「法政対中央」の感想の前書きにも書いたように混迷とも言えそうなほどの混戦模様となっている今シーズンの関東大学ラグビー・リーグ戦グループ。これが各チーム安定したパフォーマンスを発揮してのものなら大歓迎なのだが、各チームの戦いぶりを見る限りそうではなさそうだ。今シーズンが混戦模様となったひとつの要因として挙げられるのは、現時点でリーグ戦Gを引っ張っていく立場にあるはずの東海大と流経大がピリッとしないこと。両チームとも、1部昇格(東海大は復帰だが)によりリーグ戦グループに新風を吹き込んだことは間違いない。それからもう10年以上経っているのだから帝京のような横綱になっていてもおかしくないはずだ。しかしながら、意外なほど経験値による積み上げがなく、毎年毎年が勝負のような状況になっているのが不思議と言えば不思議。長期指導体制が確立しているのに何故?とどうしても考えてしまう。
「安定しない」という意味でとくに残念な状況にあるのは東海大だと思う。緒戦で立正大に圧勝したものの後半に食い下がられて快勝とは行かず、中央大戦では組織力の差が出て完敗。この試合の反省を機に臨んだ日大戦では終始攻め続けて現時点でリーグ最多得点の圧倒的な勝利を収めた。だが、「だから大丈夫!」とはいかないのが今シーズンの東海大の難しいところだと思う。日大戦は明らかに出来すぎで、もし序盤のギャンブルとも言えるアタックをしっかり止められたら手詰まりになっていた可能性がないとは言い切れない。春のセブンズからずっと観てきて、切り札となる選手が多い割には精神面での脆さがあり、今一歩信じきれないところがある。そんなチームの状態が日大戦で一気に改善されたのかどうかは怪しいし、そのことが試されるのがこの試合になるだろう。
一方の拓大も、優勝争いに絡むことが期待されながら開幕からまさかの3連敗。トップを目指すどころか、入替戦回避が喫緊の目標になりつつある危機的な状況にある。その理由(去年との違い)については「大東大戦の感想」で書いたので繰り返さないが、フィジカル面よりもメンタル的な要素の部分が大きいような印象を受ける。リーグ戦Gでも体格面で劣勢を強いられるであろうことは十分に分かっていたはずだし、その部分を創意工夫とチーム内で共有された危機意識で克服したのが昨シーズンだったはず。フィジカル面で言えば、むしろ今シーズンは昨シーズンよりも向上していると春には感じてきただけに、意外であり残念でもあるのだ。本日の相手は日大戦の勝利で勢いづく東海大だが、強豪に力一杯向かい合うことでチーム建て直しのきっかけを掴んで欲しい。そして、もちろん目指すところは(劣勢が予想されても)今期の初勝利をもぎ取ること。そのためにも中央大の東海大に対する戦い方を参考にチーム一丸となって欲しい。
◆キックオフ前の雑感
まずは東海大のメンバーをチェック。この試合も坂尻主将が16番の背番号を付けてスタメンを外れたのが目を惹くが、LOが中嶋から李に変わった以外は日大戦と変更なし。今後はこのメンバーでほぼ固定されて戦っていくことになるのだろうか。そういった意味でも相手が手負いの拓大とは言え、安定したパフォーマンスを示したいところ。そうでなければまだまだ希望が残っている優勝争いから脱落してしまうことになる。サッカーに例えれば「中盤省略型」に陥ることなく、手続きを踏んでいい形でバックスリーにボールを渡して得点を重ねていくようなラグビーを期待したい。
拓大の注目点はウヴェがFLからLOに移動したことと、SOに松崎が起用されたこと。ウヴェに関しては、性格的にも切り込み隊長的な役割が求められる3列よりは2列の方が向いていると感じてきただけに、FWの中核に据えることでチームを落ち着かせたいところ。また、SOはCTBに移動したステイリンの穴を埋めきれていないが、そろそろ決定打を出したいところだ。ステイリンを(今シーズンに指向しているプレースタイルと思われる)オープン展開の要と位置づけている以上、彼を簡単にSOに戻すことも出来ないだろう。あとは成長著しいCTB山谷の突破力を活かしたい。
