「熱闘」のあとでひといき

「闘い」に明け暮れているような毎日ですが、面白いスポーツや楽しい音楽の話題でひといき入れてみませんか?

法政大学vs立正大学(2013年9月15日)の感想

2013-09-16 11:07:49 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


いよいよ2013シーズンの開幕だというのにこの天候。台風が近づく中、ここ埼玉地方も朝から土砂降りの雨でこれでは水中戦になってしまう。家を出る段階でやや雨が小降りになってきたことに一縷の望みを繋ぎ、マイカーで熊谷に向かった。途中も時折雨が強くなり、また、道路沿いを流れる川も明らかに水位が増している。大丈夫だろうか。

しかしながら、熊谷ラグビー場に到着したキックオフ30分前の段階で奇跡的に雨が止み、青空ものぞく状況に。ピッチはたっぷりと水を含んだ状態ではあるが、快晴の条件なら選手達も気分的には楽になるのではないだろうか。最初は様子見で屋根のあるスタンドの上段に座ったが、天候が回復したのを幸いに、前方のベンチシートの方に席を移動した。

◆キックオフ前の雑感

まずは法政のメンバーを確認。気になるのはどうしてもSOが誰かということ。実は2日前の協会発表、前日の法政HPでの発表、そして当日の熊谷のメンバー表で微妙にメンバーの修正があった。といってもそれはリザーブ登録の猪村だが。2日前は21番だったが、前日はメンバー表から消え、そして当日は22番。些細なこととかも知れないが、なんでこうなる?という想いを禁じ得ない。そう思うのも、たとえリザーブ登録でも猪村は法政のキープレーヤーだと確信しているから。春シーズンからSOの先発は加藤に決まっており、猪村はつい先週のジュニア選手権(関東学院戦)でスタメン出場している。果たして、本日は出場のチャンスがあるのだろうか。

それはさておき、BK展開を持ち味とする法政だが、現状はFWのメンバーがより充実しているように感じる。HO小池、FL西内、No.8堀主将は走力に自信を持つ選手達。「らしくない」かも知れないが、オープンに展開するよりも、FWでモールなどを用い、確実に前にボールを運んで得点するのが法政の得点パターンになっている。ここでSOに求められる役割は前に出るための正確なキック力と堅実性だと思うのだが、首脳陣には別の考えがあるのかも知れない。いずれにせよ、BKラインに展開してアタックを持ち味とする法政ラグビーの復活は、首脳陣に課せられた課題であることは間違いない。

一方の立正はBKラインの両翼にリーグ戦G屈指のトライゲッター、早川と鶴谷が揃い踏みとなり、遂に戦闘態勢が整った。司令塔のツトネを軸として、彼らにいかにいい形でボールを渡せるかが勝利を掴むポイントとなる。そういった意味でも、鍵を握るのはFWの頑張り。けして大きなFWではないがピッチに立つ選手達を見比べると、法政よりも身体に厚みが感じられる。ただ、法政のFWは見た目以上にタフで戦術にも長けている面がある。立正に求められるのは、1にも2にも積極性。相手に合わせてしまいがちなところを修正し、自らペースを作り出すことができるだろうか。

◆前半の戦い/お互いに決め手を欠く中、拮抗した展開に

メインスタンドから見て左に陣取った法政のキックオフで試合開始。序盤戦は様子見の形で蹴り合いとなるが、エリアマネジメントの面ではツトネがSOを務める立正の方に分がある。法政の加藤はミスキックこそないものの、やはり飛距離の面で不安あり。キック合戦の中、2分に法政が自陣ラインアウトからモールで前進し、オープン展開からのロングキックがドロップアウトとなる。ここからしばらくの時間帯は法政が立正陣で攻勢に出る。ただ、法政はBKに展開してもパスが雑でなかなか効果的なアタックにならない。7分には右中間24mの位置でPGのチャンスを得るが失敗し先制ならず。

直後の立正ドロップアウトからのキックに対し、法政はキックで前進してボールを確保しオープンに展開するがノックオン。立正は拾ったボールを絶妙のタッチキックで法政陣10mまで陣地を挽回に成功。さらに法政ボールのラインアウトもスティールに成功してさらに前進を図るが痛恨のノックオン。今度は法政のロングキックが立正ゴールの僅か手前でタッチを割る絶妙のキックとなり、法政がチャンスを取り戻す。このあたり、法政の方にツキがある感じ。

