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第60回 YC&ACセブンズ(2019.4.7)の感想

2019-04-14 10:20:52 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


今年で60回目となるYC&ACセブンズ。この大会の魅力は長い歴史に違わぬ高いレベルを保っていること。出場チームの多彩さからお祭り的な要素もないわけではないが、チャンピオンシップの決勝戦は手に汗握る好ゲームとなる。日和にも恵まれ、サクラも満開の中で、記念大会にふさわしい思わぬファンへの贈り物が準備されていた。

■出場チーム

出場チームは例年通りで、社会人/クラブ8チームと大学8チームの計16チーム。大学は関東の対抗戦Gとリーグ戦Gからそれぞれ4校ずつで、顔ぶれは固定されている。また、社会人/クラブもほぼ常連チームの出場となった。ここ数年は大学チームが優勢だが、社会人/クラブが意地を見せるかも見どころ。

[社会人] ビッグブルーズ(IBM)、神奈川県選抜。千葉県選抜
[クラブ] 北海道バーバリアンズ、神奈川タマリバクラブ、湘南ベルマーレ、サムライセブン、
YC&AC
[大学(関東・対抗戦G)] 早稲田大学、慶應義塾大学、筑波大学、青山学院大学
[大学(関東・リーグ戦G)] 東海大学、流通経済大学、日本大学、中央大学

会場で配られたプログラムでまずは関東大学のリーグ戦Gのメンバーを確認。4チームともこの大会にはほぼ1本目でチームを構成しているが、1年生の有望選手を加えていることも多い。テビタ・タタフとアタアタ・モエアキオラが卒業した東海大学だが、バリバリのレギュラーに加えて新たな名前が2つ(ワイサケ・ララプトゥアとレキマ・ナサミラ)加わった。流通経済大には新たな名前はないが、こちらも1本目で固めた優勝が狙える陣容。

今年も多くの有望新人獲得に成功した日本大学には昨シーズンデビューを飾ったフレイザー・クワークらに加え、多くの新人が加わっている。中央大学は、成田と侭田のHB団など有力選手がズラリと勢揃いした陣容。ただ、この大会でスピードスターとして衝撃のデビューを飾った住吉のような人材を含んでいるかは不明。

そんな中、オープニングゲームを戦うホームチームのYC&ACと北海道バーバリアンズの選手達がピッチに登場し、第60回大会の火蓋が切って落とされた。

■1回戦8試合

[No.01]  ○YC&AC 42-12(前半14-5) ●北海道バーバリアンズ

優勝回数4回を誇るYC&ACもここ数年の戦績は冴えない。着実に力を付けている北海道バーバリアンズが優勢と会場の誰もが予想したが、メンバーを一新した強力チームになっていてあちらこちらで驚きの声が上がる。対戦相手の北海道バーバリアンズの選手達も「いつもとは全然違う」と面食らったに違いない。42-12の圧勝劇は想定外だったが、今大会、強力メンバーを揃えてもっとも注目を集めたチームにしては穏やかなデビュー戦だったことが後からわかる。



[No.02]  ○東海大学 24-17(前半19-0) ●日本大学

ピッチに登場した東海大の選手達を見て、強力な2人(テビタとアタアタ)の卒業による不在を感じさせない位に大型な選手達が加わったことがわかった。実際に彼らは本当に1年生なのかと思わせるくらいにパワフルな突破と身体能力の高さを見せつけた。対する日大も2年生のフレーザーが一回り分厚くなった姿で登場したのが目を惹いた。前半はいいところがなかった日大もメンバーを替えた後半に立て直しに成功。スコアを7点差まで詰めたものの、実質は前半で勝負を決めた東海大の圧勝だった。



[No.03]  ○神奈川タマリバクラブ 33-5(前半21-0) ●湘南ベルマーレ

監督兼任の福田恒輝や主将の竹山将史といったベテランが引っ張る神奈川タマリバクラブは、新たなメンバーを加えて今年も気合い十分でピッチに登場。対する湘南ベルマーレは登録メンバーがわずか9人で苦しい戦いを強いられる。後半に1トライ挙げるのがやっとで、前後半で5トライを挙げた神奈川タマリバクラブの圧勝だった。



