「熱闘」のあとでひといき

「闘い」に明け暮れているような毎日ですが、面白いスポーツや楽しい音楽の話題でひといき入れてみませんか?

流通経済大学 vs 日本大学(2012.09.29)の感想

2012-09-30 13:15:08 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
[キックオフ前の雑感]

毎試合、大胆な選手起用が話題になる関東学院だが、シーズン中のメンバー変更では遙かに上を行っていたのが数年前までの流経大だった。極端な場合だが、シーズンを通して各試合のメンバー表を見比べると、これが同じチームなのかと思われるくらいの激変ぶりを確認することも出来る。また、試合当日も試合会場で公式に配られるメンバー表が役に立たないことが多々あった。それも、選手の数がそれだけ揃っていることの裏付けにはなるのだが、試合ごとにコンセプトが異なるチーム編成となるわけで、必然的に結果も出ず悪循環に陥ってしまっている感があった。選手もモチベーションの維持が難しかっただろうと邪推する。

ここ数シーズンでそんなこともなくなってきているが、今シーズンは試合ごとにメンバーとポジションが変わることになりそうだ。ラグビーマガジンでは「選手層が薄いことに対する対策」という説明がなされているのだが、ちょっと控えめな言い方かなと思う。BKに個性的で能力の高い選手が揃うことでチーム戦術に選択の幅が拡がったという見方してもいいような気がする。緒戦のSOオペティ、CTB矢次、FB合谷をオプション1(手堅くFW周辺でボールを運ぶ)とすれば、本日のSO合谷、WTBリリダム、FB矢次(オープン展開でWTBで取る)はオプション2といえそう。実は、緒戦の終盤にもオプション2は実現しているが、時間も短く「予告編」みたいな感じだった。本来はWTBでフィニッシュにしたいのが流経大の目指すスタイルだと思うので、前回のようにWTBの走るチャンスが少ないラグビーにはならないことを期待したい。

対する日大は緒戦で関東学院を撃破しただけでなく、東海大にもアタック面(とくに創造性の面)で喰い下がりを見せ、着実なレベルアップを感じさせた。日大も昨年度に飛躍的に得点力をアップさせているが、それはSHにコンバートされた小川の卓越した個人能力によるところが大きかった。もちろん、小川のすぐ傍に地味ながらもリーグ戦で1、2の強力選手だったタカウが居たことも忘れてはならない。加藤HCが率いて4年目となる日大の今年の目標は、公的には大学選手権出場だと思うが、チームとしては小川への過度の依存をなくし、15人でゴールを目指すスタイルのラグビーだと思う。実際に東海大戦でもそんな状況が見て取れた。

さて、この試合の流経大の楽しみはフィジアンであるリリダムのオフロードパスも駆使した華麗なランニングによるトライ。新布陣の事実上のお披露目でトライを量産することが出来るだろうか。一方の日大は、SH小川を中心とした、こちらもオープン展開指向のランニングラグビー。パワーアップした瀧水に加え、1年生コンビのWTB早川とFB富樫も日大期待のトライゲッターとして成長を見せて欲しいところ。でも、BKがオープン展開でピッチを駆け巡るためにはFWからの活きたボールの供給が必要だ。イシレリのような巨艦こそ居ないが、流経大にはFL辻、No.8高森といった看板スターがおり、LOシオネは堅実な仕事人。FWのパワーなら東海大だが、まとまりとしての機動力は流経大に分があるように感じる。LOキテを除けば全体的に小粒の日大FWがどこまで踏ん張りを見せられるかに期待したい。

[前半の闘い]

日大のキックオフで試合開始。序盤から気合い十分の日大のアタックに流経大がタジタジとなる。開始早々から自陣ゴールを背にひたすら耐える展開は流経大も想定外だったのではないだろうか。受けてしまったと言うよりも、受けざるを得ない状態に陥る。日大のFWのモール、ラックを主体としたサイドアタックによる攻撃が続き、流経大はゴールライン付近で辛くも踏みとどまる。しかしながら、3分、日大の右PR高がボールをインゴールにねじ込むことに成功。小川のGKも成功し、日大が幸先よく先制点を挙げた。

日大の攻勢は続く。流経大は日大陣に入ることもできず、自陣22m内に釘付け状態となり、日大のFWを主体とした猛攻にひたすら耐える予想外の展開。ただ、流経大も巧みなモールディフェンスなどで最後の一線は割らせない。背水に陣を敷いた流経大の粘り強いディフェンスの前に、日大がノックオンなどのミスで自滅してしまう状況が続き、時計が15分を回る頃からようやく流経大が反撃に転じた。日大としては勢いのある段階でもう1トライ追加しておきたかったところ。序盤のチャンスで流経大に慌てさせるような展開になっていたらと惜しまれる。

