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山梨学院大学 vs 東海大学(関東大学ラグビーリーグ戦G-2014.9.20)の感想

2014-09-23 15:13:40 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


先週、開幕カードの2試合を観て、今シーズンの私的注目チームが決まった。リーグ戦グループに昇格(2度目の復帰)を果たした山梨学院がそのチーム。ちなみに去年は大東大で一昨年は拓殖大。結果論だが、1試合ごとに工夫を重ねながら進化を遂げていき、いい形でシーズンを終えることができたチームと言える。もちろん、それ(進化)は試合を重ねるごとに分かっていくことなのだが、山梨学院の場合は緒戦(流経大戦)から(本当の勝負となるはずの)後半戦を見据えた明確なプランが見えたので、じっくり観てみたいと思った。もちろん、流経大戦を観た限りでは「頑張っているのはわかるが退屈なラグビー」というのが一般的な評価だと思う。しかし、それだけではない「何か」を感じた。さて、その山梨学院の相手は流経大や大東大とともに優勝争いを演じることが予想される東海大。先週観た流経大との力関係を知る意味でも興味深いカードだ。



◆キックオフ前の雑感

今シーズン、初めての熊谷での観戦。途中で用事があったので早めに家を出たため、キックオフの2時間前にはラグビー場に着いてしまった。晴天に恵まれた秋空の下でBグランドもCグランドもラグビーが満開だと予想していたわけだが、ラグビーのラの字もない状態で拍子抜けだった。当然、Aグランドで試合するチームのサブグランドでのアップも始まっていない。例年だと熱中症が心配されるような熊谷だから、まだ本格的なシーズンインではないのかも知れないが、何とももったいないと感じた。先週は2日間秩父宮だったが、高層ビルからの視線を意識しないわけにはいかない環境と比べると、田園牧歌調の緑に包まれたここは本当に心が落ち着く。選手も観客もラグビーに集中できるという意味ではおそらく国内最高のラグビー場で、海外の本場のラグビーファンのハートを引きつけるものはあると思う。ここがワールド杯の会場から外れることがないことを強く祈りたい。

それはさておき、まずは東海大のメンバーを確認する。HO北出の復帰もあり、おそらくベストメンバーと思われる顔ぶれになっている。Bでしばらく試合をしていたダラス・タタナも復帰?だが、テストだったのだろうか。東海大の看板はもちろん黄金のバックスリーだが、予想通り1年生の野口竜司がその1角に食い込んだ。当然、本来の3人のうちの1人が弾き出される訳だが、それが小原になったのは意外。バックスリーと一括りにはされていても、役割を考えるとFBはスペシャリストが務めるべきポジションだと思う。今後、野口竜司はその道を究めていくことになるだろう。チームは3人(小原、石井、近藤)のうちコンディションがいい選手を先発させるという方針なのかも知れないが、BKの得点力欠乏症に悩むチームにとっては何とも贅沢な陣容ではある。

山梨学院は、FL7が渡邊(2年)から長谷川(4年)に、SOが小川(4年)から川田(2年)に替わった以外は緒戦と同じ先発メンバー。4年生が5人、3年生が4人、2年生が6人という将来性を見据えたメンバー構成とも言えそうで、リーグの序盤戦はチーム底上げを念頭に置いて戦術を練って戦っているのかも知れない。また、流経大戦ではFWが肉弾戦を挑み、BKもタックルで奮闘していたが、メンバーが殆ど欠けることなく固まっている点に頼もしさを感じる。果たして、流経大同様にFWもBKもパワフルな東海大を相手にどこまで戦えるか。もちろん、この試合の最大の私的着目点は流経大を翻弄して見せた「戦術」が東海大にどこまで通じるかにあることは間違いない。



◆前半の戦い/基本戦術不変も東海大のパワーとスピードが山梨学院を圧倒

殆ど風のないコンディションの中で、東海大のキックオフ。となれば、オープニングからいきなり山梨学院のスタイルが満開となる。詳しくは流経大戦のレビューで書いたので繰り返さないが、FWが2ユニットに分かれてジグザグ状態で交互にボールを前に運ぼうとし、タイミングを見計らってSHがハイパントを上げる「9人ラグビー」だ。テンポは遅く、FWがボールを持った段階で相手も完全にポジショニングができている。東海大は流経大同様に体格面で優勢なこともあり、しっかりと山梨学院のアタックを受け止めるのだが、山梨学院もそのことを前提でボールを動かしている節がある。時に後退を余儀なくされても、ボールを失わずにハイパントで終わることから考えると、フィジカル、スキルともにしっかりと練習を積んできたことがわかる。

ここで東海大にハンドの反則があり、山梨学院は東海大ゴール前でのラインアウトを選択。ここからボールをオープンに展開し、SO川田がドロップゴールを試みるが外れる。このゴールが決まっていれば流経大戦の再現、と言いたいところだが、決まっていてもそうは問屋は卸さなかっただろう。山梨学院のアタックが単純?単調?ということもあるが、アタックに転じた東海大はもたつきが目立った流経大とは違ってパワフルでスピーディーかつミスなく攻める。組織的なスライドが機能して流経大を手こずらせたディフェンスも通用せず、山梨学院の方が翻弄されることになる。

