「熱闘」のあとでひといき

「闘い」に明け暮れているような毎日ですが、面白いスポーツや楽しい音楽の話題でひといき入れてみませんか?

サンタナ&マクラフリン『至上の愛』/断絶の時代に聴く対話の奥義

2017-11-24 02:22:10 | 地球おんがく一期一会


1970年代の前半に限定、アルバムで言うと1作目の『デビュー』から6作目の『不死蝶』までではあるけれど、熱烈なサンタナファンであったことに変わりない。とくにリアルタイムで接した4作目の『キャラヴァンサライ』から『不死蝶』までのレコードは何回も聴いている。

しかし、「哀愁のヨーロッパ」が入った『アミーゴス』で熱が冷めてしまい、それから長い長い年月が経っていた。そんな「オールドファン」を冬眠状態から目覚めさせてくれたのがNHKラジオ深夜便の「ロマンティック・コンサート」だった。サンタナ特集で取り上げられた「エヴィル・ウェイズ」(1作目の収録)がとっても格好良く心に響いたのだった。

それ以来、懺悔の気持ちで「ビフォア・キャラヴァンサライ」の3作を聴き直し、そしてデビュー前の『ジ・アーリー・サンフランシスコ・イヤーズ』と銘打たれた3枚組のCDボックスも手に入れてしまった。1968年のフィルモアでのライブと1969年のスタジオ録音を収めたアンソロジー集で、「サンタナ・ブルース・バンド」と名乗っていた頃の最初期の演奏を聴くことができる。

正直、今までいったい何を聴いてきたのだろうかというくらいに新たな発見がいくつもあってすっかり参ってしまっている。でも気がつかないでいるよりはいいかなとも思った。カルロス・サンタナは官能のギタリストである以上に才能に溢れたグレイトなミュージシャンだったことを認識できたので。

もちろん、「エヴィル・ウェイズ」がズシリと心に響いたのはそれなりの下地が出来ていたから。1980年代に出逢ってからずっと追いかけているポンチョ・サンチェスはティト・プエンテからラテンジャズの王位を継承したコンガ奏者だが、根っこにはロックンロールやR&B(リズム&ブルース)がある人。マンボやサルサやアフロ・キューバンジャズに接する過程でブーガルーやグアヒーラ(レイ・バレット曰く、ラテンのブルース)に親しんできたことも大きい。

こうして改めて60年代後半から70年代中盤までのサンタナの音楽を聴き込んでみると、確かに頂点は『キャラヴァンサライ』かも知れないが、最高作は『不死蝶』だという結論に至った。その辺りのことは追って書くとして、いま殆ど毎日のように聴いている曲がある。ジョン・マクラフリンと共作の『魂の兄弟達』のオープニングを飾るジョン・コルトレーンの「至上の愛」。サンタナとマクラフリンがギタープレイを通じてお互いの主張をぶつけ合いながらも、最後は美しいハーモニーを奏でて終わる感動の作品。当初は宗教臭く聞こえるという理由で敬遠気味だったのがウソのように親しんでいることが不思議ではある。

サンタナ&マクラフリン・バージョンの「至上の愛」は(厳かな雰囲気で始まる)コルトレーンのオリジナル作品(原典版)とはうって変わって、2人のギタリストのバトルを中心に据えたある種喧噪の下に始まる。「原典版」に親しんでいた人は、まずここで勘弁してくれになったかも知れない。続いて登場するのはダグ・ローチのベース。落ち着いた雰囲気でグルーブ感もありなかなかよいのだが、「エレキベースは勘弁」という人はここで投了だったかも。コルトレーンが吹いた精緻なテーマはラリー・ヤングがオルガンで丁寧に心を込めてなぞる。このため、有名なフレーズが全編にわたって残像のように響き渡るフラッシュバックのような効果がある。こうしてみても、「メインディッシュ」が登場するまででも既に内容の濃い作品に仕上がっているわけだ。

