「熱闘」のあとでひといき

「闘い」に明け暮れているような毎日ですが、面白いスポーツや楽しい音楽の話題でひといき入れてみませんか?

関東大学ラグビー・リーグ戦グループ2017(1部)第6節の試合結果

2017-10-29 23:17:24 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


関東大学ラグビー・リーグ戦Gはいよいよ後半戦に突入。先週に引き続き、またしても台風接近の大雨の中、第6節の2試合が秩父宮ラグビー場で行われた。ピッチの状態は前節よりもさらに悪い状態となったが、選手達は元気いっぱいだったことがせめてもの救い。優勝決定ラウンドの第1弾となる大一番、流経大vs大東大は最後の最後まで縺れたものの、強力スクラムで流経大を粉砕した大東大が勝利。また、東海大も中央大をゼロ封で圧倒し大東大と並ぶ5連勝とした。

第6節は11月3日に上柚木で第5ラウンドの残り2試合が行われる。いわば入替戦回避をかけたサバイバルラウンドで、圧倒的な攻撃力で頭2つくらい抜け出していると見られる法政を除けば混戦模様。いよいよ負けられない戦いが始まる。



■第5節(10月29日)の試合結果

10/29(日) ●流通経済 14-19 ○大東文化 秩父宮ラグビー場
10/29(日) ○東海大学 54- 0 ●中央大学 秩父宮ラグビー場

■第6節(10月29日)の試合予定

11/3(祝金) 法政大学 vs 関東学院 11:30 八王子・上柚木
11/3(祝金) 拓殖大学 vs 日本大学 14:00 八王子・上柚木





序盤から大東大が流経大をスクラムで圧倒。こんなに流経大がスクラムで崩されるのは1997シーズンに1部昇格を果たした年以外には記憶にない。しかし、ここに大きな落とし穴があった。大東大はセットプレーでの圧倒を武器にBKへの展開を試みるもののミスで攻めあぐむ。キックを有効に使い、シンプルにFWでタテを突く攻撃が功を奏し、流経大が2トライを挙げて14点のリードでの折り返しとなった。

完全に押せ押せムードとなって迎えた後半。大東大はキックオフがダイレクトタッチになり万事休したかと思われた。しかしながら、スクラムの絶対的な優位を精神的な支えとして、大東大が建て直しに成功。後半は流経大が殆ど自陣から抜け出せない状態となり、大東大が3トライを奪い逆転に成功する。

大東大が5点リードのまま試合は終盤戦へ。再三の流経大ゴール前でのPKの(リードを8点差以上に出来る)チャンスでもスクラムに拘り続けて試合終了まであと少し。ここで、流経大に一発逆転の絶好のチャンスが転がり込む。後半で初めてと言っていい大東大が自陣ゴールを背に防戦一方となるまさかの場面。この大ピンチを耐え凌いだ大東大が辛くも勝利を掴む形で決着が付いたが、最後までハラハラどきどきだった。



降りしきる雨でピッチにどんどん水が溜まっていく状況の中で、東海大も大東大と同様に強力スクラムを武器に中央大を圧倒。田圃のような状態となった中央付近のエリアを避ける形で蹴り合いが続く中、FW、BKともにパワフルな選手達を揃えた東海大が中央大を圧倒。前半こそ1-0の競った展開になったものの、後半はボールを繋いで強力に前進を図る東海大がトライを重ねて圧勝を収めた。

コンディションが非常に悪い中、東海大の選手が確実にボールを前に運べるのは体幹の強さがあるからだと言うことを実感。大東大が強力なスクラムを武器に確実にチーム力を挙げているものの、総合力の高さとバランスのよさで東海大の優位は動かないとみる。流経大にとっても本日のスクラムの崩壊は大ショックだったはずで必ず巻き返しを図ってくるはず。相性がよくないことはさておいても、東海大もけして安心はできない。最後まで予断を許さない戦いはこれからが本番。

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関東大学ラグビー・リーグ戦グループ2017(1部)第5節の試合結果

