「熱闘」のあとでひといき

「闘い」に明け暮れているような毎日ですが、面白いスポーツや楽しい音楽の話題でひといき入れてみませんか?

大学選手権セカンドステージ第3戦(2012.12.23)の感想

2012-12-26 02:00:31 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
大学選手権のセカンドステージが終わった。今シーズンから試合方式が変わり、関東リーグ戦グループから参加した5チームはそれぞれ3試合ずつ試合を行うことができた。地盤沈下が囁かれるグループを応援している身には、なんだか各チームが「追試」を受けさせられているような感覚でもあったのだが、何とか全チーム勝利で終わってよかったと思う。ついでに言えば、リーグ戦5位の日大が頑張って最下位にならなかったことも幸いだった。なにせ、「最下位として認定されたリーグのチームは、翌年度ファーストステージから参加する」という、とても重い条文があるので。

しかし、この「罰ゲーム」みたいな制度は、考えてみるまでもなく恐ろしいシステムと言える。当該リーグが第1ステージの開幕までに全試合を終えるという過密スケジュールを強いられることがひとつ。また、その他の選手権出場4チームは第2ステージが始まるまでに何をすればいいのか?ということにもなる。通常ならチームの仕上げの最終段階に肝心な公式戦がなくなってしまうわけだが、それが前年度5位チームの選手権での不成績で決まってしまうわけだ。これだと当該チームは後ろめたさを感じながらレギュラーシーズンを過ごすことになってしまわないだろうか。

もっとも、ファーストステージから大学選手権に参加できることになったチームの所属リーグにだって日程面他のしわ寄せはあるはずだ。ごくごく一握りのエリートチームには歓迎されうるシステムが、実は大学ラグビー全体にとって歓迎すべきものなのだろうか?という疑問を抱かざるを得ない。関東リーグ戦グループ目線(とくに今期)だと1位から5位までのチームが満遍なく3試合できるのは確かに意義がある。でも、優勝争いを最優先としたいチームとしては、できるだけいい状態で一気にファイナルまで行きたいはず。「大学ラグビーの常識」が他の大学スポーツにとって非常識とは見られていないだろうか?

◆東海大vs明治大

関東リーグ戦グループの関係者にとって、残る最後の希望の星となった東海大が見事に期待に応えてくれた。やっぱり、最低でも1チームは年越しをして欲しいし、リーグの覇者が簡単に沈んでもらっては困る。直前の第2戦(日大戦)での失点の多さなど、気になる点がいろいろあった東海大だが、持ち前のFWの強さを活かした戦いができていたように感じられた。東海大FWの持ち味は大学最重量の8人でありながら、不思議と「重さ」は感じさせないところ。FWで行き過ぎず、テンポを落とさない状態のいい形でBKに展開して取るのが理想的だし、そんなラグビーができたらいい結果に結びつくように思う。ようやくFWとBKのコンビネーションに磨きがかかってきたといったところだろうか。セミファイナルの相手となる筑波は攻守ともバランスが取れた難敵だが、自分たちの目指すスタイルで攻め続けて欲しい。

◆流経大vs天理大

流経大の早稲田戦での敗戦ははっきり言ってショックだった。それは勝てなかったことではなく、相手を意識しすぎたのか、相変わらずよそ行きラグビーになっていたように感じられたこと。とくに前半の前半はまるで別のチームを観ているかのようだった。そのショックを引きずっていなければいいがと思っていたが、杞憂だったようだ。戦力ダウンはあったにせよ、関西1位チームに負けなかったことは大きい。と同時に、チームとして2つのオプションを並立させることの難しさを感じずにはいられない。とくに今シーズンはFWのメンバーが殆ど入れ替わるなど、チーム再構築の年だっただけにそう思う。今となっては遅いが、「SOのオペティ」はあと1年早く発見されて欲しかった。もっともその頃は優れたスキッパーの宮脇が居たからそんな巡り合わせもなかったわけだが。毎年この時期になると思うことだが、来シーズンこそは盤石のチームを作って欲しい。今後が楽しみな選手が多いだけに、よけいにそう思ってしまうのだ。早稲田との戦いについては別途感じたことを綴ってみたい。

◆拓殖大vs福岡工大

この試合は過去2戦とはうって変わって拓大が爆発してくれるはずという期待があった。果たして、得点を見ると期待以上の結果。だが、録画放送で闘いぶりを観て、ちょっと歯がゆい感じもした。福岡工大の頑張りもあったが、攻守ともにやや生彩を欠いていたようにも見えたのだ。連戦の疲れもあっただろうし、チームの柱パトリックが負傷で交代を余儀なくされたことも響いたと思う。岩谷がSOのまわり、SHは昨シーズンのレギュラー江頭が務めることになったが、パスのタイミングとコースが合わずにチャンスを逃した場面が多かった。あとひとつ感じたことは、攻撃のテンポがほぼ一定で相手に止めやすい形になっていたこと。今シーズンはチームとしての意識統一と個々の身体を張った頑張りでここまで来た拓大だが、大勝の中にも課題が見えたのがこの試合だと思う。来シーズンもおそらく地道な積み上げで勝負の拓大だが、コンビネーションに磨きをかけ、メリハリをつけたスタイルに進化を遂げて欲しい。同じ日に同じ場所で戦った日大のラグビーを観てそんな思いを強くした。

◆法政大vs慶應大

法政が最後にしてようやくだが(今シーズンとしては)会心の戦いができたのではないだろうか。と同時にどうして春シーズンの段階でここまで仕上げられなかったのかという疑問も湧いてくる。そのチャンスは十分あったはずなのだが、謎のスタメン、謎の選手交代で何度もリセットしてしまっていたように感じられたのが残念。キャプテンが対戦相手の監督に熱心に教えを乞うていたと思しき場面に妙に納得させられてしまうのだ。それはさておき、多少組織はガタガタでも、前に出る気持で意思統一が図られたときの法政は最高に輝いて見える。たぶん、対戦相手の慶應としても、こんな(スクランブル気味の)法政はもっともやりにくい相手になっていたはず。とにかく法政にはテンポ良くスピードに乗ったランニングラグビーを思い出してもらわないと、リーグ戦Gの発展はないのだ。そのことを肝に銘じて、来シーズンこそは真の復活を果たして欲しいところだ。

