「熱闘」のあとでひといき

「闘い」に明け暮れているような毎日ですが、面白いスポーツや楽しい音楽の話題でひといき入れてみませんか?

関東学院大学 vs 大東文化大学(2012.11.24)の感想

2012-11-29 02:38:40 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
[キックオフ前の雑感]

かつて大学日本一に輝いた関東大学リーグ戦グループの顔といってもいい2チームが、揃ってついにここまで来てしまった。負ければ最下位が決定する最終戦だが、どちらも既に入替戦出場が決まっている。試合を観ていないラグビーファンには信じがたい事態となっているのだが、実際に闘いぶりを観ればその理由がはっきりと分かる。関東学院は戦力ダウンもさることながら、出場選手もポジションも試合ごとにめまぐるしく変わる。また、大東大は主力選手の相次ぐ負傷でベストメンバーが組めないままここまで来た。他のチームは概ねチーム力を上げる方向で最終戦を迎えているのだが、関東学院と大東大の場合は低迷状態から脱することができていない。せめて最終戦だけでもいい形で終えて、入替戦に臨みたいところだ。

そんな(複雑な)想いを抱きながら両チームのメンバー表を眺める。大東大はついにテビタとフィリペの2枚看板が今シーズン初めてスタメンに名を連ねた。テビタはNo.8ではなくLOでの起用だが、この辺りにチームの苦しい台所事情が伺える。ただ、先週は体調不良で欠場した長谷川が復帰したため、FWはリーグ戦Gでも屈指の強力な陣容になった。PRには必殺タックラーの高橋も居る。コンビネーションに不安は残るが、前節の日大戦で後半から出場したテビタとフィリペの存在感の大きさは実証されている。BKラインの攻撃力に課題はあるものの関東学院にとっては頭痛の種が一気に増えた感じだ。

問題は関東学院の方。結局メンバーを固定することなく最終戦を迎えることになった。昨シーズンは主力だった安井が復帰したものの、ポジションはWTB。かつてFWの山口をWTBに起用(最終的にはNo.8に戻った)して話題を呼んだこともある関東学院だが、今回と事情はまったく異なる。行き当たりばったりは言い過ぎとしても、どんな基準で出場メンバーが選ばれているのかがまったく見えてこない。相変わらず1年生の起用が多いことも目を惹くが、これとて「大胆な登用」とはほど遠い状態だ。将来性を見据えたと言われても、明日なき戦いを戦っているのが現状だから、説得力は弱いと追わざるを得ない。キックオフ前から関東学院は不安でいっぱいだ。

[前半の闘い]

2部チームの偵察隊と思しき学生達も見守る中、関東学院のキックオフで試合開始。序盤からパワーアップした大東大が攻勢に出ると思われたが、元気がよかったのは関東学院の方だった。果敢にオープンに展開して攻める関東学院に対し、大東大は動きが鈍くディフェンスが機能しない。テピタもフィリペもボールを持って前進するシーンが観られない予想外とも言える状況の中で、5分に関東学院がPG成功により3点を先制する。

しかしながら、14分に大東大があっさりと逆転に成功する。関東学院陣10m付近でのスクラムからNo.8長谷川が8単で前進を図ると関東学院はこのルーキーに易々と突破を許してしまう。長谷川は関東学院陣奥深くまで前進したところで、慎重にラストパスをCTB梶に送った。GK成功で3-7と一転して大東大がリードを奪う展開。その後は両チーム一進一退の攻防が展開されるが、24分に大東大に待望の「一発」が出る。関東学院陣10m/22mでのスクラムを起点としてFWがサイドアタックで攻め、PR高橋が大きく前進を図り、LOテビタが今季初得点となるトライを奪う。GKは失敗するが大東大が12-3と9点をリードする展開。取るべき人が取ったところで、試合の流れは大東大に大きく傾くかに思われた。

しかしながら、大学ラグビーはわからない。エースがお約束通りトライを取ったことで安心してしまった訳ではないと思うが、大東大がピリッとしない中で関東学院のアタックが機能するようになる。まずは29分、大東大陣22m内でのスクラムからFWがサイドを突きラック。ここからSH井上がボールをインゴールに持ち込んだ。GKも成功して関東学院は10-12とビハインドを2点に縮めた。このトライに力を得た関東学院が一気にペースを掴む。だが、実態は大東大が完全に受けに回ってしまったとも言える。大東大がなかなか敵陣に行けない状況の中で36分、関東学院が再逆転に成功する。大東大陣22m内でのラインアウトからモールを経てオープンに展開し、SO高城のグラバーキックを走り込んだCTB伊藤がインゴールでグラウンディングに成功。GKも成功して17-12となる。