法政はゴール前でのラインアウトでスティールに成功し、オープンに展開した後FWでサイドを攻め、最後はFL西内がゴールラインを越えた。これが、この日都合4トライを記録することになる「西内ショー」の幕開けだった。ハプニング的な要素もあるが、法政が先制したことでペースに乗るかと思われたが、ペースを掴んだのは立正の方だった。キック主体の法政に対し、立正はまずFW周辺でボールを動かした後、オープンに展開してディフェンダーにしっかり身体をあてる。ここで法政が後ずさりしたところをさらにFWで攻めて前進を図るという意図が明確に見えた。

15分、立正のアタックを担う2人のうちの1人、早川がまず魅せる。自陣からのカウンターアタックで法政ディフェンダーをかわしながら前進し一気に法政陣22mまで到達。あとは適切な位置にラストパスを受けるフォロワーが居ればトライというところまで来たが、うまくボールが繋がらず絶好のチャンスを逃す。しかしながら、ここで勢いを得た立正の攻勢が続く。18分、法政のペナルティで掴んだゴール前ラインアウトから一度オープンに展開した後、ショートサイドを攻めてFB吉澤がラインブレイクに成功しラストパスをWTB鶴谷に渡した。鶴谷は豪脚を活かして法政DFを振り切りゴールラインを越えた。GKは失敗したが5-7と、法政のリードは2点に縮まる。

点差が縮まったところで、両チームともミスが目立つという状況ではあるが、HWLを境にして拮抗した展開が続く。組立を決めている立正の方が攻勢ではあるのだが、SHからの球出しのテンポが遅く、パスもツトネがジャンプしないと取れないような状況ではリズムに乗ったアタックには繋がらない。ポイントのサイドを突くチャンネルゼロのアタックにしても今一歩テンポが合っていない感じで有効なゲインに繋がらないのが残念。FWも結果的にSHからの球出しを妨げる位置に立っていたりと集中を欠いているように見えるところがあった。ここがしっかり決まれば試合を優位に運べるだけに惜しい。意図は明確なだけに、今後完成度を上げていきたい部分だと思った。

試合が終盤にさしかかった30分、法政はワンチャンスをものにする。立正のペナルティで得たゴール前ラインアウトのチャンスからモールで前進してゴールライン付近でラック。サイドを攻めて、またも西内がゴールラインを越えた。西内の体幹の強さが活きた形。SH大政のGKも成功し法政が14-5とリードを9点に拡げる。ラインアウト→モール一辺倒とはいえ、しっかり得点が取れるパターンを持っているのが法政の強みだ。

しかし、立正もすぐさま反撃。35分、法政ゴール前での法政の反則からすかさずタップキックで攻めてFL小嶋がゴールラインを越えた。ツトネのGKも成功し12-14と立正のビハインドは再び2点に縮まる。再び立正が勢いを取り戻し、39分にはHWL付近でPK.を得る。22m内へのタッチキックを狙うにも絶好の位置だったがノータッチ。このミスは痛かった。さらに終了間際の41分、立正は左中間の10mライン付近で得たPKからショットを選択するが外れる。このまま5分の展開で前半が終了した。立正の頑張りも大きいのだが、むしろ気になったのは法政のもたつき。アタックの選択肢がBKはキックでFWはラインアウトからのモール。なかなか再建は厳しそうだという印象を抱かせた前半の闘いぶりだった。



◆後半の戦い/ドラマは28分から始まった

後半も立正はFW周辺でのアタック、法政はBKに展開してキックという状況の中、拮抗したというよりは決め手に欠ける(ミスが多い)展開が続く。立正サイドでの観戦だったが、法政サイドではさぞかしフラストレーションが溜まっていたことだろう。3分には法政が立正陣10m付近でのスクラムを起点として「らしさ」を感じさせるBKラインによる連続攻撃を見せるものの、ゴール目前で痛恨のノックオン。法政サイドから大きなため息が聞こえてきた。

逆に8分、立正は法政ゴール前でPKのチャンスを得るが、タップキックで攻めてノックオン。取れそうで取れない立正ファンのフラストレーションも貯まる状況になっている。そのような立正を尻目に法政は16分、「得意の形」から追加点を奪う。ラインアウトの位置は立正陣10mラインと22mラインの中間くらい。しかしながら、法政はモールを形成してぐいぐい前に前進する。ゴール直前でラックとなったところで、またも西内がボールを持ってゴールラインを越えた。GKも成功して21-12と法政が立正を突き放す。