◆前半の戦い/着実にリードを拡げるもののピリッとしない東海大
キックオフからエンジン全開で猛攻を仕掛けトライの山を築いたのが日大戦での東海大だった。しかしながら、爆勝に安心してしまったのか、序盤からピリッとしない。BKに展開したときにパスミスが相次ぎ、チャンスをなかなか活かせない。3分には拓大の反則から拓大ゴール前でラインアウトのチャンスを掴むが、オープンに展開したところでWTB小原が(それがなければトライだった)ノックオンを犯し東海大応援席のため息を誘う。イージーとも言えるミスの連発には、首脳陣も頭を抱えるしかなかっただろう。やはり今年のチームはメンタル面でのコントロールが難しいところがありそう。
ミスでチャンスを潰す状況が続く東海大に対し、拓大は9分にワンチャンスをものにして先制点を奪う。東海大陣10m付近のラインアウトを起点としたアタックは蹴り合いとなるものの、拓大はカウンターアタックから東海大陣に攻め込みグラバーキックをCTB山谷がインゴールで抑えた。GKは失敗したが拓大が幸先良く5点リードとなった。やはり「試合への入りが悪い東海大」は払拭できないのかと思わせる、東海大ファンにとっては一抹の不安を抱かせる立ち上がりだった。
しかし、ミスが多い展開でも地力に勝るのは東海大の方。16分にWTB石井が快走を見せてトライを奪いGKも決まり7-5と東海大は逆転に成功する。リスタートのキックオフからしばらくは拓大が東海大陣に攻め込むものの決定打が打てない。自信を持っているはずのスクラムの場面も多かったが殆ど押せなかったのは誤算だったかも知れない。18分の東海大22m内でのラインアウトのチャンスもモールに拘ったが押し切れない。ただ、BKでオープンに展開した時のアタックの流れはよく、あとは突破役が居ればという状態になってきた。
試合が日大戦とは全く違って膠着状態となる中、東海大は29分にようやく追加点を挙げる。拓大の反則で得た拓大ゴール前でのラインアウトからオープンに展開し、ライン参加したLOのタタナがインゴールに飛び込んだ。GKも成功し14-5とリードを拡げる。東海大はたたみかける。34分にも同じように拓大の反則で掴んだ拓大ゴール前ラインアウトのチャンスからオープン展開の連続攻撃でFB近藤がゴールラインを越えた。GK成功で21-5と空回り気味だった東海大が一気にペースを掴む。
拓大は自陣で犯した反則が相手ボールのラインアウトを経てことごとく失点に繋がり、東海大陣に攻め込んでも反則でチャンスを潰す悪い流れから脱することが出来ない。結局この日は東海大の倍の14反則と、例年なら反則が少ない拓大らしからぬ展開。反則が多いことが今シーズンの拓大不振の要因のひとつであることは間違いなさそうだ。逆に言うと、反則せざるを得ない状態に追い込まれているとも言える。東海大は前半終了間際の43分にSO野口が右中間の10mライン付近からのPGを成功させて3点を追加し24-5で前半が終了した。イージーミスが相次ぐ中、拓大に先制点を許したことで一抹の不安を抱かせた東海大ファンにとってはほっと一息の前半の戦いぶりだった。
◆後半の戦い/圧勝ムードの中にもやはりちぐはぐだった東海大
後半は巻き返しを図りたい拓大だったが、開始早々から怒涛の攻めを見せたのは東海大の方だった。おそらく前半の内容に対し、首脳陣から相当ネジを巻かれたのかも知れない。タテ糸(FWのタテ攻撃)とヨコ糸(BKのワイドなオープン展開)がテンポ良くかみ合った東海大にしては珍しい形の攻めではあるが、もちろんこんな攻撃が出来たら東海大は鬼に金棒。東海大はバックスリーで決めようとする意識が強すぎるためか、どうしても早く彼ら(バックスリー)にボールを渡そうと急ぎ勝ちの傾向(冒頭で言及した中盤省略型)がある。しかしながら、当然対戦相手もバックスリーの動きは徹底マークしており、単発で抜くことはむつかしい。大学選手権対策というわけでもないが、地道に継続して相手が数的不利になりマークしきれなくなった状況で決めるという形を作ることが必要だと思う。このような、タテヨコのアタックも有効なオプションとなるだろう。
