「熱闘」のあとでひといき

「闘い」に明け暮れているような毎日ですが、面白いスポーツや楽しい音楽の話題でひといき入れてみませんか?

帝京大学vs流通経済大学(2013年度春季大会)の感想

2013-04-30 01:37:35 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


今年で2回目となる関東大学ラグビーの春季大会が始まった。昨シーズンはAとBの2グループに分かれ、対抗戦G所属校4チームとリーグ戦G所属校4チームが対戦する方式。同一グループ校間の対戦がない「交流戦スタイル」の対戦だったわけだが、その結果をレギュラーシーズンにどのように反映させるかという意味合いが難しかったにせよ、変則的な公式戦だったという感は否めない。

もちろん、競った試合が続出だったら問題無かったのかも知れないが、対抗戦とリーグ戦の両グループ間の格差を残酷なまでに露呈する形にもなってしまった。そういったことは抜きにしても、公式戦である以上は、同じカテゴリー内での対戦が無いのはやはり不自然。そんな議論があったのかどうかは不明だが、今シーズンからの方式でようやく公式戦らしくなったと言えそうだ。それに、大学生の強化に「対抗戦だ、リーグ戦だ」と言っていられなくなっている状況があるのも確か。グループ分けを細かくすることにより、大会のステータスも上がっていくことと思う。

ということで、1stレグは4月27日と28日に分かれて計6試合が組まれた。さて、どの試合を観に行くかという選択になったが、今シーズン一番気になるチームである流通経済大(流経大)と大学最強チームの帝京大の対戦というところに落ち着いた。試合会場の帝京Gへは京王線の百草園駅から徒歩で向かう。直線距離ならたいした距離ではないが、実際は山登りを連想させるような急勾配の道を上り詰めると、前方に帝京大のホームグランドが見えるという立派なハイキングコース。「罰ゲーム」で駅から寮まで走って帰れと命じられたら帝京の選手達はさぞかし大変だろうなと不遜なことも思い浮かべてしまった。

◆試合会場に到着すると

グランド入り口の坂道を上ってピッチの方向を眺めたら、既にラグビーの試合が始まっていた。といっても、これはCチーム同士の練習マッチ。得点板を眺めると、一方のチームの方にだけ、とんでもない数字が並んでいる。得点を重ねているのはホームチームなのだが、一方的に得点を重ねていくことはさることながら、これが3番目のチームなのかと思わせるくらいに内容のあるラグビーを見せてくれるから驚きだ。チームリーダーがちゃんと居て、適切な指示を送っている。「シェイプ!」という言葉がピッチ上で飛び交い、そして、それが確実に実行されているのだ。

もちろん、体格面とか選手個々の能力は上の2つのチームに及ばないに違いないのだが、大学選手権の決勝でAチームが見せたものと同じラグビーがピッチ上で展開されている。もしリーグ戦Gのチーム関係者が大学チーム同士の練習マッチということ以外の予備知識も持たずにこの試合を観たら、(対抗戦Gとリーグ戦G以外の大学で)こんなラグビーができるチームがあったのかという印象を抱くに違いない。そして、そのチームが帝京のCチームだと知ったら顔色が変わってしまうだろう。このチームならリーグ戦Gの1部で戦っても下位のチームと遜色の無い戦いができる。いや、もしかしたら勝ってしまうかも知れない。それくらいしっかりしたラグビーができていることにまずは感嘆。

◆満を持してAチームが登場

Cチームの対戦は96-0というスコアで帝京の勝利。その余韻もさめやらぬうちに、帝京サイドからピッチ中央に向けて控え選手達による花道が築かれた。これから試合を行うAチームの選手達を送り出すセレモニー。春季大会とは言え、大学最強チームで1sとジャージを着用することに対する威厳を持たせるような儀式だが、不自然さがない。反対サイドでも同じことが行われたのだが、アウェイチームで盛り上がりに欠ける面があるにしても、選手達が照れてしまったりと、どこかぎこちない感じがした。

それはさておき、帝京のAチームについては殆ど知識が無いのだが、イラウアなど強力な選手達がメンバーに加わっていることはわかる。気になるのはやはり流経大の方。FWもBKも基本的には昨シーズンの持ち上がりのはずだし、実際にメンバー表に並ぶのはお馴染みの名前が多い。ただ、主力のHO植村、No.8高森、CTB矢次は前日にNZU(ニュージーランド学生選抜)との試合に関東大学代表チームのメンバーとして出場しているのでベンチスタートとなった。また、注目度がつとに高まっているFB合谷はTIDシニアキャンプの合宿参加で不出場なのが残念。

そんな流経大での私的着目点は強力な留学生トリオ(1年生のテアウパ・シオネを加えるとカルテットか)の起用方法。セブンズでの活躍から先発出場が期待されたリサレ・ジョージ(サモア出身の2年生)はベンチスタートで、LOには昨年通りフシマロヒ・シオネが起用された。また、WTBにはセブンズで猛威を奮い、流経大随一のスター選手となったリリダム・ジョセファが入る。その他にもSO桜庭、WTB廣、FB屋宜といった魅力的な選手達がBK陣を固めている。合谷が不在でもなかなか楽しみな選手達が揃う陣容は、数年前の決定力不足に泣いた流経大では考えられなかったこと。流経大としては、去年(15-29で惜敗)以上の内容の試合を期待したいところ。



◆流経大のキックオフで前半開始

ベストメンバーから数名が欠ける状況とは言え、それは帝京大も同じ。流経大がどこまでやれるか、いやもしかしたら勝利も期待したが見通しが甘かった。帝京大はキックオフのボールに対してもキックを使わずに「前へ、前へ」と攻めたてる。流経大がたまらず反則を連発し、流経大は序盤戦にして早くも自陣に釘付け状態のピンチの連続となる。ただ、劣勢にはあってもフィジカルでは負けておらず、何とか粘って帝京大に最後の一線を越えさせない。ディフェンスの崩壊でトライの山を築かれたCチームとは明らかに違う。

(流経大は開始早々に2分でFL今井が負傷し、昨日のNZU戦でフル出場を果たした高森と交代した。高森は疲れた表情を一切見せずに元気よくピッチに向かって行った。本当にタフな選手だ。)

しかし、帝京の猛攻を前に、流経大のディフェンスに穴が開くのは時間の問題だった。5分、自陣22m内でターンオーバーに成功し、屋宜のロングキックでタッチに逃れてピンチを脱したかに見えたが、帝京は躊躇無くクイックスローから素早くオープンに展開して継続。テンポ良くボールが繋がり、最後はCTB野田が流経大ゴールの右中間に飛び込んだ。帝京の選手はターンオーバーやクイックスタートからの反応(反転攻勢)がとにかく早い。ボールが前に運ばれたところで、BKラインの全員がすぐにトップスピードになって面を形成して前進する状況には戦慄すら感じる。SHが球出しで躊躇することも皆無。

11分にはFW陣による突破と小気味よい繋ぎ(1→8→6)からイラウアがインゴールに飛び込み、続くリスタートのキックオフでは自陣からの継続でWTB磯田が快足を飛ばして一気にゴールイン。この13分のトライを含めて、帝京のノーホイッスルトライは3本を数えた。また、WTB磯田は全12トライ中4トライを奪う大活躍だった。もちろん、磯田が素晴らしいスピードの持ち主だからこそのハットトリック+1なのだが、帝京は意識的にリリダムの居ない反対サイドを攻める作戦だったのかも知れない。この序盤の3トライを観ても、帝京に無理なプレーはなく、素早くテンポ良くシンプルにボールを動かすだけで得点が重ねることができている。後工程を大切にした丁寧なラグビーなら必然的にミスも少なくなるわけだ。