2017-10-24 01:53:29 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


関東大学ラグビー・リーグ戦Gの第5節(第4ラウンド)は、大型台風が接近する中、2日間ともに生憎の雨の中での試合。グランドで闘う選手達には気の毒なコンディションになってしまったものの、1日目の野津田公園(東京都町田市)、2日目のしらこばと運動公園(埼玉県越谷市)ともに熱い戦いが繰り広げられた。

■第5節(10月21,22日)の試合結果

10/21(土) ○中央大学 35-14 ●関東学院 野津田公園(町田)
10/21(土) ○東海大学 80-12 ●拓殖大学 野津田公園(町田)
10/22(日) ●法政大学 14-29 ○大東文化 しらこばと運動公園(越谷)
10/22(日) ●日本大学  7-50 ○流通経済 しらこばと運動公園(越谷)

第1日目(10/21)の中央大学対関東学院は、前節の負け(対法政)を引きずらない形で中央大が関東学院を圧倒。戦績を3勝1敗として後半戦へ望みを繋いだ。東海大対拓殖大は東海大が前半だけで61点を奪う猛攻を見せ拓殖大を圧倒。拓殖大は入替戦回避のサバイバルマッチとなる後半戦に向けてディフェンスの整備が急務となった。

第2日目(10/22)はしらこばと運動公園で生観戦。第1試合は第5節屈指の好カードで、降りしきる強い雨をものともせず、法政と大東大の間での激しい攻防は見応えがあった。法政は自陣からもキックを封印した形でオープン展開で攻めるのに対し、大東大はキックでエリアを取り自慢のFWで手堅く攻める。前半は一進一退の攻防で接戦となったが、大東大が自慢の強力スクラムと鋭く前に出るディフェンスで威力を発揮し点差以上の圧勝を収めた。

大東大は新人SH南とFWの連携が良くなってきたこともあり安定感が増した印象。強力なタックルを織り交ぜた組織ディフェンスにも穴がほとんど開くことはなく、積極果敢に攻めた法政が涙を呑む形。いいコンディションで再戦させてあげたい気持ちにもなったが、チームスタイルは変わっても青柳監督が5年間をかけて積み上げてきたものの重みを感じた。

第2試合は台風の接近によりさらに雨脚が強くなり、グランド上にも水たまりが目立つ状態。序盤から日大がスタートダッシュをかけて流経大を自陣に釘付けにする。スクラムでも優位に立ちゴールラインまであと一歩まで迫る場面が多かったが、得点できなかったことが痛かった。日大が攻めあぐむ間に流経大が鋭い切り返しから得点を重ねて建て直しに成功。不安を抱えながらも流経大は4連勝で優勝戦線に残った。一方の日大はサバイバル戦を前にして厳しい状態が続く。

第6節は秩父宮(10/29)で上位グループ校同士による優勝争いに向けたリーグ戦の火蓋が切って落とされる。とくに注目は全勝対決となる大東大と流経大の激突。スクラムが強力でディフェンスも堅い大東大が一歩リードしている格好だが、流経大もようやくチームが固まりエンジンがかかってきた。ほぼベストの陣容となった中央大も楽しみ。伝統的に得意とする神経戦に活路を拓きたい。

■第6節(10月29日)の試合予定

10/29(日) 流通経済 vs 大東文化 11:30 秩父宮
10/29(日) 東海大学 vs 中央大学 14:00 秩父宮











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関東大学ラグビー・リーグ戦グループ2017(1部)第4節の試合結果

2017-10-18 00:21:51 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
関東大学ラグビー・リーグ戦Gは第4節(第3ラウンド)までを終了。3連勝のチームは奇しくも揃って69点を取っての勝利で好調を維持したが、波乱(下克上)らしきものが1つ。ここまで2連勝でトップ4の一角を成していた中央が法政に完敗を喫して上位戦線から一歩後退となった。残りの3チームは3連敗となり苦しい戦いが続く展開となっている。

第3節でインパクトのある戦いをみせたのは法政。いよいよ超攻撃的ラグビーが本物となってきた感がある。上位グループキープを目指した中央は一時逆転可能圏に入りつつあったものの、主力の復帰でレギュラークラスがインパクトプレーヤーとしてリザーブに控える法政の攻撃力に呑み込まれてしまった印象。今後の相手のディフェンス力を見ても、後半戦の主役となるチームのひとつは法政とみて間違いないのではないだろか。

