「熱闘」のあとでひといき

「闘い」に明け暮れているような毎日ですが、面白いスポーツや楽しい音楽の話題でひといき入れてみませんか?

立正大学vs関東学院大学[1-2部入替戦](2013年12月8日)の感想

2013-12-16 00:21:24 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


今シーズンもついにこの日がやって来た。大学ラグビーファンの注目は奇しくも同じ日に2ndステージが始まる大学選手権に集まり、入替戦はその裏番組にすらならないような状態。

でも、関東リーグ戦Gの永久サポートを決めている私にとっては、シーズンの締めくくりとなる2試合の価値はずっと変わることがない。今年で当該リーグの集中観戦が17シーズンを数えることになったわけだが、入替戦を観戦していないのは2シーズンのみ。「勝てば天国、負ければ地獄」の特別な試合であるだけにスリリングな展開になることも少なくなく、印象に残っている試合は数多。「勝つことがすべてに優先される試合」なのに、なぜかそんなことは忘れてしまうくらいに見応えのある試合になることも珍しくない。力の差はあってもチャレンジする側(2部所属校)の方が往々にして志の高いラグビーを見せてくれることが見どころのひとつになっている。

入替戦の(勝ち負けは別にした)着目点は他にもある。勝ったチームも負けたチームも、ここからが来シーズンに向けての出発点になるということ。前向きに捉えれば、ここで一戦を交えたチームは大学選手権に出場しているチームよりも一足早く来シーズンに向けたスタートが切れることになるわけだ。当該チームの関係者ではないから気楽なことが言えるのだが、勝敗以外にもいろんな見るべきポイントがあるからこそ、同じ日に秩父宮で試合があっても足は熊谷に向いてしまうのだと思ったりもする。

◆キックオフ前の雑感

第1試合の対戦カードは立正大対関東学院で、昨シーズンの第2試合と同じ顔合わせとなった。ただし、両チームの置かれた立場は去年とはまったく違う。1部昇格(復帰)を狙うのは関東学院の方であり、立正大はチャレンジを受ける立場だ。試合会場に少し早めに着いたので、両チームのアップの状況を観たが、戦う前に勝負は決まっているような印象を受けた。両校の選手の間に体格差があることは両チームの選手達の動きの違いとなって現れている。チーム運営に関して芳しい話が聞こえてこない関東学院の方がどうしても活気に欠けるように見えてしまう面もある。

観客席に座り、両チームのメンバーを確認する。立正大はベストメンバーでとくに両WTBはリーグ戦G屈指のトライゲッター。一方の関東学院は1、2年生が主体、というよりも3、4年生が殆どいないいびつさを感じさせるメンバー構成になっている。チームを挙げた総力戦であるべきはずの入替戦がこの陣容でいいのだろうかとどうしても考えてしまう。2部リーグの最終戦では山梨学院に大敗を喫し、終盤戦の専修大や國學院大との対戦では辛くも勝てたという、ここに至るまでの戦績がいっそう不安を掻き立てる。



◆前半の戦い/フォローの風を得て健闘を見せた関東学院

いよいよ冬本番となった熊谷。赤城おろしの強くて冷たい風がメインスタンドから見て左から右に吹いている。しかしながら、観客席は1部復帰を熱望する関東学院ファンの熱気に包まれている。そんな(寒くても)熱い雰囲気の中、風下に陣取った立正大のキックオフで試合が始まった。この試合で予想された現実的なシナリオは、序盤からパワーに勝る立正大が関東学院を圧倒する展開。実際にボールを持った立正大の選手達の突進を関東学院はなかなか止めることができない。早くもスタンドからは「止めろ!」「止めてくれ!」といった関東学院ファンからの悲鳴に近い絶叫が発せられる状況になってしまった。