直後のキックオフで立正は痛恨の反則。自陣での不用意な反則は禁物ということは分かっているはずなのに4度目の正直となってしまった。ゴール前ラインアウトから法政はモールを作らずに西内にボールを渡し(たように見えた)、ここでもトライをゲットする。SH大政のキックも絶好調で28-12となり、拮抗した展開はいつの間にか一方的な展開に変わってしまった。立正が犯した反則も最終的には7個で少ないのだが、ことごとくそれが失点に繋がってしまった形。

26分、法政はさらにG前でのラインアウト→モールからトライを奪う。今回トライを奪ったのはNo.8の堀主将。GK成功で35-12と試合の流れからもここでほぼ勝敗が決した。奪った5トライがすべてFWによるものという状況は法政ファンにとって納得がいかない部分があるかも知れないが、まずは緒戦を圧勝で終えることができて一安心と言ったところ。あとは、一矢報いるべく立正がどんなアタックを見せるかに注目せざるを得ない状況となる。

ところが、実はこの試合のハイライトは後半の28分以降の法政の闘いぶりだった。法政はPR鈴木に代えて水本、LO小山に代えて川地、SH大政に代えて中村、SO加藤に代えて猪村を投入。ほぼ勝敗が決した中での典型的な「ご苦労さん」交替といった雰囲気だった。しかし、ここで法政のアタックが一気にテンポアップし、スイッチが入ったような状態になるから試合は分からない。

火を付けたのはツトネがFWのいないサイドに蹴ったリスタートのキックオフ。ここでボールを確保した法政がカウンターアタックを仕掛けてCTB金が本日のBK初トライを記録する。猪村がしっかりGKを決めて42-12。そう、HB団の交替で法政のBKアタックに一気に火が付いたのだった。とにかく22番からのパスが「快感」と行っていいくらいにビシバシCTBに渡り、流れるようなラインアタックに繋がっている。猪村のパスはけして優しいパスではなく、ひとつ間違えばノックオンを誘うような球速だ。しかしながら、相手をしっかり見て確信を持って放っており、実際は受けやすいパスになっている。

なかでも圧巻だったのは、36分にゴール前で相手ディフェンダーをしっかり引きつけた上でWTB半井に送った絶妙のロングパス。半井はしっかりボールを持って前に走るだけで良かった。40分にも法政は猪村を主軸としたテンポの良いパス回しでCTB大塚がトライ。勝敗が決した後であり、しかも相手が疲れているとは言え、それだけでは説明がつかない。

ここでふと気付いた。猪村はチームメートから絶大な信頼を得ているプレーヤーであること。厳しいように見えるパスでも、受け手との信頼関係があればしっかり通るということだ。頻繁に味方選手に声をかけてコミュニケーションを取るなど、今シーズンになってから極端に出場機会が減った猪村だが、腐ることなくしっかり爪を研いでいたということか。ひとりの選手の登場でチームがこんなに変わるのか、いや変わっていいのかと思わせる複雑な気持ちを抱かざるを得ない形ではあるが、ややもすれば締まりのない結末になりかけた試合が俄然面白い試合になってしまったという高揚感を持って試合観戦を終えることができた。



◆残念だった立正

立正は本当に惜しかった。法政よりも意図がはっきりしたアタックを見せていたし、ミスがなければ前半をリードして終わることも出来たはず。WTBにいい形でボールを渡せなかったのも反省点だろう。ひとつ思ったことは、選手達がなかなか意図したように動けていないことで、それは試合を重ねながら経験と積んで身につけていくものになると思う。また、細かい話だがバックスリーのポジショニングも気になった。法政が蹴ってくれたのでカウンターアタックのチャンスはあったし、ランナーもいる。だから、しばしばキックが彼らの頭上を通過する形になっていたのが惜しまれる。そういった細かい点をひとつひとつ潰していくことで上に行くことは出来るはず。この試合の結果を糧にして頑張って欲しい。

◆誰が法政の10番を背負うべきか

法政の28分のHB団の交替には疑問が残る。交替の時期と意図がよくわからないという意味で。もし、ゲームの流れを変えるのなら、後半から代えるくらいのタイミングでもよかったはず。さらに推測すると、首脳陣はHB団を代えることでここまで劇的にBKのアタックが変わってしまったことが想定外だったのではないだろうか。もちろん、ファンに取っては嬉しい誤算だが、首脳陣にとってはほろ苦い結果だったかも知れない。僅かの時間で自身の存在感をしっかりアピールできた猪村に拍手を贈りたい。