下位グループでもうひとつ主役になれそうなのが関東学院。体格差からくるパワーの差は見せつけられたものの、東海大、流経大、大東大を相手に手応えのある戦いを見せた。こちらも今後の対戦相手を考えれば上位進出への期待が高まる。法政、関東学院とは逆に拓大と日大の調子がなかなか上がらない。流経大戦での拓大はディフェンスが崩壊状態となり、今後の戦いへの不安を残す。日大も結果がでていないが、アタックの形はできておりさほど心配はないと見る。しばらくは我慢で勝ち星を挙げて自信を掴みたいところ。

さて、第5節は前年度上位チームと前年度下位チームの対戦の最終ラウンドとなる。注目は日曜日の大東大と法政の激突。大東大は昨年までほどの爆発力こそないものの、今年のチームは失点の少なさが際立つ。懐のふかいディフェンスで法政の超攻撃的なラグビーを止められかが見どころ。点の取り合いになれば法政で凌ぎあいになれば大東大という展開が予想されるが(何が起こるかわからない)好カードであることは間違いない。建て直しを図る中央大と逆襲に向けて準備が整った関東学院の対戦も楽しみ。第1節の戦いが混迷状態だったため一抹の不安もよぎっていたが、リストラクチャー(再構築)の年と言ったらいいのか、上がり目の発展途上のチームが多く、後半戦の戦いが楽しみだ。

■第4節(10月8、9日)の試合結果

10/08(日) ○流通経済 69-21 ●拓殖大学 秩父宮
10/08(日) ●関東学院  7-69 ○東海大学 秩父宮
10/09(月) ●中央大学 21-47 ○法政大学 上柚木
10/09(月) ○大東文化 69-10 ●日本大学 上柚木

■第5節(10月21,22日)の試合予定

10/21(土) 中央大学 vs 関東学院 11:30 町田市陸上
10/21(土) 東海大学 vs 拓殖大学 14:00 町田市陸上
10/22(日) 法政大学 vs 大東文化 11:30 越谷・しらこばと運動公園
10/22(日) 日本大学 vs 流通経済 14:00 越谷・しらこばと運動公園











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東海大学 vs 法政大学(関東大学リーグ戦G1部-2017.09.24)の感想

2017-10-07 00:36:20 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


リーグ戦Gの本格的な観戦を私が始めた1997シーズンは東海大にとってのひとつのラストシーズンだった。その年は1部リーグで最下位となり、入替戦にも敗れて2部に降格。当時のユニフォームは現在のようなマリンブルーではなく、典型的な段柄模様。トリッキーなラグビーで注目を集める部分はあったものの、確実性を欠くラグビーで降格もやむなしと言った感じ。その後、東海大は2シーズンを2部リーグで戦った後、2000シーズンに1部に返り咲き現在に至っている。

今やリーグ戦1部で押しも押されぬトップチームとなった東海大。しかし、1部昇格後も苦難は続く。2年連続で拓大と戦った入替戦はあわや再降格の連続で、2強の関東学院と法政にはまったく歯が立たなかった。渾身のタックルに次ぐタックルも実らずに失点を重ね、アタックでも決定力不足に泣いて防御を打ち破れない。頑張りがまったく通じない大量失点負けが続く状況に、ゲーム終了後は東海大が2強に勝てる日はやって来るのだろうか?という絶望感が競技場全体に漂っていたことを思い出す。

時は流れて、今や立場は完全に逆転している。関東学院や法政が東海大を見上げるような状況はかつては想像できなかったこと。東海大は2000シーズンからずっと木村監督がチームを率いているのに対し、法政はその間に指導者が何人も入れ替わっている。東海大が20年近い時間にわたって積み上げてきたものは、選手達の身体の厚みの違いが物語る。時間をかけて苦労を重ねながら作り上げてきた組織は、簡単には崩れないことを教えてくれる。

