「熱闘」のあとでひといき

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東海大学vs専修大学&山梨学院大学vs大東文化大学(2015年10月19日)の雑感

2015-10-20 01:10:43 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


関東大学ラグビーのリーグ戦Gの2015シーズンは開幕から1ヶ月あまりを経て折り返し地点に到達。前年度上下位対決の後は優勝争いと入替戦回避の戦いが同時並行で進む後半となる。W杯での日本代表の大活躍で冬眠から覚めたかのような日本のラグビー界。秋晴れの好天に恵まれた熊谷ラグビー場で2試合を観戦した。

とにかく最後まで順位が見えなかった団子レース状態とも言えた昨シーズンとは打って変わり、今シーズンはここまで縦長の最終順位が見えやすい状態となっている。とくに連勝街道を突き進むチームと連敗地獄から抜けられないチームといった形で上下位がくっきり分かれた形。だが、リーグ戦グループが面白くなるのは(実は)ここから。序盤戦は快調だったチームの思わぬ失速、スタートで躓きながらチーム建て直しに成功し調子を上げていくチーム。先が読めないということが大学ラグビーの面白さかも知れない。



■東海大学vs専修大学



第1試合は、流経大とともに2強として君臨することがほぼ確実になりつつある東海大に対し、1部復帰を果たした喜びも束の間、上位校の厚い壁にぶち当たって期待された展開ラグビーが出来ていない専修大学の対戦。専修大のキックオフで始まった試合も、時計が1分も指さない間に東海大の石井魁がノーホイッスルトライを決めて大量得点試合の匂いがぷんぷんの展開となる。石井に負けじと併走した(なかなかの高速ランナーの)SH湯本との鮮やかなパス交換が印象に残る見事なトライだった。

8分に専修大がトライを挙げて7-5と逆転に成功するも束の間、その後は前半だけで6トライ、後半に入っても5トライを挙げた東海大の圧勝に終わる。専修大が一矢報いたのは後半も残り僅かとなった37分。と、こう書いてしまうと専修大は東海大にまったく歯が立たなかったように見える。少なくても、得点経過を見る限りはまったくいいところは見当たらない。

しかし、ここがラグビーというスポーツの不思議なところ。7、8割方攻めていても70失点で敗れたチームを何度も観てきている。果たして、このゲームでも専修大が元気がなかったわけではなかった。専修大の試合は緒戦の大東大戦、前節の法政戦(惜しくも1点差の惜敗)に続く3試合目。ここまで観た試合の中でも今日の出来が一番よかったように見えた。少なくとも、気負いがあったせいかミスが目立った法政戦に比べたら、BKのアタックにタメがあり、伸び伸びとパスを回すラグビーが出来ていた。

法政戦でここまで出来ていたら1点差で涙を呑み事もなかったような気がする。得てして組織的に整備されたラグビーを指向するチームは、個の強さをベースにした攻守ともにスクランブル気味になるチームに苦戦する傾向がある。失点78は絶望的な数字だが、試合内容はけして絶望的ではなかった。相手がFWが強力な東海大ということもありブレイクダウンで苦しんだが、スムースな球出しができれば突破力不足を補う形で得点力アップが見込める。後半戦3試合では違ったラグビーを見せてくれるかも知れないと思った。

東海大は順調そのもの。BKに切り札が揃っていることもあり、FWがしっかりボールを確保出来れば面白いように得点を重ねることができる。本日は期待のルーキーのアタアタが先発したが、力強いだけでなく廻りもよく見えるプレイヤーという印象。今年のチームはBKで取るという形で意思統一ができているのが大きい。BKで期待の選手は4年生にしてようやくスタメンを獲得したオスカ・ロイド。CTBはサイズがあり運動能力の高い池田に注目が集まりがちだが、地味でも堅実に仕事をこなす173cm留学生選手が居ることも忘れてはいけない。得点差は付いたがボールが大きく動き、ミスも少ない好ゲームだった。



■山梨学院大学vs大東文化大学



山梨学院に関しては、上柚木で観た法政戦での精彩を欠くラグビーに対して苦言を呈し、かなり厳しいことも書いた。それも、2年目の今シーズンはさらなる進化を目指していると考えていたし、選手個々にしても去年よりパワーアップしているはずという期待があってのこと。大東大にしても、選手個々のパワーが確実に上がっているにも拘わらず、一昨年のようなチャレンジ精神が徐々に薄れてきているように感じられる。第二試合はそんな気になるチーム同士の対戦となった。