ピンチを脱した流経大はペースを徐々に自分たちのほうに引き戻す。20分には得意とする相手ゴール前ラインアウトの場面からモールを形成して押し込み、最後はFL辻がグラウンディングに成功。SO合谷がGKも難なく成功し、試合は7-7と振り出しに戻った。合谷はプレースキックだけでなく通常のキックでも非凡なところを見せる。距離が出ることに加え、コントロールも正確で地域の獲得に大きな武器となっていた。こうなると流経大の選手達に落ち着きが出てくる。

流経大は27分には日大陣で得たPKのチャンスでショットを選択し、PGで3点を加点し10-7と逆転に成功した。流経大の攻勢はさらに続き、34分には日大ゴール前でのマイボールスクラムからNo.8高森がボールを持ち込みトライ。GK成功で17-7と流経大がリードを拡げた。昨年度まではFLとして辻とコンビを組み大活躍した高森はNo.8としても流経大の攻守の要としてさらに活躍の幅を拡げている。

両チームによるオープン展開を主体とするボールが大きく攻防が続く中で、17-7のまま前半が終了。日大のスタートダッシュが効かなかった形だが、その後の攻防を見てもお互いに一歩も譲らないほぼイーブンの内容が続く中、前半が終了した。流経大はこの布陣でもWTBまでボールが殆ど回らない状況が続いた。ひとつの理由は、高森や辻と言ったタテに強い選手が居る関係で流経大アタックの局面ではボールがFWで前に運ばれる場面が多かったこと。彼らの他にもFL6の今井やLO4の今野がいいランを見せていた。しかし極めつけはHO植村。168cmで107kgと身体の厚みと横幅の広さがとくに目立つ選手だが、なかなか器用なランでボールを前に運ぶのがうまい。どうやら今年も流経大はHOに素晴らしい人材を配することができたようだ。

繰り返しになるが、日大は優位に立った序盤にもうひとつ取れなかったのが痛かった。流経大とは対照的にオープンに展開してWTB勝負の日大だが、やはりSH小川のランが際立つ。また、すっかり司令塔に定着した下地の存在も大きい。今シーズンこそは怪我なく出場を続けて欲しいところだ。となると、やはりマイケルということになる。だいぶチームにフィットしてきたが、ボールを持ったときに期待に応えるだけのランをなかなか見せてくれない。チップキックを使うなど器用な所も見せてくれる選手だが、思いっきりの良さ(いい意味での強引さ)も欲しい所。ただ、ディフェンス面での貢献度は高く、大東大に居たマオことシオネ・テアウパのことを思い出してしまった。

[後半の闘い]

後半開始のキックオフで流経大にミスが出てしまった。ドロップキックはダイレクトタッチとなり、日大のセンタースクラムからリスタート。ここで、流経大に反則があり、日大は流経大ゴール前でのラインアウトのチャンスを掴む。ここでも流経大の抵抗に遭って得点にはなかなか結びつかないが、日大のボール支配は続く。そして7分、小川が魅せてくれた。流経大陣ラインアウトから日大がFWのサイドアタックでボールを中央付近に運ぶ。SH小川がオープンに展開しようとした瞬間にディフェンスに一瞬孔が出来たのを見逃さず、小川が巧みに身体をローリングしながらタックラーをかわしてゴール中央に到達。GKも決まり14-17と日大のビハインドは僅か3点に縮まった。とはいえ、流経大にとっては、キックオフが上手くいっていれば避けられたかも知れない失点で、やはりここは大切にしたいところ。

しかし流経大は落ち着いていた。流経大キックオフのボールは完全に着地点に到達していたリリダムがノックオンを犯して日大ボールスクラムとなるが、日大に痛いミスが出る。陣地を取りに行ったキックがダイレクトタッチとなり流経大が日大陣22mを目前にしてラインアウトのチャンスを掴む。ラインアウトのボールはオーバースローとなってしまうものの、SO合谷が巧み拾って前進しフォローした辻にパス。辻がさらにゲインしたところでNo.8高森が絶妙のラストパスを受け取った。リーグ戦GのFWで看板の第3列といえば、東海大の剛力トリオの面々の顔が思い浮かぶが、流経大にしなやかでスピードに乗った動きとパスワークにより得点できるトリオがあることも忘れてはならない。