そして、いよいよサンタナとマクラフリンによりギターバトルが始まる。先行するのはサンタナより5歳年長のマクラフリン。とっかかりはお互いの主張を朗々と語り合う8小節ずつの交換になっている。そんな対話も熱を帯びてきて4小節ずつの交換へと2人の距離感が縮まる。そして、いつしかサンタナが仕掛けてマクラフリンが受け応える形となった2小節交換のステージへと進む。白熱したアイデアの交換は遂に1小節にまで縮まり、最高潮に達したところで「共演」となる。ここが、この演奏で最高にスリリングであり感動的な瞬間。

2人の徐々に間合いを詰めていく絶妙なやりとりを野球のキャッチボールに例えてみるのも面白い。最初は遠投でお互いの肩の強さや球筋を確かめる。それぞれのクセがわかったところで2人は徐々に間隔を詰めていき、最後は肩を組んで仲良く終了。サンタナが投げるクセ球系のボールをしっかりと受け止めて次にボールが投げ返しやすいように丁寧に返すマクラフリン。2人が野球選手だったらそんな楽しいキャッチボールができたに違いない。マクラフリンの技量だけでなく、懐の深さと優しさなくしてこの平和なバトルは成立しなかっただろう。

時にサンタナ(1947年生まれ)は20代半ばで、マクラフリン(1942年生まれ)は30歳を越えたばかり。ラリー・ヤングはマクラフリンより2年年上で、ダグ・ローチも20代半ばだ。そんな演奏者達の年齢からは想像できないくらいに、成熟を感じさせる世界が創り上げられていることには驚きを禁じ得ない。一聴した限りではカオスのような印象を与えるオープニングも、実は2人が辿り着くべき調和の世界ではなかったのかなと捉えてみたくもなる。



毎日のようにこの若き2人による「至上の愛」を聴いてみると、やはりコルトレーンの演奏も聴かないわけにはいかなくなる。CDは持っていないのでジャズを聴き始めた頃に購入したレコードに針を下ろした。購入してから40年くらい経っているのに盤面はピカピカでノイズも殆どないから十分に聴ける。ジャズ史に残る不滅のマスターピースは精緻でズシリと重く響く。サンタナとマクラフリンの演奏は1曲目のみを取り上げているが、原典版だと通して聴きたくなってしまうところはさながら4楽章構成のシンフォニーの趣がある。

参加メンバーでは、やはりエルヴィン・ジョーンズのドラミングが圧巻。たったひとりでポリリズムを刻んでいることなど、なにゆえに「神様」と讃えられているのかがよく分かる。私感だが、名ドラマーに共通して言えることは、ドラムをスティックで叩いているのではなく、楽器を魔法の杖で鳴らしているというふうにしか聞こえないこと。本当に不思議なのだがそんな印象を受けてしまう最右翼がこの人だと思う。4曲目で素晴らしいソロを聴かせてくれるジミー・ギャリソンの演奏も含蓄がある。このレコードもこれから時々聴くことになるだろう。

断絶の時代にこそ必要なのが対話と相互理解。ここで音楽が果たす役割は大きいと思う。なぜなら、自分の琴線に触れる音楽を創り、演奏する人達と仲良くなれない理由を見つけるのは難しいはずだから。サンタナはメキシコ出身でマクラフリンは英国出身。共演するミュージシャンも様々なバックグラウンドを持つ。サンタナとマクラフリンの演奏をギター奏法や音楽の創り方だけで論じるのはもったいないと思う。意見や主義主張が違っても、対話により相互理解が出来る。2人が中心となって展開する感動的な演奏にそんな奥義を感じる。

魂の兄弟たち (紙ジャケット仕様)
カルロス・サンタナ,マハビシュヌ・ジョン・マクラグリン
Sony Music Direct
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関東大学ラグビー・リーグ戦グループ2017(1部)第8節の試合結果

2017-11-21 01:22:50 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


■第8節(11月18日)の試合結果

11/18(土) ●中央大学 17-41 ○流通経済 江戸川陸上競技場
11/18(土) ●東海大学  5-12 ○大東文化 江戸川陸上競技場
11/18(土) ●関東学院 26-28 ○日本大学 山梨・御勅使南公園
11/18(土) ●拓殖大学 38-42 ○法政大学 山梨・御勅使南公園

