「熱闘」のあとでひといき

「闘い」に明け暮れているような毎日ですが、面白いスポーツや楽しい音楽の話題でひといき入れてみませんか?

春はYC&ACセブンズから/第57回大会は4月3日に開催

2016-03-17 21:39:06 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


例年なら今の時期はスポーツネタから消えてしまうラグビー。しかし、今シーズンはスーパーラグビーに参戦したサンウルブズのおかげで春から充実したラグビーライフを満喫。恒例の東京セブンズがなくなったのは残念だが、その代わりにシンガポールと争って手に入れたものが(実は)宝物だったということだろうか。

しかし、だからといって春のセブンズの楽しみが減ったわけではない。YC&ACセブンズを皮切りに東日本大学セブンズ(4/10)、関東リーグ戦Gセブンズ(日程未定)としばしの間だが花盛りの状態になる。とくに関東の大学チームにとっては、春シーズンが目前に迫っていることもあり、YC&ACセブンズからがスタートのチームは一足早く春の開幕を迎えることになる。

さて、先だって今年で57回目を迎える本大会の開催日と出場チームが発表になった。YC&ACより招待された16チームは以下の通り。

・青山学院大学(関東大学対抗戦G)
・中央大学(関東大学リーグ戦G)
・北海道バーバリアンズ(クラブチーム)
・釜石シーウェイブズ(トップイーストリーグ)
・神奈川タマリバクラブ(クラブチーム)
・慶應義塾大学(関東大学対抗戦G)
・日本IBMビッグブルー(トップイーストリーグ)
・日本大学(関東大学リーグ戦G)
・PSIスーパーソニックス(クラブチーム)
・流通経済大学(関東大学リーグ戦GI
・サムライセブン(クラブチーム)
・湘南ベルマーレ(クラブチーム)
・東海大学(関東大学リーグ戦G)
・筑波大学(関東大学対抗戦G)
・早稲田大学(関東大学対抗戦G)
・YC&AC(クラブチーム)

近日中に出場メンバーも発表になると思うが、「サプライズ」があることがお約束事なのがこの老舗大会の大きな魅力。現役や元日本代表、そしてもしかしたら世界のスター選手まで、どんな選手が登場するかが本当に楽しみ。大学生なら新戦力のデビューがありし、前々回大会の専修大学のようにこの大会で掴んだ自信を1部リーグ昇格に繋げたチームがあったりと強化の意味でも侮りがたい大会になっている。目下3連勝中の流通経済大学の4連覇成るか?など興味は尽きない。最近は大学生の戦力アップで迎え撃つ形になる社会人チームもベテランならではの巧さで勝負したいところ。

■楽しさ満載のイベント/優勝チームは全員で祝福したい

大会のキックオフは午前9時。クイズやアトラクションなど、楽しいイベントも用意されていて最後までたっぷり楽しめる。ただ、この大会に限らず、セブンズの常として、トーナメント戦で敗れたチームはどんどん会場を去って行く。その結果、一番盛り上がらなければならない決勝戦が、応援風景の面でとても寂しい状態になってしまう。大学チームも他のチームをじっくり観るいい機会だからテントは片付けても残っていて欲しいところ。理想論かも知れないが、優勝チームを当日グランドを訪れたファン全員が祝福するような雰囲気を一度は味わってみたいものだ。

日本ラグビーの歴史を変えた桜の戦士たち
ラグビーW杯2015日本代表 全31名,リーチ マイケル,三上 正貴,稲垣 啓太,堀江 翔太,木津 武士,畠山 健介,山下 裕史,湯原 祐希,トンプソン ルーク,大野 均,アイブス ジャスティン,伊藤 鐘史,真壁 伸弥,マイケル・ブロードハースト,ツイ ヘンドリック,アマナキ・レレィ・マフィ,ホラニ 龍コリニアシ,田中 史朗,日和佐 篤,小野 晃征,立川 理道,田村 優,クレイグ・ウィング,マレ・サウ,松島 幸太朗,山田 章仁,カーン・ヘスケス,福岡 堅樹,藤田 慶和,五郎丸 歩,廣瀬 俊朗
実業之日本社
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