しかし、この怒涛の攻めも実らず、東海大が攻め続けるような状況にはならない。またしばらくは拓大が東海大陣で攻め続ける状況が続く。6分には東海大ゴール前でのラインアウトからFW周辺で攻め込むものの惜しくもラックでオフサイド。東海大はピンチを逃れたかに見えたが、ラインアウトからオープンに攻めたところで拓大の激しいタックルに遭ってノットリリースの反則を犯す。ここでステイリンが正面やや右38mのPGを決めて8-24とビハインドを16点に縮めた。
東海大がペースダウンしてもたつく間に拓大はさらに得点のチャンスを掴む。14分、拓大の自陣22m内からのPKがノータッチとなり東海大が逆襲するがチェイスしたステイリンがボールをもぎ取って独走態勢に入りゴールを目指す状況となる。東海大選手達の必至の戻りがありステイリンはタックルに遭ってボールを前にこぼすが拓大は勢いに乗る。17分には東海大陣22m付近でのラインアウトからモールを形成して前進し、ウヴェが抜け出してフォロワーにパスを送るが惜しくもタッチアウト。19分にもラインアウトを起点としたオープン展開からゴールを目指すものの、ラックでノットロールアウェイと痛い反則が続きなかなか東海大のDFを破ることが出来ない。
東海大がリードを保っているもののなかなか追加点が奪えない状況にストレスが溜まる一方の東海大だったが、ワンプレーをきっかけに得点を奪う。自陣22m内のスクラムでSH湯本がスクラムサイドを一気に抜けて90m近く独走し、最後はフォローしたPR3の平野がゴールラインを越えた。時間にして28分で31-8と東海大のリードは23点に拡がり、ここで勝敗は決した。しかし、4連敗のランプが点灯し始める中、拓大もこのままで終わるわけにはいかない。31分、HWL付近からやや東海大陣に入って位置で組まれたセンタースクラムからのオープン攻撃でステイリンがラインブレイクに成功し、スピードに乗ってライン参加したFB山本に絶妙のタイミングでパスを渡す。山本が走り込んできたアングルもよく、東海大DFも反応できずに山本はあっさりとゴールラインを越えた。GKも成功で15-31と拓大は食い下がる。ようやく拓大の目指すオープン展開からの得点パターンのひとつが見えた。突破力のある選手が少ない拓大はコンビネーションの良さが生命線であり、そこでキープレーヤーになるのはCTBでボールをしっかり保持できるステイリンという構図。
残り時間10分を切った状況での16点リードは安心して良い点差だが、後半だけとはいえ相手にリードされて終わるわけにはいかない東海大。38分にはゴール前でのラインアウトからモールを形成して強力に押し込む。ボールがゴーラインを越えたところで東海大がグラウンディングに成功したかに見えたがレフリーの判定はパイルアップ。しかし、タッチジャッジのアピールでトライが認められ36-15となる。
逆転勝利は絶望的となった拓大だが、終了間際に一矢報いる。東海大陣スクラムからの連続攻撃で粘り強くボールを繋ぎ、最後はウヴェがボールをインゴールにねじ込んだ。ステイリンのGKが成功して22-36となったところで試合終了。拓大にとっては残念な結果(4連敗)となってしまったが、ここでようやくウヴェが1本取ったことは大きい。トライには至らなかったが、敵陣ゴール前のラインアウトの場面でモールの最後尾にボールを持ったウヴェが付くという必殺パターンの「ウヴェ・スペシャル」も久しぶりに見られたこの試合。試合を終えた後のウヴェが今まで一番いい表情になっていたように見えたところに「救い」のようなものを感じた。
◆頑張れキャプテン!