関東学院が反則を重ねる中で5分、立正大は関東学院陣22m内(右サイド)でPKのチャンスを得る。ここで立正大はスクラムを選択し、No.8加藤が8単で抜け出してコーナーフラッグを目指して走り、そのまま関東学院のディフェンダー達をかわしてインゴールに飛び込んだ。今シーズン、私が観戦した2試合で初めて加藤が持ち味を発揮したシーン。SOツトネが逆風をものともせず、難しい位置からのGKを決めて立正大が幸先よく7点を先制した。「やっぱりダメか」といったようなあきらめムードが関東学院サイドのスタンドには漂う。

しかしながら、個人能力であっさり点が取れてしまったことで試合は想わぬ方向へと進んでいく。選手達が力の差があると感じた後の選手達の反応は概ね3つに分かれるように思う。あくまでもマイペースを保ち冷徹に自分達の目指すスタイルで得点を重ねて相手を突き放しにかかるか、それとも相手に付き合う形で(気持ちが緩んで)しまうか、あるいは普段はやらない(軽い)プレーを連発してペースを崩してしまうか。立正大の場合は2番目だったようだ。アタックが今一歩ピリッとせずミスを重ねて追加点がなかなか奪えない。関東学院も昨シーズンの終盤に見せたような狭いエリアでの継続のスタイルからは脱してオーソドックスにオープン展開指向で攻める。ただ、どうしても個々の突破力が弱く変化技もないので、立正大にあっさりと止められてしまうのが辛いところ。立正大の方も、体格の優位性からか高いタックルで抑え込む形になってしまうため、かえって継続を許したり反則を犯してしまうという悪循環に陥っているように見えた。

そんな関東学院にとって、トライを取れるほぼ唯一といっていい方法は立正大陣ゴール前でのラインアウト。強いて言えばここが関東学院のストロングポイントになっている。キックオフから強いフォローの風が吹く中で立正が重ねたことから、関東学院に得点のチャンスが次々と生まれることになる。12分、ゴール前ラインアウトからモールを押し込んだ場面はパイルアップとなるが、リスタートのスクラムからオープンに展開してゴール前ラックからSH井上が抜け出しトライラインを越えた。GK成功で関東学院が7-7と同点に追い付く。このトライに勢いを得た関東学院のアタックに対し、立正大が自陣ゴールを背にディフェンスを強いられる場面が続く。いくら風下だからとはいえ、これは立正大にとって誤算だったはず。そして、25分、ついに立正大はラインアウト→モールを押し込まれてトライを献上する。GKは失敗に終わるが12-7と関東学院逆転に成功し、スタンドからも「やれるぞ!」の声が出始める。

しかしながら、そんな歓声もすぐにため息に変わる。リスタートのキックオフの蹴り返しに対するカウンターアタックからのキックは風に乗って伸びすぎドロップアウト。大東大のドロップキックに対して関東学院が仕掛けたカウンターアタックでミスがあり、こぼれ球を拾った立正大のFB吉澤主将に約80mを走りきられてしまう。GKも成功し、関東学院は不運としか言いようのない失点により12-14と逆転される。しかし立正もピリッとせず37分にも自陣での反則→ラインアウト→モールによるトライを奪われる。GKは失敗したが17-14と関東学院が再逆転に成功。後半は風下になる点が不安材料ではあるが、チャンスをしっかり得点に結びつけた関東学院が1部復帰への望みを繋ぐ形で前半が終了した。



◆後半の戦い/最終的にスリリングなスコアとなるも立正が残留を決める

風下とは言え、立正大が体格面の優位性を活かして確実にボールを運べば大量リードでの折り返しも可能のように見えた前半の戦いぶり。後半は風上に立つという安心感があったのかも知れないが、いつでも逆転できるという気持ちが緊迫感を欠いたプレーに繋がったのかも知れない。しかし、僅か3点とは言え逆転を許してしまった展開に、ハーフタイムで首脳陣から相当にネジを巻かれたはず。後半こそは1部で戦い、2勝を挙げた力を見せてくれるものと立正大ファンではなくても考える。これは万が一にも負けてはいけない試合なのだ。(しかし、首脳陣が授けたのは驚きの作戦?だった。)