6分、東海大は山梨学院陣ゴール前のラインアウトを起点としてモールでゴール前まで前進。ここは何とか山梨学院が渾身のディフェンスで踏ん張るものの、オープン展開でボールを素早く右に動かされた後、左側にできたスペースに順目でボールを回された段階で追い付くのがやっとの状態となる。左サイドのエリアで東海大のCTB林主将がボールを受けた段階では、真っ直ぐにトライへの道筋ができていた。このシーンをちょうど真後ろから観たわけだが、山梨学院は人数こそ足りていても追い付くのがやっとの状態に見えた。なるほど、テンポよくボールを動かせば、数的優位不利は関係なくトライが奪えるというお手本を見たような気がした。

東海大の積年の課題は試合への入りが悪いこと。しかし、本日の東海大はキックオフから集中できていた。流経大に健闘した山梨学院ということで多少警戒心もあったし、山梨学院が基本戦術を変えてこなかったこともあっただろうが、チーム体質が変わったのかも知れない。リスタートのキックオフで山梨学院がノット10m、東海大はセンタースクラムからエリア獲得を目指したキックがタッチインゴールとミスの応酬となる。ピンチを脱した山梨学院が、5番だがマイボールスクラムではNo.8のトコキオの8単で前進を図るものの、東海大はブレイクダウンを許さずにモールアンプレアブルに持ち込む「チョーク」に成功して攻撃権を奪い返す。これが今シーズンのリーグ戦Gで初めて観たチョーク。DF側に「倒すべきか、倒さざるべきか」の意思統一が必要なプレーだが、東海大FWのパワーと進化を感じさせたプレーでもあった。東海大はその後も再度チョークに成功していたことから、偶然ではなく意図的なプレーだったと確信した。

幸先よく先制点を奪ったことで、東海大の高速アタックがエンジン全開となる。22m内でゴールを目前とした場合は身体を張るFWも、流れの中では黒子に徹してBKにテンポよくボールを渡す。山梨学院もブレイクダウンの攻防ではけして負けている訳ではなく、ターンオーバーの健闘を見せる。17分には「FWのジグザグ+SHのハイパント」でチェイスしたWTB土橋(170cm)が大きな東海大選手が待ち構える中、渾身のキャッチングで観客を沸かせる場面も。ハイパントキャッチは体格でなく、落下点へ走り込むタイミングとここ一番の「強い気持ち」が大切なことがよく分かるプレーだった。ワンパターンとはいえ、山梨学院はけして偶然性に頼っていないことがよく分かる一コマ。キックオフにしても、FWが両サイドの拡がって、どこにボールを上げてもファイトできる体勢ができている。

しかし、前にも書いたように、山梨学院にとって今日の相手は違った。ハイパントでボール(エリア)の確保を失敗した場合は、東海大自慢の高速バックスリーによる強力なカウンターアタックがあり、FWのジグザクでもターンオーバーが起こる。20分、東海大のFB野口がカウンターアタックから一気にゴール前までボールを運び山梨学院がオフサイド。東海大は間髪入れずにタップキックでゴールを目指しHO北出がゴールラインを越えた。その後も、東海大の強力なアタックの前に山梨学院の反則が増えていく。29分には東海大が強力な武器としている(走り出したら止まらない)高速モールからトライ。さらに、リスタートのキックオフに対するカウンターアタックからWTB近藤がノーホイッスルトライを奪う。前半31分にして、東海大が26-0でリードと試合は一方的な展開となる。

このまま東海大の方だけスコアボードの数字が動く形で試合が進みそうになった前半の終盤だったが、山梨学院が逆襲に転じる。東海大の反則(ハイタックル)をきっかけに、東海大ゴール前で攻め続ける場面が続く。アタックの基本スタイルは変わらないものの、38分にはFWの選手達がテンポアップしてショートパスを繋いでタテ突破を図るシーンも見られた。ここでふと思った。山梨学院も、相手のDFに穴が開いたときにはテンポを上げて前に出ることを考えている。「ジグザグ」にしても、早いパス回しなどいろいろなことを試している。今後わかることだと思うが、(しっかり止めてくれる)流経や東海と最初に試合をすることで得たものは大きいと言えるかも知れない。カウンターアタックではWTB土橋も見せ場を作った。身体は小さいがファイティングスピリットに溢れたいい選手だと思った。

ゲーム展開こそ一方的だが、終盤のアタックで山梨学院も少しずつペースを掴みつつある展開の中、前半が終了した。果たして、チャレンジャーは後半にどんなラグビーを見せてくれるのだろうか。そのためにも何とか早い段階で得点を返したいところ。



◆後半の戦い/劣勢挽回はならなかったものの確実に一歩前進した山梨学院

後半のキックオフは山梨学院。だが、ここで中央に蹴られたボールを山梨学院のLOトコキオが後ろにはたきマイボールの確保に成功。ハイパントからの攻撃に対し、東海大にオフサイドがあり、山梨学院は東海大ゴール前でのラインアウトからのアタックを選択する。ここでも山梨学院はドロップゴールを狙うが外れる。4分、山梨学院はドロップアウトからの蹴り合いでエリア獲得に成功し、東海大陣22mラインの手前でラインアウトのチャンス。ここで、遂に山梨学院のBKアタックに対する封印が解かれた。SHからSOを経てパスを受けたCTB清水が突破を図ったとところで東海大にオフサイド。清水は山梨学院の中でも体格に恵まれている選手でもあり、今後キープレーヤーとしての活躍が期待出来そうだ。