小雨とはいえ、またもや雨模様となった週末の大学ラグビー。大詰めの第6ラウンドは江戸川陸上競技場と御勅使南公園(山梨)の2会場に分かれて4試合が行われた。

江戸川では優勝争いを演じる3チーム(東海大、流経大と大東大)が揃い踏み。第1試合では流経大が中央大に圧勝して1敗をキープ。また、第2試合では大東大が渾身のディフェンスで東海大の猛攻を凌ぎきり全勝をキープ。この結果、大東大は流経大と東海大に直接対決で勝利を収めたため、1試合を残して優勝がほぼ確定した。敗れた流経大と東海大は1敗同士で、最終節で2位を決める戦いに臨む。

山梨の御勅使南公園では熾烈なサバイバル戦が展開された。第1試合では日大が関東学院の追撃を振り切って2点差で勝利し2勝目を挙げた。また、第2試合では法政がこれも拓大の猛追を振り切って2勝目。この結果、拓大と関東学院に勝利している日大が一足先に6位以上を確定させて入替戦回避を決めた。一方、6戦全敗の拓大は7位以下が確定し入替戦へ。2勝で日大と並ぶ法政は、最終戦に勝利すれば中央大が敗れた場合に大学選手権出場決定の4位。逆に敗れると、関東学院が拓大に勝てば7位で入替戦出場となる微妙な位置。関東学院は、拓大に敗れると8位で入替戦、勝利しても法政が勝つと7位で入替戦出場となってしまう苦しい状況となった。





◆第8節終了時点での勝敗表



■最終節(11月25,26日)の試合予定

11/25(土) 法政大学 vs 日本大学 14:00 江戸川陸上競技場
11/25(土) 関東学院 vs 拓殖大学 14:00 小田原・城山陸上競技場
11/25(土) 大東文化 vs 中央大学 14:00 秩父宮ラグビー場
11/26(日) 流通経済 vs 東海大学 14:00 秩父宮ラグビー場

最終節の注目カードは2位、3位決定戦となってしまったが26日の流経大と東海大の激突。流経大にとっては、僅差ながらも東海大を破った大東大の戦い方が参考になるはず。組織的な対応が上手いチームなので、やや劣勢となることが予想されるFW戦を凌げば勝機が開ける。東海大に対してなぜか相性がいいことも味方するかも知れない。

もう一つの注目カードは江戸川の法政と日大の激突。勝てば(他力本願とはいえ)大学選手権への道程が開ける法政に対し、日大は入替戦回避を果たしている。、このことから前者のモチベーションが後者のそれを上回ることが予想される。しかし、圧倒的な攻撃力を持つ反面、組織ディフェンスに不安を抱えたままここまで来た法政に対し、日大は既に攻守ともに組織ができている。そして、目下2連勝中でチームのムードも上昇中という見方もできる。法政が仕掛ける序盤戦の猛攻に耐えた日大が先に得点を挙げると試合の行方はわからなくなる。

試合が成立すれば優勝が決まる大東大だが、有終の美を飾って中央に対する苦手意識(はもうないかも知れないが)を払拭したいところ。FW戦で劣勢が予想されることに加え、大東大の堅守を打ち破ることも並大抵ではないが、中央大が勝てば4位以内が決まるため一踏ん張りしたい。他力本願とはいえ、入替戦回避がかかる関東学院にとって拓大の後半の爆発力は不気味。何とか拓大のエンジンがかからないうちの前半に勝負を決めたいところ。逆に拓大は前半に失点しないことが最下位脱出のカギとなる。



■江戸川で観た2試合の雑感



第1試合、序盤戦は流経大が先制した後、中央大が攻勢に出るものの1PG以外の決定打が打てずに時間が経過。20分過ぎからは追加点を挙げた流経大のアタックに火が付き、中央大はディフェンスが翻弄されるがままの状態で3連続トライを奪われる一方的な展開となる。流経大が見せた巧みなパス回しは見事だった。

後半も3分、5分と流経大が立て続けにトライを奪ったところで中央大は大量失点を覚悟の展開となる。しかしながら、ここで流経大のアタックは謎の失速を見せる。前半の半ば以降に楽勝ムードが漂い始めた中でテンションに緩みがでたのかも知れないし、不運なミスも重なったところで中央大が2トライを挙げて勢いに乗る。しかし、いかんせん反撃開始が遅かった。

