「熱闘」のあとでひといき

「闘い」に明け暮れているような毎日ですが、面白いスポーツや楽しい音楽の話題でひといき入れてみませんか?

第52回大学選手権(2015年12月20日)帝京大学vs関西大学の余韻

2015-12-25 01:50:50 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


熊谷ラグビー場で12月20日に観戦した第二試合の余韻に浸っている。前ブログに書いたとおり、この日のメインは第一試合(75%)で、第二試合はおまけ(残り25%)のはずだった。しかしながら、第二試合観戦後は両者が完全に逆転し、かつおつりが来るような状態。大東大と慶應の選手達には申し訳ないが、第一試合は10%で第二試合は90%になってしまった。それくらい初見参の関西大学のラグビーが強いインパクトを残したのだった。



今日は録画してあったビデオでじっくり熱戦を振り返ってみた。経験的に言うと、テレビで観た場合は同じ試合でも生観戦とはかなり印象が違って見える。大抵はテレビの方が内容がいいように感じられる。しかし、そんなことを差し引いてもこの試合で見せた関大選手達のパフォーマンスは闘志溢れるものだったことを実感した。帝京の素晴らしいところは、真剣勝負で挑んでくる相手に対しては、真摯に対応して自分達のよい部分をしっかり見せてくれること。そして、立ち向かう相手に対してもよい部分を引き出してくれる。王者の王者たる所以で、残念ながら関東の他のチームでもここまでのラグビーはできない。



しかし、この試合を観て(朝ドラ主役のあさチャンの言葉を借りれば)「なんでだす?」の連発になってしまう。ひとつめは選手権1日目の中央大はこのチームによく勝てたなということ。二つ目はなぜ関西リーグの4位に留まったのかということ。もしコンスタントにこの日の帝京相手に見せたような戦いぶりができれば、関東のリーグ戦Gでも上位に食い込める。流石に東海大と流経大に対しては個の力の差でやられてしまうと思うが、他のチームなら十分に勝てると思う。正直な気持ち、無茶な注文だが関大に関東のリーグ戦Gに入ってもらい活を入れて欲しいと思っているくらい。



そんなことを思うのも、今シーズンの関東リーグ戦Gがよく言えば安定型、悪く言うと無風状態というか例年に比べても活気に欠けると感じられたから。上下間の力の差がはっきりし、7位と8位のチームは入替戦で敗れたのも頷ける内容だった。関東学院が横綱として君臨していた頃も確かに上下間の格差はあったが、下位チームがチャレンジ精神で試合に臨むことで引き締まったラグビーが出来ていたように記憶している。チャンピオンを目指すというよりも、ややもすると最低限が入替戦回避で大学選手権に出られる5位以上になればいいというような雰囲気も漂っているように感じられるのだ。もちろんチームで強くなることが大切だが、それも個々が強くなってのこと。選手ひとりひとりが上手くなりたい、強くなりたいという志を持たないとチームも強くならない。



関大の戦いぶりは、帝京とどう戦えばいいかについてヒントを与えてくれている。アタックではとにかく面で前に出て身体をあてること。帝京は繋ぐ意識が強いチームだからこそ、2回(プラスアルファ)のインターセプトのチャンスが生まれたと言える。逆にアタックではブレイクダウンに時間をかけずどんどんボールを動かしていく。そして、ディフェンスとは逆にギャップを見つけてそこに走り込む、あるいは飛ばしパスでスペースを作る。選手個々の闘魂がうまく1つに纏まったのがこの日の関大ではなかっただろうか。帝京の怖さは、ゴールに近づくにつれてアタックのテンポとスピードが上がっていくことで、この日の殆どのトライがその形から生まれている。



こうして振り返ってみると、関大はいいチームであると同時に面白いラグビーができるチームだと思う。アタックもディフェンスも(スタイルは違うが)前に出るという意識でチームが一体になっていると感じる。ディフェンスは愚直に、そしてアタックは奔放に。大学選手権の晴れ舞台で帝京に思いっきりぶつかっていったことで得るものが多かったのではなかっただろうか。関大はどんどん強くなっていって欲しいし、そうなると思う。

なんのために勝つのか。 (ラグビー日本代表を結束させたリーダーシップ論)
廣瀬 俊朗
東洋館出版社
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第52回大学選手権@熊谷(2015年12月20日)大東vs慶應&帝京vs関大の雑感

2015-12-22 01:55:58 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


大学選手権のセカンドステージが始まって今日が第2日。2週続けての熊谷ラグビー場通いだが、先週は雨模様の中での関東リーグ戦Gの1-2部入替戦の観戦だった。何だか周(週)回遅れのような感じもするが私的大学選手権の開幕戦。快晴の天候に恵まれ熊谷名物の赤城おろしの冷たい風との戦いもないとあって、最高のラグビー日和になった。同じ日に関東地区では3会場に分かれての選手権開催となったが、埼玉県民だから熊谷をセレクトした。

という理由ももちろんあるが、リーグ戦Gファンとしては大東大の魅力的なパスラグビー開花を見届けたい気持ちが75%くらい。そして、帝京に挑む関西大学のラグビーも観てみたい気持ちも25%くらい。生まれてから大学までを関西で生活した人間だが、関西大学のユニフォームを観るのは実は初めてである。同志社は初Vの少し前から観ているし、立命館が同志社を初めて破った試合も京都で観た。関西学院も1部昇格で存在感を示す中で、「関関同立」では最後に1部に上がってきた関西大学はどんなラグビーをするのだろうか。

