言えば裾野を拡げた4部構成に再編するのが望ましい。新入生の時は4部リーグ所属でも、毎年ステップアップして最上級生になったら1部リーグというような形があってもいいように思える。そんなことは実際には起こる可能性が低いとしても、確率がゼロでなければ夢が持てるのではないだろうか。ラグビー人気にV字回復の機運が見えてきたとはいっても、大学チームでも15人を揃えるのが難しくなっている現実がある。

とはいえ、関東リーグ戦Gにこのような形の歴史あるセブンズ大会があり、また毎年のように拮抗した戦いが演じ続けられていることは誇りにしていい。実際にチャンピオンシップ、コンソレーションの両トーナメントでは、手に汗を握るような戦いが繰り広げられている。今回も雨天でときおりテントが吹き飛ばされそうな強風に見舞われる悪天候にも拘わらず、2つのトーナメントでは見応えのある戦いを観ることができた。

■1回戦の結果と各試合の感想

○東海大学 41-5 ●國學院大学

YC&ACセブンズ、東日本大学セブンズで優勝を果たし、この試合に春のセブンズ3冠王がかかる東海大。TIDキャンプ(U20)に参加している強力な2人(アタアタとテビタ)を欠くメンバーながらベストの陣容を送り込んできたのは、もちろん3冠王を目指しているから。ではなく、公式戦にはその時点でのベストの選手を出すことがおそらく東海大のポリシーだからなのだろう。春から最強の選手達のプレーを目の前で観ることが出来るのはありがたい。9時25分の朝一番のキックオフながら、セブンズ2連勝で波に乗る選手達がトライの山を築く。とにかく現時点の東海大で不調な選手を見つけるのが難しいような状態。

國學院大もセブンズには定評があるチームで、おそらく1、2部全チームでも戦術理解度の高さなら専修と覇を競う存在。と思っていたが、相手がベストメンバーの東海である点は差し引いても殆ど無抵抗と言えるくらいにあっさりトライを取られているのが気になった。手を抜いているようにも諦めているようにも見えないのだが、なぜか取られ方が淡泊。前半だけで0-29で、後半1トライ返したもののさらに2つ取られて5-41の大敗。最後まで「?」マークが頭の中で点灯し続けた惨敗だったが、謎はコンソレーショントーナメントに入ったところで氷解する。

○東洋大学 31-14 ●関東学院大学

今シーズンから再び1部リーグで戦うことになった関東学院は私的注目チームのひとつ。元来はコーチングがしっかりしているチームだから復活も早いと見ていた。しかし、なのである。元気はつらつでアタックを仕掛ける東洋大に対して、前半だけで3つトライを奪われて得点はゼロ。後半に立て直して2つトライを奪うが同数のトライを奪われ、1回戦であえなく撃沈してしまった。主力を欠くメンバーながら元気がないのが気になる。下克上(2部校が1部校を緒戦で破る)は3つくらいあると見ていたが第1号が関東学院というのは意外だった。

○法政大学 17-14 ●国士舘大学

国士舘もサイズこそないもののこの大会に備えてしっかりチームを作ってくる。一方の法政は1、2年生中心のメンバー。国士舘に先制を許し、早くも黄信号が点灯の状態となった。すぐに1トライ返すものの、再び国士舘がトライを奪い14-7。アタックでは個の強さが活きるものの、組織的なディフェンスができないのであっさりとトライを取られてしまう。法政は前半の終盤に1トライ返し2点ビハインドで折り返す苦しい展開となった。後半は法政が1トライを奪って17-14と逆転に成功する。しかし、その後はいつ逆転されてもおかしくない、法政ファンにとっては薄氷を踏むような思いの時間帯が続く。国士舘があと一歩攻めきれずにタイムアップとなったが、法政にとっては不安いっぱいのスタートとなった。

○大東文化大学 26-12 ●山梨学院大学

大東大も主力メンバーは出場せず、下級生主体のファンに不安を抱かせる陣容。しかし、取り越し苦労だったようだ。奔放さの中に「強気」がミックスされたパス回しとランでゲインを重ねる「兄貴分」の戦い方が「弟分」にもしっかり受け継がれている。前半だけで3トライを重ねた大東大が19-0と優位に立つ。後半は山梨学院が巻き返して2連続トライで7点ビハインドまで迫るものの、終盤に2トライを追加されて完敗。サウマキやアマトのような強力な突破役がいない分、パス回しに重点が置かれた感じでトーナメントへの期待が高まった。