中央大の選手起用で疑問だったのは、ここまでスタメン出場を続けてルーキーながらキープレーヤーへと成長を遂げたSH成田が後半0分からの登場だったこと。流経大に緩みが出た(?)とはいえ、後半の2トライはテンポアップしたアタックから生まれただけにそんな想いに駆られた。



第2試合は優勝争いを演じる2チームの戦いに相応しい僅差の好ゲームとなった。序盤は攻撃力に勝る東海大の猛攻を大東大が自陣で粘り強く止め続ける展開。ファーストタックルが低く刺さり、ブレイクダウンでも寝込んでいる選手は皆無と言った具合に、常に数的優位を保ちながら組織で守り抜くディフェンスは見応え十分だった。大東大の堅守を打ち破るためにも、東海大は相手の組織が整う前にテンポアップして攻めたいところだったが、ブレイクダウンからボールを出すのにどうしても時間がかかってしまう。アタックに関しては、ここまでスタメンを務めてきたSOの金の欠場が響いたのかもしれない。

自陣で守勢に立っていた大東大だが、大雨の流経大戦に続き、この試合でも威力を発揮したのが大学随一との呼び声も高い強力スクラム。18分に自陣でのスクラムのプッシュからサインプレーをまじえた攻めで左サイドをこじ開けることに成功しWTB土橋がトライ。直後の東海大キックオフがダイレクトタッチとなるチャンスを活かし、センタースクラムでコラプシングを誘う。東海大ゴール前のラインアウトは相手にスティールされたかに見えたが、東海大選手が後ろに弾いたボールにFL河野主将が鋭く反応してインゴールでグラウンディングに成功。大東大の得点がこの僅か数分余りの12点で終わったことを考えると、東海大とってはキックオフに端を発した悔やまれるミスの連鎖だった。

その後も攻勢に出る東海大に対して、大東大の素早く前に出てプレッシャーをかけるディフェンスが機能して得点を許さない展開が続く。攻め手を失った形の東海大に焦りからのミスが目立ち、ウラに抜けても孤立させられて有効なゲインに繋がらないところが東海大ファンにとってはもどかしい。リーグ戦グループ屈指のランナーのひとり、WTBアタアタが2人、3人とタックラーをかわしてビッグゲインする状態は大東大にとって脅威だったが、本来ならアタアタはフィニッシャーとして機能させたかったところ。

ゴール目前での際どいタックルでトライをセーブするなど、大東大の堅守が光り東海大の得点は後半26分に挙げた5点。大東大のリードは僅かに7点の状況の中で、ゲーム終盤は大東大が自陣ゴールを背負いながらひたすら耐える展開。東海大はあと一歩が超えられないまま、試合終了のホイッスルが鳴かれ、見応えのある攻防に終止符が打たれた。

この試合は、正に大東大のディフェンスの勝利と言えるだろう。相手はリーグ戦随一の攻撃力を誇る東海大だからこそ価値がある。そして、今日も精神的な支えとして機能し続けた強力スクラム。後半は流石に東海大が修正して大東大はスクラムを押せなくなかった。しかし、穿った見方をすれば、押せなくなったと同時に押さなくなったと言えるかも知れない。スクラムで東海大FWを釘付けにすることにより、FWの展開力を削ぐだけでも効果がある。

後半はアマトが8単でしばしばゲインする場面があったことも(あえて)押さないスクラムの効果ではなかっただろうか。もし大東大優勝の立役者を挙げろと言われたら、スクラムだけでなく攻守共に最前線(文字通りフロントロー)で攻守共に身体を張り続けた第1列の3人を強力に推したい。とくにHOの平田は絶対に欠かせないキーマン。今後の戦いに向けて、殆ど皆勤賞を続ける彼らが負傷しないことを祈るのみだ。

高校ラグビーは頭脳が9割
斉藤健仁
東邦出版
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日本大学 vs 流通経済大学(関東大学リーグ戦G1部-2017.10.22)の感想

2017-11-13 00:41:44 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


第1試合が終わった後、しばしの沈黙の時間帯(グランド場が無人状態)が続くしらこばと陸上競技場。台風の接近にともなう雨だけでなく、風も強くなってきた。第2試合が終わった頃の状況を予想すれば、観客として一刻も早くキックオフして欲しいところ。車で20kmの距離ならまだしも、電車が止まってしまったら困る人もいるはずだから。たとえ15分でも試合開始を早める英断があってもいいような気がする。

