「熱闘」のあとでひといき

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慶應義塾大学 vs 中央大学(第3回関東大学春季大会-2014.5.18)の感想

2014-05-24 03:40:28 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


今年で3シーズン目を迎える春季大会の楽しみのひとつは、いろいろなチームのホームグランドを訪ねることができること。秋シーズン(公式戦)に競技場で観るのは、よそ行きのラグビーとも言えるのだが、そのことを教えてくれたのが春季大会だった。それまでは、大学選手権が終わるとラグビーに関しては長い冬眠状態に入るのが常だった。そこから目覚めるのが9月に入ってからだった2011シーズンまでと比べると、大学ラグビーの見方もずいぶんと変わったように思う。もちろん、それは対抗戦グループのチームをより身近に観る機会が増えたこともあるが、「普段着のラグビー」を観る機会が増えたことが大きい。

さて、この日訪れるのは慶應義塾大学の日吉グランド。慶應のラグビーは関西に住んでいた少年時代の頃からTVで何度も観ている。タイガージャージを身に纏った選手達による「魂のラグビー」に心惹かれたこともあった。しかしながら、今までに日吉グランドでラグビーを観たことはない。一昨シーズンの百草(帝京)と八幡山(明治)、そして昨シーズンの上井草(早稲田)に続き、ようやくルーツ校のグランドに辿り着いたのだった。



◆メンバー表を眺めながら

慶應のメンバーのことはよくわからないのでコメントできない。しかし、中央大のメンバーに関しては気になったことがひとつあった。ここまでの選手起用で、今シーズンは先発のSHを藍好(住吉)に固定したらしいということ。昨シーズンの中央は、終盤に失速したものの、出足好調で優勝まであと一歩と言うこところまで漕ぎ着けた。その大きな原動力は、ルーキーながらFWの尻を叩くような形でチームメイト(殆どが先輩)を鼓舞し続けたSH長谷川ではなかったかと個人的には思っている。

だから、今シーズンは春から長谷川で行くものと思っていた。しかし、首脳陣の考え方は違うようだ。春から住吉を使うからには、その理由(目指す戦術)があるはず。見えてくるのは住吉のランニング能力の高さを活かす形でテンポ良くボールを動かすラグビーだ。ただ、そのためにはFWが効率的に動かなければならない。実はその能力に長けているのは(皮肉にも)長谷川の方。ということで、この試合の私的注目点は住吉がチームをどこまで活性かさせられるかになる。



◆ピッチに登場した両校の選手達を見て

最初に登場したのはホスト役の慶應の選手達。帝京がホームグランドでやっているように、部員達で花道を作ってAチームの選手達をピッチに送り出す。ここでまず目を惹いたのは11番、12番、13番を付けた(FWの選手と見間違うような)180cm以上の大型の選手達。慶應のFWの選手達が概ね小さいのに、90キロを超えた川原が13番を付けるのはアンバランスな感じもする。この時点で中央はBKのディフェンスを相当頑張らないと大変なことになりそうだということが予感された。

一方の中央は緊迫感を持って出てきた慶應とは対照的にいつの間にか淡々とピッチ上に登場。ゲストチームであることはさておいても、選手達の表情からは「沸き立つ湯気(闘志)」のようなものが見えてこない。もちろん過度に緊張する必要はないし、思い切りプレーできるのが春シーズンのよさだから気にする必要はないのかも知れにないが、慶應の大型BKラインを間近に見るにつけ、一抹の不安が胸をよぎったことも事実。



◆前半の戦い ~残念ながら悪い方の予感が的中~

慶應のキックオフで試合開始。前半のとくに立ち上がりは中央にとって魔の時間帯なのかも知れない。序盤から中央のディフェンス網にぽっかりと穴が開いたような状態となり、初期フェイズであっさりと慶應のボールキャリアーが難なくウラに抜けるような状況が続く。ディフェンスの人数は足りているし、選手達は相手に手を触れることだってできそうな位置に立っているにも関わらず、まったくといいほどタックルに入ることができない。