日大戦とはうって変わってスカッと快勝とは行かなかった東海大だが、それは別にしても気になる場面があった。それはこの試合も日大戦に続き終了間際(38分)に登場した16番を付けたキャプテンのこと。日大戦ではひとり歓喜の輪の中に入りづらいような様子だったのが痛々しかったが、この日も勝敗が完全に決してからのご苦労さん交代に近い形。やっぱり表情は冴えないようにどうしても見えてしまう。日大戦では自分が出ていない状態で最高のパフォーマンスをチームメートが見せたのだから、キャプテンとして何かを言うのはむつかしい状況に措かれているであろうことは想像に難くない。
しかし、中央大戦敗戦の原因はキャプテン1人にあるわけではない。出場選手の実績の有無にかかわらず、現在のチーム状態はメンタル面のコントロールがむつかしい状況にあるのかも知れない。日大戦の勝利は中央大に敗れたことに対する反省からのある種の開き直りから生まれたとも言える。キックオフ直後から起爆剤になり続けた小原のプレーを観てそんなことを思った。東海大の問題点はもっと深いところにあるように思う。ラグビーマガジンの付録に付いている東海大の選手名鑑を見ると明らかだが、東海大は実に多くのコーチングスタッフによってチームが支えられていることがわかる。言い方を変えれば、選手の一挙手一頭足に大使て多くのコーチの目が光っているわけだ。
今シーズンに限らないことだが、東海大の選手達がしばしばピッチ上でプレーの選択に迷う状況が散見される。このことはとくに「突発事象」が発生した場合に顕著となり、例えばだが、瞬時にして適切な状況判断ができそれが15人であっという間に共有されてしまう帝京との大きな差を感じる部分でもある。もしかしたら、選手達には局面局面でコーチ陣のことが脳裏に浮かぶような状況になっているのかも知れないと感じるのだ。ピッチ上では自分を信じてプレーすればいいのだが、そのための普段のトレーニングが不足しているとしたら簡単にはいかない。
それはさておいても、たとえ16番を付けて終了間際に登場するような状況になっているとは言え、キャプテンはキャプテン。このような安定しないようなチーム状態だからこそ、ピッチの外にいる時間帯が長くてもやれることがあるはずだし、必要とされる状況がでてくるはず。いい例かどうかは分からないが、昨シーズンの拓大は19番を付けた選手が主将だった。完全固定メンバーで交代出場の機会も少ない状況にあってもけして彼の存在感は小さくなかったと思う。だから、あえて言いたい。チームも自身も厳しい状況だからこそ、「頑張れ、キャプテン!」と。
◆4連敗ながら一筋の光明が見えた拓大
遂に4連敗となり入替戦が視界に入ってきた拓大。だが、選手達の表情は大東大戦よりも晴れやかだったように見えたのは気のせいだろうか。もちろん開き直りでもない。この試合では、結局リザーブのメンバーがピッチ上に立つことなく15人で試合を戦え終えることができたことが最大の収穫だったと思う。余談だが、知人の東海大関係者も、「アタックは断然拓大の方が魅力的だった。」と感想を述べていたが、私も同意見。やりたいことがようやくハッキリと見えてきたのがこの試合だ。
拓大の目指すスタイルはオープンかつワイドな展開に拘るが故に、FW第3列には運動量が豊富な人材が必要となる。ウヴェがFWの中心に位置するLOの方が機能するのは性格的な面だけでなく、チームが指向するラグビーとも合致していると思う。あと、茂野と松崎で組むHB団の動きもBK攻撃を機能させる上で有効だったように思われる。とくにSOはステイリンの穴を埋める形で試行錯誤が続いたが、おそらくHB団はこのコンビで決定ではないだろうか。拓大は上位キープが困難な状況にはなっているが、残り試合を3連勝する気持ちで頑張って欲しい。