それはさておき、本日はいつものメインスタンドではなくバックスタンドでの観戦。しかし、本格的に関東リーグ戦グループの観戦を始めた1997シーズンの頃は、リーグ戦の殆どの試合が熊谷で行われていた。そして、その頃はバックスタンドからメインを拝むような形で試合を観ていた。だから、何だかホームに戻ってきたような気持ちになるから不思議。バックスタンドの魅力はなんと言ってもすぐ目の前にピッチがあること。座席の最後列でもちょうどメインの最前列くらいの高さだから「全体」を観るのには適さないかも知れないが、ここで味わえる臨場感は格別だ。それと、メインの応援席から隔絶されることでラグビーに集中できるのもいい。

そんな思い出に浸っていると、メインスタンド側から第1試合を戦う大東大と慶應大の両チームの選手達が入場。つい1週間前とはまったく違って華やいだムードになるのは、天候のせいだけではない。大学ラガーたるもの、どこの会場でもいいから一度は立ってみたい憬れの舞台だから。流石に地元の大東大ファンが多く、各選手への期待を込めた熱い声援があちらこちらから飛ぶ。いよいよ熊谷での熱戦がキックオフ!

■大東文化大学vs慶應義塾大学



第1試合は、緒戦で筑波大を破り勢いに乗る大東大と同志社に敗れて後がなくなった慶應大の対戦。そんな両チームのメンタル面の違いは別にして、この試合に対する私的見どころは慶應が着実に進化を遂げている大東大のアタックにうまく対応出来るかどうかだった。慶應は春季大会で2年続けて大東大と対戦している。1年目は予想外の大敗を喫したものの2年目(今季)は先行逃げ切りに成功して勝利。しかし、現在進行形の大東大のアタックは去年とも、そして今年の春とも違っている。サウマキが戦線離脱を余儀なくされる中、WTB戸室のCTBへのコンバートが功を奏しモデルチェンジに成功。去年なら小山を徹底マークすればよかったし、今年も本来ならサウマキがターゲットになったはず。それが現在の大東大は、小山が起点ではあるものの、どこからでもアタックが仕掛けられる「全員がアタッカー」のような対戦相手にとっては厄介な相手になっている。

果たしてキックオフからそんな大東大のアタックがピタリと填まる。30分経たないうちに4連続トライと慶應が為す術のない状況に陥ってしまった。慶應は正攻法で来るチームに対してはしっかり対応できるチームというイメージがある。しかし、大東大のような変則アタックのチームは対抗戦Gにも見当たらず、かなり手こずるのではと予想した訳だが、それが当たってしまった格好。No.8とWTBの二刀流がフィットしてきたアマト・ファカヴァタの調子が上がっていることも不運だったと言える。後半も3分に大東大が先にトライを奪ったことで早々と試合が決まってしまった印象。

リーグ戦では殆どメンバーを替えなかった青柳監督だが、この日は後半18分から少しずつメンバーを入れ替えてリザーブ全員をピッチに立たせる余裕も見せた。大東大の持ち味は1人1人が個性的でもチームとしてはバラバラにならない一体感があるところだと思う。でも、さすがにメンバーがどんどん変わっていくと、ベンチを温め続けた選手はどうしても精彩を欠いた動きになりがち。また、後半は追いタックルで慶應の攻撃を何とか止める形が増えていき、2トライを許すなどすっきりしない終わり方だった。ここは次戦のベスト4がかかった同志社戦に臨むにあたっての不安材料だが、青柳監督がしっかり手綱を引き締めるくれることと思う。



■帝京大学vs関西大学



第二試合は王者帝京に明治か?と錯覚してしまうようなジャージーを身に纏った関西大学(関大)が挑む。どうしても「関大がどんなラグビーを見せてくれるか」の前に「果たしてどこまでディフェンスが保つか」が第一の関心事になってしまう。果たして、キックオフから帝京の容赦ないアタックが続き、1分、7分、11分、14分に連続してトライを奪って26-0。ちなみに第一試合では大東大の4トライ目が26分だったから、その倍に近いハイペースで得点板が動いた形になる。おそらく、関大にとっては未体験ゾーンに迷い込んだような形で為す術もない状態になっていたことと思われる。

しかし、18分に関大がPGで3点を返してから少しずつ流れが変わってきた。もっとも、キックオフから防戦一方とは言え、ひたむきにタックルを決めていたから最初から意気込みは違っていたことと思う。ただ、わかっていても止められない強力な攻撃に晒されたら大抵のチームは腰が引けてしまうだろう。しかし、この試合はそうならなかった。それは、ピッチに立つ選手達を応援で力強くサポートした控え部員達の力によるところが大きい。このまま行けば100点ゲームは確実の状況でも、応援のボルテージはいっこうに下がることがない。ここでふと気がついた。いまだかつてこんな元気いっぱい(もちろん空元気ではない)の部員達による応援に遭遇したことがなかったと言うことに。

何だか応援団に乗せられる形で元祖関西人の血が騒ぐような状態になってしまった。もちろん、応援で失点が止まるわけでもなく、帝京側の得点板の数字は確実に増えていく。だが、関大のディフェンスがひるむことはなく、また、少ないチャンスでも徐々にアタックができる状態になっていく。これは感動ものである。まだまだゴールラインどころか22mラインも遠い状況だが、何とか1トライでも取って欲しいと願いながら応援を続けた。