東海大陣に留まって何とか一矢報いたい山梨学院だが、ゴール前に築かれた青くて分厚い壁はなかなか突破を許さない。7分の反則で東海大が一気にエリアを挽回し、山梨学院は一転してピンチに陥る。12分、東海大は山梨学院ゴール前のラインアウトからモールを形成して押し込みトライ。GKも成功して東海大のリードは33点に拡がった。このまま東海大が一方的に勝利を収めそうになる中で、山梨学院に待望の得点が生まれる。キックオフからプレッシャーをかけて東海大がBKに展開しキックしたところをCTB13の曾根がチャージに成功。曾根は22m内でバウンドするボールの確保に成功してコーナーフラッグめがけて走り、タッチラインギリギリのところでゴール左隅に飛び込んだ。コーナーフラッグが倒れる状態で山梨学院応援席は一瞬息を呑んだが、主審が右手をまっすぐ挙げたところで大歓声が沸き起こる。GKは失敗したものの5-33となり、山梨学院の応援席が一気に活気づいた。

山梨学院が1トライを返したことで試合はやや膠着した状態になるものの、地力に勝る東海大の優位は動かない。23分、東海大は山梨学院ゴール前でのラインアウトを起点としたアタックからSH湯本がゴールラインを越えて40-5(GK成功)とリードを拡げる。しかし、山梨学院もリスタートのキックオフから反撃する。東海大のキックの対するカウンターアタックから前進を図ったところで東海大に反則があり、東海大ゴール前でのラインアウトを起点として追加点を狙う。そして28分、山梨学院の身体を張ったアタックをはね返し続けた東海大だったが、パワフルなトコキオに突破を許す。逆転には厳しい点差ではあるが、12-40と山梨学院のビハインドは28点となる。

このまま波に乗りたい山梨学院だったが、キックオフでノックオンしたボールを東海大に拾われてしまう。入れ違いのような形で東海大は素早くボールを動かし、WTB近藤がゴールラインを越えた。山梨学院にとっては痛恨のノーホイッスルトライで、失点は流経大戦を上回る47点となる。勝利を掴むのは絶望的となった山梨学院だが、渾身の力を振り絞ってアタックを試みる。しかし、35分のカウンターアタックからFWでのフィニッシュを目指した攻撃も東海大のチョークに遭って不発。それでも、37分には東海大のスクラムの反則(コラプシング)に対して、タップキックからLO河野、トコキオと繋いで7点を返す。

緒戦でも例年に比べて仕上がりのよさを見せた東海大の前に、(緒戦とは違って)得点差以上の完敗という結果になった山梨学院。だが、ブレイクダウンの攻防でも負けないなど、勝負所となるであろうリーグの後半戦に向けて確かな手応えを感じさせた戦いではなかったかと思う。



◆東海大に垣間見えた変化の兆し

例年になく東海大はいい形でスタートを切れたのではないだろうか。私感ながら、こうあって欲しいと願っていた形、すなわち、FWは黒子に徹して無理をせずBKに生きたボールを供給し続け、フロントスリーでアタックを組み立てて強力なバックスリーでフィニッシュするという方向にチームが向かっているように感じられた。しかし、この日の東海大で一番強く感じたことは、選手達の自立。今までのチームでは、どこか首脳陣の目を気にしながらラグビーをしていたような印象があり、そのことが精神的に崩れたときの脆さにも繋がっていたように感じられた。戦術面でもチームをけん引する主将の力なのかどうかはまだわからないが、今年こそはいい結果を残して欲しいと切に願う。

◆第2段階へとコマを進めた山梨学院

緒戦と同様、「この戦術じゃダメ(勝てない)」とか「9人ラグビーは退屈」とか「頼みは結局トコキオだけ」といった声が聞こえてきそうな山梨学院のラグビー。試合内容も相手を翻弄して勝つ可能性すら見せた緒戦の流経大戦と比べると、後半に3トライを挙げたとは言え、仕上がりのよい東海大の前に完敗を喫した形になった。しかし、あくまでも私見だが山梨学院にとっては今後に向けて確実に自信を深めた戦いではなかったかと思う。流経大戦では「9人ラグビー」に徹していたが、この試合では本来目指している形も(予告編のような形で)垣間見せてくれた。

各チームのメンバーと比較しても、山梨学院の攻撃力は厳しい状況にあることは明らか。単純にBKに展開しただけではフェイズを重ねても突破は難しいと思う。それは2年前の拓大もまったく同じで、拓大がFWのシェイプを軸に攻撃を組み立てていた最大の理由だったと邪推する。ならば、FWで確実にボールキープしてなるべく自分達が主導権を握れるように試合をコントロールすることを目指す。もちろん、狙い目はFWのアタックで、相手のDFに穴が開いたときに、狙い澄ましたようにテンポアップしてボールを繋いでゴールを目差すといったようなオプションは考えていると思う。そのためにも、前半戦で強い相手の胸を借りる形でいろいろな可能性を試しているように緒戦では感じたわけだが、その印象はより強くなった。流経大戦のレビューで2つはチャレンジできるチームがあると書いたが、それが3つに増えたかも知れない。山梨学院のリーグ戦中盤以降の戦いがますます楽しみになってきた。
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流通経済大学 vs 山梨学院大学(関東大学ラグビーリーグ戦G-2014.9.14)の感想

2014-09-20 01:04:35 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


リーグ戦Gの前半戦は上位と下位の対決。しかし、前日に同じ場所で観た対戦はどちらが上位なのか分からないような混戦模様だった。果たして、流通経済大学は王者の貫禄を見せつけることができるだろうか。ちなみに対抗戦Gの王者で大学チャンピオンの帝京は100点ゲームでA復帰を果たしたばかりの立教を一蹴している。また、少し古い話になるが、山梨学院も2度目の1部昇格を果たしたシーズンの緒戦で関東学院に100点ゲームで完膚なきまでに叩きのめされている。両チームのメンバーを見比べたら、流経大の圧勝間違いなしと予想されたのだが...