さて、緒戦で流経大と派手な撃ち合いを演じた末に敗れた法政。ディフェンスに課題を残した戦いではあったものの、アタックでは超攻撃的なラグビー復活を予感させる変化を見せた。東海大を相手にまずはアタックがどれだけ通じるかもさることながら、法政の持ち味とするアタッキングラグビー復活はあるのかも見極めたいところ。東海大も緒戦は前半の半ばまでとはいえ、日大と5分の戦いを演じる、まだまだ盤石とは言えないスタートだった。はたして、希望と不安の対決はどんな結果になったのか。



◆前半の戦い/目の覚めるような攻撃ラグビーで先制し、幸先良くスタートを切った法政だったが

キックオフからいきなりギアをトップに入れたかのように、法政のパス回しを主体としたスピーディーなアタックが冴え渡る。キックは封印し、しかもワイドな展開よりも短いパスを使い、ループパスなどを使って内に切れ込む鋭角的なアタックは緒戦の流経大戦でも見せたもの。やはり、今シーズンの法政はこのスタイルで攻め続けるであろうことがはっきりした。いつも試合への入りがよくない東海大だが、そうでなくてもこのアタックを受けてしまったら粘り強く守り続けるしかない。

果たして、開始から僅か2分、法政がカウンターアタックからFB萩原が東海大の防御を破り素早く右に展開。右サイドに位置した新人で東海大仰星高校出身の根塚弟(兄は法政の3年生でSH)がゴールラインまで到達する。そして、気が付いたら見事なノーホイッスルトライだった。流経大戦で7/7と絶好調だった萩原は、右サイドからのGKも難なく決めて法政が幸先良く7点を先制。それにしても、第1試合とは打って変わって、ビデオを1.3倍速にしたかのようなスピーディーな攻守の切り替えは見ていて清々しい。このまま法政がトライを重ねたら、もしかしてもあり得ると思わせるような序盤戦だった。



その後も法政の切れ味鋭いアタックの連続にスタンドは沸きに沸く。しかし、東海大も落ち着いている。法政のアタックにも怯むことはなく、選手達は前を見てしっかりと止め続ける。FBに野口主将がスタメン復帰したことも大きい。ブレイクダウンで厳しいプレッシャーに晒され続けたこともあり、法政は溜まらず反則を犯す。ボールを持てば、FWのパワーとBKのスピードで力強く漸進できるのが東海大の強み。11分、東海大は法政ゴール前ラインアウト(法政ボール)のこぼれ球を拾ってワイドな展開から、一瞬出来たFW周辺のギャップをFB野口が鋭く突いてゴールポスト中央までボールを運んだ。GK成功で7-7となったところで試合が落ち着く。

続く14分、東海大は意表を突くクイックスローを起点としてパスを受けたLO川瀬がスルスルとタッチライン際を抜けてトライ。巧みなチェンジオブペースで東海大が完全に主導権を握る。法政もキックオフで去年までのチームとはひと味違うことを見せる。浅めでタッチライン際を狙ってキックしたボールはピンポイントでパワーのある斉田に渡るが惜しくもタッチへ。ここ数年のチームは何故できなかったのかというプレーの連続は、法政のアタックを見応えあるものにする。返す返すも東海大にエンジンがかかる前に2の矢、3の矢が打てなかったことが惜しまれる。

22分、東海大は法政ゴール前のラインアウトからFWでボールキープしながら前進しトライ。パワフルなアタックではあるが、不思議とごり押し感がないのは、それだけパワーの差があると言うことだろうか。力尽くではなくても確実に前進し続けられるのは驚き。31分には同じくゴール前でのラインアウトからモールを形成して前進しテビタがトライ。直後の34分、今度は法政が自陣ゴールを背にしたラインアウトで一瞬の隙を突かれてラックでのスティールを許す。ボールは素早くオープンに展開されてWTB清水がトライ。アタックでのミスがことごとく失点に繋がってしまう法政は為す術がない。その後は両チームが一進一退の攻防が続くものの、無得点のまま前半が終了した。