○専修大学 33-21 ●中央大学

1部昇格も束の間の出来後で振り出しに戻ってしまった感がある専修大。「原点」とも言えるセブンズに活路を見いだすことは十分に予想された。事実、一昨年のYC&ACセブンズ大会での躍動で自信を掴んだことが悲願の1部昇格(復帰)に繋がったと言える。専修のこの大会での目標は「優勝」の2文字ではっきりしているから、中央大が下級生中心のメンバー構成にした時点で勝敗は見えた。まず専修が(セブンズの)格の違いを見せて2本先行。中央大が1本返した後、専修がさらに1本追加して前半は17-7となった。後半は開始早々に中央が1本返して3点ビハインドまで肉薄するものの、専修が立て続けに2本取って試合を決めた。中央大は最後に1本返すのがやっとでまずは専修が難なく1回戦を突破した。

○拓殖大学 48-0 ●白鴎大学

いよいよ地元の拓大が登場。対する白鴎大もサンウルブズに加入したデュルタロ(米国の7人制と15人制の代表メンバーでもある)が学んだ大学ということで一躍知名度が上がった感がある。昨シーズンの久々の1部リーグでの戦いは辛くも入替戦を免れる6位だっただけに、今シーズンは気持ちを引き締めて上位を目指したい。そんな心意気もあってか、シオネ・ラベマイらを擁する拓大が個の強さを発揮して48-0の完勝となった。

○日本大学 19-14 ●朝鮮大学校

1部復帰を果たした日大はセブンズで実績を残しているチーム。殆ど話題になっていないが、昨シーズンは全てコンソレーショントーナメントながら、YC&AC、東日本大学、そしてリーグ戦セブンズで3連覇を達成している。方や朝鮮大学校は2部リーグ昇格を果たしたばかり。まずは日大が2連続トライで14-0と格の違いを見せる。しかし、ここからランニングスキルに長けた10番の選手やスピードランナーの14番の選手など、テクニックではひけを取らない選手達を揃えた朝鮮大学校が2連続トライを返し反撃。前半を終わったところで14-14の五分の展開となる。日大は後半に1トライを先行して突き放しにかかるものの逆に朝鮮大学校の逆襲を受けて冷や汗の連続。終わってみれば5点差で辛くも逃げ切った形となった。

○流通経済大学 42-7 ●立正大学

流経大は試合直前まで出場メンバーが不明。他のチームはホームページ経由でほぼメンバーが判明していただけに、目標をどこに置いていたかは実際にピッチに立った選手達で判断ということになった。流経大にはセブンズで猛威を奮っているアイランダー達は加わっていないことから、流経大も中央大、大東大、法政と同様に下級生中心のメンバー構成だったのだろうか。しかし、主力メンバーは欠いていても強力なチームであることに変わりはない。立正大もパワフルな選手達を欠いていたことはあるが、意外なほど大差が付いてしまった。2部降格以降、昨シーズンは3位に終わるなど立正大は少し元気がないように見えることが気になる。



■1回戦を終えて(雑感)

この大会では2部所属校が1部所属校を破る「下克上」が起こることは珍しいことではなく普通になっている。今年も3つはあるとみていたが、涙を呑んだのは(という程の悲壮感はないが)関東学院と中央大の2校だった。ただ、法政と日大もあわやというところで何とか逃げ切ったことを考えると概ね予想通りの結果と言える。それはさておいても気になったのは、1回戦全体で何となく会場全体に漂っていた散漫とした雰囲気だった。

冒頭にも書いたとおり、この大会は公式戦であって公式戦ではないような言わばお祭りの雰囲気を持っている。秋のシーズンには各校揃いのブレザーで身を固める部員達も服装はまちまちだが、それは悪いことではない。問題は、各チームのセブンズに対する考え方(取り組み)にバラツキがあり、それが試合内容にはっきりと表れることにある。出場メンバーが下級生あるいは(15人制の)控え中心であっても、試合である以上は2部所属校と同じマインドでセブンズに取り組んで欲しいし、その方がチームに好結果をもたらすように思う。