この期に及んでも大東大はピリッとしない。「ダイトー、目を覚ませ!」と激しい檄が飛ぶ中、前半終了間際の39分、関東学院にラインアウト→モールからのトライが生まれる。ボールをグラウンディングしたのはWTBの今井。関東学院のモール・トライでグラウンディングするのは何故かBK選手というのが今シーズンの関東学院のアタックの特徴になっている。要するにFWが組んだモールにBK選手も参加する攻撃スタイルを取っているが故に起こりうる現象。ここも高城が確実にGKを決めて24-12と関東学院がリードする形で前半が終了した。大東大の選手に「ホントに大丈夫?」と声をかけたくなるくらいに生彩を欠いた前半の後半だった。ここは、敢えて一番使いたくない言葉を使わせていただく。「不甲斐ない」と。

[後半の闘い]

前半の流れで行けば、大東大の完全な負け試合。しかし、そんなピンチを救ったのが頼りがいのある今季初出場の選手だった。開始早々の1分、大東大は関東学院陣10m/22mの位置でのラインアウトからオープンに展開し、ボールがライン参加したテビタに渡る。テビタはそのまま関東学院のタックラー達を寄せ付けずに真っ直ぐにゴールまで到達。あまりにも呆気ないシーンだが、とてもけがで長期間の欠場を余儀なくされた選手とは思えないくらいに惚れ惚れするようなランニングだった。GKも成功して19-24と大東大のビハインドは5点に縮まった。そして、ここでゲームは早くも決することになる。なぜなら、今シーズンの関東学院は一度ディフェンスが崩壊すると修正が効かなくなるから。それは正にダムの決壊に例えられる。堤防なら修復可能だが、ダムの場合はそうは行かない。

同じく期待を集めての復帰選手、フィリペも負けていない。7分、大東大は関東学院陣に入った位置で得たPKからタップキックで攻め、ロングパスを受け取ったフィリペがゴールラインに到達する。GK成功で26-24と再びリードを奪った。さらに13分、大東大が関東学院のデンジャラスゾーンめがけて蹴ったボールをしっかりチェイスしてマイボール確保に成功する。トライに繋がる素晴らしいセービングを見せたのは何とPRの高橋。ラックから出たボールを受け取ったフィリペの連続トライで大東大はリードを拡げる。こんなファイター達が揃っているのに成績がともなわないのは何故?と思いたくなるようなシーンだった。

テビタとフィリペの力強いトライショーで勝利が確信された大東大だが、BKがピリッとしない。せっかく「あとは頼むぞ!」というボールをもらっても簡単に蹴って相手にボールを渡してしまう。申し訳ないがここでも「不甲斐ない」を使わせていただく。かつて、ボールをもらうと水を得た魚のように嬉嬉としてピッチを駆け巡っていたのが大東大のBK陣だった。走れないFWの選手がしばしばBKの選手に叱責されていたことも思い出す。今は立場が逆転していて、先の高橋の例を挙げるまでもなくBKがFWに頭が上がらなくなっている。BKの再生なくして大東大の再生はないと思わせるようなシーンが今シーズンはとくに多いような気がする。

その後も大東大は27分に長谷川が50m以上走ってトライ、37分に連続攻撃からCTB梶がトライを奪い47-24となる。関東学院も何とか一矢報いようと継続攻撃を仕掛けるが、フェイズを重ねるごとにBKラインに立つ選手が減っていく「狭いラグビー」に終始する。考えてみれば、オープニングの日大戦の関東学院もこんなラグビーだった。あの試合からメンバーがかなり入れ替わっては居るが、シーズンを通しても(選手達は頑張っているのだが)結局このラグビーから脱却できなかったのかと思うと、とてもとても哀しくなってしまった。

[試合後の雑感]

終わってみればダブルスコアに近い完勝の大東大だが、いろいろと考えさせられることが多い試合となった。この日奪った7トライのうち、CTB梶の2つを除き、テビタとフィリペが2つずつに長谷川がひとつで、梶のひとつも長谷川のビッグゲインから生まれた。もしFWに彼ら3人が居なかったらどんな結果になっていたのだろうか。思うに、大東大の不振の原因は自分達の戦うスタイルを見失ってしまっていることにあるような気がする。強力な個の力がなければ勝てないラグビーになっているとも言える。マヘ、フィリピーネ、エモシといったトップリーガーが各2人分働くことで勝つことができてはいたが、結局そのことが15人で戦うラグビーを構築することを妨げていたのではなかったか。まずは、ラストファイトとなる入替戦で勝つことが先決だが、オフシーズンにはどんなラグビーがしたいのかをじっくり見つめ直して欲しい。願わくばモスグリーンのジャージがしっかりお記憶しているラグビーを希望したいところだ。