果たして後半も開始早々の1分にも満たない時間帯で帝京があっさりとトライを奪う。しかし、やっぱりダメかと思ったのも束の間だった。関大の初トライは意外な形であっさりと生まれる。帝京が自陣からオープンに展開したところで関大のCTB三谷がインターセプトに成功しゴールラインに到達する。関大の応援団のボルテージが最高潮に達したことは対岸に居る観客にもはっきり伝わった。たとえアクシデントのような得点でもトライはトライだ。こうなったら、流れの中でひとつ取って欲しいとさらに贅沢な望みを抱いてしまう。

その後、帝京が4トライを連続して奪って得点は80点に到達する。しかし、関大サイドのスタンドからの応援もピッチ上の選手達のタックルの勢いも衰えない中で33分、再びスタンドから大歓声が起こる瞬間がやってきた。帝京が関大陣で攻め続ける中での密集から、ボールを持って反対方向に走る選手が飛び出してきたのだった。はっきりは見えなかったのだが、これもインターセプトだったようだ。FL中野が追いすがる帝京の選手を振り切って自陣から気迫のランで走りきり2トライ目。

こうなったら是が非でも流れの中での3トライ目を見たい。そういった注文に応えてくれるのが関西人なのだ。というのは冗談だが、37分にこれも実現する。関大のいいところは、帝京を相手にしても接点でボールを失わず、BK展開でパスを繋いで前に行けること。素速い弾捌きと思い切った展開は帝京と戦うときに武器になり得ることが分かる。ロングパスは交えながらシンプルに確実にフェイズを重ね、遂にゴールまであと一歩のところに迫る。そして、ラックからFWでボールを押し込んだかに見えた。判定のためしばらく間が開いた後、レフリーの右手が挙がる。やった~!だった。

その後のもスタンドとピッチが一体化した関大の勢いは止まらず、最後のアタックを仕掛ける。しかし、22m付近まで前進したところで無念のターンオーバー。そして、タイムオーバーを告げるホーンが鳴った。普通ならここでボールを蹴りだして試合終了だと思うところ。だが、帝京はここから反撃態勢を一気に整えてアタックに転じる。このままトライを返さないでは終われないという気持ちがピッチに立ち選手達の共通認識だと分かる。関大の執拗なディフェンスも実らず、帝京は遂にゴールラインまでボールを持ち込んだ。流石と思わせるシーンではあったが、ノーサイドの瞬間に帝京の選手達の表情に笑顔はなかった。むしろ、関大の選手達を讃えるような雰囲気も見て取れた。勝ち負けだけでラグビーの中身を判断してはいけないということが身にしみた感動的な幕切れだった。



■最高のラグビー場で観た感動的なラグビーと最高の応援団

なぜだか理由は分からないのだが、熊谷ラグビー場は選手達のいいところを引き出すと言う意味で最高のラグビー場ではないだろうか。もし、秩父宮で同じカードが組まれたとして、関大の選手達がここまで頑張れただろうかと思ったりもする。交通アクセスがよくないと散々叩かれては居るが、ここでいいラグビーは観たら「(アクセスはよくなくても)ラグビーを観るには最高の場所」と言ってくれる人が居ないのをいつも残念に思っている。

それな私感は別にしても、この日一番の感動シーンは80分以上にわたってピッチに立つ選手達にガッツを注入し続けた関大の熱い応援。他のチームだと大人しく観ている控え部員はいい方で、「T・R・Yコール」のように自分達で盛り上がることしか考えていないような印象を受ける部員達の応援に接する機会がとみに増えているからよけいにそう思う。対岸から眺めていても、関大の部員達は自分達がピッチに立ってプレーしている気持ちになって仲間に元気を与えていたように感じられた。点数だけの評価なら「結果は分かっていたから観るに値しない試合」になってしまうだろう。しかし、ラグビーに一番大切なことを再認識させてくれたと言う意味では「観る価値があった試合」だった。

関東在住だと関大の試合を観るチャンスが殆どないことを本当に残念に思う。ぜひとも来シーズンも大学選手権で関西から「元気」を届けて欲しい。だから、という訳でもないのだが日本協会で検討しているとされる「出場チーム数削減」に強く反対したい。

エディー・ジョーンズの日本ラグビー改造戦記―ジャパン進化へのハードワーク
大友 信彦
東邦出版
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山梨学院大学 vs 日本大学(2015関東大学リーグ戦G 1-2部入替戦-2015.12.13)の感想

2015-12-18 02:30:19 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


第一試合で関東学院が専修を下して1部復帰を果たした。が、もう誰も驚かない。過去に1度しか起こらなかったこと(1部7位チームが2部2位チームに敗れて降格)が2年連続で起こる確率は自乗で効いてくるから低い。でも、それは統計学上でのこと。昨シーズンよりもさらに1部下位チームと2部上位チームの間の力が接近し、しかも1部チームに挑むのは申し分ない実績を持つチーム。日大のチャレンジを受ける山梨学院の関係者は第一試合の結果如何に関わらず、覚悟を持ってこの試合に臨んでいるはず。

第一試合ではより強力な応援を得たチーム(関東学院)が勝利を勝ち取った訳だが、果たして第二試合もメインスタンドの右側には大挙して押し寄せた日大の応援団が陣取る。昨シーズンの日大の応援席はスカスカの状態でとても寂しかったことを思うと、信じられないくらいの熱気が感じられる。リーグ戦Gでもどちらかと言えば日大ファンは大人しいという印象があるだけに、ピッチで戦う選手達も心強いに違いない。それと、おそらく昨シーズンは危機意識が薄かったのだと思う。チームの戦いぶりにも「落ちるはずがない」というムードが漂っていたように感じられた。

