[キックオフ前の雑感]
毎試合、大胆な選手起用が話題になる関東学院だが、シーズン中のメンバー変更では遙かに上を行っていたのが数年前までの流経大だった。極端な場合だが、シーズンを通して各試合のメンバー表を見比べると、これが同じチームなのかと思われるくらいの激変ぶりを確認することも出来る。また、試合当日も試合会場で公式に配られるメンバー表が役に立たないことが多々あった。それも、選手の数がそれだけ揃っていることの裏付けにはなるのだが、試合ごとにコンセプトが異なるチーム編成となるわけで、必然的に結果も出ず悪循環に陥ってしまっている感があった。選手もモチベーションの維持が難しかっただろうと邪推する。
ここ数シーズンでそんなこともなくなってきているが、今シーズンは試合ごとにメンバーとポジションが変わることになりそうだ。ラグビーマガジンでは「選手層が薄いことに対する対策」という説明がなされているのだが、ちょっと控えめな言い方かなと思う。BKに個性的で能力の高い選手が揃うことでチーム戦術に選択の幅が拡がったという見方してもいいような気がする。緒戦のSOオペティ、CTB矢次、FB合谷をオプション1(手堅くFW周辺でボールを運ぶ)とすれば、本日のSO合谷、WTBリリダム、FB矢次(オープン展開でWTBで取る)はオプション2といえそう。実は、緒戦の終盤にもオプション2は実現しているが、時間も短く「予告編」みたいな感じだった。本来はWTBでフィニッシュにしたいのが流経大の目指すスタイルだと思うので、前回のようにWTBの走るチャンスが少ないラグビーにはならないことを期待したい。
対する日大は緒戦で関東学院を撃破しただけでなく、東海大にもアタック面(とくに創造性の面)で喰い下がりを見せ、着実なレベルアップを感じさせた。日大も昨年度に飛躍的に得点力をアップさせているが、それはSHにコンバートされた小川の卓越した個人能力によるところが大きかった。もちろん、小川のすぐ傍に地味ながらもリーグ戦で1、2の強力選手だったタカウが居たことも忘れてはならない。加藤HCが率いて4年目となる日大の今年の目標は、公的には大学選手権出場だと思うが、チームとしては小川への過度の依存をなくし、15人でゴールを目指すスタイルのラグビーだと思う。実際に東海大戦でもそんな状況が見て取れた。
さて、この試合の流経大の楽しみはフィジアンであるリリダムのオフロードパスも駆使した華麗なランニングによるトライ。新布陣の事実上のお披露目でトライを量産することが出来るだろうか。一方の日大は、SH小川を中心とした、こちらもオープン展開指向のランニングラグビー。パワーアップした瀧水に加え、1年生コンビのWTB早川とFB富樫も日大期待のトライゲッターとして成長を見せて欲しいところ。でも、BKがオープン展開でピッチを駆け巡るためにはFWからの活きたボールの供給が必要だ。イシレリのような巨艦こそ居ないが、流経大にはFL辻、No.8高森といった看板スターがおり、LOシオネは堅実な仕事人。FWのパワーなら東海大だが、まとまりとしての機動力は流経大に分があるように感じる。LOキテを除けば全体的に小粒の日大FWがどこまで踏ん張りを見せられるかに期待したい。
[前半の闘い]
日大のキックオフで試合開始。序盤から気合い十分の日大のアタックに流経大がタジタジとなる。開始早々から自陣ゴールを背にひたすら耐える展開は流経大も想定外だったのではないだろうか。受けてしまったと言うよりも、受けざるを得ない状態に陥る。日大のFWのモール、ラックを主体としたサイドアタックによる攻撃が続き、流経大はゴールライン付近で辛くも踏みとどまる。しかしながら、3分、日大の右PR高がボールをインゴールにねじ込むことに成功。小川のGKも成功し、日大が幸先よく先制点を挙げた。
