「熱闘」のあとでひといき

「闘い」に明け暮れているような毎日ですが、面白いスポーツや楽しい音楽の話題でひといき入れてみませんか?

「あまちゃん」とラグビー

2013-06-30 18:38:08 | いろいろ何でも雑記帳
実はNHKの連ドラのファンである。きっかけは「梅ちゃん先生」なのだが、その後の「純と愛」、そして今の「あまちゃん」と録画で毎晩楽しんでいる。ついでに過去に放送されたBSのリピート放送の分まで。朝ドラではないが、7話で終わってしまった「真夜中のパン屋さん」も面白かった。

不肖ながら、日本にはこんなにもたくさん役者が居て、それぞれが個性を発揮したり、あるいは裏方に徹したりしながらドラマを盛り上げていることに気付いていなかった。元々映画は大好きだったし、年間50本くらい観たこともあったが、あんまり役者本人を観るという楽しみ方はしていなかったことに気づいた。まぁ、それも過去10年くらいの間に個人的に起こったことが原因ではあるのだが、ドラマの楽しみ方がわかったのはよかったかな。

さて、「あまちゃん」だが、まるで3ヶ月後の中だるみを予見していたかのように始まった「東京編」。一気に展開がスピードアップしたことに加え、ぜんぜん知らなかったアイドルの世界の裏側を垣間見ることが出来、毎日が刺激的ですらある。と書くと大げさだが、どんな世界でも日本では綿密に舞台裏のシステムが構築されているのだなと感心してしまった。この国民性は日本人の大切な財産かなと思ったり。

◆「シャドウ」という存在

最近の甘ちゃんでとくにインパクトを感じたのは「シャドウ」の存在を知ったこと。ラグビーだとAチームに所属するアイドル達の予備軍で、文字通り陰の役割を演じている。普段はステージに立つことはないが、事故とか病気とかで主役が出場できなくなったときに代役を務めるピンチヒッターというわけだ。確かによく考えられたシステムだと思う。「シャドウ」の存在は主役にも(簡単には休めないという)プレッシャーを与えていることになるし、代役の側だって活躍が認められればトップに上がる可能性が出てくる。

ステージの切り替えの場面での奈落の切迫した雰囲気も、テンポは速いがラグビーのハーフタイムにチーム内で起こっていることを連想してしまった。そこでふと思った。主役達が舞台に立っている時に、奈落でステージと同じ振りで歌ったり踊ったりしている少女達(シャドウ)は、ラグビーに例えればBチームそのものじゃないかと。

公式戦のAマッチの他にもBチーム、Cチームから果てはEチームまでもが試合をする春シーズン。Eまでチームが作れるくらいのチームは殆どが強力なBチームを持っている。そのBに所属する選手達も、Aだったらリザーブに入る力を持っている。万が一、Aの選手が怪我で離脱するようなことがあっても(強豪校なら)すぐにカバーすることができる。チームにとってはありがたいシステムだが、選手にとっては痛し痒しといったところか。

◆強力なBチームの選手達はAチームのシャドウか?

上で書いた流れに沿って、Bチームにいる有力選手達はAチームの「シャドウ」と結論づけてしまいそうになった。強豪校なら、AB両チームの間のクオリティの差も小さい。でも、ちょっと待てよ。アイドルグループだったら、シャドウはあくまでもシャドウ。主役の不在が気付かれなければいいわけだ。逆にシャドウが存在感を示したら、後でいろんな問題が出るかもしれない。本人はベストを尽くし、それが観客に強くアピールすることになるのは、逆にオーバーアクションあるいはスタンドプレーの誹りを受けかねないかもと、余計なことかも知れないが気になってしまう。もっとも、そこまでできれば奈落にはいないのだが。

ラグビーの試合で出場メンバーが怪我で交替したとする。代わりに出てくる選手は、その穴埋めが最低限の役割だ。でも、チームの規律を乱さなければ、チャンスを活かして思いっきり自分のやりたいことをやっていいはず。そして、パフォーマンスが認められたらレギュラーに昇格することも可能になる。アイドルグループとは違って、レギュラー選手以上のプレーを見せ、そしてそれが勝利に繋がれば本人はもとよりチームにとってもプラスになる。

◆印象的な選手のデビュー場面を回想して想ったこと

もう結論は出てしまった。ラグビーにおけるBチームの選手達はAチームの選手達のシャドウではない。一つの例として印象に残っている1人の選手のことを書く。それは、法政のFBとして活躍した城戸。試合は猛暑の熊谷で行われた中央大戦だった。試合半ばでレギュラーのFBが負傷。ここで出てきたのが背番号22番を付けた4年生の城戸でまったく知らない選手。あとで調べたら、前年度はAチームのリザーブにも入っていない無印選手だった。

しかし、暑い暑い熊谷だったにもかかわらず、カウンターアタックなどで22番の選手がボールを持つと面白いようにボールが前に運ばれる。そんな城戸の奮闘もむなしく、結局法政は中央に敗れてしまう。だが、城戸はその後FBのポジションをガッチリつかみ取り、トップリーガーにもなった。もし、この試合での出場がなかったらどうなっていただろうか。人材の宝庫の法政だからこそ起こりうることかも知れないが、何とも複雑な心境にもなる。

やっぱり選手は試合に出てナンボ、さらに想定を越える活躍をしてナンボの世界だ。だから光の当たるAの試合は多い方がいい。また、多くのチームからいろいろな選手が出てくるのもいい。AからEまでもチームを持つチームが増えていったら、そんなチャンスも減ってくるのではと危惧する。ハイレベルのレギュラー争いは、チームの強化にとってはよいことかも知れないが、個人の実戦経験を通じてのスキルアップにとっては(出場機会が減るという意味で)マイナスになる可能性だってある。適度に選手が分散しつつ、個々がレベルアップしていくことは今後ますます難しくなっていくのだろうか。

でも、朝ドラを観てラグビーのことを考えてしまうなんて...と呆れてしまう私ではある。
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「第1回オールスターゲーム」への期待

2013-06-25 00:48:51 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
昨日の日曜日をもって第2回春季大会が終了した。正直、春から約2ヶ月間もこんなにラグビーを楽しめるとは思わなかった。昨日も各地で熱戦が繰り広げられたようだ。早速、『熱闘』ブログを覗いてみたのだが、まだ更新されていない。作者にこっそり聞いたところ、更新の予定もないとのこと。昨日はなにやらラグビーとは関係ないことで忙しかったそうだ。

しかし、最初から最後まで帝京が強さを見せつけた春季大会だったと思う。正直、緒戦の流経大戦を観て、ここまでできあがっているとは思わなかった。あと、Bチームの尋常ならざる強さも衝撃的だった。Aが善戦できてもBが大量失点負けでは、対戦チームもショックを受けざるを得ない。しかし、大差がついても見所が多いのが帝京の試合だ。相手が抵抗すればするほどパフォーマンスが上がっていくから手が付けられない。と同時に、対戦チームが何をすべきかを教えてくれるから、観ている方にも勉強になる。昨日も東海に大勝しているが前半のスコアは競っていた。後半、どうやって東海の堅守を崩していったのだろうか?