ただ、チャンピオンシップ、コンソレーションを問わず、トーナメント戦になると各チームの選手達の目の色が変わるところが16チーム参加方式のセブンズ大会の面白みでもある。断続的に雨が降り続く中、せめてセブンズの内容だけでも「天候回復、視界良好」と行きたいところ。(つづく)


ラグ男
クリエーター情報なし
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第57回 YC&ACセブンズ(2016.4.3)の感想(その3)

2016-04-09 13:20:41 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


夢を見た。場所はおそらくYC&ACのグラウンドで試合はセブンズの決勝戦のようだ。どこかで見たグリーン系のジャージーに身を包んだ選手達が奔放にボールを繋いでトライの山を築いている。パワフルあるいはスピーディなラン、巧みなステップにマジックのようなパス回し。そこにはセブンズの面白さのすべてが揃っている。対戦相手は定かではないのだが、見慣れたジャージーを纏った選手達の方は名前が次々に浮かんでくる。FWはアマトとタラウのファカタヴァ兄弟にホセア・サウマキが加わった3人。SHの役割を小山が担い、ラインにはクルーガー・ラトゥ、戸室、大道が並ぶ。大学ラグビーでは屈指といえるドリームチームが見事優勝を飾った場面を見たところで目が覚めた。

YC&ACセブンズの素晴らしいところは、前にも書いたように大学生、社会人を問わずチームに所属選手でベストの陣容を組めること。大学生のセブンズは留学生の出場が1人に制限されていることを考えると、招待チームに限られるとはいえ、セブンズファンの満足度を高いレベルで充たしてくれるのがこの大会と言える。7人のメンバーの中に強力な留学生を2人も3人も入れるのは不公平という意見が出かねない状況だからこそ貴重な大会とも言い換えられる。本当はピッチに立っていたいのにベンチに座らされる選手達だって不公平感を感じていないだろうか。

さて、チャンピオンシップに進んだのは大学4チーム(東海大、日大、流経大、筑波大)と社会人4チーム(釜石SW、北海道バーバリアンズ、PSI、タマリバ)の計8チーム。社会人チームも実績のあるチームが揃っているが、予選ラウンドを観た段階で決勝戦に勝ち上がるのは東海大と流経大になることを確信。そのくらいこの2チームの力は秀でていた。そして、強いて言えばタウムア、シオネ、タナカの3人が揃い踏みで圧倒的な力を見せつけた流経大優位と見ていた。社会人チームの経験と戦術がどこまで通用するかも見どころ。



■チャンピオンシップ・トーナメント

[1回戦]

○東海大学 38-17 ●日本大学

昨シーズンはコンソレーショントーナメントで見事優勝を飾り、念願の1部リーグ復帰も果たした日大だが、東海大のパワーと組織力に圧倒され敗退。しかし、強力な選手がいなくても東海大から3トライを奪った力は侮れない。楽しみな選手は2トライを奪ったスピードランナーの竹澤だ。東海大は村松と藤崎が絶好調。もちろん隙あらばウラに抜けるゾの湯本がいるし、池田も一回り大きくなった感じ。野口竜司はFBで成長して欲しいけどSOでもOKだ。アタアタは強いだけでなく巧いしテトゥヒは大きくても器用な選手。これだけ揃ったらやっぱり手が付けられない。ということで、ここで東海大株が1ランク上昇。

○釜石シーウェイブス 31-28 ●北海道バーバリアンズ

釜石シーウェイブズと北海道バーバリアンズは最後まで縺れた熱戦。バーバリアンズ先制の後、釜石がマイケルの活躍などで3連続トライを奪う。だが、バーバリアンズも粘って1トライ返して17-14の釜石リードで前半終了。後半も釜石が2連続トライで先行するがバーバリアンズが2トライ返して31-28で釜石が辛くも逃げ切った。バーバリアンズでは七戸と平川の2枚看板のスピードが魅力十分だった。