この試合も前年度上位校の大東大が2分にあっさりと先制し、第1試合同様に大量得点試合を予想させる立ち上がりとなる。しかしながら、この日の山梨学院は法政戦とは別のチームになっていた。ボールをしっかり繋いでたびたび大東大ゴールを脅かす。インゴールノックオンやパイルアップなどあと一歩のところで得点できないのだが、アタックの形は出来ている。アタックが機能している原因をひとつ挙げると、期待の大型ルーキーのCTBタエアオ・アピレイが春に比べてチームに馴染み存在感を上げたこと。全般的に小柄の選手が多く、ファイターのWTB土橋を欠く状況にあって、ペネトレーターの加入は大きい。

攻撃力に勝る大東大が17分にようやく追加点を挙げて14-0とリードを拡げたところでいよいよ大東大が波に乗るかと思われた。しかしながら、大東大も山梨学院に付き合う形で決めきれない。両チームとも決めきれない中、野球に例えればゼロ更新が続き前半が終わる。今やリーグ戦Gの顔の1人と言ってもいいホセア・サウマキ(残念ながら今シーズンは絶望とのこと)の欠場の影響はあるにしても、ファカタヴァ兄弟など代わりうるランナーは居る。クルーガー・ラトゥが本調子ではない中で、光る存在は運動量豊富なWTB戸室とタックルだけでなくアタックでも頭角を現してきたSO川向といった選手たち。長谷川も元気だし、第一列もBKのようなランをみせるなど個性派集団ながら精神的支柱を欠いているようにも見える。

さて、後半。大東大がピリッとしない中で山梨学院が先に点を取れば勝機も掴めそうな感じ。果たして、山梨学院は2分と6分に連続トライを決め、12-14の2点差に迫る。明らかに攻撃のリズムを掴んだ山梨学院の動きがよくなる。このまま行けば逆転もと思わせたところで大東大にようやく追加点が生まれる。小山からのロングパスの受け手となり、ゴールまで走りきったのは戸室だった。ここでようやく大東大がペースを掴み、以後3トライを連取して試合を決めた。この日、プレースキックを蹴ったのはアピサイだったが、不調だったこともあり、最後の2つはFB大道が蹴って鮮やかに成功。強気のランの方も復活気味なのは大東大ファンにとって明るい材料だ。

山梨学院は最後に1トライを返すものの19-38のダブルスコアでの完敗。ただ、最初に書いたとおり、法政戦の低調な状況を払拭するくらいにこの日の動きはよかった。とくに昨シーズンから試みてきたFWがショートパスで相手のDFをずらしながら前進する動きは今後の戦いで武器になるだろう。最後にスタンドに挨拶に来たときに、トコキオ主将がはっきりと「ありがとうございました。」と声を発したところで救われたような気持ちになった。この瞬間、法政戦の悪いイメージは完全に払拭されたのだった。



■私的日本最高のラグビー場

2019W杯の試合会場に滑り込みセーフ(だったらしい)で選ばれた熊谷ラグビー場。しかし、この日の2試合を観て実感したことだが、ここが外れなかったことは本当によかったと思う。アクセスの悪さでとかく評判が悪いラグビー場だが、メインスタンドにじっくり腰を落ち着けて試合を観たらアクセスだけがすべてではないと感じる人も多いのではないだろうか。

緩めの勾配のスタンドと廻りに視界を遮るものが何もない開放感と競技場全体の一体感が観客にラグビーに集中できる環境を作り出しているように思える。芝生の状態はさておき、Hゴールは常設で気になるサッカーのラインもないから、おそらく選手達にとってもプレーしやすい競技場ではないだろうか。完敗に終わったが、専修大学も山梨学院もいいパフォーマンスを示すことが出来たのは試合会場がアシストした部分もあったはず。自身の20年来の記憶を辿ってみても、田園牧歌調の熊谷ラグビー場で荒れた試合を観た記憶は殆どない。陸上トラックはもちろん、サッカーのラインもない競技場を保つことは文化でもあることを改めて感じた。

ラグビー日本代表監督エディー・ジョーンズの言葉―世界で勝つための思想と戦略
柴谷 晋
ベースボールマガジン社
コメント
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