撃たれっぱなしの流経大も黙っているわけには行かない。20分にエースのリリダムが一矢報いる。といってもこれはハプニングのようなもの。帝京が自陣から展開してボールを動かしていたところで、リリダムの狙い澄ましたようなパスインターセプトが決まり、一気にゴールまでボールを持ち込んだ。帝京優位の展開は変わらず、27分にマルジーン、33分に磯田がそれぞれトライを決める。結局、前半は33-7と予想外とも言える大差で帝京が大きくリードする展開で終わった。



◆後半の逆転に賭けた流経大だったが

無理なくスムースにボールが繋がり、自陣からでも相手インゴールまでボールがつなげる帝京に対し、流経大は継続ができていても球出しのテンポが遅い。こうなってしまったら、たとえ攻めている時間が短くてもトライが取れてしまう帝京の優位は動かない。後半こそは形勢不利からの脱却をめざしたい流経大は、何とかテンポアップを図りたいところ。そういった意味でも、開始早々にFB屋宜が負傷交代を余儀なくされたのは痛かった。

後半も先に得点を挙げたのは帝京。流経大は5分にまずHO植村を投入。さらにトライを重ねられたところでフシマロヒに替えてLOにリサレを投入したところで、ようやくFWの機動力がアップしてきた。リサレは上背こそ187cnとやや低いものの、パワフルな突進やハイボールに強い身体能力の高さも持つ強力な選手。起用されればリーグ戦Gの対戦校にとっても厄介な存在になることだろう。

しかしながら、帝京の攻勢は留まるところを知らない。流経大が止めても止めても確実にボールを継続し続ける。また、ボールを失っても流経大に有効な継続を許さず、しばしばターンオーバーと試合の流れは変わらない。そんな流経大の見せ場はリリダムの快走。20分にはボールがワイドに展開されてリリダムに渡ったところで60m以上の怒濤のランでもう一矢報いる。ただ、残念なことに、リリダムはトライ寸前に人工芝に足を取られた(ように見えた)ため泣く泣く退場。怪我が大事に至らなければいいのだが。今井、屋宜、リリダムと流経大に負傷者が相次いだのは気になるところ。

流経大は27分にラインアウトを起点としたオープン攻撃からリサレがトライを奪うものの、29分と31分に2つ連続でノーホイッスルトライを奪われてしまう。ハイボールに抜群に強く、キックオフでのボール獲得戦で頼りになるリリダムが下がったことが響き、流経大はキックオフを深く蹴らざるを得ない。そこをすかさずつかれたあたりは、大学選手権決勝における帝京の筑波に対する戦い方を思い起こさせる。帝京のアタックを止める方法は、第一に(当たり前のことながら)ボールを与えないことなので、今後も対戦チームはキックオフから神経を使うことを余儀なくされる状況となりそうだ。

その後、さらに帝京は2トライを重ね、ファイナルスコアは76-19と予想を遙かに超える数字に到達してしまった。敗れた流経大やリーグ戦G関係者だけでなく、大学ラグビー関係者全体にも衝撃を与える圧勝劇とも言える。それも、帝京が特別なことはやらずにシンプルにテンポ良くボールを継続するだけで達成できてしまっている。かつて、FW周辺のラグビーに固執して批判を浴びた帝京は完全に過去のものとなり、今やもっともワイドかつスピーディーにボールを動かせるチームへと変貌を遂げている。

このままいけば、帝京は特別なことはやらなくても大学では敵なしの状況が続きそうだ。スペシャルプレーが必要になるのはトップリーグのチームと戦うときだけかも知れない。本日の帝京のラグビーでとくに印象に残ったのはFWの組織的かつ無駄のない動きだ。ラックの後方での速やかなシェイプの形成はいいお手本になりそうな感じだった。しかも、それがCチームでもできる。本日の流経大に限らず、春シーズンの段階で帝京と公式試合ができる東海と拓大は幸せなのかも知れない。



◆絶望的な失点で敗れた流経大だが

数字だけ見たらリーグ戦Gのトップチームが何をやっているのかという誹りを受けるのもやむを得ないだろう。ただ、試合を観た実感からは、過度に心配する必要もないような気がする。そう感じた第一の理由は流経大は土台がしっかりできているチームだからということ。帝京のような確実性の高い攻撃力を持ったチームを相手にしたら、ちょっとしたボタンの掛け違いから思わぬ失点を喫してしまうことになる。帝京のアタックはスピードに乗る前に止めなければならないし、攻撃するときはスムーズにボールを運ぶ必要がある。流経大、そして東海大にはその力があるはずだし、あって欲しい。むしろ心配なのは、春季リーグのBグループ以下で戦う各チームだ。公式戦では無くても、百草園でBチームあるいはCチームと対戦する価値は十分以上にあると思う。

◆帝京と関東学院

帝京の後工程を大切にし、ムリ、ムダ、ムラを省いた3ム主義の「継続ラグビー」を観ていて、ふと関東学院のラグビーのことが思い起こされた。もちろん、王者として君臨していた頃のチームがやっていたラグビー。2つのチームのラグビーに共通するのは、たとえ起点が自陣のインゴールであっても(一発では無くて)フェイズを重ねてトライを取りに行く組織的な継続ラグビー。

ただ、両チームの間にはボールを運ぶプロセスに違いがある。帝京はあくまでも「シンプル・イズ・ベスト」であるのに対し、関東学院の場合はいろいろな変化技が混じった自由な発想を選手間で共有するような形でボールが運ばれる。帝京はこの日のWTB磯田の例で観られるように最後はWTBが決めることが多いが、連覇していた頃の関東学院はFW第1列の選手がフィニッシャーになることが多かった。逆に言うと、トライを取るためにはいろいろな方法があってよく、帝京に勝つためには帝京と同じ方法でなければならないということもないはず。ひとつの「可能性」は筑波だし、他のチームも頑張って欲しい。帝京の一人勝ちを許さないために何をすれば良いかを考えることが各チームの使命だし、そのことが大学ラグビーのレベルアップに繋がるはずだ。
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第14回 東日本大学セブンズの感想

2013-04-27 02:41:01 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


セブンズ三昧だった約1ヶ月間。大雨、強風から季節外れの寒さまでいろいろあったが何とかコンプリートできた。とくにフィナーレは、丸一日をスタンドで過ごすのはちょっと辛い環境でもあったのだが、そんな悪条件を吹き飛ばすような選手達の奮闘に元気づけられながらの楽しい1日を過ごすことができた。

この「私的セブンズ月間」の取っ掛かりは世界の強豪チームが一堂に会した「東京セブンズ」。あとはすべて大学生が中心の大会で、やや「らしさ」の残ったYC&ACセブンズのあとは最初に観たセブンズが「あれは夢か幻か?」という状態になってしまったことは否めない。春季大会を間近に控えて、早急に「15人のチーム」を作らなければならない状況にあって、セブンズまで手が回らない状況は十分に理解できる。でも、だからこそ各大学チーム強化に対するスタンスを垣間見ることができる。

個人的な興味関心とすることころは、やはり関東大学のリーグ戦グループ所属校の新戦力のチェックやチーム状況の確認にある。どうしてもBKの選手が主体になってしまうが、たとえセブンズでも首脳陣や選手達の意識や姿勢が滲み出てくる。春季大会から秋の本シーズンに向けての貴重なデータを1日で得ることができる絶好の機会でもあるわけだ。

関東リーグ戦Gファンの目線になってしまうが、当日の試合のことを振り返りながら実り多かった約1ヶ月間の締めくくりを。

[東海大学]
○ 53- 0 新潟大学(1回戦)
○ 34- 0 東京学芸大学(チャンピオンシップ2回戦)
● 14-28 明治大学(チャンピオンシップ準決勝)