○PSIスーパーソニックス 21-12 ●神奈川タマリバクラブ

PSIとタマリバも手に汗握る熱戦。タマリバ先制のあと、PSIが2トライを奪って14-7で前半終了。後半も先に取ったのはタマリバで、ここで14-12。しかし最後はPSIが1トライを奪って突き放しベスト4に進んだ。PSIでは中村和矢のランが印象に残る。横山健一はチームの支柱となっているものの、やはり細かいムーブが気になった。

○流通経済大学 31-7 ●筑波大学

筑波大と流経大の茨城ダービーは、留学生3人衆のパワーが炸裂する形で流経大が5つ連続でトライを奪う。筑波が最後に意地を見せて1トライ返したが31-7と意外なほどの差が付いてしまった。しかし、連覇を続けるなど実績を挙げている東日本大学セブンズなら筑波は優勝争いに絡みそう。流経大のタナカ選手に関しては面白い場面があった。タウムアがウラへ抜けたところでフォローしてパスを要求するときに「センパ~イ」とおねだりするような声が聞こえて思わずニンマリ。パスをもらった「コウハイ」はスピードに乗って一気にゴールラインまで到達したことは言うまでも無い。ここで流経大株も1ランクアップ。

[準決勝]

○東海大学 28-0 ●釜石シーウェイブス

大学生対社会人の対決となった準決勝。第一試合では、組織的にバランスよくボールを動かし続けた東海大が前後半に2トライずつ挙げて完勝。釜石は東海大のパワーに屈した格好だが、どうしてもアタックがマイケル頼みになってしまうのが痛いところ。体力面でも、今は大学生のトップチームの方が社会人を上回っていることを実感。この試合でも村松が好調なところを見せた。

○流通経済大学 31-0 ●PSIスーパーソニックス

東海大に負けじと流経大も好調を維持してPSIをゼロ封で圧勝。この試合も大学トップチームのパワーを感じさせる典型的なプレーがあった。ディフェンスで相手にブレイクダウンを許さないチョークの連発には思わず唸ってしまった。流経大の選手達から「倒すな」という声が頻繁に聞こえたことからも意図的かつ組織的にこのプレーができている。PSIはジェイミー・ヘンリーが居ても苦しかったと思われる。流経大が4連覇に王手をかけた。



[決勝戦]

○東海大学 31-28 ●流通経済大学

流経大の4連覇阻止に燃えたというよりも初優勝に向かってチーム一丸となって戦う東海大。ここまでシオネらの圧倒的なパワーで勝ち上がってきた流経大だったが、個の強さだけでは通じない相手に対してはミスを連発して波に乗れない。東海大が1分に野口、2分に湯本が相手のミス絡みとは言え見事なワンツーパンチを決めて14-0とリードを奪う。流経大の4連覇がかかった試合は意外な形での立ち上がりとなった。セブンズの拮抗した戦いはバスケットボールに通じるところがあり、2つ先行されるとキャッチアップが難しくなる。

しかし、流経大も簡単には引き下がれない。4分、ラインアウトを起点としてタウムアが1つ返した後、6分にはシオネが技ありのプレーで流経大のトライゲッター高山のトライを演出。ボールを持ったシオネが巨大の壁になってディフェンダーの視界を遮り高山にボールを渡したプレーだが、相手は急に高山が飛び出してきたように見えたに違いない。スピードランナーに早い段階で間合いを与えてしまったらもう止められない。東海大も粘る。7分にエースに名乗りを上げた藤崎がトライ。東海大はさらに10分、またしても藤崎がトライ。26-14での折り返しとなったが、流経大にとっては最初に失った2本が痛かった。

東海大の勢いは止まらない。隙あらばウラに出てゴールラインまで駆け抜ける湯本も魅力たっぷりのスピードランナー。31-14と東海大のリードはさらに広がり、流経大の4連覇は風前の灯火となる。しかし、決勝戦は通常より3分長い10分ハーフ。流経大にも一発で決められるエース高山がいる。3分にその高山が一気にゴールを陥れ21-31。ちなみに高山はゴールキックも次々と決めるスーパーブーツでもある。残り7分近くで10点のビハインドなら十分に流経大の逆転もありえる。ここから東海大には我慢の時間帯が続く。