後半のキックオフは風下に立った関東学院。どうしても相手キックで自陣での戦いを強いられる時間帯が長くなる。また、キックでエリアを取ることも難しいため、オープン展開でのラインブレイクが期待出来ない状況ならFWのサイドアタックで(ラインに立つ選手の人数は減っても)地道に前進を図っていくしかない。5分、立正大は関東学院陣22m付近で得たPKのチャンスでラインアウトからトライを取りに行くが関東学院が反則。今度はショットを選択してツトネがPGを決めて17-17と試合を振り出しに戻した。結果オーライだが、このあたりちょっとちぐはぐな感じも。

15分に立正大は関東学院陣22m内でのスクラムからオープン展開でボールを左右に動かし、SOツトネがトライラインを越えた。GK成功で24-17と立正大が再びリードを奪う。さらに28分にも立正大はPGで3点を追加して27-17とリードを安全圏に拡げる。しかし、何か物足りない。有利な風上に立っているのに立正大が爆発する気配が殆ど感じられないのだ。その原因かどうかは定かではないが、立正大が見せた不可解とも言えるプレーがそんな印象を抱かせたのかも知れない。

「ラインアウトからモールを形成して押し込む」が関東学院のほぼ唯一のストロングポイントであるゆえに、立正大もその対策を考えていたはずなのだが、その答えが「コンテストしないこと」というのが意外だった。モール対策で競らないことはけして珍しいことではない。しかし、体格面で優位に立っているはずのチームがノーコンテストなのは解せない。あくまでも個人的な見解だが、たとえ自陣を背にしていてもラインアウトは競るべきだと思っている。何故かと言えば、プレッシャーをかけることで相手がミスをしてくれる可能性があるから。ラインアウトでリフティングが認められるようになってからとくに感じることは、大学ラグビーではラインアウトの技術が低下傾向にあること。統計的な裏付けデータを持っているわけではないが、オーバースロー、ノットストレートにノックオンとため息を誘う場面がとみに増えてきているような気がする。

競らないだけならまだしも、関東学院がモールを組んだときに立正大FWがコンテストしなかったのにはびっくりだった。かつて慶應が試み、流経大が大学選手権の明治戦で採用した(不評をかった)あのプレーだ。ラインアウトの後、対峙する両チームのFWの選手の間に「空気」しか存在しないと言ったらもう十分だろう。相手のオブストラクションを誘う高度な戦術ということになっていたらしいのだが、どうしても最初はディフェンス側が後ろに下がる形になるので「コンタクトを避けた消極的なプレー」に見えてしまう。おそらくベンチからの指示なのだろうが、入替戦でこんなプレーを観ることになろうとは。

立正大が攻めきれない中で、30分以降は逆転、そして1部復帰を狙う関東学院が立正大陣で攻め続ける展開となる。風上で10点リードしている状況とは言え、立正大は2つ続けてトライを取られたら同点でもトライ数の関係で2部降格となってしまう。立正大ファンにとっては「縁起でもない!」と言いたくなるような趣旨の場内アナウンスが行われる中で、関東学院サイドの応援のボルテージは上がっていく。そして遂に39分、関東学院のSH高木がラインアウトからこぼれたボールをインゴールで押さえることに成功する。GKは失敗したが22-27と関東学院の逆転昇格が視界に入ってくるところまできてしまった。立正大が何とか関東学院の最後の力を振り絞ったアタックを凌ぎきって残留を決めたが、後味の悪さが残った試合だった。