YC&ACセブンズでは準優勝を果たしたものの、続くリーグ戦Gセブンズでは緒戦で國學院大学に苦杯を喫して不完全燃焼。この舞台では優勝を果たして春季大会に向けて弾みを付けたいところ。果たして、ピッチに登場した選手達の身体からは湯気が立っているかのような気迫が感じられた。ただでさえ胸板の厚い選手達がさらに大きく見えたくらい。緒戦は一昨年のセブンズの主役だった新潟大学をまったく寄せ付けずに圧勝を収めた。

チャンピオンシップの緒戦で対戦した東京学芸大学はなかなか骨のある相手だった。全試合を振り返ってみてももっともセブンズらしさを前面に出した戦いができていたチームという印象。関東地区対抗からの常連だった東京都市大学(旧武蔵工業大学)の不在を感じさせない溌溂としたプレーを披露したが、個々のパワーの差はいかんともしがたく、ここでも東海大が圧勝。相手がセブンズにつきあってくれなければ、普段磨いた技も活きないというのはちょっと理不尽な感じもする。

と、ここまでは順調な東海大だったが、決勝戦を前にしてまたしても躓いてしまった。幸先良くエースの小原が先制トライを決めたところで、周囲の明治ファンからは「ここまでか...」のため息が漏れたのだが、前半に1本返されて同点となったところから雲行きが怪しくなってしまった。後半に先に1本取られたところから体勢を立て直すことができずにダブルスコアの敗戦。結果的にYC&ACセブンズやリーグ戦GセブンズのVTRを観ているかのような状況になってしまった。相手が違っても同じことが起こることには何か原因があるはずだ。このことについては、最高のパフォーマンスを見せて優勝に輝いた筑波との比較という形で最後に考察する。

[流通経済大学]

○ 26-10 法政大学(1回戦)
○ 21-14 早稲田大学(チャンピオンシップ2回戦)
●  7-10 筑波大学(チャンピオンシップ準決勝)

YC&ACセブンズ、リーグ戦Gセブンズと2週連続で優勝を果たし波に乗る流経大。もちろん、この大会も自他共に認める優勝候補の筆頭。看板スターは東京セブンズでフィジー代表に抜擢されたリリダム・ジョセファだが、過去2大会ではむしろもう一人の怪物リザレ・ジョージの印象の方が強かった。きっとリーグ戦では各校にとってもっともやっかいな存在になることだろう。

この大会ではピッチ上に立つ留学生は一人に限られるため、流経大の場合も他チーム(とくに拓大と立正大)と同様にパワーが半減してしまうことが懸念された。と言いたいところだが、高森、矢次、合谷、屋宜(ショーンロバート)、廣、桜庭といった曲者達が揃った流経大の場合は決めてくれる絶対的なエース(リリダム)が一人居れば十分だ。緒戦は法政を全く寄せ付けずに一蹴。2回戦もリリダムの3トライで早稲田を振り切りベスト4へ。

しかし、ここで分厚い壁となって立ちはだかったのが筑波大。YC&ACセブンズ(チャンピオンシップの準々決勝)では21-7と流経大に軍配が挙がっているが、この大会での筑波は2週間前とは別のチームになっている。その立役者は高校時代にジャパンに抜擢された山沢だ。チーム加入からは殆ど日が経っていないのに既に中核を担っているかのような風格すら漂わせる恐るべきルーキー。リリダムが先制トライを奪うも、筑波も武田と山沢が1トライずつを挙げて7-10と逆転に成功して前半が終了。ルール上は無理とわかっていても、流経大ファンには、リザレにもピッチに立って欲しかったところ。

後半戦は本大会のハイライトともいうべき死闘となる。とくに印象に残るのは、独走態勢に入ってゴールラインに向けてひた走る山沢を追いかけてゴール間際でタックルを決めてトライを阻止したリリダムの執念。両チームの選手達が渾身の力を振り絞り、勝利を目指した充実の14分あまりだった。筑波の組織された防御網の前に、あと一本が取れなかった流経大にとって残念な敗戦は事実上の決勝戦とも言えた。筑波には決勝戦を戦い抜く力は残っていないのでは?と思われたのだが...

[拓殖大学]

○ 27- 5 成蹊大学(1回戦)
●  5-24 早稲田大学(チャンピオンシップ1回戦)

昨シーズンは上位グループへのランクアップを果たし、優勝争いも視界に入ってきた拓大。今シーズンのテーマは大黒柱のウヴェ頼みからの脱却で、そのためにもBKの攻撃力アップが課題となる。リーグ戦セブンズではあえて主力を温存し、この大会に賭けてきたところ(おそらく)を見ると何か期するところがあったのかも知れない。

拓大も流経大同様、本来はウヴェとパトリック・ステイリンの2枚看板を同時にピッチに立たせたいところ。やむを得ず先発はウヴェになったが、アタックがなかなか機能しない。ということでウヴェがパトリックと交代したところから実質的なゲームが始まった。YC&ACセブンズでも感じたことだが、今シーズンの拓大のBK陣は一回り身体が分厚くなった感がある。上背が無い分、オフシーズンに筋力アップに取り組んだのかも知れない。確かにBKラインを構成することになりそうな各選手のランに力強さが加わった感がある。緒戦は問題なく突破した。

チャンピオンシップに入ってからの最初の相手は早稲田。奔放に走られて連続でトライを奪われ、最後に山谷が一矢を報いるに留まったが、手応えは十分に感じさせる戦いぶりだったと思う。YC&ACでも活躍した山谷はエースとしてトライを量産しそうだ。また、FWは前5人など殆どのメンバーは持ち上がりのため、今シーズンはマイナス要因がない。新戦力に関しては未知数だが、さらなるステップアップを期待したい。

[法政大学]

 ● 10-26 流通経済大学(1回戦)
 ○ 26-31 慶應義塾大学(コンソレーション2回戦)

新体制となった法政だが、もちろん、まだ戦いぶりに表だった変化は見られない。個人能力が高い選手が揃っているだけあって、セブンズに不慣れでもアタックには見るべきものがある。しかしながら、いざ相手にボールが渡ると組織がガタガタになるといった弱点が一気に露呈する。東海や流経大と比較しても選手が全般的にスリムに見える点も気になる。しばらくは我慢を重ねながら徐々にパワーアップを図っていくことになるだろう。

[日本大学]

○ 19- 5 青山学院大学(1回戦)
● 10-12 東京学芸大学(チャンピオンシップ 1回戦)

YC&ACセブンズでいい形を見せていた日大だが、その後がピリッとしない。リーグ戦セブンズでは緒戦で國學院大学に敗れてしまったこともあり、満を持してこの大会に臨んだはず。緒戦では青山学院を相手に3トライを奪って勝利を収めたが、チャンピオンシップ1回戦では東京学芸大学の組織されたディフェンスを破ることができずに惜敗となってしまった。何となくだが、全体的に身体が重そうに見えた点も気になる。

その日大のエースはマイケルだが、まだまだ本領発揮とはいかないようだ。ボールを持った瞬間に明らかに身体に力が入ってしまう様子がみられ、かえって持ち前のパワーが活きないような感じがする。昨シーズンの後半戦のようにNo.8で起用された方が機能するのかも知れない。FWの高橋慶と大窪の状態がいいだけによけいにそう感じる。

[中央大学]

●  7-40 立正大学(1回戦)
○ 31-17 立教大学(コンソレーション 1回戦)
● l9-22 帝京大学(コンソレーション 2回戦)

中央は、小柄ながらも一躍スピードスターの座を掴んだルーキー住吉にトライゲッターの水上、さらにはジャパンの羽野まで加わった高速ラインを高崎が操る形の魅力的なメンバー構成。だから、緒戦があいにくの雨で、ピッチからは水しぶきが上がるコンディションだったのが残念だった。もちろんそれは緒戦の相手の立正も同じだったわけで、ツトネを中心としたパワーの前に屈する。