小降りながらも雨が降り続く中で、第一試合と同様に観客席の前方での観戦は諦め、屋根の下でメンバー表を眺める。山梨学院は当然のことながらベストメンバー。問題はベストのパフォーマンスを見せることができるかどうかになる。サッカー日本代表の本田選手が言うところの「点が取れるときはケチャップみたいにドバドバ」とは逆をいくような大量失点試合を複数経験しているチームだけにどうしてもそんなことが頭をよぎる。昨シーズンはリーグ戦でも随一と言っていいくらいに統制が取れたラグビーが出来ていたチームだったはず。初心に返ってここは踏ん張って欲しいところ。そうでないと密かに応援メッセージを送り続けた1ファンの立場がなくなる。

一方の日大もおそらくベストの陣容。4年生もスタメンに6人、リザーブに2人しっかり入っている。メンバー表を一瞥しただけでも、日大が正常な状態になったことを実感できる。ただ、ひとつ気になったのは、日大きっての熱血漢と信じて疑わないSHの有久(4年)がこの日もベンチスタートとなること。昨シーズン後半の活躍、そして春のセブンズでの決定的な仕事ぶりから考えれば、レギュラーシーズンでもスーパーサブ的な起用が続いたのは意外だった。隠れ有久ファンとしてはどうしても彼の勇姿を瞼に焼き付けておきたい。だが、有久を必要とするような試合であっては困るというのが日大首脳陣の偽らざる気持ちだろう。第一試合で関東学院が勝利したことで、日大優位の見方がさらに補強された形だが、そう簡単にいくのだろうか。



◆前半の戦い/優位に試合を進めながらも波に乗れない日大

メインスタンドから見て、左から右に攻める日大のキックオフで試合が始まった。第1試合とは打って変わって蹴り合いとなる場面が支配的となるが、雨の中での入替戦ということで両チームとも慎重になったのかも知れない。開始早々の1分、日大は山梨学院陣10mラインの手前で得たPKでショットを選択。距離にして42mのPGは外れる。3点を確実にと言うよりも、SOの鈴木が長い距離をひとつ蹴っておきたかったという意図が見えるようなゴールキックではあった。

蹴り合いが続く中で、BK展開を交えて攻めたのは日大。どちらが1部所属チームなのか分からない位にアタックのスタイルが整っていて格の違いを見せつける形になっている。肉体面も精神面も優位に立つ日大という印象を強く持たせるような序盤戦だった。日大のプレッシャーを受ける形で山梨学院が反則を重ねる。8分、日大は山梨学院陣ゴール前でのラインアウトからモールを形成して前進。ゴール前のラックからショートパスがFB富樫に繋がりトライ。比較的易しい位置からのGKは外れるが日大が幸先よく5点を先制する。ちなみにこのキック失敗がこの試合で日大が苦戦することになる予告編だったことはもちろんまだ分からない。

山梨学院が自陣で反則を犯す悪い流れが止まらない。14分にも日大が山梨学院陣ゴール前でのラインアウトを起点としてFWで攻めHO塚本がトライ。ここもGKが外れるがまだご愛敬といったところ。着実に加点して10点をリードしたところで日大は安心モードに入る。続くリスタートのキックオフで山梨学院はダイレクトタッチ。春シーズンから散見されたシーンにファンはため息をつく他ない。蹴り合いで陣地を取られて自陣で反則の連続という悪い流れも止まらず、山梨学院は防戦一方となる。しかし日大も畳みかけることができない。何となくだがすっきりしない展開にファンもヤキモキと言った感じ。27分にPGが決まって日大のリードは13点に拡がるが、不思議なことにここから日大サイドの得点板の動きがピタリと止まる。

キックオフから30分が過ぎるまで、試合は9割以上山梨学院陣で行われる一方的な展開ながら、日大の得点は13点。GKが2つ決まっていても17点というのはちょっと信じがたい。山梨学院がしっかり止めていると言うよりも、日大が攻めきれないという印象が強い。32分には蹴り合いで日大がダイレクトタッチのミスを犯したところから試合の流れは山梨学院に傾き始める。山梨学院は日大陣10m/22mの位置からのラインアウトを起点としてオープンに展開したところで日大に反則。山梨学院はタッチキックから日大ゴール前でのラインアウトを選択し、FWがサイドを攻めてFL渡邉がトライ。GKも成功し日大のリードは6点に縮まる。

ここから山梨学院のアタックが一気に活性化。39分には自陣22m付近でのラインアウトを起点として怒涛のアタックを見せ、日大陣22mまでボールを持ち込んだところで日大にホールディングの反則。SO前原が左中間18mのPGを決めて10-13となる。山梨学院がビハインドを3点に縮め、反撃体制を整えたところで前半が終了した。前半は殆ど時間帯でエリアもボールも支配した日大だったが、内容は全くと言っていいくらいに得点に反映されない。ただ、まだ日大は余裕モードだったことも確か。転びそうで転ばない山梨学院も不思議なチームだ。