関東学院はついに崖っぷちに立たされしまった感が強い。それも片足がすでに滑り落ちかけているような気がする。少なくとも、本日の試合内容からは明るい希望が見いだせなかった。そこそこ継続はできるし、モールもスクラムも弱くはない。だが、2部チームが相手とは言ってもディフェンスが崩壊しないという保証はない。メンバーを固定しなかったことで、組織的なディフェンスを構築できていないことが大きな不安材料になっている。何度も書いているが、関東学院が築き上げてきたラグビーはリーグ戦グループの大きな宝物だと思うし、他のチームが継承できるものでもない。内部崩壊という最悪の形でそれが失われるような事態にならないことを望む。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中央大学 vs 拓殖大学(2012.11.24)の感想

2012-11-26 01:13:38 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
[キックオフ前の雑感]

今シーズンの関東リーグ戦グループ・ウォッチングで一番の楽しみになっているのは、試合を重ねるごとに進化していく拓大のラグビーを観ること。もちろん、これは最初から意図していたことではなくて、チーム関係者には申し訳ないが、嬉しい誤算と言える。昨シーズンは辛くも1部残留を果たしたとは言うものの、今シーズンに向けての明るい材料はなかなか見いだせなかった。選手は小型化し強力なランナーも卒業で戦力低下は免れない。しかし、リーグ戦Gに最下位以下の順位は、当然のことながら、ない。拓大は関東学院以上に厳しい状況にあると思われたのだ。だから、拓大がどんな形でチーム力アップを図っていくのかに興味があった。

しかし、春季大会の立教戦を観て、少し考え方が変わった。拓大ラグビーの魅力は胸のすくようなオープン展開。だが、実はその陰には地道な仕事人が揃った(小粒だがピリリと辛い)FWの選手達がいる。ここ数シーズンは横山兄弟に代表されるような高速ランナーが活躍したこともあり、拓大はBKのランが魅力のチームとなっていた。しかし、「飛び道具」が大松のみとなった今シーズンは、そういった(高速バックスリーに頼る)スタイルを見直すことがチームのテーマになったようだ。件の立教戦では、セットから一発でオープンに展開することはしないで、まずFWでボールを前に運んでから展開するスタイルになっていて驚いた。と同時に、自分たちよりも身体が大きい強力なFWを持っているチームと伍して戦うための戦術ではないかとも思われたのだ。SHも昨シーズン球捌きの良さで起用されていた選手ではなく、ずっとSOを務めていた岩谷だったことも驚き。この時点では、いずれ彼はSOに戻り、その日はSOだったステイリンがCTBを務めるものと思っていた。

そして、レギュラーシーズンの開幕は大東大戦。なぜか相性がよく、かつての拓大なら高速バックスリーの活躍でDF陣を翻弄することで勝利を重ねている相手だ。そこでは、春の立教大戦で見せてくれたラグビーがしっかりと継承されており、オープン展開は「封印」の状態だった。SHも岩谷副将のままで、彼がゲームキャプテンとしてチームを引っ張る存在になっていた。なるほど、拓大はBK展開はひとまず封印してFW中心で行くことに決めたのだなと思ったのだ。こうした流れを観るうちに拓大のラグビーに対する興味は増していくことになる。その決定打となったのが、見事勝利を収めた2戦目の関東学院戦だった。ここで、彼らがいかにしてマイボールをキープし続け、また、イーブンボールの捕獲を目指すかがはっきり見えたのだ。そんな工夫を重ねたプレー(けして難しいものではなく、当たり前とも言えるもの)にすっかり魅了されたことで、今年は拓大のラグビーを見届けようと決めた。

その拓大の試合を観るのは今日で立教戦も含めると8試合目だ。わずか7試合の間でも、彼らは期待を裏切るどころか、想定以上の進化を遂げている。だから、本日の楽しみは、拓大がリーグ最終戦をどんな形で締めくくってくれるのかだ。進化以外の面でも、今シーズンの拓大には特筆すべき点がある。それは、試合の登録選手がほぼ100%近い形で固定されていることだ。負傷や戦術などメンバー交代には様々な「理由」があるのだが、拓大に関してはフィジカル面でも戦術面でも問題がないことになる。それはここまでの闘いぶりが証明している。勝利した試合はもちろんのこと、敗れた試合でも東海や流経大には20点台の失点だし、日大戦は僅か1点差の惜敗。流経大戦では、拓大伝統のオープン展開に対する封印が解かれた。本日も固定メンバーで戦う拓大がリーグ戦のラストファイトをどんな形で締めくくってくれるのだろうか。