◆キックオフ前の雑感

流経大の先発メンバーは、トップリーグ即戦力級の破壊力を持つNo.8のジョージ・リサレとセブンズでの国際的な活躍が光るフィジアンのWTBリリダム・ジョセファ、そして変幻自在のアタックが持ち味の合谷といった看板スターが名を連ねる豪華陣容。バックスリーにも八文字や桑江といった走力のある選手が揃い、どこからでも得点できるのが強み。今シーズンは安定したセットプレーを軸に、BKを縦横無尽に走らせるようなランニングラグビーで勝負することになりそうだ。

一方の山梨学院は、1部に昇格(2度目の復帰でもある)したばかりのチームという点は割り引いても、小粒な選手が多くを占める陣容。LOのソシセニ・トコキオとFLの大石力也主将の大型選手たちが2枚看板としてチームを引っ張る形だ。入替戦勝利の立役者だったSOティモシー・ラファエルとCTB後藤の2人が卒業したことでBKの戦力ダウンは致し方ない。両チームのメンバーを単純に見比べただけでも劣勢にあることは間違いない。果たして、どこまで流経大のパワフルなアタックに抵抗できるだろうか。



◆前半の戦い/劣勢ながらもゲームを支配した山梨学院

流経大のキックオフで試合開始。山梨学院が最初にボールを確保する側になったことがこの試合のポイントだったのかも知れない。その山梨学院がとった戦術はFWによる徹底したボールキープだった。しかも、この方法は見覚えがある。そう、帝京大が「ボールを停滞させる」として散々非難を浴びたあの方法で、FWが2ユニットに分かれて右に左にと交互にアタックを繰り返す「カニラグビー」とも揶揄された戦術。シェイプの原始型ともいえそうなスタイルで、もし現在の帝京がこれをやったら地球の裏側まで届きそうなブーイングが秩父宮に鳴り響いたことだろう。

しかし、(赤ではなく)緑のチームだったら「身体を張ってよく頑張っているな」になるから不思議。実際、一回りは大きいと思われる流経大の選手にひるむことなく身体をあてながら、時に後退を余儀なくされながらもボールを失うことなく前進することができている。突破役は5番を付けたトコキオ、アスリートタイプの大石、No.8の戸田にLO(4番)の河野の4人。ただ、最終結論は判で押したようにSHのハイパントで、BKに展開するオプションはない。BKアタックに自信がないのか、それとも封印しているのかは定かではないが、この試合に関してはおそらく前者。ここまで徹底できたら立派というくらいに隊列に乱れがなく、しっかり練習を積んできたことがよくわかる。

ゲーム展開の話をする前に、もう少し山梨学院のラグビーについて触れておきたい。SHがボックスキックの形でハイパントを上げると、どうしてもボール獲得率は体格面で優位な流経大が上回る。したがって、リサレやリリダムに合谷が絡む形の強力なカウンターアタックを浴びることになるのだが、ここでは、ディフェンスでも山梨学院が統率が取れたチームであることが披露される。フロントスリーがきれいにスライドして流経大の突破を簡単には許さず、WTBをタッチに押し出す、あるいはCTBでパスミスを誘発させる形で失点を防ぐことができている。前日に同じ場所で行われた2チームのラグビーとは次元が違うとすら感じてしまった。

あともうひとつ、山梨学院で特筆すべきはモールの巧さ。ラインアウト(抜群に安定していた)からモールへのスムースな移行と、そのモールもすぐに縦長になってドライブしながら前進を図るスタイルはかつて対戦相手(流経大だ!)が得意としていた形ではなかったか。どうも、堅実で組織的なプレースタイルは、流経大から山梨学院に継承されてしまったかのような錯覚を感じる。そう感じたのには理由があるのだが、それは後ほど。なぜ、字数をかけて山梨学院のプレーのことを書いたかだが、これでこの日に山梨学院が見せたラグビーの80%以上の説明が済んでしまうから。あとは淡々と得点経過を綴っていけばいい。

それにしても、「継続は力」という言葉があるが、拘りのボールキープを地道(無骨?)に続けることで格上を相手にしながらもゲームコントロールができてしまうからラグビーは面白い。流経大はリサレやリリダムや合谷といったキープレーヤーがボールを持つと突破に成功することはあるものの、山梨学院の組織DFの前にノックオンを繰り返すもどかしい展開が続いた。ミス多発にはその他にも原因がある。昨シーズンあたりからとくに気になっていたことだが、オフロードの達人(リリダム)の影響もあってかボール扱いが軽くなりがちなのだ。密集でも片手でボールを持つ場面にはヒヤヒヤさせられる。とにもかくにも、帝京なら絶体に許されないプレーが(とくに優位な立場の試合の場合)散見されるのがとても気になっている。

前置きが相当に長くなってしまった。7分、合谷が正面22mのPGを外してしまったことが試合の綾となる。11分に山梨学院のSO小川がドロップゴールを決めて先制点を奪う。しかし、個々が強い流経大がここから貫禄を見せる。まずは11分、カウンターアタックからのリリダムのトライで狼煙が上がった。21分にはラインアウトからのロングスローがぴたりと決まってLO兼村がトライ。30分には細かくパスを繋いで強力なタテの連続からFL大塚がトライ。スコアは19-3で流経大のリードとなり、得点の上では流経大の圧勝ペースとなる。しかし、実際に試合を観ていると、リードはされてもゲームを支配しているのは山梨学院という不思議な構図が浮かび上がる。