第1試合終了後は空席が出た屋根の下の観客席に移動。第1試合前と比べても明らかにグランド場の水たまりの面積が増えた状態で、ようやく第2試合を戦う日大と流経大の選手達がピッチに登場。観戦気分が萎えかけている観客席とは違い、選手達は元気いっぱいなのが救いだ。パスもランも苦労を強いられるような状況なら日大にもチャンスがあるはず。ただし、この試合こそは序盤のアタックに注力している時間帯に得点を挙げるのが条件なのだが...



◆前半の戦い/日大序盤の攻勢も実らず、着実に加点した流経大がリード

前半は風下に立つ流経大のキックオフで試合開始。両チームともにボールが手に付かない状況ながら、今日も日大がスタートダッシュを見せ、序盤から流経大陣で攻勢に出る。しかし、22m内に入ってゴール前に迫ってから攻め手がなくなるのが日大の課題。ボールは保持できるものの、攻撃のテンポが遅くなる。FWは順目のアタックが基本で守備側は対応しやすいし、BKに展開するとかえって後ろに下げられるような状態。

日大の攻勢に後ずさりの流経大もなかなか自陣から抜け出せない状況。だが、日大が「決定打」を打てないことで0-0の均衡は守られる。ノックオンの応酬などドタバタの展開になることは致し方ないが、両チームともにパスを繋ごうという意欲が衰えないのは観ていて清々しい。しばしの日大のアタックを凌いだ後の10分、流経大はターンオーバーを起点とする切り返しから効率的にボールを動かし日大陣まで一気に攻め上がる。ボールキープしながらもゴール目前で攻めあぐむ日大とは対照的に、流経大はパスの緩急をつけるなどコンビネーションで相手を抜く方法がよくわかっている。



12分、流経大は日大陣ゴール前でのラインアウトを起点として、FWで順目にボールを動かしFL粥塚が先制トライを奪う。日大と流経大の得点力の違いがわかるアタックでもあった。しかし、この得点で日大の闘志が萎えるわけでは(もちろん)ない。16分には、流経大陣のゴール前でPKのチャンス。ここで、日大は意表を突くスクラムを選択する。ゴール前まで10mない位置なので押し切れるとの判断だったのかもしれないが、実際にスクラムを押して観客席をどよめかせる。日大は20分にもゴール前でマイボールスクラムのチャンスを得るがここも押し切れない。

そんな日大を尻目に流経大はまたもワンチャンスを活かして得点を挙げる。25分、自陣からのハイパントを確保した日大選手からボール奪取に成功。パスが絶妙のタイミングでフォローしたタナカ(ブランドン・ムゼケニエジ)に繋がり一気に日大陣のゴールラインに到達する。タナカはルーキーの時はしなやかなランナーのイメージだったが、一回り身体が逞しくなった印象。直後のキックオフではリーグ戦Gで随一のパワフルなランナー、ナエアタが負けじと存在感を示す。水たまりのあるピッチをものともせず、日大選手達のタックルを弾きながらゴールラインまで走りきった。

ナエアタは38分にもラインアウトからのモールを起点として連続トライ。序盤の日大の猛攻も何処へやらと言った感じで、流経大が24点のリードで折り返しとなった。取れるところで取らないと苦戦を強いられる日大のイメージを払拭できないまま時計が進んだ前半。本物のハリケーン(台風)が接近する中で、元祖ハリケーンズはこのままでは終われない(はず)。



◆後半の戦い/着実にトライを重ねた流経大に一矢報いるのがやっとだった日大

雨風共に強くなり、前半に比べても明らかにグランド上の水溜まりの面積が増えた状況の中で後半が始まった。ノックオンで頻繁にターンオーバーが起こるドタバタ劇も選手達を責めるわけにはいかないが戦いは続く。どんなコンディションでもパワーを発揮するナエアタは流石だが、流経大のFWにはもう1人ランでパワーを発揮する選手がいる。No.8を務める大西がその人で、ナエアタばかりに気を取られると相手チームは痛い目に遭う。7分にその大西がアングルチェンジによる絶妙のランで日大のディフェンスを切り裂きトライ。