後半の戦い/終始安定したパフォーマンスを見せた東海大が法政を無得点に抑え圧勝

序盤に先制点を奪った頃の勢いも何処へやらの法政。ミスがことごとく失点に繋がるような状況に、前半の後半は攻め疲れがどっと出てきてしまったのかも知れない。気を取り直して、後半も先に点を取って少しでも点差を縮めたいところ。後半もキックオフから時間を忘れるようなスピーディな展開でスタンドの両校のファンを唸らせる。しかし、ここでもミスが明暗を分ける。5分、東海大は法政のノックオンで得た法政陣10m/22m右サイドのスクラムからフラットなパスで左に展開。オフロードパスを受けたCTB池田が巧みにギャップを突いてトライを奪う。本日は12番の池田だが、去年は13番を付けて試合に出ることが多く、貴重なユーティリティセンターだと思う。

フラットなパスにオフロードもまじえた東海のパスのメニューは豊富。法政も過去数年とは明らかに違った形でパスを繋いで攻めるものの、ラインが深めで必ずしも有効なゲインに繋がらないのが痛い。東海大の前に出るプレッシャーがきついためやむを得ないと言えるが、浅いラインを交えることが出来れば破壊力は確実に増しそうな気がする。しばらくは我慢と言ったところだろうか。確実に加点していく東海大だが、前にも書いたように、パワーで法政を圧倒していてもごり押しで得点を奪っているようなイメージがない。この「不思議」の原因については後で考察してみたい。



ほぼ5分に1本の割合で得点を重ねていく東海大。10分にはラインアウト、モールからLO西川がトライ。16分にはFWでのボールキープから左サイドに展開してWTB平尾がトライ。さらに24分、今度は法政陣22m付近でのスクラムを押し込み、8→9から左サイドのWTB平尾にボールを渡して難なくトライ。東海大は手綱を緩めず、アンストラクチャーからもセットプレーからもボールを前進させ、最後はBKに託す形でパスを繋いで得点を増やしていく。

この日の東海大で圧巻だったのは、後半の39分から試合終了間際までに3トライを奪った底力と集中力。法政はボールを持って攻撃する時間帯が減ると確実にゴールラインが遠くなっていく。そしてファイナルスコアは76-7と思わぬ大差が付いて試合が終了した。しかし、スコアはほぼ同じながら、かつての逆の結果となってしまっていた頃のような絶望感は感じられないことが不思議な法政の敗戦ではあった。また、東海大にしても、2戦目で法政とあたったことはラッキーだったかも知れない。緒戦の流経大戦を分析すればこのアタックは想定内。対策を練っていたことで被弾を最小限の1発に押さえることが出来たように思われる。勝敗は動かないとしても、お互いが緒戦での対戦なら法政の得点は増え、失点は減っていたような気もする。



◆試合後の雑感 Part1/まずはアタックからの法政

ここ数年は低迷状態で、昨シーズンは入替戦を闘うことになってしまった法政。どこから手を付ければいいのだろうかという状態だった。すべてを解決するには相当な年数が必要になることも危惧される。ならば、自分達が得意としている(はずの)部分でチームを作り、とにかく自信を取り戻す。法政の再建は、組織ディフェンスには多少目を瞑っても、まずはアタックに活路を見いだすことに託す。とくに前年度上位校との4連戦になる前半戦でアタックを仕上げ、その後に徐々にディフェンスを整備していき、失点を減らしていく。法政の首脳陣にはそんなシナリオがあるのかも知れない。大量失点とは裏腹に、選手達が自信を持ってプレーしているように見えたことから、まずは第一段階はクリアしたように思える。

◆試合後の雑感 Part2/強い肉体は何のため?

この試合で強く印象に残ったことは(不思議だったこととも言えるが)東海大が余裕を持ってプレーしているように見えたこと。ブレイクダウンなどの局面局面での戦いを観ても、殆どの場面で東海大の選手の方がパワーで上回り、かつ無理をしていないように見えた。それはJスポーツのオンデマンドで見てより顕著になった点と言える。

ラグビーは強靱な肉体を必要とするスポーツだと言うことは衆人が認めるところ。ケガをしないことは当然として、コンタクトで負けないことも大切だ。しかし、身体を作ることの必要性は別なところにもあるような気がする。とにかくプレーを確実かつ安定したものとするために強い肉体が必要となる。帝京大のラグビーを観ていておぼろげながら感じていた事が、この試合を観てより明確になった感がある。