◆1部残留は決めたものの課題山積の立正大

序盤の圧勝ムードは何処へやらで、最後はスリリングな展開になってしまった入替戦の第1試合。結果オーライとは言え、立正大にとっては来シーズンに向けた課題を残した形での締めくくりとなってしまった感がある。端的に言うと、このままでは来シーズンも上位浮上は難しいと言うこと。かつて1部で戦っていたときに一番感じたことは、とにかく大人しいチームと言うことだった。もちろん、闘志が感じられないという意味ではなく、自ら仕掛けていく積極性に欠け、ゲーム終盤になってエンジンがかかった頃には既に勝敗の行方は決まっているというような戦いに終始していた感があった。今回の1部復帰でチームカラーが変わったことを期待したわけだが、この日の入替戦の戦いぶりを観る限り、チームとしての進化は見られなかったと結論づけざるを得ない。この試合の後で試合をした山梨学院の戦いぶりを観たら安閑とはしていられないはず。一皮むけて欲しい。

◆1部復帰までの道のりは険しい関東学院

ファイナルスコアは僅か5点のビハインド。1トライ取れば同点でも1部復帰という結果を見れば関東学院の(大学王者に輝いたチームに対しては失礼だが)大健闘と言っていいだろう。しかし、率直に言って、厳しい言い方になってしまうが関東学院が勝てるという感じはまったくしなかった。春口監督が「ミスで負けた」というコメントを発していたようだが、実際に試合を観たものとしては違和感を禁じ得ない。メンバー構成が1、2年生主体となっていることの意図は不明だが、「将来性」を考えてのものであるとしてもチームとしての伸びしろには疑問符が付く。

それよりも、一番不思議に感じたことは、関東学院を応援する声は部員達からよりもスタンドを埋めた熱心なファンからの方が圧倒的に多かったこと。関東学院サイドで観戦していたにもかかわらず、チームメイトを熱心に応援する声があまり聞かれなかったのは気のせいだろうか。そう感じたのは、入替戦の2試合目では拓殖大も山梨学院もピッチ上で戦うチームメイトを力一杯応援していて、それは感動的でもあったから。おそらくこれから拓殖大はチーム一丸となって1部復帰を目指すことになるだろう。残念な敗戦には違いないのだが、関東学院の1部復帰への道のりはより険しくなったような気がしてならない。
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大東文化大学vs立正大学(2013年11月24日)の感想

2013-12-04 01:45:31 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


今シーズンのリーグ戦も最終節。今シーズンはどのように総括されるのだろうか。ひとつ確実にキーワードとして選ばれるのは「大混戦」で間違いないだろう。そこに「希に見る」とか「下克上」といった言葉も加わる。しかし、1試合1試合の内容を精査していくと、けして「大混戦」が実力伯仲、それも高いレベルでのと言ったような喜ばしい状況ではなかったように思えて仕方がない。各チーム、メンタル面のみならずチーム作りの面でも波がありすぎたというのが率直な感想だ。これでは盤石の帝京を頂点として緊迫感を持って試合に臨んでいる対抗戦G校との格差は広がるばかり。

しかし、そんな混沌とした中でも救いはある。7試合を通して着実に進化していき、有終の美を飾るチームが1つは必ずあること。昨シーズンで言えばそれは拓大だったし、今シーズンは大東大。リーグ全体を客観的に観ているつもりで居ても、どうしても無意識のうちに肩入れしてしまうチームが出来てしまうが、それもいいかなと思う。やはりラグビーはできれば楽しく観たいというのが本音。

例年であれば、リーグ戦の最終日は秩父宮で優勝チームが決まるのを見届け、表彰式の後に行われるベスト15の発表を聞いてから帰途に就く。今シーズンもつい1週間前まではそんなつもりで居た。しかし、前節の江戸川での2試合を観て気持ちが大きく揺らぎ、そして最終的に向かったのは熊谷だった。秩父宮の2試合は既に優勝チームが決まっていることに加え、どちらが勝つかも予想できていたつもりだったから。(実は、これが完全な外れになってしまったが...)