スコアが31-0の流経大リードとなったところで、しばらくゲームはお互いに得点を挙げられない膠着状態となる。ただ、流経大が強くなる一方の追い風の助けも得て、殆ど日大陣で優位に試合を進める展開は変わらない。日大は頼みのスクラムも押せなくなり、自陣からの脱出は難しい状況となっている。19分の流経大の得点はそのスクラムを起点とするもの。パスアウトされたボールがCTBタナカからFL粥塚に繋がり、ラストパスがWTBの江上に渡った。



流経大は畳みかける。続く23分には日大ゴール前での相手ボールラインアウトで、後ろに流れたボールを確保に成功してトライ。このままでは本当に終われない日大は、PKから速攻で仕掛けたりと果敢に攻めるもののゴールラインは遠い。33分にはゴール前ラインアウトからモールを形成して攻めるものの、またしても得点に繋がらない。

日大が得点を挙げたのは残り時間が少なくなってきた38分だった。自陣での流経大ボールのラックからターンオーバーに成功してパスを繋ぎ、途中出場の大平が一矢報いた。この被弾で流経大に活が入ったのか、終了間際の41分にPKからの速攻で積がゴールラインに飛び込む。ファイナルスコアは50-7で、流経大がパワフルなランナー達の活躍もあり順当に勝利を収めた。



◆試合後の雑感/両チームのラグビーに見る積み上げの違い(第1試合につづくパート2)

流経大は1部昇格前から20年以上、一貫した指導体制でチーム作りがなされている。この点はライバルとして覇を競う東海大と同じ。ただ、東海大は堅実にチームを作り上げてきたのに対し、流経大は試行錯誤というか、チャレンジと失敗を重ねながらここまでチーム力を上げてきた。翻って、日大は阿多監督の後、指導者の交代の都度にチームの作り方が変わってきた経緯がある。奇しくも、コンディションの悪い試合で(上でも書いたように)細かいプレーのひとつひとつの違いが大きな差となって表れたというのがこの試合の印象。しかしながら、今シーズンは低迷状態にあった日大にもチームの骨格が見えてきたと感じる。流経大OBで現在は日大のヘッドコーチを務める伊藤氏が今後どのように色を付けていくかに期待したい。

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法政大学 vs 大東文化大学(関東大学リーグ戦G1部-2017.10.22)の感想

2017-11-08 04:06:17 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


雨に祟られる今シーズンのラグビー観戦。大東大の試合を観るのは熊谷Bの関東学院戦以来だが、2戦続けて雨模様となった。雨天の試合には雨天の試合の面白さがあるとはいえ、秋のラグビーは熱中症とも凍えるような寒風とも無縁の、爽やかな好天の下で観たいもの。そもそも秋にこんなに雨が降る状態で試合を観た記憶がない。

さて、この日の2試合は、埼玉県越谷市にあるしらこばと運動公園内の陸上競技場で行われる。実は自宅から車で20km以内と、熊谷ラグビー場よりも近い。陸上トラック付きとはいえ、コンパクトで観やすく出来ているので好印象。降り続く雨で水たまりも見られるような状況だが、芝生の状態も悪くはなさそう。近いという個人的な事情はさておいても、天気のいい日のラグビーも観てみたい。

台風の接近によりやや強い雨が降りしきる中、両校の選手達がピッチに登場。一部に屋根が付いた競技場だが、雨に濡れない場所はキックオフ30分前の段階で既に法政と大東大のファンで埋まっている。法政サイドの学生が陣取っている場所近く、後ろに観客がいない席で(普段なら御法度の)傘を差して観戦することにした。



◆前半の戦い/ぶれない法政のパスラグビーを堅守で凌いだ大東大

大東大のキックオフで試合開始。法政は自陣からもキックを使わずにいつもの展開ラグビーで攻める。雨にも拘わらず、法政の長短のパスにアングルチェンジをまじえたアタックは確実に迫力を増した感がある。しかし、降りしきる雨で水たまりもあるような状況では、自陣からキックを封印してのアタックを貫き通すのは難しい。好天ではビシビシ決まっていた法政の際どいパスも、結果的にノックオンに繋がりボールを相手に渡してしまうことになる。