再び24-14と流経大のリードが10点に拡がり、流経大に勢いが出てきた。SH小川の動きは当然マークされており、しかもFWのパワーの差の影響がじわじわと出てきて、日大はなかなかいい形が作れなくなっていく。競った試合は出来ているのだが、このあたりはまだ地力の差を感じる部分。日大はもう少しといったところか。17分にも流経大は合谷がPGを確実に決めて27-14とリードをさらに拡げる。18分のキックオフでは今度は日大に痛いミス(ダイレクトタッチ)が出てしまう。センタースクラムから流経大が継続して前進し日大陣22m内に到達。ここでSH児玉が抜け出したところにNo.8高森が内側に切れ込む。絶妙のタイミングでパスを受けた高森が大きくゲインし、外側にフォローしたSO合谷にラストパスを渡した。流経大が相変わらずWTBにボールが回る機会が少ないが、FWがタイミングよくフォローして前にボールを運ぶのでそれも致し方なしか。

32-14とほぼ勝利が確実になった30分、流経大はSOにオペティを投入。ただし、下げたのはシオネの方で、リリダムは残す形の強いていえばオプション3。おそらく日大のマイケル対策でリリダムを残したのだと思う。流経大は24分に1PGを追加して35-14とリードを21点差に拡げた。両チームがメンバーを入れ替える中で激しい攻防が続くが、その後は得点板が動くこともなく試合終了。日大は東海大戦に続き、またしても後半に突き放された形だが、FWのパワーアップもあり力負けした印象はなかった。もちろん、試合後の挨拶では健闘した日大の方により熱い拍手が贈られたことはいうまでもない。

[試合後の雑感]

選手起用に関して「いくつかの選択肢を持つこと」がキーワードの流経大だが、今日の闘いぶりを見る限り、オプション2の方が断然面白いラグビーになりそうだ。そして、今後はおそらく合谷がSOでスタメンになる機会が増えるような気がする。まったく物怖じした様子もなく、ボールを持ったら果敢に前を向き、コントロールされたロングキックでたびたびピンチを救うなど、恐るべきルーキーと言える。FWの大幅なメンバーチェンジの影響の克服と誰が司令塔になるかが大きな命題だった今期の流経大だが、どちらもほぼ解答が出たのではないだろうか。あとは、リーグ戦G連覇から悲願の国立を目指して頑張るだけだ。

シーズン序盤のしかも僅か1ヶ月間の昨年度3強との厳しい戦いで着実なパワーアップを見せてくれた日大への期待はますます高まる。東海大と流経大を相手にしても目立った負傷者が出なかったことは特筆に値すると思う。日大の目下のライバルはこちらも緒戦から好調を維持している中央大ということになるが、組織的な動きや基礎スキルの面では日大の方が上回っているので、今後3強の一角に食い込む可能性があるという意味では日大の方が可能性が高いかも知れない。上下間格差が危惧された今シーズンのリーグ戦Gだったが、日大や中央大がレベルアップし、法政が復活を果たすことでそれも縮まっていくようにと思う。今後の展開がますます楽しみになってきた。
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関東学院大学 vs 拓殖大学(2012.09.29)の感想

2012-09-30 09:59:33 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
[キックオフ前の雑感]

開幕2連敗と関東学院が苦しんでいる。緒戦は日大に7-43と思わぬ大敗を喫し、続く法政戦も12-29でいいところなく敗れた。今後の対戦相手のことを考えれば、この試合の相手となる拓大には負けられないはず。上位グループキープが絶望的となり、入替戦も現実味を帯びてくるから。しかしながら、今シーズンの関東学院の戦法を観ると、そういった現実は(表面上は)あまり意識していないように見える。緒戦の日大戦はキックどころかオープン展開をも封印してFW周辺の狭い地域での継続に拘った感があり、1、2年生を多く含む選手起用も含めて、勝利の追求を最優先にした戦いには見えなかった。

第2戦の法政戦では復帰組(?)を含むなどメンバーを大幅に入れ替えてファンを驚かせたが、今回はさらにメンバーやポジションの入れ替わりがある。このように、過去の関東学院からは考えられないような戦いが続く中で、ひとつ思ったことがある。選手個々の力が一番落ちている現状を直視し、あえて将来を見据えたチームの再構築・基盤づくりを首脳陣は試みているのではないだろうかということ。もちろん「勝利を目指すことを第一としない」とは口が裂けても言えないが、そんなショック療法のようなチーム改造への決意があるように見える。もしかしたら、この試合で毎試合事に選手起用が変わる理由が分かるかも知れない。ここがこの試合の関東学院に対する私的見どころだ。