サンウルブズ第2戦/初勝利ならずもより深まったチームへの愛

2016-03-13 21:59:32 | 頑張れ!サンウルブズ


緒戦でスーパーラグビーで戦えるという確かな手応えを感じさせたサンウルブズ。その第2戦は第2ホームの位置づけのシンガポールでチーターズ(南アフリカ)と戦った。1週間のブレイクはあったとは言え、対戦相手もサンウルブズ侮り難しとみたはず。初勝利が挙げられれば嬉しいとは思いつつも、この試合もどこまで戦えるか、そしてバックアップメンバーも戦えるレベルにあるのかなどが私的見どころだった。

しかし、サンウルブズはまたしても期待をいい方に裏切ってくれた。前半だけでハットトリックを達成した山田の3つのトライはどれもビューティフルな。この一連のトライはスーパーラグビーに新風を吹き込んだと言ってよさそうだ。先だっての拙ブログでの「サンウルブズは日本のラグビーを変える」は願望に近い応援メッセージだったが、前半の戦いぶりを観て「日本」を「世界」に置き換えたいくらいの気持ちになった。後半は悪い流れを断ち切れず、残りあと10分ということころで逆転を許して力負けとなったが点差は僅か1点。ますますサンウルブズへの期待は高まったのだった。

■前半の戦い/持ち味?の速さと柔らかさで強豪を圧倒したサンウルブズ

実はスーパーラグビーを真剣に見始めたのはつい最近のことだ。開幕から第2節までの試合をいくつか観て、ジャガーズのような個性的なパス回しで勝負するチームがあるものの、全般的にパワフルでガチンコのラグビーが支配的というのが率直な感想だった。だから、サンウルブズはこの激しさの中で戦えるのかが大きな不安材料だったし、そもそも自分達の「色」を出すことすら難しいのではと考えていた。もっともハメットHCが率いる多国籍軍のラグビーが目指すラグビーが「日本のラグビー」になるのか?という捉え方をするファンも多いだろうけど。

しかし、WTB山田選手の3連続トライを観て、このラグビーが世界にアピールする要素は十分にあると感じた。いや、それ以上に、サンウルブズがスーパーラグビー(SR)に参入した意義はあったとすら思った。世界最高峰とされるリーグへの参入は、2019W杯(日本開催)を見据えて日本代表強化することが大義名分であり、それはあながち間違いではないと思う。SANZARのアジア市場開拓とジャパニーズマネーへの期待だってあっただろう。しかし、そんな「一方通行」ではなく、日本生まれのチームがSRに逆にラグビーの内容でインパクトを与える可能性だってあることを(私だけかも知れないが)感じたことに驚きを禁じ得ない。

前半のサンウルブズでとくに印象に残ったのは、速いテンポでボールを柔らかく丁寧に動かすことでトライを重ねたこと。HB団がサントリーでコンビを組んでいる日和佐とピシということもあるが、オフロードやキックパスをまじえ、ワイドにボールを動かすラグビーは圧巻。もちろんそのラグビーが出来るのは仕事人が揃ったFW第3列の3人(デュルタロ、モリ、カーク)のパワフルな中にも献身的で堅実な働きがあることが見逃せない。もちろんチームに不足している部分はあるが、しっかりボールをインゴールまで持ち込むことができていたことは、緒戦より明らかに進化した点と言っていいだろう。遠い先(下手をすれば来年になるかも知れない)と思われていた初勝利がすぐ手が届くところまできている。そんな印象を抱いた人も多かったのではないだろうか。

■ミスに泣いた後半/勝てなかったことが大きな収穫

後半は流石というべきかチーターズがFW1列の選手を替えるなど建て直しを図ってきた。サンウルブズは開始早々のPGでさらにリードを拡げて幸先よいスタートを切るものの、相手FWの重圧とHB団の巧さと強さの前に前半に見せたようなアタックもできない状況になっていく。49分と54分にディフェンスミス等であっさりトライを奪われたことで試合の主導権は完全にチーターズに傾いた。新参チームゆえ、いったん流れが悪くなると建て直しが難しくなってしまうことが(わかってはいても)歯がゆかった。リザーブメンバーにインパクトプレーヤーが欲しいところだが、限られたメンバーである以上、これも致し方ない。