ラグビー場周辺には約15分前に到着。いつものように西側のスペースに車を止めようと思ったら、何かのイベントがあったようですでに満杯状態だった。前回の失敗(キックオフに間に合わず)に懲りているので、躊躇せず西側のスペースに移動して車を止め、正面から競技場に向かった。脇道に目をそらすと紅葉がきれいで思わず見とれてしまった。秩父宮周辺の銀杏並木のような豪華絢爛さとは無縁だが、スタジアムと調和した熊谷らしい風景と言える。やっぱり熊谷はどこか心が安らぐようなところがある。屋根は小さくてもサイズの割に一体感を感じさせる観客席のゆったり感もいい。今日も「熊谷でW杯開催を」の署名に協力してしまった。日本一のラグビー場が会場から漏れるようなことがあってはならない。



◆キックオフ前の雑感

奇しくも本日の対戦カードは春シーズン(Cグループ)でもっとも印象に残ったものと同じだ。およそ半年前の立正大グランドでの両チームのマッチアップは、「新生大東大」を力強くアピールする試合となった。そう、ちょうど1年前の大東大は入替戦で戦うことを余儀なくされた瀕死の状態にあったのだ。そして、立正大も2部リーグで1部復帰を目指して戦っていた。しかしそんな大東大も1勝2敗のあとは3連勝で大学選手権出場を決めた。立正大は2勝を挙げてこの試合に入替戦回避をかける。実は最終節の4試合で一番競った内容になると予想していたのがこの試合だった。

まずは大東大のメンバーを確認する。FWではテビタとハフォカが怪我のため欠場なのが痛い。しかし、大東大にはここ2試合ですっかり覚醒した感がある長谷川が居る。PR高橋、LO種市、FL鈴木と並べただけでもなかなかのメンバー。そしてもうひとり影のキーマンが居るがその選手の名は試合の中で明らかとなる。BKに目を転じると、ここまでずっとスタメンで頑張ってきたFBのルーキー大道の名前がリザーブにもないことが気になる。おそらく怪我だろうか。代わりにFBを務めるのは4年生の今村。持ち前のロングキックでたびたびピンチを救った法政戦勝利の立役者のひとりだ。あとは不動のメンバーだが、本日とりわけ期待したいのはWTBでスタメンのホセア(サウマキ)。ここまで「らしさ」を発揮したと言う意味では不完全燃焼に終わっているだけに、豪快なランによるトライを見たい。そんな大東大に期待したいのは、最後まで緩むことなく戦って有終の美を飾ること。対戦相手の立正大もパワーアップしているので、春のイメージで戦うと痛い目に遭うだろう。

対する立正大はWTBに頼もしいエースが戦列復帰を果たした。早川と鶴谷が両翼(フィニッシャー)を担うことで立正大の得点力は確実に上がる。オールラウンダーのSOツトネを中心としてBKは粒ぞろいなだけにFWの奮起が期待されるところ。かつて1部リーグに在籍した頃の立正大は大人しくてなかなかエンジンがかからないチームという印象があったが、1部復帰を果たした今シーズンは違う。シーズン半ばでレギュラーを掴んだSH植竹も期待の選手の1人だ。とにかく1年生SHの活躍が目立つ今シーズンだが、2年生だって負けているわけにはいかない。その他にも大型選手のフィラララ・レイモンドが加わったFWもパワーアップしていることは間違いない。起死回生を目指した最後の一暴れは成るか?



◆前半の戦い/安定した戦いぶりで序盤からペースを握った大東大

大東大サイドの部員達が陣取る位置の近くでの観戦。3連勝とチームの状態がよいこともあってか、とにかく元気いっぱいの声が左隣から聞こえてくる。昨シーズンはスタンドに陣取った部員達の煮え切らない態度に対して「苦言」を呈させていただいたのが遠い昔のように思える。ピッチに立つ選手達と控え部員達の間に一体感があることが大東大躍進の原動力になっていることは間違いない。