それはさておいても、この試合で法政は誰が10番を担うべきかがはっきりしたような気がする。チーム掌握という意味で学生最高レベルの能力を持つ選手をBチームや控えにおいておくのは余りにももったいない。もちろん、首脳陣には別の考え方があるかも知れないし、次の試合のスタメンも変わらないかも知れない。しかし、私個人としてはたとえ12分間だったとしても、猪村のプレーを忘れることはないだろう。私的にはとても面白い試合だった。
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第1節の試合予定&みどころ(2013.09.15 & 16)

2013-09-15 10:09:14 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
○第1節の試合予定

 9月15日(日) 法政大学 vs 立正大学 13:00 熊谷ラグビー場
  9月16日(祝月) 中央大学 vs 大東文化 13:00 熊谷ラグビー場
  9月16日(祝月) 拓殖大学 vs 流通経済 15:00 熊谷ラグビー場

2013シーズンのスタートも残暑厳しい熊谷から。と書きたいところだ、台風接近による生憎の雨模様でしかもかなり強く降っている。今シーズン、これから始まるであろう展開/ドラマを予見させるような幕開けとも言えそうだが、悪コンディションを吹き飛ばすような戦いを期待したい。とくに、今シーズンは優勝争いの本命不在といった感があり、オープニングから既に8チームによるサバイバルゲームが始まっているとも言えそうな状況。大切な緒戦だけに、雨で爆発的な得点が期待できない分、確実に得点を積み上げて勝利を掴みたい。

【法政大学 vs 立正大学】

法政の先発SOは加藤。当初は21番に名前があった猪村はリザーブからも外れた。結局、監督の方針にブレはなかったということになりそうで、BK展開勝負の法政復活への意図が見て取れる。しかしながら、現実を見れば、法政はFW主体のチームとなっており、FW戦にこだわった方が結果が出そうな気がする。対する立正はBKに早川と鶴谷が復帰したが、SOにパワフルなツトネが居るとはいっても、このような天候状態でBK勝負を居挑むのはリスクが高そう。FW戦となった場合には劣勢となる可能性が高く、我慢のラグビーで勝機を掴むしかなさそうだ。

【中央大学 vs 大東文化大学】

大東大はリザーブにもWTBサウマキの名前が見当たらないが、ベストの布陣で緒戦の戦いに臨めるのが強み。とくにFWはハフォカ、テビタ、長谷川が揃い踏みとなり、種市も復帰で最強の陣容と言える。また、BKのルーキー3人(HB団とFB)もレギュラー獲得で溌溂としたプレーを見せてくれることだろう。タフな戦いを強いられそうななかで、高橋主将の存在も大きいはずだ。一方の中央はBKに走力が高い選手達を揃える。また、奇しくもHB団は大東大と同じく1年生コンビで、こちらもフレッシュなプレーを見せてくれそう。雨天が予想される中でFW戦となることは必死の状況ではあるが、確実に言えることはミスを重ねた方が負けるということ。選手個々が的確に状況判断出来るかどうかが勝敗を分けることに勝敗を分けることになりそうだ。

【拓殖大学 vs 流通経済大学】

優勝戦線を占う意味でも、第1節の要注目カード。格上の流経大に拓大がチャレンジという位置づけの試合ではあるのだが、どうも流経大がピリッとしないような感がある。選手起用を見ても(選択肢が多い分)迷いがあるように見えるのだが、実際はどうなのだろうか。拓大はFWのセットが強力なためLOにフシマロヒを起用し、安定した球出しからWTBリリダムで勝負という意図が見えるスタメンではあるが、FLにリサレを入れて機動力アップを図った方が攻撃力が上がるような気もする。もちろん、天候に左右される部分が多々あるので一概には言えないが。対する拓大は、流経大と違って爆発的な得点力で勝負するチームではないので、FW中心でじっくりと攻めることになりそう。ウヴェは確実にマークされるので、その他のメンバーの踏ん張りが鍵になる。こちらも第1試合同様、撮れるところで確実に取り、ミスを少なくすることが勝利を掴む鍵になりそうだ。僅差の好ゲームを期待したい。
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2013シーズン開幕目前/今シーズンの戦いに期待すること