「安定しない」という意味でとくに残念な状況にあるのは東海大だと思う。緒戦で立正大に圧勝したものの後半に食い下がられて快勝とは行かず、中央大戦では組織力の差が出て完敗。この試合の反省を機に臨んだ日大戦では終始攻め続けて現時点でリーグ最多得点の圧倒的な勝利を収めた。だが、「だから大丈夫!」とはいかないのが今シーズンの東海大の難しいところだと思う。日大戦は明らかに出来すぎで、もし序盤のギャンブルとも言えるアタックをしっかり止められたら手詰まりになっていた可能性がないとは言い切れない。春のセブンズからずっと観てきて、切り札となる選手が多い割には精神面での脆さがあり、今一歩信じきれないところがある。そんなチームの状態が日大戦で一気に改善されたのかどうかは怪しいし、そのことが試されるのがこの試合になるだろう。
一方の拓大も、優勝争いに絡むことが期待されながら開幕からまさかの3連敗。トップを目指すどころか、入替戦回避が喫緊の目標になりつつある危機的な状況にある。その理由(去年との違い)については「大東大戦の感想」で書いたので繰り返さないが、フィジカル面よりもメンタル的な要素の部分が大きいような印象を受ける。リーグ戦Gでも体格面で劣勢を強いられるであろうことは十分に分かっていたはずだし、その部分を創意工夫とチーム内で共有された危機意識で克服したのが昨シーズンだったはず。フィジカル面で言えば、むしろ今シーズンは昨シーズンよりも向上していると春には感じてきただけに、意外であり残念でもあるのだ。本日の相手は日大戦の勝利で勢いづく東海大だが、強豪に力一杯向かい合うことでチーム建て直しのきっかけを掴んで欲しい。そして、もちろん目指すところは(劣勢が予想されても)今期の初勝利をもぎ取ること。そのためにも中央大の東海大に対する戦い方を参考にチーム一丸となって欲しい。
◆キックオフ前の雑感
まずは東海大のメンバーをチェック。この試合も坂尻主将が16番の背番号を付けてスタメンを外れたのが目を惹くが、LOが中嶋から李に変わった以外は日大戦と変更なし。今後はこのメンバーでほぼ固定されて戦っていくことになるのだろうか。そういった意味でも相手が手負いの拓大とは言え、安定したパフォーマンスを示したいところ。そうでなければまだまだ希望が残っている優勝争いから脱落してしまうことになる。サッカーに例えれば「中盤省略型」に陥ることなく、手続きを踏んでいい形でバックスリーにボールを渡して得点を重ねていくようなラグビーを期待したい。
拓大の注目点はウヴェがFLからLOに移動したことと、SOに松崎が起用されたこと。ウヴェに関しては、性格的にも切り込み隊長的な役割が求められる3列よりは2列の方が向いていると感じてきただけに、FWの中核に据えることでチームを落ち着かせたいところ。また、SOはCTBに移動したステイリンの穴を埋めきれていないが、そろそろ決定打を出したいところだ。ステイリンを(今シーズンに指向しているプレースタイルと思われる)オープン展開の要と位置づけている以上、彼を簡単にSOに戻すことも出来ないだろう。あとは成長著しいCTB山谷の突破力を活かしたい。
◆前半の戦い/着実にリードを拡げるもののピリッとしない東海大
キックオフからエンジン全開で猛攻を仕掛けトライの山を築いたのが日大戦での東海大だった。しかしながら、爆勝に安心してしまったのか、序盤からピリッとしない。BKに展開したときにパスミスが相次ぎ、チャンスをなかなか活かせない。3分には拓大の反則から拓大ゴール前でラインアウトのチャンスを掴むが、オープンに展開したところでWTB小原が(それがなければトライだった)ノックオンを犯し東海大応援席のため息を誘う。イージーとも言えるミスの連発には、首脳陣も頭を抱えるしかなかっただろう。やはり今年のチームはメンタル面でのコントロールが難しいところがありそう。