試合はメインスタンドから見て左側に陣取る大東大のキックオフで始まった。大東大がマイボールの獲得に成功してオープン展開で攻める。ボールが左サイドの淺井に渡り前を向いてひたすらGO!の場面で淺井はタッチに押し出されてしまった。これまでの大東大はWTBにボールが渡る前の段階でウラに抜けていたことが多かったことから、本日のテーマは「WTBまで回そう」になったのかも知れない。ただ、その後も同じ場面が何回かあったことは修正点かも知れない。立正大に巧みに押し出されたとも言えるが、ラインの間隔などは見直されることと思う。序盤戦は両チームが攻防を繰り返す中で一進一退の展開となる。やはりこの試合は読み通りの接戦になるのだろうか。

そんな拮抗した展開の中で、15分に立正大のLOレイモンドが危険なプレー(スピアタックル)でシンビンを適用されて10分間の一時退場。大東大はPKからゴール前のラインアウトで得点を目指す。ラインアウトからのオープン展開はSO川向がノックオンを犯しチャンスが潰えたかに見えた。しかしながら、立正大の陣地挽回を目指したキックが中途半端で大東大はHWL付近からカウンターアタックで攻める。前が開いた状態で大きくゲインしたSH小山からパスがオープンスペースを走るサウマキに渡る。今シーズンで初めてといっていいくらいいい形でパスを受けたこの選手を止めることは大学レベルでは不可能。ついに「らしさ」が発揮されたトライが生まれて大東大が先制点を奪った。GKを蹴るのは今村。位置は右中間で距離も問題ないはずだったが、今村は左足で引っ掛けてしまいボールはポストのやや右を通過。このささやかな失敗がその後の絶不調への伏線だったとは予想も付かなかった。ちなみにサウマキはスタメンながら22番を付けている。今日はセカンドの白ジャージのため、14番でサイズが合うものがなかったのだろうか。

この得点でようやく大東大のアタックにスイッチが入った。25分、大東大は立正大陣10m付近での相手ボールスクラムで強力なプッシュをかけ、立正大がBKへ展開使用としたパスをFL鈴木が奪取して前にボールを運ぶ。フォローした長谷川にパスが渡り、大東大はこの日2トライ目を記録。GKはまたしても失敗に終わるが大東大のリードは10点に拡がった。リスタートのキックオフで長谷川がカウンターアタックからビッグゲインを稼ぐもののノットリリースで得点には繋がらない。しかし、大東大は終了間際の39分に立正大ゴール前ラインアウトのチャンスでモールを形成して押し込み長谷川がグラウンディングに成功。GKは失敗するが大東大の15点リードで前半が終了した。



◆後半の戦い/立正大に反撃を許すも有終の美を飾った大東大

安定した戦いぶりで着実に加点してリードを奪った大東大。今日は攻撃力よりもディフェンスで踏ん張るシーンが目立つ。後半も大東大が幸先よく先に得点を奪いペースを握る。2分、立正大が自陣で犯した反則に対し、大東大はPKからゴール前でのラインアウトを選択しモールで前進。ゴール前で出来たラックから長谷川が抜け出してトライラインを越えた。GKの不調は続きここも外れるが大東大のリードはさらに20点まで拡がった。これで長谷川は3連続トライ。盤石のエースとして乗ってきた。逆転に向けて最初に取りたかった立正にとっては痛い失点だった。

なかなか反撃の糸口を掴めなかった立正だったが、8分にエースが本領を発揮する。大東大陣10m付近でのラインアウトからSH植竹が後ろに抜け、フォローしたWTB鶴谷がスピードに乗って一気にトライラインを越えた。GKは失敗するが立正大が5点を返して5-20となる。これで立正大が波に乗るかと思われたが、大東大のディフェンスの前に攻撃の手詰まり感は解消されない。ゲームは再び膠着状態となり時計は14分まで進む。立正大が自陣からタッチを狙ったPKがノータッチとなりチャンスを逸したかに見えたが、大東大がボールの処理を誤ってボールが後方に転々とする。ここに走り込んできた立正大のFB吉澤がボールを拾って一気にゴールラインまで駆け抜けた。GK成功で20-12と大東大のリードは8点に縮まる。