◆後半の戦い/一時逆転を許すも最後に決めたのはやっぱりこの選手

いったん心のネジが緩むと締め直すのが大変なのが大学生のラグビー難しいところであり悪いところ。後半開始早々の2分、山梨学院のPKがノータッチとなるが日大もノックオンでミスに付き合ってしまう。そして6分、山梨学院は日大の反則で日大陣22m内でのラインアウトのチャンスを掴む。ロングスローに帯するピールオフからボールを受け取ったLOトコキオが、持ち前の突破力が活かして一気にゴールラインまで到達。GKも成功し、山梨学院は17-13と遂に逆転に成功。このまま勢いに乗って攻め続ければ山梨学院は2部転落を免れる。

しかし、誰もがそう思うというような展開にはなかなかならない。10分、日大は山梨学院陣でのゴール前のラインアウトを起点としてFWでサイドを攻め、LO小川がトライ。しかし、またしてもGKが今度はポストに当たると言った形で追加は5点に留まる。確かに再逆転に成功した日大ではあるが、18-17とリードは僅かに1点でまったく安心できない。また、山梨学院もせっかく自分達に吹き始めたフォローの風を掴むことができない。

18分、日大は山梨学院のミスにつけ込む形で加点に成功する。山梨学院の選手がノックオンしたボールをすれ違いのような形で拾った日大のWTB早川が一気にゴールラインまで到達する。しかし、GKが今度はクロスバーに当たるという形で不成功。ここまでゴールに嫌われてしまうのも珍しい。23-17と日大がリードを拡げるものの、6点差は1T1Gで逆転されてしまうのでまったく安心できない。だが、1部残留に望みが繋がっているはずの山梨学院もピリッとしない。お互いに決め手を欠く中での一進一退の攻防が繰り広げられる。

29分、山梨学院はCTBアピレイの自陣からのカウンターアタックから一気に日大ゴール前まで攻め上がる。直後のラインアウトで日大に危険なタックルの反則がありラインアウトからゴールを目指す。はずだったが痛恨のターンオーバーを許し得点できず。アピレイはルーキーながらトコキオとの2枚看板で活躍が期待されていた逸材だが、レギュラーシーズンでは不完全燃焼に終わった感が強い。トコキオをサイズで上回るパウロ・バレリもベンチを温めたままという状況に山梨学院のチーム作りの失敗を感じずには居られない。

さて、試合も残すところ10分あまりとなり、まったく安心できない日大にはやはり「この人が必要」という展開になってしまった。ランニングタイムで33分(公式記録では30分)にSH李(3年生)に代わって4年生の有久が投入。同時にSOも先発の鈴木陸から金に交替して日大はラストスパートに入る。SHが有久に代わっただけで日大のアタックのテンポが一気に上がる。だが、日大も決定的なチャンスを掴めないまま時計は進む。

しかし、「そのとき」はやって来た。37分、日大は山梨学院の反則により山梨学院陣10m/22mの位置でラインアウトのチャンスを掴む。FWからボールを受け取った有久が脇目も振らずに一気に前を向いて加速。前方には3人(だったと思う)のディフェンダーが立ち塞がる状態だったが、有久は火花が散るような鬼気迫るランニングで3人とも振り切ってしまった。個人で取るトライはあまり好みではないのだが、こんなに気持ちの入ったトライは何回でも観たいと思う。またしてもGKは外れるが28-17の11点差は残り時間から考えてもセーフティーリード。

ここで勝負ありとなり、そのまま時計が進んで試合終了のホイッスルが吹かれた。2年目の飛躍を期待された山梨学院だったが、来シーズンは2部からの再チャレンジが決まった。もちろん日大関係者から大歓声が上がったことは言うまでもない。最後を締めた有久を含め、4年生が3トライを挙げた。やはりここ一番で上級生の力は必要だということがよく分かる幕切れだった。それと有久がなぜスーパーサブ的な起用になったかも何となく分かった。指揮官は気持ちが入りすぎての空回りを畏れていたのかも知れない。それはさておいても、シーズン最後に今季最高のトライを観ることができて大満足だったことは間違いない。



◆悔やんでも悔やみきれない山梨学院

昨シーズンに手堅いラグビーで2勝を挙げ、1部昇格から大学選手権まであと1歩のところまで上り詰めた山梨学院。期待のルーキー(アピレイ)も加わり、さらなる飛躍を期待したが結果はまったく逆になってしまった。春シーズンから内部に何か問題を抱えていたとしか思えないくらいにチームは規律に欠けバラバラだった。この入替戦では何とかチームも纏まり、戦前の予想(日大優位)を翻す可能性を見せるところまではきた。せめて9月の段階でこの状態になっていればと思う。無念さを晴らしての再チャレンジに期待したい。

◆「日大ラグビー」の復活はあるか

試合終了後のアナウンスで「川松ヘッドコーチ」の名が告げられたときに場内が一瞬どよめいた。風の便りには聞いていたが、やはりそうだったのかと。ちなみに川松氏はFWながら「大学生では日本一速いLO」と自負していたことを思い出す。残念ながらケガに泣いてフルパワーの活躍には至らなかったが、WTBも顔負けのスピードランナーだったことは間違いない。その川松氏がチームを率いていたのなら上級生中心の選手起用も頷ける。

見事に1シーズンで1部に復帰することになった日大だが、来シーズンからの戦いは厳しいものになりそうだ。戦力的には関東学院より日大が上回っているものの、チームの基礎ができているのは関東学院の方だと思う。日大は「新体制」での指導方針が下級生偏重のように見え、本来積み上げられるべきものがなかったように感じられることがその理由。果たして「日大ラグビー」の復活はあるのか?