それはさておき、関東協会のHPで7月7日に対抗戦Gとリーグ戦Gの両選抜チームによって行われる「七夕決戦」のメンバーが発表された。予告では「Aグループの監督による選抜」とあったので、どうしてもAに偏るだろうなと思っていたが、比較的バランスが取れた陣容に落ち着いたような気がする。もっとも、リーグ戦Gの有力選手のかなりの比率を占めている留学生は3名のみだから、やっぱり出場制限があるのかなと思ったりもする。

◆第2回関東大学春季大会 リーグ戦選抜メンバー

PR1:高橋洋丞(大東大4年)、坂尻龍之介(東海大4年)
HO:崩光瑠(東海大3年)、植村健太郎(流経大4年)
PR3:具智元(拓殖大1年)、石澤輝(法政大4年)
LO:ウヴェ(拓殖大4年)、ダラス・タタナ(東海大3年)、シオネ・フシマロヒ(流経大4年)
FL:藤田貴大(東海大2年)、大窪遙(日大4年)、堀大志(法政大4年)
No.8:高森一輝(流経大4年)
SH:木村友憲(流経大3年)、茂野圭輝(拓殖大3年)
SO:合谷和弘(流経大2年)、下地大朋(日大4年)
WTB:石井魁(東海大2年)、山谷大樹(拓殖大4年)
CTB:矢次啓祐(流経大4年)、山北純嗣(中央大4年)、近藤英人(東海大2年)
FB:安岡大貴(東海大4年)

本来ならここに名を連ねるべき選手も、セブンズW杯に招集されたり、U20大会から帰国したばかりという状況なら致し方ない。もちろん、セレクトにも異論はない。

ただ、ひとつ思うことは、せっかく選手を選ぶのだったら、セレクターは日本代表に関わりのある方にお願いできなかったのかなということ。さらに言うと、この試合はオールスターゲームだが、日本A代表のセレクションマッチを兼ねるといった形にならないだろうかとも思う。これだけの選手が集まるわけだし、出場する選手達にとっても(とくに代表を目指す意欲があると)その方がやりがいがあると思う。また、ラグビーは「華試合」みたいな感じだったら、かえって怪我が怖いスポーツでもあるし。

◆ついでながらの私的ベストメンバー

出場メンバーの名前を書き連ねていたら、自分自身でも選んでみたくなった。ひととおりチームも観ているし。ただし、出場可能不可能は度外視して、あくまでも私的ベストということで。もちろん留学生の人数制限はなし。

PR1:高橋洋丞(大東大4年)
HO:植村健太郎(流経大4年)
PR3:具智元(拓殖大1年)
LO4:ヘル・タウアテ・ヴァル・ウヴェ(拓殖大4年)
LO5:オネマセ・ハフォカ(大東大1年)
FL6:リサレ・ジョージ(流経大1年)
FL7:高森一輝(流経大4年)
No.8: テビタ・ツポウ(大東大4年)
SH:茂野圭輝(拓殖大3年)
SO:パトリック・ステイリン(拓殖大3年)
WTB11:羽野一志(中央大3年)
CTB12:下地大朋(日大4年)
CTB13:矢次啓祐(流経大4年)
WTB14:小原政祐(東海大3年)
FB:安岡大貴(東海大4年)

FW1列は、闘志、器用さ、パワーの三位一体トリオ。
FW2列は、FWの軸となり、かつ決定的な仕事ができるコンビ。
FW3列は、必殺仕事人が揃った強力トリオ
HB団は、リーグ戦ナンバー1の安定度を誇るステイリンに同僚を組ませる。
CTBの2人はSOで起用されることも多いが、やはり本来はセンタープレーヤー。
セブンズの日本代表2人は両翼で使いたい。とくに羽野はFBではもったいないと思うので。
FBは合谷でもいいのだが、このチームのテーマは堅実性なのでパワフルな安岡。

◆ついでにリーグ戦バージョンのエグザイルズも

絶対に実現しないドリームメンバーも先日の穴埋めをする形で。そして、彼らに思いっきり暴れて欲しいという願望も込めて。

PR1:高橋洋丞(大東大4年)
HO:植村健太郎(流経大4年)
PR3:具智元(拓殖大1年)
LO4:シオネ・フシマロヒ(流経大4年)
LO5:オネマセ・ハフォカ(大東大1年)
FL6:リサレ・ジョージ(流経大1年)
FL7:ヘル・タウアテ・ヴァル・ウヴェ(拓殖大4年)
No.8: テビタ・ツポウ(大東大4年)
SH:住吉藍好(中央大1年)
SO:フンガヴァカ・ツトネ(立正大4年)
WTB11:リリダム・ジョセファ(流経大3年)
CTB12:パトリック・ステイリン(拓殖大3年)
CTB13:マイケル・トロケ・バー(日大3年)
WTB14:ホセア・サウマキ(大東大1年)
FB:ティモシー・ラファエル(山梨学院4年)※たぶんできるだろう

懸案のFW1列はやっぱりこの3人になってしまう。また、SHだがスピードスター住吉のすばしっこさが大男達の中で活きるのではと思いあえて選んでみた。FWのボールキープ力は鉄板だし、BK展開で両WTBにボールがいい形で回ったら殆ど止めることは不可能。想像しただけでもワクワクするようなメンバーではある。
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中央大学vs立命館大学(定期戦/交流戦)の感想

2013-06-23 09:00:52 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


前日の東海大と拓大の戦いを観て、関東リーグ戦G1部所属校8チームのうち、7チームまでのチーム状況の確認が終わった。Aグループ所属校から始まって、Bグループ、Cグループと範囲を拡げていった訳だが、巡り合わせの関係で最後まで残ったのが中央大になってしまった。あと残り試合は最終節の日大戦のみで、さてどうしようかと中央大のHPを観たらちょうど6月16日に立命館大学との定期戦(立命館サイドは交流戦の扱い)が組まれていることが判明。

中央はもちろんのこと、関西で優勝候補の呼び声も高い立命館を観てみたい。ということで中央大グランドに足を運ぶことにした。心配された天候だが、雨も止み、むしろ熱中症が心配されるくらいまで回復した。これは願ったり叶ったりだ。中央はひとつ前の日体大戦で圧勝したとはいうものの、ここまでBグループでの戦いでの戦績は芳しいとは言えない。スコアからだけの判断だが、今一歩選手達の能力が発揮されていないように感じる。中央に対してはチームの現状確認、そして立命館はどんなラグビーをするのか。2倍楽しませてもらうつもりで新宿から京王線に乗った。

◆関西大学ラグビー、そして立命館への想い。

就職してからはずっと関東に住み、関西で生活した期間よりも関東在住期間の方が長くなってしまった私。しかし、中学と高校では今は亡き大阪城グランドで泥にまみれてラグビーに勤しんだ人間だ。件のグランド、降れば田んぼ、乾けば砂塵の舞うという、コンタクトレンズが全く役に立たないとんでもないところだったが、関西に出張して(あるべきものが)なくなっていたことを知ったときは、ショックに近い「喪失感」にさいなまれた。

そんな私だから、大学ラグビーはずっと同志社を応援していた。関係者ではなく、予備校時代に学食で大変お世話になった程度の縁だが、関東在住関西人のラグビーファンにとっては、同志社はプロ野球の阪神タイガースみたいなものだった。同志社の全盛期にあたる初VからV3達成の国立での試合はすべて観ているし、佳き想い出のひとつでもある。その後の同志社は全国レベルでは低迷期に入るが、毎年熊谷ラグビー場にやって来て明治や慶應と定期戦を行っており、(実力差の拡がりを確かめるだけのこともあったが)これも楽しみだった。熊谷のBグランドでの試合が多かった立教との定期戦では、Cレベルのチームを遠征させて100点ゲームで勝っていたことも思い出す。

その同志社が国立(大学選手権ベスト4)の常連として戦っていた頃は、ラグビーではまったく影の薄かった立命館。だが、直近ではこのチームに対する印象の方がむしろ強い。まずは、1999シーズンに遡るが、大学選手権1回戦での関東学院との対戦。秩父宮は「どうせ相手は関西の5位チームだから」という雰囲気だったのが、立命館の予期せぬ健闘に逆に拍手を贈るようになっていくような熾烈な戦いになった。結局最後は地力の差が出て大差が付いてしまうのだが、ジャパンでも活躍した木曽一が引っ張る関西版「魂のラグビー」(慶應とジャージも似ていた)で「関西に立命館あり」を強く印象づける試合となった。また、2002年のシーズンには宝ヶ池で歴史的な場面に遭遇している。関西出張の折だったが、立命館が同志社を破った試合を観戦できたのだ。そのときは、馬場、守屋といった選手達がピッチに立っていた。

同志社の健闘があり、京産大や大体大が同志社に続けと国立に進出するなど幾ばくかの存在感を示した関西大学ラグビーだが、実力面でも人気面でも関東勢との絶望的ともいえた格差をなかなか埋められないでいたのも事実。私が関東リーグ戦Gの試合を見始めた頃、主戦場だった熊谷ラグビー場では関西弁が共通語のように頻繁に飛び交っていた。懐かしい気分を味わったと同時に、彼らが地元で活躍できる環境があったら(関西の大学ラグビーももっと盛り上がるはずなのに)という複雑な想いを抱き続けたのだった。

でも、上で書いたことはすべて過去の話だ。今や、天理の台頭もありここ関東でも関西の大学ラグビーへの注目度や期待度は確実に上がっている。だから、この試合で立命館を観ることができるのはとても楽しみなのだ。試合開始の45分前に到着した段階で、両チームの選手達のアップにも力が入ってきた。前置きが長くなったので、試合場に頭を切り替える。