ミスでチャンスを潰す状況が続く東海大に対し、拓大は9分にワンチャンスをものにして先制点を奪う。東海大陣10m付近のラインアウトを起点としたアタックは蹴り合いとなるものの、拓大はカウンターアタックから東海大陣に攻め込みグラバーキックをCTB山谷がインゴールで抑えた。GKは失敗したが拓大が幸先良く5点リードとなった。やはり「試合への入りが悪い東海大」は払拭できないのかと思わせる、東海大ファンにとっては一抹の不安を抱かせる立ち上がりだった。
しかし、ミスが多い展開でも地力に勝るのは東海大の方。16分にWTB石井が快走を見せてトライを奪いGKも決まり7-5と東海大は逆転に成功する。リスタートのキックオフからしばらくは拓大が東海大陣に攻め込むものの決定打が打てない。自信を持っているはずのスクラムの場面も多かったが殆ど押せなかったのは誤算だったかも知れない。18分の東海大22m内でのラインアウトのチャンスもモールに拘ったが押し切れない。ただ、BKでオープンに展開した時のアタックの流れはよく、あとは突破役が居ればという状態になってきた。
試合が日大戦とは全く違って膠着状態となる中、東海大は29分にようやく追加点を挙げる。拓大の反則で得た拓大ゴール前でのラインアウトからオープンに展開し、ライン参加したLOのタタナがインゴールに飛び込んだ。GKも成功し14-5とリードを拡げる。東海大はたたみかける。34分にも同じように拓大の反則で掴んだ拓大ゴール前ラインアウトのチャンスからオープン展開の連続攻撃でFB近藤がゴールラインを越えた。GK成功で21-5と空回り気味だった東海大が一気にペースを掴む。
拓大は自陣で犯した反則が相手ボールのラインアウトを経てことごとく失点に繋がり、東海大陣に攻め込んでも反則でチャンスを潰す悪い流れから脱することが出来ない。結局この日は東海大の倍の14反則と、例年なら反則が少ない拓大らしからぬ展開。反則が多いことが今シーズンの拓大不振の要因のひとつであることは間違いなさそうだ。逆に言うと、反則せざるを得ない状態に追い込まれているとも言える。東海大は前半終了間際の43分にSO野口が右中間の10mライン付近からのPGを成功させて3点を追加し24-5で前半が終了した。イージーミスが相次ぐ中、拓大に先制点を許したことで一抹の不安を抱かせた東海大ファンにとってはほっと一息の前半の戦いぶりだった。
◆後半の戦い/圧勝ムードの中にもやはりちぐはぐだった東海大
後半は巻き返しを図りたい拓大だったが、開始早々から怒涛の攻めを見せたのは東海大の方だった。おそらく前半の内容に対し、首脳陣から相当ネジを巻かれたのかも知れない。タテ糸(FWのタテ攻撃)とヨコ糸(BKのワイドなオープン展開)がテンポ良くかみ合った東海大にしては珍しい形の攻めではあるが、もちろんこんな攻撃が出来たら東海大は鬼に金棒。東海大はバックスリーで決めようとする意識が強すぎるためか、どうしても早く彼ら(バックスリー)にボールを渡そうと急ぎ勝ちの傾向(冒頭で言及した中盤省略型)がある。しかしながら、当然対戦相手もバックスリーの動きは徹底マークしており、単発で抜くことはむつかしい。大学選手権対策というわけでもないが、地道に継続して相手が数的不利になりマークしきれなくなった状況で決めるという形を作ることが必要だと思う。このような、タテヨコのアタックも有効なオプションとなるだろう。