この「日大ラグビー」はあくまでも私感。思い起こせばラグビー観戦を関東リーグ戦Gに完全にシフトした1997シーズンの日大は阿多監督指導の下で黄金期を迎えていた。流経大で「開眼」した私だが、実は過去の選手のことを振り返ってみると、頭の中を駆け巡っているのは圧倒的に「黒ピンジャージー」を身に纏った選手達。それも、スクラムの強さを持ち味とした「FWの日大」だったが、なぜかBKの選手達ばかり。

センス溢れるCTBだった沢木啓介、闘志溢れるSOの日原大介、切れ味抜群のWTB北條純一、タックラーを引きずる泥臭いトライが一際印象に残るCTB今利貞政、抜群の瞬発力が持ち味のWTB窪田幸一郎、強気で攻めまくったSO/FB武井敬司、初登場からキラリと光るものを見せたSO/CTB河野義光、ラインを動かすことに長けていたSO松下馨、地道な仕事人のCTB金川禎臣、風を切るようなスケールの大きなランが一際強く印象に残るWTB藤原丈嗣、スーパーブーツとしてチームのピンチを救ったCTB三友良平、香港のセブンズ大会での優勝を決めた起死回生の100mランが忘れられないピエイ・マフィレオ、球捌きの良さで定評のあったSH中村正寿と個性派がズラリと揃う陣容は、大学時代は無名でも卒業後に花を開かせてキャップホルダーになった選手も居る豪華な顔ぶれだと思う。

しかし、加藤氏がチームを率いるようになってからは、SH小川高廣、CTB/WTB/FBマイケル・バートロケに続く選手の姿が思い浮かばない。記憶に残る選手達の名前を並べてみると、「個性派」がひとつにまとまることで強力なチームができあがる(逆の目が出るとバラバラになる)可能性を秘めていることが「日大ラグビー」だと気づく。組織的で規律を重んじることが重視される時代になってもそのことは変わらないと思う。逆に言うと、そうだからこそ個性が求められる。それはさておいても、少なくとも、日大のチームのバックグラウンドに対する理解がないと選手は戸惑うだけだったのではなかったかと邪推する。

毎年選手の入れ替わりのある大学ラグビーだが、チームの体質を変えることは思いの外時間がかかる。来シーズン以降の日大のラグビーがどのように変わっていくのかに注目していきたい。

ラグビー日本代表ヘッドコーチ エディー・ジョーンズとの対話 コーチングとは「信じること」 (文春e-book)
生島 淳
文藝春秋
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専修大学 vs 関東学院大学(2015関東大学リーグ戦G 1-2部入替戦-2015.12.13)の感想

2015-12-16 01:30:37 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


今シーズンもとうとうこの日がやってきた。全勝対決で優勝校が決まったリーグ最終戦から3週間を経てこれが本当の意味での最後の戦いとなる1部-2部の入替戦。しかし、シーズン最終戦は新たなシーズンの開幕戦でもある。勝利したチームは来年こそはここに来ないで済むように、そしてできれば表舞台(奇しくも同じ日に開幕する大学選手権のセカンドステージ)に立てるように気持ちを引き締める。また、敗れたチームも来年も必ずここに来て勝利を収めるべく気持ちを切り替えてスタートを切る。

だから、という訳でもないのだが、たとえ大学選手権で注目カードが組まれていたとしても、入替戦は絶対に見逃せない。私自身が関係者になることはないのだが、1部リーグの選手達は3ヶ月間しっかりお付き合いさせていただいている。そして、2部リーグのチームにも1部リーグ時代のプレーが印象に残っている選手が居る場合が多い。関係者にとっては悲喜こもごも胃が痛くなるような戦いであっても、どちらが上がっても(残っても)嬉しいし、どちらが落ちても(上がれなくても)残念。これは入替戦でしか味わえない愉しみ(心の痛み)とも言える。

さて、昨シーズンはリーグ戦G史上初となる2校同時入替となったことは記憶に新しい。1部リーグのチームの(隠れ)スローガンは、「負けが続いても最下位にだけはなるな」だったと思う。だから第1試合で日大が専修に敗れた瞬間、熊谷ラグビー場は大きくどよめいた。しかし、今シーズンは違う。2部側の出場校は日大と関東学院で2部とは無縁と思われていたチーム。一方、1部側のチームは昨シーズンに悲願の復帰を果たした専修と1部リーグで3シーズン戦ったものの殆ど勝ち星に恵まれていない山梨学院。といった具合に、豪華顔ぶれと言っては失礼だが、伝統から言って気後れのないチームのチャレンジを受ける形の1部リーグチームはかなりのプレッシャーを受けているに違いない。

そんなことを頭に思い描きながらスタンドに足を踏み入れる。昨年は数多くの緑色の旗に占拠された形の応援風景にまず圧倒された。しかし、今シーズンはお馴染みだった関東学院の旗がメインスタンドの右サイドで大きな波のように揺れている。1部復帰を待ち望むファンがいかに多いかがわかるような光景。そんなこととは裏腹に、昨年は元気いっぱいだったはずの左サイドに陣取る専修ファンが何となく大人しく見える。久々の1部リーグでも決定力不足に泣いた形で戦績が冴えなかったから仕方ないのかも知れないが、昨シーズンの熱気を取り戻して欲しいところ。