◆日本大vs近畿大

近大附属高校のジャージは日大とそっくり、というような話はさておき、1年生を多く含みながらも日大はいい形でチームを仕上げることができたのではないだろうか。おそらく、3試合やれるチャンスを最大限に活かすことができたチーム。拓大の一本調子に近いラグビーと比較すると、深めのラインを活かしたタメのある攻めがとても魅力的だった。キープレーヤーは残念ながら今シーズンで卒業の小川だが、もう一人上げるとNo.8にコンバート?されたマイケル。ようやく彼の絶好の働き場所が見つかったようだ。マイケルの強みはもちろんサイズを活かした突破力だが、むしろ大きな壁として相手に立ちはだかるディフェンスでの貢献度が大きいような気がする。アタックではちょっと物足りない部分が多かったのだが、神出鬼没のリベロのような形で自然にライン参加ができるNo.8というポジションがフィットしているような気がする。だから、FLに回った高橋の存在が大きい。案外、小川と同じで将来的にはマイケルはNo.8でという構想があったのかも知れない。リーグ最終戦の法政戦では今シーズン最悪の日大を観たわけだが、3試合を有効活用して最高の日大で終わってくれたのが嬉しい。他のチーム以上に来シーズンの飛躍を期待したい。

◆最後のつぶやき

対抗戦G優位がはっきりしたセカンドステージだが、天理だけでなく、立命館や近大も侮り難い力を持っていることがよく分かった。両チームが関東で揉まれたらさらに強力なチームになるはず。現行の大学選手権のシステムが続く限りは(続かなくても)、関東リーグ戦グループ校は心して精進に励まなければならないと強く感じた。
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拓殖大学 vs 帝京大学 [大学選手権](2012.12.9)の感想

2012-12-21 00:46:43 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
◆拓大に期待したこと

当初はリーグ戦で苦戦が予想された拓大。無理もない。FWもBKもおしなべて小さく、またウヴェとパトリックの留学生コンビを除けば目立つ選手は居ない。強いて言えば大学屈指のトライゲッターの大松だが、結局、レギュラーシーズンで彼の勇姿を観ることはなかった。リーグ開幕前は、正直また入替戦かなと思った。昨シーズンは今シーズンよりも戦力的に恵まれながらも最下位に終わり、入替戦もやっとのことで立正大に勝ち、辛くも1部残留を果たしたところからのスタートだった。

しかし、その拓大が試合を重ねるごとに着実に成長を遂げ、最終的には3位でフィニッシュしてしまったのだからラグビーは分からない。東海や流経大はもちろんのこと、選手一人一人を比べたらとてもリーグ戦Gで上位を目指せるとは思えないチームだったから。それも、けして難しいことはやっていない。本来はオープンに展開したいところを我慢して、FWで確実にボールキープを続けながらチャンスが来るのを待つ。ディフェンスでは低くしつこいタックルで相手の前進を簡単には許さない。セットプレーだけでなくイーブンボールでもとにかく身体を張ってボール獲得を目指す。

そんな具合に、毎試合ハードなプレーを続けながらも大きな怪我をしない。そもそも、プレー中に痛がって寝転がっているシーンすら殆ど思い浮かばない。ほぼ100%に近い固定メンバーで7試合を戦い抜いたことはもっと大々的に取り上げられていいはずだ。リーグ戦連盟はベストフィフティーン以外にもいろいろと表彰制度をぜひ考えて欲しいと思っている。私個人としても、拓大の試合をすべて観戦できたことが今シーズンの大きな成果なのである。

話が逸れてしまった。そんな我らがリーグ戦G応援団の期待のチームである拓大が大学選手権で大学王者の帝京にチャレンジする。このことだけでも(巡り合わせの部分はあったとは言え)3位になった価値が十分にある。期待はずばり、ジャイアントキリング!と言いたいところだが、正直なところは象さんとアリさんの戦いに近いものがある。拓大がシーズンを通して磨き上げてきたスタイルが最強の相手に対してどこまで通じるかをじっくり観てみたい。たとえ勝敗は見えていても、キックオフ前からある種ハイテンションの状態だったことは否定できない。

◆そして試合ははじまった

ある程度拓大が低いタックルで頑張るイメージはできていたのだが、果たしてそれが現実のものとなるのか?期待と不安の入り交じった(もちろん前者の比率の方が高いのだが)中で迎えたキックオフ。やはり帝京は強い。一人一人が強力なだけでなく、チームとしての統制が取れているし、しかも運動量も豊富。だが、拓大も想像以上に健闘している。スタイルはシーズン中ととくに変わるところはないのだが、チームとしての意思統一とプレーの確実性は明らかに向上していることがわかる前半の闘いぶりだった。

試合は帝京優勢で進むものの、拓大の低くしつこいディフェンスに帝京も戸惑っている様子が見て取れる。アタックの場面ではまずFWで体制を作ってからオープンに展開して勝負する。残念ながらBKに突破力のある選手が居ないため、なかなかゲインはできないのだが、ボールはキープできている。ここでキーになって頑張っているのが岩谷とステイリンのHB団だ。球捌きと判断のいいSHとミスなくボールを動かせるSOのコンビはリーグ戦G屈指と言ってもいいだろう。ウヴェが際立つ拓大だが、この2人を抜きに今シーズンは語れない。もちろん、リーグ戦屈指のSHは日大の小川ということになるだろう。でもHB団のコンビで考えると個人的には岩谷をベスト15に推したい。ベスト15に選ばれた東海大の阪本や日大の下地もいいSOだし、流経大のオペティももっと時間があったら面白い存在になったはず。でも、プレーの確実性と安定性でステイリンが今期のリーグ戦Gで最高のSOだと思う。