しかし、緒戦の惨敗から見事に立ち直ったYC&ACセブンズでの戦いぶりを彷彿とさせるようなパフォーマンスを見せ、コンソレーション1回戦では立教大を撃破。相手は主力が殆どいない状況だったにせよ、帝京とも五分の戦いを挑むことができたことは収穫だったと思う。チーム一丸となった応援風景やブログでの選手達の発言を見ると、明らかに中央には(いい方向に向けての)変化が認められる。春シーズンでどこまで成長するかを見届けたい。

[大東文化大学]

○ 29- 0 立教大学(1回戦)
●  7-26 立正大学(チャンピオンシップ 1回戦)

テビタと長谷川の2枚看板は欠場だが、淺井らの楽しみなランナー達が揃った大東大。元来はセブンズの感覚を15人制に持ち込んだかのようなFW、BK関係なく奔放にパスを繋ぐチームだっただけに、そんなチームを築き上げた鏡氏の復帰は明るい材料だと思う。元気いっぱいの立正大の前に屈する形となったが、「復活」を期待させるような手応えを感じた。

[立正大学]

 ○ 40- 7 中央大学(1回戦)
 ○ 26- 7 大東文化大学(チャンピオンシップ 1回戦)
 ●  5-45 筑波大学(チャンピオンシップ 2回戦)


現在、リーグ戦グループでもっとも元気なチームは立正大かも知れない。かつて1部リーグに在籍したときは、なかなか燃えることがなかったチームという印象があったが、今は積極的に仕掛ける攻撃的なラグビーが魅力のチームへと変貌を遂げている。絶対的なエースに成長した加藤の活躍が目立つ状況にはあるが、去年の主役は早川だった。本日はその早川の活躍もあり、秋のシーズンで対戦することになる上位2チームに圧勝。次々とチャレンジを受ける形となる「上位校」にとって、立正は厄介な存在になるに違いない。

[関東学院大学]

 ○ 33-12 北海道大学(1回戦)
 ● 12-22 明治大学(チャンピオンシップ 2回戦)

YC&ACセブンズ、リーグ戦Gセブンズともに精彩を欠き、前途多難を思わせた関東学院。結果的には圧勝となったものの、北海道大学が相手の緒戦でも危ない場面が散見された。明治との戦いが善戦となったのは明るい材料だが、たとえ2部でも上位を争うことになりそうなチームはパワフル。個のパワー不足をカバーする組織力と創造力が活きるラグビーを取り戻したいところだ。

[筑波大学]

○ 36- 0 帝京大学(1回戦)
○ 45- 5 立正大学(チャンピオンシップ 2回戦)
○ 10- 7 流通経済大学(チャンピオンシップ 準決勝)
○ 54-14 明治大学(チャンピオンシップ 決勝)

本大会でもっとも印象に残ったチームは見事優勝を飾った筑波大学。相手が主力を欠く陣容だったとは言え、緒戦で帝京を撃破したことには驚かされた。流経大の項でも書いたとおり、筑波はYC&ACセブンズから僅か2週間にしてまったく別のチームになっていた。元気印の立正も一蹴し、優勝候補筆頭の流経大戦は死闘になったものの、決勝では明治を相手にこの大会の最多得点を挙げての堂々たる勝利。ここに、ジャパン組の内田、福岡、竹中が加わったらどんなチームができあがるのだろうか。大型WTBの山内もレギュラー取りを虎視眈々と狙っている。

本大会のベストゲームは準決勝の筑波と流経大の死闘で間違いないと思う。しかしながら、筑波にとってのベストゲームは決勝戦の明治戦ではなかったかと思う。流経大と激しい肉弾戦を演じて消耗していた状況で、インターバルも明治より短いため、選手達は相当に厳しい戦いを強いられたはずだ。ところが、先に足が止まったのは意外にも明治の方だった。筑波の選手達の足も止まりかけていたのだが、チーム一丸となった結束力で乗り切ってしまった。勝利が決定的となった段階でも攻守とも緩むことなく20分間を戦い抜いた精神力は日頃の修練の賜と言えるだろう。

個々の強さを前面に押し出して戦うチームは数あれど、それがひとつに束ねた形で戦うことができるチームは少ない。とくにチームが劣勢に陥った状況になるとあっけなく崩れてしまうチームが大学には多い。筑波が頑張れたのは、もちろん優勝がかかったゲームだったと言うこともあるだろうが、けしてそれだけではなかったと思う。どんな状況にあっても、チーム一丸となってベストのパフォーマンスを見せることが筑波の目指すラグビーであり、図らずもこの試合がそのことを如実に示すことになったと理解している。

そう思うと、筑波と対戦する前に敗れてしまった東海大に足りないものが見えてくる。選手個々での比較なら東海大の方がおそらく筑波より上だろう。しかしながら、ひとつのチームとして見た場合は単純な足し算での大小関係が成立しなくなってしまう場合もあるのだ。YC&ACセブンズでもリーグ戦Gセブンズでもできなかったこと(試合中でのチームの立て直し)は、結局明治戦でもできなかった。果たして、チームとしての精神的なタフネスを鍛える方法はあるのだろうか?と思ったりもする。この部分は東海大が1部に復帰を果たしてから延々と(残念ながら)DNAのような形で残っているようにも感じる。

大学選手権決勝での帝京の圧倒的なパフォーマンスを見て、しばらく大学ラグビーは帝京の一人勝ち状態が続くように感じられた。また、対抗馬足るべき筑波は、有力選手が卒業してパワーダウンが必死とも思われた。しかし、僅か20分間にすぎないこの日の筑波の闘いぶりを見て、考えが変わった。そして、筑波にできることが(もちろん、簡単では無いが)他のチームにできないはずがないとも。とても寒い1日の最後に最高にホットなチームの戦いを観ることができて本当に良かったと思った。この日の筑波の選手達の闘いぶりを忘れることはないだろう。
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第27回 SEVENS A SIDE(関東大学リーグ戦セブンズ)の感想

2013-04-16 02:45:35 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


今年で第27回を数えるセブンズ・ア・サイド(リーグ戦セブンズ)は、言うなれば関東大学ラグビー・リーグ戦グループの年に一度のお祭り。とくに今年は町田市立野津田公園に1部から6部までの全大学が集結した。2会場に分かれる形にはなるが、こんな機会はなかなかないはずだ。

しかしながら、ラグビーファンでこの大会が開催されることを知っている人はチーム関係者かリーグ戦グループ校のファンくらいしか居ないのではないだろうか。告知は私の知る限りでは、関東大学ラグビーフットボール連盟のHPのみ。去年は確か関東協会のHPにも案内があったはずだが、今年はなし。せっかく日本協会にも「セブンズ」のサイトができたのに、そこにも情報は出ていない。

会場までのアクセスがいいとは言いがたいが、しかるべき形で告知されていれば「シャトルバス」を出すとか、食料を扱う出店もあり得たかも知れない。50チーム近くが集まるイベントにしてはちょっと寂しい感じがした。

(余談ながら...会場周辺の自然環境は最高で空気も美味しかった。バスの行き先と時間を勘違いしていたこともあり、朝から道に迷いつつ予期せぬハイキングになってしまった。林間の小径を抜けて前方に立派なスタジアムが現れたときは、正直ホッとした。)

それ以上に残念だったのは、今年はAからCまでの3グループの試合を2会場で開催しなければならない事情があったためか、コンソレーション(敗者復活)トーナメントがなかったこと。チームの強化はさておいても、お祭りの盛り上がりを考えたら、各チームが最低2試合できることがセブンズの楽しみのはずだ。

いろんな残念があったので、つい愚痴っぽくなってしまった。実際に試合を観たら楽しいセブンズなのだから、運営する立場からは大変かも知れないが、来シーズンは一工夫していただけたらと思う。1部校と2部校が参加した「Aブロック」の結果をもとに当日の感想を書く。



【1回戦8試合】

●東海大学 24-31 ○山梨学院大学
○立正大学 43- 0 ●白鴎大学
●日本大学 19-24 ○國學院大学
○法政大学 29-14 ●国士舘大学
●拓殖大学  0-43 ○専修大学
○中央大学 47-12 ●東洋大学
○大東文化大学 26-12 ●関東学院大学
○流通経済大学 47- 0 ●玉川大学

何が起こるかわからないセブンズで、しかも負けると後がないノックアウト方式。15人制ほどの力の差が現れず、メンバーに依存する部分が多々あるので1部校の何チームかは午前中で「サヨウナラ」になってしまってもおかしくはない。でも、そのトップバッターがよりによって流経大との優勝争いが期待され、かつ、先週のYC&ACのリベンジに燃えていたはずの東海大になってしまうとは。

先制トライを決めたのはエースの小原で、東海は絶好のスタートを切る。だが、ティモシー・ラファエルを核とする山梨学院もなかなかの強力チームで2連続トライを奪い5-14と逆転に成功する。東海は相変わらずタックルが甘い。東海は石井が欠場ながらも近藤が元気で小原とともに1トライずつを追加して17-14とゲームをひっくり返して前半を終了。後半は本領発揮かと思われた。

しかし、東海はピリッとしない。後半は山梨学院に先に取られて17-21となる。ティモシーのGKは完璧だ。東海は近藤がこの日2つめのトライを挙げて24-21と完全なシーソーゲームになってしまい、ティモシーに決められて24-26。東海に焦りが出たところで自陣ゴール前でのスクラムで痛恨のミス。こぼれ球を拾われてティモシーにだめ押しのトライを決められ、東海は早過ぎる戦線離脱となってしまった。

1回戦であたったのが2部最強チームだったのは確かに不運。小原と近藤が2本ずつ決めるという理想的な展開だったのに勝てなかったのは何故だろうか。東海大はクーリングダウン後にそのまま長い長いミーティング(たぶん反省会)を敢行。着替えのためベンチに戻る選手達の足取りが今まで見たことも無いくらいに重く感じられたことが心に残る。

次に登場したのは1部復帰で元気のいい立正で鮮やかなオレンジのジャージが一際引き立つ。白鴎大を問題なく破り緒戦突破。しかし、日大も躓いてしまった。YC&ACではいい形ができていたと感じたのだが、この日はどこかちぐはぐ。國學院の組織された防御網に引っかかってなかなか得点が奪えないまま、國學院に先制を許す。日大が2トライを重ねて逆転に成功するが、後半は國學院に3連続トライを許して12-24。時間がどんどん無くなっていく中でマイケルが1トライ返して17-24となるがそのまま「終戦」となってしまった。國學院の勝利はフロックで無かったことは後の戦いで証明されることになる。

東海と日大の敗退を目の当たりにして「法政は大丈夫か?」の声も囁かれる観客席。前日に練習を観た法政ファンの方のお話によれば、「おまえ、セブンズやったことあるのか?」の「一夜漬け状態」であるとか。しかし、ことアタックに関しては個々の能力の高さが活きるチームで、スキッパーの加藤が生き生きとしている。国士舘に先制トライを許すも、加藤が2本、今橋、西、中田が1本ずつ決めて国士舘の反撃を1トライに抑えて快勝した。

拓大も専修にまったくいいところなく敗れる。「拓大よ、おまえもか?」と言いたくなるような散々な出来ではあったのだが、メンバー表を見て納得。ウヴェはジャパンのセブンズチームに招集されているため不在なのは当然として、他のメンバーも初めて名前を見る選手ばかり。来週の東日本セブンズに備えたのか、本日は控えメンバーのテストだったのかもしれない。もちろん、専修も大型選手を加えたパワフルなチームだったことを申し添えておく。

中央はYC&ACセブンズで(緒戦の筑波戦での大敗から)盛り返した勢いのままに元気いっぱいで登場した。ルーキーの住吉は殆どフル出場し持ち味のスピードで魅せる。そんな新人に刺激を受けたのか高崎の動きもシャープ。住吉と高崎でHB団を組むオプションがあるかも知れない。この日トライの山を築いた水上と高にエースの羽野が加わったら強力なバックスリーができあがりそうだ。もちろん、FWの仕上がり次第と言うことになるが、中央が強力なチームとなることが現実味を帯びてきた感じ。



大東大はテビタを含むレギュラークラスの陣容。翻って関東学院は初めて名前を見る選手ばかりで大変なことになりそうな予感がした。案の定、淺井が自陣インゴールから100mを走りきってトライを奪ったことでそれが現実味を帯びる。しかし、意外と言っては失礼になるが、関東学院も健闘して2トライを奪い最終スコアは26-12で大東勝利。この陣容になってしまった理由は不明だが、案外(YC&ACのではなく)こちらのメンバーを鍛えた方が強いチームができそうな感じもした。

しんがりは流経大で、合谷は不在だが、リリダム、リザレに加えてテアウパ・シオネまで加わった陣容。おそらく、日本のセブンズでは大学最強のメンバーといっていいだろう。大学生レベルでフリーのリリダムを止めることはまず不可能だし、15人制ではFWの核になりそうなリザレは超強力。ここに、矢次、高森、櫻庭、廣が加わっているわけだから先週のYC&ACに続く連覇は堅いと思わせる船出だった。



【2回戦】

●山梨学院大学 14-21 ○立正大学
○國學院大學 33-26 ●法政大学
●専修大学 19-24 ○中央大学
●大東文化大学 12-35 ○流通経済大学

山梨学院と立正の激突は「因縁の対戦」でもあり、見応えのある激戦となった。2回戦で対戦させてしまうのは惜しい感じもした。立正が先制し山梨が追いつくという場面が2回繰り返されて14-14のタイスコアとなったところで、立正が決勝トライを奪って逃げ切るスリリングな展開で幕となった。

國學院と法政も手に汗握る展開に。法政が森谷と今橋の連続トライでリードを奪うも、國學院も組織的な崩しでトライを返して粘る。26-26となったところでサドンデス方式の延長戦もちらついたが、勝利への執念を見せる國學院が決勝トライを挙げてノーサイドとなった。個人能力の高さなら法政だが、流れるような展開力は國學院の方が上。法政は自分達がやるべきことを相手にされて負けてしまった感が強い。

専修と中央の戦いも最後まで勝敗の行方がわからないもつれた展開となった。終盤で19-19となったところ中央が最後の一押しを決めて24-19となり逃げ切りに成功。1部、2部関係なく、ここまで緊迫感が漂う試合が3つも続くセブンズは珍しいのでは無いだろうか。中央が接戦で勝てるチームになったかどうかを判断するのはまだ早いが、チームの雰囲気が昨年までとはかなり(いい方に)変化してきていることだけは確か。秋シーズンへの期待がますます膨らんできた。

と、ここまでは接戦の連続だったが、ひとつだけ別次元のチームがある。大東大はテビタが欠場した(やはり、完全には故障は癒えていないのだろうか?)こともあるが、流経大の勢いは留まることがなく、この試合も圧勝となった。



【準決勝】

 ○立正大学 44-5 ●國學院大学
 ●中央大学 5-43 ○流通経済大学

準決勝は2回戦とはうって変わって、2試合とも一方的な展開となってしまった。やはり、ここで地力の差が出たと言うことだろうか。立正大の看板スターは、フンガヴァカ・フィナウ・ツトネだが、スピードスターはトライの山を築いた加藤侑也。おそらく秋の本シーズンでも各チームにマークされる存在になるだろう。そして決勝戦の相手はまったく勢いが衰えることのない流経大となった。