とはいえ、暑さもあってか、相手もミスが多かったのでサンウルブズにも建て直しのチャンスはあったと思う。とにかく追加点が欲しかったし、そのチャンスもあった。それゆえに、さほど難しくないPGを2本連続で外してしまったことが残念。5本目までのピシのGKが完璧だったので、1本の失敗の後ももう1本蹴って欲しかったところ。さらに前半から奮闘していたカークが残り10分というところでシンビンによる退場になってしまったことも痛かった。相手に試合の主導権が移ったところでも粘り強いディフェンスで何とか失点を食い止め続けたサンウルブズだったが、赤道直下の地の暑さによる消耗は想像を超えるものがあったに違いない。初勝利はお預けになってしまったが、7点差以内敗戦の場合に与えられるボーナスポイント1を獲得できたことは大きかったと思う。

■タイトなゲームだったからこそ見えた課題

本試合に限らず、今後の戦いを見据えた上でもサンウルブズが抱える大きな課題のひとつは23名のメンバー全員でパフォーマンスを落とさずに戦えるチーム作り。第2戦は勝利が現実味を帯びたタイトな試合になったため、選手交替のタイミングも難しかったと思う。しかし、難しい試合は実戦でチーム力を上げて行かざるを得ないサンウルブズにとって、むしろプラスと捉えるべきだろう。殆ど後半を任されたLO細田は貴重な高さを持っている選手だし、PR浅原も学生時代の印象は意外に身軽で運動量が多い選手だった。SH茂野も一度はスタメンでピシとのコンビで見てみたい選手。

あと、もうひとつ気になったのは、後半のように流れが悪くなったところでのチームの建て直し。方法としては、我慢して堪えること、相手のミスに乗じた切り返しで形勢挽回を図ること、後半の体力的にきつくなったところでも規律を保つことなど。ただ、勝利に繋げるための戦い方を高いレベルのリーグで経験できることをプラス思考に精神的にもタフなチームに成長して欲しいところ。苦しい戦いは続いても、選手達は経験を積んでレベルアップ出来る場に参加したことに対して誇り持っていいと思う。

■サンウルブズは世界のラグビーを変える

サンウルブズとともに新加入したジャガーズ(アルゼンチン)が同国代表チームをベースとしたラグビーでスーパーラグビーに新風を吹き込んでいる。しかし、ジャガーズとはちょうど地球の裏側に位置する日本から参入したサンウルブズだって負けていないと思う。チーターズ戦の前半で見せたFW第3列主体のパワーをベースに、速さと柔らかを兼ね備えた鮮やかなボール回しでトライを奪うプレーがコンスタントにできれば世界中のラグビーファンに「日本製」の質の高さをアピールすることだって可能なのだ。

たとえ1チームでも「世界」と繋がることで自身のパワーアップと同時に、持ち味もアピールするチャンスを得たことは日本のラグビーにとって計り知れない出来事だと思う。疑心暗鬼から始まったサンウルブズに対する想いだが、夢は徐々に広がり、そしてチームへの「愛」は深まる一方だ。

スーパーラグビー2016 COMPLETE GUIDE (NSK MOOK)
クリエーター情報なし
日本スポーツ企画出版社
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

目指せ!世界最強チーム/サンウルブスは日本のラグビーを変える(その2)

2016-03-08 23:04:48 | 頑張れ!サンウルブズ


新参のサンウルブスがスーパーラグビー(SR)で戦えそうなことがわかったのがデビュー戦となったライオンズ戦の大きな収穫。ただ、他のチームの試合、例えばワラターズ対レッズ戦を観たら、ビデオの再生速度が1.2倍くらいになったかのような錯覚を覚えたことも事実。速いだけでなく、ミスをしないから手が付けられない。これから多くの選手にとって未体験ゾーンとなる長丁場に突入するサンウルブスだが、主力メンバーが故障したらどうなってしまうのかといった不安が頭をよぎる。