一方の拓大は緒戦で大東大に圧勝したことで勢いに乗っている。というよりも、春シーズンからの取り組みの成果が形になって見えた戦いだったと言った方が正しいかも知れない。過去のイメージ(オープン展開への強い拘り、そして得点は高速ランナーの個人能力に託す)を払拭してしまうくらいにモデルチェンジした拓大だが、ブレなく新たな戦術に磨きをかけている。FWでボールを確実に前に運んでから機を見てオープンに展開する戦術を徹底させることで、自分たちよりも身体が大きくパワフルな相手に対抗しようとする戦法は拓大ならではの発想なのかも知れない。ただし、この戦術が成立するのも、FWにLOヘル、BKにSOステイリンといった核になる選手達が居るから。ただ、拓大は彼らに依存するラグビーは指向していない。一体感のあるいいチームが出来ていると思う。

スタメンに関しては上で触れたように、関東学院は大幅な入替、かつ大胆なポジション変更。元来、有望新人を登用して中核選手へと育て上げるのが関東学院方式だったが、それは会社に例えれば業績のいい大企業だからできること。現在は、何とかチームを活性化できる人材を探しているように目に映る。一方の拓大はリザーブも含めてまったく同じメンバーがスタメンに顔を並べる。このあたりにもチーム作りがうまくいっていることが伺われる。拓大に対する見どころは、いかにして関東学院からの勝利をもぎ取るかだ。

[前半の闘い]

台風の間接的な影響か、真夏を思わせる強い日差しのもと、関東学院のキックオフで試合開始。拓大の蹴り返しに対して関東学院がカウンターアタックを仕掛けるが、本日は迷わずオープン展開でWTBまでボールが回る。緒戦を観たものとしては、まったく別なチームを観ている感がある。ただし、特別なことはやらずにシンプルにオープンに回すだけで、ゲインラインは越えない位置でタックルに遭う。ここで、関東学院がオフサイド。メンバー&ポジションの変更があったせいか、ピッチに登場した関東学院の面々にはどこか自信なさそうな印象を受けたが、それが現実になった感じ。回しても抜けそうな感じがしないし、ブレイクダウンでは関東学院の選手がことごとく反則で最終的にこの日のペナルティは18を数えた。反則数が10を越えることは滅多になかったチームとは明らかに違うし、ここが関東学院の現状の力なのだろう。この日の関東学院を象徴する1シーンではあった。

拓大は、関東学院陣の10mラインを越える位置付近からのPKのチャンスでゴール前でのラインアウトを選択。拓大はモールを作って前進を図るが、モールを押し切る前に塊から飛び出したLOヘルが左サイドを抜けて(拍子抜けするくらいに)あっさりとゴールラインを越えた。GKは失敗するが5-0で拓大が先制。関東学院の選手達の間には動揺が拡がる。一番警戒していた相手のトライパターンによる失点で、しかも殆ど抵抗できずに取られてしまったから。正直、この段階ではこの試合で拓大は何点取るのだろうかと畏れを感じてしまったくらい。

リスタートのキックオフでは関東学院はターンオーバーに成功しながらも、オープン展開でまたしても捕まり反則を犯してチャンスを潰す。9分には、関東学院はスクラムから失点。拓大は8→9からパスを受けたFB山本が大きくゲインし、再びボールがSH岩谷に戻ったところで岩谷がギャップを突いて右中間にトライ。鮮やかな連携プレーとはいえ関東学院のディフェンスは対応できていない。今度はCTB山村のGKが成功し12-0となる。関東学院は本当にこのメンバーで大丈夫なのかと思わせる立ち上がりの拓大の鮮やかな1、2パンチだった。というか、たいした抵抗もなく取れたしまったことに驚いたのは拓大の方だったかも知れない。

今シーズンの拓大は関東学院同様に当初から苦しい戦いを強いられることが予想された。そんな危機感もあってか、プレーに工夫を加え、精度を上げていくことに心血を注いだようだ。例えばキックオフ。相手ボールの時はレシーバーが高くジャンプしてボールをキャッチし味方のサポートで確実にモールを組む。また、マイボールの時はFWの一人が落下点に素速く走り込んでボール獲得を試みる。ここでキーマンになっていたのがFL6の森。176cmと上背こそないが高いジャンプ力とガッツでボール奪取に成功した場面ではスタンドから大きな拍手が起こる。スクラムもプレッシャーをかけられることを想定してNo.8が股の下からSHにボールをアメフトスタイルで確実に渡す。けしてトリッキーなプレーではない。未だに漫然と同じ事を繰り返して失敗している上位校も、こういう姿勢は学ぶべきだろう。