さて、本日の拓大の対戦相手は中央大。大学選手権出場の5位以内への僅かな可能性が残っているとは言え、限りなく6位がゴールに近いという状態にある。元々メンバーは揃っており、しかもシーズン当初は仕上がりの良さで3位以上を期待していただけに、残念と言う他ない。なぜ拓大が試合を重ねるごとに進化していき、中央はそうならないのかは別の場所で考察するとして、どのような結果に終わるにしても、中央も勝利で締めくくりたいはず。とくに本日の会場は「不敗神話」も囁かれる上柚木だ。しかも拓大は相性のいい相手と言える。そんなジンクスにすがりたくなるにしても、中央の潜在力を示すにはかっこうの舞台とも言える。下馬評では拓大優位だが、簡単にはいかないタフな戦いとなりそうだ。

[前半の闘い]

風下に陣を取る拓大のキックオフで試合開始。序盤は双方キックによる陣取り合戦の様相を呈する。さすがに7戦目ともなると相手の戦力はお互いに把握できている。中央は羽野を起点としたカウンターアタックを持ち味とするが、拓大も前に出る激しいディフェンスが持ち味。また、拓大は中央のような武器(一発で取れるカウンターアタック)を持っていない。お互いに様子を見るというよりも、怖いのは不用意な失点なので、前述したような思惑が一致する形でリスクを避ける慎重なゲーム運びになったものと思われる。

とは言っても点を取らなければ勝てない。中大は拓大陣に入ればオープン展開で攻め立てるが、拓大が低いタックルでミスを誘うといった形で、慎重な中にも中大が攻勢に出る形で試合は進む。やはり、BKの攻撃力は中大の方が上。拓大はウヴェで取る形を理想としているが、それが可能となるのは中央陣22m内に入ってからになる。中央のロングキックによるエリアマネジメントが機能している形。7分には中央が拓大陣でのカウンターアタックからオープンに展開してWTBで勝負の形になるが惜しくもオブストラクションがありチャンスを逃す。拓大は命拾いをしたかっこう。

ロングキックを使う中央に対し、なかなか中央陣に入ることができなかったが、拓大は12分に中央ゴール前でのラインアウトの絶好の先制のチャンスを掴む。こうなればやることは決まっている。ラインアウトからウヴェを最後尾に付ける形でモールを組み前進。ゴールに近づいた段階でウヴェが飛び出してトライを取るパターン。しかしながら、1回目は中央の反則(バージング)に結果的に拒まれ、やり直しの2回目も中央の粘り強いディフェンスに遭ってノックオン。相手ボールの5mスクラムではアーリーエンゲージを取られてチャンスを逸する。22分にも拓大は中央陣ゴール前でのラインアウトのチャンスを掴むがここも中央の粘り強いディフェンスが機能する。相手の出方が分かっているとしても、しっかり止めた中央のディフェンスを褒めるべき場面だろう。自分たちの形で取れない拓大に暗雲が漂い始める。そういえば、ここは「中央不敗神話」の総本山だった。

27分、今度は中央に拓大ゴール前でのラインアウトのチャンス。中央はモールで前進しオープンに展開するが、拓大が渾身のタックルで何とか得点を許さない。しかしながら、勢いに乗った中央の猛攻が続く。30分には自陣ゴール前でのマイボールラインアウトをスティールされてピンチに陥り、22mライン中央付近でオフサイド。中央は確実に3点を狙うかと思われたが、SH高崎がタップキックからのクイックリスタートでするすると前進することに成功しゴールポスト下まで到達。GKも難なく決まり中央が7点を先制した。一瞬の隙を突かれた形だが、拓大応援席にいやなムードが漂う。

しかしながら、ここで慌てずに気持の切り替えができるのが今シーズンの拓大。リスタートのキックオフで中央にプレッシャーをかけてボール奪取に成功し、オープン展開で一気に中央ゴールに到達する。ここは中央も渾身のディフェンスでパイルアップとなるが、5mスクラムで拓大のサインプレー(トリックプレーとも言える)が決まった。No.8の位置にはウヴェが下がる。中央は当然8単(この場合は5単)を警戒する。中央サイドからは「ウヴェ・エイト」の声がしきりにかかる。しかし拓大の選択は8→9ならぬ5→9だった。この意表を突いたオープン展開でラストパスがFB山本に渡る。右中間からの(拓大にとっては)やや難しい位置からのGKを岩谷が決めた。拓大応援席はまるで2点のボーナスをもらったかのように喜ぶ。前節では岩谷が安定したプレースキックを披露したとは言え、ファンはまだ信じ切れていない。ここでゲームは振り出しに戻った。