しかし、たとえどんな状態になってもここ(SR)で試合ができることが大切なのだと思う。強豪や名門と言われるプロチームとは違ってゼロからのスタートだが、選手達が前を向いて戦い続けることで勝利をもぎ取り、名声やビッグマネーを掴み取っていくような夢もある。日本代表の強化がチーム発足の大義名分のひとつにあったとはいえ、それは(結果が出ないことに対する)言い訳に出来ないことをおそらく選手達もわかっているはず。日本のラグビーでは初めてのプロチーム誕生にあたり、反骨精神と向上心をバネに結集してビッグになろうとしているチームの成長をリアルタイムで見届けていけたらファン冥利に尽きると思う。だから、チームのスローガンは「目指せ!世界最強チーム」であって欲しい。

■サンウルブスは3週間にして成らず

繰り返しになるが、サンウルブスがごく短期間で「チーム」になったことには驚きを禁じ得ない。堀江選手が主将としてチームに加わってことが大きかったことは間違いないとしても、それだけではないはずだ。身体能力のみならず戦術理解度も高い選手を統率力のあるリーダーが束ねることで効率よく「チーム」を作ることも不可能ではない。約束事が多いラグビーのスポーツとしての醍醐味の1つがここにあると言えるかも知れない。

サンウルブスが戦えるチームとして船出できたことの要因として「トップリーグ効果」があったことも挙げておく必要があるだろう。主として南半球からはるばる海を越えてやって来た世界トップレベルの人材が日本のラグビーや選手達に与えたインパクトには計り知れないものがある。選手だけではない。多くのトップリーグのチームで海外からやってきた一流の人材が、世界の最先端の戦術をもたらしてくれている。だからこそ、日本の選手達にも「世界のラグビー」を理解する素地が育まれてきたと言える。

さらに、チームに普通に外国人選手が加わっていることも大きいと思う。現代のラグビーは、アタックもディフェンスも選手間のコミュニケーションが上手く取れていないと効率よく動けずパフォーマンスは確実に落ちる。阿吽の呼吸は通じず、意思伝達が難しい選手同士でプレーするからこそコミュニケーション能力を高める必要があった。サンウルブスに参加した選手には初めて日本でプレーする選手も居るが、意外に早くチームに溶け込めているように感じられた理由もそこにあるような気がする。

■このままでは「オジサンウルブス」の危機も

ラグビーマガジン4月号の別冊付録「スーパーラグビーガイド」を眺めていてひとつ気になった事がある。どう見てもサンウルブスのメンバーの平均年齢が他のチームに比べてかなり高いのではないかということ。実際に25歳以下のメンバーを数えてみたらやっぱりそうだった。最小人数はやはりサンウルブスで10人。それに次ぐのがワラターズの15人、シャークスとブランビーズの16人、キングズとジャガーズとフォースが18人、ライオンズが19人となる。

残り10チームは20人以上が名を連ね、しかも20歳そこそこの選手も多い。日本の大学なら上級生、トップリーグなら加入1~2年目くらいの年齢の選手達が世界のトップレベルで揉まれていることがわかる。スーパーラグビーは南半球の若いラガーメンを結集して運動量が豊富でチャレンジ精神旺盛のアタッキングラグビーを追求しているとも言えそうだ。チームによるとはいえ、ベテランが常に若手選手のチャレンジを受けているリーグとも言える。

そう考えると、同年代の日本の選手達のことがどうしても気になる。大学生なら上級生としてチームの軸になっているから、代表メンバーにでもセレクトされない限り海外に出て経験を積むことは難しい。トップリーガーにしても、ベテランや外国人選手の厚い壁を打ち破って公式戦に出場することは並大抵ではないはず。そもそもが20歳そこそこの有力選手を集めて海外遠征をする「日本A代表」のようなチームが結成される機会も少ない。若手有望選手達は、高い志を持っていても、試合数が少ないことと国際経験を積む機会がないことの2つの空洞化に悩まされているという現実が浮かび上がってくる。

■日本ラグビーの発展はサンウルブスとともに

サンウルブスへの期待が膨らむ一方で、2019年を見据えた場合に今まで先送りにされてきた積年の課題の解決に迫られる自体も増えていくだろう。しかし、それは新たなチャレンジがあるからこそ出てくるもの。そんなことを考える機会すらなくなっていたかも知れないと思うと喜ばしいことと言える。もう半世紀近くラグビーと付き合っている(気持ちだけは若い)オールドファンの端くれとして、試合観戦を通じて選手達に応援メッセージを送るという形で助力をしていければと思う。

