今日は、月末日曜になので「しろいぬの日」なのですが、昨晩の雨のためにランが休園
ということで、昨晩、完成させていたレンズヒーターの様子をアップします。
その前に、先日の星撮りのときのカメラボディの温度データをexif情報から拾って、グラフ化してみました
ライブビューで撮影していたためか、写真を撮っているとカメラボディ内の温度が上昇する傾向がありますが30℃には到達しない程度です。
Mac上で写真を確認するとレンズが曇り始めたのは午前1時前でしたが、現地で気付いたのは1時過ぎくらいでしたので、「なんだか、おかしい」と思いながら、何枚か撮り続けていたことになります
その後、レンズをバスタオルでぐるぐる巻きにして、半ばあきらめつつレンズを覗くと、曇りは消えていました(1時40分頃)。
このとき、カメラボディの内部温度は8℃でした(この日の撮影地の最低気温を調べてみると10℃前後だったようですので確からしいところでしょう)。
まあ、このことから分かったことは、
レンズが曇るほど冷えてもボディの内部温度は冷えておらず、逆にボディの内部温度が冷えていてもレンズが曇るとは限らない。なので、レンズ鏡筒と撮像素子との間では、それほど空気が循環しているわけではないので、ライブビューによる発熱はレンズには伝わらず、曇り除けには役立たない。
曇りはレンズ外側に発生していたので、冷えたのはレンズの方。原因は、冷たい風があたって空気より比熱が小さいレンズ(=ガラスや金属)だけが冷えて、周囲の空気に含まれている水蒸気が凝結した、ということなのでしょう。
ということで、やはりレンズヒーターで対策することにしましょう。
前回は、設計編で、5V電源で連続9時間使用という仕様のもとで設計をしました
その結果、周長25cmのレンズに122cmのニクロム線を巻き付ける、ということに決めました
この型紙を、切り抜いて、
ネオプレンゴム(=クロロプレンゴム)に位置合わせして、仮止め。
ニクロム線を通す孔を、ルーターのキリを使って、チクチクと印をつけていきます。
孔の数は142箇所
先人たちにしたがってネオプレンを使ったのは、やはり耐熱性に優れていることが一番の理由。
特製ストラップの肩当てでも馴れ親しんでいる材料です。
で、チクチクした跡を、今度は電動ルーターを使って、キュイーンと穴あけ142回。
裏側からもキュイーンと142回。
この孔にニクロム線を編み込んでいくのです
ニクロム線は、ゴム板の片面にギザギザに配置していけば済むことなんですが、涼麻工房としては、レンズヒーターを使っているうちにニクロム線が短絡したり、断線を起こすことが心配だったので、編み込むことにしたんです。
まぁ、こんなことは商業ベースでは決してやらないことで、DIYならではといえましょうかね~
ニクロム線は、長さと抵抗値を勘案してφ0.4mm
設計上は、122cmを使って10.48Ωの抵抗となるはずで、念のため、実測してみると、11Ωだったので
編み込み中
所定の長さをキッチリ編み込まないといけないので、ある程度はキチキチっと巻かないとならないけど、あまりきつすぎると、ゴム板がよじれてしまうので、加減が難しい
なんだかんだ、編み込み作業で3~4時間を費やしました。
編み込んだ状態で、抵抗値を再確認すると10.5Ωなので(前述の11Ωとの差は誤差程度の話で、性能上は大差ないので、細かいことには頓着していません)
このニクロム線を巻いたゴム板を芯にして、表と裏に1枚ずつ、ゴム板を貼り付けていきます。
まだ、三枚おろし状態のゴム板
接着には、G17ボンドを使います。
G17は、クロロプレン系なので、相性がいいはず。
ただし、事前に接着性能を確認してみたところ、ゴム表面を耐水ペーパーなどを使って目荒らしておかないと効きませんでした。
ちゃんと目荒らししてから接着した試験片は、70~80℃のやかんに当てても接着剤が溶けることなどはありませんでした
以前、運動靴で廃棄物の山に登ったら、自然発熱のために表面が60℃程度になっていて、運動靴の底を貼付けていた接着剤が溶けてしまい、歩くのに往生したことがあります。これは、熱可塑性という性質で、ある程度以上の温度になると、ぐにゃ~、と柔らかくなってしまうことを差します。
とかなんとか、昔話を思い出しながら3枚を貼り合わせ、手持ちのUSBコードをばらしてから接続(電源供給なので赤線と黒線のみを使います)
ヒーターの一番外側には、これまた先人たちにならいマジックバンド
マジックバンドは、表裏が、それぞれマジックテープのオスメスになっていて、むかーし、よくスキー板を束ねるときに使っていたものと同じ
ピスネームもつけて、完成
取り急ぎ、空き缶に取り付けて、試運転中ですが、熱くなり過ぎず、ほんのりとあったかい程度で、なかなか良い感じです。
ニクロム線を使用したヒーターは、場合によっては火災、感電等の事故を起こしかねませんので、電気に関する専門知識のない方は不用意に真似をしないで下さい。
USBモバイルバッテリーは、内部バッテリーの3.7VをUSBの5Vに昇圧して出力していますが、昇圧回路で電気を使うためロスがあり、変換効率は70%程度のようです。当初は変換効率を考慮しないでレンズヒーターの使用時間を9時間として設計しましたが、この変換効率を考慮すると、9時間×0.7=6時間18分ということになります。製作後に実測してみたところ7時間30分でした。これはニクロム線の発熱により抵抗値が増加し、消費電流が減少した結果、バッテリー寿命が延びたことが一因と考えられます(ヒーターとして利用する分には、一定の温度上昇が確保されているわけですから、これで問題ありません)。変換効率については、Panasonic社のホームページに記載されていますので、興味のある方はこちらをご覧ください。
【2014年6月30日追記】使用時間が、6時間18分のはずが7時間30分になっていたということは、7.5÷6.3=1.19、およそ20%ほど時間が延びています。ということは、電流が1÷1.19=0.84に減少しているということです。これは、ニクロム線の温度係数だけでは説明がつきません。なぜなら、ニクロム線の温度が30℃上昇しても、抵抗の増加は0.6%程度だからです。では、バッテリーの変換効率が、実は70%よりも高いのでしょうか。いや、メーカーが自社製品の性能を安全側に表現するとしても、せいぜい70~74%なのでしょうから、これでは数%の違いでしかありません。いずれも20%という大差を説明するにはもの足りません。そこで、はたと気づいたのですが、おそらくUSBケーブルの抵抗が数Ωあるのではないでしょうか。いつもは、抵抗というとkΩ単位のものを扱ってきたので、電線部の抵抗はほとんど無視できるわけですが、今回はニクロム線の抵抗が10.5Ωと小さいので、ケーブルの抵抗程度でも、結構、効いてくるのだと考えられます。例えば、ケーブルの抵抗が2Ω程度であれば、バッテリーに繋がっている全抵抗が12Ωになるので、その結果、20%ほどの違いが出てきてもおかしくなないでしょう。そこで、同じコードを同じ長さに切って抵抗値を測ってみたのですが、せいぜい0.1Ω程度でした。そりゃそうですよねえ。やっぱり変換効率が結構よいのでしょうかねえ