前半も終わりに近づいた38分、山梨学院に待望の初トライが生まれる。流経大陣22mのラインアウトを起点としたオープンキックをFB大和田がグラウンディングに成功。この日は後に筑波と明治の激突があるため、知らないうちに廻りは筑波ファンで埋め尽くされるような状況になっていたのだが、対抗戦Gファンからも大きな拍手が起こった。GK成功で10-19と、山梨学院が予想外の健闘を見せる形で前半が終わった。



◆後半の戦い/山梨学院のゲーム支配が続くも、地力に勝る流経の前に力尽きる

山梨学院の「戦術」の前に、前半は本領が発揮出来なかった流経大。だが、後半は昨年度覇者の貫禄を見せてトライの山を築いてくれるはずとファンは考える。この事態(僅差での折り返し)はおそらく山梨学院のファンにも想定外だったはず。しかし、後半になっても、山梨学院のボールキープかつゲーム支配が続くからラグビーは本当に分からない。5分の小川のドロップゴールは失敗するが、9分には流経大陣ごーる前に上げたハイパントの確保に成功し、トコキオが強さを発揮してトライ。GK成功で17-19と山梨学院のビハインドは2点に縮まった。

さらに16分、流経大ゴール前でのモールを起点として、またもトコキオがボールをインゴールにねじ込む。GKは失敗に終わるが、遂に22-19と僅か3点差ながらも山梨学院がリードを奪ってしまった。数は少なくても、これで山梨学院の応援席が盛り上がらないわけがない。「勝てるぞ!」そんな威勢のいい声も聞こえてくる。もしも1部昇格チームが前年度優勝校に勝ってしまったら、それは「大事件」だから。しかし、流経大を相手にしても、臆することなく身体を当て続けるFWの選手達の奮闘を見ていると、勝っても事件ではなく当然と思えてくる。

しかし、勝負はここからが難しい。20分にこの試合の流れを決定づける「事件」が起こる。山梨学院のキックをチャージに成功した流経大がインゴールに向けてキックしランナーを走らせる。流経大選手がボールをグラウンディングできずにタッチインゴールかと思われた。しかし、しばらく間が開いた後、主審がゴールポストの真下に歩み寄りおもむろに右手を挙げる。遠目で見て理由は不明の認定トライだった。山梨学院の選手がゴールを目指していた流経大選手をノーボールタックル、すなわち「そのプレー」がなければトライだったという判定とのことだった。

流経大が26-22と再逆転に成功した段階で、山梨学院の選手達の勢いに陰りが見え始めた。29分、39分と流経大のFL大塚の2連続トライで40-22と、前年度覇者の勝利は決定的となる。再度の逆転は絶望的となったものの、山梨学院も最後までFWに拘り、流経大ゴールまであと一歩のところまで迫る。しかし、FWの強さは流経大の方が明らかに上で、しかも余裕も出てきているからはね返されてしまう。山梨学院がゴール前に築かれた白くて分厚い壁を越えられずにノーサイドとなった。最後くらいはオープンに展開してBK勝負してもよかったかなと思った。



◆とても楽しみな山梨学院

シンプルなボールキープのラグビーに徹した山梨学院。試合自体は淡々と進んだ印象もあるが、シンプルな中にも見応えのある試合だった。15人がしっかり意思統一して(戦術を持って)戦うことで、難敵にも勝つ可能性があることを示してくれたから。もちろん、それは相手に対する研究と普段の努力の賜と言えるだろう。山梨学院は春の段階ではトコキオらの留学生をあえてメンバーから外してチーム作りを進めてきたふしがある。そして、リーグ戦での本番7つの戦い方もしっかりとプランニングしていると思う。

山梨学院は今シーズンの目標は2つ勝って入替戦回避ではないだろうか。今シーズンは2部リーグのレベルがとくに高く、2校同時昇格の可能性もあるから入替戦は避けたい。また、前半戦に無理をして満身創痍になってしまったら後半戦はより厳しくなる。それよりも、今シーズンは無理をせず、序盤戦での上位校との対戦でためすべき所を試し、かつ隠すべき所は隠し通す。そんなしたたかな計算があるような気がする。流経大が相手の「第一フェイズ」はおそらく目標を高いレベルでクリアできた。次の東海大戦では「第二フェイズ」へと進むはず。基本戦略(ボールキープ)は変わらないだろうが、少しBKを使うパターンを試すかも知れない。勝敗は別にしても、見どころが多いのが今シーズンの山梨学院の戦いになりそうなことを予感させる緒戦の戦いぶりだった。

流経大だが、今日の内容からの評価は難しい。おそらく2戦目の立正大戦で形が見えてくるのではないだろうか。強力チームであることに間違いはないが、意図が見えない、いや意図するラグビーをさせてもらえなかった(かもしれない)からそう思う。ただ、1つ言えることは、1部昇格時から流経大のラグビーを観てきたファンなら分かるが、昇格当時にはあった大切なものが失われていることをとくに強く感じさせたのがこの試合だった。その大切な部分がそっくり緑色にチームに継承されているようにすら見えた。チームは強力になっても「原点」を見失って欲しくないと切に願う。
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中央大学 vs 立正大学(関東大学ラグビーリーグ戦G-2014.9.13)の感想

2014-09-18 02:30:53 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


いよいよ2014シーズンが開幕。春シーズンができたことである程度は各チームの戦力が掴めるようになった。しかし、春にいい状態ではなかったチームのファンは、夏合宿を経て何とか変身してくれていることを期待したいもの。例えば本日リーグ戦Gの開幕戦に登場した中央大。昨シーズンの大躍進を誰が予想できただろうか。立正大にしても、春は拓大や山梨学院に敗れるなどいいところがなかった。何とかシーズンインで巻き返しを図りたい2チームの激突のはずだったが...