Number(ナンバー)896号 SUPER RUGBY 2016 スーパーラグビー開幕 (Sports Graphic Number(スポーツ・グラフィック ナンバー))
Number編集部
文藝春秋
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

目指せ!世界最強チーム/サンウルブスは日本のラグビーを変える(その1)

2016-03-04 00:44:08 | 頑張れ!サンウルブズ


「世界最高峰のリーグ」としてあくなきアタッキングラグビーを持ち味とするスーパーラグビー(SR)に日本から初めて参入を果たしたサンウルブス。一時は「幻のチーム」に終わることも懸念されたが、先週土曜日に秩父宮ラグビー場で行われた開幕戦で日本のラグビー史に歴史的な1ページを切り拓いた。7月までほぼ毎週のように試合が行われ、シンガポールから南アフリカまでが戦いの場となるSR。前途に待ち受ける幾多の苦難を乗り越え、日本のラグビーに変革をもたらしてくれることに大きな期待を込めて応援メッセージを送りたい。

■常識を超えた(外れた)チームの鮮烈なデビュー

「スーパーラグビーに日本から1チームの参入が決定」の報を聞いて、待望のプロチームが誕生するという喜びよりも、「本当に大丈夫なのか?」という想いが強く頭をよぎった。社会人のトップリーグに世界のビッグネームが続々とやって来るような状況になっているとは言え、日本のチームが世界でまともに戦えるとは到底思えないというのが多くのラグビーファンの偽らざる気持ちだったと思う。その大きな理由として、あの歴史を変えた南アフリカ戦に至るまでの日本代表のW杯での(惨憺たる)戦績を挙げれば十分過ぎるくらいだろう。

いざ参入が確定してからもファンにとっては疑心暗鬼のような状態が続いた。チーム名は「サンウルブス」と何とか決まったものの、メンバーやヘッドコーチなどの体制発表は遅れに遅れて昨年の12月。撤退も噂された中で、「歴史的な大勝利」がなかったら本当にどうなっていただろうか。その間にもチームに加わることが期待された日本代表メンバーがひとり、またひとりと他のチームと契約を交わしていく。年が明けてからもなかなか正体を現さないサンウルブスに対してファンはヤキモキするしかなかった。そもそも実体がなければファンになれるはずもないのだが。

そんな悲観的な状況が続いた中で、日本代表の中軸メンバー堀江選手がキャプテンとしてチームに加わることが発表されたことは朗報だった。それでもチーム練習が始まったのは2月に入ってからで、残り1ヶ月もないなかで世界最高峰のリーグで戦うことになるチームとは思えないような状況は続く。不安が解消されない中、開幕2週間前に組まれたのがトップリーグ選抜チームとの練習マッチだった。予想外と言っては失礼だが、スクラムの崩壊など厳しい状況はあったにせよ、短い準備期間でよくぞここまでというところまでは来ていたことで何とか望みが繋がった。

とはいえ、2月27日のデビュー戦はぶっつけ本番に近い状態であったことは間違いない。どこまでチーム状態が上がっているかに期待と不安が交錯した状態でキックオフを待った。予想通りといっては失礼だが、スクラムが崩壊した段階で天秤は不安の方に傾いた。しかし、まずはディフェンスで健闘。アタックでも敵陣深くまでなかなか攻め上がることができないまでも継続は出来ている。そして先制点を挙げたのはPGだったがサンウルブスだった。日本でもお馴染みのヤンチースのGKが不調だったことにも助けられはしたが、前半を終わっての6-12は想定外。相手のアタックにどこまで堪えることが出来るかが見どころだったはずなのに、もしかしたら初勝利があるかも知れないというところまできてしまったのは嬉しい誤算だった。

相手のライオンズははるばる南アフリカからやって来て時差ボケと疲れがあるところで緒戦を迎えた。随所でSRチームらしい強さと速さを活かしたアタックを見せたとは言え、ミスに助けられた面は確かにある。しかし、後半は流石というプレーを見せ始めてもいた。何よりも素晴らしいのは、フェイズを重ねられても致命的なゲインは殆ど許さないこと。サンウルブスも大負けはなくても勝利も厳しいという状況に追い込まれていく。しかし、このチームには今までの日本のチームにはなかった力がある。そんなことを感じさせたのが、自陣ゴール前の反則でスクラムを選択された場面だった。