さらに19分、大東大は立正大陣22m内のG正面の位置でPKのチャンス。しかしながら、今村はイージーなはずのゴールも外してしまう。ここまで5本のキックがすべて失敗というのは大東大にとって誤算。もしかしたら最初に確信を持って蹴ったキックが外れてしまったことで修正が利かなくなってしまったのかも知れない。大東大ベンチにいやなムードが漂い始める。しかし、このピンチを救ったのが大東大とっておきの選手だった。地味ながらもタックルポイントには必ず居るといっても過言ではない仕事人の7番を付けた篠原がその人。大東大のHPでは何故かSHとして紹介されている選手だが、171cm、74kgの体格だからそれも頷ける。立正大ドロップアウトのキックに対するカウンターアタックからするすると前に抜け出した篠原からボールがSH小山を経てCTB梶に繋がりトライ。3列では長谷川と鈴木の活躍が目立つ大東大だが、ディフェンスでの貢献度抜群なのは篠原。なにぶん地味な選手だけにここまで紹介出来なかったことが残念だったが、このプレーはチームに勇気を与えたことは間違いない。篠原は今シーズンの大東大躍進にあたっての陰のMVPだと確信した。

さて、大東大がトライを奪ったことでどうしてもGKに注目が集まってしまう。右中間で距離も少しあるところで登場したのがSH小山だった。大丈夫かなと固唾を呑んで見守っていた大東大応援席が次の瞬間歓声に包まれた。大道が不在の中でプレースキックに対する不安を一気に解消するような見事なゴールが決まった。27-12と大東大のリードは再び15点に拡がる。大東大にとっては、起死回生と言ってもいいトライでありGKだった。そして、小山の後はサウマキ。立正大のキックオフに対するカウンターアタックから約70mを走りきりゴールへ。やはり、この選手は密集をぶち抜くよりもスペースを切り裂く方が似合う。ここでも小山が冷静にGKを決めて34-12となる。

後半35分に大東大は控え選手をすべて登場させる余裕を見せるが連携は乱れない。立正大が渾身の力を振り絞ってアタックを繰り返すが、大東大のディフェンスに綻びが生じることなく試合が終わった。2勝を挙げた立正大だったが、直接対決で勝っている日大が3勝目を挙げたため、1部残留をかけて入替戦を戦うことになった。ただ、過去に1部リーグで戦っていた時のチームと比較すると、闘志が前面に出るチームへと進化を遂げているように感じる。手応えが掴めたからこそ、来シーズンに繋がる1勝を挙げて欲しいと願う。



◆15人+アルファで戦う全員ラグビーの基礎を完成させた大東大

大東大は5勝2敗で中央大と並んだが直接対決で敗れているため3位。今となっては、その中央大に最小得点差で敗れた緒戦のことがチーム関係者にとっては悔やまれるが、最初に躓いたことでチームが引き締まったのかも知れない。過去の大東大だったらそのままずるずる行っていた可能性が高い。結局、今シーズンの大東大に関しては勝ち試合しか観ていないことになる。とにかく安定しなかった他のチームとはひと味違ったラグビーを楽しく見せてくれたチームがひとつあったことは大きな救いだった。

今シーズンの大東大の戦いぶりを振り返ってみると、いい意味で高橋主将が目立たないチームになったということが印象に残る。アタックでは1人の選手が抜け出したら必ずフォローの選手が続いて孤立させないし、ディフェンスでは相手に突破を許しても粘り強く守り切る全員ラグビーの完成だ。個が埋没することなく組織的に戦えるチームが出てくることを期待し続けてラグビー観戦を続けてきたが、17シーズン目にしてようやく理想のチームに出逢えたような気がする。上を目指すためにはもちろん課題もあるが、控え選手も含めてチーム一丸となって戦えることは大きな財産になるはず。ルーキーの活躍が際立ったメンバー構成を見たら、どうしても「4度目」を期待したくなってしまう。
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