話をピッチ上に戻す。なかなか目が覚めない(ように見える)関東学院を尻目に、拓大は畳みかける。13分、山村が正面25mのPGを決めてリードを13点に拡げる。しかし、ここで拓大にやや隙が出来たのか、関東学院の反撃を許す。16分、関東学院は拓大陣22m内でのラインアウトからモールを形成して押し込み前進したところでSH井上がショートサイドを駆け抜けてゴールラインを越えた。この日はSHではなくSOで起用された高城のGKも成功し関東学院が7点を返す。ここで関東学院にようやく落ち着きが出てきた。経験が豊富とは言えないメンバー構成ながら、試合中でもチーム状態を自分たちで修正できるDNAはしっかり受け継がれているようだ。

21分に拓大が関東学院ゴール前で得たPKのチャンスを活かしてFWが攻めてヘルがボールをインゴールにねじ込んで拓大が18-7とリードを拡げたところから試合は膠着状態となる。関東学院は徹底してオープン展開で攻めるのに対し、拓大はFWの周辺で手堅くボールを前に運ぶ。SOステイリンが安定していてキープ力があるため有効に機能しているが、大松が欠場していることもあり、ランで決めることができる選手はFB山本のみという現状では致し方ない。FWで纏まればヘルで確実に取れる形を作っているのも強み。

関東がオープン展開が接点でことごとく反則で途絶えて拓大にチャンスを与えるが、拓大もゴールを目前にしながらも攻めきれないなかでそのまま前半が終了。拓大が優位にあることは間違いないのだが、後半の体力勝負を挑めるだけのフィットネスがある関東学院にも挽回のチャンスはあるかも知れない。当初の危惧は薄れ、そんなことを想わせる前半の戦いだった。

[後半の闘い]

後半に逆転の望みを繋ぐ関東学院。キックオフ直後の相手のペナルティをきっかけに得たチャンスを活かし、拓大ゴール前で攻勢に出る。ラインアウトからモールを組んでゴールを目指すが、なかなか押し切れない。拓大のモールディフェンスの粘り勝ちとも言えそうだが、関東学院の塊でのパワー不足を感じずには居られない。8分にはHWL付近での拓大ラインアウトのボールが後ろに流れるところでいったんは関東学院がボールの確保に成功するが、こぼれ球でFB山本に拾われてそのまま被弾。GKも成功し、拓大が25-7とリードをさらに拡げる。

リスタートのキックオフで拓大に反則があり、関東学院は再び拓大陣ゴール前でラインアウトのチャンスを得る。しかしここもモールを押し切れない。さらにラインアウトのチャンスが続いたところで遂にBK選手も参加した12人モールとなるがこれも押し切れない。こういったプレーは(成功しないことも含めて)流経大の専売特許だったはずだったが...。そんな関東学院を尻目に拓大は自分たちの形で決める。15分、関東学院ゴール前でのラインアウトからモールを形成し、最後尾にはボールをガッチリ抱えたヘルが張り付く盤石の体制。モールを押し込んだところでヘルが隊列を離れて左隅に飛び込んだ。もちろん、決めたのはヘルだが、彼をモールの核にしないで確実に押し込んだ他のメンバーを褒めるべきだろう。

以前の拓大は、BKに高速ランナー達を揃え、彼らの卓越した能力といい意味での強引さで勝負していたチームだった。填まれば大量得点勝ちがある半面、集中力を欠いたとした思えないポカミスも多く、勝てる試合を落とすことも多かったチーム。しかし、今年のチームは違う。派手な飛び道具に頼ることはしないで、確実、堅実にプレーする形を作り上げている。たった1年でここまで変われることは驚き。適切なコーチングもさることながら、拓大より個々の高い選手を揃えたチームにも見倣って欲しいところだ。

後半半ばにして拓大が30-7とリード。ここで勝負ありと言いたかった。ところが、ここから新たなドラマが始まる。関東学院の大逆襲だ。拓大のラグビーは堅実だが一発で取るスタイルでないだけに、消耗も大きいはず。拓大の選手達の足が止まり始めたところで、関東学院のオープン展開を主体としたランニングラグビーが機能し始める。20分、ラックでのターンオーバーからの連続攻撃で左WTB高橋がゴール左にトライ。少し角度のある位置だったがSO高城が確実にGKを決めて14-30となる。関東学院に勢いが出てくる中で、30分には待望の!でもないが、12人ラインアウトからのトライが生まれる。グラウンディングしたのは何とWTBの佐々木だ。GK決まり21-30と拓大のお尻に火が付いてきた。しかし、ここで拓大を救ったのが自分たちで練り上げたプレー。マイボールキックオフのボールを関東学院陣内で捕獲に成功し連続攻撃で最後はヘルが決めた。GK成功で37-21と再び拓大が関東学院を突き放す。

