早速、昨日のリベンジです。
いろいろ調べて&考えてみて、今日の方針は、次の3つです。
「紫根搗き」によって、しっかりと染料を抽出する
これまでは、エタノール抽出で充分に染料を取り出すことが出来ると思い込んでいましたが、古代には水抽出時に「紫根搗き(しこんづき)」といって、餅つきのように紫根を搗きながら染液を抽出していたようです。紫根の染料成分は、根の表皮の裏あたりにあるようなので、ぐりぐりと絞り出してやる必要があるのでしょうね。
染液に酢を添加して酸化を防止する
紫根の染液を静置しておくと、底部に紫色の沈殿物が発生します。以前は、これを撹拌すると染液に混ざっていくのであまり気にしていなかったのですが、この沈殿物は、染料成分シコニンの酸化物のようなのです。撹拌すれば染液中に懸濁するので、一見、染液に戻っているように見えますが、固形化したシコニンはキレート反応をすることができないので、やはり、シコニンはあくまでも染液中に溶け込んでいてもらわなくてなりません。そこで、今日は、還元力をもつ酢を染液に添加して、シコニンの酸化を予防することにしました。還元作用のあるものは、酢の他にも、レモンやビタミンCの前駆体であるアスコルビン酸、写真の定着液に使われるチオ硫酸ナトリウムなどがありますが、古代でも使われていたであろう酢を使うことにしました。
浸染温度を60℃に高める
染色は、基本的に化学反応なので、温度を上げれば反応性が高まります。昨日までは50℃で浸染していましたが、今日は、シコニンが黒変する70℃より少しだけ低い60℃まであげてみます。ちなみに、古代は「深滅紫(ふかけしむらさき)」という黒に近い紫色があって、これは、あえて浸染温度を上げていたそうですから、一部のシコニンを意図的に黒変させていたのではないかと想像します。
さて、今日の紫根染めの様子です。
シルクハンカチの重量の5倍量の紫根を水に漬けます。
水抽出というべきか、水洗いというべきか、分かりませんが、1時間ほどの浸漬を2回。
金柑色の液体が出てきますが、これは廃棄します。
続いて、いつものようにエタノールで抽出。
それなりに、染料が出てきます。この段階では染液が透き通っていることを覚えておいて下さい。
餅つきをするほどの杵や臼がありませんので、小さなすりこぎを使って「紫根搗き」です。
ぐりぐり、うねうねと30分ほど。
すると、出ました、出ました、濃厚な染液が出てきました。
いつもの染液のように透き通っておらず、決して濁っているわけでもなく、いかにも濃~いという感じ
エタノールを交換しながら、この紫根搗きを3回ほど繰り返して染液を抽出しました。
抽出後の紫根はボロボロで、すっかり全部 吐き出しました、という感じです。
この様子からすると、昨日までは、せっかく5倍量もの紫根を使っていながら、十分に染料を取り出すことが出来ていなかったのだ思います。
媒染は、昨日までと同様に5倍量の明礬で先媒染30分。
今日は、染液の酸化防止として酢を1%ほど入れます。
さあ、こうして染液の準備完了。
液温を60℃まで上げます。
先媒染したシルクハンカチを染液に浸け、繰っていると、染まるのが早いこと早いこと。
前回も5分ほどで染まり始めたので早いと思いましたが、今日は、ほんの2分ほどで染まり始めました
5分おきに火を入れて60℃を保ちながら40分ほど染液の中を泳がせ、その後、常温に戻るま20分ほど静置。
今日は、屋外で風乾。今日の方法で、だいぶ濃く染まったように思います。
写真だと、実物の色合いとは、ちょっと違う感じですが
下が、今日の紫根染めで、これまでのリファレンス(左上)と比べて明らかに濃く染まりあがっています。
また、鮮やかな茜染め(右上)にも負けないくらい、はっきりとした紫色の発色が得られました。
この後、念のため、媒染→浸染して、再度、乾燥中です。
完全に乾いたら、あらためて、比較写真を撮ってみようと思います。
いろいろと試行錯誤しましたが、なんとなく核心に触れることができたような感触です