このまま前半は7-7のタイスコアで終わると思われた39分、中央に痛恨のミスが出てしまう。拓大陣10m/22mの位置でのラインアウトからオープンに展開したところでターンオーバー。ウラに蹴られて自陣10m/22mまで大きく陣地を挽回され、しかも拓大ボール。拓大はラインアウトからモールを形成してウヴェが前進を図るが、中央も渾身のタックルで阻止。しかし、拓大はボールキープを続けてゴール前ラックからオープンに展開する。中央のマークが外を見たところで絶妙のタイミングで内側からライン参加したFB山本がリターンパスをもらいゴールラインに到達。GKは外れるが拓大が12-7と5点のリードを奪う形で前半が終了した。

中央の圧倒的な攻撃力の前に一時は防戦一方となり、先制点も奪われてしまった拓大。いつもの拓大なら浮き足立つか、焦りからミスを連発して崩れてしまったところ。しかし、本日の拓大には落ち着きがある。守勢に回る中でもおそらく、ディフェンスで止めることができたことで自信を掴んでいたのだろう。一方の中央も出来は悪くない。両チームのディフェンスがしっかりと機能したことで、締まった内容の試合になっている。

[後半の闘い]

後半も開始早々から蹴り合い(陣取り合戦)が続く。しかし、前半に逆転に成功したこともあり、拓大の方に余裕が感じられる。開始に2分に拓大は中央のミスから追加点のチャンスを掴む。中央陣22m手前での中央大ボールのラインアウトは後ろにボールが流れたところを拓大が拾ってオープンに展開。パスがしっかり繋がればトライの可能性もあったが最後の繋ぎの部分でミスがあり追加点ならず。その後の一進一退の展開が続くが、お互いにディフェンスがしっかりしており、なかなか見応えのある試合。とくに、拓大の低く突き刺さるタックルが試合を引き締める。最近の傾向として、ジャージを掴んで引き倒す、飛びかかるからだっこちゃんスタイルまで、教科書に載っていない(もちろん練習メニューにもない)バラエティに富んだ(正しくない)タックルが横行する大学ラグビー界だが、拓大はあくまで教科書通り。普段からしっかり練習しているのだろう。素晴らしい!

時計の針が進んだ17分、拓大に待望の追加点が生まれる。中央陣22m付近のラインアウトからモールを形成しウヴェがパワフルに前進してラック。サイドアタックでFL西原が抜け出してゴールラインを越えた。GKも成功して19-7と拓大のリードは12点に拡がる。2トライ1ゴール差はセーフティリードではないものの、落ち着いて試合を運んでいける点差ではある。しかし、本日の中央は粘り強い。「神話」に背いて上柚木で負けるわけにはいかない。キックオフのボールを捕獲したところで拓大にオフサイドがあり、中央が拓大陣の22m手前の位置でラインアウトのチャンスを掴む。中央はここから素速くかつワイドにオープンに展開して拓大ディフェンスを振り切り、WTB高がゴールラインを越えた。右中間からのGKは惜しくもポストに弾かれるが、中央のビハインドは1T1Gで追いつく7点に縮まる。残り20分での逆転を期して、中央サイドの応援席が息を吹き返す。

しかし、ここからが今シーズンの拓大の成長ぶりを見せてくれたという意味で真骨頂だった。ラグビーは逃げ切りの難しいスポーツだ。いや、逃げ切ろうと思ったら負けるスポーツと言い換えた方がいいかも知れない。失点を防ぎつつも、攻めて点差を拡げなければならない。アタックもディフェンスも気を抜くことができず、かつ体力的にもきつくなっていく。ここで、法政戦で大健闘した拓大FWがこの日も見せてくれた。25分、31分と相手ボールスクラムの局面でホイールに成功する。とくに31分のスクラムの位置は自陣22m内だっただけに、ビッグプレーと言える。拓大は39分に追加点(3点)が確実と思われたPGを外してファンをヒヤリとさせるものの、そのまま凌ぎきって勝利をものにした。

前半の勢いに乗ったアタック、そして後半に見せた粘りと、上柚木での「不敗神話」は関係なく、本日の中央は充実していた。しかし、中央以上に冴えていたのが拓大の身体を張ったディフェンスだった。7点差の勝利というのはファンにとっては物足りないかも知れない。しかし、その場で試合を見た者としては、数字以上の価値を認めたくなる勝利だった。

[試合後の雑感]

今シーズンの拓大は1試合ごとに成長し、常に前進し続けるチームだ。最後の1つでそのことが翻ってしまう畏れもあったわけだが、期待以上の戦いで有終の美を飾ったと言える。とくにこの試合で強く感じたのは、精神面での成長。去年までの拓大だったら、今日の試合は厳しい結果になっていたかも知れない。つまらないミスや気の緩みで勝ちゲームも落としてきた拓大は過去のものとなったと言い切ってよさそうだ。来る大学選手権では、関東リーグ戦Gに拓大ありを示して欲しいと思う。