またまた脱線してしまった。前半を終わって17-3で帝京のリード。正直、このままのいいイメージを持ったまま前半で帰途につきたいくらいに拓大はいいラグビーができていたと思う。足りないのはBKの得点力で1トライでも挙げてくれたら言うことはなかった。しかしそうは問屋は卸さない。後半の帝京は流石と思わせるラグビーを見せてくれた。チャンネルゼロを徹底的に攻められてディフェンスに穴が開いたところでビッグゲイン。帝京の場合はこの時点で確実にトライまで持って行くラグビーができる。得点のチャンスを掴んだところでの一瞬の判断を15人で共有することが、判で押したように最後は大外で決めるラグビーに繋がっている。

帝京の試合は春シーズンに2試合観ている。いずれも場所は百草園で東海大と流経大が相手だった。東海大は大敗を喫し、流経大は大健闘だったのだが、強く印象に残るのは帝京の強さだった。具体的に言うと、ターンオーバーなどでチャンスを掴んだ時の反応の速さということになる。逆に東海大はせっかく掴んだ得点機もプレーの選択への迷いからミスが出て逃してしまう場面の連続だった。その積み重ねが思わぬ点差となってしまったのが東海と帝京の戦いだった。また、帝京の強さはBチームの闘いぶりにいかんなく発揮されていたように思う。リーグ戦で戦っても優勝争いができそうな恐るべきBチームがあることが、Aチームにとっていい刺激になっていると感嘆させられたのだった。

ということで、後半は帝京のトライショーとなってしまい、拓大はノートライで3-65の完敗に終わった。当然、報道では帝京の仕上がりの良さと強さが強調され、拓大がディフェンスで粘りを見せたことは記事にはなりづらい。ここがラグビーの評価の難しいところだと思う。実際に観てみないとわからないし、フォーカスはどうしても強さが期待されるチームの方にあてられる。ただ、幸いなことにこの試合は大学選手権なのでTVで全国のラグビーファンが観ることができた。拓大なかなかやるではないかという感想を持ったラグビーファンが少なからず居るはずである。

◆結果的には拓大の完敗だったが

褒め言葉にはならないかも知れないが、「拓大の身体を張ったディフェンスでの粘りが帝京の強さを引き出した。」とは言えないだろうか。力の劣るチームが強いチームに全力で立ち向かうことがリスペクトなら、横綱が持てる力を惜しみなく繰り出してそれに応えることもリスペクト。60点以上の差が付いても集中を切らすことなく充実した80分間を過ごすこともできるのだ。試合後に帝京の主将と副将が「ごく自然に」隊列を離れて拓大の首脳陣の方に向かったのだが、けして儀礼的な印象は受けなかった。おそらくこの試合は帝京にとってもプラスとなる部分があったはずだ。勝手な思い込みかも知れないが、主将と副将の表情からそんなことが読み取れたのだった。

こう考えてみると、リーグ戦Gには帝京のような(王者の風格をプレーで示してくれる)チームがないことが残念に思えてくる。もちろん、東海はいいチームなのだが、相手に付き合ってしまうようなところがあり物足りなさを感じるのだ。東海もかつては関東学院や法政に大量失点負けを喫していたし、また、そのことが現在の東海を築き上げたことは間違いない。だから、倍返しをしたって罰は当たらないはずだ。

◆チーム再建のための最良のモデル

リーグ戦グループでは(残念ながら)チーム力をなかなか上げられないで苦しんでいるチームが多い。そんな中で、たった1年でチーム改革に成功した拓大はいいお手本になりそうな気がする。あえてチーム再建のための「拓大モデル」と名付けたいくらい。詳しくは拓大戦7試合の拙感想を参照していただきたいのだが、1試合1試合における目的と結果を検証していくことで、どうやったらチーム力を上げることができるかのヒントが得られるのではないかと思う。

去年までの拓大は、横山兄弟や茂野、大松といった強力なトライゲッターの活躍で勝つチームだった半面、そのことがチームバランスを崩していた面もあったと思う。集中を欠いたとしか思えない凡ミスも多かった。そこを原点から見つめ直すことで改革に成功したのではないだろうか。1年間を使ってチームの基盤を整備した拓大はメンバー構成を見ても来シーズンは飛躍の年になるはずだし、そうあって欲しい。そういった意味でも、シーズンの総仕上げとして帝京と試合ができたことは大きい。

ただ、この「拓大モデル」はどのチームにも適用できるものではなさそうだ。おそらく肩書き組が毎年多く加わるチームの選手達にとっては「今更こんなことをやらせるのか?」という練習の積み重ねに耐えられるだろうか。でも、そこの意識を変えない限りラグビーは変わらないと思う。「当たり前のことを当たり前にやること」が実は一番難しい。

関東学院のように頂点を極め続けたチームも今となっては拓大のような形での再建は難しいような気がする。今シーズンのラグビーを観ていると、意識改革に遅れてしまったという印象を持たざるを得ない。戦力低下は分かっていながらも、結局は「強者のラグビー」を捨てきれなかったことの積み重ねでここまで来てしまった。もちろん、そう結論づけてしまうのは早計かも知れないし、復活を期待したいところではあるのだが、それはおそらく拓大とは違った形になるような気がする。

◆とっても嬉しかったこと

試合が終わった後で、後ろで観戦されていた方からから声をかけていただいた。たぶん、メモを取りながら観戦していたので判ったのだろう。嬉しいお言葉までいただき、ブログをやっていて良かったと思った。もっとも、ご贔屓の拓大だけでなく帝京の良さもしっかりと観ておられて、こちらが参考になったくらいでかえって恐縮してしまったのだが。また、来シーズンどこかでお会いできたらと思っている。
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関東学院大学 vs 立正大学 [入替戦](2012.12.8)の感想

2012-12-15 19:35:46 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
[キックオフ前の雑感]