2分、大東大は法政ゴール前でのラインアウトからモールを形成して前進。抜け出したアマトからのパスがフォローしたPR3の藤井に渡り難なくトライを奪う。GKは失敗するものの、大東大が幸先良く5点を先制した。その後も法政はキックを極力使わずにパス主体のアタックを仕掛けるが、大東大は積極的にアタッカーにプレッシャーをかける組織ディフェンスで対抗。後ずさりしながらも組織を崩さない粘り強いディフェンスで法政のミスを誘い、得点を許さないのは圧巻。



パス主体の法政に対し、大東大は自陣からはキックで敵陣に入る手堅いラグビー。そして、前に出たらパスを使って攻める。今シーズンの大東大で特筆すべきはスクラムの強さ。昨シーズンまでのように華麗なパス回しでアピールする場面は少ないものの安定した戦いが出来るチームになっている。とくにこの日のように強い雨が降るコンディションでは強力なスクラムは大きな武器になる。ノックオンが多い展開になるとスクラムが組まれる回数が多くなるから、相手ボールもマイボールにできるチャンスが増えるので。

ボールを確保し続けて大きく動かすラグビーが難しい状態の中で、5-0の大東大リードのまま時計がどんどん進んでいく。迎えた35分、大東大は法政の反則で得た法政陣ゴール前でのラインアウトのチャンス。FWでいったんボールを前に運び、ラックからアマトがボールを持ちだし、フォローしたLO佐々木にラストパスを渡す。大矢のゴールキックも成功してリードを12点に拡げる。前半終了間際の38分、大東大はアマトが自陣からのカウンターアタックで一気にゴールまで走りきりトライ。ゴールキックも成功して19-0と大東大はゲームをさらに優位に進める。

やはり、グランドコンディションは関係なく、強力なランにより法政陣まで確実にボールを運んでくれるアマトの存在は大きい。身体はさほど大きくないが、LOの佐々木も強力なランナーのひとり。また、常に戦陣を切って攻守両面に身体を張る最前列の3人など、大東大のFWの献身的とも言えるプレーが光る。法政でも逞しさを増したWTBの中井健人が突破力を披露して気を吐く。このまま大東大の19点リードで前半が終了した。



◆後半の戦い/さらに2トライを重ねた大東大の点差以上の圧勝

台風の接近にともない、雨脚が強くなる中で後半のキックオフ。水たまりの上でのブレイクダウンを見ていると選手達が気の毒になってくる状況でも試合が続く。スクラムで圧倒的に優位に立っていることもあり、後半は殆どの時間が法政陣内での戦いとなる。法政も前半に比べてキックを使うことが多くなるが、BK展開でのパスラグビーには厳しいコンディション。セットプレーなどFW戦で劣勢に立たされていることで殆ど攻め手がなくなる。

確実に敵陣で勝負することが徹底されている大東大。13分には法政ゴール前でのラインアウトからFWでボールを前に運びHO平田がゴールラインに到達。GKは外れるが大東大のリードは24点となる。大東大FWの前3人は強力スクラムの要であるだけでなく、攻守でも身体を張る献身的な働きを見せる。とくにHOの平田はボールキャリアーとして先陣を切る場面も多く、キャプテンではないが大東大FWの精神的支柱といった印象。アマトが自由に動けるのも、フロントスリーの働きがあるからだと思われる。



大東大は18分にも突破を試みる法政選手に強力なタックルを浴びせてボールを奪取し、そのままFB中川からFL湯川へと繋いでトライ(GK失敗で29-0)。爆発力のある法政といえども、降りしきる雨とグランドの水たまりが目立ってきた状況の中、残り20分あまりで30点を奪うのは厳しい。ここで勝負は決まった。

攻撃ラグビーを(宣言はしていないが)前面に掲げる法政はこのままゼロ封では終われない。残り時間が10分を切った段階で最後のアタックを試みる。まずは35分、大東大ゴール前でのラインアウトから4→7と素早くボールを繋いでこの日のファーストトライ。さらにほぼ残り時間がなくなった45分にも、後半34分からピッチに立ったSH根塚聖牙がゴール前PKからのクイックスタートでトライを奪う。リーグ戦屈指のスーパーブーツのひとり萩原が2つのGKを難なく決めて14-29で終了のホイッスルが吹かれた。