ここまでのスクラムの出来から見たら、誰もがゴールラインまで押し込まれての失点を覚悟した場面。ペナルティートライやFW第1列の誰かがイエローカードをもらうかも知れないといった状況だったが、低い姿勢で耐え抜いて逆に相手を押し込み反則を誘うまさかの展開。TV観戦だったが、ファンの熱狂が最高潮に達したことは十分に伝わってきた。そして堀江主将の嬉しい初トライも生まれる。まだまだ連携が上手くいかずに前後半で4トライを奪われてしまったが、13-26の最終スコアにはおそらく主催者のSANZAARも胸をなで下ろしたに違いない。

■サンウルブスのお陰で世界と繋がった日本ラグビー

試合全般を通して感じたのはやはり堀江主将の卓越したキャプテンシーだった。おそらくこの選手がチームに加わらなかったら1ヶ月にも満たない期間でチームが纏まることは亡かったのではないだろうか。先だってのW杯で活躍したPR稲垣と垣永、LO大野、SH日和佐、CTB田村と立川、WTB山田らは流石というプレーを見せたし、W杯組では内WTB笹倉も体幹の強さを活かしたキャリーで健闘した。PR三上と山本、HO木津、LO細田、SH茂野らの交替出場選手達はもう少し長くピッチに立って欲しかったが、タイトな試合となったので致し方ない。今後の戦いではバックアップメンバーの役割が重要になってくるはずだからどんどんプレーでアピールして欲しいところ。

上で挙げた日本人選手の活躍もさることながら、この試合でより強く印象に残ったのは本当に短い時間でチームにフィットした外国人選手達だった。LOボンド、SOピシとFBフィルヨーンは日本で活躍した実績がある選手達だから当然として、驚きはモリ、デュルタロ、カークで固めた仕事人揃いのFW第3列の選手達。しばしばボールキャリアとして活躍したデュルタロは15人制とセブンズの両方でアメリカ代表に選ばれているが、実は白鴎大に留学していた選手。サンウルブズからの誘いに「日本のチームでSRにチャレンジできるのなら」と熱い気持ちを胸に太平洋を渡ってきてくれた選手。こんな話を聞くとホントに涙が出てくる。堀江主将の存在が大きいとは言え、異なったバックグラウンドの選手達が短時間の間に纏まることができるのはラグビーの醍醐味だ。

試合終了のホイッスルが鳴った後、両チームの選手達が健闘を讃え合う。国際マッチ、国内の試合を問わず当たり前のことだが、W杯やテストマッチといった国同士の戦いとは違った雰囲気が垣間見えた。そうか、これがラグビーのクラブチーム同士の戦いなんだなと思った。ピッチ上では激しいファイトの相手でも、いったん試合を離れればチームは違っても最高のプレーヤーを目指す言わば同志。普段の激しい練習に対するお互いのリスペクトがあるからこそ、健闘を讃え合えるのだと素直に感動した。ようやく日本もサンウルブスを通して「世界」に繋がることができたことを実感した爽やかな幕切れだった。「幻のチーム」にならなかったことを率直に喜びたい。(続く)


ラグビーマガジン 2016年 04 月号 [雑誌]
クリエーター情報なし
ベースボールマガジン社
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

寛ぎの午後を弦楽四重奏で(2)/ジオカローレで見つけたベートーヴェンとシューベルトの魅力

2016-03-02 01:44:19 | 地球おんがく一期一会


ここ数年ですっかりマイブームになったのが弦楽四重奏を聴く愉しみ。昨年2月24日のブログに書いたとおり、ひょんなこと(朝ドラのついでに録画した『クラシック倶楽部』)がきっかけで室内楽の面白さを知ることとなり、なかでも「最大人数のソロ楽器にして、最少人数のオーケストラ」と自認しているこのフォーマットにより惹かれるようになっている。