【決勝】

 ●立正大学 12-24 ○流通経済大学

盤石の優勝候補に挑むのは、今期1部に復帰を果たした立正大。先制したのは立正のエースからリーグ戦Gのエースへと飛躍を遂げた(と言ってしまっていいだろう)加藤。しかしながら、流経大もリリダムが1トライを返して5-5のタイとなる。さらに流経大はリザレが1トライを奪って10-5で前半を終了。後半もリリダム、廣がトライを挙げて流経大が24-5とリードを拡げる。立正大は1トライを返すのがやっとで流経大が先週のYC&ACに引き続き連覇を決めた。大学チーム相手には敵なしといった感じで、東日本大学セブンズも含めた3連覇が現実味を帯びてきた圧勝劇だった。

◆全般的な印象

流経大が圧倒的なパワーを見せつけて危なげなく優勝。だが、立正大、中央大も元気のいいところを見せてくれたのは明るい材料。もちろん、強力な選手こそ居なかったものの、組織力でベスト4までコマを進めた國學院の健闘も光る。山梨学院や専修を加えたこの3強+アルファによる熾烈な戦いが2部リーグでは展開されることになるだろう。もちろん関東学院もこのままでは終われないはず。ただ、現状では上位2つに入るのは率直に言って厳しそうだ。

そのほかにもいろいろと感じたことがあるが、1つ言えるのは、1部校と2部校の差はラグビーの内容には必ずしも現れていないということ。力の差は選手個々の能力の差によるところが大きいと感じた。ここを2部校の頑張りとみるべきか、それとも1部校の努力不足とみるべきかは正直わからない。ただ、この日の戦いをざっと見た印象では、もっと1部校の選手達はプライドと意地を持って戦って欲しいという印象が強い。そうでなければ、1部昇格を目指して日夜努力している2部校以下のチームに所属する選手達の夢を壊してしまうことになってしまう。
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第54回YC&ACセブンズの感想

2013-04-10 01:26:07 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
爆弾低気圧の通過に伴う天候悪化の影響が心配されたYC&ACセブンズだったが、突風混じりの強風に悩まされた程度で済んだ。快晴のまずまずのコンディションのもと熱戦が繰り広げられ、楽しい1日を過ごすことができた。関東大学のリーグ戦G目線になってしまうが、印象に残ったチームや選手のことを書いて見たい。

実は、この伝統的なセブンズを体験するのはこの日が初めて。今回は、関東の大学チームが中心でそこにホストチーム(YC&AC)とクラブチームの2つ(神奈川タマリバと北海道バーバリアンズ)が加わった形となった。先週の世界レベルの大会(東京セブンズ)と比べるのは酷とはいうものの、関東の主要学生チームの状況を垣間見ることができ、実りが多かった1日だった。



【1回戦8試合】

○拓殖大学 22-14 ●日本体育大学
●成蹊大学 12-44 ○東海大学
●北海道バーバリアンズ 17-28 ○日本大学
●関東学院大学 0-52 ○YC&AC
○帝京大学 48-14 ●慶應義塾大学
○早稲田大学 40-19 ●神奈川タマリバクラブ
○流通経済大学 27-0 ●青山学院大学
●中央大学 0-61 ○筑波大学
※敗者8校はコンソレーショントーナメントへ

第1試合は9時30分から開始。さすがに選手達の身体も目覚めていないようで、拓大もタックルがなかなか決まらない。というか、拓大らしからぬ高いタックルに終始していた感があり、能力の高いランナー達を揃えた日体大に再三突破を許す場面も見られた。ウヴェのパワフルなランとパトリック・ステイリンのゲームメイクにより何とか勝てた感が強い。ただ、前途に不安を抱かせる勝利ではあったものの、昨シーズンに比べて全般的に小粒な各選手の胸板が厚くなっていることが実感された。オフシーズンの間もしっかり身体を作っていた様子がうかがわれた。

第2試合を戦った東海大も拓大同様にタックルが高いのが気になった。東海大の選手達は身体ができている分、相手を倒すよりも捕まえてボールを奪い取ってしまう意識が強いのかも知れない。ただし、セブンズの基本は低いタックルで相手をしっかり倒すことにあると思う。そう考えると、東海大の場合は15人制の意識がなかなか抜け切れていないのかも知れない。試合はリーグ戦G屈指のエースの1人である小原、昨シーズンにルーキーながらも強力なライバル達を抑えてWTBの定位置をつかみ取った石井らの活躍により圧勝だった。

拓大と東海が不安を感じさせた状況の中で、次に登場した日大はしっかりチームができているという印象を受けた。マイケル・バー・トロケが看板選手として残っているものの、SH小川の抜けた影響が心配されたが、個々のプレーヤーの判断力とチームワークで戦えるチームへと成長を遂げたようだ。そもそも、小川が特別のSHだったと考えればよいわけだから。再三力強い突破を見せたFWの大窪の成長が明るい材料で、高橋慶も地味ながらもリンクプレーヤーとして随所で光るプレーを見せる。曲者が揃った北海道バーバリアンズ(但し、看板選手のトゥキリは出場せず)を振り切って緒戦突破を果たした。

関東学院は今年もサイズで苦しみそうだ。緒戦の相手が優勝候補筆頭のYC&ACだからということもあるが、大人と子供くらいの体格差があり、相当苦しい戦いとなることが予想された。さらに、YC&ACにはつい先週、東京セブンズで日本代表の一員として大活躍したジェイミー・ヘンリーがサプライズメンバーとして加入。体格差と実力差はいかんともしがたく、関東学院はいいところなく完敗となった。ただし、ジェイミーの余裕たっぷりのプレーぶりを目の当たりにすると、ジャパンにとって「ニュースター」の登場は明るい材料だ。

その他、レギュラークラスで固めた帝京は個々のパワーで慶應を圧倒し、早稲田もタマリバをスピードに乗った攻撃で翻弄してそれぞれ難なく緒戦突破。筑波は福岡や竹中と言ったスピードスター不在だったものの、同じくエース羽野(日本代表)の不在でもたつきを見せる中央に対して予想外の圧勝を収めた。筑波には次代のスター候補もいてなかなか楽しみではある。なお、タマリバには早稲田出身の福田恒輝や関東学院出身の竹山将史といった(大学ラグビーファンには懐かしい)選手達が居てチームをけん引し存在感を見せていた。

順序が逆になったが、流通経済大もなかなかのスター軍団。東京セブンズにフィジー代表として招集されたリリダム・ジョセファは別格としても、トリッキーなランで注目を集める合谷、スピードランナーの屋宜ショーンロバート、パワーとスピードを兼ね備えた高森と並べただけでも相手にとっては脅威のはず。ここに、昨シーズンは出場機会のなかった巨漢のジョージ・リサレが加わったから、リーグ戦G関係者にとっては頭痛のタネが増えた感じ。矢次が控えに回る何とも贅沢なメンバー構成だが、この日の最大の発見は再三鋭い突破を見せた廣大河。対する青山学院はよく27失点にとどめることができたと言えそうだ。



【コンソレーション・準々決勝】

○日本体育大学 40-12 ●成城大学
●北海道バーバリアンズ 10-35 ○関東学院大学
○神奈川タマリバクラブ 19-14 ●慶應義塾大学
○中央大学 41-14 ●青山学院大学

1回戦でYC&AC、筑波大にそれぞれ大敗して意気消沈かと思われた関東学院と中央大だったが、気持ちを切り替えて試合に臨めたようだ。関東学院は序盤こそ北海道バーバリアンズのパワーに苦しめられたものの、相手がだんだんバテてきたこともあり、速い展開で翻弄して圧勝。セブンズとは言え、関東学院の勝利(しかも快勝)を観たのは本当に久しぶりだ。中央大も水上、藤原、山下といった能力の高い選手を揃えているチームなので、勢いに乗れば結果が出せることが証明された形。とくに目を引いたのはルーキーながら抜群のスピードで魅せてくれた住吉藍好(光泉高校出身)で、同じピッチ上にいた正SHの高崎もうかうかしてはいられないと感じたはず。