そして9分、遂に高山が3連続トライを挙げ31-28。ただ、残念なことにゴールキックを決めたときには既に試合終了を告げる合図が鳴っていた。流経大はあと一歩のところで4連覇を逃したの似たいし、東海大は嬉しい初優勝。スコアは拮抗したものの、個の強いメンバーが組織的に戦った東海大が安定した戦いぶりで勝利を手にした。流経大は個の力に頼りがちな部分が災いし、ミスに泣いた感が強い。とはいっても、大学生なら文句なしに優勝決定戦レベルの試合だったことは間違いない。

今シーズンのリーグ戦Gはこの2チームに3チーム目として同じく豪華陣容の大東大が絡んでくる可能性が高い。この場で3つ巴の戦いを観たかった気もするが、それは秋シーズンの楽しみに取っておこうと思う。現状ならほぼレギュラーが確定で、すぐにでも15人制の強力チームが出来上がる東海大が一歩リードしている感が強い。去年と比べてもBKの得点能力を考えるとより強力なチーム鳴ると思う。このまま強化に励んで今年こそは永らく宿題であり続けた大学日本一に輝いて欲しいところ。もちろん、楽しみなメンバーが加わった流経大がこのままで終わるはずがない。そしてモスグリーンのチームも。これから秋に向かって楽しみが膨らむ中、今年も最後まで熱戦が続いたYC&ACグランドを後にした。

ラグビーマガジン 2016年 05 月号 [雑誌]
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第57回 YC&ACセブンズ(2016.4.3)の感想(その2)

2016-04-07 00:39:51 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


オリンピック種目となったことで一躍脚光を浴びることになった7人制ラグビー(セブンズ)。日本は男女ともにリオ大会出場が決まっており、女子はコアチーム昇格も果たして世界を相手に戦っている。今週末の香港セブンズで男子もコアチーム復帰を決めれば日本のセブンズ熱は一気に高まることは間違いない。と書きたいところだが、現状を考えると疑問符が付く。注目を集める存在にはなっていても、セブンズを取り巻く状況にさほど変化はないように感じられるのだ。

セブンズには15人制のラグビーとは違った魅力があり、別のスポーツという見方も確かにある。オリンピック種目化で期待されたことは、他の種目からのアスリートの転入とセブンズに特化したチームの台頭。しかし、セブンズの日本代表に招集される選手達は殆どがトップリーグか強豪大学チームに所属する選手達。また、このYC&ACセブンズで4連覇を目指す流経大の活躍に象徴されるように、決勝トーナメントで勝ち残る確立が高いのは身体能力の高い選手達を揃えた大学チームだ。

結局、セブンズに注目が集まるようになっても「公式試合」が殆ど増えていないという現実がある。せっかくセブンズに特化したチームを作っても、経験を積む場がなければチームも選手も成長できない。せめて、春の間だけでもセブンズのサーキットが組めないだろうかと思ったりもする。トップリーグや大学チームからの補強選手の参加を認めるのも一案。そうなれば試合のレベルアップと観客の増加が期待出来るし、春の間は試合から遠ざかる多くの選手達にとってもプラスになると思うのだ。

実は、15人制ラグビーでもセブンズの戦術は注目を集めている。15人が3人ないし4人のユニットに分かれてボールを動かしていくのが現代ラグビーの特徴。究極の少人数でユニットを組むセブンズの考え方を練習に取り入れ、プレーに習熟していくことが15人制のラグビーの強化にも繋がる。だから、戦術的に戦うことを強く意識しているチームは積極的にセブンズに取り組んでいる。そんな話は聞かなくても、実際にプレーを観ているとそのように感じる。大学でも春の余興で終わらせるのはもったいないと考えているチームは確実に増えているように思われる。

理想を言えば、セブンズの大会はワールドシリーズ方式にすべきだと思う。1日目は4グループに分かれてリーグ戦で順位を決め、翌日は全チームがノックアウト方式のトーナメントを戦う。違ったスタイルの試合を僅か2日間の間に行うことがセブンズ大会を盛り上げる。リーグ戦方式は持久力と気持ちの切り替えが必要(可能)であり、翻って2日目は負けられないという緊張感のもとで試合を行う。ワールドシリーズでは、このスタイルに馴染んだプロ達が鎬を削っているわけだ。まずは男子のコアチーム昇格(復帰)と男女日本代表のリオでの活躍に夢を託したい。