好調な立ち上がりを見せ、今シーズンこそは上位浮上も期待された中央だったが、結局6位に終わってしまった。今日の試合を観る限りは、ここまでできるのに何故?という想いを禁じ得ない。少なくとも、気持を強く持って戦えるチームであることは確かだ。となると、やはり課題はチームの作り方ということになるのかも知れない。ただ、拓大は僅か1年でチーム改造に成功している。それもけして難しい方法は使っていない。「当たり前のことを当たり前にやれるようになる」ことで上に行ける。中央は一足早くシーズン終了となってしまったが、来シーズンこそは旋風を巻き起こして欲しい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第12節(11/25)の試合予定&みどころ(その2)

2012-11-23 20:32:59 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
○第12節の試合予定

 11月24日(土) 中央大学 vs 拓殖大学 12:00 八王子市上柚木公園陸上競技場
 11月24日(土) 関東学院 vs 大東文化 14:00 八王子市上柚木公園陸上競技場
 11月25日(日) 法政大学 vs 日本大学 12:00 秩父宮ラグビー場
 11月25日(日) 流通経済 vs 東海大学 14:00 秩父宮ラグビー場

11月25日の秩父宮は、最終戦で優勝決定というフィナーレに相応しい舞台設定となりました。1997シーズンに1部昇格を果たした流経大と2000シーズンに1部復帰を果たした東海大がついに2強として頂点を争う時代が到来したのです。数年前に他校の状況も鑑みて「東海・流経大時代」が来ると予想はしてみたものの、現実になってみると感慨深いものがあります。また、日大も加藤HC態勢になってから4シーズンを迎えるに辺り、一気に3位にまで上り詰めるチャンスを掴みました。これら3チームは基本的に組織で戦うことを重視してきたチームであることは偶然ではないと思います。かつて関東学院と2強を成して同じ舞台設定で優勝争いをしていた法政としては、最後に何とか意地を見せたいはず。もちろん、ウォッチャーは豪華メンバーによる「サミット」をじっくり楽しみたいと思っています。

◎秩父宮ラウンド(11/25)の2試合

【法政大学 vs 日本大学】

「拓大戦の感想」にも書きましたが、前節の拓大戦における法政の完敗はショックでした。と同時に感じたことは「練習は裏切らない」ということ。拓大の選手達の落ち着いた闘いぶりと、浮き足だった印象が否めなかった法政の闘いぶりを見比べてみてそんな感想を持ちました。日大は(組織に対応できなかった)中央大に完勝を収めましたが、同じ問題(組織力に疑問符あり)を抱えていること法政の拓大戦での敗因のひとつと思われただけに、この試合も法政にとっては厳しいものとなりそうです。奇しくも、とるべき戦法は前日に拓大と相まみえる中央と同じで、FW中心かつ手数をかけずに決めきる集中力が大切。日大に継続を許してしまうと、SH小川を中心とした緻密に練り上げられた組織に翻弄され、またマイケルや新井(今回CTBでスタメン)といったパワフルな選手達の突破を止めることも難しくなります。大東大の日大に対する後半の戦い方が法政にとってはよい参考事例になりそうです。

今シーズンは、SHの小川主将を中心としたFWとBKのコンビネーションに磨きをかけることで結果を出してきた日大。ここで負けてしまっては、拓大に辛勝し、中央大を圧倒することにより手にした成果が薄れてしまいます。日大のひとつの課題としては、強いFWが相手の時の対応と前でしっかり止めるディフェンス。これらの課題は、大学選手権で相まみえることになる対抗戦Gの強豪チームとの戦いでより顕著になるものと思います。そういった意味でも、この試合はFWの闘いぶりにとくに注目したいと思っています。とくに期待したいのはルーキーのLOキテ。どうしてもパワフルなウヴェやテビタといった選手達と比較されてしまう部分があると思いますが、プレーを観ていると東海大OBのマイケル・リーチのような優秀なリンクプレーヤーとして成長しそうな予感がします。勝つことが大切な試合にはなっていますが、今後の進化の芽の部分もしっかり観ることが出来ればと思います。