そんなとき、タイミングよく出逢った弦楽四重奏団が「ジオカローレ」だった。普段はなかなか聴けない曲がプログラムに載っていたこともあり、楽しい午後のひとときを過ごすことができた。この思いがけない出逢いは、弦楽四重奏への興味関心をより高めてくれたという意味でも忘れられない思い出となった。

それからもうすぐ1年が経とうとしていたある日、リーダーの方(同窓の友人のお嬢様)から演奏会の案内が届いた。演奏会場は前回と同じくJR東神奈川駅近くにあるカナックホール。客席が500人程度と小振りだが音響もよく、室内楽には最適なホールだと思う。とくに演奏者の表情を垣間見つつ演奏を聴くことが出来るのが室内楽の醍醐味なだけに、座席とステージが近いのはとてもありがたい。

さて、今回は第10回記念演奏会とのことで、1曲目はベートーヴェン、2曲目はシューベルトというオーソドックスなプログラム。今年はどんな珍しい曲が聴けるだろかという期待には封印をし、巨匠の曲をじっくり味わうことに気持ちを切り替えて演奏会の日(2月20日)が来るのを待った。ベートーヴェンもシューベルトも交響曲を中心に幼少期からずっと親しんできた作曲家ではあるが、弦楽四重奏曲は殆ど聴いてこなかったから。

そして当日。都内で用事を済ませて急ぎ足で演奏会場へ向かう。何とか開演10分前に滑り込みセーフで客席に潜り込むと既に中央の席は殆ど埋まっている。左側の席に落ち着いたらちょうど学友とバッティングした。「最近はヴィオラを中心に聴くようにしていますよ。」と話したら、「今年はヴィオラ奏者が楽器を替えたので期待して下さい。」との返答。それは楽しみ!と思いながら開演を待つ。程なくして4人がステージに現れ、いよいよ開演。

♪ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第11番ヘ短調『セリオーソ』作品95

『セリオーソ』は4楽章形式ながら演奏時間が20分余りのコンパクトに纏まった曲。しかしながら、情熱と沈思、激しさと穏やかさといった対立的な要素が集約された密度が濃い曲だった。上でも書いたように交響曲とは違って弦楽四重奏曲は殆ど聴いていなかったので、新鮮な気持ちで楽しむことができた。ジオカローレの集中力の高い演奏に魅了され、とくに第2楽章が素晴らしかった。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲への興味が一気に高まったのが嬉しいし、近いうちに全集のボックスセットを手に入れることになるだろう。

♪シューベルト 弦楽四重奏曲第14番『死と乙女』D810

シューベルトはベートーヴェンとはうって変わって、激しい情熱や強い自己主張とは違った趣きのロマンティシズムが魅力の作曲家。とくに、この曲のように全楽章が短調で貫かれた、暗い曲想になってしまいがちの曲の場合はじっくり聴かせるのが難しいところがある。しかし、聴き込めば聴き込むほどに味わい深くなるのがシューベルトの魅力とも言える。ちょうど対角に位置する第1ヴァイオリンとチェロの対話などに耳を傾けているとよりそんな想いを強くしたのだった。

♪フィナーレは「思わずニンマリ」のサプライズ・プレゼント

シューベルトの大曲がメインとはいえ2曲だけで終わってしまうのかなと思っていたら、ちゃんともう1曲、正確に言うともう1組用意されていた。会場を訪れた2月生まれの人達への心のこもったプレゼントとして『ハッピー・バースディ・トゥ・ユー』が演奏された。しかし、お馴染みのスタイルで演奏されたのは始めだけ。あとはハイドン風、モーツァルト風、ドヴォルザーク風など様々に様相を変えた、時間と空間を超えた祝福の宴が続く。終盤にはタンゴ風まで登場して、最後はハンガリー風で締め。本当に楽しかった。

ということで、今年も寛ぎの午後は終了。はたして、次はどんな曲を聴かせてくれるのだろうかと、つい期待してしまう。今年は(お馴染みだったはずの)ベートーヴェンに対する新たな発見があったし、シューベルトの弦楽四重奏曲には交響曲とは違った面白さがあることにも気づかされた。自分自身の弦楽四重奏に対する興味関心もさることながら、ジオカローレが今後どのように成長していくのかを楽しみに来年のこの日が来るのを待っていようと思う。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする