夏休みの友、ペルセウス座流星群
ペルセウス座流星群は、133年周期で周回しているスイフト・タットル彗星が残していった物質の中に、公転中の地球が突入するために発生します
例年だと、7月20日から8月20日の間頃に出現し、8月13日にピーク(極大日)を迎えます。
今年は、12日夜半から13日明け方が見頃のようですが、月齢が21(下弦の月)で、正中時刻が13日3時59分なので、明るい条件下での観察になります
ペルセウス座流星群は放射状に流れ、その中心を「放射点」と呼びます。放射点とは、遠近法でいうところの消失点のことです。
放射点近くから出現する流星は尾が短く、放射点から離れた位置の流星の方が尾が長くなります
ですので、放射点を じ〜っと凝視しているよりも、視野を広くして待っている方がダイナミックな動きの流星に出会えるということになります。
では、どのあたりに顔を向けていればよいのか。まあ、ペルセウス座流星群というのですから、ペルセウス座のあたり(=北東の空)なわけですが、やっぱり「放射点」の位置を知っておきたいという気持ちもあります。
手持ちの写真で説明すると、水色の位置が放射点です(写真画像なので歪曲収差があります)。カシオペヤ座が見つかれば、大体の見当はつきそうですね。
この写真は3月に撮影したものです。ペルセウス座流星群が出現する8月には、上下がほぼ逆転して、カシオペヤ座が高い空に馭者座が低い空にあります
いつものように、球面幾何学を使って、ペルセウス座流星群の放射点の位置を計算してみましょう。
(1)カシオペヤ座のδ星ルクバーと馭者座のα星カペラから探す
放射点は、カシオペヤ座のδ星ルクバーと馭者座のα星カペラを結んだ直線上にありそうです。
ルクバー、カペラ、「放射点」の位置(それぞれ点A、点B、点Cとします)は、赤径αと赤緯Decを用いて、以下のように表されます(元期 J2000.0)。
点A ルクバー:(01h 25m 48.95147s, +60° 14′ 07.0225″)
点B カペラ:(05h 16m 41.35871s, +45° 59′ 52.7693″)
点C 「放射点1)」:(03h 04m, +58°)
1) Patrick Moore and Robin Rees: Patrick Moore's Data Book of Astronomy (2nd ed.), p.275, Cambridge University Press, 2011.
ルクバーとカペラを結ぶ直線(=天球上の大円)は、大円G1の方程式を
とおくと、【基本計算式2】を適用して、a=-1.5838、b=-0.7514です。
大円G1と直交し、「放射点」を通過する大円G2の方程式のパラメーターは、【基本計算式3】を用いれば、a=3.1141、b=-5.2319となります。
大円G1とG2の交点Qは、 【基本計算式4】を用いて、
交点Q:(α, δ)=(03h 5m 25s, +58° 34′ 28″)
です。この交点Qは「放射点」があると期待される位置です。
この交点Qと実際の「放射点」の間の角距離は、【基本計算式1】より、θQC=0.6040°です。この値は小さく、「放射点」は、ルクバーとカペラを結ぶ直線上にあると言って、ほぼ差し支えありません。
ルクバーから「放射点」までの距離は、【基本計算式1】より、θAC=12.7182°で、また「放射点」からカペラまでの距離は、θBC=23.3434°です。23.3434°÷12.7182°=1.8354倍≒1.84倍なので、「放射点」は、ルクバーとカペラの間の距離の約1/3のあたりということになります。
これは分かりやすいと自画自賛ムードだったのですが、ペルセウス座流星群が出現する8月はカシオペヤとカペラの位置が上下逆転して、日付が変わる前だと、まだカペラの高度が低く見つけられないおそれがあります
そこで、もう一つ、ペルセウス座のβ星アルゴルとγ星アルファカを結ぶ延長線上に「放射点」を見い出す方法について計算してみました。
(2)ペルセウス座のβ星アルゴルとγ星アルファカから探す
アルゴル、アルファカ、「放射点」の位置(それぞれ点A、点B、点Cとします)は、赤径αと赤緯Decを用いて、以下のように表されます(元期 J2000.0)。
点A アルゴル:(03h 08m 10.13245s, +40° 57′ 20.3280″)
点B アルファカ:(03h 04m 47.79074s, +53° 30′ 23.1687″)
点C 「放射点」:(03h 04m, +58°)
アルゴルとアルファカを結ぶ直線(=天球上の大円)は、大円G1の方程式を
とおくと、【基本計算式2】を適用して、a=-24.660、b=-21.776です。
大円G1と直交し、「放射点」を通過する大円G2の方程式のパラメーターは、【基本計算式3】を用いれば、a=-1.0385、b=-1.2219となります。
大円G1とG2の交点Qは、 【基本計算式4】を用いて、
交点Q:(α, δ)=(03h 3m 4s, +57° 59′ 35″)
です。この交点Qは「放射点」があると期待される位置です。
この交点Qと実際の「放射点」の間の角距離は、【基本計算式1】より、θQC=0.1239°です。この値はかなり小さく、「放射点」は、アルゴルとアルファカを結ぶ直線の延長線上にあると言えます。
アルゴルからアルファカまで距離は、【基本計算式1】より、θAB=12.5636°で、またアルファカから「放射点」までの距離は、θBC=4.4950°です。4.4950°÷12.5636°=0.3578倍≒0.36倍なので、「放射点」は、アルゴルとアルファカの間の距離を1/3ほど延長したあたりにあります。
ちなみに、この直線を、さらに延長したあたりにはポラリスがあります。
以上より、「放射点」は、(1)カペラとルクバーを結ぶ線分上にあり、なおかつ、(2)アルゴルとアルファカを結ぶ直線の延長線上にあることが分かりました。すなわち、「放射点」は、これら2本の直線の交点にある、ということにもなります。
極大日まで、あと1ヶ月、楽しみに待つことにしましょう
5つの【基本計算式】をこちらで紹介しています
その他の『天球の歩き方』はこちらへどうぞ
Radiant of Perseid meteor shower
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