2013-09-15 09:14:49 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
今日からいよいよ大学ラグビーも開幕。私自身にとっても、1年でもっとも楽しい3ヶ月が始まる。

今シーズン、大学ラグビーファンの間でまず注目を集めそうなのは、筑波大学の開幕4番勝負。対戦相手は順番に慶應、早稲田、明治、帝京と、あたかも昨シーズンを5位で終えたチームであるかのような扱いが理不尽な気もするが、対抗戦Gの戦いを序盤から緊張感みなぎるものにしていることは間違いない。そんな状況の中で、春シーズンはパッとしなかった感がある早慶明もしっかりチームを作り上げている状況が見て取れ、リーグ戦Gとの格差は縮まるどころか拡がっているような印象を受ける。仮に筑波が4連勝してしまったらどうなるのだろうか?と(よからぬ)期待もしてしまう。

そんな(リーグ戦Gウォッチャーにとっては)残念な状況が続くここ数年といった感じだが、だからといってリーグ戦Gの戦いが見所のないものになるとは思っていない。あくまでも数字だけからの判断だが、東海、流経の2校がチーム作りに苦労する中で、一足早くチームを完成させた拓大に復調の様子がはっきり見て取れる法政と大東が優勝争いに絡みそうな状況になっている。レベルの面で不安がない訳でもないが、今シーズンこそは、上位グループ内での凌ぎあいになることを期待したいし、おそらくそうなるだろう。開幕を目前に控え、各チームに対して期待するところを書く。

◆強力なバックスリーを活かすために/東海大

今シーズンの東海大の看板は小原、石井、近藤(あるいは安岡)で構成される強力なバックスリー。彼らにいい形でボールが渡ったらトライは約束されたようなもの、と言ってしまっても過言ではないくらいに魅力的なランナー達が最後尾に控える。だが、ちょっと待てよ。昨シーズンの東海の売りはFWの強力な第3列ではなかったか。正直、毎年毎年チームのスタイルがこんなに変わっていいのだろうかと考えさせられてしまうが、選手達の個性が輝くラグビーをするチームがあってもいいかなとも思う。心配なのは「バックスリーで勝負」を強く意識しすぎてチームバランスを崩してしまうこと。FW中心で組み立ててBKへ展開という形を序盤戦で作り上げることで頂点を目指すチームを作り上げて欲しい。

◆覇権奪還はチームコンセプト次第/流通経済大

FWにフシマロヒ・シオネ、ジョージ・リサレ、BKにリリダム・ジョセファ、シオネ・テアウパ(SOで起用したら面白そうだ)といった強力な留学生達が所属する流経大は、今シーズンもチーム作りに苦労している感がある。彼らをどんな組合せで起用するかという点もさることながら、強力かつ個性的な面々であるがゆえにチーム戦術を固めることが難しいように思われる。とくに首脳陣の頭を悩ませているのは、リリダムの起用方法ではないだろうか。短時間でのトライ量産が期待できるインパクトプレーヤーとしての起用がいいのか、それとも得点力だけでなく攻守にも高さが活かせる先発起用の形がいいのか。首脳陣の判断に任せるしかないが、ひとつ言えそうなことは(私見ながら)FWの機動力アップに欠かせないジョージ・リサレは外せないということ。大学トップレベルのFLに成長する可能性を感じさせる選手だけに(洒落ではないが)「常時」起用してほしいところだ。

◆いち早くチームが完成し優勝のチャンスも/拓殖大

昨シーズンのリーグ戦Gでの注目チームになったのは拓大だった。当初はどうやって入替戦を回避するかという状況だったが、ほぼ完全に固定されたメンバーで戦術を絞って戦いに臨んだこともあり、東海や流経大にも肉薄する堂々たる3位でシーズンを戦い終えた。元来選手層が厚いチームではなく、それは今シーズンも変わらない。ただ、ウヴェとステイリンの2枚看板が揃うラストシーズンの今期は優勝を目指して頑張って欲しい。FWは具(PR3)の加入でリーグ戦G最強スクラムを構築、またBKも個々のパワーアップで得点力を上げつつある。そして、既に他校に先駆けてチームが完成しているのが強み。今シーズンも固定メンバーで戦い抜くことが出来れば、自ずと結果はついてくるのではないだろうか。

◆首脳交代で話題先行も着々と進むチーム再構築/法政大

谷崎監督の就任は今季のリーグ戦Gでも大きな話題のひとつ。チーム再建への大きな期待を集める中で、過去にはとらわれないスタイルを貫きながらチーム力アップを目指しているような印象を受ける。司令塔を春から加藤に固定しているのは、黄金BKラインの復活に対する想いがあるのかも知れない。ただ、現状の法政を観ると、BKよりもFWのチームになっている。機動力はもとよりセットプレーの安定度やディフェンス力でもリーグ戦Gで上位のFWと言っていいだろう。そう考えると、今シーズンはむしろFW戦にこだわって勝負を挑んだ方が結果が出るような気がする。昨シーズンまでの堅実性(猪村)よりもファンタジスタ(加藤)を選んだことが吉と出るかに注目したい。

◆新体制5年目でそろそろ結果を出したい/日本大

ある程度予想されたこととは言え、やはり小川(現東芝)が特別な存在だったのだろうか。そんなことを思わずには居られないような春シーズンの闘いぶりだった。年々得点力を上げてきた日大だったが、今シーズンは再び決定力不足の日大に戻ってしまった感がある。得点力アップは「小川バブル」だったのかと言われないためにも、個々に頼らないチーム力で得点を挙げていくチームへと飛躍を遂げて欲しい。そもそも、昨シーズンは私見ながらリーグ戦Gでもっとも組織的で流れるようなアタックを見せていたチームだったはずだ。それが1年でなくなってしまうとは思えない。FWには大窪や高橋、BKにもSO下地やCTB/WTBのマイケルといった対戦校にとっては脅威になる選手達がいる。コミュニケーションを密にした全員ラグビーで今年こそは上位進出を果たして欲しいところだ。

◆チーム体質の改善に成功すれば上位進出も/中央大

大東大OBの酒井氏を首脳陣に加えてチーム力アップを目指す中央大。部員一丸となった応援風景など、体質改善を目指す姿勢はしっかり見える。ただ、春シーズンから夏合宿の戦績を見る限り、なかなか結果が出ていないように見える。メンバーは他校と比べても遜色のない陣容となっているだけに「何か」が足りないのだろうか。ここ数年言えることは中央大のBKラインはリーグ戦G屈指のメンバー構成になっていること。課題はFWにあること、試合を観れば明らかで、8人が効率的に動けていないためすぐにミスマッチの状態になる傾向がある。ここを克服できないと宝(BKライン)の持ち腐れになってしまう。羽野や高といった決定力のあるバックスリーを活かすためにも、FWが精力的勝つ無駄なく動くことが上位進出の鍵を握ることになりそうだ。

◆今シーズンの注目チームは元気溌溂で優勝争いの期待も/大東文化大

昨シーズンの注目校が拓大なら今シーズンは大東大。拓大はシーズンが始まってからじわじわと存在感を増していったのに対し、大東大は始まる前からワクワクといった感じ。指導体制が変わるだけでここまでチーム状態を変えることができるという意味で、(体制が変わってもなかなか体質改善が進まないチームが多いことを考えると)希望の星とも言える。大東大も流経大と同様に強力な留学生が所属するチーム。だが、流経大との大きな違いは誰を起用しても戦術にブレが生じないことだと思う。そんな中での期待の選手はLOのハフォカ(実は高速ランナー)とWTBのサウマキ。とくに後者は既にリーグ戦GトップのWTBと言っていいくらい高い決定力を持っている。闘将の高橋主将が引っ張るFWも開幕戦で長谷川とテビタが怪我なく揃い踏みとなるのが大きい。また、HB団とFBのルーキーもレギュラーを獲得した模様で、チームとしての伸びしろも十分にある。夢は大きく!と行きたいところだが、まずは一戦一戦を大切に戦い、確実に自信を付けていって欲しい。

◆上位進出の鍵を握るのはFWの頑張り/立正大

春先のセブンズで元気なところを見せ、上位進出を期待させた立正大だったが、15人のチームになるとなかなか難しいようだ。パワフルなツトネが司令塔を務めるBKは両翼に早川、鶴谷が復帰しいい形でボールが彼らに渡ればトライラッシュを演じることが可能。だが、体格面での劣勢もあるが、FW戦を挑まれたら自慢のBKラインも宝の持ち腐れになってしまう。ここでキープレーヤーとなるのはおそらくNo.8の加藤ではないかと思う。小柄の選手だが、高いランニング能力を持っていることはセブンズでの活躍でも実証済み。しかし、立正大に必要なのは、キックオフから果敢に攻めに出る積極性だと思う。過去数シーズンの闘いぶりを振り返っても、ゲーム終盤に出来ることをなぜ頭から出来ないのかと感じることが多かった。下克上ではないが、下馬評を翻すような闘志溢れる闘いを見せてくれることを期待したい。