このまま引き下がれない関東学院は最後の粘りを見せる。インジュリータイムに入る前の40分、拓大陣ゴール前でのラインアウトのチャンスからモールを押し込みトライ。ここでも、決めたのもWTB高橋だった。得点記録を見ただけだったら、関東学院らしいオープン展開で両WTBが3トライと誰もが思うことだろう。しかし、形は全然違うが2つは15人で取ったトライと言えなくもない。GKが決まって28-37となり、そのままノーサイドとなった。

関東学院にとってはあとがなくなった3連敗目となってしまったが、光明が見えた試合でもあったとも感じられた。ピッチ上から引き上げてくる選手達の表情は、キックオフ前に自信なさそうな表情からは一変していた。大学チームの強みかも知れないが、チームは1週間で変わる。そして時として試合中にも実戦を通じて成長を遂げることができる。もちろん、そこには厳しく適切なトレーニングの裏付けが必要なわけだが。少なくとも、試合後の関東学院は試合前の関東学院ではなくなっていた。悔しさもあると思うが、確かな手応えを掴んだかのような選手達の表情を見て、ある種の安堵感を持つことができた。

[試合後の雑感]

今シーズンの拓大はとてもよいチームに仕上がっている。過去のことはひとまず忘れて、新たなチームコンセプトのもと、地道にプレーを練り上げ、それが確実にこなせるように練習している。「練習は裏切らない」という言葉を何度も思い起こさせてくれた。今後に控える強豪チームの対戦にもこの勝利は大きな弾みになったものと思う。反省点を挙げれば、関東学院に付き合う形で増えていった反則の多さ。一桁台のことが多い拓大にあって12個は珍しい。あとは、リードを拡げた中盤以降に関東学院の連続攻撃を許す形になったディフェンスの整備だろうか。いずれにせよ、2つ連続で勝ったことで入替戦脱出は現実的となり、大学選手権も視野に入ってきた。このまま慢心せずに上を目指して突き進んで欲しい。

出場メンバー(それも遅れて発表された)を見て、関東学院はどうなってしまうのかと大いなる危惧を抱かせた試合。滑り出しはまさにそんな不安が的中しそうな状況だった。しかしながら、何とか持ちこたえて光明も見える形でフィニッシュに持ち込めた。やはり、緒戦からこの試合までは、相手の戦力も考慮に入れながら将来を見据えたプログラムの一環だったということだったのかも知れない。おそらく今日の戦いでチームコンセプトもメンバー構成も固まってきたことと思う。少なくても3つの戦いで、小手先勝負を挑まなかったことの成果が得られたのではないだろうか。今後は、FWとBKの連携とBKラインのコンビネーションの整備をテーマとしてチーム作りを行っていくものと考えられる。入替戦が現実的になった状況にはあるが、どんなラグビーが完成するのか楽しみなところもでてきた。地道に積み上げてきた基礎トレーニングの成果が出るのは、むしろこれからだ。
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第4節(09/29)の試合予定&みどころ

2012-09-28 00:43:08 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
○第4節の試合予定

  9月29日(土) 大東文化 vs 中央大学 13:00 味スタ西競技場
  9月29日(土) 関東学院 vs 拓殖大学 13:00 上柚木公園陸上競技場
  9月29日(土) 流通経済 vs 日本大学 15:00 上柚木公園陸上競技場

第4節を迎えるリーグ戦グループはいよいよ中盤戦に突入、と書きたいところですが、早くも3試合目を戦うチームがある中で、まだ1試合しか消化していないチームがあるといったスケジューリングのアンバランスな面は気になるところ。もちろん、日程的なダブりが比較的少ないことは大歓迎なのですが、本格的な秋を迎えるにあたって熊谷での試合がないことも(埼玉県民だからとくに)残念。流経大と後半半ばまで5分の戦いができた中央大、完敗だったものの攻撃の多彩さでは東海大を上回るものを見せてくれた日大の戦いぶりから、リーグ内では予想していたほどの実力差はなさそうだと感じました。第4節の3試合はもちろんのこと、今後のリーグ戦の試合はすべてが要注目カードと声を大にして言いたくなってきました。