日大の攻勢は続く。流経大は日大陣に入ることもできず、自陣22m内に釘付け状態となり、日大のFWを主体とした猛攻にひたすら耐える予想外の展開。ただ、流経大も巧みなモールディフェンスなどで最後の一線は割らせない。背水に陣を敷いた流経大の粘り強いディフェンスの前に、日大がノックオンなどのミスで自滅してしまう状況が続き、時計が15分を回る頃からようやく流経大が反撃に転じた。日大としては勢いのある段階でもう1トライ追加しておきたかったところ。序盤のチャンスで流経大に慌てさせるような展開になっていたらと惜しまれる。
ピンチを脱した流経大はペースを徐々に自分たちのほうに引き戻す。20分には得意とする相手ゴール前ラインアウトの場面からモールを形成して押し込み、最後はFL辻がグラウンディングに成功。SO合谷がGKも難なく成功し、試合は7-7と振り出しに戻った。合谷はプレースキックだけでなく通常のキックでも非凡なところを見せる。距離が出ることに加え、コントロールも正確で地域の獲得に大きな武器となっていた。こうなると流経大の選手達に落ち着きが出てくる。
流経大は27分には日大陣で得たPKのチャンスでショットを選択し、PGで3点を加点し10-7と逆転に成功した。流経大の攻勢はさらに続き、34分には日大ゴール前でのマイボールスクラムからNo.8高森がボールを持ち込みトライ。GK成功で17-7と流経大がリードを拡げた。昨年度まではFLとして辻とコンビを組み大活躍した高森はNo.8としても流経大の攻守の要としてさらに活躍の幅を拡げている。
両チームによるオープン展開を主体とするボールが大きく攻防が続く中で、17-7のまま前半が終了。日大のスタートダッシュが効かなかった形だが、その後の攻防を見てもお互いに一歩も譲らないほぼイーブンの内容が続く中、前半が終了した。流経大はこの布陣でもWTBまでボールが殆ど回らない状況が続いた。ひとつの理由は、高森や辻と言ったタテに強い選手が居る関係で流経大アタックの局面ではボールがFWで前に運ばれる場面が多かったこと。彼らの他にもFL6の今井やLO4の今野がいいランを見せていた。しかし極めつけはHO植村。168cmで107kgと身体の厚みと横幅の広さがとくに目立つ選手だが、なかなか器用なランでボールを前に運ぶのがうまい。どうやら今年も流経大はHOに素晴らしい人材を配することができたようだ。
繰り返しになるが、日大は優位に立った序盤にもうひとつ取れなかったのが痛かった。流経大とは対照的にオープンに展開してWTB勝負の日大だが、やはりSH小川のランが際立つ。また、すっかり司令塔に定着した下地の存在も大きい。今シーズンこそは怪我なく出場を続けて欲しいところだ。となると、やはりマイケルということになる。だいぶチームにフィットしてきたが、ボールを持ったときに期待に応えるだけのランをなかなか見せてくれない。チップキックを使うなど器用な所も見せてくれる選手だが、思いっきりの良さ(いい意味での強引さ)も欲しい所。ただ、ディフェンス面での貢献度は高く、大東大に居たマオことシオネ・テアウパのことを思い出してしまった。
[後半の闘い]
後半開始のキックオフで流経大にミスが出てしまった。ドロップキックはダイレクトタッチとなり、日大のセンタースクラムからリスタート。ここで、流経大に反則があり、日大は流経大ゴール前でのラインアウトのチャンスを掴む。ここでも流経大の抵抗に遭って得点にはなかなか結びつかないが、日大のボール支配は続く。そして7分、小川が魅せてくれた。流経大陣ラインアウトから日大がFWのサイドアタックでボールを中央付近に運ぶ。SH小川がオープンに展開しようとした瞬間にディフェンスに一瞬孔が出来たのを見逃さず、小川が巧みに身体をローリングしながらタックラーをかわしてゴール中央に到達。GKも決まり14-17と日大のビハインドは僅か3点に縮まった。とはいえ、流経大にとっては、キックオフが上手くいっていれば避けられたかも知れない失点で、やはりここは大切にしたいところ。