◆今シーズンのリーグ戦Gに期待すること

どうしても気になるのが、冒頭でも書いたように対抗戦Gとの実力差。しかし、まずは「自分たちの戦い」を大切にすべきだろう。ラグビーの優劣は、体格、素質、選手層といった要素だけでは決まらないことを見せて欲しいと切に願う。チーム戦術の共有、試合中の適切な判断と密なコミュニケーションを図ることで強豪にも勝てるチームを作って欲しいし、作る努力を見せて欲しい。そんなチームや選手達が居る限り、微力ながらではあるが、リーグ戦Gをしっかりサポートしていきたいと思う。
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トップリーグ開幕/夢は「南半球バーバリアンズ」の結成

2013-09-03 23:22:58 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
トップリーグが開幕した。今シーズンは2チーム増えたことに加え、2グループ・2ステージ制の採用といった新たな試みがある。普段は大学ラグビーのそれもひとつのリーグを中心にラグビーを観ているため、トップリーグ生観戦の機会が殆どない。

しかし、世界のトップレベルの選手がどんどん増えている現状を考えたら、これを見逃さない手はない。技術も戦術も拙(つたな)い大学生が何をすればいいのかをはっきり見せてくれるという意味で、トップリーグの戦いは重要だし、しかも最高レベルのプレーを直に観ることができるのだから。

◆「ウィンターリーグ」の様相を呈するトップリーグ

トップリーグに参戦している外国人選手は殆どが南半球の国からやって来ている。学生時代から日本で活躍しているアイランダー(フィジー、トンガ、サモアなど)の選手達はもとより、ついこないだまで「スーパー・ラグビー」で活躍していた現役国代表/経験者も含むバリバリの選手達。

ここでふと思った。南半球は夏に向かってラグビーシーズンはオフとなるのに対し、日本はまさにこれからがシーズン。この状況をアメリカ大陸の野球に例えれば、トップリーグは正に(南半球の選手達にとっては)ウィンターリーグそのもののような状況になっていることに気付く。

ちなみに「ウィンターリーグ」はカリブ海のプエルトリコ、ベネズエラ、ドミニカ共和国およびメキシコの各地で開かれているプロ野球の総称。開催期間が11月から2月のため、米国のメジャーリーグなどで活躍する上記の国々出身の選手達も参加して戦う。バリバリのメジャーリーガーが華を添える一方、ここでの活躍が認められてメジャーリーグ入りを果たす選手も居るという具合に、様々な形で盛り上がりを見せているようだ。

なので、南半球出身の選手達にとっては、オフを利用して「冬期」に試合を行うわけだから、ウィンターリーグというわけ。厳密に言えば、ウィンターリーグ(中南米の野球)はメジャーリーガーが故郷に錦を飾る形であり、トップリーグ(日本のラグビー)はワールドクラスの選手達の一時的かつ豪華なる転籍なのだが、野球とラグビーで南北を入れ替えたら似たようなことが起こっていると思うと、何だか楽しくなってくる。

◆「トップリーグに参戦した理由」に想うこと

10月号のラグビーマガジンに「開幕特集」ということで、今季からトップリーグに参加する3選手、JP・ピーターセン(南ア→パナソニック)、ベリック・バーンズ(豪州→パナソニック)、ハインリッヒ・ブルソー(南ア→NTTドコモ)のインタビュー記事が載っていた。興味深かったのは、何故日本にやって来たかという理由。

「日本は治安が良く街がきれいで安心して生活できる」とか「異文化に触れて自分を高めたい」というのは社交辞令にも聞こえてしまいそうだが、たぶんホンネだろう。ラグビー選手でもとくにトップ国の代表レベルの選手達は人格的にも優れた人たちが多いという好印象ともラップする。でも、一番大きな理由は「日本は(フランスやイングランドと比べて)シーズンが短く、南アフリカでのプレーと両立できる。」(ブルソー談)というところに集約されそうな気がする。やっぱり「ウィンターリーグ」だったのだ(と小さくため息)。

ピーターセンは「日本の方が(フランスと比較して)トータルのゲーム数が少なく、フレッシュでいられる。」というのもホンネだろう。正直なところ、嬉しいやら哀しいやら何とも複雑な心境になってしまう。でも、日本の方がシーズンが短く、試合数が少ないお陰で世界のトップ選手達が何人もやって来てくれるのはありがたい。ここはあくまでもポジティブシンキングで。それに、あとで書くが試合数が少ないことは、日本側にとっても世界レベルに近づく上ではけしてデメリットではないと思う。

あと、南ア、豪州、NZから複数の選手達が集うことは、それだけでも価値がある。もちろん、日本選手が世界の力を知り、パワーアップを図ることができるということが大きいが、日本で戦う彼らとて、けしてラクが出来るわけではない。幸か不幸かいろいろなところで目が光っているので、パフォーマンスが落ちたらすぐにバレてしまい、地位を失うことだってあるだろうから。遠く離れた極東の島国でテキトーにやっていられると思ったら大きな間違い。もっとも、そんな志の低い選手達ではないだろうけど。

◆夢は「南半球バーバリアンズ」の欧州遠征

トップリーグのことにはまったく疎いのだが、FWの第1列を除けば、どのポジションにも世界トップレベルの人材が、それも複数以上揃っていることくらいはわかる。もし、これだけの選手達を「おまえに任せる」と言われたら、狂喜乱舞したくならない指揮官が居るだろうか。ひとつのチームを作って、例えば欧州遠征を敢行したらイングランドやフランスも最高レベルのもてなしをしてくれるだろう。夢でもいいから、そんな状況を見てみたい。

どうせコンバインドチームだから上手くいかないのでは?というのはたぶん杞憂に終わると思う。確かにNZ、豪州、南ア、そしてアイランダーではプレースタイルが違うかも知れないが、チームメートだけでなくライバル達のことも熟知していなければスーパーラグビーは戦えないはず。国やチームは違っても、お互いにリスペクトしている選手達同士だし、短期間でいいチームができそうな気がするのだ。(願わくばそこにジャパンの選手が何名か入るような状況になるといいのだが。)

もちろん、これは1ファンの他愛のない実現性ゼロの夢に過ぎないことは分かっている。でも、せっかく日本にやってきて1年の中の同じ期間をラグビーを「共通言語」として過ごしているのだ。スーパーラグビーからベストメンバーをセレクトしてチームを作るのとは違うはず。「南半球バーバリアンズ」をここ日本で実現できないものだろうか。

◆実は日本選手にもメリットが

ワールドクラスのそれもとびきりのプレーヤー達がトップリーグでプレーするメリットは、もちろん日本の選手の強化の手がかりを掴めること。世界レベルのパワーと技術を肌で体感できるだけでなく、戦術から普段のラグビーへの取り組みまで、あらゆることのお手本が目の前にあるわけだ。

しかし、日本代表の強化を見据えた場合、他にも大きなメリットがあると思う。確かに日本のシーズンは短いかも知れない。でも、見方を変えると、有効に使える(日本での)オフシーズンは長いということでもある。日本でのシーズンが終わったら、すぐに海外に飛んでいき武者修行、そしてスーパーラグビーなどの南半球での最高峰のラグビー参戦するチャンスもある。

そして、幸いなことに、そのときは日本でウィンターリーグを戦った選手達に何らかの形でサポートしてもらえることだってできるはず。国代表レベルの選手なら、将来もラグビー界への影響力を保ち続ける人は多いだろう。田中や堀江が活躍できたのも、本人の努力はもちろんのこと、トニー・ブラウンの存在が大きかったのではないだろうか。少なくとも、事情がわかりにくい欧州でチャレンジするよりは、日本のことを知っている南半球での方が努力が報われる可能性が高いように思われる。

こうして、いろいろと考えてみると、今こそがトップリーグの頑張りどころだと思う。ひとつの(発展に向けての)大きな流れが来ているといってもいいだろう。今やるべきことは、企業の動員には頼らない一般ファンの増大。ひとりでも多くの観客をスタジアムに呼び込むことが再重要課題のような気がする。魅力的なコンテンツは揃っているのだから、もっとそういったことをアピールしたらいい。ラグビーには野球もサッカーもできなかったこと(世界の一級品を日本に集めること)が出来ていると。
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