◆キックオフ前の雑感

まずは中央大のメンバーを確認。SO浜岸とコンビを組むSHの先発は長谷川で住吉がリザーブに回った。春は住吉が先発することが多かったはずだから、中央大は今年もどちらをメインにアタックの形を作るのか決めかねているのだろうか。タイプの違う2人を併用という余裕はなさそうなため、気になる部分ではある。BKは昨年のメンバーからFB羽野やCTB山北が抜けたため、WTB高の決定力に期待が集まる。

立正ではリーグ戦G屈指のエースのひとりWTB早川の戦列復帰が明るい材料。しかし、この日のメンバーの注目選手はFBで起用されたアライアサ・ローランド・ファアウィラ(1年生)。春シーズンで起用されていた留学生はFLのフィララ・レイモンド(先発)とLOのブライス・テビタ・エドウィン(リザーブ)の2人だったから、チームの方針が変わったのだろうか。春に観た拓大戦では5番と6番を中心としたFWによる強力なタテ攻撃を武器としていたように見えたのでそう感じた。ということで、立正大が勝利を掴むポイントは14番と15番がいかにいい形でボールを持つかになる。



◆前半の戦い/ミス多発の立正、だが中央もそこにつけ込めず

立正大のキックオフで試合開始、と思ったらノット10mで立正は出鼻を挫かれる。このキックオフの失敗がその後のミス多発の予兆であったことは、もちろんこの段階では分からない。さて、最初に得点のチャンスを掴んだのは立正大。中央大陣ラインアウトを起点としてオープンに展開する前にFWのシェイプで前進を図り、SO宇野がドロップゴールを狙うが外れる。

ここで、立正大のアタックの意図が明確になった。具体的に言うと、一昨年拓大が使ったFWによるボールキープの後BKに展開するスタイル。ただ、まだまだサイクルのスピードが遅く、BKに展開しても中央大のDFが揃った状態になっているためなかなかラインブレイクができない。WTBが相手に捕まったらターンオーバー覚悟になるからキック。しかし、ライン攻撃が行き詰まって相手のウラを狙ったキックは(立正大に限らず)成功率は低い。逆に相手にチャージされて入れ替わりのような形で大ピンチとなることが多い。WTBがボールを持った段階でトライが約束されたも同然の帝京とはかなり違う。意図は明確なのだから、丁寧にリサイクルを重ねて中央大のDFの数を減らしていって欲しいところ。

アタックの形ができている立正大の攻勢が続く。中央大が立正大陣で犯した反則に対し、立正大はロングキックで中央大陣22m内でのラインアウトからゴールを目指す。しかし、投げ入れられたボールがオーバースローとなって中央大がボールを確保したところでホイッスルが吹かれた。レイモンドが不行跡(パンチング)でシンビンを適用されて一時退場。立正大は開始早々の4分にして、攻撃の核を失う形でピンチに陥る。キックオフに続く大きなミスと言っていいだろう。

1人少なくっても立正大の攻勢は止まないものの、ミスが多くなかなか得点を挙げることができない中で、中央大がモールの強みを活かして得点機を掴む。10分、立正大陣10m/22mの位置でのラインアウトからモールを組んで力強く前進しゴール前までボールを運ぶ。ここで立正大に反則があり、ゴール正面の位置なので狙うかと思われたが、ゴール前でのラインアウトを選択。ゴールラインを背にした立正大の反則が繰り返され、13分にモールによるトライが中央大に記録された。

レイモンドが戻ったところで立正大は気を取り直してキックオフ、のはずが今度もノット10m。リスタートのキックオフのミスは本当に痛いし、そのまま失点に繋がることが多い。取り返すぞと意気込んでいるチームメートの気持ちを萎えさせしまうから、犯してはならないミスと言える。浅く蹴ってマイボールにしたい意図は分かるものの、10mラインギリギリである必要はないのだから。

しかしながら、たびたびチャンスをもらっているはずの中央大の得点板の数字がなかなか動かない。ミスは多くてもアタックの方向性が定まっている立正大に対し、中央大はまだ攻撃の形ができていないようだ。昨年はFWでしっかり前を固め、その中心にルーキーとは思えない長谷川が居た。どちらかと言えばディフェンシブなラグビーだったが、羽野や山北といった選手が要所を占める形ができていたことを思うと、出遅れ感は否めない。というか、去年よかった部分が殆ど観られないのが気になる。決め手は浜岸のプレースキックと春シーズンに観戦した慶應戦の後半で見せたモールくらいという状態。

ピリッとしない中央大に対し、立正大ももったいない反則が多い。ハイパントの落下点に味方のFW選手達の塊があり、かつ下がらないという画に描いたようなオフサイドはいただけない。キックオフのミスにしても、転がしで相手のファンブルを誘う意図のキックを我慢しきれずに取ってしまうなどちぐはぐ。こんなミスを重ねていたら主導権は相手に行ってしまう。立正大が波に乗れない中で、中盤からは得意のモールを活かした中央大がペースを握る。27分、浜岸が左中間21mのPGを決めて中央大のリードは10点に拡がる。

