先日、茜で染めたときは、はじめてにも関らず、まずまずの出来映えでした。
と、ところが、これはビギナーズラックだったということが判明したのです
まずは、下の写真をご覧下さい
左上がはじめて染めたときのもの、その他の2枚は、後日染めたものです。
どうにも、はじめのときの赤色が出ず、朱色っぽくなってしまうのです
原因として、染色前の媒染液の絞り加減、染液を抽出する際の茜の分量、抽出する際の時間、などなど、いろいろと考えられたので、それぞれの条件を変えて、比較しながら、何度も染めてみましたが朱色にしかなりません。
それでも、昨日の段階では、かなり原因が絞られてきて、染液の作り方が重要だということが分かってきました。
で、とにかく、たくさん染料成分を抽出してみよう、と考えて、エタノール抽出にしてみました。
通常、染料成分は水で抽出しますが、エタノールでも酸でも抽出することができます。
下の写真のうち、左上がエタノール抽出(1番液)、右上がエタノール抽出(2番液)、下が水抽出(3番液)です。
おー、3番液でようやく真っ赤な染液が得られました
これで、染めてみましょう。
これだけ真っ赤なら、綺麗に染まりそうです。
と、ところが、、、相変わらず朱色なんです
右側が3番液で染めた結果、左下が目標とする赤。
※ちょっとグラデーションになっているのは、浸染時間を変えて「ぼかし」をつけてみたため
よくわからないけど、1番液と2番液も加えて染め直してみましたが、やっぱり朱色のまま
いよいよ万策尽きたか、いやいや、あと一つだけ試してみよう
茜を抽出すると、赤い染料成分が出てくる前に、濁り成分が出てくるらしいのです
この濁り成分の正体は、よく分かりませんが、一晩、茜を水に漬け置きしました
漬け置き後の茜を取り出して、あらためて酢を加えた水で抽出しました。
左側が一晩、漬け置きして得られた1番液、右側が酸抽出した2番液。
ここで、ようやく気がついたのですが、涼麻父は今まで真っ赤な染液があれば、真っ赤に染められる、と思い込んでいたのですが、濁り成分を含んでいる1番液が真っ赤
この一見、頼りなさそうな2番液、金柑のど飴みたいな色をした2番液で染めてみたところ、
じゃぁーん、見事、真っ赤に染まりました(下)
目標としていたもの(右上)よりも、はるかに鮮やかな色です。
なによりも、染まる時間が早く(数分でほぼ染まり切る)、朱色のとき(5分でうっすら)に比べると明らかに染まりやすい。
そ、そんなぁ、真っ赤な染液では朱色に染まって、金柑のど飴色の染液だと真っ赤に染まるだなんて
以前、染めて朱色になったものを今回の2番液で染め直したものが、写真の右下。
はじめてのもの(右上)にだいぶ近づきました。
しかし、一度、濁って染まってしまうと、いまさら鮮やかにはならないようです。
確認のため、朱色のものを1番液で染め直してみましたが、色はほとんど変化しませんでした。
そりゃあ、濁って染まったものを濁り成分を含む染液で染めても変わりませんね。
今回、わかったポイントは2つ。
茜は、抽出の初期段階で濁り成分が出てくるので、赤く染める成分だけを取り出したい場合は2番液を用いる必要がある。この赤い成分は染まりやすい。濁り成分は染まりにくいし、一度、染まると、その濁りは抜けない(シルクの場合)。
酢を加えた水で抽出すると、濁りの少ない染液が得られる。これが、酸抽出の効果なのか、それとも酢が濁り成分を分解しているのか、などについては検証中です。
そこで、濁り成分を含む1番液に、(a)酢、(b)オキシドール、(c)キッチンハイターを添加してみました。
(a)酢の主成分は酢酸CH3COOH、(b)オキシドールは過酸化水素水H2O2、(c)キッチンハイターは次亜塩素酸ソーダNaClO+水酸化ナトリウムNaOHですから、(a)は酸性で(c)はアルカリ性、(b)と(c)は酸化力が強い、という性質を持ちます。
1番液
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(a)酢を加えると、若干、赤みが消える。2番液の色調に似てくる
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(b)オキシドールを加えても色の変化はない |
(c)キッチンハイターを加えると、一瞬、深紅色を呈するが、その後、赤みが消える
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この様子からすると、(a)酢が濁り成分を消すようです。また(b)オキシドールは特に何の作用もなく、(c)キッチンハイターは、なにやら濁り成分以外にも作用しているようです。
次に2番液も同様に調べました。
2番液
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(a)酢を加えても色の変化はない。まあ、もともと酢入りだしね
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(b)オキシドールを加えても色の変化はない |
(c)キッチンハイターを加えると、一瞬、紫色を呈するが、その後、薄い赤色になる
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この結果から、(a)酢は染料成分に悪影響を与えない、(b)オキシドールは何の作用もない、(c)キッチンハイターは染料成分に何らかの影響を与えてしまっている可能性がある。
いずれにせよ、1番液を抽出する際に、できるだけ濁り成分を吐き出させてしまい、2番液を抽出する際には、酢を用いることで、染料成分を抽出しやすくするとともに、残存している濁り成分を分解する、という方法で綺麗な茜色に染めることができるようです。
もちろん、どんな赤色に染めたいかは、それぞれですので、1番液と2番液を混合して染液とするなどの方法も採られているようです。
<付録>
今回、用いた米酢のpHは3~4くらい
キッチンハイターのpHは10くらい
物事には、「原因」と「結果」があり、ある「道理」が「原因」と「結果」を結びつけています。
いくつかの「原因」が考えられるとき、「結果」に大きく影響するものもあれば、あまり影響しないものもあります。
「原因」が小さく変動しただけで「結果」が大きく変わることもあれば、逆に、「原因」が大きく変動しても「結果」にはあまり影響しないものもあります。
なので、一見、「こんなことは影響しないだろう」と思えるような「原因」も全て列挙して、くまなく、ひとつずつ検証していけば、答えにたどり着くことができるはずです。
それにしても、はじめて染めたときに、なんだかよくわからないまま、急場凌ぎに使った酢が、これほどまでに重要だとは思いもよりませんでした。
また、はじめて染めたときに朱色になっていたら、茜染めって、こんな感じなのかって誤解してしまうところでした。
なんと、ラッキーな
さあ、次は、いよいよ紫根染めへ