日体大は伝統のランニングラグビーを思い出したかのような溌溂としたプレーぶりで成蹊大を圧倒。成蹊も内容では日体大を上回っていた部分があったと思うが、運動能力の差が出たという印象。1回戦では早稲田に苦杯を喫したタマリバだったが、ベテラン勢の活躍により粘り勝ちを収めた。

【コンソレーション・準決勝】

 ○日本体育大学 31-12 ●関東学院大学
 ○神奈川タマリバクラブ 19-17 ●中央大学

北海道バーバリアンズを相手に圧勝した関東学院だったが、ランニング能力の高い選手を揃えた日体大は厳しい相手だったようだ。中央大は本当に惜しかった。あと少し粘れば17-12で勝利を収めて決勝進出というところだったが、土壇場でタマリバの粘り遭ってまさかの逆転負け。どこか15人制(惜敗の中央)での戦いぶりを連想させるような負け方だったが、この教訓を糧に頑張って欲しいところ。チーム一丸となった応援など、体質の変化も感じられる。

【コンソレーション・決勝】

 ○神奈川タマリバクラブ 19-17 ●日本体育大学

またしてもタマリバが土壇場での逆転で栄冠を掴んだ。殆ど勝利を掴みかけていた日体大は、まさか自分たちも中央大と同じ目に遭うとは思っていなかったのではないだろうか。タマリバの粘りはお見事というほかないが、中央大戦同様、後半から登場した福田恒輝が確かな存在感を示した試合でもあった。タマリバは体力的には厳しい面があったと思うが、執念の勝利に拍手を贈りたい。



【準々決勝】

 ●拓殖大学 19-24 ○東海大学
 ○YC&AC 36-10 ●日本大学
 ●帝京大学 14-26 ○早稲田大学
 ○流通経済大学 21-7 ●筑波大学

緒戦ではやや精彩を欠いた拓大と東海だったが、しっかりと目覚めたようで両チームのエースがそろい踏みとなる熱戦となった。先制トライは東海の又川で拓大も山谷が1本返して前半は同点。後半は開始早々にウヴェがトライを奪って拓大がリードするが、東海も石井が2連続トライで逆転に成功する。このまま東海が逃げ切るかと思われたがウヴェが土壇場でトライを決め、サドンデス方式の延長戦へ。キックオフは東海で拓大がボールキープに成功すれば勝利というところだったが、東海がターンオーバーに成功し、最後はエースの小原が決めた。なかなか見応えがある戦いだった。

YC&ACと日大の戦いは最終的に地力に勝るYC&ACの圧勝となったが、前半は日大も組織力で食い下がりを見せて頑張っていた。しかしながら、ここでもジェイミーの存在が大きく、終盤は一方的な展開となってしまった。早稲田と帝京の戦いも対抗戦Gの前哨戦といった感じで白熱した試合となった。当初は帝京のパワーが早稲田を圧倒するかと思われたが、早稲田が持ち味の展開ラグビーでペースを掴み、帝京を翻弄する形となって勝利を収めた。

流経大と筑波の「茨城ダービー」も激戦となった。リリダム、高森のトライで流経大がリードを奪ったが、筑波も1トライを返す。流経大はリザレとリリダムが相次いでイエローカードをもらい、一時はフィールドプレーヤーが5人となる苦境に立たされたものの、高森と廣がトライを奪って逃げ切り準決勝にコマを進めた。筑波はスピードスター達(竹中と福岡)の欠場が響いた格好だが、今シーズンも強力なチームができあがりそうだ。



【準決勝】

 ○東海大学 14-7 ●YC&AC
 ●早稲田大学 12-26 ○流通経済大学

ジャパンのエースの参加もあって東海の苦戦が予想された準決勝の1試合目だったが、YC&ACに疲れが見えてやや精彩を欠く状況。東海が2トライを挙げて優位に試合を進めるなか、YC&ACは1トライを返すに留まり連覇も消滅となった。流経大と早稲田の戦いは、スターを揃えた流経大のアタックを早稲田が止めることができず、流経大の圧勝となった。ちょっと気が早いが、大学選手権の晴れ舞台でもこんな流経大が観たい!というのはリーグ戦G応援団の勝手な妄想。

【決勝】

 ●東海大学 17-51 ○流通経済大学

優勝を賭けた戦いであると同時に、目下のリーグ戦G2強による意地と意地のぶつかり合い。拮抗した好ゲームとなることが期待されたが、意外なほどの大差が付いてしまった。流経大がトライを重ねる中で、東海大がすっかり大人しくなってしまったことが気になる。準決勝まで大活躍だった小原と石井を欠く陣容ではあったが、彼らに代わって頑張らなければならないエース候補に元気がないように見えたのが残念。リベンジのチャンスはあと2回あるので、東海はこのままで終われないはずだし、終わって欲しくない。メンバー的には当然の結果とも言えるが、実力をいかんなく発揮した流経大に拍手を贈りたい。



◆今シーズンのリーグ戦Gの行方を占う

もちろん、早すぎることは承知の上で率直な感想を書く。まず、第一に言えることは流経大が非常に楽しみだということ。リーグ戦屈指のスター軍団は東海や帝京と比べても遜色のないマッチョ軍団でもある。FW、BKを問わず選手個々の胸板の厚さが目を引いた。合谷も一回り大きくなった印象で今シーズンはさらなる飛躍が期待される。東海もスター軍団のはずだが、昨シーズン猛威を奮った100キロ超級FLトリオの卒業によりどんな形にモデルチェンジしていくのかがこの日の戦いぶりからは見えてこなかった。小原、石井に続くべき選手達のパワーアップに期待したいところだ。

東海大にサドンデスの延長戦で敗れて涙を呑んだ拓大は、今シーズンさらなる飛躍を果たしたいところ。ウヴェを除けば相変わらず小粒な選手達ではあるが、昨シーズンに比べると身体の厚みが増した感じで、今シーズンはBKの攻撃力が増すことだろう。ウヴェとパトリックの2枚看板がしっかりしているだけに優勝争いに加わって欲しい。

チームのまとまりがいいと感じられたのは日大。小川の卒業による攻撃力ダウンの心配は杞憂に終わりそうだし、そうあって欲しい。組織的に戦うことを意識しつつ、個々の判断力が活きるラグビーが完成しつつあると見る。緒戦に筑波に思わぬ大敗を喫して心配された中央だが、元来は好素材が揃ったチーム。コンソレーションで立て直しができたことは明るい材料だと思う。今シーズンから加わった酒井コーチの手腕にも期待したいところ。

といったように1部リーグのチームは概ね上がり目で心配はなさそう。大東、法政、立正は今度のリーグ戦セブンズでどんなパフォーマンスを見せてくれるのか楽しみだ。残念ながら2部降格となった関東学院は今シーズンもサイズ面で苦しみそうだ。ただ、ひとつ快勝することができたことは精神面でプラス材料だと思う。

◆全般を振り返って

1週間前の東京セブンズに比べると、残念ながら、セブンズというよりは15人制のミニチュア版といった感じの大会だった。東日本大学セブンズが終われば、次の週からは春季大会が始まるため、各チームともセブンズに時間をかけられない状況にあるのだから仕方がないと思う。ただ、そんな状況にあるからこそ、各チームの普段の練習に対する取り組み姿勢が垣間見られる部分があり、個人的には面白かった。

大学生のセブンズを4月限定の春の風物詩に終わらせてしまうのはもったいないし、全国展開にも期待したいところ。そう思うと、こと大学ラグビーに関しては、セブンズに真剣に取り組むのが難しい状況になってきているのが残念に思われる。
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東京セブンズ2013の感想/残念な結果に終わったが