帝京大の強さは僅差になればなるほど発揮される。帝京大と対戦しているファンにとっては、あと1トライが何故取れないのか不思議で仕方ない。ひとつ思ったことは、帝京大の選手は同じプレーをする場合でも、状況によって負荷を変えられるのではないかということ。負荷を上げても精度が落ちないようにプレー出来る、あるいは負荷を落としても雑にならないようにプレー出来ると言い換えるられる。同じプレーでもかける負荷が違うことで、対戦相手に「通用している」と勘違いさせているかも知れない。かける負荷をコントロールすることは試合での集中力を保つことにも繋がる。

あくまでも邪推だが、東海大も帝京大の真の強さに気付き、単に身体を強くするだけでなく、負荷をうまくコントロール出来るようにトレーニングを行っているのではないだろうか。もしかしたら、一番最初にこのことに気付いたのは関東学院かも知れない。そして帝京大が続き、その後を東海大が追う。奇しくも3校の指導者は日体大のOB。部外者の勝手な妄想かも知れないが、東海大が本当に強くなるのはこれからかも知れない。余裕(緩みではない)を見せても大勝したこの日の法政との戦いぶりを見てそんなことを想った。

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日本大学 vs 中央大学(関東大学リーグ戦G1部-2017.09.24)の感想

2017-10-04 01:31:19 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


学生の卒業と入学で毎年のように選手が入れ替わる大学ラグビー。戦力を維持するのが難しいところがファンや首脳陣を悩ませる。しかしながら、毎年フレッシュな状態からスタートするからこそ面白いとも言える。かれこれ今年でリーグ戦G中心の観戦は21シーズン目を迎えるが、毎年のようにフレッシュな選手達と出逢えるのは大きな楽しみのひとつ。

そんなことを思うのも、今シーズンも既に有望な新人達がデビューを果たしているから。「大学ラグビーにロスはない」と言わんばかりに元気いっぱいのプレーを見せているひとりが中央大のSH成田。Jスポーツ・オン・デマンドの映像だったが、印象に残ったルーキー選手のひとり。また、本日スタメン出場を果たした中央大のSO侭田も1年生。対戦相手の日大も先発SOは1年生の齊藤(芳徳)だし、SHの控えにはこれまた1年生の濱端の名があるといった具合。

とくに中央大は卒業した浜岸が4年間SOを務めていて、SHも加藤がレギュラーを務めた一昨年のシーズンを除き4年間ずっと長谷川と住吉が併用されてきた。今季の中央大でもっとも「ロス」が心配されたポジションは4年間ほぼ固定だったHB団と言って間違いない。思えば上で挙げた選手達が颯爽と登場した4年前は新人SHの当たり年だったと思う。中央大の2人の他にも大東大には小山、東海大には湯本がいた。それに倣った訳ではないと思うが日大も同じ年に2人の1年生がレギュラーSHの座を争っていた。小山と湯本は揃ってトップリーグデビューも果たしているから、当たり年だったと言っても罰は当たらないだろう。

それはさておき、HB団が揃って交代となった中央大はそれでなくても不安いっぱいのシーズンインだったはず。対外試合自粛のため春シーズンに殆ど実戦経験を積めなかったことが尾を引くとみられていた。緒戦の拓大戦も最終的に勝利したものの、失点が多かった事など安定を欠くチーム状態だった。ただ、アタックでは過去の中央大とは違うというところを見せた。一方の日大も春の戦績を見る限り、上位進出は難しいと見られていた。しかしながら緒戦の東海大戦は最終的に大差の試合になったものの、序盤戦は五分の戦い。両チームにとって2戦目となるこの戦いは、ルーキーHB団対決だけでなく、お互いの状態を確認する上でも興味深いものとなった。



