1回戦の8試合が終わった後は、勝者8チームによるチャンピオンシップトーナメントと敗者8チームによるコンソレーショントーナメントが行われた。2つのトーナメントに進む各8チームは、1回戦の結果により次のように決まった。
【チャンピオンシップ・トーナメント】
北海道バーバリアンズ、東海大学、神奈川タマリバクラブ、筑波大学、
日本IBMビッグブルー、流通経済大学、日野自動車レッドドルフィンズ、早稲田大学
【コンソレーション・トーナメント】
湘南ベルマーレ、慶應義塾大学、サムライセブン、日本大学、
神奈川県選抜、青山学院大学、YC&AC、中央大学
■コンソレーション・トーナメント1回戦[4試合]
[マッチNo.9] ○慶應義塾大学 33-5 ●湘南ベルマーレ(前半21-0)
慶應は緒戦で優勝候補の東海大に敗れてしまったとはいえ、圧倒されたわけではない。湘南ベルマーレとの力の差は歴然で慶應が前後半3トライずつを挙げて完勝した。そういった中でも最後に諦めずに1トライを返したベルマーレに拍手の内容ではあった。
[マッチNo.10] ○日本大学 36-12 ●サムライセブン(前半22-5)
緒戦で筑波大に悔しい逆転負けを喫した日大だが、実はコンソレーションで力を発揮するリセットの日大でもある。サムライセブンに先制トライを許したものの、前半だけで4連続トライを奪い試合を決めた。濱端に加えてトライを重ねた杉本悠馬と金志大が今季の要注目選手になりそう。前後半で各1トライずつに終わったサムライセブンだが、試合経験を積めば強くなりそうな印象を受けた。
[マッチNo.11] ○神奈川県選抜 28(33)-28 ●青山学院大学(前半14-7)*延長戦*
国体で上位を目指す神奈川県選抜とHCが交代して心気一新を図る青山学院の戦いは延長戦にまでもつれ込む死闘となる。前半は神奈川選抜が2トライに対し青山学院が1トライを挙げて14-7。後半は青山学院が先制した後、交互にトライを挙げるお互いが譲らずGKもすべて成功というタイトな戦いとなった。終了間際にトライを挙げた神奈川県選抜が逃げ切るかと思われたが、土壇場に青山学院が追い付いて同点でタイムアップのホイッスルが鳴り場内は興奮の坩堝と化す。延長戦は最初に得点を挙げたチームが勝利を収めるルールで、神奈川県選抜に勝利の女神が微笑んだ。セブンズでのゴールキックの重要性を感じさせたゲームでもあった。
[マッチNo.12 ○中央大学 33-5 ●YC&AC(前半14-5)
緒戦でも気になったことだが、ホームチームのYC&ACに元気がないと大会もどこか盛り上がりに欠ける点は否めない。ホンの数年前だと、独特の柄と色合いのジャージィがプレーの巧みさと相まっていやらしく見えたのだが。YC&ACが先制トライを奪ったのも束の間、その後中央大が5連続トライを挙げて快勝した。
■チャンピオンシップ・トーナメント1回戦[4試合]
[マッチNo.13] ○東海大学 40-0 ●北海道バーバリアンズ(前半14-0)
東海大と北海道バーバリアンズの戦いは屈指の好カードの期待があった。そして、北海道バーバリアンズが幸先良く先制トライを挙げたときはそんな予感が当たるものと思われた。しかし、それも束の間。東海大は、春シーズンの段階で既に選手個々の身体は出来上がっているのが強み。最初に1本取られたあと、東海大は5連続トライを挙げて完勝。ここにテビタとアタアタの2人が加わったらどんな強力チームが出来上がるのだろうかと想像を逞しくしてしまった。
[マッチNo.14] ○神奈川タマリバクラブ 19(24)-19 ●筑波大学(前半19-7)*延長戦*