試合前にメンバー表を眺めるが、失礼ながら1部リーグから遠ざかっている関東学院の選手達の名前で見覚えがあるのは4年生の数選手のみという状態。2012シーズンに入替戦で2部降格が決まり、2013シーズンは2位で入替戦に臨んだものの立正大に惜敗。そして2014シーズンは入替戦にも届かなかった状況だから致し方ない。ピッチに登場した選手達を見ても小粒で2部で苦労した理由も分かるような気がする。関東学院に1部で長年積み上げてきた組織力と閃きが融合した戦いができるDNAは受け継がれているだろうか。

一方の専修大ではひとり気になる選手がリザーブに入っている。23番を付けたWTB野田高陽はセブンズのスターと言ってもいい決定的な仕事ができる選手。しかし今シーズンはAチームの戦いに加わることなくここまで来た。突破力不足に泣かされたチームにとって逸材のはずだが、上がれなかったことには理由があったのだろう。しかし、野田の頭の中には期するものがあるはずで、後半にスーパーサブ的な形で登場することを期待したい。この試合は、1部7位チームと2部2位チームの戦いといっても力の差は殆どないはず。お互いが我慢比べのような神経戦となると予想した。



◆前半の戦い/攻勢に出るも決め手を欠く専修に対し確実にペースを掴んでいった関東学院

小雨がぱらつく生憎のコンディションの中、関東学院のキックオフで試合が始まった。序盤からBK展開指向で攻める専修がペースを掴む。だが、アタックがやや単調でWTBまでボールが回ってもそこで相手に前進を止められ、継続できても前になかなか進まない。逆に関東学院は、専修と同じく決め手は欠くもののアタックに切れ味がある。専修がボールを持つ時間が長いが、応援するファンにとってはもどかしい時間帯が続く。

先制したのはどちらかというと守勢に回っていた関東学院。専修陣22mに入ったところで専修にハイタックルの反則があり、関東学院のSO菅沼が正面10mあまりのPGを難なく決めて3-0とする。専修がBKのワイドな展開で攻めるのに対し、関東学院はFWのシェイプで手堅く前進を図るスタイル。この戦術の違いが後半に明暗を分けることになるが、関東学院も動きが堅くミスと反則が多い。8分には専修もPGで3点を返すチャンスを掴むが、正面やや左25mのキックを外し同店ならず。

専修もBKの展開だけではディフェンスを突破出来ないことは分かっていて、チップキックなどを交えながら攻める。12分には関東学院陣22m内中央の位置で関東学院に反則。ここで専修は狙わずにスクラムを選択する。スタンドからどよめきも起こるが、関東学院がアーリープッシュ。専修はFKから間髪入れずにタップキックで攻めてNo.8徳田がインゴールまで到達。GKも成功し専修が7-3と逆転に成功。貴重な突破役の力強いトライにより、強気で攻めた専修が勢いに乗るかと思われた。

しかしながら、ここから試合は完全に膠着状態に陥る。一進一退の攻防が繰り広げられたと書きたいし、事実もそう。しかしどちらも決め手を欠いていることで接戦になっている点は否めない。専修には23番の選手がベンチを温めているのはもったいない。部外者の勝手な意見だが、おそらく後半には彼の力が必要になることが予想されるような戦いぶりとなる。25分には関東学院が専修陣10m/22mの位置でラインアウトのチャンスを掴むがオープンに展開したところでノットリリースの反則を犯す。ちなみに関東学院が前半に犯した反則は8つで、キレのあるアタックを見せながらも波に乗れなかったのはこのため。主将がレフリーに反則の都度に確認する場面が目立った。

31分にも関東学院がテンポよく攻めるが、ウラへのキックがドロップアウト。パスを繋いだ方が面白かったように見えた。さらに32分、専修ドロップアウトからのキックに対するカウンターアタックから攻め上がるもののノックオンと前半の終盤になっても関東学院の方に堅さが残る状況。関東学院はスクラムで苦戦を強いられたものの、No.8とSHの工夫でマイボールを失わずに攻める。38分には専修が関東学院陣22m手前のスクラムからNo.8徳田が8単でゴールに迫るものの、パスミスで得点ならず。

さらに、前半終了間際のインジュリータイム。専修は再び関東学院ゴール前でPKのチャンスを得るがここもスクラムを選択。No.8徳田が8単でボールを持ち込み、ディフェンダーを引きずってゴールライン到達と思われたが無念のノットリリース。タックルが成立した後にボールを持ち込んだと見なされたようだ。いったんは大歓声に包まれた専修応援席だったが、すぐにため息に支配される。結局7-3で専修大リードのままスコアは動かずに前半が終了した。

余談ながら、このような観客には「?」になりがちな場面では、場内アナウンスがあるのが本当に助かる。明るく明瞭な声で丁寧に反則やプレーの説明をしてくれる男性アナウンサー氏はもはや熊谷名物といってよく、話題にならないのが不思議なくらい。秩父宮(何故かアナウンスは途切れがち)もこれくらいの説明があってもいいような気がするのだが、「通」のファンからは五月蠅いという声が出るような気もする。こういったところが気取ったところのない熊谷のよさだと思う。



◆後半の戦い/決定力不足もFWに拘った関東学院が着実に得点を重ね勝利を掴む

野球に例えれば(専修がリードしているとは言え)ゼロ行進のような状況から脱するのはどちらか。専修のキックオフしたボールが関東学院陣奥深くまで達したところで、関東学院のタッチキックを専修がチャージに成功。ここで専修が一気に活気づくかと思われた。動揺したのか、関東学院が自陣22m付近のラインアウトでミスを犯し専修がアタック。しかしパスはスローフォワードとなり関東学院ボールのスクラムとなる。専修はさらにコラプシングの反則を犯しせっかく掴みかけた流れを手放す。