◆両チームのウォーミングアップを観ながら感じたこと。

スタンドから観て左側ではホームチームが、そして右側ではビジターチームがアップに励んでいる。どうしても両チームの選手達の体格や動きが気になってしまう。体格面から見たら本日は白を身に纏う中央の勝ち。だが、立命館の選手はやや小粒ながらもガッチリ系の引き締まった体型をしている。ちょっと見でも、ビジターの方がしっかり身体を作っている様子がうかがえた。

ウォーミングアップの後は、両チームともピッチの状態の確認も兼ねた全体練習になる。ここで気になったのがホームチームの動きだった。どちらかと言えばのんびりムードという点はさておき、BK練習でもメリハリが感じられない。ラインに並ぶ段階で歩いているし、なかなか展開が始まらない。本日はSHのスタメンに1年生の住吉が起用されたが、指示は当然上級生のリーダーからでるはずだ。だが、SHがパスをするまで展開が始まらない。普通ならハリーセットですぐにボールを回すはず。ここで普段の中央の練習風景が見えてしまったような気がした。つい先日、ニッパツ三ツ沢で観た東海と拓大の熱気のこもったアップとも明らかに違う。なかなか実績が上がらない理由がわかったような気もした。(チームリーダーの不在と試合の臨むにあたってのコンセプトの欠如)

方や立命館は効率的にボールと身体を動かしている。もう、この段階でも勝負ありを宣告してしまいたいところだったが、上でも書いたように散々な状態だった関西チームのことを観てきているだけに、どこかで、結局は中央の方が貫禄を見せるのでは?と期待したい部分がある。もちろん、根本的には「熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦グループ」であって欲しいのだ。

立命館の選手のことは全くわからない。メンバー表をもらってきて眺めていたら、付属校、地元関西や九州そして一部関東のラグビー有名校出身者に混じって、関西の(花園には近くても遠い)公立高校出身者が4名ほど居ることが判明。FWには195cmの宇佐見(西条高校)が居て、ラインアウトやキックオフでは力を発揮しそうだ。何よりもチームの雰囲気が明るいのがいい。中央は例外なく実績あるラグビー名門校出身者でチームが構成されている。注目選手はHB団の1年生コンビで、とくにSHの住吉藍好。セブンズでスピードスターぶりを強くアピールした選手だが、早くもスタメン定着だろうか。FBの高(2年生)もセブンズでのランが目に焼き付いている選手。すべて4年生で固めたTBラインが力を発揮すればいい形でトライが量産されるはずだ。

◆キックオフから果敢に攻め続けた立命館

立命館がキックオフから闘志を見せる。浅めに蹴り込んだボールをチェイスした選手が奪取に成功して一気に前へ。オープン展開はノックオンで不発に終わるが、この日の立命館を象徴するようなオープニングの一コマだった。続く中央陣10m/22mのスクラムからの中央大のキックに対して、立命館はカウンターアタックからオープン展開で前を目指す。そして、ウラへのキックは中央ゴール前でタッチを割る。立命館は強気で前に前にと仕掛けていこうという意思統一がしっかりできているようだ。対する中央は???

立命館のプレッシャーに中大は敵陣に行けない。2分、立命館はラインアウトからオープン展開で攻めたところで中央がオフサイドの反則を犯す。立命館は間髪入れず速攻でゴールを目指すが惜しくもパイルアップ。右中間の5mスクラムからFWでサイドを攻め、右オープンをBKで攻めてタッチライン沿いを快走した選手がトライを決めた。開始から僅か4分での鮮やかな先制パンチ(GKは失敗)で立命館が幸先良く5点のリードを奪った。

立命館の勢いに完全に呑まれた形の中央も反撃を試みる。中央の反則で得た立命館陣22m付近でのラインアウトからオープンに展開するが惜しくもスローフォワード。スクラムで立命館の反則がありゴール前のラインアウトからFWでゴールを目指すがターンオーバーに遭う。立命館のキックに対してカウンターアタックで再度ゴールを目指すもののノックオンと中央は(相変わらず)チャンスで取り切れない。立命館の身体を張った気迫のディフェンスを褒めるべきかも知れないが、中央はここ一番での集中力が弱い。

強気で攻めているものの、立命館も(解釈の違いがあるのかも知れないが)反則が多い。14分、中央は再びゴール前でのラインアウトのチャンスを掴むが、オーバースローとなりなおかつノックオンのダブルエラーで絶好の反撃期を逃す。ミミズが走ったような拙メモだが、この場面に対しては「しっかりせい!」とはっきり読み取れる文字が記されている。せっかく自分達の時間帯になりかけていたのに、その後は立命館に押し戻されて自陣に釘付けになってしまったことを思うと、中央はここで1本取れなかったことが大きかった。

オープン展開指向で、FWもBKもしっかり身体を相手にあてて前を向くのが立命館スタイルといったところだろうか。少しでもタックルが甘くなるとビッグゲインが得られて立命館のチャンスが拡がる。ただ、中央は立命館の反則とミス(18分のPKはタッチインゴール)に助けられた形で失点は免れる。19分にはレフリーから(次はイエローだよという)注意が立命館に発せられる。

立命館の勢いに押されっぱなしで殆どラグビーをさせてもらえない中央だが、21分に立命館のパスミスからチャンスを掴む。ボールが大外で転々としたところをBK選手が足に引っかけて一気に立命館陣へ。ボールをうまく確保できていればトライまで行けた場面だったが、立命館が何とかタッチに逃れた。とは言っても敵陣10mのラインアウトは中央チャンスのはずだが、ここで立命館のハイタワー(195cmの宇佐美)が威力を発揮してタップでボール奪取に成功する。パスを受けたHO庭井主将がボールを前に運ぶがHWLを越えたところで反則と、中央の反撃のチャンスはまだまだ続く。内容的には完全に押されていても中央のビハインドはまだ5点だ。

中央は立命館陣22m手前のラインアウトからモールを経てオープン展開を試みるも、オーバーザトップでチャンスを逃す。中央の拙攻もあるが、立命館がしっかりタックルで止めていることも確か。立命館はHWL付近からラインアウトを起点としてオープン展開を試みるがパスが流れてタッチを割る。しかしながら、続く中央ボールラインアウトでまたもスティールに成功した立命館がオープン攻撃の連続で大きく前進。ラックから絶妙のタイミングでパスを受けたFL石田が、防御の甘くなったラックサイドをあっさりと抜けて約30mを走りきりゴールラインを越えた。GKも成功して立命館のリードは12点に拡がった。ペースをつかみかけていた時間帯だっただけに、中央にとってこの失点は痛かった。

直後のリスタートのキックオフから立命館はカウンターアタックで攻めるもののノットリリース。中央はまたしても立命館ゴール前ラインアウトのチャンスをもらう。今度は確実にモールを形成してオープンに展開するが痛恨のパスミス。しかし立命館の陣地挽回を目指したキックを中央のCTB津越がチャージダウンに成功し、そのままインゴールでボールをグラウンディングする。GK成功で7点を返し7-12と中央はラッキーな形だが息を吹き返す。時計は前半も終盤にさしかかった32分だから中央はあと1本返したいところ。

しかし34分、中央は相手キックオフに対して自陣からカウンターアタックを仕掛けたところでノットリリース。立命館はこのチャンスを逃さず、中央ゴール前でのランアウトからモールを形成してそのまま押し込みトライ。GKは失敗するが17-7と再び立命館のリードが12点に拡がる。中央がそれまでに何度か試みた形を逆にやられてしまったことはショックだったに違いない。もっとも、せっかく取った後にすぐ取り返されてしまうこともよろしくないのだが。

立命館はたたみかける。中央キックオフに対しカウンターアタックで仕掛けた後、ウラへのキックが追い風にも乗ってエンドラインを割ってしまう。ちょっと意図不明だったが、敵陣へ大きく入ったところで中央ドロップアウトからのやり直しが功を奏する。順目、順目でオープンに攻めてCTB宮本がいいスピードで抜け出してゴールラインを越えた。GKで24-7と立命館がさらにリードを拡げる。しかし、再三いい突破を見せ、タックルでも中央の生命線とも言えるライン攻撃を止め続けたCTBコンビがなかなかいい。12番は県立芦屋出身、13番は市立尼崎出身だが、関西には花園に出られない公立校にも逸材が居るということだろうか。もちろん、本人の努力もあると思うが素晴らしい。