毎年2試合が同じ日に行われる入替戦だが、第2試合を戦うチームにとっては第1試合の内容が重要な情報になる。入替戦を戦う上でポイントになるのは、1部リーグと2部リーグの力の差がどのくらいあるかを把握することだと思う。その重要なヒントを与えてくれるのが第1試合になるわけだ。ここで1部のチームはひとつ上の、また、2部のチームはひとつ下のそれぞれ直接対戦したチーム同士の闘いぶりを参考に実戦に臨むことになる。たとえ直前であっても、いや直前であるからこそ貴重な情報と言える。

そう考えてみると、第1試合で大東大と山梨学院がほぼ互角の戦いを演じたことは関東学院のチーム関係者に動揺をもたらしたであろうし、逆に立正大学の関係者にとっては大きな自信になったのではないかと思う。いつの間にかスタンドを埋めていた多くの関東学院ファンには、これから起こることに対して心の準備を必要とするような試合となることを自覚させたかも知れない。つい2週間前、自分たちが応援しているチームは大東大に大敗を喫してしまった。だが、その大東大は2部リーグ2位のチームに負けても不思議はないような試合をしたから。そうでなくても、チームの形ができている大東大に対し、未だチーム完成に至っていない関東学院の関係者は不安でいっぱいのはずだから。

キックオフ前に両チームのメンバーを確認する。関東学院は安井がNo.8として「復帰」を果たしたのが目を惹くが、基本的には大東大戦と同じメンバー構成。2週間でどこまでチーム力をアップすることができたかがカギとなる。とくに大量失点続きのディフェンスの整備は急務だったはず。対する立正大は(山梨学院と同様に)実戦を観ていないのでわからないが、両WTBに配置された2人の留学生をトライゲッターとして活用する布陣に見える。サイズ的にはやや関東学院を上回るといった感じ。ただ、ピッチ上に登場した選手達を見比べると、関東学院の選手達の方がどうしてもスリムに見えてしまう。

第1試合の開始時はほとんど風もなく、さほど寒くは感じられなかったが、ハーフタイムを境にいつもの晩秋の底冷えの熊谷になってきていた。ピッチも観客席も冷たい赤城おろしの風で吹きさらし状態になる、選手も観客も寒さとの戦いを強いられる熊谷だ。大東大にとっては、後半から吹き始めたこの風が「神風」となった面があったが、関東学院にとってはどうなるのだろうか。

[前半の闘い]

試合開始前から(第1試合の状況から)既に暗雲が垂れ込めるような状況になっていた関東学院サイドの観客席。ファンの望みは今日こそはディフェンスが崩壊しないで欲しいということではなかっただろうか。風上に陣取った立正大のキックオフで試合が始まった。キックオフのボールが関東学院の選手に触れて(遠目にはそう見えた)タッチを割り、立正大のラインアウト。立正大は素速くオープンに展開し、WTBヘンリーがさして抵抗を受けることもなくあっさりと関東学院陣のゴールラインを越えてしまった。関東学院ファンにとっては悪夢(3ケタ失点を喫した東海大戦)の再現としか言いようのないキックオフから僅か1分での失点。「やはり今日もダメか...」というムードが応援席に立ちこめる。

立正は畳みかける。というか、関東学院が何もできない間に4分にはPG、7分にはキックオフに対するカウンターアタックから再びWTBヘンリーのノーホイッスルトライにより失点。さらに、10分には関東学院陣10m付近のラインアウトからのオープン展開でCTB鶴谷がトライと、僅か10分の間に立正大のリードは18点に拡がった。突貫工事をしてでもディフェンスを整備する必要があった関東学院だが、結局何もできずに2週間が過ぎてしまったと考えざるを得ない。

このままずるずると失点を続けそうな関東学院だったが、何とか落ち着きを取り戻し反撃に転ずる。15分には立正大ゴール前でのラインアウトの絶好のチャンスを掴むがモールを押し切れない。しかしながら、立正大が自陣22m内の位置での反則を犯す。PGで確実に3点取れる位置だが、関東学院は再びゴール前のラインアウトから5点以上を狙う。が、立正大にターンオーバーを許し、後ろに大きく蹴られて自陣10mライン付近まで後退を余儀なくされる。その直後に関東学院に反則があり、立正大はPGで3点を追加し21-0。「いったいどうなってるんだ?」と立正大ファンも喜びよりは戸惑いが感じたかもしれないくらいに一方的な展開となってしまった。

ここで熊谷名物の赤城おろしが立正大にとっては神風となった感じ。とにかく自陣奥深くからでも蹴れば陣地が挽回できる。そして、25分にスクラムが組まれるのが、これが何とファーストスクラム。セットプレーは大半がラインアウトだったことにここで気付く。27分には立正大がラインアウトでスティールに成功し、パスを受けたSO正田がウラに抜けてあっさりとゴールラインを越える。今シーズンの関東学院の闘いぶりを象徴するようなシーンが続くのだが、シーズン当初はここまで酷くはなかったはず。立正大は31分にPKからの速攻でさらに7点を追加してリードを35点に拡げる。前半は関東学院がまったくいいところを見せられずに終了。関東学院ファンは、風上となる後半に望みを託したいところだが、その糸口さえも見えない。

[後半の闘い]

前半、思わぬ大量リードを許してしまったとは言え、後半の関東学院は風上に立つ。気持を取り直してキックオフから立正大にプレッシャーをかけボール奪取に成功。オープンキックは立正大ゴール前でタッチを割り、相手ボールながら、関東学院が得点のチャンスを掴む。立正大ボールラインアウトに対してもプレッシャーをかけてボールを奪いゴール前でラック。そこから出たボールをSO高城がインゴールまで持ち込み、ようやく関東学院の得点板に5の数字が表示された。このまま攻め続けていけば逆転も夢ではない。関東学院の応援席が少し元気になってきた。

後半は風下に立ったこともあるが、前半にあまりにも簡単にリードを奪うことができたことが立正のリズムを狂わせたのかも知れない。立正大にイージーなミスが目立ち始めたこともあり、ようやく関東学院がじっくりと攻めることができる時間帯がやってきた。とくに10分以降はゲームが殆ど立正陣内で行われる状況となり、立正は追加点を奪う糸口を掴むことができない状況に陥る。立正大は関東学院の変則的なアタックに戸惑ったのかも知れない。セオリーに従って広くワイドに守っても、関東学院は狭いエリアでのタテの継続に拘るスタイルで攻め、ラインに立つ人数が確実に減っていくのだ。ただ、いかんせん関東学院にはペネトレーターになれる選手がいない。アタックが必ず手詰まりになることが分かってしまえばパニックに陥る必要はない。立正大はちょっと正直に対応し過ぎたのかも知れない。

しかし、関東学院のこの狭いエリアでの継続に固執したようなラグビーを何と表現すればいいのだろうか。「スモールラグビー」と書くと「スモールベースボール」が連想される。しかし、「スモールベースボール」は日本の誇りと言えるが、このラグビーはそれとはかなり違う。ボールを保持していても、また、相手のミスに助けられてもなかなかゴールラインまでボールを運べない状況に対し、関東学院の応援席からはため息と厳しい意見が止まないような状態になる。思えば、関東学院を応援しているファンは、ここ10年以上にわたってトップレベルのラグビーを見続けてきているのだから、厳しい見方になってしまうのは致し方ない。

35-5で立正大がリードのまま時計はどんどん進んだ27分、立正大にようやく追加点が生まれる。GKは失敗したが40-5の35点差は、風上とは言え、残り時間10分余りで縮めるには重すぎる点差となる。しかし、関東学院も簡単に諦めることはできない。リスタートのキックオフでここでもボールの奪取に成功してWTB今井がノーホイッスルトライ。12-40となり、スタンドからは「(奇跡まで)10分で4トライだ!」の声も上がる。関東学院の気迫に優位にあるはずの立正大が腰砕けのような状態になってしまい、関東学院の攻勢が続く。34分にはPKからの速攻でLO井澤がインゴールに飛び込み17-40になった。

しかし、いかんせん遅すぎた。関東学院の猛攻を立正大が何とか凌ぎきり、ついにノーサイドを告げるホイッスルが鳴った。2部降格が確定した瞬間、ピッチ上でへたりこむ関東学院の選手達に対し、1部復帰を果たし歓喜に沸く立正大。入替戦だから仕方ないが、久しぶりに天国と地獄を見たような気がした。ただ、内容的には完敗だったこともあり、関東学院の選手達は現実を冷静に受け止めているようにも見えた。中でも、うなだれている選手達ひとりひとりに声をかけながら立つように促していた稲垣主将の後ろ姿が強く瞼に焼き付いた。おそらく、もっとも悔しい思いをした選手に違いないはずだが、最後まで責任を果たそうとする姿勢に強く心を打たれた。ここに至るまでの戦いで、主将の頑張りだけではどうしようもなかったはずと推察される状況がはっきり見えていただけに、よけいにそう見えたのかも知れない。

[試合後の雑感]

ついに関東学院の2部降格が決まってしまった。勝負の世界である以上、力及ばずという理由で落ちるのは仕方ないことだと思う。しかし、いくら昨年に比べて戦力が落ちたとは言っても、ここまで来ることは想像できなかった。はっきり言ってしまうと、チームをしっかり作っていれば入替戦も回避できたと思う。そのことが残念で仕方ない。というのも、緒戦から最終戦まで「スモールラグビー」から脱却できなかった関東学院の状況を観て、伝承されるきものが殆ど失われてしまったと感じざるを得ないから。関東学院のラグビーは、大学最強まで熟成されていく過程で多くの有形無形のサポートを得たはずだが、それらが殆ど失われてしまい、結局残ったのがこのラグビーだったのか思うという寂しい想いを禁じ得ない。関東学院のラグビーに対する深い想いについては、日を改めて書いてみたいと思う。

関東学院に圧勝し、見事1部復帰を果たした立正大だが、このままなら来シーズンの戦いは厳しいものとなりそうだ。単純比較はできないが、チーム力はむしろ昨シーズンの方が上だったような印象も受ける。それと、風下に立ったとは言え、どうしても後半のもたつきぶりが気になってしまう。今度こそ、立正ラグビーの目指す形をはっきりと見せることができるようにチャレンジを続けて欲しい。
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大東文化大学 vs 山梨学院大学 [入替戦](2012.12.8)の感想

2012-12-09 03:57:05 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
[キックオフ前の雑感]

この時期の熊谷にしては珍しく、微風でさほど寒くもない。思えば、暑い9月の開幕戦からとんとご無沙汰だった。奇しくも、その9月9日に行われた試合のひとつが大東大の初陣だった。それが、まさかここで今シーズン最後の戦いを観ることになってしまうとは。

リーグ最終戦で勝利を収めたその大東大だが、絶対に勝利しなければならないこの試合が正念場となる。しかし、スタンドの控え部員達の様子を観ていると、戦う前から既に「勝ったも同然」という雰囲気になっている。これは不味いのではないだろうか。そもそも、同じ日に開幕した大学選手権ではなく、ここで戦う事になってしまった理由を考えていれば、そんな浮ついた気持にはなれないと思うのだが。2部リーグで2位に終わったとは言え、相手は1部昇格に向けて高いモチベーションのもとに戦いを挑んで来る。1部リーグに在籍した経験もある山梨学院は侮れない相手のはずだ。

大東大は、リーグ最終戦の関東学院戦とほぼ同じメンバーで試合に臨む。FWはLOテビタにFLフィリペ、No.8長谷川の3本の矢が揃った。BKの決定力に課題はあるものの、元気いっぱいのPR高橋洋もいる。勝利はもちろんのこと、最後は爆発して有終の美を飾りたいところ。対する山梨学院はシーズン中の戦いを観ていないので正直わからないが、昨年はCTBで出場したSOティモシーのプレーは印象に残っている。隣ではしゃぎ気味の学生達を横目に、ピッチに登場した選手に目をやる。両チームとも緑のチームだが、本日は山梨学院がセカンドの白で登場。いつものモスグリーンをまとった選手達を観て、大東大のファンは胸をなで下ろしたかも知れない。いかんせん、白を着た大東大が芳しい成績を挙げたことはなかったはずだから。