前置きが長くなってしまった。場所をYC&ACグラウンドに戻す。午後からはトーナメント方式による2つの優勝争いが始まった。

■コンソレーション(敗者復活)トーナメント

[1回戦]

○青山学院大学 22-21 ●早稲田大学
○YC&AC 45-5 ●湘南ベルマーレ
○サムライセブン 29-12 ●日本IBMビッグブルー
○慶應義塾大学 26-10 ●中央大学

さて第1試合。早稲田が幸先よく先制するも、その後は青山学院が3つ連続でトライを奪い17-7での折り返し。後半も先制は早稲田だったが青山学院が1トライを追加して22-14でインジュリータイムに突入した。早稲田は意地を見せて1トライ返したものの僅か1点の重みに泣き敗退。昨年のチームでは徹底的に揺さぶりをかけることで対戦相手を翻弄し続けてチャンピオンシップ準優勝に輝いたが、今年のチームはコンセプトを明らかにする前に舞台から消えてしまった感が強い。

第2試合に登場したYC&ACはホストチーム。ホームならではの熱き声援も味方する形で湘南ベルマーレを一蹴。また、アスリート集団のサムライセブンも技と力を結集させた今一歩元気が見られないIBMビッグブルーを圧倒する。中央大はアイコー(住吉)の活躍もあり2連続トライを奪い波に乗るかに見えた。しかし、その後(何故か)失速して慶應に4連続トライを奪われあえなく敗退。準決勝は青山学院 vs YC&AC、慶應大 vs サムライセブンとなった。



[準決勝]

○青山学院大学 26-21 ●YC&AC
○慶應義塾大学 47-19 ●サムライセブン

準決勝からがいよいよ社会人と大学生の対決。活きのいい大学生と体力勝負に持ち込まれないように知略戦略を尽くす社会人の対決もなかなか面白い。結局は若さで押し切る大学生の方に凱歌が上がるのだが、早稲田に勝利して元気いっぱいの青山学院に対してYC&ACには地元ファンの後押しという強力な味方が居る。果たして最後まで勝敗の行方が分からない大接戦となり21-19とYC&ACのリードでインジュリータイムに突入。決勝進出を確信する地元ファンのボルテージは最高潮に達したが、無情にも青山学院が逆転トライを奪って試合終了。グランド中にこだました大歓声は一瞬にして悲鳴に変わってしまった。

慶應義塾とサムライセブンの戦いは、中央大戦での4連続トライによる逆転勝利で勢いに乗る慶應義塾がサムライセブンを圧倒。結果は残念だったがサムライセブンはこの大会での記憶に残るチームのひとつとなった。何とか彼らが活躍出来るように公式戦を増やすことは出来ないだろうかと切に願う。決勝戦は青山学院 vs 慶應義塾の対抗戦G校同士の対決となった。

[決勝戦]

○青山学院大学 38-21 ●慶應義塾大学

予選ラウンドのところでも書いたように、加藤氏のHC就任というニュースもあり青山学院は大会前の注目チームの1つだった。しかし、期待(青山学院ファンの方、ごめんなさい)はいい方に裏切られた。日大時代の加藤氏の評判は散々であり、それは私自身もいたく感じていたことである。が、もしかしたら青山学院のいい意味での奔放さが組織化されることで強いチームが出来上がるかも知れない。あえて空振りになることは覚悟の上でこう記しておきたい。それくらいに、トーナメントを勝ち進むにしたがい青山学院がベンチとピッチが一体になる形でチームが纏まっていく様子が感じられた。

前半こそ19-14と接戦になったものの、後半は青山学院のパワーが慶應を上回りトライ数は3対1で青山学院が文句なしの勝利を収め優勝。今シーズンは大学選手権出場が4位までだから、6番目だったチームがパワーアップすれば対抗戦Gも熾烈な戦いになる。対抗戦Gでは筑波大とともに青山学院がどこまで成長するかについても注目していきたい。

次はいよいよチャンピオンシップトーナメント。(つづく)

なんのために勝つのか。 (ラグビー日本代表を結束させたリーダーシップ論)
廣瀬 俊朗
東洋館出版社
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