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映画とライフデザイン

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映画「メガロポリス」フランシス・フォード・コッポラ&アダム・ドライバー

2025-06-21 07:18:18 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)

映画「メガロポリス」を映画館で観てきました。

映画「メガロポリス」は、巨匠フランシス・コッポラ監督が長年の構想を映像化にした作品だ。近未来の都市計画を題材にした映画である。主演はアダムドライバーで、ダスティン・ホフマンやジョン・ヴォイトなど往年の名優も脇を固めている。アダムドライバーの母親役タリア・シャイアはゴッドファーザーの冒頭で結婚するドンの娘だ。

ともかく、酷評である。186億円(1億2000万$)の制作費に対してわずかな興行収入しかなかったらしい。巨匠が長年の構想を温めたならもう少し人気があってもおかしくないがそれが実態である。映画の評論を見ても賛否両論と言うより否定の方が多い。個人的には批評が賛否別れるときには観に行けと言う鉄則がある。すぐさま映画館へと向かう。

近未来のニューローマ(ニューヨーク)市、名門クラッスス一族の一員でもある天才建築家カエサル・カティリナ(アダム・ドライバー)は、老朽化した都市を刷新しようとする新都市メガロポリスの開発を推進する。財政難の中で既得権益に固執する市長のフランクリン・キケロ(ジャンカルロ・エスポジート)は、カジノ建設を計画し、カエサルと真正面から対立する。市長の娘であり、カエサルの恋人ジュリア・キケロ(ナタリー・エマニュエル)は両者の間で葛藤する。またクラッスス一族の後継を目論むクローディオ・プルケル(シャイアラブーフ)の策謀にも巻き込まれる。

わかりづらい映画である。ストーリーが直線的でないので、理解に苦しむ。

フランシスコッポラ頭の中で長年たくさんの映像コンテを構想して、その映像としての具現化を目的とした映画と自分は捉えた。ストーリーはとってつけたような感じがする。人気がないのもよくわかる。

ただ, 186億円と言われる制作費がかかっているんだろうなと映像を見てわかる映画である。ともかく映像コンテが多い。しかも豪華である。セットや衣装にお金がかかっている。

でも酷評だからと言って、ジョン・ヴォイトをゴールデンラズベリー賞にノミネートさせる話にはむかつく。映画ではカエサルと対立する政治の黒幕といった存在である。ジョンヴォイトの演技におかしな点は全くない。むしろ良い味を出している。「帰郷」でアカデミー賞主演男優賞を受賞しており, 70年代から80年代にかけては、まさに主力選手だった。2000年代に入っても黒幕的悪役がうまい俳優としての存在感を持っている。ちなみに娘はアンジェリーナジョリー。そんなジョンヴォイトをおちょくるのはいい加減にしろと言いたい。

⒈フランシスコッポラが好き勝手につくった映画

黒澤明監督の晩年に「夢」と言う作品がある。黒澤明が長年温めた映像コンテを映像化してできた作品である。映画「夢」を見て、それまでの黒澤明作品で感じられる娯楽性がなかった。今回のフランシスコッポラの映画は「夢」と似たようなものである。違うのはかけた費用だ。

フランシスコッポラが私財186億円を投入したとのコメントを読んで, 映画製作で失敗して破産したコッポラがそんなに金持っているわけないだろうと思った。ゴッドファーザーや地獄の黙示録の大ヒットはあっても、その後は、鳴かず飛ばずの興行収入の作品が続いて破産したはずだ。オーバーではないかと考えていたら,コッポラは2021年にカリフォルニアのワイナリーを5億ドルで売却して多額の収入を得たことがわかった。それで謎は解けた。これは最高の贅沢なのだ。

⒉多彩な映像コンテ

ストーリーを直線的に理解するのが難しい作品だ。よくわからないモードで頭脳が戸惑う。それなのに、それぞれのショットでは美的にうなるようなことが多い。こんな場面を映像にしたいと思っていることが理想的な形で具現化されたんだろうなと思う。映画「ミッションインポッシブル」もストーリーがわかりづらかった。でもトム・クルーズのアクションが楽しめれば良い気分でいた。この映画もフランシス・コッポラの映画美学が覗ければいいなと言う気分で観るなら悪くない。

映画の中で登場する巨大なホール、古代ローマを連想させるような円形競技場らしきものや、登場人物が住む豪華な住まいなど膨大なセットが美術監督も加わって制作されたと見受けられる。現在のニューヨークでロケしている映像も多い。完全にセットだけで近未来の都市を表現するのではなく、年輪を重ねる建物がそのまま残った前提で都市が成立していることを示している。それは良いのではないか。

主人公は個別の建物を設計する建築家と違い、都市計画に従事する建築家である。映画「ブルータリスト」エイドリアンブロディが演じた建築家は設計の場面だけでなく、現場でのやりとりもあったが、この作品では違う。セントラルパークのような広い広場に巨大な建造物を建てていく都市計画を担う人物として描く。ただアダムドライバーがしゃべるセリフは建築の能書きと言うよりフランシスコ・コッポラが常に思う哲学的な発言が多い気がするであるから、なおのこと映画がわかりづらくなっている。

⒊シトロエンDS

ディテールだが、個人的に思いがあるクルマなのでシトロエンについてだけ触れたい。普通近未来の設定ならテスラが作っているいかにも近未来らしいデザインの車が登場することが多い。それなのに現代からしてみても約70年前に登場したシトロエンが出てくるのは場違いのようにも思える。でもしっくり合っていた。

シトロエンを初めて見たのは、小学校低学年の時だった。同級生の父親がお抱え運転手で黒いこの映画と同じシトロエンを運転していた。亀型のこのデザインを初めて見たとき、最初はポルシェを連想したがフランスのシトロエンだと言う。何度も見るうちにそのデザインが目に慣れてきて好きになる

その後フランス映画の「怪人ファントマ」が乗るのはシトロエンである。映画「ファントマ危機一髪」で警察に追われるファントマが車のダッシュボードのスイッチを押すとシトロエンが翼を広げて空に飛んでいくシーンに思わず興奮した。当時のませた子供どうしの会話には欠かせない話題だった。ビデオのない時代、この映画が上映されるたびに父親に映画に行きたいとねだった。

もしかしてフランシスコッポラも映画「ファントマ」で見て自分と同じような感動を「空飛ぶクルマ」シトロエンで体験したのかもしれない。1981年にフランスパリに行ったことがある。その時パリのシャンゼリゼ通りを同じ形のシトロエンがたくさん走っているのが目についた。個人的にはうれしかった。ある意味フランス文化の象徴である。シトロエンをアメ車でなく登場させるのには、ファントマの影響が大きい気がした。あくまで個人的感想だ。あとスローバージョンのジャズボーカル「恋は異なもの」がバックで流れるのもうれしかったな。


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