[前半の闘い]

1部復帰に燃える山梨学院のキックオフで試合開始。序盤から山梨学院が積極的に攻勢を仕掛ける。司令塔のティモシーを中心として自陣からも積極的にオープンに展開する。10分にはそのティモシーのドロップゴールが決まり、山梨学院が早くも3点を先制する。直後のリスタートのキックオフでは自陣からの展開でオーバーラップを作り、WTB安江がノーホイッスルトライ(GKは失敗)で山梨学院はさらに5点を追加。しかし、まだ大東大応援席は余裕が感じられた。「3本の矢」が機能したら相手を圧倒できるはずと。

しかしながら、キックが多くなったこともあり、両チームともカウンターアタックの局面が増える。ここで果敢に勝負を挑んだのは(格下のはずの)山梨学院の方だった。また、大東大があっさり抜かれたりしたので、どちらが1部リーグのチームなのか分からない状態になっていく。少しずつだが、となりに陣取った学生達の様子に変化が見られるようになる。大東大は13分にPGで3点を返すものの、ペースを握ることができない。控え部員の態度からも、相手を甘く見ていた様子が窺える。内容を見たらそんな余裕はないはずなのだが、なかなかエンジンが掛からない。

何とも煮え切らない大東大だが、24分にはPR高橋洋、LOテビタの強力なタテを起点としてオープン展開からWTB福津がトライを奪う。GKも成功して10-8と逆転に成功し、ようやく大東大が目を覚ましたかに見えた。しかし、その後も山梨学院のペースで試合が進む。26分の右中間約25mのPGはゴールポストを直撃するなど、やや不運な面が大東大を味方したかたち。前半の後半はほとんど大東大陣で試合が行われる展開となるが、山梨学院は決めきれない。ここが1部のチームと2部のチームの差かも知れないが、山梨学院も本調子ではないような印象も受ける。

しかし山梨学院は32分にティモシーが左中間35mのPGを決めて11-10と1点差ながら逆転に成功。もちろん、まだ前半と言うこともあり、大東大に動揺がみられるような状況にはならない。だが、先にも書いたように、どちらが1部のチームか分からないくらいに拮抗した展開が続く。大東大は前半終了間際に山梨学院陣22m内でPKのチャンスを得、SH茂野がタップキックからゴールを目指すが、惜しくもゴールライン寸前でタッチに押し出されてしまう。前半はこのまま山梨学院が1点をリードする形で終了した。

[後半の闘い]

後半も前半の流れを引き継ぐ形で拮抗した展開が続き、得点ボードの数字が変わらないまま時計が進む。相変わらず大東大BK陣のタックルが甘いのだが、1点リードのアドバンテージを活かしたい山梨学院も肝心なところでミスが多く喉から手が出るほど欲しい追加点が奪えない。せっかくいい形で継続できても、接点で反則を犯してチャンスを逃してしまう。17分の正面約45mのPGもゴールまで届かない。

膠着状態の中で22分、ようやく得点板の数字が動いた。大東大が正面20mのPGを決めて13-11と逆転に成功する。大東大の連続攻撃に対するディフェンスで犯したハイタックルはもったいない反則と言える。しかし、直後の25分に山梨学院がPGで3点を奪い14-13と再び1点差ながら逆転に成功する。残り時間から考えても、ここは畳みかけてリードを8点に拡げたいところ。だが、またしても山梨学院は痛い反則を犯してしまう。HWL付近から大東大SO碓井が蹴ったボールは後半から吹き始めた風に乗り、山梨学院ゴール直前でタッチを割る。大東大がラインアウトからモールを形成して押し込みテビタがトライ。GKは失敗したが32分まで着たところで18-14とスリリングな点差ながらも大東大は再逆転に成功した。

残り時間は10分を切ったが1トライで逆転できる山梨学院は1部復帰への執念を見せる。しかしながら、大東大も残留に向けて粘り強いディフェンスで抵抗する。大東大は40分にPGを追加して21-14とリードを拡げる。山梨学院にとっては重い3点となってしまった。大東大が慎重にボールキープを続けて時計を進め、満を持してタッチにボールを蹴り出したところで試合終了。1部復帰への切符を掴みかけていた山梨学院にとっては残念としか言いようのない敗戦となった。

現状のベストメンバーで戦いに臨んだ大東大だったが、勝ったことだけが(もちろんそれで十分なのだが)評価できる内容の試合。復帰組によってもたらされたはずの戦力アップがチーム力のアップに繋がらなかったことがファンにとってはもどかしく感じられたのではなかっただろうか。ここではっきり分かったことは、誰がチームにとってもっとも重要な選手かと言うことだ。その選手は、アタック、ディフェンスの両面で常に最前線で身体を張って頑張っていたPRの高橋洋。おそらく、タックルの数は成功率も含め大学生のPRで1、2を争うのではないだろうか。関東学院戦での得点を生んだセービングも忘れられない。彼がもしけがで戦線離脱していたら大東大はさらに厳しいシーズンを送ることになったかも知れない。リーグ戦Gの私的ベスト15のひとりとして彼を強く推したいと思った。

[試合後の雑感]

あまり言いたくないのだが、やはりスタンドで観戦している部員達の態度が気になった。山梨学院に堂々と勝負を挑まれる中で、どちらが1部のチームなのかが分からないような状態だった。山梨学院のミスの積み重ねがなければ負けていた可能性が高い試合なのに何故?という想いを抱かざるを得ない。ピッチ上で戦っているのは応援すべきチームメートだが、チーム内ではレギュラーを争うライバルであるはずだ。そういう意識があれば、とても楽観ムードで試合を観ることは出来ないと思う。