しかし流経大は落ち着いていた。流経大キックオフのボールは完全に着地点に到達していたリリダムがノックオンを犯して日大ボールスクラムとなるが、日大に痛いミスが出る。陣地を取りに行ったキックがダイレクトタッチとなり流経大が日大陣22mを目前にしてラインアウトのチャンスを掴む。ラインアウトのボールはオーバースローとなってしまうものの、SO合谷が巧み拾って前進しフォローした辻にパス。辻がさらにゲインしたところでNo.8高森が絶妙のラストパスを受け取った。リーグ戦GのFWで看板の第3列といえば、東海大の剛力トリオの面々の顔が思い浮かぶが、流経大にしなやかでスピードに乗った動きとパスワークにより得点できるトリオがあることも忘れてはならない。
再び24-14と流経大のリードが10点に拡がり、流経大に勢いが出てきた。SH小川の動きは当然マークされており、しかもFWのパワーの差の影響がじわじわと出てきて、日大はなかなかいい形が作れなくなっていく。競った試合は出来ているのだが、このあたりはまだ地力の差を感じる部分。日大はもう少しといったところか。17分にも流経大は合谷がPGを確実に決めて27-14とリードをさらに拡げる。18分のキックオフでは今度は日大に痛いミス(ダイレクトタッチ)が出てしまう。センタースクラムから流経大が継続して前進し日大陣22m内に到達。ここでSH児玉が抜け出したところにNo.8高森が内側に切れ込む。絶妙のタイミングでパスを受けた高森が大きくゲインし、外側にフォローしたSO合谷にラストパスを渡した。流経大が相変わらずWTBにボールが回る機会が少ないが、FWがタイミングよくフォローして前にボールを運ぶのでそれも致し方なしか。
32-14とほぼ勝利が確実になった30分、流経大はSOにオペティを投入。ただし、下げたのはシオネの方で、リリダムは残す形の強いていえばオプション3。おそらく日大のマイケル対策でリリダムを残したのだと思う。流経大は24分に1PGを追加して35-14とリードを21点差に拡げた。両チームがメンバーを入れ替える中で激しい攻防が続くが、その後は得点板が動くこともなく試合終了。日大は東海大戦に続き、またしても後半に突き放された形だが、FWのパワーアップもあり力負けした印象はなかった。もちろん、試合後の挨拶では健闘した日大の方により熱い拍手が贈られたことはいうまでもない。
[試合後の雑感]
選手起用に関して「いくつかの選択肢を持つこと」がキーワードの流経大だが、今日の闘いぶりを見る限り、オプション2の方が断然面白いラグビーになりそうだ。そして、今後はおそらく合谷がSOでスタメンになる機会が増えるような気がする。まったく物怖じした様子もなく、ボールを持ったら果敢に前を向き、コントロールされたロングキックでたびたびピンチを救うなど、恐るべきルーキーと言える。FWの大幅なメンバーチェンジの影響の克服と誰が司令塔になるかが大きな命題だった今期の流経大だが、どちらもほぼ解答が出たのではないだろうか。あとは、リーグ戦G連覇から悲願の国立を目指して頑張るだけだ。
シーズン序盤のしかも僅か1ヶ月間の昨年度3強との厳しい戦いで着実なパワーアップを見せてくれた日大への期待はますます高まる。東海大と流経大を相手にしても目立った負傷者が出なかったことは特筆に値すると思う。日大の目下のライバルはこちらも緒戦から好調を維持している中央大ということになるが、組織的な動きや基礎スキルの面では日大の方が上回っているので、今後3強の一角に食い込む可能性があるという意味では日大の方が可能性が高いかも知れない。上下間格差が危惧された今シーズンのリーグ戦Gだったが、日大や中央大がレベルアップし、法政が復活を果たすことでそれも縮まっていくようにと思う。今後の展開がますます楽しみになってきた。
毎試合、大胆な選手起用が話題になる関東学院だが、シーズン中のメンバー変更では遙かに上を行っていたのが数年前までの流経大だった。極端な場合だが、シーズンを通して各試合のメンバー表を見比べると、これが同じチームなのかと思われるくらいの激変ぶりを確認することも出来る。また、試合当日も試合会場で公式に配られるメンバー表が役に立たないことが多々あった。それも、選手の数がそれだけ揃っていることの裏付けにはなるのだが、試合ごとにコンセプトが異なるチーム編成となるわけで、必然的に結果も出ず悪循環に陥ってしまっている感があった。選手もモチベーションの維持が難しかっただろうと邪推する。
ここ数シーズンでそんなこともなくなってきているが、今シーズンは試合ごとにメンバーとポジションが変わることになりそうだ。ラグビーマガジンでは「選手層が薄いことに対する対策」という説明がなされているのだが、ちょっと控えめな言い方かなと思う。BKに個性的で能力の高い選手が揃うことでチーム戦術に選択の幅が拡がったという見方してもいいような気がする。緒戦のSOオペティ、CTB矢次、FB合谷をオプション1(手堅くFW周辺でボールを運ぶ)とすれば、本日のSO合谷、WTBリリダム、FB矢次(オープン展開でWTBで取る)はオプション2といえそう。実は、緒戦の終盤にもオプション2は実現しているが、時間も短く「予告編」みたいな感じだった。本来はWTBでフィニッシュにしたいのが流経大の目指すスタイルだと思うので、前回のようにWTBの走るチャンスが少ないラグビーにはならないことを期待したい。
対する日大は緒戦で関東学院を撃破しただけでなく、東海大にもアタック面(とくに創造性の面)で喰い下がりを見せ、着実なレベルアップを感じさせた。日大も昨年度に飛躍的に得点力をアップさせているが、それはSHにコンバートされた小川の卓越した個人能力によるところが大きかった。もちろん、小川のすぐ傍に地味ながらもリーグ戦で1、2の強力選手だったタカウが居たことも忘れてはならない。加藤HCが率いて4年目となる日大の今年の目標は、公的には大学選手権出場だと思うが、チームとしては小川への過度の依存をなくし、15人でゴールを目指すスタイルのラグビーだと思う。実際に東海大戦でもそんな状況が見て取れた。
さて、この試合の流経大の楽しみはフィジアンであるリリダムのオフロードパスも駆使した華麗なランニングによるトライ。新布陣の事実上のお披露目でトライを量産することが出来るだろうか。一方の日大は、SH小川を中心とした、こちらもオープン展開指向のランニングラグビー。パワーアップした瀧水に加え、1年生コンビのWTB早川とFB富樫も日大期待のトライゲッターとして成長を見せて欲しいところ。でも、BKがオープン展開でピッチを駆け巡るためにはFWからの活きたボールの供給が必要だ。イシレリのような巨艦こそ居ないが、流経大にはFL辻、No.8高森といった看板スターがおり、LOシオネは堅実な仕事人。FWのパワーなら東海大だが、まとまりとしての機動力は流経大に分があるように感じる。LOキテを除けば全体的に小粒の日大FWがどこまで踏ん張りを見せられるかに期待したい。
[前半の闘い]
日大のキックオフで試合開始。序盤から気合い十分の日大のアタックに流経大がタジタジとなる。開始早々から自陣ゴールを背にひたすら耐える展開は流経大も想定外だったのではないだろうか。受けてしまったと言うよりも、受けざるを得ない状態に陥る。日大のFWのモール、ラックを主体としたサイドアタックによる攻撃が続き、流経大はゴールライン付近で辛くも踏みとどまる。しかしながら、3分、日大の右PR高がボールをインゴールにねじ込むことに成功。小川のGKも成功し、日大が幸先よく先制点を挙げた。
日大の攻勢は続く。流経大は日大陣に入ることもできず、自陣22m内に釘付け状態となり、日大のFWを主体とした猛攻にひたすら耐える予想外の展開。ただ、流経大も巧みなモールディフェンスなどで最後の一線は割らせない。背水に陣を敷いた流経大の粘り強いディフェンスの前に、日大がノックオンなどのミスで自滅してしまう状況が続き、時計が15分を回る頃からようやく流経大が反撃に転じた。日大としては勢いのある段階でもう1トライ追加しておきたかったところ。序盤のチャンスで流経大に慌てさせるような展開になっていたらと惜しまれる。
ピンチを脱した流経大はペースを徐々に自分たちのほうに引き戻す。20分には得意とする相手ゴール前ラインアウトの場面からモールを形成して押し込み、最後はFL辻がグラウンディングに成功。SO合谷がGKも難なく成功し、試合は7-7と振り出しに戻った。合谷はプレースキックだけでなく通常のキックでも非凡なところを見せる。距離が出ることに加え、コントロールも正確で地域の獲得に大きな武器となっていた。こうなると流経大の選手達に落ち着きが出てくる。
流経大は27分には日大陣で得たPKのチャンスでショットを選択し、PGで3点を加点し10-7と逆転に成功した。流経大の攻勢はさらに続き、34分には日大ゴール前でのマイボールスクラムからNo.8高森がボールを持ち込みトライ。GK成功で17-7と流経大がリードを拡げた。昨年度まではFLとして辻とコンビを組み大活躍した高森はNo.8としても流経大の攻守の要としてさらに活躍の幅を拡げている。
両チームによるオープン展開を主体とするボールが大きく攻防が続く中で、17-7のまま前半が終了。日大のスタートダッシュが効かなかった形だが、その後の攻防を見てもお互いに一歩も譲らないほぼイーブンの内容が続く中、前半が終了した。流経大はこの布陣でもWTBまでボールが殆ど回らない状況が続いた。ひとつの理由は、高森や辻と言ったタテに強い選手が居る関係で流経大アタックの局面ではボールがFWで前に運ばれる場面が多かったこと。彼らの他にもFL6の今井やLO4の今野がいいランを見せていた。しかし極めつけはHO植村。168cmで107kgと身体の厚みと横幅の広さがとくに目立つ選手だが、なかなか器用なランでボールを前に運ぶのがうまい。どうやら今年も流経大はHOに素晴らしい人材を配することができたようだ。
繰り返しになるが、日大は優位に立った序盤にもうひとつ取れなかったのが痛かった。流経大とは対照的にオープンに展開してWTB勝負の日大だが、やはりSH小川のランが際立つ。また、すっかり司令塔に定着した下地の存在も大きい。今シーズンこそは怪我なく出場を続けて欲しいところだ。となると、やはりマイケルということになる。だいぶチームにフィットしてきたが、ボールを持ったときに期待に応えるだけのランをなかなか見せてくれない。チップキックを使うなど器用な所も見せてくれる選手だが、思いっきりの良さ(いい意味での強引さ)も欲しい所。ただ、ディフェンス面での貢献度は高く、大東大に居たマオことシオネ・テアウパのことを思い出してしまった。
[後半の闘い]
後半開始のキックオフで流経大にミスが出てしまった。ドロップキックはダイレクトタッチとなり、日大のセンタースクラムからリスタート。ここで、流経大に反則があり、日大は流経大ゴール前でのラインアウトのチャンスを掴む。ここでも流経大の抵抗に遭って得点にはなかなか結びつかないが、日大のボール支配は続く。そして7分、小川が魅せてくれた。流経大陣ラインアウトから日大がFWのサイドアタックでボールを中央付近に運ぶ。SH小川がオープンに展開しようとした瞬間にディフェンスに一瞬孔が出来たのを見逃さず、小川が巧みに身体をローリングしながらタックラーをかわしてゴール中央に到達。GKも決まり14-17と日大のビハインドは僅か3点に縮まった。とはいえ、流経大にとっては、キックオフが上手くいっていれば避けられたかも知れない失点で、やはりここは大切にしたいところ。