専修の選手に隙(やや気落ちしたムード)が見られたところで、何と関東学院は意表を突く形でタップキックからWTB森川が一気にボールを専修陣ゴール前まで運ぶ。結果オーライで無謀だったかも知れないが、専修に傾きかけた流れを一気に引き戻したプレー。もし、開始早々に専修が得点を挙げていればその後の試合展開は関東学院にとって厳しいものになったに違いない。関東学院がゴール前で掴んだチャンスもオブストラクションでいったんは潰える。そして、流れは再度専修にやってくる。4分、HWL付近手前でのスクラムから専修は左オープンに展開。パスが外に繋がればビッグゲインのチャンスだったが、持ちすぎてしまいチャンスを潰す。

9分、今度は関東学院がPKから専修ゴール前でのラインアウトのチャンス。関東学院はモールを形成して押し込むもののパイルアップで得点ならず。続く11分もラインアウトからのモールでゴールを目指すがインゴールノックオン。ピンチを逃れた形の専修だったが、自陣ゴール前のスクラムからタッチを狙わずにオープンに展開する。しかし、ここで痛恨のターンオーバー。関東学院がFWでボールをキープしながら前進しNo.8宮川が関東学院にとってのこの日初トライを記録。GKも成功し、関東学院が10-7と逆転に成功した。専修は無理して攻める状況でもなかっただけに(結果論だが)タッチキックでよかったのではないだろうか。結果的に後半の立ち上がりが勝敗を分けたと言えそうなプレーに選択だった。

FWで執拗に攻め続けたことで関東学院のリズムがよくなってきた。前半は目立った反則も後半は3つに減る。リスタートのキックオフから専修は自陣ゴールを背にして防戦一方の苦しい状況に陥る。そして21分、関東学院は専修陣ゴール前でのラインアウトからモールを押し込んでFL鳥飼がトライ。菅沼のGKも成功し17-7とリードを10点に拡げた。こうなると専修はなかなか自分達のペースを掴めない。23分にはようやく23番を付けた野田高陽がWTB松永に代わってピッチに登場。しかしタイミング的にどうだったのだろうか。ボールを持って攻撃出来ていた専修だから後半頭から、いやスターターでの起用もありだったかも知れない。関東学院が流れを完全に掴んだ状況でペースを変えるのは難しかったはずだし、ボールを持ってもセブンズの時のようなキレは見られない。

関東学院は27分にも専修陣ゴール前でのラインアウト→モールを起点としてFWで攻め、長谷(後半23分から登場)がダメ押しのトライを奪う。GKは外れるが22-7と関東学院はリードを安心できる15点まで拡げた。2T2Gでも1部残留の最低条件である引き分けに持ち込めない状況となり、専修の選手達に焦りが見られる状況に。リスタートのキックオフ以降の10分あまり、専修は最後の力を振り絞って攻勢に出るもののゴールは遠い。渾身のアタックも実らず、ついに試合終了のホイッスルが吹かれる時が来た。

競技場を埋めた関東学院関係者から歓喜の渦が巻き起こった事は言うまでもない。この瞬間、専修の1部リーグでの戦いが終わり、関東学院の4シーズンぶりの1部リーグへの復帰が決まった。点差こそ開いたものの力の差はなかったと思う。言うなれば、勝敗の分かれ目のところで勝ち方を知っているか否か。強豪時代を知らない選手ばかりになった関東学院だが、勝利を呼び込む方程式という形で伝統はしっかり受け継がれていたと言うのがこの試合を観ての感想だった。



◆チーム再構築に成功した関東学院

横綱時代の時のような攻撃力はなくても、後半に着実に得点を重ねて1部リーグ復帰を勝ち取った関東学院。元指導者が選手達をスポイルし、チームを壊していったプロセスを見てきただけに、正統的なスタイルでの復活には感慨深いものがある。現状の戦力では正直な所、上位に食い込むことは難しいと思う。2強として君臨する東海大や流経大とは完全に立場が逆転している。しかし、戦力が整えばチーム力を上げるだけのベースは出来ていると思う。選手の経験は不足していても、2部から初めて1部に上がるチームとは違うはず。持ち味だった創造性溢れるラグビーでリーグ戦Gを活性化させる可能性を持つチームの復帰を率直に喜びたいと思う。

◆再チャレンジの専修への期待

1年前の熊谷。専修が流れるような展開ラグビーで1部復帰を勝ち取ったことが未だに脳裏にこびりついている。思えば、その年は春のYC&ACセブンズで専修が注目チームとなり、最後は1部復帰と、いい思い出だけが残ったシーズンとも言える。この試合でも、セブンズ仕込みのパス回しなど見どころを作ることは出来ていた。残念だったのは、自分達に吹いたフォローの風を上手く掴むことができなかったこと。何度も書いているように、関東学院にあって専修に足りなかったのはこの部分だったと思う。テンポよくパスを繋ぐ専修のスタイルは確立している。また、幸いなことに2部リーグの上位は1部リーグの下位と実力差がないことも、入替戦の結果が証明している。悔しさをバネに盤石のチームを作って再度チャレンジをして欲しい。

エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡――
斉藤健仁
ベースボール・マガジン社
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