【大東文化大学 vs 中央大学】

3戦目で何とか片目を開けたい大東大ですが、相手は難敵となっている中央大。しかも、チーム切っての闘士フィリペが欠場となってしまいピンチは続きます。ただ、メンバー構成を眺めていてひとついいことを思い出しました。強力な留学生達がピッチ上から去った後に、残った選手達が一丸となって戦い、そして勝利を収めた試合のことです。実力がありながらも、出場機会に恵まれたとは言い難かった森山選手や島田選手らがFWの一員でした。トンガ出身の選手達の活躍抜きには語れない大東大ですが、元来は国代表レベルの選手達が併せて4人分の働きをするようなチームではなく、他の選手達が彼らにいい影響を受ける形で奔放にパスを繋いでいくのが大東大の持ち味だったはず。この試合がそんな自分たちの原点を見つめ直す機会を与える試合になることを望みます。

対する中央大は、冒頭でも少し触れたように、例年になくチームの仕上がりがいいようです。少なくとも、仕上がりの遅さでファンをヤキモキさせたチームからは脱却がはかれた感があります。さらに、この試合ではSH高崎、WTB吉原が復帰を果たし、「今年こそは上位グループ進出へ!」の臨戦態勢が整ったと言えそう。この試合では、パワーアップしたBKラインで力強く攻めて、シーズン初トライから一気にその量産までが期待できます。ただ、相手が調子が出ておらず、頼みのトンガ勢も欠場の大東大だといっても油断は禁物。一枚岩になって戦いを挑んでくる相手に対して受けてしまったらやられます。中央大の精神面での成長も観てみたい試合です。

【関東学院大学 vs 拓殖大学】

ある程度予想されていた事とは言え、序盤戦から苦しい戦いを強いられている関東学院。メンバーを入れ替えて臨んだ法政戦もいいところなく敗れ、いよいよ崖っぷちに立たされる状態となってしまいました。今回の対戦相手(拓大)のウヴェやパトリックのような選手が一人でも居たらという想いを抱くファンの方もおられるものと思います。現時点ではさらなるメンバーチェンジがあるのかどうかも不明ですが、どんなメンバー構成になっても個人の力に頼らず15人でゴールを目指すスタイルへの拘りは変わらないはず。関東学院に求められているのは、喪失してしまった感がある自信の回復のはず。高速バックスリーでトライを量産するスタイルからの脱却を図っている拓大と目指しているスタイルは同じであるだけに、よりプレーの精度を上げることで「復活」への手がかりを掴み取って欲しいところです。

拓大は1、2節で観た全チームの中ではもっともチームコンセプトが確立されているチームという印象を受けます。過度なBK展開指向は抑えて、FW中心で手堅く堅実に前にボールを運ぼうとしているのが今シーズンから拓大が取り組んでいる形。春シーズンからのブレもなく、モール攻撃が如実に示すように最後はウヴェ(が決める)というスタイルが完成しつつあります。ウヴェやステイリンといった核になる選手達は居るものの、15人で取るスタイルへの変身と拘りは拓大も負けていません。どちらを応援したらいいのか悩むところです。

【流通経済大学 vs 日本大学】

選手が複数のポジションをこなすことにより、選手層の薄さをカバーするラグビーを指向している今シーズンの流経大。確かにチーム再構築の面はあるにせよ、むしろ、状況に応じてチーム戦術の選択の幅を拡げようとする前向き思考を感じます。その流経大は緒戦(中央大戦)ではSOにオペティを起用して手堅く戦うスタイルで試合に臨みました。結果は後半半ばまで中央大に喰い下がりを許す形となったものの安定した闘いぶりが印象に残りました。ただ、WTBまでボールが回る場面が殆どなく、連覇を目指すチームとしては物足りない試合になったことも事実。ということでこの試合はルーキー合谷を先発のSOに起用し、WTBにオフロードパスの達人でもあるリリダムを配するトライ量産体制で臨むことになりました。とても楽しみです。

シーズン序盤でタイトなスケジュールの中、強豪チームとの連戦を強いられるかっこうになった日大でしたが、3試合目もメンバーはほぼ不動。この辺りにも日大の着実なチーム力アップを感じずには居られません。SH小川の卓越した個人能力だけでなく、ルーキー2人を擁しながらも決定力が上がったバックスリーの活躍も楽しみです。なので、小川からSO下地、CTBマイケルを経て彼らに如何にいいボールが供給できるかがカギ。となると、毎回書いているような気がしますが、やはりFWがどこまで頑張れるかが見どころ。流経大が展開指向(おそらく)で来る以上は、日大もより洗練されたアタックで対抗するしかありません。この試合に対するワクワク感を抑えることができない状態になっています。
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ラグビーとサッカーを音楽に例えたら(前編)