結局、中央は殆ど何もできず、何度か訪れた得点機を有効に活かすこともできずに前半が終了。「立命館なかなかええやん?」という気持ちと「中央はしっかりせんとあかんで!」の2つの気持ちが交錯する複雑な心境だ。立場上、後半は中央に意地を見せて欲しいのだが。



◆後半も「リッツ軍団」の勢いが止まらない

何とか立命館の勢いを止めたい中央。そのためにもどんどん仕掛けて試合の主導権を握る必要がある。その切り札として期待されるのが新人SHの住吉藍好(光泉高校出身)で、9番がボールを持つたびに「あいこうー!」の期待の声がスタンドから上がるくらいにファンのハートを掴んでる。だが、やはりルーキーということもあり、SHとしての役割を全うする方に意識が向くのは致し方ない。FWから「俺たちがしっかりフォローするから思いっきり行け!」とでも言われない限りは、なかなか単独で行くのは難しい。高崎といいコンビになっていたセブンズとは戦い方が違うが、チームに活を入れるべく思いっきり行っても良かったのではと思った。もちろん、立命館も彼の存在はよく知っているはずだからマークがきつくなることは間違いないが。

後半も押し気味に試合を進める立命館だが、前半同様「攻め込んでは反則」が多い。ということで中央もチャンスをもらうのだが、開始早々の立命館陣22m手前でのラインアウトはノットストレート。その後もマイボールラインアウトのこぼれ球を拾われたり、いい形のオープン展開でスローフォワードとミスで波に乗れない。それもあるが、ひとつ確実に言えることは、ルースボールの獲得戦でことごとく競り負けていることも大きい。まず反応自体が遅く、また、反応できても先に身体を入れられてボールを奪い取られる。

逆に立命館はボールを持つと小気味よいテンポでボールを繋いで積極的に前に出てくる。反則やミスがなかったらどんどん点差は開いていっただろう。10分、立命館は中央陣10m付近のスクラムからサイドを攻めて細かくボールを繋ぎトライを奪う。GK成功で31-7と点差がさらに広がった。このまま終われない中央は12分に立命館陣でFL小野が相手キックのチャージに成功する。ボールは惜しくもゴール直前でタッチを割る(トライに結びつかない)がこのワンプレーを機に中央にようやく勢いが出てくる。だが、敵陣でいい形の継続攻撃を見せるも、ゴールラインが遠い。

ピンチを凌ぐと再び立命館の時間帯に戻る。21分には中央のハイタックルで得た中央ゴール前のラインアウトで再びモールトライに成功。得点は38-7となり、チームの勢いからみてもここで勝負は完全に決まった。気落ちした中央の選手達を見透かすかのように、リスタートのキックオフから立命館はカウンターアタックでノーホイッスルトライを奪う。これで38点差になってしまった。

本当にこのままでは終われなくなってしまった中央は終盤の10分間、怒涛の攻めを見せる。34分には反則の繰り返しで立命館のFW選手にシンビンが適用されたことで、さらに中央の勢いが加速。立命館陣ゴール前で得たPKから速攻で攻め、最後はPR檜山がトライを奪う。GK成功で14-45となったが、いかんせん遅すぎた。最後は元気いっぱいの立命館が怒涛の逆襲で中央ゴールを脅かすが、追加点には至らずノーサイド。

ファイナルスコアの45-14は中央関係者だけでなく、対戦相手も含むラグビーファンにとっても想定外の数字だったかもしれない。だが、試合を観たらもっと差がついてもおかしくないくらいの内容だったことがわかる。それにしても敵地でも果敢に攻め続けた立命館は「お見事!」というほかない素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。正直、中央ファンには申し訳ないが、観ていてとても楽しかったという事実は(リーグ戦Gファンとしてはもちろん残念だが)拭い去りようがない。



◆この試合で見えた中央の課題

先にもっと差が付いてもおかしくない試合と書いた。だが、逆の印象も受けた試合だった。「中央はもっとやれたはず」というものだ。毎年定期的に対戦しているとは言っても、お互いに手の内は知らないチームが相手だ。このような戦いで大切なことは、まず主導権を握って自分達がやりたいことを力一杯やる。もし、それができないことが分かれば、別の方向に修正する。また、主導権が握れなければ、相手のペースをそぐような努力をして流れを自分達の方向に呼び戻すように頑張る。

お互いの手の内を知らないからこそ、ピッチ上で選手達が考えなければならないことが山ほど起こるのだから、逆にこんな絶好の機会を逃す手はないわけだ。とくに相手の立命館は関西で優勝を狙えるレベルのチームだから、中央は思いっきりやればいい。しかし、戦う前から、方針が明確だったのは立命館だった。そして、積極的に自分達のやりたいことをやることでペースをガッチリ掴んでしまった。中央としては、そんな相手の状況に対応して早めに上で示したような手を打つことができれば、こんな大差のゲームにはならなかったし、立命館の焦りを誘うことだってできたかも知れない。BK展開勝負につきあわずに、テンポを落としてFW戦に持ち込む手もあったはず。

立命館のHPを見ても、戦う前は「中央は自分達より身体が大きく、タフなチーム」と認識していたことがよくわかる。だから、思いっきり攻めて、ペースを自分達の方に呼び込んだ。立命館も反則が多いなど少なからずミスをしていたので、中央にチャンスがないわけではなかった。というようなことを考えていて、中央のリーグ戦での戦績がなかなか上がらない理由が分かったような気がした。試合前のウォーミングアップのところでも()書きで示した、「チームリーダーの不在と試合に臨むにあたってのコンセプトの欠如」だ。中央の積年の課題のひとつとして、チームの完成が遅いというものがある。普段から、メンタルや戦術面も含め、常に実戦での動きを意識したトレーニングがどれだけできているのだろうか?という疑問に辿り着くし、その答えが見えたような気がした。

ただ、中央の選手からもチームを変えないといけないという意識は見えたし、またHPに掲載された選手達のコメントからも、毎試合しっかりゲーム内容を振り返っている様子がうかがえる。これはとても大切なことだと思う。立命館がおそらくベストに近い戦いを見せてくれたことで、中央の課題も明確になったとしたら、価値ある敗戦といえるのではないだろうか。拓大も大東も日大も変わった。そして法政も変わろうとしている状況の中で、中央も頑張らないといけないし頑張って欲しい。



◆「伝統校」に続いて「東高西低」も死語に

大学ラグビーが「東高西低」と言われていた時代に、たとえ立命館が優勝候補だったとしても、こんな結果が出たらそれは「事件」になっていただろう。しかし、時代は確実に変わっている。関西学院や天理に続く形で近畿大も強くなっている。この試合はBSの「ラグビーウイークリー」にも取り上げられたのだが、元木氏が率いる京産大にも確かな復活の兆しがありそうだ。トップリーグ関係者のコーチングを受けることで関西の大学ラグビーのレベルはどんどん上がっていくかも知れない。

かつて、定期戦を通じての「東西対決」は関西のチームにとって関東の力を知る絶好の機会という位置づけだったように思う。しかし、関東でも「リーグ間格差」や「リーグ内格差」がとみに顕在化している昨今。今後は東西の大学の力関係にも変化が生じ、関西の有力チームが関東に遠征するときは、関東の有力チームがこぞってチェックに来るようになるだろう。少なくとも今日の立命館を見たら心穏やかではなくなる関東のチーム首脳が出てきそうだから。

それとは別に、大学ラグビーでは支配的だった「伝統校」という言葉も急速に力を失ってきているように思う。かつては、「伝統校」の看板と実績のもとに有力選手を集め、直伝のスタイルでチームをファンが望む形に仕上げればトップに立つことも可能だった。しかし、コーチングだけでなく、生活スタイルまで見直しがなされている現在では、そんなことも難しくなっている。帝京や東海がどんな形で力を付けてきたかを振り返ってみれば、そう思わざるを得ない。

帝京のラグビーを観てとくに最近感じることは、彼らの目標は公的には「日本選手権4強入り」だが、実際は「己自身に克つ」ということではないだろうか。一番身近にいて、かつ最も強力な敵だ。帝京の選手達は、どんなレベルの相手でもけして手を抜かずに戦う。結果オーライの軽いプレーや他人任せの無責任なプレーはしないし、するという発想もない。だから目標を失うことなく戦い続けることができるのだと思う。