◆前半の戦い/幸先良く先制した日大だが、ミスを重ねて流れを中央に渡す

日大のキックオフで試合開始。相性と言っていいのか判らないが、この対戦は「何か」が起こる。その何かは日大ファンが畏れていることであり、逆に中央大ファンには幸運を感じさせるところ。そんな日大の中央に対する苦手意識も過去のものとなった感がある(と思っていた)。序盤から日大が快調に飛ばす。自陣からでもキックを使わずに前へ。気迫に押されたかのように中央大は後ずさりを余儀なくされる。「自陣からの継続」で思い出すのが、前任HCが就任初年度に徹底させたキックの封印。小川(当時はルーキーSO)を育てたとも言えるが、あまりにも無謀なアタックの連続にピッチは悲壮感に満ち満ちていた。そんな記憶も遠い昔のことのように思える。

話が逸れた。中央大は開始早々の1分に自陣のスクラムでコラプシング。日大はこのチャンスを活かしゴール前のラインアウトからモールを形成してぐいぐいと押し込み、あっと言う間にゴールラインに到達。日大は中央大のお株を奪うようなドライビングモールで7点(GK成功)を先制した。その後も日大の攻勢が止まないが、やってしまったダイレクトタッチ。この何でもないミスがすこしずつ中央大にゲームの流れを渡す序章となったことはあとから判る。10分、日大は追加点のチャンスを掴む。自陣からのラインアウトを起点としたハイパントをFB内海が確保に成功して前へ。左に完璧なオーバーラップができパスが渡ればトライ!という場面だったが内海はクラッシュしてボールを失う。さらに16分、日大は中央大ゴール前でキックチャージに成功するが、インゴールで一歩先にボールを押さえたのは中央大の選手。



渾身のキックチャージも実らなかった日大に「ラッキーバウンドはないのか?」と思わせたシーンがその直後にやってくる。中央大のドロップアウトに対し日大がノックオン、中央大はすかさずウラへキック。ボールを確保した中央大のWTB橋本が開いたスペースを走りきりゴールラインに到達する。GKも難なく成功して7-7の同点となる。時間をかけて攻めても一瞬の切り返しで失点してしまうのは理不尽に見える。でも、そんな理不尽なことが起こるのがこのカードの伝統でもある。その後も日大は攻め続けるが、アタックを全うしきれない。最大の原因は、中央大に粘られてブレイクダウンでことごとくターンオーバーされたこと。敵陣に入ればどんどんテンポアップして攻め込みたいところだが、逆に日大のアタックはスピードダウンする。中央大の懐が深いディフェンスを褒めるべきだが、肝心な所でプレーの精度を欠いてしまう「日大の残念」の方がより強く印象に残ってしまう。

前半も終わりに近づいてきた27分、またしてもラッキーバウンドが中央大に味方する。中央大のSO侭田の絶妙なウラキックは、大きくバウンドしてチェイスしたNo.8牧野の胸にスッポリと収まる。牧野はそのままボールをゴールラインまで運び、中央大は14-7と逆転に成功。これで中央大が完全に乗った。日大は自陣でゴールラインを背負う背水の陣を余儀なくされ、何時失点してもおかしくない場面の連続。だが、ここは日大が(反則もあったが)粘り強く中央大のアタックを止め続け得点を許さない。前半も終わりに近づいたところで日大のアタックに勢いが戻る。しかし、ここも肝心な所でノックオンがあるなど、日大ファンが天を仰ぐ場面が目立つ。結局、このまま日大が攻めきれずに前半が終了した。やはり、取れるときに取るということはラグビーの鉄則だと改めて知る。



後半の戦い/完全にペースを掴んだ中央大が新境地も見せて勝利

ラグビーでやってはいけないミスは、1にキックオフのミス(ノット10mやダイレクトタッチ)、2にペナルティキックのノータッチ、そして3つめは何でもないミス。ホントに何でもないミスなのだが、味方選手の士気を落とすという意味では重大なミスに繋がることもある。その後の試合の流れを見れば前半のダイレクトタッチは(日大ファンにとって)残念だった。