たとえばだが、今シーズンの拓大はレギュラー完全固定で好成績を挙げた。それは普段の厳しいトレーニングもさることながら、獲得したポジションは絶対に渡さないという選手個々の強い意志の反映でもある。実際に試合で観た選手達の表情からもそのことははっきりとわかる。その拓大も、昨年は薄氷を踏む想いで入替戦を戦っている。この彼我の違いはどこにあるのかをチーム全体でじっくりと考えて欲しい。来シーズンは別の会場で試合ができるようになるために。
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法政大学 vs 日本大学(2012.11.25)の感想

2012-12-03 02:05:06 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
[キックオフ前の雑感]

リーグ戦グループで現在覇を競っているのは1997シーズンに1部昇格を果たした流経大と2000シーズンに1部復帰を果たした東海大。関東学院が力を失っていく中でいよいよ2強時代が到来したといえる。しかし、ちょっと待てよ、古豪で大学日本一にも輝いている法政、大学選手権でベスト4に進出した日大は何をしているのか? 残念ながら、法政も優勝争いから遠ざかり、日大は入替戦も経験する低迷状態にあると言える。中央大しかり、大東大もしかりでこれらのチームに元気がないことがリーグ戦Gの相対的な地盤沈下にも少なからず影響を与えているはずだ。

しかし、今シーズンは加藤HC体制になって4年目となる日大が好調だ。ここまで既に4勝を挙げ、大学選手権出場も決めた。また、法政のまだ本来のBK展開の切れ味は戻っていないがチーム力は上向きになってきた。しかしながら、両チームのラグビーの中身には大きな違いがある。日大が組織的な豊富なバリエーションを持つ(魅力的な)継続ラグビーを完成しつつあるのに対し、法政は相変わらず個人の能力に依存するラグビーから脱却できていない。同じく個々の強さで勝負する体質が残っている中央を組織力で圧倒した日大が、同じ問題を抱える法政も圧倒できるかがこの試合の見どころとなる。

それはさておき、両校にとっては泣いても笑っても最終戦。仲良く大学選手権出場を決めているとは言え、勝って有終の美を飾り、大学選手権に弾みを付けたいところ。とくに対抗戦G校はどのチームも強力で、その壁を乗り越えない限りお正月を迎えることはできない。そんなことを想いながら、両校のラストファイトのメンバーを確認する。

日大は1年生メンバーを4人含むがベストメンバーといえる陣容。負傷した徳留(1年生)の代わりに4年生の新井が入ったが、昨シーズンはレギュラーだった選手なので戦力的には問題ない。新井の他にはベンチに入ったSO及川(4年生)も実績がある選手。日大の場合は、将来性や継続性に対する意識が強いのかも知れないが、上級生の選手に対する見切りが早いような気がする。しかしピッチに立つ選手にとっては彼らがベンチに居るだけでも心強いはずだ。法政もシーズン中盤にしてようやく固まった盤石のメンバーと言える。正直、春からこの形でチームを作っていれば優勝争いに絡むことも可能だったのではと思わせる選手達が揃っている。本日のメインはこの後に行われる流経大と東海大の頂上決戦だが、3位争いが絡んでくるこの試合も見どころがたくさんあるはずだ。

[前半の闘い]

日大のキックオフで試合開始。序盤から大量点を奪って3位浮上を目指すという意気込みに燃えた法政が積極的に攻める。日大のようなシステマティックな「きれいに」陣形を整えたアタックではなく、セカンドフェイズで既にラインはガタガタの状態になるのだが、個々が強力でかつ全員が前を向いたアタックは迫力がある。アタックでもディフェンスでも、1対1の勝負で勝てば「数的不利」は関係ないといったような(ある意味での)開き直りが心地よかったりするから不思議。逆に日大は形へのこだわり(きれいにやろうとする)が強い分、攻守とも対応が遅れ気味のような感じがする。法政はアタックで詰まったらウラにキックと至ってシンプル。逆に日大は継続への拘りが強い。

7分、積極的に攻めた法政に先制点が生まれる。日大が自陣22m内でのスクラムを起点として、ブラインドサイドからライン参加したWTB瀧水を使って果敢に攻めるものの、タックルに遭ってオフサイド。法政のSO猪村が正面22m余りのPGを確実に決めて3点を先制した。リスタートのキックオフでは、日大のマイケルが大きな壁となったかのようなタックルで法政のノックオンを誘うが、スクラムからの日大の攻めはモールパイルアップとなる。日大は攻守とも接点で苦戦を強いられ、反則が増えていくことでゲームの流れを法政に渡す。12分には法政が日大陣に入ったところで得たPKからタップキックで攻め、パスをもらったWTB半井が一気にゴールラインまで到達する。GK成功で法政のリードは10点に拡がる。

粗削りながらも元気いっぱいの法政に対し、洗練されたスタイルの日大は身体が重いように感じられる。アタックではパス受ける選手が止まっているように見え、ディフェンスでは踏み込みが一歩足りないような印象。数では上回っているのに「ウォッチャー」になっている選手が多いようにも感じられる。こうなるとパワーも勢いも上回っているチームの方が優位に立つことは自明の理だ。リーグ戦グループでも屈指の面白いアタックを見せていた日大は何処に行ってしまったのだろうか?という想いを禁じ得ない。17分にも猪村がゴール正面20mのPGを決めて13-0となる。

完全に勢いに乗った法政が畳みかける。リスタートのキックオフに対するカウンターアタックからHO小池がタテを突いて大きくゲインし、フォローしたNo.8堀にパスを繋いでトライを演出。FWのタテ連発によるトライは展開の法政らしからぬパターンではあるが、他にもFL西内、WTB半井にFB森谷といった強力なランナー達が揃う今シーズンの法政にとっては一番効果的にトライが取れるスタイルでもある。日大でパワフルと言えるランナーはCTBマイケルくらいだが、相変わらずショートキックなどの小技が多く、相手が畏れているはずの強引に行くプレーが少ない。ルーキーのLOキテもまだまだパワー不足の感が否めない。