そんなことを思うのも、「打倒関東」を達成した同志社、「打倒早稲田」を達成した関東学院、「アルティメイト・クラッシュ」を達成したはずの早稲田の現状を見て、目標を外に求めた場合に、達成した後のモチベーションのもって行き方が難しいと感じるから。やはり、一番大切なのは、選手個々の意識改革ということになるのだろうか。結論は簡単に出そうもないがヒントにはなりそうな気もする。
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東海大学vs拓殖大学(2013年度春季大会)の感想

2013-06-21 01:39:56 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


いよいよ終盤戦となった関東春季大会。今シーズンのAグループの特徴のひとつに、頭文字にTのつくチームが4つ集まったことがある。それも、対抗戦グループとリーグ戦グループから2チームずつ。前者からは帝京大と筑波大、後者からは東海大と拓殖大が参加している。

そんなの偶然じゃないの?と言われそうだし、確かにその通り。でも、この「4つのTチーム」は、現時点で日本の大学ラグビーをリードする存在だという共通点がある。いや、正確に言うと4つのTのうち、3つが大文字のT(さらに1つは太文字)で残りの1つはいうなれば小文字のtだ。だが、この小文字のtチームも近い将来には大文字Tに昇格すると個人的には確信している。

そんな言葉遊びはさておき、この日は同時刻に秩父宮で日本代表とウェールズ代表のテストマッチが行われる。何で同じ日に?と恨み節のひとつも出そうだが、私にとってはここニッパツ三ツ沢で行われるリーグ戦Gの2T対決の方が遙かに魅力的に写る。まずは、この試合で初めて今シーズンの東海大を観ることができること。そして、この試合が春季大会の最終戦となる拓大の仕上がり状態も確認できること。明治戦以降の進化があるのかどうかが楽しみだ。

とは言っても、やっぱり秩父宮が気にならないはずがない。でも、ピッチに登場して元気いっぱいでアップに励む両校の選手達を観たら、こっちに来てよかったという気持になる。先週観たBグループの試合に比べると、試合前にもかかわらず明らかに緊張感がみなぎっている。チームの顔ぶれを見る限り、AとBの間に大した差はなさそうだが、アップひとつ見ても実は格差が生まれてきていることを感じずにはいられない。



◆新顔が並ぶ東海に対し、拓大は早くもメンバー確定

本日はキックオフ前に拓大のチーム関係者の方とお会いしていろいろとお話を伺った。昨シーズンの拓大は日本一を誇ってもいい実績を残している。それは、レギュラー固定率がダントツに高くほぼ100%に近かったこと。そもそも選手の負傷による欠場自体が少なく、また、ピッチ上に選手が倒れていた時間の合計も(統計データはもちろんないが)日本の大学チームではおそらく最短だろう。そんなチームの担い手の方のお話は、いろいろと納得させられるところが多かった。強豪チームは例外なく強力なBチームを持っているが、拓大のように少数精鋭の固定メンバーで強くなっていくチームがあってもいい。

その拓大だが、この春季大会最終戦で他のチームに先駆けてメンバーがほぼ確定したようだ。ひとつ前の試合(筑波戦)と全く同じ顔ぶれが揃い、なおかつその試合では全員がフル出場で交代なし。おそらく拓大は今年も固定メンバーで頑張ることだろう。主将を務めるウヴェと実質的なゲームリーダーのSOステイリンの2枚看板に新たに強力なメンバーが加わった。期待の選手は大型PR3の具で、今年から9番を担う茂野も定着した模様。BKは相変わらず小粒だが、身体の厚みが増した感じがする。強力なペネトレーターこそ居ないが、コンビネーションに磨きをかけてチーム力を上げていきたい。拓大は法政と同様に伝統的にBK展開勝負のチームだから期待は大きい。

一方の東海大は多くの選手が卒業したこともあり、フレッシュな顔ぶれが並ぶメンバー構成。U20の大会やセブンズなどに多くの選手が参加していることもあり、ちょっと不安を感じさせる陣容ではある。逆に、このメンバーに今は不在の強力なトライゲッターが加わったらどんなチームになるだろうかという楽しみな部分もある。いや、リザーブだが1人居た。SHの湯本は、昨シーズン、FWとBKとの繋ぎの部分で苦労した東海にとって期待を一身に背負った選手と言える。出場時間は短くなるかも知れないが、元気なところを見せて欲しい。



◆キックオフから緊迫した展開に

風下の東海大のキックオフで試合が始まった。ここは拓大の見せ所にひとつで、昨年度はもっとも工夫が見えた部分だ。相手のキックオフに対しては、FWがいち早く落下点に集まって体勢を作り、ジャンプ一番でボールをキャッチした選手を確実にサポートしていた。また、マイボールキックオフの場合はSOステイリンが10m越えギリギリの位置に浅めに蹴り込み、落下点に走り込んだFL森がジャンプ一番、相手選手に競り勝ってボールをゲットする場面を何回も見ている。帝京の例を挙げるまでもなく、大学ラグビーでもキックオフでの激しいボール争奪戦に勝ったチームが主導権を握ることになるのだ。

果たして、拓大は今シーズンもしっかり準備ができているようだ。確実にマイボールを確保し、SOステイリンがキックでエリア獲得を目指す。ここでボールを受けた東海大がカウンターアタックで攻めるも、拓大が激しいタックルを決めて東海大のハンドの反則を誘う。この一連の攻防を観ただけでも、先週に上井草で観たラグビーより緊迫感が感じられる。観る方にも緊張を強いるような激しいゲームがいままさに始まったのだ。

拓大はPKで東海大陣10m/22mのエリアに入ってラインアウトからのアタックを選択。ここからボールが素早くオープンに展開され、CTB松崎があっさりとウラに抜けてゴールラインを越えた。拓大は開始1分にして7点を奪う幸先良いスタートを切る。東海はやっぱり試合の入り方に課題があるのだろうか。緊張感が欠けているというよりも、逆に入りが良くないことを気にしすぎているのかも知れない。

しかし、東海も気持ちを切り替えて反撃に出る。ここでも拓大が確実にマイボール確保に成功して素早くオープンに展開するが、惜しいパスミスがありボールが反対側のタッチを割る。東海は拓大陣10m付近のラインアウトからオープンに展開してライン参加したFB安岡がパワフルなランでゲイン。拓大は自陣22mに入ったところでたまらず反則を犯す。東海は小原、石井、近藤と言った強力なランナーが不在だが、その分をまとめて引き受けたと言わんばかりの安岡のランは迫力満点。OBの豊島とは違ったタイプの強力なFBの誕生といったところだろうか。

東海ボールのリスタートは拓大陣ゴール前でのラインアウト。ここからモールで力強く前進し、今度は東海の13番三坂が拓大DFをぶち抜いてゴールラインを越えた。GKはポストに弾かれるものの東海は5点を返す。東海の選手はひとりひとりが本当にパワフル。身体がしっかりできあがっているので安定したプレーができる。ここで、キックオフ前に感じたような(ニューフェイスが多いことに対する)不安は完全に払拭された。体格面(とくにBK)では劣勢に立つ拓大がよく止めているとも言える緊迫した展開が続く。

今度は拓大のキックオフ。注目は昨年度の森(現セコム)のようにボールゲットを目指すプレーが観られるかだったが、ステイリンは深めに蹴り込んだ。その後も同じ形が続いたが、秋の本シーズン前は(フィジカル面で)リスキーなプレーは避けるという意図があったのかも知れない。楽しみは秋までお預けと言ったところか。東海はカウンターアタックからNo.8金堂が安岡に負けじとパワフルなランを見せるが、拓大のタックルに遭い東海はオーバーザトップの反則を犯す。ここで、拓大はショットを選択しステイリンが右中間約30mのPGを確実に決める。10-5と拓大のリードは5点に拡がった。春シーズンではレアな選択とも言えるが、最終戦は目標とする東海に勝って勝利で終わりたいという意図があったのかも知れない。

リスタートの東海のキックオフがダイレクトタッチとなり、注目のファーストスクラム。拓大が確実にボールキープして8→9からのウラキックはエリア獲得成功となる絶妙のタッチキック。ここから両チームのキックとカウンターアタックの応酬で試合は膠着状態となる。13分のスクラムでも東海がコラプシングを犯す。明治を圧倒した拓大のスクラムは本物だ。とくに今シーズンからメンバーに加わったPR3の具智元が効いている。現時点のリーグ戦グループで一番強力なスクラムが組めるのは拓大かも知れない。

