映画とライフデザイン

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11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち

2012-06-30 05:41:53 | 映画(日本 2011年以降主演男性)
映画「11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち」を劇場で見てきました。

三島由紀夫の作品は比較的好きで80%は読んでいる。気になっていた。
ここではむしろ反体制的思想が強い若松監督が真逆の思想の三島事件を描く。実録映像を織り交ぜながら、昭和40年代前半の三島由紀夫と楯の会の仲間を追う。よくできていると思う。


昭和45年11月25日、小学校で担任の先生が、三島由紀夫という人が自衛隊に乱入しているという話をしていた。その名前は知らなかった。何事が起こったのであろうと思っていたら、自決したという。
その後の三島報道はすごかった。テレビでは連日特集していた。
右翼の赤尾敏は数寄屋橋で三島精神を見習えというビラを貼っていた。これには思わず笑った。
本屋に行くと三島の本がたくさん積まれていた。
とはいうもののまだ子供の自分には何でこんなことするのかわからなかった。

三島由紀夫は学生運動などで、共産主義思想がはびこるのに深い懸念を抱いていた。
同時に自衛隊が軍として機能するべきだという持論を持つ。自衛隊に体験入隊もした。
一方森田必勝も高校生時代から日本がアカの思想に染まるのに懸念を抱いていた。早稲田に入ってすぐ
国粋主義者たちが集まる集団に属していた。66年学費値上げをめぐって、早稲田が長期のストライキに入った。森田たちはストライキのバリケードを壊したりして、学生運動の主導者たちと対立していた。
その後も沖縄問題やベトナム戦争に絡んで何度も起こったデモで学生闘士たちは町を錯乱していた。
それに対して三島は国士の気を持つ青年たちを集めて「楯の会」を結成する。
学生運動を鎮圧するのに自衛隊が出動しないことに三島は腹を立てていた。
苛立ちを募らせる三島と楯の会の若き隊員たち。そして、ついに、決断の時が訪れるが。。。

事件の後、数年たって三島原作「音楽」という映画をやっていた。不感症の女性の話である。
従兄と見に行った。そうかこういう作品を書いているんだ。その後「午後の曳航」も映画化された。
いずれも思春期の自分にはずいぶんと刺激が強かった。「潮騒」も見たと思う。
そして初めて三島の本を開いた。
青春時代を描いた「仮面の告白」を読んでみると意外に読みやすい。そこから三島由紀夫を集中して読み出した。
何の間違いか中学生のとき「美徳のよろめき」を読んだ。こんなハチャメチャな女の人いるのかと驚いた。
40過ぎに再読したときは身近に感じてより一層ドキドキしてしまった。


三島役の井浦新は熱演である。濃い顔をした本物の三島に比べるとずいぶんとあくが取れた印象だ。
ちょっとイメージが違うかもしれない。でもこの難役うまくこなしたとおもう。特に最後のバルコニーでの演説シーンは頑張った。
正直バルコニーで話している映像は見たことがあっても、何を話していたのかは初めて知った。
東大全共闘との討論についても存在自体は知っていても中身は知らなかった。若松監督は逆サイドの学生運動闘士もよく知っているだけあって、このシーンに映る学生や髪を振り乱した女子学生の雰囲気がいかにもらしかった。三島由紀夫や蓮實重彦や鳩山一族などの学習院~東大の連中が持つお坊ちゃんインテリムードとは違うものである。
寺島しのぶは今回は普通、そもそもの三島夫人自体が異様な個性を持つ女性ではないので仕方がない。
本物の三島邸でロケできればそれに越したことないだろうけど、それは無理だよなあ。


森田必勝役満島真之介が強い存在感を示していた。満島ひかりの兄弟である彼はどちらかというと新宿2丁目系薔薇族という風貌だ。男気あふれる姿は美しい。
そのころの早稲田といえば、体育会を除いては左翼思想にあふれた学生が多かったのではないか。「花は桜木、男は早稲田」といいながら学園紛争にうつつを抜かしているだらしない男たちが多いイメージだ。
学生運動にはまったやつらは町の中をぐちゃぐちゃにして、世の中にむちゃくちゃ迷惑をかけていた。とんでもないやつらだ。その動きに懸命に反発した森田必勝は男気ある。気持ちがこもっていた。
その心意気が伝わるような名演技だ。

学生運動をやっている連中は世の中を変えてやろうと思っていたのであろう?
でもあれから40年以上たって彼らの残したものは何もない。



ずっと不思議におもっっていたことがある。楯の会の資金源のことだ。
ものすごいお金がかかるはずなのに、流行作家とはいえ作家のフトコロでこなせるのかと
映画の1シーンで、三島が言う台詞で田中清玄が自分が楯の会のスポンサーと触れ回っているという
シーンがある。それは違うと三島が言う。突然出てきたシーンを見て自分の長年の疑問が浮かんだ。
実際どうなんだろう。

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