法政が日大陣での攻勢をゆるめない中で、日大が反則を重ねるという(日大にとっては)悪い流れが続く。22分の30m余りのPGは外れるが、25分に日大陣10mラインから少しゴール寄りに入った位置からのPGは決まりあれよあれよという間に法政のリードは23点まで拡がった。その後、日大は法政陣奥深くまで攻め入り、30分、34分に相次いで法政陣22m内でのラインアウトのチャンスを掴むが、いずれもノックオンで絶好の得点機を逃す。日大は継続ができているものの、法政のようにスピードに乗った状態でパスが繋がるシーンが殆どなく、簡単にタックルに捕まってノットリリースの悪循環の連鎖を断ち切れない。

試合の流れをなかなか自分たちの方に引き寄せられない日大だが、38分に法政ゴール前えたPKのチャンスでクイックスタートからSO下地がトライ。GK成功で7-23とようやく日大の反撃体制が整ってきた。リスタート直後にも日大は継続攻撃から法政ゴールに迫るがパスミスでチャンスを潰す。ただ、日大にとっては前半終了間際に1本返すことができたのが大きかった。前半は生彩を欠いた日大だが、後半は気持を切り替えて逆転に迫れるか。

[後半の闘い]

おそらくハーフタイムでは首脳陣からの厳しい言葉を浴びたであろう日大のメンバー達。しかしながら、後半になっても前半の悪い流れ(アタックもディフェンスも消極的に見えてしまう)を断ち切れない。最終戦と言うこともあり選手達に疲労が溜まっているのだろうか。ただ、前日に上柚木で観た拓大は完全固定メンバーで戦い続けているにも関わらず元気いっぱいだった。それを考えると、日大の場合はメンタル的な部分が大きいのかも知れない。いや、そうとしか思えないくらいに本日の日大には元気が見られない。

試合の流れを変えるために日大は先に点を取りたい。法政がたくさん得点を取って居るように見えるが、1トライ1ゴールで7点取れるラグビーの場合は16点のビハインドはさほど重くない。3分に法政陣10mの位置でのスクラムを起点としたオープン展開も、マイケルからWTBにボールが渡ればビッグゲイン間違いなしのシーンでWTBがボールを取り損ねてノックオン。そんな波に乗れない日大を尻目に法政は確実に得点を重ねていく。8分にはゴール前で得たPKのチャンスから法政はスクラムを選択。FWのサイド攻撃で前進を図り、後半からピッチに登場したPR石澤がボールを日大ゴールにねじ込む。10分にもリスタートのキックオフから法政はFWでタテを突き、HO小池が持ち前の脚力を活かしてゴールに到達する。後半10分の時点で法政が35-7と大きくリードする展開を誰が予想できただろうか。

日大は10分にFWの2人とBKの1人一気に入れ替えて起死回生を図る。15分にはそのメンバー交代が効を奏し、SOに入った及川(下地はCTBへ移動)が法政ディフェンスを切り裂いてトライを奪った。及川は4年生で昨シーズンはレギュラーのSOを務めていた選手。下地の台頭もあり、今季はリザーブでベンチを温める及川にとっては(おそらく)不本意な形となっているが、そんな鬱憤を晴らすかのような面目躍如といった感じの素晴らしトライだった。その後の及川の溌剌とした動きを観ても、結果論かも知れないが当初からSO及川、CTB下地でラインを組んでいたら日大のアタックはさらに魅力を増していたかも知れないと思った。

14-37で残り時間が25分は日大にとって厳しい状況ではあるが、3T3G+1PGで試合をひっくり返すことはけして不可能ではない。しかし、24分にそんな日大の反撃への気持を萎えさせるような残念なプレーが出てしまう。自陣ゴールラインを背にした法政の猛攻に耐えてターンオーバーに成功し、パスが数的有利となった外に繋がればビッグゲイン確実と見られたところで、法政のCTB金がインターセプトに成功して一気に日大ゴールまで到達した。法政はさらに29分に1PGを追加して47-14と法政のリードが33点に拡がった時点で勝負ありとなった。

35分に日大は法政陣22m付近で得たPKからSH小川がタップキックからトライを奪うものの、法政は終了直前に堀がトライを奪って最終スコアは54-21となりゲームは終了。整備された組織が個人能力の高さをベースとした無骨とも言えるプレーを前に敗退したかっこう。しかしこのことは、1対1で負けないことがラグビーの原点であることを改めて教えてくれたとも言える。そして、勝利に向けた強い気持ちを15人が共有することが何よりも大切であることも。残念ながら、日大は気持の部分でも負けていたという感が強い。せっかくほぼ4年をかけてここまで来た日大にとっては残念な敗戦となった。

[試合後の雑感]

何故かリーグ戦の終盤に失速してしまうことが多い日大。この試合では「燃え尽き症候群」という言葉も頭の中でちらついた。途中出場ながら溌剌としたプレーを見せてくれた及川のことを思うと、こういうときこそ4年生の力が必要なのではないかと痛感させられた。チーム作りの難しさを感じさせられたと同時に、結果も3位が確実とみられた状況から一気に5位に転落という形になってしまった。ただ、日大にとってはさらに3試合、チーム力をアップするチャンスが残されている。強豪が揃うグループに入ることになってしまったが、全国のラグビーファンに日大が4年をかけて培ってきた魅力的なアタックを披露して欲しいと思う。

ここまでもやもやした戦いが続いているように見えた法政にとって、ようやく「覚醒」したとも言える会心の勝利となったこの試合。大学選手権を前にして復活への手がかりを掴めたことは、リーグ戦Gのサポーターとしても嬉しい。パワフルなランナー達を活かす形でシンプルに前を向くラグビーを貫いていくことで大学選手権ではいい結果を出して欲しいと思う。また、おそらくこの試合で対戦校の法政に対する警戒心は一気に高まったはず。復活を目指す法政にとっては価値のある1勝になったことは間違いなさそうだ。
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