しかし、この怒涛の攻めも実らず、東海大が攻め続けるような状況にはならない。またしばらくは拓大が東海大陣で攻め続ける状況が続く。6分には東海大ゴール前でのラインアウトからFW周辺で攻め込むものの惜しくもラックでオフサイド。東海大はピンチを逃れたかに見えたが、ラインアウトからオープンに攻めたところで拓大の激しいタックルに遭ってノットリリースの反則を犯す。ここでステイリンが正面やや右38mのPGを決めて8-24とビハインドを16点に縮めた。
東海大がペースダウンしてもたつく間に拓大はさらに得点のチャンスを掴む。14分、拓大の自陣22m内からのPKがノータッチとなり東海大が逆襲するがチェイスしたステイリンがボールをもぎ取って独走態勢に入りゴールを目指す状況となる。東海大選手達の必至の戻りがありステイリンはタックルに遭ってボールを前にこぼすが拓大は勢いに乗る。17分には東海大陣22m付近でのラインアウトからモールを形成して前進し、ウヴェが抜け出してフォロワーにパスを送るが惜しくもタッチアウト。19分にもラインアウトを起点としたオープン展開からゴールを目指すものの、ラックでノットロールアウェイと痛い反則が続きなかなか東海大のDFを破ることが出来ない。
東海大がリードを保っているもののなかなか追加点が奪えない状況にストレスが溜まる一方の東海大だったが、ワンプレーをきっかけに得点を奪う。自陣22m内のスクラムでSH湯本がスクラムサイドを一気に抜けて90m近く独走し、最後はフォローしたPR3の平野がゴールラインを越えた。時間にして28分で31-8と東海大のリードは23点に拡がり、ここで勝敗は決した。しかし、4連敗のランプが点灯し始める中、拓大もこのままで終わるわけにはいかない。31分、HWL付近からやや東海大陣に入って位置で組まれたセンタースクラムからのオープン攻撃でステイリンがラインブレイクに成功し、スピードに乗ってライン参加したFB山本に絶妙のタイミングでパスを渡す。山本が走り込んできたアングルもよく、東海大DFも反応できずに山本はあっさりとゴールラインを越えた。GKも成功で15-31と拓大は食い下がる。ようやく拓大の目指すオープン展開からの得点パターンのひとつが見えた。突破力のある選手が少ない拓大はコンビネーションの良さが生命線であり、そこでキープレーヤーになるのはCTBでボールをしっかり保持できるステイリンという構図。
残り時間10分を切った状況での16点リードは安心して良い点差だが、後半だけとはいえ相手にリードされて終わるわけにはいかない東海大。38分にはゴール前でのラインアウトからモールを形成して強力に押し込む。ボールがゴーラインを越えたところで東海大がグラウンディングに成功したかに見えたがレフリーの判定はパイルアップ。しかし、タッチジャッジのアピールでトライが認められ36-15となる。
逆転勝利は絶望的となった拓大だが、終了間際に一矢報いる。東海大陣スクラムからの連続攻撃で粘り強くボールを繋ぎ、最後はウヴェがボールをインゴールにねじ込んだ。ステイリンのGKが成功して22-36となったところで試合終了。拓大にとっては残念な結果(4連敗)となってしまったが、ここでようやくウヴェが1本取ったことは大きい。トライには至らなかったが、敵陣ゴール前のラインアウトの場面でモールの最後尾にボールを持ったウヴェが付くという必殺パターンの「ウヴェ・スペシャル」も久しぶりに見られたこの試合。試合を終えた後のウヴェが今まで一番いい表情になっていたように見えたところに「救い」のようなものを感じた。
◆頑張れキャプテン!