拓大の持ち味がスクラムなら東海のみどころはBKによるオープン展開。もちろん、東海はBKに展開して取ることを目指しているチームだが、今シーズンはよりアタックのコンセプトが明確になったようだ。昨シーズンまではグランドいっぱいにラインを広げてワイドに展開するスタイルだったが、今季からはラインの間隔を少し狭めてFWのサポートを得ながら確実に速くボールを動かす形に変えたのかも知れない。また、FWのアタックにしても、去年のように超強力な第3列のトリオが戦陣を切って引っ張るよりも、BKとのバランスを意識した動き方になっているような印象を受ける。ここに小原や石井が入ったら得点力はおそらく倍増。東海のモデルチェンジ?は効率よくボールを動かすことができる帝京を意識しているようにも感じる。

逆に拓大のアタックにも変化が見られる。昨シーズンはFWのサポート(シェイプ)を得てシンプルにオープンに展開するスタイルだったが、今シーズンは意識して内側を攻める形が何度も観られた。東海のような上積みの要素が少ない分、早めにメンバーを固定してコンビネーションに磨きをかけたい拓大だから、いろいろと試しているのかも知れない。東海のパワーへの対策もあってか、SOステイリンがCTBに位置を頻繁に変えるなど工夫が見られた。また、WTBの永野が的確に指示を出すなど、存在感を示す。東海が押し気味ながら、両チームともしっかりディフェンスができているので、よりチームの目指す方向性が明確に現れる状況になっている。

両チームの激しい攻防に見入っている内に時計は31分まで進んだ。拓大が東海陣10m/22mでのラインアウトから攻めるものの、東海がターンオーバーに成功して一気に逆襲して拓大ゴールに迫る。ここで拓大にノックオンがあり、東海がゴール前スクラムからゴールを目指すもののノックオン。逆に拓大はスクラムからウヴェが抜け出すものの、東海がターンオーバーに成功してラックから抜け出したSH小泉がトライを奪った。SO青木のGKも成功して12-10と東海が遂に逆転に成功。

前半終了間際の39分、拓大は東海の反則により東海ゴール前でラインアウトの絶好のチャンスを掴むもののノックオンで得点機を逸する。前半はそのまま東海が2点リードで終了した。東海の個々のパワーに押され気味ながらも、拓大も身体を張ったディフェンスで凌ぐといった形。リーグ戦本番の前哨戦を思わせる中で、勝利の女神はどちらにほほえむのだろうか。



◆後半も手に汗握る展開に

後半は拓大のキックオフだが、前にも書いたとおりステイリンは深く高くボールを蹴り込む。ここからギアチェンジしたかのように東海のパワーとスピードが合体した怒涛のアタックが始まった。東海が一気に拓大陣まで攻め上がり、拓大がたまらずオフサイド。ところがゴール前でのラインアウトを狙った東海のタッチキックが追い風にも乗ってインゴールでタッチを割ってしまう。拓大は命拾いした形だが、東海の勢いは留まるところを知らない。拓大ボールのスクラムでプレッシャーをかけてミスを誘い、拓大ゴール前の絶好の位置で東海ボールスクラムとなる。

ここで、拓大がコラプシングを犯し、東海はタップキックからゴールを目指す。拓大がノット10mバックを取られ、今度はゴール前ラインアウトから東海がFWでゴールを目指すものの拓大がスティールに成功。そのまま拓大が東海陣10mまで前進し東海のノックオンを誘う。しかしながら、拓大はスクラムから展開を図ったところでノックオンを犯し、東海が拓大陣10m付近まで前進するもノットリリース。こう書くと「ミスの応酬」のような印象になってしまうが、両チームの身体を張った激しいファイトがミスを誘ったと言うべきだろう。ミスにもいろいろあるが、グランド全体を大きなため息で包むような種類のものではないことは確か。

東海の猛攻に土俵際に追い詰められているような状態の拓大だが、ワンチャンスをものにする。9分、東海陣22m付近のスクラムからSH茂野がウラに抜けて一気にゴールラインまで駆け込んだ。GKも成功して17-12と拓大が再逆転に成功する。今シーズンの拓大の不安材料は昨シーズンの私的MVPの1人だったSH岩谷の卒業だったが、茂野がしっかり埋めたと言ってよさそう。本職としてのパスワークもさることながら、走力にも魅力がある。安定感抜群のステイリンとのコンビに磨きがかかると拓大のアタックのバリエーションは確実に増えるだろう。

得点板が動いたところで、11分に東海は期待の選手を2人投入する。CTB三坂に替わって井波、SH小泉に替わって湯本がそれぞれピッチに立った。とくに湯本に対するファンの期待は大きいはず。私見ながら、昨シーズンはSHを固定できなかったことが東海の不完全燃焼の原因のひとつだったと思われるので。しかしながら、東海はキックオフでダイレクトタッチ。拓大もスクラムの8→9からのキックがダイレクトとちぐはぐ。想像以上にピッチの上では風が強かったのかも知れない。

ゲームがやや混沌としてきたところで、拓大は絶好の追加点のチャンスを掴む。17分、東海陣22m手前でのラインアウトからFWで前進を図りゴールを目指したところで東海が反則。さらに前の位置からのラインアウトでモールを組んでトライの目論見だったはずが、スティールに遭い自陣まで押し戻される。拓大の泣き所はFWの高さ不足で、これは昨シーズンと変わらない。ピンチを凌いだところで東海が再び勢いを取り戻す。24分、HWL付近でのスクラムを起点として素早いオープン展開でボールを動かし続け、湯本から絶妙のタイミングでラストパスを受け取ったFB安岡が力強くゴールラインまで到達。GKは失敗するが17-17とゲームが振り出しに戻った。

東海はどんどんメンバーを入れ替えて新鮮なパワーを注入していくのに対し、拓大はずっと固定メンバーで戦っている。(最終的には、29分にFL石松が沼田に、35分にWTB永野が中村にそれぞれ交替した。)選手層が厚い東海に対し、少数精鋭での戦いを強いられている拓大だが、ここも拓大の持ち味のひとつだ。選手達は簡単にはピッチから去りたくないし、交代させられたくもないという気持ちでピッチに立っていることは表情からも伺われる。選手層が薄いだけに普段から強い意識を持って戦っているのだろう。

同点となったことで、勝利を目指す両チームの戦いが(終盤とは思えないくらいに)ヒートアップしてきた。秋の本番でも終盤に顔を合わせることになる両チームが意地を見せた戦いは熾烈を極めている。リフレッシュした東海がテンポを上げて再び拓大を土俵際まで追い詰める展開となる中で、期待のルーキーに初トライが生まれる。33分、湯本が拓大ゴール前でのPKからタップキックで攻めて一気にゴールラインを越えた。ゴールキックも成功し24-17と東海が再びリードを奪う。小泉との正SH争いもヒートアップすることだろう。

リードを奪われたとは言っても、1トライ1ゴールで追いつく拓大は最後の力を振り絞って反撃を試みる。39分には東海ゴール前ラインアウトからモールで、また、パイルアップの後のスクラムからサイドアタックで攻めるものの、なかなか得点に結びつかない。拓大の死力を尽くした攻めも実らず、東海が7点リードのままノーサイドとなった。対抗戦Gの2T対決に比べてスケールでは劣るかも知れないが、リーグ戦Gの方の「2T対決」もなかなか見応えのあるものになったことがとにかく嬉しかった。



◆東海、拓大それぞれに収穫があった熱戦に拍手

メンバー表を見てどうなることかと思った東海だが、完全な取り越し苦労だった。むしろ、ここ数年来のベストチームになるのではないかと思わせるくらいに期待が高まったというのが率直な感想。上でも書いたように、ここに小原や石井や近藤が加わったら手の付けられないチームになるという基礎部分が既にできあがっている。過去の東海とは違って、チーム作りにあたっての方針に変化が現れたのなら歓迎したいところ。FWがBKとより密に連携を図るという方向性が明確になることで、逆にFWの強さが活きるような気もする。ディフェンス面の強化も明るい材料と言えるだろう。帝京の一人勝ち状態を許さないためにもどんどんパワーアップしていって欲しい。