[No.04]  ○筑波大学 28-12(前半14-7) ●義塾大学

対抗戦グループで組織的に戦う2チームの注目対決。慶應が先制した後、筑波が2トライを挙げて逆転に成功し前半は14-7で折り返し。後半は筑波が調子を挙げて2連続トライを奪い試合を決めた。なかなかのタレント揃いで楽しみ。慶應も1トライを返して意地を見せた。



[No.05]  ○サムライセブン 28-5(前半7-5) ●神奈川県選抜

アスリート軍団のサムライセブンに対し、林謙太、山本逸平、茂野圭輝といった拓殖大学で活躍した選手達を含む神奈川県選抜の対戦。ファエアマニ・オペティも懐かしい名前。試合はそんな選手達を揃える神奈川選抜の圧勝かと思ったが、力を発揮したのはサムライセブンだった。前半こそ7-5の互角だったが後半にサムライセブンが3トライ連取で圧勝と意外な結果となった。

[No.06]  ○青山学院大学 38-12(前半17-5) ●早稲田大学

メンバー起用が注目を集めた早稲田だったが、序盤からかみ合わずに青山学院に3トライを先行される苦しい展開。早稲田は前半の終盤に1トライを返すものの、後半も2トライを先行されて万事休した。青山学院もなかなかのタレント揃いで連携もよく圧勝も納得。今シーズンの飛躍も期待される上場のスタートとなった。



[No.07]  ○千葉県選抜 26-12(前半19-0) ●ビッグブルーズ

毎年、国体開催県の選抜チームが招待されるこの大会。今年は千葉県選抜が出場したがメンバーが分からない。周囲より聞こえてきた声からNECが主体らしいとわかる。一方のビッグブルーズはIBMのロゴを胸に戦う。千葉県選抜が混成チームとは思えないくらいに連携を良さを見せ、前半に3トライを先行。後半はビッグブルーズが反撃して2トライを返し緊迫した展開となるが、千葉県選抜が最後に1トライを追加して突き放し勝利を収めた。



[No.08]  ○流通経済大学 40-5(前半14-5) ●中央大学

中央大学に圧勝した流通経済大学はジャパンのCTBの期待も高まるタカヤワが看板スター。粥塚や積も成長が楽しみな選手達だ。しかし、この日注目を集めたのは成長著しいタマ・カペネだった。上位浮上を目指す中央大学だが、今年は成田と侭田のHB団で臨む模様。総力のあるレギュラー陣で戦いに望んだが、タカヤワとカペネに翻弄される形で6トライを奪われ厳しいスタートとなった。



■コンソレーション・トーナメント1回戦[4試合]

[No.09] ○日本大学 38-14(前半17-7) ●北海道バーバリアンズ

この大会での日大の伝統と言ったら関係者の方に叱られるかも知れないが、日大は午前中の試合が苦手。しかし、コンソレーションでは力を発揮するチームでもある。果たして、七戸、平川、黒川ラフィと言った俊足ランナー達にパワフルなジョセ・セルが居る北海道バーバリアンズを圧倒して、「コンソレーションの日大」をアピールした。北海道バーバリアンズは1回戦の予期せぬ敗戦のショックを受けていたのかも知れない。



[No.10] ○慶應義塾大学 33-15(前半12-5) ●湘南ベルマーレ

登録メンバーが少なくパワー不足の感があった湘南ベルマーレだが、前半は1トライを挙げて5-12と健闘を見せる。後半は慶應大に3トライを許し力尽きた感はあったものの、2トライを返す粘りを見せて場内を沸かせた。若い選手が多いだけに、経験を積めば強くなる可能性があることを感じさせた。



[No.11] ○神奈川県選抜 26-19(前半19-7) ●早稲田大学

曲者揃いの感がある神奈川選抜も日大と同じく朝の寝覚めが悪かったのだろうか。後半に息切れ感はあったものの、前半に挙げた3トライが効いて勝利を収めた。後半に盛り返したとは言え、早稲田の反撃は7-26と試合がほぼ決まってから。1回戦での完敗のショックを引きずっていたのかも知れないが元気がないのが気になった。


[No.12] ○中央大学 28-14 ●(前半14-7)ビッグブルーズ

先制は中央大学で、ビッグブルーズも1トライを返して拮抗した展開。しかし、中央大学はその後3連続トライを挙げて試合を決めた。キック、パスなど随所に巧さをみせた侭田の健闘が光った。とくにゴールキックは難しい位置からも含めて4本をすべて成功と、今シーズンこそは中央大のキーマンとしての活躍が期待される。



■チャンピオンシップ・トーナメント1回戦[4試合]

[No.13] ○YC&AC 33-5(前半19-0) ●東海大学

今年のYC&ACは別のチームとの警戒感を抱いて戦いに臨んだ東海大だが、どこかに大学屈指の強力な選手がいるという気持ちもあったと思う。しかしながら、YC&ACはそんな東海大のプライドを打ち砕くかのようにアタックを完全に封じ込め、前半に挙げた3トライで勝負を決めた。東海大は終了間際に1トライを挙げるのがやっとだった。ここで、YC&ACがとんでもないチームである(らしい)ことが明らかとなる。



[No.14] ○筑波大学 24-7(前半12-7) ●神奈川タマリバクラブ

神奈川タマリバクラブに名を連ねる名選手達(竹山将史、福田恒輝ら)は今年も健在。ここ数年も老獪さというかいやらしさで大学生を翻弄してきた感がある。先制は筑波大だったが、タマリバのすかさず1トライ返して7-5と逆転。しかし、その後は筑波大が3連続トライを挙げて圧勝した。突出した選手はいなくも筑波大のバランスの良さと若さが上回った感があった。

[No.15] ○サムライセブン 26-17(前半7-17) ●青山学院大学

社会人/クラブ勢が今年も苦杯を嘗める中で元気いっぱいだったのがサムライセブン。日本初の7人制専門チームとして他競技経験者などのトップアスリートを集めたことに偽りはなく、アタックでは運動能力の高さを見せる。前半に3トライを挙げて試合を優位に進めたかに見えた青山学院だったが、後半は2連続トライを奪われて逆転を許す。粘る青山学院は1トライを返して2点差に迫るが、サムライセブンが1トライを挙げて止めを刺した。



[No.16] ○流通経済大学 45-14(前半17-7) ●千葉県選抜

大学生屈指の選手となったタカヤワが看板の流通経済大学だが、この試合でも目を惹いたのは緒戦と同じくタマ・カペネの成長ぶり。アメフトのような自由奔放なパスなど随所に見どころを作った。緒戦でビッグブルーズを圧倒した千葉県選抜だったが、前後半に1トライずつ挙げるのがやっと。前後半で合計7トライを挙げた流経大の圧勝だった。



■コンソレーション・トーナメント 準決勝

[No.17] ○慶應義塾大学 24-21(前半17-14) ●日本大学

慶應大と日大の戦いは手に汗握る攻防となった。日大がフレイザーやハラシリらが個の強さを発揮したのに対し、慶應大は組織で対抗。日大先制のあと慶應大が2連続トライで逆転。その後は日大と慶應大が1トライずつ挙げて慶應大が17-14のリードで折り返す。後半、慶應大がさらに1トライを挙げて逃げ切り体制に入るが、粘る日大も1トライを挙げてビハインドは僅かに3点。しかし、日大の渾身のアタックも実らずそのまま試合終了となった。



[No.18] ○中央大学 14-12(前半7-12) ●神奈川県選抜

中央大と神奈川県選抜も緊迫した好ゲームとなった。前半はまず中央大が先制しGK成功で7-0。神奈川選抜も巧さを発揮して2トライを連取し12-7と逆転に成功する。後半は中央大が1トライを挙げて14-12。僅差の手に汗握る展開も神奈川選抜が攻めきれずに試合終了。明暗を分けたのがGKで2本を確実に決めた侭田のキック力が決め手となったことだった。

■チャンピオンシップ・トーナメント 準決勝

[No.19] ○YC&AC 33-7(前半21-0) ●筑波大学

ホストチームであることはさておき、2試合で半端ない強さを見せて大会の主役に躍り出たYC&ACはどこも止められない。筑波大との対戦でも東海大とまったく同じように前半に3トライを挙げて試合を優位に進める。ファイナルスコアも東海大とほぼ同じ33-7だったが、東海大戦よりも対抗出来ていた感があるのは、組織的な対応が出来ていたためかも知れない。



[No.20] ○流通経済大学 33-12(前半12-5) ●サムライセブン

YC&ACの対抗馬として期待が高まった流経大だが、サムライセブンも2連勝で自信を付けている。流経大が2連続トライを挙げたことで一方的な展開となるかと思われた前半だったが、サムライセブンが1トライ返して気を吐く。後半も流経大が1トライ挙げた後、サムライセブンが1トライ返して7点のビハインドをキープ。しかし、ここでサムライセブンが力尽き、2連続トライを奪われて試合終了。結果は完敗だが、サムライセブンの健闘が光った戦いだった。



■コンソレーション・トーナメント 決勝
[No.21] ○慶應義塾大学 15-7(前半15-0) ●中央大学

敗者戦とは言え、勝利を重ねて決勝戦まで勝ち上がった2チームの戦いも見応えがあるものとなった。前半は慶應大が3連続トライでGKをすべて失敗ながらも15-0。後半は中央大が1トライを返しGK成功で7-15。しかし、中央大には1トライ挙げてGKを成功させても1点届かない8点のビハインドは大きかった。YC&ACの戦いもそうだったが、GK失敗でもいいので先に3トライを挙げて(2トライ2ゴールでは追いつけない)15点差以上のすることが必勝セオリーなのかも知れない。慶應大が見事コンソレーショントーナメントの覇者となった。



■チャンピオンシップ・トーナメント 決勝

[No.22] ○YC&AC 36-5(前半24-0) ●流通経済大学

いよいよファイナル。試合前のインターバルの間にも、グランド半面を使ったYC&ACの気迫のこもった練習が目を惹く。振り返ってみれば、YC&ACはここまでミスらしいミスがなく勝ち進んできた。個々の技術の高さとパワーもさることながら、組織的な連携も完璧。それは惚れ惚れするような練習風景からも伝わってくる。

そしてキックオフ。観戦位置をバック側の仮設スタンドからメイン側に移動し選手目線での観戦に変えたのだが、ピッチから伝わってくる気迫はここまでの戦いと明らかに違って感じられた。物騒な表現だが、YC&ACの選手達の表情からは殺気のような感情が伝わってくる。相手のアタックは一切許さないと言わんばかりに、キックオフから激しいプレッシャーで流経大の選手達に襲いかかってチョーク。あるいはブレイクダウンでボールを奪い取り、攻撃の糸口すら掴ませない。

流経大はボールを持っても前に出ることができず、敵陣に入ることも殆どないままに4トライを奪われて0-24。こんなに情け容赦なく厳しいセブンズはまったく観た記憶にないくらいの完璧な前半だった。YC&ACはアタックでもお手本のようにスペースを作ってキックパスからトライと世界の技を次々と披露する。

しかし、一方的な展開のはずなのに、テンションが全く落ちないのも不思議。その原因は、実力では及ばないと分かっても諦めずに闘志で応戦した流経大の選手達の気迫にあると気付く。後半はYC&ACのテンションが少し緩んだこともあり、何度か流経大があともう少しでトライという場面もあった。流経大がゴールラインに到達したのは試合終了間際だったが、感動的な幕切れでもあった。今まで観たセブンズで最高に記憶に残る試合と言っても過言ではない。



■ホストチームからの最高のプレゼント

YC&ACに始まり、YC&ACに終わった感が強い第60回大会。このとんでもないチームは、その後の情報でNZのセブンズ元代表など強力な選手達によって構成されていたことが分かった。しかも、彼らは数日前に香港で行われていた香港10s(10人制ラグビー)に参戦し、プレートトーナメントで優勝を果たしたばかり。6戦して1敗で、その敗れた相手はチャンピオンに輝いていることから優勝する力はあったことになる。

素晴らしいプレーと圧倒的な強さで観客を魅了したチームは、対戦相手のとくに大学3チームとってもかけがえのない経験を与えたことになる。また、日本では観ることの出来ない10人制ラグビーのことをもっと知りたいという気持ちにもなる。セブンズの試合形式に近いが、アタッカーが増えると捉えれば、より厳しいディフェンスが求められる。しかしながら組織での対応ならセブンズよりも15人制に近いとも言える。束の間のYC&ACの選手達のプレーからいろいろなことが連想される。1日間に亘る濃厚なストーリー展開に、ラグビーの奥深さを学んだという意味でも忘れられない体験となった。
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