日大戦とはうって変わってスカッと快勝とは行かなかった東海大だが、それは別にしても気になる場面があった。それはこの試合も日大戦に続き終了間際(38分)に登場した16番を付けたキャプテンのこと。日大戦ではひとり歓喜の輪の中に入りづらいような様子だったのが痛々しかったが、この日も勝敗が完全に決してからのご苦労さん交代に近い形。やっぱり表情は冴えないようにどうしても見えてしまう。日大戦では自分が出ていない状態で最高のパフォーマンスをチームメートが見せたのだから、キャプテンとして何かを言うのはむつかしい状況に措かれているであろうことは想像に難くない。
しかし、中央大戦敗戦の原因はキャプテン1人にあるわけではない。出場選手の実績の有無にかかわらず、現在のチーム状態はメンタル面のコントロールがむつかしい状況にあるのかも知れない。日大戦の勝利は中央大に敗れたことに対する反省からのある種の開き直りから生まれたとも言える。キックオフ直後から起爆剤になり続けた小原のプレーを観てそんなことを思った。東海大の問題点はもっと深いところにあるように思う。ラグビーマガジンの付録に付いている東海大の選手名鑑を見ると明らかだが、東海大は実に多くのコーチングスタッフによってチームが支えられていることがわかる。言い方を変えれば、選手の一挙手一頭足に大使て多くのコーチの目が光っているわけだ。
今シーズンに限らないことだが、東海大の選手達がしばしばピッチ上でプレーの選択に迷う状況が散見される。このことはとくに「突発事象」が発生した場合に顕著となり、例えばだが、瞬時にして適切な状況判断ができそれが15人であっという間に共有されてしまう帝京との大きな差を感じる部分でもある。もしかしたら、選手達には局面局面でコーチ陣のことが脳裏に浮かぶような状況になっているのかも知れないと感じるのだ。ピッチ上では自分を信じてプレーすればいいのだが、そのための普段のトレーニングが不足しているとしたら簡単にはいかない。
それはさておいても、たとえ16番を付けて終了間際に登場するような状況になっているとは言え、キャプテンはキャプテン。このような安定しないようなチーム状態だからこそ、ピッチの外にいる時間帯が長くてもやれることがあるはずだし、必要とされる状況がでてくるはず。いい例かどうかは分からないが、昨シーズンの拓大は19番を付けた選手が主将だった。完全固定メンバーで交代出場の機会も少ない状況にあってもけして彼の存在感は小さくなかったと思う。だから、あえて言いたい。チームも自身も厳しい状況だからこそ、「頑張れ、キャプテン!」と。
◆4連敗ながら一筋の光明が見えた拓大
遂に4連敗となり入替戦が視界に入ってきた拓大。だが、選手達の表情は大東大戦よりも晴れやかだったように見えたのは気のせいだろうか。もちろん開き直りでもない。この試合では、結局リザーブのメンバーがピッチ上に立つことなく15人で試合を戦え終えることができたことが最大の収穫だったと思う。余談だが、知人の東海大関係者も、「アタックは断然拓大の方が魅力的だった。」と感想を述べていたが、私も同意見。やりたいことがようやくハッキリと見えてきたのがこの試合だ。
拓大の目指すスタイルはオープンかつワイドな展開に拘るが故に、FW第3列には運動量が豊富な人材が必要となる。ウヴェがFWの中心に位置するLOの方が機能するのは性格的な面だけでなく、チームが指向するラグビーとも合致していると思う。あと、茂野と松崎で組むHB団の動きもBK攻撃を機能させる上で有効だったように思われる。とくにSOはステイリンの穴を埋める形で試行錯誤が続いたが、おそらくHB団はこのコンビで決定ではないだろうか。拓大は上位キープが困難な状況にはなっているが、残り試合を3連勝する気持ちで頑張って欲しい。