まずは開始早々の1分、中央は自陣10m付近でのラインアウトからFWでの前進を許し、パスを受けた右WTB浦野がゴール直前まで一気にボールを運ぶ。ここは反則があり、中央は命拾いするものの、直後の自陣22m付近でのマイボールラインアウトでボールをあっさりと失い、慶應のCTB(12)石橋がすっぽりとウラに抜けて難なくゴールラインまで到達。キックオフから僅か2分にして慶應が7点を先制する。

その後も中央のディフェンスがまったく機能しないエアーポケットに落ちたかのような状態が続く。10分には慶應が中央大陣22m内でのスクラムを起点としてオープンに展開。今度はCTB(13)の川原が(これも)あっさりと中央ディフェンスを突破してゴールラインまで到達する。両CTBが大型のペネトレーター役を果たし、両WTBは俊足のフィニッシャー達とはいえ、初期フェイズであっさりとラインブレイクを許すような状況が続けばラグビーにならない。慶應はこのままミスなくボールを確実に繋いでいくだけで得点を重ねて圧勝のシナリオが早々と見えてしまった。

中央の首脳陣は頭を抱えるしかないのだが、こんな状況に対して一番ビックリしたのは対戦相手の慶應の選手達かも知れない。普段の試合とは明らかに状況が違っていたためか集中が切れやすいような印象。慶應はボールを圧倒的に支配するものの、あと一歩のところで反則を犯してフィニッシュまで持って行けないため、慶應の得点も伸びない。

13分、慶應は中央陣ゴール前のスクラムからオープンに展開してトライかと思いきやラストパス?を中央の選手が弾いてノックオン。続くスクラムからもゴールラインまでボールが運ばれるが反則でチャンスを潰す。16分には中央が自陣からウラに蹴ったボールがインゴール付近まで到達。慶應の選手が抑えてドロップアウトと思ったらなぜかキャリーバックだった。おそらく慶應の応援席からは一連の流れを総括する形で「何をやっているんだ!」と叱咤の声が飛んだに違いない。中央はもらったチャンスを活かし、スクラムからサイド攻撃でゴール前へ。ここで慶應に反則があり、PからGOでFWがモールを組み、FL山下がトライ。GKも成功して7点を返し一矢報いる。

ここでやっと中央が目を覚ましたかに見えたが、むしろ気合が入ったのはホームチームの方。リスタートのキックオフに対し、中央はFWがシェイプを使ってボールを前に運ぼうとするもののノットリリースの反則を犯す。このシェイプにしても、昨シーズンの秋に比べると中途半端な感じがする。FWの選手間で自分達がどう動けばいいかについての意思統一がなされていないような印象を受ける。ブレイクダウンのところで選手同士が重なってしまってBK展開の邪魔になったり、アクシデンタル(オフサイドならぬ)オブストラクションという造語を使いたくなるようなちぐはぐな動きにはスタンドからも失笑が漏れる。慶應はゴール前でのラインアウトのチャンスを確実に活かしてトライを奪い21-7とリードを拡げる。さらにリスタートのキックオフに対して鮮やかな(と言いたいがディフェンスが機能せずそうみえただけの)カウンターアタックでWTB服部がゴールラインを超える。前半24分の段階で28-7となり、中央大の応援席は怒る元気もなくなるくらいに意気消沈の状態になってしまった。このまま行けば帝京戦以上の失点を喫して敗戦...。

慶應は畳みかける。29分、自陣からのPKがノータッチとなり中央の蹴り返しに対してFB中村がカウンターアタックを仕掛ける。ディフェンダーをかわすかたちでチップキックを自ら前進して捕獲し、パスを受けたフォロワーがさらにボールを前に運ぶ。そして左WTBの服部がフィニッシャーとなる理想的な形でトライ。SO矢川はこの日タッチライン際からのものも含めてすべてのコンバージョンキックを成功させる安定したGKを見せる。秋シーズン以降の試合では強力な武器となるだろう。トライをひとつ取ったものの、中央は慶應陣にも殆ど入れない状態でそのまま前半が終了した。



◆後半の戦い ~中央、巻き返しを図るも時既に遅し~

まるで魂が感じられない抜け殻のようなラグビーから脱することができなかった前半の中央。新規一新が臨まれる状況だったが、メンバー交代はPR(三宮→岡崎)とWTB8(渡辺→久住)のみの2人で長谷川の投入もなし。皮肉にも後半も気合を入れ直してきたのは、大量リードにもかかわらず今一歩ピリッとしなかった慶應の方。開始早々の2分に中央の反則で得たラインアウトからオープン展開の連続でWTB服部がハットトリックを達成。さらにもうひとつ。リスタートのキックオフに対してカウンターアタックから今度は浦野がノーホイッスルトライを記録する。あっという間に49-7となり、中央の応援席は完全にお通夜のような状態になってしまった。

中央のディフェンスがふがいないとは言え、慶應がこの日記録したトライはFLの1個を除いて11番が3個、12番、13番、14番が1個ずつと、慶應はBKで取るという明確な形ができていると言える。このまま緩むことがなければ、さらにBK陣がゴールラインを超える場面は増えるはず。だったが、慶應は(Bの選手達がAの選手達のプレーに眼を光らせている)帝京ではなかった。不思議なことに、その後は中央大ゴールまでボールを持ち込めた選手はおらず、ここで得点板の慶應の側の数字がまったく動かなくなったのだからラグビーは本当にわからない。ひとつ言えることは、慶應も中央に付き合ってしまい、テンションを上げることができなかったのではないかということ。

時計を後半の6分に戻す。FWのモールは中央の武器のひとつ。果たして、意図的と言うよりも偶然と言うべきか、中央はモールを押し込めたことで徐々にペースを掴んでいく。逆に言うと受けに回ってしまった慶應がペースダウンを余儀なくされる。後半10分を経て、中央はようやくチームとして機能するようになってきた。中央のボール支配率が急激に高まっていく中、17分にゴール前ラインアウトを起点としてFWで1トライを返す。GK成功で12-49と逆転への道程は険しいが3ケタに近い失点を喫するという状態からは脱する。

24分には慶應のHWL付近でのラインアウトを起点としたオープン攻撃に対し、中央は激しいタックルでノックオンを誘う。このプレーが中央の選手達のハートに火を付けた形で中央が攻勢に出る。また、スピードが持ち味のSH住吉がウラに抜けるシーンも増えてくる。ただ、SHのスピードスターの泣き所は、前で抜けてしまうためフォロワーも追い付くのが難しく孤立してしまいがちなところ。慶應は1人が抜けても必ずフォローする選手が2人くらい居る形ができていることを考えると、中央にも強力なフォロワーが欲しいところ。

中央が取り切れないなかで、30分に選手を4人入れ替えた慶應が反撃に転じる。中央は自陣での苦しい戦いを強いられるが、33分にHWL付近のラインアウトを起点としたアタックから、ようやくSH住吉の突破がトライに繋がる。GK成功で19-49となり、ベンチもお通夜のような状態から解放される。その後は暑かったこともあり両チームとも消耗する中で一進一退の攻防が続き試合終了。スコアだけから見れば中央が健闘したようにも見えてくるが、実質的には3ケタ失点負けに近い内容の中央にとっては赤ランプ点滅と言ってもいい内容の試合になってしまった。

余談ながら、リザーブに名を連ねていた長谷川がピッチに登場したのは、この試合の後に行われたBマッチ(練習試合)の、それも前半途中から。ここのところスタメンから外れ、しかもこの日はBでもリザーブという状況の中、相変わらずチームメイトに檄を飛ばし続ける頼もしさを見せた。球裁きだけでなく人捌きもOKの選手の存在は中央にとって救いとも言えるのだが、せめてAマッチの後半からでもいいから闘志があり余った選手を投入する手立てはなかったのだろうか。とくに前半は抜け殻のように見えた選手達にも問題はあるが、遠目にはお手上げといった感じだった首脳陣にも問題がありそうだ。



◆とても楽しみな慶應

春シーズン4つめの「交流戦」の観戦となったが、またしてもリーグ戦Gウォッチャーの目を対抗戦に向けてしまいそうなチームと出逢ってしまった。正直に告白すると、今シーズンの慶應の大型BKラインは魅力たっぷりに見えてしまう。FWからHB団がテンポ良くCTBにボールを供給するという単純明快なコンセプトでWTBにフィニッシュを託す形が既にできあがっているといって良さそう。また、相手DFはどうしても大きな2人に気を取られてしまうため、FW周辺を有効に使うこともできる。もし、慶應に大東大の小山のような球捌きもランによる突破もOKのSHが居たら最高レベルのBKラインが完成するかも知れない。

慶應の課題は強いて言えば(対抗戦Gのライバル校に比べて)体格的に劣勢を強いられそうなFWだが、選手達の引き締まった身体を見れば問題なさそうな気がする。BKに大きな選手が多いため、FWがどうしてもパワー不足に見えてしまうだけかも知れない。筑波、立教、慶應とタイプは違うがそれぞれがどんな形でチームを仕上げていくのかにも注目していきたい。

◆昨日の拓大は今日の中央なのか/リーグ戦G関係者は危機感を持って欲しい

長谷川の例を挙げるまでもなく、残念ながら中央に関しては不安が的中してしまった形。昨シーズン、さらなる飛躍を期待しながらもチーム作りに失敗して最下位に転落し、入替戦でも敗れて2部降格となった拓大のことがどうしてもイメージされてしまう。もちろん、中央も去年の今頃は調子が全く上がらず、秋シーズンで革命的にチーム力を上げた実績があるからこのまま終わるとは思えない。しかし、同じことを何度も繰り返していいのだろうか。なぜ去年のいい時の状態から今シーズンを始めることができなかったのだろうかという想いを禁じ得ない。

中央に限らず、リーグ戦Gには毎年リセットの繰り返しのようなチームが多い。それがリーグ戦G内の戦いであればさほど問題にはならなかった。しかし、秋シーズンのように勝敗が重要視されないとは言え、春季大会という公式戦の形で対抗戦Gの上位校と相見える形になると、このままでは格差は開いていくだけという現実がはっきりしてしまう。異文化交流によるレベルアップが目的だったはずの春季大会が、逆にチーム作りの巧拙が産み出す差を白日の下に晒しているとも言えるのだ。チーム作りにもたついている間に5強(帝京、早稲田、慶應、明治、筑波)は着実にチーム力を上げていく。リーグ戦G関係者は心して残り試合に臨んでほしい。
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立教大学 vs 山梨学院大学(第3回関東大学春季大会-2014.5.11)の感想

2014-05-11 20:35:39 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


リーグ戦グループで今シーズンとくに注目しているチームは3度目の1部リーグ昇格を果たした山梨学院大学。過去1998年度、1999年度および2003年度の3つのシーズンを1部で戦ってきたわけだが、一度も勝利の美酒を味わっていない。だから、注目ポイントは、ずばり3度目の正直ではないが今シーズンこそは悲願の初勝利なるかということになる。

山梨学院の戦いは2部降格後も何度か入替戦で観ており、中にはラグビーの内容では1部リーグのチームを凌ぐとさえ感じさせた試合もあった。そして昨シーズン、入替戦で拓殖大を撃破し1部復帰を果たす。この試合では過去の山梨学院のイメージ(組織的に戦えるものの、パワー不足に泣く)を払拭した感があり、そのまま1部リーグで戦える力を持っているとすら感じさせたものだ。

ただ、昨シーズンのチームには、SOに1部も含めてもリーグ戦Gナンバー1と言ってもいいティモシー・ラファエルがおり、CTBにも卓越したリーダーシップを発揮した後藤がいた。彼ら2人が2枚看板としてチームを引っ張っていたのが昨シーズンの山梨学院だったのではないだろうか。だから、キーマン2人が卒業したことでチームがパワーダウンしていないだろうか。しかし、そんな不安もセブンズとはいえ、コンソレーショントーナメントで見事優勝に輝いた東日本大学セブンズを観て払拭されつつあった。また、春季大会の緒戦では目下のライバルである立正大学を壮絶な撃ち合い(あくまで推測だが)の末撃破している。

果たして(悲願の1勝は別にして)山梨学院はどんなチームに仕上がっている(あるいは、仕上げようとしている)のだろうか。春季大会の試合は山梨で行われることが多いため、我が家から最も近くにあるグランドに観戦に出かけることにした。対戦相手は、奇しくも対抗戦GでAに復帰を果たしたばかりの立教大学で、リーグこそ違うものの因縁の対決と言えなくもない。立教はステディなラグビーを指向しているチームであるだけに、山梨学院の現状の力を測る上でもいい対戦相手と言える。実際に、一昨年には同じ場所で拓大の変化(進化)を確認できたことが記憶に新しい。



◆風薫る天然芝のグランドに到着すると

この試合(公式戦でAマッチ)に先駆けて、11時から練習試合(Bマッチ)が組まれていた。その第1試合のキックオフに間に合うように家を出る予定だったが、突如野暮用が入ってしまい予定時刻の出発を諦める。用事が終わった段階では12時20分になっていた。このままグランドに向かっても後半のキックオフに間に合うかどうかなので、どうするか。結局、チャンスはこの日しかないだろうということで、40分だけでもいいから試合を観に行くことにした。幸いにも一昨年の拓大戦での(あわやロストの)経験から、グランドに行く道もわかっている。自宅から20km余りの富士見総合グランドに辿り着いたのは、ちょうど前半の戦いが終わった時だった。

さて、立教大学のグランドは大学では数少ない天然芝。風薫る5月そのものといった感じで、何とも言えない懐かしい香り(少年時代にはすぐ近くの芝生のグランドで野球を楽しんでいた)が漂ってくる。試合のレベルが上がるのとは反比例する形でコンディションが悪化していく秩父宮のことを思うと、いずれラグビーも国際マッチを含めて人工芝が当たり前になるのではないかという気持ちになる。しかし、ワイルドな自然そのものといった天然芝のピッチだからこそラグビーも盛り上がるのではないだろうか。立教大学でラグビーを観ることは、ある意味でラグビーの原点を振り返ることでもあると思う。

前置きが長くなってしまった。前半終了時点で31-5と山梨学院がリードしている。立教ファンには申し訳ないが、これは想定内といえる。ただ、強力な留学生がリザーブに1人という状況。スタメンの選手達の体格のデータを見比べても、山梨学院の選手達の方が概ね小さい数字が並んでいる。前半は観てはいなくても、このまま行けばハイスコアの一方的な戦いになるのではと予想してしまうのが自然だと思う。前半の戦いのことに想いを馳せているうちに後半のキックオフとなった。



◆立教が建て直しに成功?/後半は接戦に

前半のリードで和やかや雰囲気が漂う山梨学院応援席に対し、緊迫感がみなぎっているように見える立教サイド。後半も序盤は前半の勢いを踏襲する形(あくまで推測)で山梨学院が立教にプレッシャーをかける。全般的に170cm台前半の小柄な選手が多い山梨学院にあって、一際大きな選手は主将を務めるFL6の大石力也。去年まで拓大(このチームも小柄な選手が多かった)に在籍していたウヴェのことを連想させるガリバーのような存在と言える。実際に大石がボールを持つとパワフルでなかなか止められない。リーグ戦Gの各チームが留学生以外にマークすべき山梨学院の選手はこの選手と言うことになるだろう。大東大に例えれば長谷川をイメージさせる選手ということになる。

早速キックオフから僅か1分にして、山梨学院は立教陣22m付近で相手ボールスクラムを強力に押し込みコラプシングの反則を誘う。ここから山梨学院はPKからゴール前でのラインアウトを選択。モールをぐいぐい押し込んでトライを奪い36-5とリードをさらに拡げる。このまま行けば、得点ボードの山梨学院の側のみの数字が変わっていくだけかと誰もが思った、体格を感じさせないパワフルなプレーで奪ったトライと言える。リスタートのキックオフでもFL大石が自陣から力強くボールを運び立教陣22m付近まで到達。フォローしたFL7渡辺にフィニッシュを託すものの、惜しくもノックオンとなる。

立教ボールスクラムでのリスタートもサイド攻撃で反則があり、再び山梨学院がゴール前ラインアウトから追加点を狙う。しかし、ここはモールを押し切れず、ラックからオープンにボールを展開したところで山梨学院にオーバーザトップの反則。立教は、すかさずタップキックからの速攻で一気に攻め上がり、再び山梨学院の反則を誘う。この積極的なプレーがゲームの流れを変え、テンポ良く仕掛ける立教がペースを掴んでいくからラグビーはわからない。立教には山梨学院の大石のような選手こそ居ないが、左WTB諫山と右WTB青木の2年生コンビが俊足を活かして再三ウラへ抜ける展開が増えてきた。

ハーフタイムの指示で立教ベンチからは山梨学院のブレイクダウン周辺のディフェンスの甘さを突くようにというような指示が出たのかも知れない。立教がHB団を中心にヨコとタテをまじえたアタックを試みるごとにFB篠崎(前半30分に中島と交替)も加わったバックスリーの快走が目立つようになってくる。9分には諫山からラストパスを受け取った青木が、また17分にはPKからの速攻でウラに抜けた諫山からラストパスを受けた篠崎がゴールラインを越える。さらに24分にも立教は自陣からのFL小松の突破をきっかけに、フォローしたHO眞壁主将がゴールポスト直下までボールを運ぶ。

立教の鮮やかな3連続トライで24-36と立教のビハインドは8点に縮まり、逆転も視野に入ってきた。逆に山梨学院はオープンに展開してもなかなかラインブレイクできず、FWのタテ突破意外に有効な攻撃手段が出てこない。立教のトライラッシュと山梨学院の攻めあぐみの中で時計が進んでいく。しかしながら、山梨学院は29分には立教陣ゴール前で得たスクラムからサイド攻撃を繰り返してFL渡邊が、32分にも相手キックオフに対するカウンターアタックからオープン展開で攻めてCTB曽根がノーホイッスルトライを奪い、粘る立教を一気に突き放す。

立教は終了間際の40分に山梨学院陣でのラインアウトを起点とした連続攻撃からLO民部田がゴールラインを越えて一矢報いるがこのまま試合は終了。最終スコアは31-48だが、後半に限っては26-17で立教の得点の方が山梨学院を上回った。また、トライの形もボールを動かし続けてバックスリーの決定力に託す理想的な形と言える。後半40分のみの観戦なので多くは言えないが、敗戦の中にも光明が見えた立教に対し、勝利の中にも課題が多く見つかった山梨学院といった、スコアとは逆の形の試合内容になったという印象を強くした。



◆前途は厳しいが楽しみな立教

立教のラグビーは殆ど観ていないのだが、後半に見せた明確な意図を持ったゲームの組立と修正能力はチームの持ち味と言っていいのではないだろうか。卓越した選手こそ居ないが、HB団のパス回しとバックスリーのスピード、そしてそこに絡むFWの走力のある選手を活かしたコンビネーションラグビーという形はできていると思う。ただ、対抗戦Gの上位校との対戦を考えたら、それがどこまで通用するか?という部分は確かにある。とはいえ、筑波の次に追いかけてみたいチームがまたひとつ加わった。

◆ホロ苦勝利で前途多難?を感じさせた山梨学院

乱打戦?の末、立正大に勝利して期待が高まった山梨学院だったが、本日の内容なら秋のリーグ戦では前途多難と言わざるを得ない。アタックの意図が明確になっていた立教に比べると、チームの仕上がりはまだまだという印象が強い。とくに、再三突破を許した脇の甘いディフェンスの強化が最重点課題のように思われる。もちろん、秋のシーズンでは2人の留学生を軸としたパワーアップしたラグビーで「下克上」を果たすことも夢ではない。ただ、リーグ戦で戦うことになるチームの選手達に比べれば全般的にパワー不足の感が強く、コンビネーションを磨いていかないとゴールラインは遠いという現実が待ち受けているように思われる。1試合のしかも40分のみで、かつ主力抜きという状況ではあるがそんな印象を持った。
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