ファイナルスコアの29-14だけを見れば法政が健闘したように見える。しかしながら、後半の35分までは29-0。しかも大東大のゴールキック成功は5本中2本。法政が徳井とする展開ラグビーには厳しいコンディションだったとはいえ、強力なスクラムを武器に敵陣で試合を優位に進める大東大の点差以上の圧勝劇だった。



◆試合後の雑感/両チームのラグビーに見る積み上げの違い

青柳監督がチームを率いて5年目の大東大。去年までの4年間は初年度から抜擢したBKを中心とするメンバーの成長と共にチーム力を上げてきた。その中心メンバーの多くが卒業した5年目は苦戦が必至とみられていた。しかし、関東学院戦の感想にも書いたように、強力なFWを中心に据えた形のモデルチェンジへの布石は(実は)昨年度に打たれていた。元来は(法政とはまた違った)パスラグビーを指向するチームであるだけに、FWのセットプレーが安定すればより強力なチームが出来上がる。

大東大はディフェンスも粘り強くて失点が少なく、大学チームの中ではトップリーグのパナソニックに近いイメージがある。課題はFWのモールがアタック、ディフェンスともに他のチームに比べて物足りないことだが、練習で解決できると思う。毎年選手が入れ替わる大学ラグビーだが、選手の特徴を見据えて強力なチームを作り上げることは指導者の醍醐味。今年よりも来年の期待があるチームは見ていて楽しい。

攻撃ラグビーに活路を見いだした感がある法政もようやく低迷状態から脱し、選手が自信を持ってラグビーに取り組んでいる状況が見えてきたのが大きい。観るものがわくわくするような魅力的なラグビーチームがすぐに出来上がることは法政ならではと言える。であるだけに、ここ10年近くチームの低迷状態(と言っていいと思う)が続く状況が不思議でならない。また、ここが一貫した体制でのチーム作りが成されている大東大との大きな違い。今は突貫工事のような状態で攻撃ラグビーに取り組んでいるように見えるが、組織ディフェンスなど総合力を上げていくためにも(今度こそ)指導体制の安定が望まれるところ。

しかし、法政で一番気になるのは、チームが一丸となって強くなろうとする体制にあるかということだ。この日は法政の部員達が陣取る位置の右側での観戦だった。各チームともトライシーンではお祭りになることが珍しくない。トライが終盤の2つのみと寂しい状態ではあったが、それ以外の時間帯でもチームメイトからの叱咤激励などの声援があってしかるべき。と思うのだが、不思議と左側からの声は殆ど聞こえてこなかった。もちろん冷静な観戦者達でもいいのだが、普段一緒に練習に「取り組んでいる仲間なら自然発生的に声が上がるはず。取り越し苦労であればよいのだが。

ラグビーマガジン 2017年 12 月号 [雑誌]
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地球の音を聞く 『柳川貴司展』のご案内(1017.11.6 - 11.18)

2017-11-06 23:02:38 | いろいろ何でも雑記帳


ぬくもりのある木を素材とした、ユニークな立体アートを手がける彫刻家の柳川貴司さん(東海大学講師)の新作展が東京・銀座で開催されています。

【期間】 2017年の11月6日(月)~11月18日(土)

【時間】 11:00~19:00(最終日17:00まで、12日の日曜日はお休み)

【場所】 ギャルリー志門  東京都中央区銀座6-13-17 新保ビル3F tel 03-3541-2511



見る角度により様々なイメージを呼び起こしてくれる豊かな創造性は、柳川アートの真骨頂。丸太の丸みを生かした寄せ木法による彫刻作品は、観る者の心の中にじわりと染み込んでいくような抱擁力があります。

また、柳川さんは熊谷ラグビー場近郊にお住まいで大のラグビーファン。お洒落な場所にあるアーティスティックな空間で、ダイナミックなラグビー談義に花を咲かせるのも一興かと思います。

◆2014年の作品から





◆2012年の作品から









◆2010年の作品から



◆2008年の作品から



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