【流通経済大学 vs 東海大学】

昨シーズンは3竦みとなった中から流経大がリーグ初制覇を達成しましたが、今シーズンは直接対決のエキサイティングな形で優勝が決まります。通常なら東海大をディフェンディングチャンピオンの流経大が迎え撃つという形になるのですが、今シーズンの場合はチーム再構築でここまで来た流経大が東海大にチャレンジといった方が感覚的にもしっくりきます。それくらい今シーズンの東海大は戦力が充実しており、チーム力はさらに上昇する勢いにあるとみてよさそう。ただ、流経大もメンバーと戦術が固まれば東海大を上回るパワーを発揮する潜在能力を持っているチーム。とくにパワー系を揃えた東海大に相対する機動力抜群の流経大といったリーグ戦Gで1、2を争うFW3列の激突がこの試合大きな見どころと言っていいかも知れません。流経大としては、高森、辻、植村にSOオペティを絡めた走力の高い選手達を縦横無尽に走らせてFW戦で東海大を翻弄したい。FB合谷の例を挙げるまでもなく、意外性で勝負できる可能性を秘める流経大が、堅実さが持ち味の東海大に勝つチャンスは十分あると思います。

東海大はFWが全員100kg以上ととにかくパワフルで、しかも走力がある。流経大も強いFWを看板としたチームですが、パワー勝負になれば東海大に分があります。FW中心で行くことで、流経大FWの機動力を削ぐことができれば、WTB小原らの高い決定力を誇るバックスリーにいい形でボールを渡すことができ、トライを量産することも可能。流経大は伝統的にワイドに展開するチームを苦手としているようなところがあり、オープン展開の局面ではLO三上がボールキャリアになってラインブレイクするシーンが見られるかも知れません。ただ、東海大にはひとつ気になることがあります。それは総じてタックルが高めなこと。身体の強さに自信を持っているからかも知れませんが、ボールを抑えることを意識する余り、身体を止め切れていない(結果的にゲインされてしまう事が多い)ように見えます。流経大にいい形で前進を許してしまうと、CTB矢次やピカイチルーキーのFB合谷の突破を許してしまうことになる。また、後半に投入されることになると思われるリリダムの爆発力も要注意です。逆に言えば、東海大がリードを拡げる形で早い段階でリリダムを引っ張り出すような展開に持ち込めばしめたもの。流経大の選手起用が填まるか、それともハズレになるかもこの試合の隠れた見どころだと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第12節(11/24)の試合予定&みどころ(その1)

2012-11-23 19:03:43 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
○第12節の試合予定

 11月24日(土) 中央大学 vs 拓殖大学 12:00 八王子市上柚木公園陸上競技場
 11月24日(土) 関東学院 vs 大東文化 14:00 八王子市上柚木公園陸上競技場
 11月25日(日) 法政大学 vs 日本大学 12:00 秩父宮ラグビー場
 11月25日(日) 流通経済 vs 東海大学 14:00 秩父宮ラグビー場

とうとう最終の第12節になってしまいました。流経大と東海大の全勝対決となった優勝争いから、関東学院と大東大の全敗対決となった最下位決定戦まで、また、熾烈を極めた中位グループ争いは大学選手権出場に向けた椅子取りゲームの最終ラウンドも兼ねる形でと、フルコースメニューとなった2日間。1日目は上柚木で、そして2日目は秩父宮で両方楽しむことができることはファン冥利に尽きます。もっとも当該チームの関係者にとってはそんな悠長なことは言っていられないのかも知れませんが。4試合すべてがそれぞれに見どころ満載なので、今回は2回に分けて期待するところを書いてみることにしました。

◎上柚木ラウンド(11/24)の2試合

【中央大学 vs 拓殖大学】

大学選手権出場に向けて他力本願ながら僅かに望みを持つ中央大としては絶対に負けられないラストファイト。過去、上柚木では負けたことがない「不敗伝説」に加え、拓大とは比較的相性がいいということに中央大ファンは望みを託すことになります。しかしながら、「相性のよかった拓大」は過去のものとなったという厳しい現実が中央大を待ち受けています。今シーズンの拓大は凡ミスで自滅してくれることは期待できない充実した全員ラグビーができるチームへと成長しています。中央大としては持ち味であるBKの攻撃力に一縷の望みを繋ぎたいところですが、そのためには拓大の見掛け以上にタフなFW陣の壁を越えなければなりません。フェイズを重ねると陣形に乱れが生じてしまう(法政と同じ)課題を抱えている中央大に求められるのは、チャンスを掴んだ時に手数をかけず確実にボールをゴールラインまで運ぶ集中力。アタックはタテにシンプルに、ディフェンスはワイドに粘り強くを80分続けることが勝利を掴むカギになると思います。

法政に勝利したことで4位も見えてきた拓大にとっては、この戦いは今シーズンの総決算とも言える重要な戦いとなります。試合を重ねるごとに着実にステップアップしてきた拓大が、自分たちがやりたいラグビーを思う存分披露できる場が満を持して最終戦に設定されたと言い換えてもいいでしょう。発表されたメンバーも開幕戦とほぼ完全に同じ(スタメンが一人入れ替わっただけ)でついにここまで来ました。拓大の注目選手はもちろんトライ王争いを独走中のウヴェで、中央のマークもここに集中するはずです。しかしながら、拓大はもはやウヴェだけのチームではなくってきていることも事実で、BKにどんどん展開するラグビーで勝負を挑むものと思われます。ウヴェが取らなくても勝てるチームができたら拓大のラグビーの完成。心技体3拍子揃った全員ラグビーをベースに、BK陣でトライを量産して有終の美を飾って欲しいところです。