リスタートのキックオフで立正大はまたやってしまった。今度はダイレクトタッチで、これには首脳陣も頭を抱えるしかない。しかし、中央大ももらったチャンスを活かせないまま淡々と時計が進んでいく。31分には立正大が中央大ゴール前でのラインアウトのチャンスを掴み、ラックからオープンに展開するもののパスミスで得点に至らず。ここで立正大には「消えて」いる選手が居ることに気付く。エースの14番を付けた早川がいい形でボールを持つ形がまったくといっていいほど見られない。

このまま前半が終了するかと思われたが、終盤に立正大がチャンスを掴む。40分、中央大陣10m付近でのスクラムを起点として攻め上がり、中央大のゴールに迫ったところで中央大に反則。SH田中がタップキックから前進を図り、前が開いたところを巧みについてゴールラインを越えた。GKも決まって7-10と中央大のリードは3点に縮まる。キックオフのミスが3本に反則が8個、そしてシンビンによる一時退場といった一連の事象を振り返ってみるだけでも、相手は大量リードしていなければならない展開。なのに、中央大のリードは僅かに3点に留まっている。立正大に逆転の望みを繋ぐ形で前半が終了した。



◆後半の戦い/立正大優勢の中、着実に加点する中央大

中央大は後半、SHを長谷川に代えて住吉(藍好)を投入する。すると、FW周辺が前半と比べて活性化し始めるから不思議。ただ、去年のような大きな展開まで至らず、試合は立正大のペースで進む。5分、立正大は中央大の反則で得たPKからゴール前のラインアウトで攻める。しかし、ゴール前のラックからオープンに展開されたところでパスミスがありチャンスを潰す。両チームとも決め手を欠く展開の中、13分には立正大が自陣10m付近の中央大ボールスクラムを押し込んでショートサイドを攻めるも、タッチに押し出されてしまう。

後半も中盤にさしかかった15分、ようやく立正大の早川が見せ場を作る。相手キックに対するカウンターアタックから中央大陣22mライン付近まで攻め上がったところで中央大がオーバー・ザ・トップの反則。ファアウィラが正面やや左20mのPGを難なく決めて遂に立正大が10-10のタイスコアに持ち込んだ。立正大は畳みかける。19分、中央大陣ゴール前のスクラムからオープンに展開したところで中央大にオフサイドの反則。ここでFL佐野に反則の繰り返しによるシンビンが適用され、中央大はピンチとなる。立正大はPGを確実に決めて13-10と逆転に成功。1人多い状況から見ても立正大が完全にペースを握るかに見えた。

しかし、絶体絶命とも言えそうな中央大のピンチを救ったのがモール、そして浜岸のGKだった。27分、中央大はカウンターアタックから立正大ゴール前まで攻め上がり、モールを形成してゴールを目指す。ここで、立正大がモールコラプシングの反則を犯し、浜岸が正面のPGを決めて今度は13-13と中央大が追い付く。立正大がもたついている事もあるが、中央大の粘りは健在と行ったところか。

試合も終盤にさしかかった33分、立正大はHWLからやや中央大陣に入った位置でのスクラムからオープン攻撃でWTBまでボールが回る。ここは勝負するかせめて粘り強く継続して欲しいところだったが、やっぱり蹴ってしまった。立正にオフサイドの反則があり、浜岸のPKは立正大陣ゴール前の絶妙の位置でタッチを割る。これで中央大の5点は約束されたようなもの。モールからトライが生まれGKも成功し20-13と中央大が再びリードを奪う。とくにGKの成功は立正大にとってプレッシャーになったに違いない。

38分、立正大は自陣10m付近のラインアウトを起点としてオープンに展開するがパスは無情にもスローフォワード。中央大はスクラムからの連続攻撃でとどめのトライを追加する。GKは外れたがここで試合終了。前半は9個を数えた立正大の反則も後半は2個だけ。ところがその2個が同点PG、そして逆転トライに結びついてしまったのは不運とも言える。得点経過だけを眺めていると、行き詰まる接戦に見えてしまう。また、一時逆転を許しながらも、勝利を呼び込んだ中央大の試合巧者ぶりも浮かび上がってきそう。でも、実態は「ミス多発で決めきれない立正大」と「相手のミスにつけ込めなかった中央大」ががっぷり4つに組んでしまった凡戦。一生懸命頑張っている選手達には申し訳ないがそんな感想しか出てこない。勝ちを拾った方も逃した方も前途多難を思わせる緒戦となって締まった。

◆双方の課題が浮き彫りになった開幕戦

とにかくミスが目立った立正大。それもチャレンジによる積極的なものではなく、イージーあるいはケアレスの避けられるものばかりだっただけに悔やまれる。チームの仕上がりや個々のプレーなど総合的には立正大の方が上回っていたと感じられただけに、よけいそう思う。それと、ひとつの疑問点は、春にいい形ができかけていたFW主体のアタックが殆ど見られなかったこと。プライスをずっとベンチに置いたままだったのはもったいないように思えた。さらに言うと、カウンターアタック以外では早川が消えていたことも残念。何とかプレーのスピードと精度を上げて欲しいところ。

勝利したとは言え、中央大は課題山積と言えそうだ。一番気になるのは、SHの選択ひとつみても、チームコンセプトが固まっていないように見えること。FWが去年ほど動けていないようにみえるのもその辺りに原因があるのかも知れない。心配だったディフェンスは立正大に突破を許す場面も少なく機能していたと言える。ただ、立正大のアタックは上にも書いたようにテンポが遅く、崩しも少なかったことを割り引かなければならないだろう。個人でも組織でも揺さぶりをかけてくる上位校に対しても同じディフェンスができるだろうか。どうしても春の慶應戦での崩壊状態が思い浮かんでしまう。しかし、中央大で一番気になるのは、去年のよかったところが殆ど継承されていないように見えること。メンバーが替わっても伝えられるべきものはあったはずだ。
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ラグビーのスコアボード

2014-09-09 02:28:45 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
スポーツでスコアボードと言えば、まず思い浮かぶのは野球。野球ファンは見慣れているイニングを重ねるごとに得点が表示されていく当たり前のもの。しかし、単なる数字の羅列のはずなのに、時に試合内容を雄弁に物語ってもみせる(実は)優れものだと思う。

例えば、先日話題になった高校の軟式野球。もし、50回のゼロ行進が完全に掲示できたとしたら、それだけでも壮観だ。高校野球の歴史本には、中京対明石の伝説の25回戦が継ぎ足されたスコアボードとともに紹介されているが、半分の回数というだけでも行き詰まる熱戦だったことが伝わってくる。

同じゼロ行進でも、実は息詰まる投手戦ではなくて、両チームの拙攻に次ぐ拙攻で残塁の山が築かれた試合ということもある。でも、今の電光式の掲示板はヒットの数も記録されているから「違い」はわかるようになっている。もし、野球場のスコアボードがその時点での得点のみだったとしたら、さぞかし寂しいものになっていただろう。

なぜそんなことを思ったかと言うと、ラグビー場のスコアボードは野球に比べると実に味気なく思えてしまうから。今はピッチ上に立っている選手名がすべて表示されるようになり、大型スクリーンでリプレイを見せてくれるから「何を言っているんだ?」と言われてしまいそうだが、野球のようには試合内容(経過)を教えてくれるものではないので、どうしてもそう感じてしまう。

野球とラグビーは違うと言ってしまえばそれまでだが、方や「イニング」で方や「分」ではあっても時間の概念で進行していくスポーツであることに変わりはない。ラグビーだって、野球のようにスコアボードに得点経過が記録されたら、「結果オーライ」には満足しないラグビーファンの楽しみが少し増えるのではないかと思ったりもする。ただ、時間と得点者が記録されるだけでは不十分で、できれば時間軸が意識できるものだったらもっといいだろう。

ということで、ラグビー版のスコアボードを考えてみた。試合は去年のリーグ戦でもっとも印象に残っている試合のひとつ、11月2日にキャノングランドで行われた大東文化大学対東海大学の熱戦。



キックオフからエンジン全開の状態だった東海大の圧勝ペースで始まった試合。あっさりと2本のトライを決めて3本目も目前だった前半の9分だった。ゴールまであと1歩のところで、大東大のWTB淺井がインターセプトに成功。そのまま左タッチライン際を快走して約90mを走りきりトライを奪う。もし、ここで東海大に3つ目のトライを許していたら、そのまま一方的な流れで試合が進んだことだろう。大東大はこの値千金の1発で形勢を逆転することに成功し、14分の連続トライ(+GK)でとうとう逆転に成功する。

勢いに乗った大東大は更に1トライと1PGを追加してリードを広げるが、東海大も意地を見せて31分に1トライ(+GK)を返し大東大のリードは5点に縮まる。しばらくは拮抗した展開の中、後半10分を迎えたところで東海大が1トライを返して同点に追いつき、16分にさらに1トライを追加して再逆転に成功。勢いや自力の強さから観ても、東海大が貫禄勝ちを収めるかに見えた。

ところが、大東大が終盤の28分に1トライを奪って再び逆転に成功。さらに33分に1PGを追加して34-29とリードを5点に広げた。東海大が1トライを挙げれば同点という拮抗した展開の中で、東海大が大東大陣でFWを中心に怒濤のアタックを見せる。しかし、大東大もあと1歩のところで得点を許さず、そのまま粘りきってノーサイド。このひとつの図を作っている段階でいろいろな記憶が蘇り、こうして、大熱戦のことをレビューできたというわけだった。

どこかの競技場でこのスコアボードを採用してくれないだろうか。構造は至ってシンプル。時間刻みで得点の種類を記録し、その時点での得点も併記する。リードしている側に色を付けたらさらにわかりやすいし、ラグビーは時間軸で動くスポーツだから、時間感覚も再現できる。PGの「成功」/「失敗」の記録などは、ここで決まったから/決まっていたらと試合内容を振り返ることもできる。

と少し大きく出たところで話の腰を自分で折ってしまうが、この「スコアボード」は競技場で眺めるために考えたものではなかった。今から遡ること17年前の関東リーグ戦の本格観戦を始めた頃だった。ニフティサーブのラグビーフォーラムに試合の感想を書き始めたのだが、何とか試合内容をひと目で振り返ることが可能なツールができないだろうかと考えたことで出てきたのがこれだった。

当時のパソコン通信はテキストベースで「等倍フォント」が前提だったから作ることができたとも言える。少し改良して今の形になったのだが、そのままブログに載せることはできないので諦めていた。でも、試しにエクセルで作って画像化したら(文字がぼけないように改善する余地はあるものの)試合内容を「見える化」できそうな感じにはなった。ということで、今シーズンはブログに「復活」させてみようと思う。

果たして、スコアボードは「T」や「G」の文字が躍るエキサイティングなものになるのか、それとも、時系列の中に「P」がポツリポツリの緊迫した展開になるのか、はたまた、リードしている側の色(とりあえずピンクで表示)がめまぐるしく入れ替わるシーソーゲームになるのか。2014シーズンの関東大学リーグ戦Gの開幕まで、いよいよカウントダウンが始まった。
コメント (2)
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