しかし流経大は落ち着いていた。流経大キックオフのボールは完全に着地点に到達していたリリダムがノックオンを犯して日大ボールスクラムとなるが、日大に痛いミスが出る。陣地を取りに行ったキックがダイレクトタッチとなり流経大が日大陣22mを目前にしてラインアウトのチャンスを掴む。ラインアウトのボールはオーバースローとなってしまうものの、SO合谷が巧み拾って前進しフォローした辻にパス。辻がさらにゲインしたところでNo.8高森が絶妙のラストパスを受け取った。リーグ戦GのFWで看板の第3列といえば、東海大の剛力トリオの面々の顔が思い浮かぶが、流経大にしなやかでスピードに乗った動きとパスワークにより得点できるトリオがあることも忘れてはならない。
再び24-14と流経大のリードが10点に拡がり、流経大に勢いが出てきた。SH小川の動きは当然マークされており、しかもFWのパワーの差の影響がじわじわと出てきて、日大はなかなかいい形が作れなくなっていく。競った試合は出来ているのだが、このあたりはまだ地力の差を感じる部分。日大はもう少しといったところか。17分にも流経大は合谷がPGを確実に決めて27-14とリードをさらに拡げる。18分のキックオフでは今度は日大に痛いミス(ダイレクトタッチ)が出てしまう。センタースクラムから流経大が継続して前進し日大陣22m内に到達。ここでSH児玉が抜け出したところにNo.8高森が内側に切れ込む。絶妙のタイミングでパスを受けた高森が大きくゲインし、外側にフォローしたSO合谷にラストパスを渡した。流経大が相変わらずWTBにボールが回る機会が少ないが、FWがタイミングよくフォローして前にボールを運ぶのでそれも致し方なしか。
32-14とほぼ勝利が確実になった30分、流経大はSOにオペティを投入。ただし、下げたのはシオネの方で、リリダムは残す形の強いていえばオプション3。おそらく日大のマイケル対策でリリダムを残したのだと思う。流経大は24分に1PGを追加して35-14とリードを21点差に拡げた。両チームがメンバーを入れ替える中で激しい攻防が続くが、その後は得点板が動くこともなく試合終了。日大は東海大戦に続き、またしても後半に突き放された形だが、FWのパワーアップもあり力負けした印象はなかった。もちろん、試合後の挨拶では健闘した日大の方により熱い拍手が贈られたことはいうまでもない。
[試合後の雑感]
選手起用に関して「いくつかの選択肢を持つこと」がキーワードの流経大だが、今日の闘いぶりを見る限り、オプション2の方が断然面白いラグビーになりそうだ。そして、今後はおそらく合谷がSOでスタメンになる機会が増えるような気がする。まったく物怖じした様子もなく、ボールを持ったら果敢に前を向き、コントロールされたロングキックでたびたびピンチを救うなど、恐るべきルーキーと言える。FWの大幅なメンバーチェンジの影響の克服と誰が司令塔になるかが大きな命題だった今期の流経大だが、どちらもほぼ解答が出たのではないだろうか。あとは、リーグ戦G連覇から悲願の国立を目指して頑張るだけだ。
シーズン序盤のしかも僅か1ヶ月間の昨年度3強との厳しい戦いで着実なパワーアップを見せてくれた日大への期待はますます高まる。東海大と流経大を相手にしても目立った負傷者が出なかったことは特筆に値すると思う。日大の目下のライバルはこちらも緒戦から好調を維持している中央大ということになるが、組織的な動きや基礎スキルの面では日大の方が上回っているので、今後3強の一角に食い込む可能性があるという意味では日大の方が可能性が高いかも知れない。上下間格差が危惧された今シーズンのリーグ戦Gだったが、日大や中央大がレベルアップし、法政が復活を果たすことでそれも縮まっていくようにと思う。今後の展開がますます楽しみになってきた。