拓大は、選手層の違いから少数精鋭で戦わなければならない事情もあるが、他のチームに先駆けていち早くチームの土台ができあがったようだ。明治戦と比べても明らかにチームのフォーカスが定まった印象を受ける。あとは、ほぼ固定されたと思われるメンバー構成の強みを活かしてチームを熟成させていって欲しいところ。拓大に期待したいのは、強力なBチームやCチームを持たなくても日本一を目指せることを示してくれること。昨シーズンに大きな飛躍を遂げた拓大だが、一方で、チーム再構築に成功しつつある法政や優勝争いに絡めそうなくらいにパワーアップしつつある大東大のチャレンジを受ける立場でもある。でもこんな形での実力伯仲になれば、それは大歓迎。秋には拓大がどんな形のアタックを見せてくれるか楽しみになってきた。

試合前に比べると、大文字のT(東海)はやや太い文字となり、小文字のt(拓大)は大文字のTとの中間くらいの大きさまで拡大したように見えたのは気のせいだろうか。
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早稲田大学vs日本大学(2013年度春季大会)の感想

2013-06-14 02:46:54 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


先週の立正大グランドで大東大が見せたパフォーマンスは、大東大のみならずリーグ戦Gのファンにも明るい希望を与えたことは間違いない。なぜなら、かつての大東大はリーグ戦グループで観ていてもっとも楽しいラグビーをするチームだったから。ボールがダイナミックに動くランニングラグビーを指向している点で法政と双璧をなしていたことは間違いない。少なくとも私がリーグ戦グループのラグビーを本格的に観ることになった1997シーズンの頃はそうだった。

大東大のラグビーが面白かった理由は、FW、BK関係なく奔放にボールを繋ぎ、最後は決めるべき人がトライを取るラグビーだったから。けして留学生のパワーだけに頼っていたチームではなかった。FWの選手がBK選手顔負けのロングパスを披露したり、カットインをしてみせたりしてファンを驚かせていたことも思い出す。そもそも国立の晴れ舞台でHOの選手がドロップゴールを決めた実績があるチームだ。先日の立正大戦は、シンプルにボールを前に、横に、と動かすステディなラグビーに徹していた感もあるが、鏡さんが中心となって築き挙げた「大東ラグビー」のDNAは消えていなかった。それが今後どんな形で開花していくかが楽しみだ。

◆日大ラグビーへの想い

実は、大東大ほど派手ではないが、「個人でとことん勝負!」の荒削りながらも思いきりのいいラグビーでファンを魅了していたチームがあった。それは、私が流経大に次いで2番目に応援することになった日大。1997年度からの過去16シーズンを振り返ってみても、プレーが印象に残っている選手の数がダントツに多いのは、実は日大なのだ。もちろん、日大の看板は対戦相手のFWを震え上がらせたような強力スクラムだったのだが、卒業してからは断然「BKの日大」だった。一躍脚光を浴びるたのは、大学時代に奔放にグランド上を駆け巡っていたBKの選手たちだったから。

例えば...沢木智之、日原大介、沢木啓介、北條純一、今利貞政、窪田幸一郎、武井敬司、河野義光、松下馨、金川禎臣、藤原丈嗣、三友良平、ピエイ・マフィレオ、中村誠一と私が実際にグランドで観た歴代のOB達の名を連ねてみても、日大がいかに個人能力の高いBK選手達を輩出し続けてきたかがわかる。強みはトライゲッターから仕事人まで幅広い人材が揃っていることだが、基本戦は個人勝負を第一に考えるという点で一致している。時系列を無視して各選手の全盛期だけを切り取ってBKラインを組んだら、日大OBだけでもドリームラインの完成だ。

中でもとくに印象の残っている選手は、けがで出場機会自体が少なく、かつFBへのコンバートで持ち味が十分に発揮できたとは言いがたかった藤原丈嗣。187cm、90kgの大型WTBで、風を切るがごとくのスケールの大きなランニングが瞼に焼き付いている。ユース代表から始まり、セブンズの日本代表ではFWとして活躍するなど将来を嘱望されながらも、引退してしまったことが惜しまれる。あとは、ラインを動かすことにかけてはピカイチだったM選手。時々やってしまった珍プレーも懐かしい。

時間軸を現在に戻す。日大を加藤HCが率いるようになってから今年で5シーズン目となった。紆余曲折もあったが、昨シーズンは念願の大学選手権出場も果たし、今シーズンはいよいよ東海や流経へのチャレンジの年となるはず。ナイター設備の新設、練習場近接の寮の建設など、急速に進んだ環境整備の後押しもあるはずだから、誰もがそう考える。しかしながら、春シーズンのここまでの戦績は芳しいとは言えない。果たして、理由は小川の卒業だけなのだろうか?

◆歴史的な1日を期待して上井草へ

日大と早稲田が公式戦で戦うのは19年ぶりだそうだ。練習試合ですら12年ぶりらしい。リーグは違っても大学選手権では明治や慶應との対戦は多いのだから意外な感じがする。その早稲田だが、ニッパツ三ツ沢で行われた法政戦を見る限り、どこか歯車が狂っているように見える。日大にとって歴史的な1日になるかも知れないという期待を抱いて上井草に向かった。

比較的近いこともあるが、気持が入りすぎていたためか、キックオフの1時間前にグランドに着いてしまった。初めての上井草だったが、やはり歴史を感じさせるところが多々ある。一大学の施設と言うよりも、由緒ある倶楽部といった趣で、まずは圧倒された。ちょうどメンバーが揃い、アップが始まったところで日大のメンバーを確認する。注目はやはり9番ということになる。ここ2年間は小川の独壇場だったし、その前は球捌きのいい中村が務めていた日大のキーポジション。谷口とリザーブの柏原(B戦で先発予定)の2人のルーキーでレギュラー争いをすることになるのだろうか。

FWでは走力のある大窪と館山、そして随所で光るプレーを見せるNo.8高橋が要注目選手。2年目となるLOのキテもそろそろ爆発していい頃だ。BKでは4年生のSO下地が1、2年生主体の若いラインをリードする形。遅ればせながらようやく本領発揮となりつつあるWTBマイケルに如何にいい形でボールを渡すかに注目したい。対する早稲田は、法政戦からかなりのメンバーの入替があるが、ひとつ言えるのは余裕を持ってのテストではなさそうに見えること。日大にとって注意すべき選手は、やはり司令塔を務める小倉ということになるだろう。不調とは言っても、選手層の厚さを見せつけることができるだろうか。



◆キックオフから攻めの姿勢を見せた日大だったが

早稲田のキックオフで試合開始。春季大会の場合は自陣深くからでも果敢にゴールを目指すチームが多い。一糸乱れぬ攻撃体制が整っている帝京、前に出る意欲がとにかく素晴らしかった大東に対して日大は? オープンに展開で攻めの姿勢を見せるものの、前2者に比べるとどこか中途半端な印象を受ける。果たして大外までボールが回ったところでノックオンがあり早くもピンチを迎える。もらったチャンスは逃さないのが試合巧者の早稲田。日大ゴール前でのスクラムを起点とした継続から最後はオープンに展開してWTB鹿野がゴールラインを越えた。

本日は小倉がSOとして先発したことで安定した戦いを見せてくれると、早稲田ファンに安堵感を与えた先制点...だったはずなのだが、メンバーは替わっても法政戦で見せたようなノックオン症候群としか言いようのない状況は続いている。開始5分にして早くもファーストノックオンが起こる。だが、チャンスをもらったはずの日大もボールを持ち込んではノット・リリースやオーバー・ザ・トップでアタックの流れを止めてしまう。最終的な日大の反則数は11個なのだが、もっとたくさん犯したような印象を受けるのは、肝心なところでの痛い反則が多かったからかも知れない。

日大が波に乗れないのは、反則もさることながら、ポイントからの球出しがスムースにいかなかったことにも原因がある。単純比較はできないが、SHの球捌きに関しては、Bで先発した柏原の方に軍配を挙げたい。さて、試合が膠着状態になったところで日大が気をつけなければならないのは、一瞬の隙を見逃さない早稲田の一発。果たして12分、早稲田は日大陣22mライン付近で得たPKからの速攻でFL金がインゴールに飛び込んだ。GKは失敗したが早稲田のリードは12点に拡がった。

先制パンチを2発受けたところでようやく日大のアタックが機能し始める。私見ながら、昨シーズンはリーグ戦Gでもっとも整ったアタックを見せてくれたチームだから、財産を簡単には手放して欲しくない。早稲田のディフェンスもピリッとしないからチャンスだ。初期フェイズの段階でBKラインに並んでいるのは背番号一桁台の選手ばかりという状況になっている。うまくミスマッチを突くことができれば日大も得点できるはず。だが、FWからの球出しが安定しないこともあるが、ルーキーSHには周りがよく見えていないと感じざるを得ないのが残念。突破役がいない状況なら、マイケルをFWに近い位置に立たせるオプションもあるのでは、とかついつい勝手なことを考えてしまう。

日大が攻めあぐむ状況の中で、早稲田はワンチャンスをものにする。22分、日大ゴール前のスクラムから8単で抜けてラックからオープンに展開しWTB鹿野がこの日2トライ目を挙げる。スイッチを切り替えてしっかり点が取れる早稲田は流石といったところだが、日大のディフェンスが弱いことも気になる。なかなか低くタックルには入れず、ヒットしてもはね飛ばされる。追いタックルで止める形なら必然的にボールは前に運ばれていく。GK成功で早稲田のリードは19点に拡がった。

得点板にはホームチームの方の得点のみが増えていく状況にあるのだが、一方的な展開に感じられないのがこの試合の不思議なところ。28分には日大がHWL付近でのラインアウトを起点としてボールを繋ぎ早稲田のゴール前に迫る。ここで早稲田に反則があり、日大は絶好のチャンスを掴む。だが、ここで日大は早稲田ファンもびっくりのスクラムを選択する。ここまで日大は殆どスクラムをしっかりとは組ませてもらえない状況で圧倒されている。果たしてマイボールをあっさり失い、絶好の得点機を逃してしまった。「スクラムの日大」の看板が完全に下ろされてしまって早や何年という現実は取り繕いようがない。

前半も終盤にさしかかった34分、日大はマイケルの豪快な突破からフェイズを重ね、最後はHO小谷がゴールラインの突破に成功。GKは外れるが5点を返して日大は遅まきながら反撃体制に入る。しかし、その後がいけなかった。No.8高橋が自陣22m内からカウンターアタックを仕掛けるもののディフェンダーに捕まりボールを失う。早稲田はプレゼントされたような形のチャンスを活かしてCTB飯野がゴールラインを越えた。相手キックに対しては必ず反応できる位置にいる高橋だから起こったミスとも言えそうだが、無理に仕掛ける場面でもなく、結果的に重い失点となってしまった。前半は24-5と早稲田の19点リードで終了。



◆後半こそは爆発したい日大だったが

上井草は早稲田のホームグランドだけあって、日大サイドでも多くの早稲田ファンが観戦している。だが、後ろから聞こえてくるのは雑談モードの会話で、ラグビーに集中したい人間にとってはちょっと迷惑かな。とは言っても、早稲田ファンが肝を冷やす状況が起こるわけでもないのでそうなってしまうのも致し方ない。ピッチに立っている選手達が、日大のラグビーをアピールする絶好のチャンスを逃しているように見受けられるのが歯がゆい。

さて、リードを許しているとは言ってもまだ19点。相変わらずノックオンやパスミスを頻発させて観客席のため息を誘っているような早稲田だから、先に点を取れば逆転のチャンスは十分にある。早稲田は後半からCTBの藤近に替えて水野を投入。法政戦でも途中出場ながら存在感を見せた水野がここでも力を発揮する。日大のキックオフに対するカウンターアタックでFB滝沢からパスを受けた水野がボールを前に大きく運び、再びパスを受けた滝沢がゴールラインを越えた。手元のストップウォッチはまだ1分を指していない中での電光石火の追加点で31-5と早稲田のリードは26点に拡がった。法政戦でも感じたことだが、水野にはチームの空気を変える力がありそうだ。おそらく、今後も出場機会が増えていくような気がする。

お互いにピリッとしないなかで時計が進むが、12分にようやく日大の得点ボードが動いた。日大がPKからの連続攻撃でボールを前に運び、最後はLO館山がゴールラインを越えた。ここで、リンクプレーヤーとして機能したのがNo.8高橋だった。2年生だった昨年度から既に日大FWの中心選手として活躍している選手。サイズはないものの、シャープな動きで攻守にキレを見せる。ただ、前半のカウンターアタックの失敗に見られるように、回りの選手とうまくコミュニケーションが取れていないようにみえるのが気になる。

マイケルのGKはポストに弾かれるものの一矢報いた日大のビハインドは21点となる。残り時間から考えたら、あきらめるのは早いし、日大の選手は頑張っていることもわかる。でも、どこか空回りしているように感じるのは気のせいだろうか。選手達のプレーからは「逆転してやるぞ!」という熱い湯気のような熱気が伝わってこないのである。元来、日大はピッチ上もスタンド上もクールなチームだが、それをより強く感じることになってしまおうとは。

以後、30分くらいまではシンビンによる一時退場者が出たこともあり、日大が自陣を背にして耐える時間帯となる。逆に30分以降から試合終了までは日大が攻勢に出て早稲田が背水の陣を敷く形となった。しかしながら、両チームとも目の前に見えているはずのゴールラインが果てしなく遠い。終了間際の日大のチャンスもインゴールノックオン。結局、試合はそのまま終了した。後半に限っては5-7で、その早稲田の7点もキックオフ直後の1分にも満たない間に記録されたもの。ホームチームの勝利で事なきを得た感じだが、お互いに意図不明なプレーも多く、早稲田、日大とも課題山積かつ前途多難を想わせる試合となってしまった。

◆Bチームの練習マッチを眺めながら

Aチームの公式戦の後はBチーム同士による練習マッチが行われるのが春季大会のお約束ごとになっている。それは、対抗戦Gとリーグ戦Gの選手層の厚さの違いに起因する実力差がはっきりと示される時間帯でもある。A同士なら接戦なのに、B戦だと3ケタ失点の負けゲームになってしまうことも珍しくない。もしかしたらBの方が強いのでは思わせるくらいに戦力が充実しているのが対抗戦G上位校の強みだ。

しかしながら、日大Bはなかなか健闘している。というかむしろ押し気味に試合を進めている。SHの球裁きがいいこともあり、ボールをしっかり前に運ぶラグビーができている。もしかしたら勝てるかもと思わせるくらいの戦いができているのだ。ただ、詰めが甘いのはAチームと同じかそれ以上。あとは確実にボールをパスするだけというところでミスをしてしまうのは何故だろうか。逆に早稲田は一瞬の切り返しで素早くボールを運んで得点を重ねる。

そんな早稲田で印象に残った選手はSOの浅見。A戦ではリザーブとして後半35分から出場し、Bでスタメン出場となったわけだが、元気いっぱいのプレーを見せている。Bで頑張ればAに上がるチャンスも出てくるという試合でしっかりアピールしようとしている姿勢が感じられた。この辺りが早稲田他、多くのファンがいる対抗戦G所属校の力の源泉になっているのだろう。何ともうらやましい限りだ。



◆日大で気になったこと

内容とは裏腹にどんどんホームチーム側の得点が増えていく状況で、終盤は場所を移動して試合を観ることにした。タッチライン沿いで自分達のチームの試合をじっと観ている控え選手達の様子が気になったのだ。そして、そこで見てはいけないものを見てしまったような気がした。まず目に付いたのは、試合を観ながらも楕円球を弄んでいる選手が数名いたこと。

そして、控え選手達が築いたショッキングピンク(練習着の色)のカーテンの裏では、つい先ほどまでピッチ上に立っていた選手の何人かが談笑している。立ち位置はカーテンの裏だから当然Bチームの戦いを見ることはできない。これで何となくわかった。チームには何かが欠けていると言うことを。Bの選手達はチームメイトではあるが、Aの選手達にとってはライバルのはずだ。自分達よりいいプレーをしたらすぐに立場は逆転する。危機感が欠如しているとしか思えない。

帝京だったらこんなことはまず考えられない。筑波にしてもB戦の時にはベンチのAの選手から激しいゲキが飛んでいた。厳しい言い方になってしまうが、日大は戦わずして負けていた。強くなろうという気持ちがあるのなら、たとえ数は少なくても、期待感を胸に抱きながら観ているファンがいることに対して自覚を持ち、真摯にラグビーに取り組んで欲しい。
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