2012-09-27 01:10:26 | いろいろ何でも雑記帳
序盤戦からエキサイティングな展開が続く関東リーグ戦のまっただ中だが、今日は「ひといき」モードで音楽とスポーツのことを書いてみよう。

何かと比較されるフットボールのラグビーとサッカー。そのどちらもが大好きなファンとしては、時として近親憎悪的なところが垣間見られる双方の複雑なファン心理に戸惑いを感じることもある。どちらもエキサイティングで楽しいスポーツのはずなのに、片方しか愉しまないのは残念ではないかなと思ってしまう。

さて、音楽も大好き人間としては、日々の生活の中でスポーツと音楽の共通項について無意識のうちに想いを巡らしてしまうことが多い。どちらも時間の流れに沿ってプレイヤー(競技者/演奏者)がパフォーマンスを繰り広げるものだし、終わった瞬間には感動があり、またその余韻に浸ることもできる。もちろん、生が最高という点も共通している。どんなに優れた記録媒体を介しても、その場での体験を100%リアルに伝えることは殆ど不可能。もちろん、スポーツには勝敗があり、音楽にはそれがない。けれども、スポーツにしても勝敗がすべてというわけではない。

ある日のことだが、スポーツを音楽に例えたら?という命題について真剣に考えてみた。一番手っ取り早い素材はやはりラグビーとサッカー。最初に好きになったのはサッカー不毛の地だった大阪で中学時代に始めたラグビーだったが、サッカーも社会人になってからプレーしてみたら面白くて、それ以来どちらも平等に愛している。結論から言うと、音楽に例えれば、ラグビーはクラシック音楽でサッカーはジャズだ。

ラグビーとサッカーの大きな違いは、前者が理詰めの組立を前提としたスポーツであるのに対し、後者はたぶんに偶然性が支配することもある流れのスポーツ。もちろん、ラグビーにも理論を超えた創造的なプレーは必要だし、サッカーだって実は理詰めのスポーツなのだ。とくに最近の高度に組織化が進んだサッカーの場合は。

ラグビーは記録を取りながら観戦できるスポーツとも言い換えられる。実際に観戦するときはそうしている。永年の試行錯誤(失敗の積み重ね)をもとにA4用紙1枚で40分間のプレーの概要を記録できるシートがようやくできあがった。それができるのもラグビーはセットプレーを起点としてストーリーが組み立てられるスポーツだから。どの場所で何が起こったかをミニチュア版の48個のフィールドに時系列で記録していく。

ところが、サッカーではそのような記録をリアルタイムで取ることが不可能だ。基本的にプレーが途切れないし、選手もボールも激しくピッチ上を駆け巡る。完璧な記録用紙を作ったとしても、ペンに目をやっている間にゲームはどんどん進んでいく。だから、ラグビーは譜面をもとに演奏が行われるクラシック音楽、サッカーは(ゴールを目指すという)テーマをもとに即興的に展開されていくジャズ。そんなことを思い立ったのだった。                  (以下、後編へ)
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第3節(9/23)の試合結果&感想

2012-09-23 19:56:58 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
○第3節(9月23日)の試合結果

 9月23日(日) ●関東学院 12 - 29 ○法政大学 新発田市グリーンスタジアム

生憎の雨の中で行われた注目の一戦は、法政が勝利を収めて2連勝となり、上位グループ(4位以上)進出に一歩前進。逆に敗れた関東学院は2連敗で、入替戦もちらつく後がない状況となってしまいました。次節に行われる拓大戦は上位グループキープ、そして入替戦回避に向けた正念場となります。

本日の関東学院は、気合い十分で試合に臨み、戦術面でもキックを有効に使うなど、緒戦とは違った闘いぶりだったようです。となると、出場メンバーの選考も含めて、緒戦(日大戦)でキックを封印し、狭いエリアでの継続に拘った意図はやっぱり不明。一方の法政は得点差から判断すると圧勝のようですが、奪った4つのトライはすべてFWによるもの。雨でハンドリングエラーが出やすい条件だったにせよ、ようやくメンバーが固まりつつあるBKラインが機能するのはこれからということになるのでしょうか。

個人的にも大変興味を持っていた対戦カードだったので、観戦された方からこの試合に関する感想などコメントをいただけると嬉しいです。
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