2013-04-01 00:30:34 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
今年も天候に恵まれなかった東京セブンズだったが、世界のトップ15が一堂に会する大会はやはり見応えがあった。1日目は秩父宮で観戦し、2日目はTV録画でチェックだったのだが、来年度もどうか東京に来てくれますようにという願いを込めてその感想を。

◆着実に進化し続ける世界のセブンズ

秩父宮に着くと、寒いだけでなく観客席もまばらという状態でどうなってしまうのかと正直思った。しかしながら、選手達が出てきていざキックオフとなると、雰囲気ががらりと変わるところはさすがで、世界のトップチームを集めただけのことはある。眼前で繰り広げられる熱い戦いを前に、最前線ではどんなことが起こっているのかということに思いを馳せていたら、いつの間にか寒さが気にならなくなっていた。

さて、オープニングゲームのキックオフ直後に印象的な場面があった。ペナルティを受けたチームの選手が相手チームの速やかなプレー再開を妨げたとしてシンビンを適用された。国内試合では普通に見られるような場面で一瞬厳しいなぁと思った。が、これがセブンズなのだなと実感した。ただでさえ7分ハーフという短い時間で行われるのだから、たとえ僅かでも時間をロスさせる行為は許さないという姿勢が明確に示されたわけだ。

これを見てしまったら、残りの全チームの選手達も敏感にならざるを得ないだろう。セブンズで一番やってはいけないことは、シンビンによって2分間数的不利を強いられることになってしまうことだから。オープニングで毅然とした態度で判定を下したレフリーに拍手を送りたい。観客席はお祭りムードでも、ピッチの上は戦場なのだと観る方にも緊張感を与えたことは間違いない。

それと、昨年度はあまり気にならなかったのだが、キックオフでの激しいボール争奪戦も見応えがあった。今までのセブンズのイメージだと、キックオフする側は相手にボールを渡してまずは防御という感じだったのだが、そんなチームはひとつもなかった。現在のトレンドは浅く高くボールを蹴って攻撃権確保を狙うということになっているようだ。ただ、南アフリカのように深めに蹴り、プレッシャーをかけて自陣には入らせないという方針が徹底されているチームもある。方法はいろいろあってもプレーの一つ一つに神経を使うというくらいの厳しさが求められているのが世界での戦いのようだ。

あと、もうひとつ感じたのは、セブンズではボールを動かし続けることが重要ということ。タックルで倒されてダウンボールかなという場面でも、何故かボールが繋がっている。ダウンボールしてしまったら相手にボールを取られるリスクが大きくなり、ラックを作っても人数をかけられないからターンオーバーを許してしまう。ならば、15人制では軽いプレーと見なされるようなパスをしてでもボールを繋ぎ続けることが大切なのだ。この点、フィジーの選手達は本当に上手い。「セブンズの常識は15人制の非常識」のようなプレーがオンパレードなわけだが、それが何故か心地よかったりする。

さらに、もうひとつ。フィジーのようなマジシャンを揃えなくても、とびきりのスピードランナーが一人でもいれば勝負できること。北半球のチームはパススキルやアイデアの面で南半球のチームに劣る部分があるためか、ボールを持たせたら絶対という選手をメンバーに加えることを重視しているような印象を受けた。南半球でもサモアのようにバランスのとれた堅実なスタイル(私的には好印象を得た)を志向しているようなチームがあることも興味深い。いろいろな考え方が反映しやすいのがセブンズの特徴。だとすると「ジャパン・オリジナル」は何になるのだろうか?

◆セブンズの進化により15人制も活性化

ずっと試合を観ていて感じたことは、15人制のラグビーを観ている時に感じるようなストレスが殆どなかったこと。世界のトップの選手達が集まっているから当然かも知れないが、これは本当に不思議だった。組織的な連携が大切とは言っても、セブンズの醍醐味は「1対1勝負」だから、選手達もそんな局面になったらどうやって抜くかを第一に考える。この思い切りの良さがあるから、観ている方をわくわくさせる部分があるのかも知れない。

そんな理由もあってか、不思議とラグビーを観ているという感覚が薄かったのも新たな発見というか体験。そこで、ふと思った。今観ているスポーツは、楕円形のボールを使ったタックルありのパスゲームではないかということ。15人制のわかりにくい部分を極力なくした新たな球技と考えると、世界への普及のハードルも低くなるはずだ。欧州や中南米などボールゲームが盛んな国ならどこでも取り組めるし、伝統国とは違ったスタイルのセブンズが生まれるかも知れない。

また、セブンズの普及は15人制のラグビーも世界的な拡がりにも繋がるかも知れない。今は、五輪種目としてセブンズに注目が集まっているが、15人制の方にも興味が向くようになっていくことも考えられる。例えば、サッカー大国のブラジルのような国。サッカーをやるには身体が大きすぎるといった理由でバスケットボールやバレーボールに向かっていたアスリート達の目がラグビーに向き始めたら(日本にとっては)恐ろしいことになりそうだ。

◆残念だったジャパン

先にストレスを殆ど感じなかったと書いたが、日本代表の試合ぶりにはストレスというかフラストレーションを感じた部分が多い。世界に届きそうで届かない、というか結果以上に世界との差が拡大しているように感じられた。まず、ジェイミーやトゥキリが居なかったらどうなっていたのだろうかという部分と、もっと強いチームが作れるはずなのにという部分。スタメンで奮闘した羽野が香港セブンズ後に吐露した「セブンズの感覚が戻ってきた。」という発言が、準備不足(経験不足)だったことを物語っている。

2日目のカナダ戦では、タックルどころか指一本触れることができずに再三突破を許していた場面も気になった。あと、スタメンが殆ど固定状態で、メンバー交代も少なめだったことが気になった。1日目の3試合目で選手達の足が止まっているように見えたが、疲労の影響もあったのだろうか。コアチームは2日間6試合を戦い抜くことを前提にコンディショニングを行っているはずだが、日本の戦いぶりは「いっぱいいっぱい」だったような気がしてならない。

選手達は頑張っていたし、何とかしたいという気持ちを持っていたと思う。だから、昨年度と同じことをまた感じたことに歯がゆさを感じる。コアチームの戦いぶりを見ても、すでにセブンズは15人制とは違った形に進化し続けていることは明らか。セブンズのことだけを考えて、戦術戦略を練り、トレーニングを積んでいるようなプロチームでないと世界のトップグループでは戦えない。普段は15人制を主として選手達に一時期だけセブンズに集中しろという方が酷だと思う。

でも、一番残念に思うのは、セブンズの五輪採用や2019年W杯開催といったフォローの風をうまく利用できていないように感じられること。大学ラグビーの伝統校の試合に来る人たちを当てにしても必ずしもトップリーグも東京セブンズの観客が増えるわけではない。ラグビーのことを知らない人たちにファンになってもらう方法を考えることが重要で、上記2つ(五輪とW杯)をそのネタに使わない手はない。

そういった意味で、W杯に理解と関心があり、ボールゲームの面白さを知っているサッカーファンは格好のターゲットになるように思われる。例えば、Jリーグの試合のハーフタイムにセブンズのデモを行うという方法がある。Hゴールや22mラインがなくても、セブンズの面白さは十分にアピールできると思うし、「ラグビーの方のW杯もよろしく!」という形でならそんなに不自然でもないと思うのだがどうだろうか。

(初日のオープニングセレモニーを観て、「Xリーグのチアガールを観に行きたい」と思った不届き者がここに一人居る。)

今回の東京セブンズでは、日本の状況は予想したほどには絶望的ではなかったと感じた。まだ、何とか世界にキャッチアップしていくチャンスは残されているはずだ。
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