緒戦で神奈川タマリバクラブに敗れた神奈川県選抜チームは延長戦を制してコンソレーションの準決勝に進出。だが、神奈川タマリバクラブも同じ形でチャンピオンシップの準決勝に進むとは思わなかった。前半は大ベテランを擁するタマリバが筑波を翻弄して3トライを連取。後半のスタミナに不安のあるチームとしては上々の滑り出しだった。しかし、前半の終盤に1トライ返してから筑波が力を発揮し始める。後半に筑波はさらに2トライを挙げてついにスコアは19-19に。筑波はこのまま勢いに乗って逆転勝利を収めるかと思われたが、タマリバの渾身のタックルが「あと1本!」を許さず延長戦へ。タマリバの気迫のこもった戦いぶりが見事だった。
[マッチNo.15 ○流通経済大学 33-7 ●日本IBMビッグブルー(前半12-0)
序盤から流経大がタナカ・ブランドンらの突破力を活かして日本IBMを圧倒。前半に2トライを挙げた後、後半に1トライを返されるものの3連続トライを挙げて圧勝。後半の1本目のトライはタナカ・ブランドンからビリー(ビリアメ・タカヤワ)を経て積がフィニッシャーとなったトライが見事だった。タナカとビリーのコンビは対戦校の脅威となりそうだ。
[マッチNo.16] ○早稲田大学 33-7 ●日野自動車レッドドルフィンズ(前半14-7)
中野、桑山兄弟、岸岡らの豪華メンバーを揃え勢いに乗る早稲田が先制。しかし、日野自動車も豊島(東海大OBで兄は東芝で活躍)が俊足を活かして突破を図り、パスを受けた小澤が決めたトライで同点に追い付く。しかし、早稲田の勢いは止まらない。前半に逆転トライを挙げた後、後半は3連続トライを挙げて日野自動車を一気に突き放しベスト4にコマを進めた。
■コンソレーション・トーナメント 準決勝
[マッチNo.17] ○日本大学 26-19 ●慶應義塾大学(前半7-12)
日大と慶應の戦いは息詰まる接戦となる。慶應が先制したあと日大が1本返してGKの差で逆転に成功。しかし、慶應が逆転トライを挙げて前半は12-7とリードを奪って終了。後半に日大が1本返して12-12の同点となった後、慶應がトライを挙げて再びリード。だが、日大も粘りを見せて2連続トライを奪い決勝進出を決めた。日大は試合を重ねる毎にセブンズの戦い方にフィットしてきている感があり、動きが良くなっていった。
[マッチNo.18] ○神奈川県選抜 38-22 ●中央大学(前半17-5)
青山学院との死闘を制した神奈川県選抜が3連続トライを挙げて大きくリード。しかし、中央大も前半終了前と後半開始後に1トライずつを挙げて食い下がる。神奈川県選抜がトライを挙げて突き放しにかかるが中央大も2連続トライ奪い22-24と2点差まで肉薄。ピッチサイドで声援を送る中央大の部員達の応援のボルテージが上がる。しかし、神奈川県選抜がダメ押しのトライを挙げて決勝進出を決めた。中央大では八尾の強さが光った。また、神奈川県選抜では林謙太の存在感が一気に増してきて、ピッチ内からしきりに「ケンタ」「ケンタ」の声が飛んでいた。
■チャンピオンシップ・トーナメント 準決勝
[マッチNo.19] ○東海大学 38-7 ●神奈川タマリバクラブ(前半19-7)
北海道バーバリアンズを圧倒した東海大の勢いが止まらない。先制した後タマリバに1トライを返されて同点となるものの、その後は5連続トライで圧倒。前の試合で筑波と延長戦にもつれ込む死闘を演じたことで疲労を蓄積したこともあってか、神奈川タマリバクラブは苦しい戦いを強いられた感がある。東海大は猪腰風太、高橋香成、村井康太郎らがフィニッシャーとして活躍した。
[マッチNo.20 ○流通経済大学 24-14 ●早稲田大学(前半14-14)
ここまでの戦いでは、優勝候補の東海大、流経大に続く、いやそれを上回るかも知れない力を見せていた早稲田。準決勝の2試合目は期待に違わぬ好ゲームとなった。先制したのは流経大だが、以後、前半は両チームが交互にトライを挙げ、かつゴールキックも成功する拮抗した展開となる。流経大は桑江、早稲田は岸岡がそれぞれキックで魅せた。ただ、早稲田は負傷のためか、中野の姿が見当たらないのが気になった。
前半を終えて14-14と5分。しかし、流経大は後半に逞しいエースへと成長を遂げたタナカ・ブランドンがトライを奪ったことで早稲田を突き放す。流経大はさらに1トライを追加。自陣インゴールからボールを繋いで決めた100メートルトライは見事だった。中野の欠場が響いた面もある後半は早稲田が息切れといった印象もあった。
■コンソレーション・トーナメント 決勝
[マッチNo.21] ○神奈川県選抜 36-26 ●日本大学(前半21-7)
YC&ACでは「コンソレの日大」と勝手に名付けてみたが、それくらいに敗者復活トーナメントでは優勝などの実績を挙げている日大。試合を重ねる毎に選手の動きも良くなってきて優勝への期待が高まる。先制したのは神奈川県選抜だが、日大もすぐに追い付き7-7。しかし、その後は神奈川県選抜が2トライを連取して21-7のリードで前半を終えた。
日大は後半にトライを挙げてビハインドを7点に縮めるものの、巧さで勝る神奈川県選抜が日大のミスにも助けられて2トライ連取でリードを一気に21点まで拡げた。だが、日大も諦めない。2トライを連取してビハインドを9点まで縮めたところで試合終了となった。日大は有望な留学生を新たにメンバーに加えており、敗れたとは言え今季の活躍に期待を持たせる内容だった。
■チャンピオンシップ・トーナメント 決勝
[マッチNo.22] ○東海大学 14-12 ●早稲田大学(前半7-7)
いよいよチャンピオンシップ決勝。セブンズとはいえ、朝から1日試合を続けていたら体力的に厳しくなるのが普通だが、この2チームは元気いっぱい。やはり、関東リーグ戦グループの「胸板番付」で1、2を競うチームは普段から鍛え方が違うようだ。他のチームがなかなか追いつけないのがこの部分でもある。そんなパワフルな選手達を揃えた決勝戦はファイナルに相応しい好ゲームとなった。お祭りムード的な賑わいがあるのが59回の歴史を重ねるYC&ACセブンズだが、ファイナルのレベルの高さが維持されていることも特筆すべきだと思う。
キックオフからめまぐるしく攻守が入れ替わる展開。この試合まではバック側の仮設スタンドで観ていたが、メインに移動。選手とほぼ同じ目線でピッチサイドに立つと迫力は倍増する。先制したのは流経大で決めたのはエースのタナカ・ブランドン。屈強な選手達を揃えた東海大といえども、この選手はなかなか止められない。来シーズンはNDSに読んで欲しい候補選手の筆頭格でもある。ゴール成功で7-0とリードするが、東海大もこの日活躍が目立つ高橋香成がトライを返し、GK成功で7-7。両チームの選手達も元気いっぱいで後半への期待が膨らむ中で前半が終わった。
後半も両チームの攻守の入れ替わりが激しい一進一退の展開が続く。そんな中で最初に得点したのは東海大。ラインアウトでのスティールから村井がインゴールまでボールを運んだ。ゴールキック成功で14-7とリードを奪う。しかし、流経大もこのままでは終われない。そして、決めたのはまたしてもエースのタナカ・ブランドン。ゴールキックは外れて東海大が2点リードの状態で時計は進む。そしてタイムオーバーを告げる合図が鳴り、ボールは東海大が保持。誰もがボールを蹴りだして優勝決定と思われた。
しかし、何と!東海大の選手がボールを持って前に向かう。ここで反応したのがターンオーバーできれば逆転で優勝のチャンスが転がり込む流経大の選手達。そして、注文通りにボールの奪取に成功して東海大ゴールに向かう。流経大ベンチのボルテージが最高レベルに上がる中、東海大も死力を尽くしたディフェンスでチョークに成功。マイボール確保となったところで今度は冷静にタッチにボールを蹴りだして試合終了となった。最後はハプニング的な幕切れとなったが、本当に手に汗握る好ゲームだった。優勝した東海大の選手達の喜びようを見ても、彼らがこの大会に照準を絞って準備してきていたことがよくわかる。セブンズを強化の柱として捉えているチームが今年もリーグ覇者の優勝候補筆頭であることを強く印象づけた。