さて、気持ちを取り直して後半戦。今度は中央大が攻勢に出て、日大は自陣深くからなかなか出られない苦しい状態が続く。そして6分、中央大は日大ゴール前でのラインアウトから得意のモールを押し込み前へ。日大のFWがモールに集まる状況をしっかりと見ていたのは最後尾にいたSHの成田。一瞬の間に出来たギャップを上手く突いてゴールに飛び込む。GK成功で19-7と中央大はリードをさらに拡げる。前半は守勢だった中央大だが、後半は完全にペースを掴んだ。両者、蹴り合いが多く、一進一退の攻防が続くものの、リードしていることもあり中央大の優位は動かない。日大にタックルの甘さが目立つ場面も続く。



後半も半ばにさしかかった19分、中央大はさらに7点を追加する。日大陣10m付近左サイドのラインアウトを起点としてオープンかつワイドに展開。大外までパスが回ったところでワンテンポ早くボールは内側にいたフォロワーに返されると日大のディフェンスは対応し切れない。前半の日大にこのアタックがあったらと思わせる鮮やかなトライだが、かつての中央大ではなかなかこのようなアタックは見られなかったように思う。緒戦の拓大戦でも変化が見られた中央大だがそれが確信に替わった瞬間。新しく今シーズンからスタッフに加わった中山コーチの手腕も確かのようだ。後半の中央大はブレイクダウンでボールを停滞させずに動かせていたことも印象に残る。

どんどん点差を拡げられていく日大だが、こちらにも期待のルーキーの濱端が居る。昨年は大東大に居て、今年日大に加わった選手だがフレッシュな選手であることに違いはない。この日は後半15分からの登場だったが、遅効だった日大のアタックが明らかにテンポアップする。濱端はFWのドライブも巧み。そんな1年生に刺激を受けたかのようにリスタートのキックオフ後は「日大の時間」となる。20分、日大は中央陣10m付近でのラインアウトを起点としてFWで前進しゴール目前まで迫るもののノットリリース。24分にもPR1の坂本のラインブレイクを起点としてボールを繋ぎ、ゴールまであと僅かのところでノックオン。丁寧にボールを繋いでいたら確実にトライだったので惜しまれる。

試合も終盤に近づいた36分、日大は中央大陣22mでのラインアウトを起点とした濱端の巧みなモールドライブから一矢報いる。右に左にとFWを誘導しながらドライブされたモールは最後にはランニングモール状態となる。決めたのはタテ長のモールの最後尾に付いた濱端だった。しかし、日大の反撃は遅すぎた。残り時間も少なくなったところで、自陣深くから反撃を試みるが22mラインの辺りでのブレイクダウンでまたしてもターンオーバー。中央大がウラに蹴ったところでチェイスしたFB八尾がボールを拾ってトライ。GKは失敗するが33-14のスコアで中央大が日大に勝利を収めて2連勝。チャンスからトライの場面で見せたここ一番の集中力は見事だった。



◆試合後の雑感/確かな変化(手応え)を感じさせた両チームの今後に期待

上でも書いたが、中央大は中山コーチの加入が早くも成果を挙げつつあるように見える。過去の印象ではせっかくボールをWTBまで展開してもフォローが追い付かないとか、2次攻撃の段階で既にBKラインに並んでいるのはFWの1,2列の選手ばかりという状況が散見されたのでそんな想いを強くする。BKに上級生が多いこともあるが、無理なくボールを繋ぎ、スペースがが出来たところで勝負するラグビーは理に適っていると思う。バックスタンドに陣取っていた部員達がもたらす一体感もすっかり板についた感じ。安定した侭田のキックを見ても、中央大はルーキーHB団とともにステップアップしていったら盤石のチームになるだろうし、またそうなって欲しい。

前半の圧倒的に攻めていた時間帯にトライを重ねられなかったことが返す返すも日大には悔やまれるところ。イーブンボールがことごとく相手へのラッキーバウンドになった感があるが、運のせいだけとは言いきれない。ブレイクダウンでスムースな球出しができず遅効になりがちだったことに対しては、FWをドライブできる濱端に期待したい。BKのアタックにしても、ここ一番の集中力にしても日大は相手に学ぶ点が多かったはず。あと、日大のプラス要素はFWの核でハイタワーでもあるLO孫の戦列復帰。何とかチームとして纏まって欲しいし纏まれると思う。そのためにも勝利が欲しいところ。「強力FWの日大」の復活を心待ちにしているファンは多いはずだから。

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