【関東学院大学 vs 大東文化大学】

関東学院はとうとう最後までチームになることなくここまで来てしまった感があります。発表されたメンバー表を見ると、そんな想いを禁じ得ません。それこそ判で押したような固定メンバーで戦ってきた拓大に比べると、関東学院のメンバー表は(どこにオススメがあるのかが分かりづらい)週替わりメニューのような状態になっています。主力4年生の突然の復帰、FW選手とBK選手の大胆な入れ替え、1年生が4人で不安いっぱいのFWメンバーなど、内容は「フルコース」ですが一貫性は感じられません。それでなくても、今回の大東大は未整備ながらも計算できる今季最高の陣容となっています。ディフェンスに不安を抱える関東学院が勝利を収めるための方策としては、極力相手に攻撃権を渡さず、マイボールは確実にキープし続けてゴールラインまで運ぶラグビーをすることくらいしか思い浮かびません。しかし、そのためのチームとしての意思統一ができているのだろうか。また、何が何でも勝つという強いモチベーションの共有のもとに戦える態勢はできているのか。過去の実績から考えて「マジック」が起こる可能性がないとは言えませんが、かなり確立が低いと言わざるを得ません。

大東大はついにスタメンにテビタとフィリペの名前が戻ってきました。前節の日大戦では、後半に彼らが相次いでピッチに登場しことでチームが一気に活性化されたことからも、ぶっつけ本番に近い状態ではあっても期待が高まります。さらに、前節は発熱で欠場したと伝えられる長谷川も復帰したことがファンにとっては心強いはず。メンバー表に示された両チームの選手達の数値(体格データ)を見比べただけでも、大東大がFW戦に拘れば圧勝という「画」が見えてきます。ただ、大東大にはBKでトライが殆ど取れていないという厳しい現実があるため、FW戦に活路を見いだすしかないとすれば、関東学院としてはディフェンスの的を絞りやすくなる。だからこそ、関東学院のFWメンバーの構成には疑問を感じるのですが、大東大はここを上手くコントロールしたいところ。イメージ的には個々が優る大東大優位なのですが、関東学院の的を絞った戦いが填まって接戦に持ち込まれるというシナリオも非現実的ではなさそう。そこで大切になってくるのがチーム一丸で勝利を目指す強い気持ち。選手達には見た目以上にハードな試合になると思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第11節(11/17)の試合結果&感想

2012-11-23 02:16:24 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
○第11節の試合結果

 11月17日(土) ○東海大学 59 - 7 ●中央大学 駒沢陸上競技場
 11月17日(土) ●法政大学  3 – 21 ○拓殖大学 秩父宮ラグビー場

覇権奪還を目指す東海大がいよいよフルスロットル間近の状態となってきました。雨対策とも言えそうなFWバージョンのチームは完成に近づいたようです。問題はBK展開バージョンの方ですが、それは最終戦のお楽しみと言ったところでしょうか。FWとBKの繋ぎの部分に課題が残ったようですが、ここがクリアになればチーム完成です。一方の中央大ですが、FW戦で完敗では自慢のBK陣も活きないことが明確となった感があり、その不安は最終戦に持ち越されたと言えそうです。法政がFW戦で拓大に完敗したことを目の当たりにすると、どうしてもそんなことを考えてしまいます。実際に観戦された方はどんな印象を持たれたでしょうか。

同じく雨だった秩父宮で行われた法政と拓大の試合はいろいろなことを考えさせられてしまう試合となりました。印象を1センテンスにすると、「もし法政が拓大のようにプランニングされたハードな練習を積んだとしたら、どれほど強いチームができ上がるだろうか?」になります。法政の練習も拓大の練習も、というかそもそも大学生達が普段どんな練習をしているのかを観に行くこともありませんが、選手達のプレーのひとつひとつに両チームの各々の練習風景が浮かんでくるような気がしました。でも、この試合はもっと大切なことを教えてくれたような気がします。それは、自分たちがやりたいことを明確にし、その目標に向かってチームが一丸となって努力しているチームのラグビーはとても見応えがあり、感動を呼ぶと言うこと。いいチームは強いチームになって欲しい。大学選手権出場の場でさらなる飛躍を遂げる拓大を見てみたいという気持ちがますます強くなってきました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする